JP3880143B2 - 溶融紡糸繊維の冷却方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、均一な冷却を行うことにより、物性斑のないポリアミド、ポリエステル等の合成繊維を得ることができる溶融紡糸繊維の冷却方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性重合体を溶融し、ポリアミド、ポリエステル等の合成繊維を一工程法で製造する方法においては、紡糸口金より紡糸した糸条を冷却風吹き付け装置で冷却し、続いて冷却筒内で冷却した後、引き取るか、又は引き続いて延伸を行い、巻き取る。
単糸繊度の大きい銘柄の糸条の場合、溶融紡糸後、冷却風吹き付け装置で冷却された糸条は完全に固化されておらず、冷却筒内を走行するうちに固化するため、冷却筒の気流の状態が糸条の固化点の位置や固化の状態を左右する要因となっている。冷却筒は通常2〜5m程度のものであり、気圧差により筒内の気流は乱れやすく、この気流の乱れによって、糸条の固化点の位置にばらつきが生じ、均一な冷却が阻害され、物性斑が生じる。
【0003】
単糸繊度の小さい銘柄の糸条を溶融紡糸する際には、糸条の表面積が大きくなるため、引き取られる方向、下向きの随伴気流が多くなり、これによって、冷却筒内で安定した下降気流が形成され、筒内の気流の乱れが生じることが少なくなり、均一な冷却が行われ、斑のない糸条が得られやすい。
【0004】
一方、単糸繊度の大きい銘柄の糸条を溶融紡糸する際には、糸条の表面積が小さくなるため、下向きの随伴気流は少なく、冷却筒内で安定した気流が形成されない。したがって、固化する前の糸条は、気圧差による冷却筒内の気流の乱れの影響を受けやすく、しかも、単糸繊度が大きいため、固化までに時間がかかり、気流の乱れの影響を大きく受けることとなり、その結果、糸条の固化点の位置がばらつき、均一な冷却が阻害され、物性斑の生じた糸条となるという問題があった。
さらに、このように物性斑が生じた糸条を巻き取ると、糸切れ、渡り糸や面落ちが生じ、巻き姿の悪いパッケージとなるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決し、単糸繊度の大きい銘柄の糸条を安定した気流が形成された冷却筒内で冷却することによって、固化点のばらつきのない均一な冷却が行え、物性斑のない糸条を得ることができ、巻取時には良好な巻き姿のパッケージに巻き取ることができる溶融紡糸繊維の冷却方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、熱可塑性重合体を紡糸口金より溶融紡糸し、糸条を冷却風吹き付け装置で冷却し、続いて冷却筒内を走行させて冷却した後、引取ローラで引き取る方法において、冷却筒内に内壁に沿って下降気流を吹き付けるパイプを周設し、かつこのパイプより内側に内壁に沿って、冷却筒の長さの1/2〜1/3の長さの筒状のカバーを冷却筒内の一部に設け、このカバー内を引取ローラでの引き取り後の単糸繊度が50デニール以上となる糸条を走行させて冷却することを特徴とする溶融紡糸繊維の冷却方法を要旨とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の溶融紡糸繊維の冷却方法の一実施態様を示す概略工程図である。図3は、本発明に使用する冷却筒内部(気流の状態も)の一実施態様を示す説明図であり、図4は、図3の冷却筒の上面図である。
【0008】
まず、本発明において溶融紡糸される熱可塑性重合体としては、ナイロン6、66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルが挙げられ、また、これらの共重合体でもよい。
【0009】
本発明は、これらの熱可塑性重合体を溶融し、紡糸口金1より紡糸した糸条Yに、まず冷却風吹き付け装置2で冷却風を吹き付け、続いて冷却筒3内を走行させることによって冷却した後、引き取る方法に関するものである。冷却筒3内で完全に固化された糸条Yは、油剤付与装置5で油剤を付与され、集束装置6で集束された後、引取ローラ7、8で引き取られ、巻取装置9で巻き取られる。
【0010】
なお、冷却風吹き付け装置2としては、図1に示すような片側吹き付けのものでも、環状に吹き付けるものでもよい。
そして、本発明においては、このような冷却風吹き付け装置で冷却を行った後、まだ完全に固化していない糸条を、糸条の走行方向に沿って安定した気流が形成された冷却筒内を走行させて、冷却、固化することが必要である。
【0011】
本発明は、冷却筒内に糸条の走行方向に沿って下降気流を形成させ、この冷却筒内を糸条を走行させて冷却するものである。冷却筒内に下降気流を形成させる手段としては、冷却筒内に一定かつ均一の下降気流を形成するものであれば、冷却筒内の上部より冷却風を吹き付けるものでも冷却筒の下部より空気を吸引するものでもよいが、図4に示すように、冷却筒3の上部に、内壁に沿ってパイプ4を周設し、パイプ4に均等に設けた複数の穴11より圧縮された空気が糸条の走行方向に沿って吹き出すものが好ましい。
【0012】
このように、冷却筒の内壁に沿って、上部より下降気流を糸条の走行方向に吹き出させたり、下部より空気を吸引して下降気流を形成させることによって、冷却筒内の気圧の差により発生する気流の乱れに打ち勝つ、安定した気流が形成される。
したがって、糸条は、安定した下降気流が形成された冷却筒内を走行しながら冷却されるので、冷却筒の気流が乱れやすい単糸繊度の大きい銘柄の糸条の場合でも、糸条の固化点の位置がばらつくことなく、均一な冷却が行え、斑のない糸条を得ることができる。
【0013】
本発明は、図3、4に示すように、冷却筒の上部に、内壁に沿って下降気流を吹き出すパイプ4を周設し、冷却筒の上方で、かつこのパイプより内側に内壁に沿って筒状のカバー10を冷却筒の一部に設け、このカバー内を、引取ローラ7での引き取り後の単糸繊度が50デニール以上となる糸条を走行させて冷却するものである。
【0014】
このように冷却筒内に筒状のカバーを設けると、パイプより吹き出される下降気流は、カバーと冷却筒の間を通る。そして、カバーの下端より下方のカバーの設置されていない冷却筒内においては、カバーと冷却筒の間を通ってきた下降気流が冷却筒内全体に流れ出し、筒内全体に下降気流が形成される。一方、カバー内では、下降気流が吹き出されていないが、カバーと冷却筒の間を通ってきた下降気流がカバーの下端から冷却筒内全体に吹き出されると、気圧差により吹き出された空気の一部がカバー内に吸い込まれ、上昇気流が形成される。
【0015】
この上昇気流によりカバー内の気流は安定するので、筒内に安定した下降気流が形成される第一発明と同様に、安定した上昇気流が形成されたカバー内を糸条が走行し、この間に固化されることによって、均一な冷却が行え、固化点のばらつきが生じることがない。
【0016】
したがって、冷却筒内に設ける筒状のカバー内に、走行する糸条の固化点が存在するように、カバーの長さを選択することが必要である。カバーの長さは、糸条の単糸繊度やフィラメント数等により適宜変更すればよいが、おおむね冷却筒の長さの1/2〜1/3の長さとすることが好ましい。
【0017】
冷却筒のカバー内では、形成される上昇気流が糸条の走行方向と逆向きであることによって、糸条の冷却効率が高まり、また、カバーのない冷却筒内では下降気流が形成されているため、筒内で空気抵抗による空気延伸が行われて、引き取り時の張力が高まり、引取ローラ上の糸条の揺れが減少し、糸条の物性をより均一にする役目を果たしていると思われる。また、冷却筒のカバー内では上昇気流、カバーのない部分では下降気流が形成されているが、糸条はカバー内で完全に固化するため、カバーの下端付近で多少生じる気流の乱れの影響を受けることはない。
【0018】
また、カバーを設置するには、上端に引っ掛け具を設け、冷却筒の上端に引っ掛けて設置すればよい。カバーの材質は特に限定されるものではなく、亜鉛板、ステンレス鋼板や塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
【0019】
冷却筒内の上部から糸条の走行方向に沿って吹き出す下降気流の速度や量については、前記のような効果を奏することができるように、単糸繊度やフィラメント数によって、適宜選択すればよい。
【0020】
本発明は、引き取り後、引き続いて延伸し、高速(3000m/分程度)で巻き取る高速紡糸法でもよいが、低速(500 〜1000m/分程度)で引き取り、引き続いて延伸するスピンドロー法を採用することが好ましい。
【0021】
本発明において、冷却筒内を走行させて冷却する糸条は、引取ローラでの引き取り後の単糸繊度が50デニール以上となる単糸繊度の大きい銘柄の糸条であるが、図1に示すように引取ローラが2つ以上ある場合は、1つめの引取ローラ7で引き取られた糸条の単糸繊度をいう。そして、上記のように引き取り後に引き続いて延伸する場合は、2つ目以降の引取ローラ8間で延伸を施す。
そして、引き取り後の単糸繊度は、好ましくは50〜400 デニール、さらに好ましくは50〜150 デニールであって、延伸後の単糸繊度は、10〜70デニール程度のものとすることが好ましく、フィラメント数は20〜100 程度のものが好ましい。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例における評価は次の方法で行った。
(1)強度、伸度のばらつき
JIS L−1013 7 5 1法に準じ、島津社製定速伸長型試験機を用いて引っ張り試験を行った。つかみ間隔は25cm、引っ張り速度は30cmであり、試料が切断したときの荷重SD(gf)と伸びE(cm)を測定した。測定は10m間隔で100 回行い、次式により強度、伸度を算出し, 標準偏差によりばらつきを評価した。
強度(gf/d)=SD/d d:試料の正量繊度
伸度(%)=E/L×100 L:つかみ間隔(25cm)
(2)巻き姿(満巻率 %)
巻き上がった7kgのパッケージを目視で判定し、次の4段階で評価した。
◎:極めて良好
○:良好
△:面落ちはないが、バルジあり
×:面落ち、バルジともにあり
(3)糸切れ
72時間連続して紡糸を行い、その間の糸切れ回数をカウントした。
【0026】
実施例4
相対粘度( 96 %硫酸を溶媒とし、濃度1g/ dl 、温度 25 ℃で測定した。) 3.50 のナイロン6チップを用い、溶融温度 270 ℃とし、孔径 0.70 mm、孔数 28 の口金を用いて溶融紡糸した。図1に示す工程に従い、紡糸した糸条を加熱フードを通過させ、片側吹き付けの冷却風吹き付け装置で冷却した後、続いて、冷却風吹き付け装置の直下に設けた冷却筒( 3.5 m)内を走行させて冷却を行った。このとき、冷却筒には図4に示すように、冷却筒の上部に、内壁に沿って空気を吹き出すパイプを周設し、このパイプより下降気流を吹き付け、かつこのパイプより内側に内壁に沿って筒状のカバーを設け、カバー内を糸条を走行させて冷却を行った。カバーは亜鉛板製であり、長さは 1.5 mのものであった。続いて、スピンドロー法により、引取ローラ7で引き取り、引き続いて引取ローラ7、8間で延伸し、 3000 m/分の速度の巻取装置9で巻き取った。糸条は、引取ローラ7での引き取り後の単糸繊度が 128 dであり、最終的に得られた糸条は 840 d/ 28 fのものであった。このとき、得られた糸条の物性及び巻き姿、糸切れ回数の評価を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1より明らかなように、実施例4では、糸切れの発生もなく、得られた糸条は、物性斑もなく、パッケージに巻き取られた巻き姿の評価も高いものであった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の冷却方法によれば、糸条を安定した気流が形成された冷却筒内で冷却、固化することによって、均一な冷却が行え、冷却時の糸条の固化点のばらつきがなく、物性斑のない糸条を得ることができ、さらに、良好な巻き姿のパッケージに巻き取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融紡糸繊維の冷却方法の一実施態様を示す概略工程図である。
【図2】本発明に使用する冷却筒内部(気流の状態も)の一実施態様を示す説明図である。
【図3】図2の冷却筒の上面図である。
【符号の説明】
1 紡糸口金
2 冷却風吹き付け装置
3 冷却筒
4 パイプ
5 油剤付与装置
6 集束装置
7、8 引取ローラ
9 巻取装置
10 カバー
Y 糸条
Claims (1)
- 熱可塑性重合体を紡糸口金より溶融紡糸し、糸条を冷却風吹き付け装置で冷却し、続いて冷却筒内を走行させて冷却した後、引取ローラで引き取る方法において、冷却筒内に内壁に沿って下降気流を吹き付けるパイプを周設し、かつこのパイプより内側に内壁に沿って、冷却筒の長さの1/2〜1/3の長さの筒状のカバーを冷却筒内の一部に設け、このカバー内を引取ローラでの引き取り後の単糸繊度が50デニール以上となる糸条を走行させて冷却することを特徴とする溶融紡糸繊維の冷却方法。
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JP21845097A JP3880143B2 (ja) | 1997-08-13 | 1997-08-13 | 溶融紡糸繊維の冷却方法 |
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JP21845097A JP3880143B2 (ja) | 1997-08-13 | 1997-08-13 | 溶融紡糸繊維の冷却方法 |
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JPH1161550A JPH1161550A (ja) | 1999-03-05 |
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ID=16720104
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JP21845097A Expired - Fee Related JP3880143B2 (ja) | 1997-08-13 | 1997-08-13 | 溶融紡糸繊維の冷却方法 |
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-
1997
- 1997-08-13 JP JP21845097A patent/JP3880143B2/ja not_active Expired - Fee Related
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