JP3881440B2 - 部材同士の接合部構造及びその形成方法 - Google Patents

部材同士の接合部構造及びその形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば建築構造において柱の側面部に梁の端部を接合する場合などに用いられる部材同士の接合部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば建築物において、図5(イ)に示すように、角形鋼管材からなる柱52の側面部に、H型鋼からなる梁51の端部を溶接により接合する接合部構造が採用されることがある。例えばこの接合構造において、梁51の上下フランジ51b,51bには、曲げ応力等による引張力が作用するため、それに耐える強度がもたされているが、梁51の上下フランジ51b,51bの接合端部では、柱52の面外変形や梁51の上下フランジ51b,51bの幅方向における収縮の拘束のために、応力が集中してしまい、そのため、梁51の上下フランジ51b,51bの接合端部には設計応力を越える力がかかることがあり、この部分は、他の部分よりも溶接破断等の破壊を起こす危険性が高くなる。また、この応力集中は、梁51のウェブ51aについても生じるおそれがある。そこで、柱52と梁51の接合部の設計を、上下フランジ51b,51bの接合端部の応力集中を考慮して行うことも考えられるが、それでは、不経済である。
【0003】
この問題を解決するため、図5(ロ)に示すように、梁51の接合端部に、引張力、圧縮力の作用する方向に延びるスリット53…を形成し、このスリット53…によって、梁51の上下フランジ51b,51bの接合端部における応力集中を緩和するようにしたものが提案されている(特開平9−96016号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このスリット53…による応力集中低減法は、確かに引張力に対しては効果が認められるものの、その一方で、圧縮力に対しての配慮が必ずしも充分なものであるとは言えないものであった。即ち、スリット法では、梁51の接合端部における断面がスリット53…によって分断されているために、圧縮力が作用した場合は、分断されたそれぞれの部分が独立して圧縮力を受けることになり、スリット53…を挟む各側や、スリット53…間の小部分に圧縮力による局部変形を生じ、圧縮力に対しての剛性、耐力が全体として低いものになるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決し、部材の接合端部における応力集中を緩和でき、しかも、圧縮力に対しても接合部の剛性、耐力がほとんど損なわれることがない部材同士の接合部構造を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、第1部材の端部が第2部材に接合された部材同士の接合部構造において、
前記第1部材の接合端部に、応力集中緩和用の切欠きが引張力、圧縮力の作用する方向に延びて形成され、該切欠きは溝からなっていて、溝を挟む両側が溝の底下の肉を介して連接されていることを特徴とする部材同士の接合構造によって解決される。
【0007】
即ち、第1部材に引張力が作用した場合の接合端部における応力集中は、引張力、圧縮力の作用する方向に延びて形成された溝による切欠きの作用で緩和される。しかも、このように切欠きは溝によるものであり、溝を挟む両側は溝の底下の肉を介して連接されているため、部材の接合端部における断面は分断されることがなく、溝を挟む両側はそれらを連接する溝下の肉を介して互いに補強しあい、圧縮力に対しても接合部の剛性、耐力が損なわれることはほとんどない。
【0008】
また、上記の溝の形成を、第1部材の端部を第2部材に接合した後に行うものとすることにより、既設の接合部に対する耐力上の改善策としても有効利用することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1ないし図3に示す接合部構造は、建築構造における梁1と柱2との接合部構造に適用した場合のものである。柱2は断面方形の角形鋼管材によるものであり、梁1はH型鋼によるものである。梁1は、その端部のウェブ1a及び上下の両フランジ1b,1bを柱2の側面部に溶接して、柱2に接合されている。そして、梁1の接合端部において、そのウェブ1a及び上下フランジ1b,1bには、梁1の材軸方向に延びる溝3…が、応力集中緩和用の切欠きとして、表裏対応・対称状態に形成されている。
【0011】
上記の接合部構造では、図2(イ)に示すように、梁1の上下フランジ1b,1bに曲げによる引張力P1 が作用した場合、梁1の接合端部において生じる応力集中は、梁1の材軸方向に延びる溝3…の切欠きの作用で緩和される。その場合の応力分布を同図に示す。点線aは梁1に溝3…が設けられていない場合の応力分布であり、実線bは梁1に溝3…が設けられている場合の応力分布線であり、溝3…の形成によって梁1の接合端部における応力集中が緩和されることを示している。同様のことが、図2(ロ)に示すように、ウェブ1aについても言える。
【0012】
しかも、図2(イ)に示すように,梁1の上下フランジ1b,1bに圧縮力P2 が作用した場合は、図3(イ)〜(ハ)に示すように,溝3…を挟む両側4…は溝3…の底下の肉5…を介して連接されているため、梁1の接合端部における断面は分断されることがなく、溝3…を挟む両側4…は、それらを連接する溝3…の下の肉5…を介して互いに補強しあい、圧縮力P2 に対しても、接合部の剛性、耐力が損なわれることはほとんどない。
【0013】
加えて、従来の、スリットによる応力緩和法では、スリットの形成を梁1と柱2との接合前に行っておかなければ、接合後ではスリット形成のための加工が技術的に困難であり、接合の形成に段取り上の制限があるが、本発明の、溝3…による応力集中緩和法では、溝3…の形成は、梁1と柱2とを接合する前でも、接合した後でも、いずれの段階においても可能であり、接合部形成のための段取りの自由度が高く、有利であるというメリットもある。しかも、このように溝3…の形成は接合後でも行うことができるものであるため、既設の梁と柱との接合部の梁の接合端部に溝を形成することも、上フランジ1bの上面がわを除いて可能であり、既設の接合部に対する耐力上の改善策として有効的に用いることもできる。
【0014】
図4に示す実施形態は、柱2がH型鋼によるもので、梁1の端部を、この柱2の一方のフランジ2bの外面部に溶接により接合したものである。溝3…を形成する点などは、上記実施形態と同様である。本実施形態では、梁1に引張力が作用した場合の梁1の接合端部における応力分布が、上記の実施形態の場合とは異なるが、溝3…の形成により同様に、応力集中を緩和でき、しかも圧縮力に対する剛性、耐力を確保し得るものである。
【0015】
以上に実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、溝3…が、ウェブ1aやフランジ1b,1bの表裏に対応・対称状態に形成されているが、表裏で位置を異にして、非対称状態に設けられたものなどであってもよいし、いずれか一方の面にのみ、溝を形成したものであってもよい。また、上記実施形態では、特定断面形状の柱2と梁1との接合部構造を示しているが、本発明は、それ以外の各種断面形状の柱2と梁1との接合部構造として用いられてよい。また、溝3の本数、形成位置、溝の深さなどについても、梁1の接合端部に作用する引張力や圧縮力のかかり方、柱及び梁の断面サイズなどを考慮して自由に決められてよい。また、梁1や柱2の材質についても特段の制限はなく、鉄以外のアルミニウム等のその他の金属などであってもよいし、溶接以外の他の接合方法によって接合されたものであってもよい。また、本発明の適用対象は、梁1と柱2の接合部構造に限られるものではなく、各種産業技術分野において部材同士を接合する場合に広く適用され得るものであることは言うまでもない。
【0016】
【発明の効果】
以上の次第で、本発明の部材同士の接合部構造は、部材の接合端部に、応力集中緩和用の切欠きが引張力、圧縮力の作用する方向に延びて形成され、該切欠きは溝からなっていて、溝を挟む両側が溝の底下の肉を介して連接されているものであるから、引張力による部材の接合端部における応力集中を緩和でき、しかも、圧縮力に対しても接合部の剛性、耐力を損なうことがほとんどない。
【0017】
また、上記の溝の形成を、第1部材の端部を第2部材に接合した後に行うものとすることにより、本発明を、既設の接合部に対する耐力上の改善策として有効的に活用していくことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態にかかるもので、梁と柱を分離状態にして示す一部断面斜視図である。
【図2】図(イ)は梁と柱の接合部の断面平面図、図(ロ)は同立面図である。
【図3】図(イ)は図2(ロ)のI−I線断面図、図(ロ)は図(イ)のA部拡大断面図である。図(ハ)は図(イ)のB部拡大断面図である。
【図4】第2実施形態を示すもので、梁と柱を分離状態にして示す一部断面斜視図である。
【図5】図(イ)は従来の接合部構造を示す一部断面斜視図、図(ロ)は従来の他の接合部構造を示す一部断面斜視図である。
【符号の説明】
1…梁(第1部材)
2…柱(第2部材)
3…溝(切欠き)

Claims (2)

  1. 第1部材の端部が第2部材に接合された部材同士の接合部構造において、前記第1部材には、その接合端部においてのみ、応力集中緩和用の切欠きが引張力、圧縮力の作用する方向に延びて形成され、該切欠きは溝からなっていて、溝を挟む両側が溝の底下の肉を介して連接されていることを特徴とする部材同士の接合構造。
  2. 請求項1に記載の接合部構造の形成方法であって、溝の形成を、第1部材の端部を第2部材に接合した後に行う形成方法。
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