JP2008007874A - ポリエステル繊維の溶融紡糸装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエステル繊維を製造するに際し、汎用性が高く、溶融紡糸された糸条の均一で、かつ安定した冷却を可能にするポリエステル繊維の溶融紡糸装置を提供する。
【解決手段】紡糸口金より紡出されたポリエステル繊維を冷却固化する装置により冷却固化して巻き取る溶融紡糸装置において、上記冷却固化する装置の冷却風吹き出し部が環状であるとともに、冷却風を均一に吹き出すための均圧室を冷却風の吹き出し部より下部に有し、かつ冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いことを特徴とするポリエステル繊維の溶融紡糸装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、延伸または延伸仮撚加工が可能な紡糸配向したポリエステルマルチフィラメントを安定して連続的に製造することができるポリエステル繊維の溶融紡糸装置および紡糸方法に関する。
従来、マルチフィラメントの合成繊維の製造方法において、口金下近傍の雰囲気を積極的に加熱し、かつ気流の流れを制御する円筒を設置することで、曳糸性を向上させる冷却方法が提案され(例えば、特許文献1参照)、また、冷却風の吹き出し速度を変更できる環状チムニーを長手方向に重ね合わせ2段階で冷却することで、多フィラメント極細合成繊維を均一に冷却する方法が提案され(例えば、特許文献2参照)、さらに、口金下近傍の温度低下を抑制するため、冷却風の方向を下向きにする冷却方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これらの方法は、極細合成繊維を長手方向の繊度斑なく安定して紡糸できるが、その目的を達成するには冷却開始点距離を短くする必要があり、また、口金下近傍の温度低下を抑制するため、積極的に加熱するヒーターを設置するなど付帯設備が必要であり、汎用性に欠けるといった課題が残っている。
また、マルチフィラメントの合成繊維の製造方法における冷却方法おいて、図2に示すようなクロスフロー冷却装置3−2が知られているが、冷却風を一方向から糸条9に吹き付けるため、フィラメント数が多くなると、冷却風の吹き付け面の糸条との吹き付け面と反対側の糸条で冷却が不均一になるため、長手方向の繊度斑が発生してしまう。
特開平6−17304号公報 特開2003−253522号公報 特開2004−300614号公報
本発明の目的は、上記した問題点を解決し、ポリエステル繊維を製造するに際し、汎用性が高く、溶融紡糸された糸条の均一で、かつ安定した冷却を可能にする冷却装置を用いる溶融紡糸装置および紡糸方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)紡糸口金より紡出されたポリエステル繊維を冷却固化する装置により冷却固化して巻き取る溶融紡糸装置において、上記冷却固化する装置の冷却風吹き出し部が環状であるとともに、冷却風を均一に吹き出すための均圧室を冷却風の吹き出し部より下部に有し、かつ冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いことを特徴とするポリエステル繊維の溶融紡糸装置。
(2)冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)とスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)の差が70mm〜150mmであることを特徴とする前記(1)に記載のポリエステル繊維の溶融紡糸装置。
(3)前記(1)または(2)の溶融紡糸装置を用いてポリエステル繊維を溶融紡糸することを特徴とするポリエステル繊維の溶融紡糸方法。
本発明によれば、上記のように環状であり、均圧室を有するポリエステルマルチフィラメントを冷却固化する装置の設置位置を特定するだけで、汎用性が高く、溶融紡糸された糸条を均一で、かつ安定した冷却を行うことができ、単繊維繊度が細いマルチフィラメントであっても繊度斑が少ないポリエステルマルチフィラメントを得ることができる。
本発明のポリエステル繊維を均一に冷却する溶融紡糸装置は、冷却吹き出し部が環状であり、冷却風を均一に吹き出すための均圧室を冷却風吹き出し部より下部に有するものである。均圧室がない場合、冷却風吹き出し部が環状であっても冷却風が均一とならないため、ポリエステルマルチフィラメントの長手方向に繊度斑が生じる。また、均圧室が冷却風吹き出し部と同じ高さにある場合、冷却固化する装置の外周が大きくなり、空間占有が高くなるため生産性が悪くなる。また、均圧室が冷却風吹き出し部の上部にある場合、冷却風吹き出し部と口金面の距離が長くなり、単繊維繊度の太いポリエステルマルチフィラメントは均一冷却できるが、単繊維繊度の細いポリエステルマルチフィラメントは冷却する前に固化が始まり、それに伴い発生する随伴気流の影響により長手方向の繊度斑が発生する。
本発明の溶融紡糸装置は、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いことが重要である。冷却固化する装置の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より長い場合、口金面および口金面下雰囲気の温度低下が生じ、紡糸不可能となるため、抑制するための加熱ヒーターを設置するなど付帯設備が必要となり汎用性がない。冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)とスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)の差が短かすぎると口金面および口金面下雰囲気の温度が低下する傾向を示し、また、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)とスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)の差が長すぎると紡糸口金より紡出されたポリエステル繊維糸条が冷却固化した後に発生する随伴気流が外乱となり、糸条の揺れを引き起こし、ポリエステル繊維の長手方向に繊度斑を生じる傾向を示すので、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)とスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)の差は70mmから150mmであることが好ましい。
本発明の溶融紡糸装置の冷却風は整流されることが好ましい。例えば、セルロースリボンを螺旋状に巻いて熱硬化形成した多孔性部材を用いることにより冷却風を整流する方法があるが、冷却風が整流されるのであれば、特に限定するものではない。
本発明の溶融紡糸装置より吹き出される冷却風の風速は、0.1m/秒から0.3m/秒程度であることが好ましく、紡糸された糸条と冷却装置との距離は5mmから20mm程度とすることが好ましい。冷却風の風速が0.1m/秒未満では、糸条の冷却が不足し、製糸性が悪化し、また、0.3m/秒を超えると糸揺れが発生し、効果が損なわれる傾向を示す。また、糸条と冷却装置との距離が5mm未満では、冷却装置と糸条が接触し、糸切れを発生する問題があり、また、距離が20mmを超えると、糸条の冷却が不足し効果が損なわれ、製糸性が悪化する傾向を示す。
本発明の冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)は10mmから80mmに設定することが好ましい。冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)が10mm未満では、口金面の温度低下が見られる場合があり、また、80mmを超えると、ポリエステル繊維の長手方向の繊度斑や製糸性の悪化が起こる場合があるが、紡糸するポリエステル繊維、単繊維繊度、フィラメント数、ポリマの種類に応じて適宜選択すればよい。
本発明のスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)は80mmから230mmに設定することが好ましい。スピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)が80mm未満では、口金面の温度低下が見られる場合があり、また、230mmを超えると、ポリエステル繊維の長手方向の繊度斑や製糸性の悪化が起こる場合があるが、紡糸するポリエステル繊維、単繊維繊度、フィラメント数、ポリマの種類に応じて適宜選択すればよい。
本発明のポリエステル繊維は、溶融紡糸できるポリエステル繊維であれば、特に限定されるものではない。例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を含んでもよい。
本発明で用いられるポリエステル繊維は、単一成分で構成しても、複数成分で構成してもよく、複数成分の場合には、例えば、芯鞘、サイドバイサイド等の構成が挙げられる。また、繊維の断面形状は、丸、三角、扁平等の異形状や中空であってもよい。
本発明において対象とするポリエステル繊維、単繊維繊度、フィラメント数は、目的に応じて適宜選択される。
以下、本発明の溶融紡糸装置の一実施例について、図1を参照して詳細に説明する。図1は、本発明のポリエステル繊維溶融紡糸方法の一実施態様を示す概略工程図である。図1において、溶融紡糸装置は、紡糸パック1、冷却装置3−1、給油ガイド8、引取ローラー10、11および巻取装置12とを備えている。紡糸パック1はスピンブロック4により加熱および保温され、紡糸パック1は紡糸口金2を有しており、紡糸口金2の吐出孔より紡出された糸条9は、環状冷却装置3−1から吹き出される冷却風で冷却され、給油ガイド10で油剤を付与された後、インターレースノズル11で交絡を付与される。その後、引取ローラー12、13で引き取られ、巻取装置14で巻き取られる。上述装置において、本発明における環状冷却装置3−1は、冷却風吹き出し部6を有しており、図示しない温調器より供給された冷却風を冷却風調節装置5で任意の風量に調整し、上部にパンチングプレート8を有する均圧室5で均圧にし、冷却風吹き出し部6で整流して糸条9に吹き付けるようになっている。
均圧室5は円筒状をしており、冷却風の均圧を目的としたドーナツ状のパンチングプレート8を上部に有し、冷却風吹き出し部と仕切られている構造になっている。
ここで、使用するパンチングプレート8の開孔は、均圧性の面から、全面に均一に開孔していることが好ましく、開孔率は30〜60%が好ましい。
以下、ポリエステルマルチフィラメントを例に取り、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例中に使用した各特性値は次の測定方法により求めた。
[ウスター斑(繊度斑)(U%)]
ZELLWEGER USTER社のUSTER TESTER UT−4を用い、糸速100m/分、給糸張力1/30g/dtex、S撚り、ツイスター回転数8000rpmで5分間測定し、HInertで評価し、U%(H)「0.5未満」を○○、「0.5以上1.0未満」を○、「1.0以上1.5未満」を△、「1.5以上」を×として評価した。
[製糸性および生産性]
パック数20個で、24時間の紡糸を行い、この間の糸切れ回数評価を実施し、「1回未満」を○○、「1回以上2回未満」を○、「2回以上3回未満」を△、「3回以上」を×として評価した。
[生産性]
同一製糸条件、同一敷地面積で、24時間の紡糸を行い、その生産量を比較した際、パック数20個を使用した場合との生産量を比較した場合、「同じ生産量」を○、「少ない生産量」を×として評価した。
[付帯設備]
冷却固化する装置、紡糸口金以外に設備改造が必要ない場合を「○」、必要な場合、「×」として評価した。
実施例1〜3および比較例1〜5
溶融温度(Tm)255℃のポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸し、それぞれ均圧室および均圧室位置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)、スピンブロック下面から冷却風吹き出し面の最上部までの鉛直距離(b)を異ならせるようにし、実施例1〜3および比較例1〜4は図1の冷却装置を、実施例5は図2の冷却客装置を用い、紡糸速度2700m/分で引き取った後、延伸倍率1.62で延伸した。得られた延伸糸特性を表1に示す。
実施例1〜3は本発明に適した冷却装置、均圧室および均圧室位置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いので、U%、製糸性ともに非常に優れ、付帯設備のいらない汎用性の高いものであった。
比較例1は本発明に適した冷却装置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いが、均圧室が冷却風の吹き出し部の上部にあるため、U%、製糸性が劣るものであった。
比較例2は本発明に適した冷却装置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いが、均圧室がないためU%、製糸性が劣るものであった。
比較例3は本発明に適した冷却装置、均圧室および均圧室位置であるが、均圧室が冷却吹き出し部と同じ高さにあったため、生産性が劣るものであった。
比較例4は本発明に適した冷却装置、均圧室および均圧室位置であるが、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)と同じであるため、口金面および口金下雰囲気温度が低下し、U%、製糸性が劣るものであった。
比較例5は冷却装置がクロスフローであるため、U%が劣るものであった。
実施例4〜6
溶融温度(Tm)256℃のポリエチレンテレフタレートを図1に示す環状冷却装置により溶融紡糸し、均圧室および均圧室位置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)、スピンブロック下面から冷却風吹き出し面の最上部までの鉛直距離(b)をそれぞれ異ならせるように、紡糸速度2900m/minで引き取った後、延伸速度1.65で延伸した。得られた延伸糸特性を表2に示す。
実施例4は本発明に適した冷却装置、均圧室および均圧室位置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いので、U%、製糸性の優れ、設備改造費が大幅に削減できていた。
実施例5は本発明に適した冷却装置、均圧室および均圧室位置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)の差がやや短いため、製糸性がやや劣るものであった。
実施例6は本発明に適した冷却装置、均圧室および均圧室位置、冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)の差がやや長いため、製糸性がやや劣るものであった
Figure 2008007874
Figure 2008007874
本発明のポリエステル繊維溶融紡糸方法の一実施態様を示す概略工程図である。 従来のポリエステル繊維溶融紡糸方法の一実施態様を示す概略工程図である。
符号の説明
1:紡糸パック
2:紡糸口金
3−1:環状冷却装置
3−2:クロスフロー冷却装置
4:スピンブロック
5:冷却風調節装置
6:冷却風吹き出し部
7:均圧室
8:パンチングプレート
9:糸条
10:給油ガイド
11:インターレースノズル
12、13:引取ローラー
14:巻取装置

Claims (3)

  1. 紡糸口金より紡出されたポリエステル繊維を冷却固化する装置により冷却固化して巻き取る溶融紡糸装置において、上記冷却固化する装置の冷却風吹き出し部が環状であるとともに、冷却風を均一に吹き出すための均圧室を冷却風の吹き出し部より下部に有し、かつ冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)がスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)より短いことを特徴とするポリエステル繊維の溶融紡糸装置。
  2. 冷却風吹き出し部の最上部から口金面までの鉛直距離(a)とスピンブロック下面から冷却風吹き出し部の最上部までの鉛直距離(b)の差が70mm〜150mmであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル繊維の溶融紡糸装置。
  3. 請求項1または2の溶融紡糸装置を用いてポリエステル繊維を溶融紡糸することを特徴とするポリエステル繊維の溶融紡糸方法。
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