JP3903407B2 - 磁気浮上モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータを浮上制御するためのステータ巻線と回転磁界を発生させる第2のステータ巻線とを備えた磁気浮上モータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来広く用いられている接触型の軸受のほかに、磁力を利用して回転軸等の回転体を浮上させ、これを無接触で支持するようにした磁気軸受が用いられるようになってきた。磁気軸受を用いれば、軸受部の摩擦係数がほぼゼロに近いため高速回転が可能になる。また、磁気軸受は潤滑油を必要としないため、高温、低温あるいは真空中など、特殊環境下での使用が可能となり、さらに、メンテナンスを要しないという利点がある。そこで、磁気軸受をモータのロータ支持に用いることが考えられている。
【0003】
磁気軸受を有するモータの基本的構成は、磁気軸受、回転力発生機構すなわちモータ部、磁気軸受、という順序で、これらを回転軸線方向に配置したものである。しかし、このような配置では、モータ部の両側に磁気軸受を配置するため軸長が増加し、危険速度が低下するという難点がある。
【0004】
そこで、磁気軸受のステータが交流モータのステータとほぼ同じ構造であることに着目し、磁気軸受とモータとを一体化した磁気浮上モータが提案されている。磁気浮上モータの一形式としてハイブリッド型磁気浮上モータがある。これは、永久磁石を用いてロータ内部から放射状に広がる一定磁束を作り、ロータの浮上制御を、一般的な磁気軸受と同様に2極の直流磁場で行うことができるようにしたものである。ハイブリッド型磁気浮上モータによれば、永久磁石で一定磁束を作り出すので、電力を消費することなくバイアス吸引力を発生させることができ、電磁石は制御力のみを分担すればよいという利点がある。
【0005】
しかしながら、上記ハイブリッド型磁気浮上モータによれば、駆動用永久磁石のほかにロータ内部から放射状に広がる一定のバイアス磁束を作るための比較的大きな永久磁石を必要とする。そのため、組立工数が増加する、小型化への障害となる、コストアップとなる、構造が限定されるなどの難点がある。
【0006】
磁気浮上モータの別の例として、特開平7−184345号公報に記載されているような、軸方向の一方側に磁気浮上モータ部を、他方側に磁気軸受を配置したものも知られている。
しかしながら、この磁気浮上モータによれば、モータ全体の大きさの割にはモータの出力を大きくすることが難しいという難点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、バイアス磁束を作るための永久磁石を特別に設ける必要がないようにして、組立工数の低減、小型化、コストの低減、構成の自由度の向上を可能にした磁気浮上モータを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、ロータとステータコア間のギャップ磁束密度をほぼ正弦波状とし、浮上力と回転力との相互干渉を小さくすることができる磁気浮上モータを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、磁気浮上型モータ部を軸方向に2個連結した形で配置することにより、モータ出力を大きくすることができる磁気浮上モータを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、磁性体からなり周面にセグメント型永久磁石が固着されたロータと、このロータを浮上制御するための2極の浮上制御磁束を発生する第1のステータ巻線と、ロータに対して回転磁界を発生させる第2のステータ巻線とを備えた磁気浮上型モータ部が二つ軸方向に配置され、上記セグメント型永久磁石が上記二つの磁気浮上型モータ部において互いに逆極性の関係で固着され、上記セグメント型永久磁石が、ロータの内部から放射状に広がる直流磁場を発生するバイアス磁石として用いられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、二つの磁気浮上型モータ部を構成する二つのロータは、共通の回転体の軸方向において異なる位置に配置されるとともに、上記セグメント型永久磁石を固着することによって構成され、上記二つの磁気浮上型モータ部を構成する第1、第2のステータ巻線を巻く二つのステータコア部は、同一構成のステータコアからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、セグメント型永久磁石は、一方側のセグメント型永久磁石のステータコアに面した側をN極、他方側のセグメント型永久磁石のステータコアに面した側をS極としてなることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、セグメント型永久磁石のステータコアとの対向面は、ギャップ磁束密度がほぼ正弦波状になるように円弧形状となっていることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる磁気浮上モータの具体例について説明することにするが、その前に、本発明に至る前の段階において本発明者らが提案した磁気浮上モータの例を説明しながら、いわゆるハイブリッド型磁気浮上モータの原理的構造と浮上原理などについて説明する。
【0014】
図6、図7において、磁気浮上モータ1は、ロータ2a,2bと、ステータ3a,3bと、直流磁場発生手段4と、第1のステータ巻線5a,5bと、第2のステータ巻線6と、ロータに設ける複数の永久磁石7とを具備し、永久磁石7を備えたロータ2aとステータ3aとの間でモータが構成されている。また、ロータ2a,2bとステータ3a,3bとそれぞれの間では磁気軸受が構成されている。
【0015】
ロータ2a,2bは磁性体から構成されており、磁性体からなる回転軸8に所定の間隔を隔てて設けられている。これらロータ2a,2bのうち、ロータ2aの周面には複数の永久磁石7が、極性をN,S,…,S,というように交互に反転して周方向に配置されている。これら永久磁石7は、ロータ2aの周面に貼り付けられている。ここで、永久磁石7は、N極が表面に露出する永久磁石と、S極が表面に露出する永久磁石とが交互に配置されている。ロータ2a,2bは、渦電流の発生を防ぐために、ケイ素鋼板を重ねて製作するのが望ましい。
【0016】
ロータ2a,2bの外周側には、ステータ3a,3bがロータ2a,2bの周面をそれぞれ囲繞するように配置されている。ステータ3a,3bには、ロータ2a,2bを浮上制御するための2極の浮上制御磁束φFを発生する第1のステータ巻線5a,5bがそれぞれ巻き回されている。また、ステータ3aには、第1のステータ巻線5aに隣接させてロータ2aに対して回転磁界φKを設定する第2のステータ巻線6が設けられている。
【0017】
また、ステータ3a,3bの間には直流磁場発生手段4が設けられており、この直流磁場発生手段4によってロータ2a,2bからステータ3a,3bに向けて放射状に分布する磁束φDを発生させている。この直流磁場発生手段4は、具体的には永久磁石Pであって、ステータ3a,3bの間の中央に配置され、この永久磁石Pによってロータ2a,2bとステータ3a,3bとの間隙にバイアスのための直流磁場を発生させている。ここで、バイアス磁束を発生させる直流磁場発生手段4としての永久磁石Pの数は、特に限定されるものではない。しかし、多いほどすなわちギャップ内のバイアス磁束が多いほど、浮上電流をより少なくできることから、永久磁石Pの数は可能な限り多くすることが好ましい。ステータ3a,3bも珪素鋼板の積層材で構成することが好ましい。
【0018】
ロータ2aの磁極数とステータ3aのスロット数も特に限定されない。これらはPMモータを構成できる数であれば足りるが、磁極数が6極以上、スロット数が9個以上であることが望ましく、図示の例では磁極数6、スロット数12で構成されている。
なお、上記のPMモータにおいて、ステータはスロットレス構造であってもよい。
【0019】
このような磁気浮上モータの作用について、図6、図7を基に図8及び図9を参照しながら説明する。
図8に、ロータにおける座標系を示す。図8において、ステータ3a,3bの回転中心を0とし横軸をx軸、これに直角な縦軸をy軸とする。また、ステータ3a,3bの上に固定した回転座標をθとし、ロータ2a,2bの角速度をωとし、時間をtとすると、各ステータ3a,3bはy軸から角速度θとして配置されている。また、y軸を時間t=0とすると、t秒後のロータ2a,2bの位置はωt/Mで求めることができる。
【0020】
図9は、ステータ及びロータにおける磁束と時間との関係を示す。図9(a)はロータの永久磁石と直流磁場発生手段からのバイアス磁束による磁束密度Brを時間との関係で示し、図9(b)は第2のステータ巻線によってステータとロータとの間隙に発生する磁束密度Bsmを時間との関係で示し、図9(c)は第1のステータ巻線による磁束密度Bsbを時間との関係で示したものである。
【0021】
この磁気浮上モータ1では、第1のステータ巻線5a,5bから図9(c)に示す磁界が発生するように浮上力制御用の第1のステータ巻線5a,5bに電流を流し、また、回転力発生用の第2のステータ巻線6から図9(b)に示すような磁界が発生するように第2のステータ巻線6に電流を流す。これにより、この磁気浮上モータ1は磁気浮上するとともに、モータとして回転する。
【0022】
このように、第1のステータ巻線5a,5bから磁束密度Bsbが発生するように電流を流し、第2のステータ巻線6から磁束密度Bamが発生するように電流を流すことにより、磁気浮上と回転力とが独立して発生することについて理論解析するために、次の(1)〜(6)のような仮定をする。
【0023】
(1)ステータ3a,3bは電流が連続的に分布するものとする。
(2)定常回転、定常スラスト負荷(重力等)状態とする。
(3)ロータ2aは、永久磁石によって矩形波状の磁束密度を作り、これによる偏心力はない。
(4)ロータ2a,2bとステータ3a,3bは中心が一致し、偏心していない。
(5)バイアス磁束は一定で放射状に分布している。
(6)第2のステータ巻線6に流す回転磁界用の電流による電機子反作用はない。
【0024】
このような仮定の上において、ロータ2aの永久磁石7と直流磁場発生手段4のバイアス磁束による磁束密度Brは、次の数1式のようになる。
【数1】
【0025】
ここで、
B0:バイアス磁石によるギャップ磁束密度
B1:ロータの永久磁石による磁束密度の波高値
B2:モータ巻線による磁束密度の波高値
B3:位置制御巻線による磁束密度の波高値
θ:ステータ上に固定した回転座標
ψ:電動機巻線による磁束とロータの位相差
φ:位置制御巻線による磁束の位相角
ω:ロータの角速度
t:時間
M:極対数(=1,2,3,…)
i:自然数
計算を簡単にするため、正弦波に近似させると、次の数2式に示すように表すことができる。
【数2】
Br=B0+B1cos(Mθ−ωt)
【0026】
第2のステータ巻線6によってロータ2aとステータ3aとの間に発生する磁束密度Bsmは、
【数3】
Bsm=B2cos(Mθ−ωt−ψ)
のように表すことができる。
【0027】
また、第1のステータ巻線5a,5bによって発生する磁束密度Bsbは、
【数4】
Bsb=B3cos(θ−φ)
のようになる。
したがって、ロータ2a,2bとステータ3a,3bとの間のエアギャップに作られる磁束密度Bgは、
【数5】
Bg=Br+Bsm+Bsb
となる。
【0028】
次に、ロータ2a,2bの半径をrとし、ロータ2a,2bとステータ3a,3bとのエアギャップをgとし、ロータ2a,2bの軸方向の長さをl、微小角度をdθとすると、エアギャップの微小体積ΔVは、
【数6】
ΔV=rlgdθ
となり、この小体積ΔVに蓄えられる磁気エネルギーΔWは、
【数7】
となる。
【0029】
これにより、半径方向に沿った放射状の力dFは微小ギャップ体積中に蓄えられる磁気エネルギーの仮想変位により次の数8式のように計算される。
【数8】
【0030】
ここで、x軸及びy軸方向に発生する力Fx,Fyは、数8式に示すdFのx方向成分及びy方向成分をθについてギャップ全周にわたって積分することにより、数9式、数10式に示すように算出することができる。
【0031】
【数9】
【0032】
【数10】
【0033】
ここで、M≧3とすると、
【数11】
【数12】
となり、ロータ2a,2bの回転角に関係なく一定の浮上力が得られる。数11式のx方向の浮上力も、数12式のy方向の浮上力も、ロータ2aの永久磁石の磁束密度及び第2のステータ巻線6による磁束密度の項が現れていないことから、磁気浮上力は第2のステータ巻線6によって形成される回転磁界の影響を受けないことがわかる。
【0034】
一方、回転トルクTは、
【数13】
に示すように求められる。ここで、M≧2とすると、回転トルクTは、
【数14】
となり、直流磁場発生手段4で発生するバイアス磁界によるエアギャップ磁束密度、及び第1のステータ巻線5a,5bによる磁束密度の項が現れないため、バイアス磁界及び浮上磁界の影響を受けないことがわかる。
【0035】
ここまで説明してきた磁気浮上モータの例は、本出願人が先に出願した特願平10−355124号の明細書及び図面に記載されているものであって、まだ公開されていない。上記磁気浮上モータによれば、次のような利点がある。
(1)磁気軸受とモータの磁気回路とが一体化されているため、磁気浮上モータ全体がコンパクトになり、軸長を短くすることができるため危険速度を高めることができ、高速回転が可能となる。
(2)負荷トルク及びモータ電流によって磁気浮上制御が影響を受けず、より安定した浮上を実現することができる。
(3)磁気浮上制御は回転磁界によって行うものではないため、座標変換が不要になり、制御系が簡単になる。
(4)ホモポーラ型磁気浮上モータでは突極型で最低8極が必要であるが、上記の例にかかる磁気浮上モータでは、最低6極で構成することができ、構造が簡単になる。
(5)直流磁場発生手段に永久磁石を使用することが可能であり、磁場発生のための電力を必要としない。
【0036】
本願発明は、上記ハイブリッド型磁気浮上モータに改良を加え、ロータに設ける永久磁石を工夫することによって、バイアス磁束を作るための永久磁石を別に設ける必要がないようにするとともに、浮上力と回転力の干渉をさらに小さくし、さらに、モータの出力を大きくすることができるようにしたものである。
以下、本発明にかかる磁気浮上モータの実施の形態について説明する。
【0037】
図1、図2において、円筒状モータケース35の内周側には二つのステータコア部11,21と、二つのロータ31,32からなる二つの磁気浮上型モータ部が配置されている。上記二つのステータコア部11,21は、それぞれステータコア12,22と、ステータ巻線13,23とを有してなる。各ステータコア12,22は同一構成の積層コアであり、前述の先行出願の例と同様に珪素鋼板の積層体で構成するのが望ましい。図2に示す例では、各ステータコア12,22は12個の突極を有してなるとともに、12個の分割コアをモータケース35の内周面に固定してなる。
【0038】
ステータコア12,22の各突極にはステータ巻線13,23が巻き回されている。各ステータ巻線13,23は、前記先行出願の例と同様に、各ロータ31,32を浮上制御するための2極の浮上制御磁束を発生する第1のステータ巻線と、各ロータ31,32に対して回転磁界を発生させる第2のステータ巻線とを有してなるが、図12、図2には明示されていない。
【0039】
上記二つのロータ31,32は、軸状に構成された共通の回転体40の軸方向において異なる位置に配置されていて、これにより、二つの磁気浮上型モータ部11,21が軸方向に配置された形になっている。各ロータ31,32を構成する上記回転体40は磁性体からなり、それぞれのロータ31,32の外周にはセグメント型永久磁石33,34が固着されている。図2に示す例では、上記セグメント型永久磁石33,34は円筒を分割した形の4個の永久磁石からなり、このセグメント型永久磁石33,34が回転体40の周方向に一定間隔で、かつ、ステータコア12,22の突極の内周端面と適宜の間隙をおいて対向させて配置されている。
【0040】
上記セグメント型永久磁石33,34の極性は、上記二つの磁気浮上型モータ部11,21において互いに逆極性の関係で固着されている。図1の例では、一方側すなわち左側のセグメント型永久磁石33のステータコア12に面した側をS極、回転体40側をN極、他方側すなわち右側のセグメント型永久磁石34のステータコア22に面した側をN極、回転体40側をS極としてなる。したがって、一方のセグメント型永久磁石33の内周側から出た磁束は、磁性体からなる回転体40を通って他方のセグメント型永久磁石34に入り、他方のセグメント型永久磁石34の外周から出た磁束は、間隙を通って他方のステータコア22、モータケース35、一方のステータコア12、間隙を通って一方のセグメント型永久磁石33に戻る。
【0041】
上記二つのセグメント型永久磁石33、34は、第2のステータ巻線によって発生する回転磁界と協働して、ロータ31,32に同じ向きの回転力を発生させるための磁束を発生させる。また、上記二つのセグメント型永久磁石33、34は、第1のステータ巻線によって発生する2極の浮上制御磁束と協働してロータ31,32を浮上制御するために、ロータ31,32の内部から放射状に広がる直流磁場を発生するバイアス磁石としても機能する。
なお、回転力発生原理及び浮上力発生原理は、図6ないし図9について説明した先行出願記載の発明の回転力発生原理及び浮上力発生原理と同じであるから説明は省略する。
【0042】
上記のように、二つのロータ31,32の周面に、それぞれセグメント型永久磁石33、34を互いに逆極性の関係で固着し、これらのセグメント型永久磁石33、34を、回転力を発生させる永久磁石として、また、ロータ31,32を浮上させるための直流磁場発生手段として機能させるようにしたため、前記先行出願記載の発明のように、浮上力発生用直流磁場発生手段としての永久磁石を、回転力発生用永久磁石のほかに特別に設ける必要がなくなり、組立工数の低減、小型化、コストの低減および構成の自由度の向上を可能にした磁気浮上モータを提供するという所期の目的を達成することができる。
【0043】
図1において、二つの磁気浮上型モータ部11,21を挟んだ両側には、回転体40と一体に設けられた被検出体と対向して隙間センサ15,25が配置されている。これらの隙間センサ15,25で検出される上記被検出体との隙間が一定になるように、浮上力発生用の第1のステータ巻線への通電を制御する。これにより、回転体40、ロータ31,32を含む回転部分を無接触で支持することができる。なお、図1においては、回転体40の両端部がモータケース35に設けられた軸受で支持されているように見えるが、ロータの回転中は、上記のように浮上力発生用の第1のステータ巻線への通電制御により磁気的浮上力が発生し、かつ、この浮上力が制御されるため、回転体40は軸受に接触することなく回転する。
【0044】
二つのロータ31,32に固着されているセグメント型永久磁石33,34の回転方向の位置関係は、図2に示す例では互いに同じ位置関係になっているが、図3の(a)と(b)に示すように、互いにずれていてもよい。この場合、当然のことながら、第1のステータ巻線と第2のステータ巻線に流す電流の位相関係も、図2の(a)と(b)に示す例のものとは二つのロータ31,32相互間でずれることになる。
【0045】
従来技術の問題点の解決課題として挙げたように、浮上力と回転力との相互干渉をできるたけ小さくするためには、ロータとステータコア間のギャップ磁束密度の変化を回転方向にほぼ正弦波状とするのが望ましい。そのためには、図2、図3に示すセグメント型永久磁石33,34のように、回転軸線に直交する方向の断面形状が矩形状のものよりも、図4、図5に示すセグメント型永久磁石43,44のように、回転軸線に直交する方向の断面において、ステータコア12,22との対向面形状を円弧形状とするのが望ましい。より具体的には、上記セグメント型永久磁石43,44は、内面側は回転体40の周面に密着し、外面側すなわちステータコア12,22との対向面は、ステータコア12,22の内周面との間隙が連続的に変化する円弧形状となっていて、全体では三日月形になっている。このような形態にしておけば、互いに隣接するセグメント型永久磁石相互間の磁束密度の変化が円滑になり、ほぼ正弦波状になる。
【0046】
ただし、セグメント型永久磁石43,44を図4、図5に示すように断面形状三日月形にすると、ステータコア12,22との間隙の平均値が大きくなり、効率が低下するので、浮上力と回転力との相互干渉の大小と、効率低下の程度とを勘案して、セグメント型永久磁石43,44の断面形状を、意図する特性に最も近い特性が得られるような形状にするとよい。
なお、図4(a)(b)は、図2(a)(b)に対応するもので、二つのセグメント型永久磁石43,44が周方向に互いに同じ位置に配置されている例を示し、図5(a)(b)は、図3(a)(b)に対応するもので、二つのセグメント型永久磁石43,44が周方向に互いにずれた位置に配置されている例を示している。
【0047】
以上説明した何れの実施の形態においも、回転力と浮上力とを発生する磁気浮上型モータ部が軸方向に2個連結された形で配置されているため、モータ出力を大きくすることができるとともに、軸方向においてバランスのよい浮上力を得ることができる。
本発明は、図示の例のようなインナーロータ型モータに限らず、アウターロータ型モータにも適用可能である。
【0048】
【発明の効果】
請求項1記載の発明は、磁性体からなり周面にセグメント型永久磁石が固着されたロータと、このロータを浮上制御するための2極の浮上制御磁束を発生する第1のステータ巻線と、ロータに対して回転磁界を発生させる第2のステータ巻線とを備えた磁気浮上型モータ部が二つ軸方向に配置され、セグメント型永久磁石が二つの磁気浮上型モータ部において互いに逆極性の関係で固着され、セグメント型永久磁石が、ロータの内部から放射状に広がる直流磁場を発生するバイアス磁石として用いられていることを特徴としている。そのため、上記セグメント型永久磁石が回転力発生用永久磁石と浮上力発生用永久磁石とを兼ねることになり、浮上力発生用直流磁場発生手段としての永久磁石を、回転力発生用永久磁石のほかに設ける必要がなくなり、組立工数の低減、小型化、コストの低減および構成の自由度の向上を可能にした磁気浮上モータを得ることができる。
【0049】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、二つの磁気浮上型モータ部を構成する二つのロータは、共通の回転体の軸方向において異なる位置に配置されるとともに、セグメント型永久磁石を固着することによって構成され、二つの磁気浮上型モータ部を構成する第1、第2のステータ巻線を巻く二つのステータコア部は、同一構成のステータコアからなる。そのため、モータ出力を大きくすることができるとともに、軸方向においてバランスのよい浮上力を得ることができる。
【0050】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、セグメント型永久磁石は、一方側のセグメント型永久磁石のステータコアに面した側をN極、他方側のセグメント型永久磁石のステータコアに面した側をS極としてなる。そのため、セグメント型永久磁石が回転力発生用永久磁石と浮上力発生用永久磁石とを兼ねさせることが可能になり、請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0051】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、セグメント型永久磁石のステータコアとの対向面は、ギャップ磁束密度がほぼ正弦波状になるように円弧形状となっている。そのため、浮上力と回転力との相互干渉を小さくすることができ、浮上力と回転力を効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる磁気浮上モータの実施形態を示す縦断面図である。
【図2】上記実施形態の(a)は一方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図、(b)は他方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図である。
【図3】本発明にかかる磁気浮上モータの別の実施形態を示す(a)は一方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図、(b)は他方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図である。
【図4】本発明にかかる磁気浮上モータのさらに別の実施形態を示す(a)は一方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図、(b)は他方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図である。
【図5】本発明にかかる磁気浮上モータのさらに別の実施形態を示す(a)は一方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図、(b)は他方の磁気浮上型モータ部を示す横断面図である。
【図6】本発明に先行して提案した磁気浮上型モータの浮上原理を説明するための磁気浮上型モータ部を示す横断面図である。
【図7】同上磁気浮上型モータの縦断面図である。
【図8】同上磁気浮上型モータの座標系を設定するための説明図である。
【図9】同上磁気浮上型モータに発生する磁束密度を説明するための特性図で、(a)はロータの永久磁石と直流磁場発生手段からのバイアス磁束による磁束密度を時間との関係で示したもの、(b)は第2のステータ巻線によってステータとロータとの間隙に発生する磁束密度を時間との関係で示したもの、(c)は第1のステータ巻線による磁束密度を時間との関係で示したものである。
【符号の説明】
11 ステータコア部
12 ステータコア
13 ステータコア巻線
21 ステータコア部
22 ステータコア
23 ステータコア巻線
31 ロータ
32 ロータ
33 セグメント型永久磁石
34 セグメント型永久磁石
35 モータケース
43 セグメント型永久磁石
44 セグメント型永久磁石
Claims (4)
- 磁性体からなり周面にセグメント型永久磁石が固着されたロータと、上記ロータを浮上制御するための2極の浮上制御磁束を発生する第1のステータ巻線と、上記ロータに対して回転磁界を発生させる第2のステータ巻線とを備えた磁気浮上型モータ部が二つ軸方向に配置され、上記セグメント型永久磁石が上記二つの磁気浮上型モータ部において互いに逆極性の関係で固着され、上記セグメント型永久磁石が、上記ロータの内部から放射状に広がる直流磁場を発生するバイアス磁石として用いられていることを特徴とする磁気浮上モータ。
- 上記二つの磁気浮上型モータ部を構成する二つのロータは、共通の回転体の軸方向において異なる位置に配置されるとともに、上記セグメント型永久磁石を固着することによって構成され、上記二つの磁気浮上型モータ部を構成する第1、第2のステータ巻線を巻く二つのステータコア部は、同一構成のステータコアからなる請求項1記載の磁気浮上モータ。
- 上記セグメント型永久磁石は、一方側のセグメント型永久磁石のステータコアに面した側をN極、他方側のセグメント型永久磁石のステータコアに面した側をS極としてなる請求項1記載の磁気浮上モータ。
- 上記セグメント型永久磁石のステータコアとの対向面は、ギャップ磁束密度がほぼ正弦波状になるように円弧形状となっている請求項3記載の磁気浮上モータ。
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