ポリエステルやポリアミド等の熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸は、一般に溶融紡糸、即ち、スピンブロックに配設される紡糸パックに供給された溶融した熱可塑性ポリマーを、紡糸パックに装備された紡糸口金からフィラメント糸として紡出し、気流等により冷却、固化させた後、油剤付与等を施し、必要に応じ同工程あるいは別工程で熱処理や延伸等を行い、巻き取る等の過程を経て製造される。
上記した様な熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸は、衣料用分野、産業用分野等の極めて幅広い分野で活用され、ニーズの多様化から様々な改良が加えられた特品糸が開発・上市されている。衣料用分野においては、ソフトな風合い等を付与する狙いで単糸細繊度化・多フィラメント化、吸水・速乾性の向上や光沢感を変更する等の狙いで単糸異形断面化、また鮮明性に優れた染色の実現等の新たな機能性付与の狙いで熱可塑性ポリマーを改質する等の改良が行われている。また、産業用分野では、同様に単糸細繊度化・多フィラメント化や単糸異形断面化の他、高強度化、高弾性化や、耐候性、難燃性等の新たな機能性付与を狙った熱可塑性ポリマーの改質等の改良が行われている。更にここ数年、上記した様な機能性を複数組み合わせて付与する試みも盛んに行われ始めている。
しかしながら、上記した様な特品糸は素晴らしい機能性を有する高機能品種である一方、溶融紡糸が極めて難しい難紡糸品種でもあり、溶融紡糸工程で発生する以下に示す問題が、上記した様な特品糸の均斉性向上や、高品質化、高品位化、生産性向上、延いては拡販や用途拡大の妨げとなっている。
この溶融紡糸工程で発生する問題を、単糸細繊度化・多フィラメント化した場合を一例に説明する。第1に挙げられるのは、多フィラメント化すると、溶融紡糸で行う冷却を、フィラメント糸の各単糸に対して均一に行うことが困難となり、冷却斑や糸揺れ等が発生し、糸の太さ斑等が極めて悪化する問題である。第2に、単糸細繊度化すると、紡糸口金の近傍でフィラメント糸の各単糸が固化してしまい、溶融紡糸で行う冷却を充分に行うことが困難となり、糸揺れ等が発生し、糸の太さ斑等が極めて悪化する問題が挙げられる。
これら問題は、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性を悪化させるばかりか、それら斑が欠陥となって、強度・伸度等の品質劣化や、糸揺れ等と相俟って紡糸工程や延伸工程、あるいはその後の高次加工工程等での毛羽発生による品位劣化や糸切れ発生による生産性劣化を引き起こす大きな問題となっている。
また、これら問題は、単糸異形断面化されたフィラメント糸や、改質された熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸等においても、同様に大きな問題となる。
例えば、単糸異形断面化されたフィラメント糸では、単糸の表面積や空気抵抗等が丸断面と比べて大きくなるため、紡糸口金の近傍でフィラメント糸の各単糸が固化してしまい、また単糸断面が異形であることから、フィラメント糸の各単糸に対して充分に冷却を行うことや、均一な冷却を行うことが困難となる。
また、熱可塑性ポリマーの改質方法の一例として、共重合が挙げられるが、一般に共重合を行うと、分子構造が乱されるため、フィラメント糸の強度・伸度等が劣化し易い。そのため、多くの場合において、熱可塑性ポリマーの溶融粘度を高くする対応が採られるが、そうすると紡糸口金から紡出されたフィラメント糸の各単糸が、紡糸口金の近傍で固化してしまうため、充分な冷却を行うことが困難となる。
また、熱可塑性ポリマーの中には、一般に広く活用されているポリエステルやポリアミド等と比べ、ガラス転移温度が高いものもあり、この様な特殊な熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸においては、フィラメント糸の各単糸が紡糸口金の極めて近傍で固化してしまうため、益々充分な冷却を行うことが困難となる。
更に、上記した様な機能性を複数組み合わせる場合、例えば、単糸細繊度化・多フィラメント化と単糸異形断面化、あるいは単糸細繊度化・多フィラメント化と熱可塑性ポリマーの改質を組み合わせる等の場合には、これら問題は更に大きな問題となる。
この様に、上記した様な難紡糸品種を製造するにおいて、溶融紡糸で実施される冷却は、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性向上や、強度・伸度等の品質向上、品位向上、生産性向上の上で、極めて重要な要素である。
そこで、従来から、これら問題を解決するため、冷却手段や冷却条件の改良を試みた様々な提案がされている。
(1)冷却手段について
冷却手段については、次の様な手段が提案されている。
溶融紡糸において、冷却手段としては、一般に、平面状の気流吹き出し面を設けて、円形の紡糸口金から紡出されるフィラメント糸に一方向の気流を吹き付けて冷却する手段が知られている。この冷却手段を以下ユニフロ冷却手段と呼ぶこととする。このユニフロ冷却手段は極めて構造が単純で糸掛け作業性も良く、最も広く溶融紡糸の冷却に適用されている冷却手段である。しかし、フィラメント糸の内、気流吹き出し面に近い側の単糸は充分冷却されるが、遠い側の単糸は充分に冷却され難く、冷却をフィラメント糸の各単糸に対して均一に行うことが困難となり易い。そのため、特に多フィラメント化等を行うと、冷却斑や糸揺れ等が発生し、糸の太さ斑等が極めて悪化する問題があった。また、気流吹き出し面以外のフィラメント糸の走行経路の外周側が開放されているため、現場雰囲気の外乱を受け易い問題もあった。
これに対し、均一な冷却等を狙って、フィラメント糸の各単糸を紡出する吐出孔を、紡糸口金中心を中心として紡糸口金に円周状に配列し、更に円筒状の気流吹き出し面を設けて、フィラメント糸を、フィラメント糸の走行経路の内周側から外向き、あるいはフィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに、気流を吹き付けて冷却する手段が知られている。なお、以下、フィラメント糸の各単糸を紡出する吐出孔を紡糸口金に円周状に配列するさまを、環状に配列、また、円筒状の気流吹き出し面を、環状の気流吹き出し面と称する。また、以下、フィラメント糸をフィラメント糸の走行経路の内周側から外向きに気流を吹き付けて冷却する手段を外吹き環状冷却手段、フィラメント糸をフィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに気流を吹き付けて冷却する手段を内吹き環状冷却手段と呼び、更に、これら冷却手段を総称して環状冷却手段と呼ぶこととする。これら環状冷却手段は、フィラメント糸の走行経路の内周側あるいは外周側からの気流で、全円周にわたってフィラメント糸を冷却できるため、ユニフロ冷却手段に対し、冷却斑や糸揺れ等の抑制が期待できるポテンシャルの高い手段であると考えられる。
しかしながら、本発明者らの知見によれば、外吹き環状冷却手段は、環状に配列されたフィラメント糸の各単糸を、フィラメント糸の走行経路の内周側から外向きに気流を吹き付けて冷却するため、気流はフィラメント糸の外周側に向かって流路が拡大して減速されるため、冷却能力が比較的低く、多品種対応等の汎用性に課題があった。また、上記した様に気流が外周側に向かって減速され、且つフィラメント糸の走行経路の外周側が開放されているため、ユニフロ冷却手段と同様に現場雰囲気の外乱を受け易い問題もあった。更には、環状に配列されたフィラメント糸の内周側に気流吹き出し面を配設するため、特に糸掛け作業性等の操作性にも課題があった。
これに対し、本発明者らの知見によれば、内吹き環状冷却手段は、環状に配列されたフィラメント糸の各単糸を、フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに気流を吹き付けて冷却するため、気流はフィラメント糸の内周側に向かって流路が縮小して増速されるため、冷却能力が高く、多品種対応等の汎用性にも優れる。また、フィラメント糸の走行経路の外周側に気流吹き出し面を配設するため、フィラメント糸は現場雰囲気の外乱を受け難い。更には、糸掛け作業性等の作業性も良好である。従って、内吹き環状冷却手段は、均一冷却、冷却能力、汎用性等に優れたポテンシャルの高い冷却手段と考えられるのである。
(2)冷却開始距離について
冷却条件については、例えば、単糸細繊度化した際には、フィラメント糸の各単糸が紡糸口金の近傍で固化してしまうため、溶融紡糸で実施される冷却を、紡糸口金に近付けて行わないと、即ち、フィラメント糸を紡出する紡糸口金のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面(以下、これを紡糸口金の下面と呼ぶこととする)から冷却手段の気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端までの距離を短縮しないと、糸揺れ等が発生し、糸の太さ斑等が極めて悪化し、毛羽・糸切れを頻発する様になることが知られている。なお、以下、紡糸口金の下面から冷却手段の気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端までの距離を冷却開始距離、また、冷却手段の気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端の紡糸口金の下面からの位置を冷却開始位置と呼ぶこととする。また、冷却手段の気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端を気流吹き出し面の上端と呼ぶこととする。
しかしながら、冷却開始距離を短縮するに際し、本発明者らの知見によれば、次の様な問題があった。一般に、フィラメント糸を紡出する紡糸口金は、紡糸口金の支持や保持あるいはシール等の目的で、紡糸口金の外縁部で、紡糸パック、スピンブロックやそれらの部材あるいはそれらに接続されるその他の部材等により支持される。あるいは、紡糸パックが、紡糸パックの支持・保持あるいはシール等の目的で、紡糸パックの外縁部で、スピンブロックやその部材あるいはそれらに接続されるその他の部材等により支持される場合もある。以下、上記した様な紡糸口金あるいは紡糸パックを支持する部材を総称して支持部材と呼ぶこととする。これら支持部材は、その目的が支持・保持あるいはシール等であるため、一般に、多くの場合において、紡糸口金の下面より、フィラメント糸の走行経路方向の下流側へ突き出して、紡糸口金を取り囲む様に設けられるが、これが冷却開始距離の短縮の大きな障害となっていた。即ち、フィラメント糸を紡出する紡糸口金の下面が、フィラメント糸の走行経路方向の下流側で支持部材により取り囲まれるため、冷却手段の気流吹き出し面の上端を、紡糸口金の下面に近接させて配設すること、つまりは冷却開始距離を短縮することを非常に困難なものとしていた。多くの場合において、支持部材は、紡糸口金の下面よりフィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって十数mmから数十mm突き出して、紡糸口金を取り囲む様に設けられるが、これが制約となって、冷却開始距離の短縮を非常に難しいものとしていた。
そこで、本発明者らの知見によれば、この問題を解決するため、従来、次の2つの方法が提案されている。第1の方法は、紡糸口金の下面を、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、突き出す方法である。第2の方法は、冷却の気流を内側上向きに吹き付ける方法である。
第1の方法については、例えば、特許文献1の図示が一例として挙げられる。図13は、特許文献1に記載の図3を示した、従来の溶融紡糸の構成の一例を概略的に示した図である。図13において、1は紡糸口金、2は紡糸パック、11はフィラメント糸(なお、上記1、2、11は、特許文献1において、“紡績ノズル”、“紡績ヘッド”、“糸”と記載されているが、本明細書では、それぞれ紡糸口金、紡糸パック、フィラメント糸と呼ぶこととする)、101は溶融物導管、102は冷却領域、103は上方の冷却シャフト、104はテンション領域、105は下方の冷却シャフト、106はフィラメント、107はガス透過性の側壁、108は加熱装置、109は制御装置、110は管、111はデフューザ、112はコンデンサ、113.1、113.2は入口開口、114は加速区間、115は準備装置、116は吹き付け室、117は送風機、118は測定装置である。
第1の方法は、例えば、図13に示す様に、紡糸口金の下面を、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、突き出す方法であり、本発明者らの知見によれば、紡糸口金の下面をフィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって突き出すことで、支持部材の制約を受けることなく、冷却開始距離の短縮を図ったものと考えられる。
しかしながら、本発明者らの知見によれば、紡糸口金の下面をフィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって突き出すため、紡糸口金が冷え易く、特に雰囲気内に露出した紡糸口金の下面の外縁部が、雰囲気の影響や冷却の気流の影響を受けて、局所的に冷され易い。そのため、フィラメント糸の内、紡糸口金の下面の外縁部付近の単糸と外縁部から離れた位置の単糸とで極めて品質等の差を生じ易く、フィラメント糸として極めて品質等の斑の大きい、均斉性の劣ったものとなる問題があった。また、その斑が欠陥となって、強度・伸度等の品質劣化を引き起こす問題があった。更に、紡糸口金の下面の外縁部が局所的に冷されるため、フィラメント糸の内、特に紡糸口金の下面の外縁部付近の単糸において、吐出不良の発生や、紡出後の単糸の細化変形が不安定になる等して、糸切れ等が発生し、製糸性が悪化する問題があった。
第2の方法については、例えば、特許文献2に記載の方法が一例として挙げられる。図14は、特許文献2に記載の第2図を示した、従来の溶融紡糸の構成の一例を示した説明図である。図14において、1は紡糸口金、2は紡糸パック、3はスピンブロック、11はフィラメント糸(なお、上記2、3、11は、特許文献2において、“紡糸口金パック”、“紡糸頭”、“糸条”と記載されているが、本明細書では、それぞれ、紡糸パック、スピンブロック、フィラメント糸と呼ぶこととする)、201は溶融重合体、202はカラム、203は油剤付与手段(オイリングロール)、204は引取りロール、205は巻取機、206は遮熱板、207は送風器、208は集束器具である。
特許文献2に記載の方法は、図14に関連する特許文献2の請求項1から6の発明の内、気流の方向に関する記載のみを抜粋して示せば、請求項1に記載の発明によれば、“冷却風を紡糸口金の下面(なお、特許文献2においては、“紡糸口金面”と記載されているが、本明細書では、紡糸口金の下面と呼ぶこととする)に吹き付ける”、請求項2に記載の発明によれば、“紡糸口金下10cm以内の吐出糸条の周囲方向からまたは吐出糸条を挟んで両側方向から水平面に対して5°〜85°内側上向きに冷却風を吹き付ける”、請求項3に記載の発明によれば、“冷却風吹き付け方向が水平面に対して55°〜80°内側上向きである”方法であり、総じて、冷却の気流を内側上向きに吹き付ける方法である。また、本発明者らの知見によれば、冷却の気流を内側上向きに吹き付けることで、支持部材の制約を受けることなく、間接的に冷却開始距離の短縮を図ったものと考えられる。
しかしながら、本発明者らの知見によれば、単に冷却の気流を内側上向きに吹き付けるだけでは、仮に整流して吹き出されたとしても、冷却の気流は、紡糸口金の下面や紡糸口金近傍の紡出直後のフィラメント糸に到達するまでに、フィラメント糸の随伴流や途中の紡糸パック等の空気抵抗等の影響を受けて乱れ、紡糸口金近傍の気流が乱れて糸揺れが発生したり、冷却が不均一になったりする等して、糸の太さ斑や品質斑等を引き起こす問題があった。また、その斑が欠陥となって、強度・伸度等の品質劣化や糸切れ等を引き起こす問題があった。更に、冷却風を紡糸口金の下面に吹き付けたり、水平面に対して5°〜85°あるいは55°〜80°内側上向きに吹き付けたりすることは、一般の溶融紡糸装置の大きさ等から推測して、多くの場合において、フィラメント糸に、フィラメント糸の走行方向と逆行する冷却風を吹き付けることとなる。そのため、フィラメント糸の空気抵抗が増加し、フィラメント糸の分子配向が促進される等して、フィラメント糸として、強度・伸度等の品質ポテンシャルの低いものとなる問題があった。なお、特許文献2と同様に、冷却の気流を内側上向きに吹き付ける方法として、特許文献3、4に記載の装置を挙げることができる。
以上の様に、溶融紡糸で実施される冷却は、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性向上や、強度・伸度等の品質向上、品位向上、生産性向上の上で、極めて重要な要素であるが、上記した様に、特に冷却開始距離の問題が残されており、難紡糸品種製造の大きな妨げとなっていた。従って、上記した冷却開始距離の問題を解決することは、工業上、極めて重要な意味を有するのである。
特開2001−81625号公報
特公昭62−35481号公報
特公昭63−17921号公報
特公昭62−50566号公報
以下、本発明の最良の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細を説明する。
図1は本実施形態の好ましい溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図である。また、図2〜図4は本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図1において点線で囲まれた紡糸口金周辺の領域を凡そ拡大した図となっている。図2は本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、図3は本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の別の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、図4は本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の更に別の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図2は気流吹き出し面の上端を、支持部材のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面に配設した場合の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、図3は図2よりも気流吹き出し面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に配設した場合の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、図4は図3よりも気流吹き出し面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の更に上流側に配設した場合の一例を模式的に例示した縦断面の概略図である。また、図2〜図4には、太線で囲まれた紡糸口金の更に近傍の領域の、更なる拡大図も付記した。
図1〜図4において、1は紡糸口金、2は紡糸パック、3は支持部材(図中の斜線部)、4はスピンブロック、5は環状の気流吹き出し面(気流吹き出し部の気流が吹き出されるフィラメント糸側の面)、6は気流吹き出し部(図中でフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の線で塗り潰された部分)、7は内吹き環状冷却手段、8は気流室、9は気流供給口、10は気流吹き出し面から吹き出される気流、11はフィラメント糸、12は糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段、13は糸引取手段、14は糸巻取手段である。また、領域Hは、図中で塗り潰された領域であり、紡糸口金の外縁部で紡糸口金を支持する支持部材の、フィラメント糸の走行経路を囲う内側面H1(以下、支持部材の内側面と称する)、支持部材のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面H2(以下支持部材の下端面と称する)、紡糸口金のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面である紡糸口金の下面H3とで囲まれた領域である。なお、領域Hは、領域Hを囲む各面を含む。また、Tは気流吹き出し面の上端、QTDは冷却開始距離である。
また、図2〜図4において、点線で囲まれた領域Uは、支持部材の内側面H1、紡糸口金の下面H3、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面や、後述する内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の部材の、フィラメント糸の走行経路を囲う内側面(以下、内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の部材を内吹き環状冷却手段の上流側部材、また、内吹き環状冷却手段の上流側部材のフィラメント糸の走行経路を囲う内側面を内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面と称する)や、上記内吹き環状冷却手段の上流側部材のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の面(以下、内吹き環状冷却手段の上流側部材の上流側面と称する)、あるいは後述する整流部材のフィラメント糸の走行経路を囲う内側面(以下、整流部材の内側面と称する)等で囲まれた領域であり、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域である。なお、領域Uは、領域Uを囲む、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面以外の各面を含む。また、図2〜図4における拡大図において、点線で囲まれた領域U1、U2、U3は、領域Uの一部の領域であり、領域U1は、気流吹き出し面の上端Tを通り、気流吹き出し面の上端Tよりフィラメント糸の走行経路方向の上流側でフィラメント糸の走行経路の外周側を囲う様に、フィラメント糸の走行経路方向に平行に設けられた面UB1、支持部材の内側面H1、紡糸口金の下面H3、後述する内吹き環状冷却手段の上流側部材の上流側面や、上記内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面等で囲まれた領域であり、面UB1よりフィラメント糸の走行経路からみて外周側の領域Uの一部の領域である。領域U2は、フィラメント糸の走行経路からみて最外周を走行する単糸の走行経路を通り、フィラメント糸の走行経路を外側から囲うフィラメント糸の走行経路の最外周面(以下、フィラメント糸の走行経路の最外周面と称する)と紡糸口金の下面H3が交差する交差線と気流吹き出し面の上端Tを通り、気流吹き出し面の上端Tよりフィラメント糸の走行経路方向の上流側でフィラメント糸の走行経路の外周側を囲う様に設けられた面UB2、上記した面UB1、紡糸口金の下面H3、後述する内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面や、上記内吹き環状冷却手段の上流側部材の上流側面等で囲まれた領域である。領域U3は、フィラメント糸の走行経路の最外周面、上記した面UB2、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面、後述する内吹き環状冷却手段の上流側部材の内側面や、上記内吹き環状冷却手段の上流側部材の上流側面等で囲まれた領域である。なお、領域U1、領域U2、領域U3は、それぞれの領域を囲む、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面以外の各面を含む。また、Jは内吹き環状冷却手段の上流側部材(図2〜図4における拡大図において、実線楕円で囲まれた内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の部材)である。なお、面UB1、面UB2は、図2〜図4における拡大図において、二点鎖線で示されている。
図1において、フィラメント糸11は、紡糸口金1から紡出され、気流供給口9、気流室8、気流吹き出し部6を経て、気流吹き出し面5から吹き出された気流10により冷却されて、固化した後、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段12、糸引取手段13を経て、糸巻取手段14により巻き取られる。また、巻き取られたフィラメント糸11は、この後、必要に応じ、図示しない別工程において熱処理や延伸等の処理が施される。
なお、図1において、フィラメント糸を構成する熱可塑性ポリマーを供給する押出機やポンプ、フィルター配管等や、紡糸口金に穿設される吐出孔等の図示をしていないが、無論、設けられても良い。また、紡糸パックを加熱・保温する紡糸パック加熱器や断熱部材、保温部材等や、気流を供給するファンやブロワ等の気流発生手段、気流配管、気流フィルター、気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向等やそれらの分布等の気流調整手段等の図示をしていないが、設けられても良い。また、図2〜図4でも、図1と同様に、フィラメント糸を構成する熱可塑性ポリマーを供給する押出機等を図示していないが、設けられても良い。なお、図2〜図4においては、内吹き環状冷却手段の全体図示等を省略している。また、一般に溶融紡糸において、現場雰囲気等の外乱影響を防止する等の狙いから、紡糸パック、スピンブロック、冷却手段や、フィラメント糸の高強力化等を狙って徐冷等の目的で設けられる加熱装置や加熱筒、保温筒等の周辺でシールが行われる場合が多いが、これも図1〜図4では図示をしていないが、行われても良い。
また、図1〜図4において、図示されていない断熱部材や保温部材、加熱部材や冷却部材、加熱手段や冷却手段、温度等の計測手段、加熱装置や加熱筒、保温筒等、糸交絡手段や、加熱ローラーや加熱チューブ等の糸加熱手段、糸加湿手段、糸リラックス手段、糸道ダクト、延伸ローラー等の糸延伸手段、サクションガン等の糸吸引手段、フィラメント糸を気流で送り出す糸送出手段、コンベヤ等の糸搬送手段、冷却手段を移動させる移動手段等や、あるいはフィラメント糸から発生するモノマー等による紡糸口金の下面の汚れを抑制する狙いで希ガス、窒素等の不活性気体やスチーム、空気、水分を含む空気等を紡糸口金の下面近傍に供給するモノマー抑制手段や、モノマー等を吸引除去するモノマー吸引手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても良い。また、更に、ユニフロ冷却手段、内吹き環状冷却手段、外吹き環状冷却手段等の冷却手段や、言わば、ユニフロ冷却手段、内吹き環状冷却手段、外吹き環状冷却手段等の冷却手段を気流吹き出しではなく、気流吸引に用いた様な吸引手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても良い。なお、本実施形態において、固化とは、熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸やその各単糸がガラス転移温度以下となった状態を示すものとする。
では、本実施形態の第1の重要な実施形態について説明する。本実施形態の第1の重要な実施形態は、例えば、図1〜図4に示す様に、溶融した熱可塑性ポリマーをフィラメント糸として紡出する紡糸口金と、前記紡糸口金の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面(紡糸口金の下面H3)より前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側へ突き出し前記紡糸口金の外縁部を取り囲むようにして前記紡糸口金を支持する支持部材と、前記フィラメント糸の走行経路の外周側から内向きに気流を吹き付けてフィラメント糸を冷却する環状の気流吹き出し面を設けた内吹き環状冷却手段とを有するフィラメント糸の製造装置であって、前記気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端(気流吹き出し面の上端T)を、前記紡糸口金の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面(紡糸口金の下面H3)と、前記支持部材の前記フィラメント糸の走行経路を囲う内周面(支持部材の内側面H1)と、前記支持部材の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端を通る前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な面(支持部材の下端面H2)とで囲まれた領域(領域H)内に配設することを特徴とするフィラメント糸の製造装置である。この様に、冷却手段に均一冷却、冷却能力、汎用性等に優れたポテンシャルの高い内吹き環状冷却手段を採用し、更に、内吹き環状冷却手段の環状の気流吹き出し面の上端Tを、支持部材の内側面H1と、支持部材の下端面H2と、紡糸口金の下面H3とで囲まれた領域H内に配設することで、支持部材3に制約されることなく、冷却開始距離QTDを短縮することができ、特に、紡糸口金1の近傍で固化してしまう難紡糸フィラメント糸の均一且つ充分な冷却を実現でき、難紡糸フィラメント糸の糸の太さ斑や品質斑等の均斉性向上、強度・伸度等の品質向上、毛羽等の品位の向上、生産性の向上等を図ることができる。
この本実施形態による冷却開始距離の短縮の意義・効果について、フィラメント糸の変形挙動の観点と、紡糸口金の近傍に形成される流れや紡糸口金の近傍の空間の観点から説明する。先ず、フィラメント糸の変形挙動の観点から説明する。図10(a)〜図10(d)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金から紡出される難紡糸フィラメント糸の各単糸の糸速度V、糸ひずみ速度dV/dX(糸速度Vの紡糸口金の下面からフィラメント糸の走行経路方向に沿っての距離Xに対する変化を示し、紡糸口金の下面からフィラメント糸の走行経路方向に沿っての距離Xに対する糸変形速度と言うこともできる)、糸温度Tp、糸径Dの紡糸口金の下面からフィラメント糸の走行経路方向に沿っての変化の形態の一例を模式的に例示した概念図である。図10(a)〜図10(d)において、横軸は紡糸口金の下面からの距離(紡糸口金の下面からフィラメント糸の走行経路方向に沿っての距離)X、縦軸は糸速度V、糸ひずみ速度dV/dX、糸温度Tp、糸径Dをそれぞれ示し、図中の曲線がそれぞれ紡糸口金の下面からフィラメント糸の走行経路方向に沿っての各単糸の糸速度V、糸ひずみ速度dV/dX、糸温度Tp、糸径Dの変化を示す。また、QTPは冷却開始位置、H2は支持部材の下端面を示し、図中でQTP、H2の指し示す各線は図中でのそれらの位置を示している。また、図中で領域U(図中において点線で囲まれた領域)、領域H(図中で塗り潰された領域)の指し示す領域は図中でそれらの領域を概念的に示している。また、上記した様に、領域Uは気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域であり、また一方、図中で冷却開始位置QTPの指し示す線を含むその線より図中で右側の領域は気流吹き出し面から直接気流供給を受け易い領域を示している。また、QTDは冷却開始距離、QLは気流が吹き出される気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向の長さを示す。更に、図10(b)中の黒丸で示されるMTPは、糸ひずみ速度が最大となる点であり、また、フィラメント糸の走行経路方向の糸変形速度が最大となる点であり、細化が最も急激に行われる点でもある。これを以下、最大細化点と呼ぶこととする。
図10(a)〜図10(d)に示す様に、紡糸口金から紡出されたフィラメント糸の各単糸は、冷却手段の気流等により冷却の作用を受けて熱を奪われて、定められた糸径まで細化しつつ、固化が完了するまで糸速度を増速し続け、固化が完了すると形状が決定され、定められた糸速度に到達する。この細化の過程でフィラメント糸の各単糸は細化しつつ、糸速度を増速し続け、フィラメント糸の各単糸廻りに随伴流が形成されるが、特に、フィラメント糸の各単糸が最大細化点の周辺で急激に細化し、また、急激に糸速度が増加するため、フィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺からフィラメント糸の各単糸廻りに急激に、随伴流が形成され始める。なお、フィラメント糸の各単糸が最大細化点周辺で急激に細化し、また、急激に糸速度が増加するので、フィラメント糸の各単糸廻りに最大細化点周辺から急激に形成され始める随伴流は、最大細化点周辺よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、未だ最大細化前で細化も緩やかで、糸速度も充分発達していないフィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流と比べ、その流速も大きく、また、流速の大きい領域も大きくなる。ここで、難紡糸フィラメント糸、例えば、単糸細繊度化・多フィラメント化されたフィラメント糸では、フィラメント糸としての総繊度が同一の単糸細繊度化・多フィラメント化されていない汎用フィラメント糸に対し、単糸細繊度化に伴い各単糸の単糸1本当りの熱可塑性ポリマーの吐出量である単糸吐出量が小さくなるため、各単糸の紡出時の熱量は小さくなり、熱が奪われ易く、汎用フィラメント糸よりも紡糸口金の近傍で各単糸は急激に細化、糸速度が急激に増加し、紡糸口金の近傍のフィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺から各単糸廻りに急激に、随伴流が形成され始める。なお、更に多フィラメント化もされているので、汎用フィラメント糸に対し、随伴流の規模も大きくなる。また、単糸異形断面化されたフィラメント糸では、フィラメント糸としての総繊度と単糸繊度、単糸数が同一の単糸異形断面化されていない丸断面単糸からなる汎用フィラメント糸に対し、各単糸の単糸断面の周長、つまり、表面積が大きくなるため、熱が奪われ易く、また、表面積が大きくなることから空気抵抗を受け易く、上記した単糸細繊度化・多フィラメント化されたフィラメント糸と同様に、汎用フィラメント糸よりも紡糸口金の近傍で各単糸は急激に細化、糸速度が急激に増加し、紡糸口金の近傍のフィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺から各単糸廻りに急激に、随伴流が形成され始める。また、単糸異形断面化されたフィラメント糸では、フィラメント糸としての総繊度と単糸繊度、単糸数が同一の単糸異形断面化されていない丸断面単糸からなる汎用フィラメント糸に対し、各単糸の単糸吐出量が同一にも関わらず、表面積が大きくなるため、随伴流の規模も大きくなる。また、熱可塑性ポリマーが改質されたフィラメント糸や、ガラス転移温度が高い等の特殊な熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸等では、汎用の熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸としての総繊度と単糸繊度、単糸数が同一の汎用フィラメント糸に対して、熱可塑性ポリマーの溶融粘度や温度に対する溶融粘度の変化が大きい等の理由から、上記した単糸細繊度化・多フィラメント化されたフィラメント糸や単糸異形断面化されたフィラメント糸等と同様に、汎用フィラメント糸よりも紡糸口金の近傍で各単糸は急激に細化、糸速度が急激に増加し、紡糸口金の近傍のフィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺から各単糸廻りに急激に、随伴流が形成され始める。更に、単糸細繊度化・多フィラメント化や単糸異形断面化、あるいは熱可塑性ポリマーの改質等が組み合わされたフィラメント糸では、そうではない汎用フィラメント糸よりも紡糸口金の極めて近傍で各単糸は極めて急激に細化、糸速度が極めて急激に増加し、紡糸口金の極めて近傍のフィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺から各単糸廻りに極めて急激に、随伴流が形成され始める。また、上記同様に多フィラメント化や単糸異形断面化等が行われた場合は、そうではない汎用フィラメント糸に対し、随伴流の規模も大きくなる。なお、上記した難紡糸フィラメント糸と汎用フィラメント糸との細化変形の違いに関する記載は、難紡糸フィラメント糸と汎用フィラメント糸が、溶融紡糸工程において、紡糸口金から紡出され、細化、固化の後に到達する定められた糸速度が同程度の前提で記載している。
しかしながら、従来の技術では、支持部材が大きな障害となって、気流吹き出し面の上端を紡糸口金の下面に充分近接させて配設すること、つまり、冷却開始距離を充分に短縮することができない。そのため、紡糸口金の近傍で各単糸が急激に細化、固化してしまう難紡糸フィラメント糸に対して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面を配設できず、多くの気流供給を必要とする領域を網羅して各単糸に気流吹き出し面から直接充分な気流を供給することができない。この結果、気流吹き出し面の上端よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域において、フィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺から各単糸廻りに急激に随伴流が形成され始めてしまう。なお、この随伴流は、上記した様に、多フィラメント化や単糸異形断面化等が行われた場合は、汎用フィラメント糸に対して、その規模も大きくなる。そして、この随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって極めて大きな上昇流が形成され、また、それが後述する様に、フィラメント糸の走行経路の最内周面(フィラメント糸の走行経路からみて最内周を走行する単糸の走行経路を通り、フィラメント糸の走行経路を内側から囲う面)の内側のフィラメント糸の非走行領域のみならず、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域やフィラメント糸の走行領域等にも大きく形成されて、それがフィラメント糸の走行方向と逆行する方向の流れとなる等して気流が大きく乱れ、大きな糸揺れが発生し、糸の太さ斑等が極めて悪化するのである。
これを、図10(b)を用いて説明すれば、従来の技術では、支持部材が障害となって、紡糸口金の下面に近接させて、支持部材の下端面H2やH2よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側(図中でH2よりも左側)に冷却開始位置QTPを配設すること、つまり、冷却開始位置QTDを充分に短縮することができない。そのため、図10(b)の様に支持部材の下端面H2よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側(図中でH2よりも左側)の紡糸口金の近傍で各単糸が急激に細化、最大細化してしまう難紡糸フィラメント糸に対して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点MTP周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面を配設できず、つまり、図10(b)で言えば、冷却開始位置QTPを最大細化点MTPよりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側(図中では最大細化点MTPよりも左側)に配設して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点MTP周辺の領域を気流吹き出し面から直接気流供給を受け易い領域内に充分入れることができず(図10(b)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金から紡出される難紡糸フィラメント糸の各単糸の糸ひずみ速度の紡糸口金の下面からフィラメント糸の走行経路方向に沿っての変化の形態の一例を模式的に例示したものであり、冷却開始位置QTPを最大細化点MTPよりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側に配設できているが、従来の技術では、支持部材が障害となって、支持部材の下端面H2やH2よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側に、また、最大細化点MTPよりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側に、冷却開始位置QTPを配設できず、多くの気流供給を必要とする最大細化点MTP周辺の領域を気流吹き出し面から直接気流供給を受け易い領域内に充分入れることができない)、多くの気流供給を必要とする領域を網羅して各単糸に気流吹き出し面から直接充分な気流を供給することができない。この結果、気流吹き出し面の上端よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域において、フィラメント糸の各単糸の最大細化点MTP周辺から各単糸廻りに急激に随伴流が形成され始め、そしてこの随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって極めて大きな上昇流が形成されて、上記した様に気流が大きく乱れて、大きな糸揺れが発生し、糸の太さ斑等が極めて悪化するのである。
なお、一般に溶融紡糸において、現場雰囲気等の外乱影響を防止する等の狙いから、紡糸パックやスピンブロック、冷却手段等(徐冷等の目的で加熱装置や加熱筒、保温筒等が設けられる場合は、それらについても)の周辺でシールが行われて、フィラメント糸の走行領域やその周辺の領域に冷却手段等からの気流以外の、例えば、外気等が流入することを防止する措置が行われる場合が多い。そのため、溶融紡糸に内吹き環状冷却手段を用いる場合、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の紡糸口金の近傍の領域、空間は、気流吹き出し面を通じて、内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向の下流側が開放されてはいるものの、一種の密閉系となる。従って、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の紡糸口金の近傍の領域、空間から、フィラメント糸の各単糸が摩擦等によりフィラメント糸の走行経路方向の下流側に持ち出す気流、即ち随伴流に相当する気流が、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の紡糸口金の近傍の領域、空間に供給されなければ、気流の出入りが合わないこととなる。よって、何らかの形、主には内吹き環状冷却手段の気流吹き出し面から吹き出される気流が直接あるいはフィラメント糸の各単糸を通過した後に、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって上昇する形で、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の紡糸口金の近傍の領域、空間に供給されることとなる。
一方、本実施形態では、支持部材に制約されることなく、気流吹き出し面の上端を紡糸口金の下面に充分近接させて配設すること、つまり、冷却開始距離を充分に短縮することができる。そのため、紡糸口金の近傍で各単糸が急激に細化、固化してしまう難紡糸フィラメント糸に対して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面を配設でき、多くの気流供給を必要とする領域を網羅して各単糸に気流吹き出し面から直接充分な気流を供給することができる。また、フィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面を配設できるので、気流吹き出し面の上端よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域における、フィラメント糸の各単糸の細化変形は、未だ最大細化前で細化も緩やかであり、また、糸速度も充分発達していない状態となる。これらの結果、気流吹き出し面の上端よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域において、フィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流は、その流速も極めて小さく、また、流速の大きい領域も極めて小さくなる。そして、この随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流も極めて小さく抑制され、また、それがフィラメント糸の走行領域やフィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域等に形成され難くなり、気流の乱れや糸揺れ等が極めて抑制されて、糸の太さ斑等の均斉性等が極めて向上するのである。
これを、図10(b)を用いて説明すれば、本実施形態では、支持部材に制約されることなく、紡糸口金の下面に近接させて、支持部材の下端面H2やH2よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側(図中でH2よりも左側)に冷却開始位置QTPを配設すること、つまり、冷却開始位置QTDを充分に短縮することができる。そのため、図10(b)の様に支持部材の下端面H2よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側(図中でH2よりも左側)の紡糸口金の近傍で各単糸が急激に細化、最大細化してしまう難紡糸フィラメント糸に対して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点MTP周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面を配設でき、つまり、図10(b)の様に冷却開始位置QTPを最大細化点MTPよりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側(図中では最大細化点MTPよりも左側)に配設して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点MTP周辺の領域を気流吹き出し面から直接気流供給を受け易い領域内に充分入れることができ、多くの気流供給を必要とする領域を網羅して各単糸に気流吹き出し面から直接充分な気流を供給することができる。また、フィラメント糸の各単糸の最大細化点MTP周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面を配設できるので、気流吹き出し面の上端、冷却開始位置QTPよりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域Uにおける、フィラメント糸の各単糸の細化変形は、未だ最大細化前で細化も緩やかであり、また、糸速度も充分発達していない状態となる。これらの結果、気流吹き出し面の上端、冷却開始位置QTPよりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域Uにおいて、フィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流は、その流速も極めて小さく、また、流速の大きい領域も極めて小さくなる。そして、この随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流も極めて小さく抑制され、上記した様に気流の乱れや糸揺れ等が極めて抑制されて、糸の太さ斑等の均斉性等が極めて向上するのである。
また、本実施形態では、支持部材に制約されることなく、気流吹き出し面の上端を紡糸口金の下面に充分近接させて配設すること、つまり、冷却開始距離を充分に短縮することができ、紡糸口金の近傍で各単糸が急激に細化、最大細化してしまう難紡糸フィラメント糸に対して、その各単糸が急激に細化し、随伴流が急激に形成され始めて、多くの気流供給を必要とし、また、糸速度が急激に増加するので、そもそも周辺の気流が乱れ易く、また、気流の乱れ等の外乱等の影響を受け易く、更に、外乱等の影響を受けて乱れ易い、繊細且つ敏感で、気流整流化を必要とする最大細化点周辺の領域を、充分網羅して、その流速や流量、温度等が調整、制御あるいは管理等されて整流された気流が、積極的に、能動的に吹き出される気流吹き出し面を配設でき、言い換えれば、最大細化点周辺の領域を、気流吹き出し面からの整流された気流が直接供給され易い領域内に充分入れることができ、多くの気流供給を必要とすると共に、気流の乱れ等の外乱等の影響で乱れ易く、気流の整流化を必要とする各単糸の最大細化点周辺の領域に、気流吹き出し面からの充分な直接気流供給を実現すると共に、充分な気流整流化をも実現できるという意義・効果をも有する。なお、気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向、動圧、静圧、全圧等やそれらの分布等は、フィラメント糸の均斉性や品質、品位、生産性等の維持、向上や管理等の目的で、一般に調整、制御あるいは管理されることが多い。また、フィラメント糸の品種により、調整、制御あるいは管理されることも多い。
次に、この本実施形態による冷却開始距離の短縮の意義・効果について、紡糸口金の近傍に形成される流れや紡糸口金の近傍の空間の観点から説明する。図11(a)は本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図であり、図4に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例の縦断面の概略図に対応した紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図となっている。また、図12(a)〜図12(c)は従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図であり、本実施形態の様に気流吹き出し面の上端Tを領域H内に配設しない従来の紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例で、気流吹き出し面の上端Tを領域Hの領域外の領域Hよりもフィラメント糸の走行経路方向の下流側に配設した従来の紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に対応した従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図となっている。また、図12(a)は従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図であり、図12(b)は従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の別の一例を模式的に例示した縦断面の概念図であり、図12(a)よりも紡糸口金から紡出されるフィラメント糸の単糸数、あるいはフィラメント糸の各単糸を紡出する吐出孔を紡糸口金に穿設、配列する際の配列数等を増加させた際等に従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図である。また、図12(c)は従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の更に別の一例を模式的に例示した縦断面の概念図であり、図12(b)よりも気流吹き出し面の上端Tをフィラメント糸の走行経路方向の下流側に配設した従来の紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例において、図12(a)、図12(b)よりも、例えば、フィラメント糸の各単糸の単糸吐出量がやや大きくなる等して、図12(a)、図12(b)よりもフィラメント糸の各単糸の細化変形がやや緩やかな場合等に従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図である。また、図11(a)、図12(a)〜図12(c)における矢印付きの各線は各図において形成される気流の流れの方向を示したものであり(矢印がその方向を示す)、各線上の各点での気流の速度ベクトルの方向が各点での各線の接線方向とほぼ一致する様に各線を示している。
図11(a)、図12(a)〜図12(c)において、B1はフィラメント糸の走行経路の最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域に、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流であり、従来の気流吹き出し面の上端Tを領域Hの領域外の領域Hよりもフィラメント糸の走行経路方向の下流側に配設する紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成に対応した従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例においては、フィラメント糸の走行経路の最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域のみならず、フィラメント糸の走行経路の最内周面や最内周面より外側のフィラメント糸の走行領域にもフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、フィラメント糸の走行方向と逆行して形成される場合がある上昇流である。また、B2はフィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、フィラメント糸の走行方向と逆行する方向に形成される上昇流であり、従来の気流吹き出し面の上端Tを領域Hの領域外の領域Hよりもフィラメント糸の走行経路方向の下流側に配設する紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成に対応した従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例において形成される上昇流である。また、E0は紡糸口金の近傍に形成される渦であり、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に対応した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例において形成される渦である。また、E1は紡糸口金の近傍に形成される場合がある渦であり、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に対応した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例において形成される場合がある渦である。また、E3、E4は紡糸口金の近傍に形成される渦であり、気流吹き出し面の上端Tを領域Hの領域外の領域Hよりもフィラメント糸の走行経路方向の下流側に配設する従来の紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例において、フィラメント糸の各単糸の細化変形がやや緩やかな場合等に従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例において形成される渦である。なお、これ以外の図11(a)、図12(a)〜図12(c)における各記号は図1〜図4に準ずる。また、図11(a)、図12(a)〜図12(c)においては、流れの形態を判り易く図示するため、図1〜図4等では示した部位や領域、面等や、記号等の図示を一部省略している。また、図11(b)〜図11(d)については、本実施形態の別の重要な実施形態の説明において後述する。
では、従来の技術の問題点について、図12(a)〜図12(c)等を用いて、紡糸口金の近傍に形成される流れや紡糸口金の近傍の空間の観点から説明する。従来の技術では、支持部材が大きな障害となって、気流吹き出し面の上端を紡糸口金の下面に充分近接させて配設すること、つまり、図12(a)〜図12(c)の様に気流吹き出し面Tを領域H内に配設できず、冷却開始距離QTDを充分に短縮することができない。そのため、紡糸口金の近傍で各単糸が急激に細化、固化してしまう、例えば、図12(a)〜図12(c)で言えば、支持部材3の下端面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の紡糸口金1の近傍で各単糸が急激に細化、最大細化してしまう難紡糸フィラメント糸に対して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面5を配設できず、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点周辺の領域を、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け易い気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面を含むこの面よりフィラメント糸の走行経路方向の下流側の気流吹き出し面5の領域内に充分入れて、各単糸に気流吹き出し面から直接充分な気流を供給することができない。更に、冷却開始距離QTDを充分に短縮することができないので、図12(a)〜図12(c)で言えば、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域(図2〜図4で言えば、領域Uに相当する領域)、空間が大きくなり、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出すことが可能な空間は大きくなり、また、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出す際に影響が及ぶ空間は大きくなる。これらの結果、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域、空間において、その領域、空間が大きくなることも悪影響を及ぼして、フィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺から各単糸廻りに急激に、流速も大きく、また流速の大きい領域も大きな随伴流が形成され始める。そして、この随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって極めて大きな上昇流が形成され、また、それがフィラメント糸の走行経路の最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域のみならず、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に形成されたり(例えば、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B2)、フィラメント糸の走行領域に形成されたり(例えば、図12(b)で言えば、上昇流B1。フィラメント糸11の走行領域と上昇流B1の一部が重なり、フィラメント糸11の走行領域の一部でフィラメント糸の走行方向と逆行する上昇流が形成されている)、あるいは紡糸口金の近傍のフィラメント糸の走行領域やその周辺の領域に亘って複数の渦が形成されてフィラメント糸の走行領域の彼方此方に上昇流が形成されたりして(例えば、図12(c)で言えば、紡糸口金の近傍に形成される渦E3やE4。紡糸口金1の近傍のフィラメント糸11の走行領域やその周辺の領域に亘って渦E3や渦E4等の複数の渦が形成されて、フィラメント糸11の走行領域やその周辺の領域の彼方此方にフィラメント糸の走行方向と逆行する上昇流が形成されている)、それらがフィラメント糸の走行方向と逆行する流れとなる等の理由から、気流が大きく乱れ、大きな糸揺れ等が発生して、糸の太さ斑等が極めて悪化するのである。また、特にその気流乱れ等が、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、フィラメント糸の各単糸が急激に細化し、随伴流が急激に形成され始めて、気流が乱れ易く、また、気流の乱れ等の外乱等の影響を受け易く、更に、外乱等の影響を受けて乱れ易い、繊細な、敏感な領域である最大細化点周辺の領域で発生することから、糸の太さ斑等が極めて悪化するのである。
図12(a)〜図12(c)に示す従来の紡糸口金周辺に形成される流れの形態の問題について、更に説明する。図12(a)、図12(b)で見られる様な上昇流B2は、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側のフィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に、気流吹き出し面の上端T周辺の気流吹き出し面5から吹き出された気流が、直接フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、フィラメント糸の走行方向と逆行して、上昇する形で形成される。そのため、上昇流B2は、冷却開始距離QTDが大きく、気流吹き出し面の上端Tから紡糸口金の下面までの流路が長くなることも悪影響を及ぼして、紡糸口金の下面や紡糸口金の近傍の紡出直後のフィラメント糸に到達するまでに、フィラメント糸の随伴流や途中の内吹き環状冷却手段の上流側部材や紡糸パック2等の空気抵抗等の影響を受けて乱れ、糸揺れ等を引き起こして、フィラメント糸の糸の太さ斑や品質斑等の均斉性を著しく悪化させる問題がある。また、上昇流B2はフィラメント糸の走行方向と逆行して、また、更にフィラメント糸の走行経路の最外周面に極めて近接して形成されるため、上記した様に乱れて糸揺れ等を引き起こすばかりか、フィラメント糸に働く空気抵抗を増大させ、フィラメント糸の分子配向が促進される等して、フィラメント糸の強度・伸度等の品質を低いものとする問題がある。更に、上昇流B2はフィラメント糸の走行経路の最外周面に極めて近接して形成されるため、特にフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺の各単糸に働く空気抵抗を、その他のフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺よりもフィラメント糸の走行経路からみて内側の各単糸と比べて増大させ、フィラメント糸の糸の太さ斑や強度・伸度等の品質斑等を引き起こす問題がある。更には、それら糸の太さ斑や品質斑等の斑が欠陥となって、やはり、フィラメント糸自体の強度・伸度等の品質を低いものとしたり、糸揺れ等と相俟って、紡糸工程や延伸工程、あるいはその後の高次加工工程等での毛羽発生による品位劣化や糸切れ発生による生産性劣化を引き起こしたりする問題がある。
また、上昇流B2は、気流吹き出し面の上端T周辺の気流吹き出し面5から吹き出されるフィラメント糸を冷却するための気流が、直接フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、フィラメント糸の走行方向と逆行して、フィラメント糸の走行経路の最外周面に極めて近接して、上昇する形で形成されるため、特にフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺の各単糸は、上昇流B2により、紡糸口金の近傍から気流吹き出し面の上端T周辺の領域に亘って、その他のフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺以外の各単糸と比べ、強く冷却される。一方、フィラメント糸の走行経路の最外周面周辺以外のその他の各単糸は、気流吹き出し面の上端T周辺よりフィラメント糸の走行経路方向の上流側において、気流吹き出し面5から吹き出されてフィラメント糸の各単糸を冷却し、逆に熱を貰って加熱された気流が、フィラメント糸の各単糸を通過した後に、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって上昇する形で形成される上昇流、即ち、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B1により冷却される。そのため、フィラメント糸の走行経路の最外周面周辺の各単糸周辺と、その他のフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺以外のフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺よりもフィラメント糸の走行経路からみて内側の各単糸周辺との間で、大きな雰囲気温度差が生じ、フィラメント糸の走行経路の最外周面周辺の各単糸と、その他のフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺以外のフィラメント糸の走行経路の最外周面周辺よりもフィラメント糸の走行経路からみて内側の各単糸との間で、大きな冷却斑が発生し、加えて、この冷却斑の影響や上記したフィラメント糸の各単糸間に発生する空気抵抗の斑の影響と相俟って、フィラメント糸の各単糸の間で、細化変形の大きな斑が生じ、大きな気流乱れや糸揺れ等が発生するばかりか、フィラメント糸の糸の太さ斑や強度・伸度等の品質斑等を引き起こす問題がある。更には、それら糸の太さ斑や品質斑等の斑が欠陥となって、やはり、フィラメント糸自体の強度・伸度等の品質を低いものとしたり、糸揺れ等と相俟って、紡糸工程や延伸工程、あるいはその後の高次加工工程等での毛羽発生による品位劣化や糸切れ発生による生産性劣化を引き起こしたりする問題がある。また、上昇流B2は、気流吹き出し面の上端T周辺の気流吹き出し面5から吹き出されるフィラメント糸を冷却するための気流が、直接フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、フィラメント糸の走行方向と逆行して、フィラメント糸の走行経路の最外周面に極めて近接して、紡糸口金の下面の近傍に至るまで上昇する形で形成されるため、上記した様な冷却斑等の問題を引き起こすばかりか、フィラメント糸の走行経路の最外周面周辺の各単糸の吐出孔が配列される紡糸口金の下面周辺や紡糸口金の外縁部、また、その周辺部材等を特に局所的に冷やし易く、フィラメント糸の走行経路の最外周面周辺の各単糸において、吐出不良が発生したり、紡出後の各単糸の細化変形が不安定になったりする等して、糸切れ等が発生し、製糸性が悪化する問題がある。なお、従来の技術では、冷却開始距離QTDを充分に短縮できず、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側に形成される大きな随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって極めて大きな上昇流が形成されるので、フィラメント糸の走行経路の最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域に形成される上昇流だけでは気流供給が追い付かず、上昇流B2の様に、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に上昇流が形成され易い側面もある。また、図12(b)では、図12(a)よりもフィラメント糸の単糸数、あるいはフィラメント糸の各単糸を紡出する吐出孔を紡糸口金に穿設、配列する際の配列数等を増加させた影響で、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域(図2〜図4で言えば、領域Uに相当する領域)、空間から、フィラメント糸の各単糸が随伴流として持ち出す気流の規模が図12(a)よりも大きくなり、また、その結果、その随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流(図12(b)で言えば、上昇流B1、B2)の規模も図12(a)よりも大きくなり、上昇流B2の規模が拡大して上記した上昇流B2に関する問題が拡大するばかりか、フィラメント糸の非走行領域の上昇流では随伴流への気流供給が追い付かず、図12(b)に示す様に、上昇流B1がフィラメント糸の非走行領域のみならず、フィラメント糸の走行領域にも大きく形成されて、それがフィラメント糸の走行方向と逆行する方向の流れとなる等の理由から、更に気流が大きく乱れ、大きな糸揺れが発生し、更に糸の太さ斑等が極めて悪化する問題がある。
また、図12(c)では、図12(a)、図12(b)よりもフィラメント糸の各単糸の細化変形がやや緩やかではあるものの、図12(b)よりも気流吹き出し面の上端Tをフィラメント糸の走行経路方向の下流側に配設して、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域(図2〜図4で言えば、領域Uに相当する領域)、空間が大きくなった等の影響で、図12(c)に示す様に、気流吹き出し面の上端T周辺よりフィラメント糸の走行経路方向の上流側の紡糸口金の近傍の、フィラメント糸の走行領域やその周辺の領域に亘って複数の渦(図12(c)で言えば、渦E3、E4)が形成され、フィラメント糸の走行領域やその周辺の領域の彼方此方にフィラメント糸の走行方向と逆行する上昇流が形成されて、更に気流が大きく乱れ、大きな糸揺れが発生し、更に糸の太さ斑等が極めて悪化する問題がある。
なお、本発明者らの知見によれば、背景技術で挙げた特許文献2の様な冷却の気流を内側上向きに吹き付ける方法では、吹き付ける冷却の気流そのものが、図12(a)、図12(b)の上昇流B2と同様に作用するため、上記した上昇流B2に関連する問題が同様に発生する。
一方、本実施形態では、支持部材に制約されることなく、気流吹き出し面の上端を紡糸口金の下面に充分近接させて配設すること、つまり、図11(a)の様に気流吹き出し面の上端Tを領域H内に配設でき、冷却開始距離QTDを充分に短縮することができる。そのため、紡糸口金の近傍で各単糸が急激に細化、固化してしまう、例えば、図11(a)で言えば、支持部材3の下端面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の紡糸口金1の近傍で各単糸が急激に細化、最大細化してしまう難紡糸フィラメント糸に対して、その随伴流が急激に形成され始め、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面5を配設でき、多くの気流供給を必要とする各単糸の最大細化点周辺の領域を、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け易い気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面を含むこの面よりフィラメント糸の走行経路方向の下流側の気流吹き出し面5の領域内に充分入れて、各単糸に気流吹き出し面から直接充分な気流を供給することができる。また、フィラメント糸の各単糸の最大細化点周辺の領域を充分網羅して気流吹き出し面5を配設できるので、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域(図2〜図4で言えば、領域Uに相当する領域)における、フィラメント糸の各単糸の細化変形は、未だ最大細化前で細化も緩やかであり、また、糸速度も充分に発達していない状態となる。更に、冷却開始距離QTDを充分に短縮することができるので、図11(a)で言えば、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域(図2〜図4で言えば、領域Uに相当する領域)、空間が極めて小さくなり、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出すことが可能な空間は極めて小さくなり、また、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出す際に影響が及ぶ空間も極めて小さくなる。これらの結果、気流吹き出し面の上端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域、空間が極めて小さくなることも好影響を与えて、この領域、空間において、フィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流は、その流速も極めて小さく、また、流速の大きい領域も極めて小さくなる。そして、この随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流も極めて小さく抑制され、また、それがフィラメント糸の走行領域やフィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域等に形成され難くなり、紡糸口金周辺に形成される流れの形態は、フィラメント糸の走行領域でフィラメント糸の走行方向と逆行する上昇流の殆どない、また、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域で上昇流の殆どない流れとなり(例えば、図11(a))、気流の乱れや糸揺れ、冷却斑等が極めて抑制されて、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性が極めて向上し、更には、強度・伸度等の品質や、毛羽等の品位、生産性等が向上するのである。また、フィラメント糸の各単糸が急激に細化し、随伴流が急激に形成され始めて、多くの気流供給を必要とし、また、糸速度が急激に増加するので、そもそも周辺の気流が乱れ易く、また、気流の乱れ等の外乱等の影響を受け易く、更に、外乱等の影響を受けて乱れ易い、繊細且つ敏感で、気流整流化を必要とする最大細化点周辺の領域を、充分網羅して、気流吹き出し面を配設でき、気流吹き出し面からの充分な直接気流供給と、気流吹き出し面からの気流で整流化が実現されることにより、糸の太さ斑等の均斉性等が極めて向上するのである。
図11(a)に示す本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺に形成される流れの形態の効果について、更に説明する。図1〜図4、図11(a)にも示す様に、本実施形態は、支持部材3に制約されることなく、冷却開始距離QTDを充分に短縮するため、気流吹き出し面の上端Tが領域H内に配設される様に、気流吹き出し面の上端Tやその周辺の部材を、領域H内の、支持部材の内側面H1を含むH1よりもフィラメント糸の走行経路からみて内周側、且つ、支持部材の下端面H2を含むH2よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側に突っ込む様な格好となる。そのため、冷却開始距離QTDを充分に短縮できるばかりか、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域(図2〜図4で言えば、領域Uに相当する領域)、空間を極めて小さくし易い。そして、この領域、空間を極めて小さくし易い点も好影響を与えて、この領域、空間においてフィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流も極めて小さく抑制される。一方、本実施形態では、気流吹き出し面の上端Tやその周辺の部材を、領域H内の、支持部材の内側面H1を含むH1よりもフィラメント糸の走行経路からみて内周側、且つ、支持部材の下端面H2を含むH2よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側に、突っ込む様な格好となるため、フィラメント糸の走行経路の最外周面と気流吹き出し面5が近付き易く、フィラメント糸の走行経路の最外周面と気流吹き出し面5との間の流路が狭くなり易い。そのため、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に上昇流が形成され難い。これらの結果、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流は、その規模が全体的に極めて小さく抑制されることも影響して、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域やフィラメント糸の走行領域に形成され難く、図11(a)の様に、フィラメント糸の走行経路の最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域に小規模に形成される(図11(a)の上昇流B1)。そのため、紡糸口金周辺に形成される流れの形態は、図11(a)に示す様に、フィラメント糸の走行領域やその周辺でフィラメント糸の走行方向と逆行する流れの殆どない形態となり、気流乱れや糸揺れ等が極めて抑制される。更に、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流は極めて小さく抑制されるので、図11(a)に示す様に、上昇流B1、紡糸口金の近傍に形成される渦E0も極めて小さくなり、また、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に、例えば、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B2の様な上昇流が形成され難いことから、冷却斑等が極めて抑制される。以上により、本実施形態では、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性が極めて向上し、更には、強度・伸度等の品質や、毛羽等の品位、生産性等が向上するのである。
更に、本実施形態では、紡糸口金周辺の流れの形態が、例えば、図11(a)の様になることから、次の様な効果もある。本実施形態では、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、つまりは、紡糸口金の下面に向かって形成される上昇流は、その規模(流量等)も極めて小さく抑制される。また、その上昇流は、気流吹き出し面5から吹き出されてフィラメント糸の各単糸を冷却し、逆に熱を貰って加熱された気流が、フィラメント糸の各単糸を通過した後に、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって上昇する形で形成される。そのため、本実施形態では、紡糸口金周辺の流れの形態が、意外にも、紡糸口金の下面が冷やされ難い形態となる効果もある。また、紡糸口金に関連して、本実施形態では、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に、例えば、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B2の様な上昇流が形成され難いので、上昇流B2に関連する冷却斑等の問題が発生し難いのは勿論のこと、フィラメント糸の走行経路の最外周面周辺の各単糸の吐出孔が配列される紡糸口金の下面周辺や紡糸口金の外縁部、また、その周辺部材等が局所的に冷やされ易い等の問題も発生し難い効果もある。なお、気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向、動圧、静圧、全圧等やそれらの分布等は、フィラメント糸の均斉性や品質、品位、生産性等の維持、向上や管理等の目的で、一般に調整、制御あるいは管理されることが多い。また、フィラメント糸の品種により、調整、制御あるいは管理されることも多い。例えば、気流の流量を一例に挙げれば、気流の流量が、フィラメント糸に過剰な流量であれば糸揺れ等に繋がり、逆に不足の流量であれば外気吸い込み等を引き起こし、これも糸揺れ等に繋がるので、糸の太さ斑や品質、品位等を観察しつつ、適切な流量に調整される。
本実施形態のその他のメリットについて、更に3点程、説明する。第1に、本実施形態では、フィラメント糸の走行経路の最外周面と気流吹き出し面5が近付き易いので、気流吹き出し面5からフィラメント糸の各単糸に直接気流を供給し易く、また、気流吹き出し面5からの整流された気流でフィラメント糸の各単糸周辺を整流化し易い等のメリットもある。第2に、本実施形態では、気流吹き出し面5のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径が小さくなり易いので、気流室8を大きくし易く、気流室8で気流を均圧化、均一化させ易いので、環状の気流吹き出し面5から吹き出される気流の環状方向の風速等を均一化し易い等のメリットもある。なお、本実施形態において、気流室8を大きくし易いことは、本実施形態の図11(a)〜図11(c)と、従来の図12(a)〜図12(c)の比較から明確に理解することができる。また、本実施形態では、気流室8を大きくし易いので、気流室8に気流を均圧化、均一化させる手段を配設し易く、この点からも、環状の気流吹き出し面5から吹き出される気流の環状方向の風速等を均一化し易いメリットがある。また、第3に、本実施形態では、上記した様に、気流吹き出し面5のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径が小さくなり易いので、それに合わせて、内吹き環状冷却手段のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の外径を小さくすることで、内吹き環状冷却手段をコンパクト化し易く、小スペースで多数のフィラメント糸群を紡出する溶融紡糸方法、溶融紡糸装置等(例えば、紡糸口金や紡糸パック等が配設されるピッチが短い)に対応し易い等のメリットもある。
本実施形態は気流吹き出し面の上端を領域H内に配設する形態により特に限られない。必ずしも、気流吹き出し面の上端の環状の線上の全ての点が領域H内に配設されなくても良く、その一部が領域H内に配設されても良い。これは、例えば、気流吹き出し面の上端の環状の線上の各点において、冷却開始距離が異なる場合等を示す。なお、この場合、気流吹き出し面の上端の環状の線上の各点において、最も冷却開始距離の短い点を、この系での気流吹き出し面の上端とし、また、この点での冷却開始距離をこの系での冷却開始距離とする。また、この場合、気流吹き出し面の上端における気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径は、気流吹き出し面の上端を通りフィラメント糸の走行経路を囲う様に設けられたフィラメント糸の走行経路方向に平行な面の、気流吹き出し面の上端におけるフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径とする。なお、特に限られないが、好ましくは、気流吹き出し面の上端の環状の線上の全ての点が領域H内に配設されるのが良い。確実に環状の全方向で冷却開始距離を短縮することで、フィラメント糸の充分な冷却を行うためである。また、本実施形態は、気流吹き出し面の上端により特に限られないが、好ましくは、気流吹き出し面の上端の環状の線上の各点における冷却開始距離が同一となる様に気流吹き出し面の上端を設けるのが良い。環状の全方向で冷却開始距離を合わせることで、フィラメント糸を均一に冷却するためである。また、この場合、気流吹き出し面の上端の環状の線上の各点において、冷却開始距離が同一となるので、この系においては、その同一となる冷却開始距離をこの系での冷却開始距離と呼び、また、気流吹き出し面の上端の環状の線上の各点を総称して、気流吹き出し面の上端と呼ぶこととする。なお、既に示した、図1〜図4、図11(a)、また、後に示す、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)、図9、図11(b)、図11(c)では、全て、このケースで図示されているが、気流吹き出し面の上端の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。
本実施形態は支持部材3や支持部材の内側面H1、支持部材の下端面H2により特に限られない。様々な支持部材、支持部材の内側面、支持部材の下端面に好適であり、それらの個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、本実施形態は支持部材の内側面H1により特に限られず、例えば、内側面H1のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の内径(断面が円形以外の場合はその内接円あるいは外接円の直径)が、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、大きくなっても、小さくなっても、あるいは変化しなくても好適である。また、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、拡大と縮小が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適であり、また、その拡大と縮小の変化が滑らかに連続的に行われても、段階的に不連続に行われても好適である。なお、本実施形態において、支持部材の内側面H1は、支持部材の内側面を全体的に示すものであり、仮に支持部材の内側面に凹凸があったり、曲面があったりしても、それらを含めて支持部材の内側面を全体的に示すものとする。また、本実施形態において、支持部材の下端面H2は、支持部材のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面を示すが、フィラメント糸の走行経路方向からみて、最も下流側に位置する支持部材の点あるいは線あるいは面を通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面を示すものとする。また、支持部材3が紡糸口金を支持等する形態は特に限られない。限られないが、一般に、紡糸口金を、紡糸パックの外縁部で支持等する場合が多い。また、紡糸口金を、紡糸パックの外縁部のフィラメント糸の走行経路方向の下流側で支持等する場合も多い。なお、既に示した、図1〜図4、図11(a)、また、後に示す、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)、図9、図11(b)、図11(c)では、全て、支持部材が紡糸パックの一部として図示される等しているが、これは支持部材の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。
では、次に、本実施形態の第2の重要な実施形態について説明する。本実施形態の第2の重要な実施形態は、例えば、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図11(b)、図11(c)に示す様に、前記領域(領域H)内に、前記フィラメント糸の走行経路を囲うように設けられた整流部材(整流部材S)であって、前記整流部材の前記フィラメント糸の走行経路を囲う内側面(整流部材Sの内側面)の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端(整流部材Sの内側面の下端)が前記気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端(気流吹き出し面の上端T)より前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側であり、かつ、前記整流部材の前記内側面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端(整流部材Sの内側面の上端)が前記紡糸口金の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面(紡糸口金の下面H3)より前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側である整流部材(整流部材S)を有することを特徴とする本実施形態の第1の重要な実施形態に記載のフィラメント糸の製造装置である。
ここで、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図1において点線で囲まれた紡糸口金周辺の領域を凡そ拡大した図となっている。図5(a)〜図5(c)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図2に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に、整流部材Sを適用した場合の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、また、図6(a)〜図6(c)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の別の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図3に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に、整流部材Sを適用した場合の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、また、図7(a)〜図7(c)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の更に別の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図4に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に、整流部材Sを適用した場合の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図となっている。また、図11(b)、図11(c)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図であり、図11(b)は、図7(b)に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例の縦断面の概略図に対応した紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図、また、図11(c)は、図7(c)に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例の縦断面の概略図に対応した紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図となっている。また、図11(b)、図11(c)には、太線で囲まれた紡糸口金の更に近傍の領域で形成される流れの形態の、更なる拡大図も付記した。また、図11(b)、図11(c)における矢印付きの各線は、図11(a)、図12(a)〜図12(c)のそれと同様に、各図において形成される気流の流れの方向を示したものであり(矢印がその方向を示す)、各線上の各点での気流の速度ベクトルの方向が各点での各線の接線方向とほぼ一致する様に各線を示している。
図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)において、Sは整流部材、また、図11(b)、図11(c)において、E2は紡糸口金の近傍に形成される場合がある渦であり、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に対応した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例において形成される場合がある渦である。なお、これ以外の図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図11(b)、図11(c)における各記号は図1〜図4、図11(a)に準ずる。また、図11(b)、図11(c)においては、流れの形態を判り易く図示するため、図1〜図4等では示した部位や領域、面等や、記号等の図示を一部省略している。また、図11(d)については、本実施形態の別の重要な実施形態の説明において後述する。
本実施形態の第2の重要な実施形態では、例えば、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図11(b)、図11(c)に示す様に、領域H内に、フィラメント糸の走行経路を囲うように整流部材Sを配設し更にその整流部材Sの内側面の下端が気流吹き出し面の上端Tよりフィラメント糸の走行経路方向の上流側になる様に、且つ、その整流部材Sの内側面の上端が紡糸口金の下面H3よりフィラメント糸の走行経路方向の下流側になる様に、整流部材Sを配設する。この様にすることで、第1に、第2の重要な実施形態では、第1の重要な実施形態と比べ、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域、空間を、更に小さくでき、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出すことが可能な空間を更に小さくでき、また、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出す際に影響が及ぶ空間も更に小さくできる。そして、この領域、空間を更に小さくできる点も好影響を与えて、この領域、空間においてフィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流も更に小さく抑制することができる。これを、図2〜図4、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)を用いて説明すれば、第2の重要な実施形態では、図2〜図4の拡大図で言えば、領域Uの内、特に領域U1の領域、空間を縮小でき、図2の領域Uを図5(a)〜図5(c)の領域U、図3の領域Uを図6(a)〜図6(c)の領域U、図4の領域Uを図7(a)〜図7(c)の領域Uへと更に小さくできるので、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流を更に小さく抑制することができる。第2に、第2の重要な実施形態では、第1の重要な実施形態において形成される場合がある、例えば、図11(a)で言えば、渦E1の形成を抑制して、紡糸口金周辺の流れの形態を、図11(a)から図11(c)、更には図11(b)へとすることができ、渦に関連する気流乱れや糸揺れ等を更に抑制することができる。以上により、本実施形態の第2の重要な実施形態では、第1の重要な実施形態よりも、気流の乱れや糸揺れ、冷却斑等を更に抑制でき、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性が更に向上し、更には、強度・伸度等の品質や、毛羽等の品位、生産性等が更に向上する。
本実施形態は整流部材Sにより特に限られない。上記した様な、あるいは後述する様な整流部材としての機能が充分発揮されれば良く、その範囲で、個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。本実施形態は整流部材Sにより特に限られず、例えば、整流部材Sが、図5(a)、図6(a)、図7(a)の様に、単に領域Uから、領域U1を、仕切る様な、仕切り板状のものであっても良い。整流部材Sにより、領域Uから、領域U1をあるいはその一部を、少なくとも分離、分断できれば、領域Uが実質的に縮小されて上記した様な効果が充分発揮されるためである。また、本実施形態は整流部材Sにより特に限られず、例えば、整流部材Sが、図5(b)、図5(c)、図6(b)、図6(c)、図7(b)、図7(c)の様に、領域U1を埋める様な、中実なものであっても良い。本実施形態は整流部材Sにより特に限られないが、好ましくは、整流部材Sは、領域U1を埋める様な、中実なものが良い。領域U1を確実に縮小するため等の理由からである。なお、単なる仕切り板状のものでも効果は充分発揮されるが、領域U1部に残存する空間と、領域Uとの間で僅かではあるが気流のやり取り等が発生する場合があるためである。また、本実施形態は整流部材Sにより特に限られず、例えば、整流部材Sの内側面の上端や下端あるいはその周辺等が、面取り加工等されても良い。
本実施形態は整流部材Sにより特に限られない。例えば、整流部材Sは、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図11(b)、図11(c)に示す様に、内吹き環状冷却手段に配設されても良く、また、紡糸口金や紡糸パック、スピンブロックやそれらの部材あるいはそれらに接続されるその他部材等に配設されても良く、あるいはその両方に配設されても良い。なお、特に限られないが、整流部材Sが内吹き環状冷却手段に配設される場合は、整流部材Sの内側面の下端を、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの上流側面や、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端、気流吹き出し面の上端T等に近接させると共に、整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3に近接させて配設すると好ましい。また、特に限られないが、整流部材Sが紡糸口金や紡糸パック、スピンブロックやそれらの部材あるいはそれらに接続されるその他部材等に配設される場合は、整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3に近接させると共に、整流部材Sの内側面の下端をフィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの上流側面や、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端(内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端)、気流吹き出し面の上端T等に近接させて配設すると好ましい。また、特に限られないが、整流部材Sが内吹き環状冷却手段と、紡糸口金や紡糸パック、スピンブロックやそれらの部材あるいはそれらに接続されるその他部材等との両方に配設される場合は、紡糸口金や紡糸パック、スピンブロックやそれらの部材あるいはそれらに接続されるその他部材等の側に配設される整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3に近接させると共に、内吹き環状冷却手段の側に配設される整流部材Sの内側面の下端を、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの上流側面や、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端、気流吹き出し面の上端T等に近接させ、更に、紡糸口金や紡糸パック、スピンブロックやそれらの部材あるいはそれらに接続されるその他部材等の側に配設される整流部材Sの内側面の下端と、内吹き環状冷却手段の側に配設される整流部材Sの内側面の上端を近接させて配設すると好ましい。領域U1を確実に縮小するため等の理由からである。また、特に限られないが、例えば、整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3に近接させて配設する場合を一例に言えば、近接させるに際し、双方を接触させても良く、また、接触させてそこでシール等を行っても良く、特に限られない。また、整流部材Sが内吹き環状冷却手段の上流側部材を構成しても良く、また、内吹き環状冷却手段の上流側部材が整流部材Sを構成しても良い。
本実施形態は整流部材Sの内側面により特に限られず、例えば、整流部材Sの内側面を、図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)、図7(a)、図7(b)の様に、整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径が、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって同じになるように配設しても良い(これについては、次の本実施形態の第3の重要な実施形態においても説明する)。また、本実施形態は整流部材Sの内側面により特に限られず、例えば、整流部材Sの内側面を、図5(c)、図6(c)、図7(c)の様に、整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径が、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、大きくなる様に配設しても良い。本実施形態は整流部材Sの内側面により特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面を、フィラメント糸の走行方向と平行あるいは、平行よりも、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、内側面とフィラメント糸が徐々に近接する様に配設するのが良い。領域U1をより確実にカットでき、また、より確実に渦の形成を抑制できるためである。なお、本実施形態において、フィラメント糸の走行経路方向とは、フィラメント糸やその各単糸の大局的な走行方向を示し、フィラメント糸の走行経路方向の上流側、下流側とは、例えば、図1等で言えば、フィラメント糸の走行経路方向の上流側が図中の上方向、フィラメント糸の走行経路方向の下流側が図中の下方向を示す。また、フィラメント糸の走行方向とは、フィラメント糸やその各単糸の実際の走行方向や糸道等から予測される走行方向を示し、例えば、図1等で言えば、フィラメント糸やその各単糸が紡糸口金1から、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段12に向かって、斜め下方向に走行しているが、例えば、その様な方向を示す。また、本実施形態は内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面により特に限られないが、好ましくは、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面は、上記した整流部材Sの内側面に準じたものとすると良い。
本実施形態は整流部材Sの内側面により特に限られず、例えば、整流部材Sの内側面は、連続的に滑らかに配設されても良く、あるいは、不連続に段階的に配設されても良い。また、本実施形態は整流部材Sの内側面により特に限られず、例えば、整流部材Sの内側面は、段差が設けられても、設けられなくても良い。本実施形態は整流部材Sの内側面により特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面は、連続的に滑らかに配設されるのが良い。不連続に段階的に設けられても良いが、連続的に滑らかに配設される場合と比べ、気流が乱れたり、気流が剥離して渦が発生したりし易いためである。また、本実施形態は整流部材Sの内側面により特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面は、段差なく設けられるのが良い。段差があっても良いが、例えば、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に空間ができる形で段差を設けると、渦が形成される等、余り好ましくない。本実施形態は整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面により特に限られず、例えば、整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面との間が連続的に滑らかに配設されても、不連続に段階的に配設されても良い。また、本実施形態は整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面により特に限られず、例えば、整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面との間に段差が設けられても、設けられなくても良い。本実施形態は整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面により特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面との間は、連続的に滑らかに配設されるのが良い。また、本実施形態は整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面により特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面との間は、段差なく設けられるのが良い。理由は上記整流部材Sの内側面と同様である。本実施形態は整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3等に近接させる形態や、整流部材Sの内側面の下端を、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの上流側面や、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端、気流吹き出し面の上端T等に近接させる形態により特に限られない。整流部材Sにより、領域Uから、領域U1あるいはその一部を、少なくとも分離、分断できれば良く、必ずしも、例えば、図6(a)、図6(b)、図7(a)〜図7(c)の様に、整流部材Sの内側面の上端を、紡糸口金の下面H3擦れ擦れまで近接させなくても良い。勿論、整流部材Sの内側面の上端を、紡糸口金の下面H3擦れ擦れまで近接させても良いが、例えば、図5(a)〜図5(c)、図6(c)の様に、整流部材Sにより、領域Uから、領域U1をあるいはその一部を、少なくとも分離、分断できていれば、整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3擦れ擦れまで近接させていなくても良い。なお、特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3等に近接させると良い。また、特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面の下端を、フィラメント糸の走行経路方向の下流側に向かって、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの上流側面や、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端、気流吹き出し面の上端T等に近接させると良い。領域U1を確実に縮小するため等の理由からである。また、特に限られないが、例えば、整流部材Sの内側面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3等に近接させて配設する場合を一例に言えば、近接させるに際し、双方を接触させても良く、また、接触させてそこでシール等を行っても良く、特に限られない。
では、次に、本実施形態の第3の重要な実施形態について説明する。本実施形態の第3の重要な実施形態は、例えば、既に示した図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)、図7(a)、図7(b)、図11(b)や、新たに示す図8(a)〜図8(c)、図11(d)に示す様に、前記整流部材の前記内側面(整流部材Sの内側面)の前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって同じになるように、あるいは小さくなるように設けたことを特徴とする本実施形態の第2の重要な実施形態に記載のフィラメント糸の製造装置である。
ここで、図8(a)〜図8(c)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図1において点線で囲まれた紡糸口金周辺の領域を凡そ拡大した図となっている。図8(a)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図2に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に、整流部材Sを、その内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径がフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって小さくなる様に適用した場合の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、また、図8(b)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の別の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図3に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に、整流部材Sを、その内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径がフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって小さくなる様に適用した場合の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図、また、図8(c)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の更に別の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図4に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例に、整流部材Sを、その内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径がフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって小さくなる様に適用した場合の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図となっている。また、図11(d)は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図であり、図11(d)は、図8(c)に模式的に例示した本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例の縦断面の概略図に対応した紡糸口金周辺に形成される流れの形態の一例を模式的に例示した縦断面の概念図となっている。また、図11(d)における矢印付きの各線は、図11(a)〜図11(c)、図12(a)〜図12(c)のそれと同様に、各図において形成される気流の流れの方向を示したものであり(矢印がその方向を示す)、各線上の各点での気流の速度ベクトルの方向が各点での各線の接線方向とほぼ一致する様に各線を示している。なお、図8(a)〜図8(c)、図11(d)における各記号は、図1〜図4、5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図11(a)〜図11(c)に準ずる。また、図11(d)においては、流れの形態を判り易く図示するため、図1〜図4等では示した部位や領域、面等や、記号等の図示を一部省略している。
本実施形態の第3の重要な実施形態では、例えば、図5(a)、図5(b)、図6(a)、図6(b)、図7(a)、図7(b)、図11(b)や、図8(a)〜図8(c)、図11(d)に示す様に、整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって同じになるように、あるいは小さくなるように、整流部材Sを配設する。この様にすることで、第1に、第3の重要な実施形態では、第2の重要な実施形態と比べ、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域、空間を、更に確実に小さくでき(図2〜図4等で言えば、特に領域U1、領域U2を更に小さくできる)、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出すことが可能な空間を更に確実に小さくでき、また、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出す際に影響が及ぶ空間も更に確実に小さくできる。そして、この領域、空間を更に確実に小さくできる点も好影響を与えて、この領域、空間においてフィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流も更に確実に小さく抑制することができる。これを、図2〜図4、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)を用いて説明すれば、第3の重要な実施形態では、図2〜図4の拡大図で言えば、領域Uの内、特に領域U1、領域U2の領域、空間を第2の重要な実施形態から更に縮小でき、図5(c)の領域Uを、図5(a)、図5(b)、更には、図8(a)の領域U、図6(c)の領域Uを、図6(a)、図6(b)、更には、図8(b)の領域U、図7(c)の領域Uを、図7(a)、図7(b)、更には図8(c)の領域Uへと更に小さくできるので、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流を更に小さく抑制することができる。第2に、第3の重要な実施形態では、第2の重要な実施形態において形成される場合がある、例えば、図11(c)で言えば、渦E2の形成を更に抑制して、紡糸口金周辺の流れの形態を、図11(c)から、図11(b)、更には、図11(d)へとすることができ、渦に関連する気流乱れや糸揺れ等を更に抑制することができる。また、整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって同じになるように、あるいは小さくなるように整流部材Sを配設することで、フィラメント糸の走行経路の最外周面と整流部材Sの内側面が近接して、フィラメント糸の走行経路の最外周面と整流部材Sの内側面との間の流路が狭くなり、例えば、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B2の様な上昇流が、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に更に形成され難くなり、冷却斑等の問題を更に発生し難くすることができる。以上により、本実施形態の第3の重要な実施形態では、第2の重要な実施形態よりも、気流の乱れや糸揺れ、冷却斑等を更に抑制でき、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性が更に向上し、更には、強度・伸度等の品質や、毛羽等の品位、生産性等が更に向上する。
本実施形態は整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径(垂直な方向の断面が円形以外の場合はその内接円あるいは外接円の直径)をフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって小さくなるように設ける形態により特に限られない。フィラメント糸の紡出や走行等を妨げない範囲でフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって小さくなるように設ければ良い。なお、これは整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径をフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって同じになるように設ける場合も同様である。整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径をフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって小さくなるように設ける形態は特に限られないが、好ましくは、整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、フィラメント糸の走行経路の最外周面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径より大きくなるように設けると良い。また、好ましくは、整流部材Sの内側面の上端における整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、紡糸口金に穿設されるフィラメント糸の各単糸を紡出する吐出孔の内、フィラメント糸の走行経路からみて最外周に位置する吐出孔を通り、紡糸口金の下面上でフィラメント糸の走行経路を囲うように設けた円の直径より大きくなるように設けると良い。この様にすることで、フィラメント糸の紡出や走行等を妨げることなく、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域、空間を更に小さくでき、また、渦の形成等もより確実に抑制できるためである。
では、次に、本実施形態の第4の重要な実施形態について説明する。本実施形態の第4の重要な実施形態は、例えば、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)、図11(b)〜図11(c)に示す様に、前記整流部材の前記内側面の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端(整流部材Sの内側面の下端)における前記整流部材の前記内側面の前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、前記気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端(気流吹き出し面の上端T)における前記気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように、あるいは小さくなるように設けたことを特徴とする本実施形態の第2、第3の重要な実施形態に記載のフィラメント糸の製造装置である。
本実施形態の第4の重要な実施形態では、例えば、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)、図11(b)〜図11(c)に示す様に、整流部材Sの内側面の下端における整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、気流吹き出し面の上端Tにおける気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように、あるいは小さくなるように、整流部材Sを配設する。この様にすることで、第4の重要な実施形態では、第2、第3の重要な実施形態と比べ、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域、空間を、更に確実に小さくできる。例えば、第2の重要な実施形態にかかる第4の重要な実施形態では、第2の重要な実施形態と比べ、図2〜図4等で言えば、特に領域U1を更に確実に小さくできるばかりか、整流部材Sの内側面の下端における整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、気流吹き出し面の上端Tにおける気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径より小さくなるように整流部材Sを配設することで、領域U2、領域U3も小さくすることができる。また、例えば、第3の重要な実施形態にかかる第4の重要な実施形態では、第3の重要な実施形態と比べ、図2〜図4等で言えば、特に領域U1、領域U2を更に確実に小さくできるばかりか、整流部材Sの内側面の下端における整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、気流吹き出し面の上端Tにおける気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径より小さくなるように整流部材Sを配設することで、領域U2を含め領域U3も小さくすることができる。また、整流部材Sの内側面の下端における整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、気流吹き出し面の上端Tにおける気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように、あるいは小さくなるように整流部材Sを配設することで、フィラメント糸の走行経路の最外周面と整流部材Sの内側面が更に近接して、フィラメント糸の走行経路の最外周面と整流部材Sの内側面との間の流路が更に狭くなり、例えば、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B2の様な上昇流が、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に更に確実に形成され難くなり、冷却斑等の問題を更に確実に発生し難くすることができる。なお、図5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)、図11(b)〜図11(c)では、整流部材Sの内側面の下端における整流部材Sの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、気流吹き出し面の上端Tにおける気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように整流部材Sを配設した構成の図示となっているが、本実施形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。
では、次に、本実施形態の第5の重要な実施形態について説明する。本実施形態の第4の重要な実施形態は、例えば、図9に示す様に、前記気流吹き出し面の前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端(気流吹き出し面の上端T)を、前記フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、前記紡糸口金の前記フィラメント糸の走行経路方向の下流側の前記フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面(紡糸口金の下面H3)に近接させて配設することを特徴とする本実施形態の第1の重要な実施形態に記載のフィラメント糸の製造装置である。
ここで、図9は、本実施形態の一実施例に係る紡糸口金周辺の溶融紡糸の構成の一例を模式的に例示した縦断面の概略図であり、図1において点線で囲まれた紡糸口金周辺の領域を凡そ拡大した図となっている。また、図9は、図2〜図4よりも、気流吹き出し面の上端を、フィラメント糸の走行経路方向の更に上流側に、紡糸口金の下面H3に近接させて配設した場合の一例を模式的に例示した縦断面の概略図となっている。なお、図9における各記号は、図1〜図4、5(a)〜図5(c)、図6(a)〜図6(c)、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)、図11(a)〜図11(d)に準ずる。
本実施形態の第5の重要な実施形態では、例えば、図9に示す様に、気流吹き出し面の上端Tを、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3に近接させて配設する。この様にすることで、第1に、第5の重要な実施形態では、第1、第2、第3、第4の重要な実施形態と比べ、気流吹き出し面の上端Tを通るフィラメント糸の走行経路方向に垂直な面よりもフィラメント糸の走行経路方向の上流側の、気流吹き出し面5から直接気流供給を受け難い紡糸口金の近傍の領域、空間を、更に確実に小さくでき、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出すことが可能な空間を更に確実に小さくでき、また、その領域、空間から、フィラメント糸が随伴流として気流を持ち出す際に影響が及ぶ空間も更に確実に小さくできる。そして、この領域、空間を極めて確実に小さくできる点も好影響を与えて、この領域、空間においてフィラメント糸の各単糸廻りに形成される随伴流に気流を供給するため、フィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって形成される上昇流も更に確実に小さく抑制することができる。第2に、第5の重要な実施形態では、第1、第2、第3、第4の重要な実施形態において形成される場合がある、例えば、図11(a)〜図11(c)で言えば、渦E1、E2の形成を抑制して、渦に関連する気流乱れや糸揺れ等を更に確実に抑制することができる。また、図11(a)〜図11(d)で言えば、渦E0も小さく抑制される。以上により、本実施形態の第5の重要な実施形態では、第1、第2、第3、第4の重要な実施形態よりも、気流の乱れや糸揺れ、冷却斑等を更に抑制でき、糸の太さ斑や品質斑等の均斉性が更に向上し、更には、強度・伸度等の品質や、毛羽等の品位、生産性等が更に向上する。
また、本実施形態の第6の実施形態では、上記した本実施形態の第1の実施形態から第5の実施形態のいずれかに記載のフィラメント糸の製造装置を用い、熱可塑性ポリマーを溶融紡糸し、フィラメント糸を製造することを特徴とするフィラメント糸の製造方法が提供される。
本実施形態は気流吹き出し面5、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面、整流部材Sの内側面、フィラメント糸の走行経路の最外周面、フィラメント糸の走行経路の最内周面等により特に限られない。本実施形態は特に限られないが、好ましくは、フィラメント糸の走行経路の最外周面を、フィラメント糸の紡出や走行等を妨げない範囲で、気流吹き出し面5や内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面、整流部材Sの内側面に、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向に近接させて配設すると良い。また逆に、好ましくは、気流吹き出し面5や内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面、整流部材Sの内側面を、フィラメント糸の紡出や走行等を妨げない範囲で、フィラメント糸の走行経路の最外周面に、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向に近接させて配設すると良い。これは、第1に、フィラメント糸の走行経路の最外周面と気流吹き出し面5等が近接することで、フィラメント糸の走行経路の最外周面と気流吹き出し面5等との間の流路が狭くなり、例えば、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B2の様な上昇流が、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に形成され難くなり、冷却斑等の問題が発生し難くなるためである。また、図2〜図4等で言えば、領域U2、領域U3も小さくすることができる。第2に、特にフィラメント糸の走行経路の最外周面と気流吹き出し面5が近接することで、気流吹き出し面5からの整流された気流でフィラメント糸の各単糸周辺を整流化し易くなる等の理由からである。また、フィラメント糸の走行経路の最内周面も、特に限られないが、上記フィラメント糸の走行経路の最外周面と同様に取り扱うと良い。これは、第1に、特にフィラメント糸の走行経路の最内周面と気流吹き出し面5が近接することで、気流吹き出し面5からの整流された気流でフィラメント糸の各単糸周辺を整流化し易くなるためである。また、第2に、フィラメント糸の走行経路の最内周面と気流吹き出し面5等が近接することで、フィラメント糸の走行経路の最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域を大きくでき、例えば、図12(b)の上昇流B1の様な上昇流が、フィラメント糸の走行領域に形成され難くなり、気流乱れや糸揺れ等の問題が発生し難くなる等の理由からである。
本実施形態は気流吹き出し面の上端Tや整流部材Sの内側面の上端、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端等をフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3等に近接させる形態により特に限られない。本実施形態は特に限られないが、気流吹き出し面の上端Tや整流部材Sの内側面の上端、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端等をフィラメント糸の走行経路方向の上流側に向かって、紡糸口金の下面H3等に近接させるに際し、気流吹き出し面の上端Tや整流部材Sの内側面の上端、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面の上端等、あるいは気流吹き出し部6の上端(気流吹き出し部のフィラメント糸の走行経路方向の上流側の上端)や整流部材Sの上端、内吹き環状冷却手段の上流側部材J等を、スピンブロックやそれらの部材あるいはそれらに接続されるその他部材等に接触させても良く、また、接触させてそこでシール等を行っても良く、特に限られない。では次に、その他の形態について説明する。本実施形態は溶融紡糸の構成により特に限られない。溶融紡糸工程で低配向未延伸糸(以下UDY:Un Drawn Yarn)を得る構成や、部分配向糸(以下POY:Partially Oriented Yarn)を得る構成、紡糸と延伸を直結して延伸糸(以下FOY:Full Oriented Yarn)を1工程で得る紡糸直延伸(以下DSD:Direct Spin Draw)の構成、紡糸速度が高速で延伸を必要としないOSY(One Step Yarn)に対応した構成にも好適である。なお、図1では、UDYやPOY、OSYに対応した構成の図示となっているが、本実施形態がこれに限定されるものではない。また、本実施形態は紡糸速度により特に限られず、300〜10000m/分程度の範囲であっても好適である。なお、ポリエステルフィラメント糸において、一般に紡糸速度はUDYに対応した構成で300〜1800m/分程度、POYに対応した構成で1800〜5000m/分程度、DSDの構成で300〜1800m/分程度(なお、巻取速度は2000〜5000m/分程度)、OSYに対応した構成で3000〜10000m/分程度であるが、上記はあくまで一例を示したものであり、ポリエステルやその他の熱可塑性ポリマーから構成されるフィラメント糸において、紡糸速度が上記速度の範囲を超えるUDY、POY、DSD、OSYであっても好適である。なお、本実施形態において、紡糸速度とは、フィラメント糸が紡糸口金から紡出されて初めて固化した際の糸速度、あるいは初めて通過する糸引取手段での糸速度を示すものとする。
本実施形態はフィラメント糸11を構成する熱可塑性ポリマーにより特に限られず、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリケトンや、可塑剤を含有したセルロースエステル系熱可塑性ポリマー等にも好適であり、溶融紡糸により溶融紡糸される合成繊維や半合成繊維等の化学繊維等に好適である。本実施形態に好適なポリエステルの一例を挙げれば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリアミドの一例を挙げれば、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。また、本実施形態は、共重合されたポリアミドにも好適である。また、ポリフェニレンとしてはポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィンとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンとしてはポリスチレン等が挙げられる。
また、本実施形態は熱可塑性ポリマーに製糸安定性等を損なわない範囲で他の共重合成分が含まれていても好適である。ポリエステルで一例を挙げれば、鮮明性に優れた染色が可能なポリエステルカチオン可染糸において、一般的に共重合されるソジウムソルホネートイソフタル酸やポリエチレングリコール等が含まれたものでも本実施形態は好適である。また、製糸安定性等を損なわない範囲で二酸化チタン等の艶消し剤、酸化ケイ素、カオリン、着色防止剤、安定剤、抗酸化剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色顔料、表面改質剤等の各種機能性粒子や有機化合物等の添加剤が含有されていても好適である。
また、本実施形態はフィラメント糸11の各単糸の成分構成により特に限られない。各単糸を構成する成分が単数でも複数でも良く、例えば、芯鞘型複合や海島型複合、サイドバイサイド型複合等の複合の構成であっても好適である。また、複数成分が混合されたアロイやブレンド等の構成でも好適である。また、複合の各成分がアロイやブレンド等の複数成分から構成されても好適である。
本実施形態はフィラメント糸11の単糸数により特に限られず、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸にも好適である。また、ステープルの分野の様に単糸数が数千本、例えば2000本程度のフィラメント糸にも好適である。なお、フィラメント糸の単糸数あるいは紡糸口金から紡出される総単糸数が多ければ多いほど、常法、例えば、ユニフロ冷却手段等の従来の技術との差異が明確となる。また、ステープル以外の衣料用、産業用の分野では、単糸数が1〜1000本あるいは1〜600本程度までの範囲のフィラメント糸が多い。また、本実施形態はフィラメント糸11の各単糸の単糸繊度により特に限られず、0.1〜数百dtex程度の範囲であっても好適である。なお、dtexはデシテックスを示す。例えば、溶融紡糸後の単糸繊度が0.1〜16dtex、あるいは0.1〜10dtex、0.1〜3.5dtex程度の範囲のフィラメント糸にも好適である。なお、単糸繊度が小さければ小さいほど、常法、例えば、ユニフロ冷却手段等の従来の技術との差異が明確となる。また、得られたフィラメント糸は溶融紡糸の後に、必要に応じ、更に同工程あるいは別工程にて、1.7〜6倍、あるいは1.2〜2倍程度に延伸あるいは延伸・仮撚加工等され、単糸繊度0.1〜2.6dtex、あるいは0.1〜1.6dtex、0.1〜1.1dtex程度の範囲のフィラメント糸とされる。また、本実施形態はフィラメント糸11の各単糸の断面形状により特に限られず、丸断面、楕円、三角形等の多角形断面、六葉等の多葉断面、楕円八葉等の楕円多葉断面、C型、Y型、十字型等の文字型断面等や、中空部を有する断面等や、これらに近い断面等であっても好適である。
本実施形態は紡糸口金1から紡出されるフィラメント糸11の糸条数により特に限られず、単数あるいは複数であっても好適である。例えば、糸条数が1〜8糸条、1〜6糸条あるいは1〜4糸条であっても好適である。また、上記したフィラメント糸や単糸に関連する各形態が組み合わされたフィラメント糸や単糸が紡出されても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の紡糸口金から、単数あるいは複数あるいは複数種のフィラメント糸や単糸が紡出されても本実施形態は好適である。
本実施形態は紡糸口金1により特に限られない。様々な紡糸口金に好適であり、紡糸口金の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、紡糸口金1に穿設される吐出孔により特に限られない。様々な吐出孔に好適であり、吐出孔の個数、外形形状、外形寸法、孔径、孔長、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。なお、本実施形態において、紡糸口金の下面は、紡糸口金のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の面である、紡糸口金の下面を全体的に示すものであり、仮に紡糸口金の下面に凹凸があったり、曲面があったりしても、それらを含めて紡糸口金の下面を全体的に示すものとする。
本実施形態は紡糸口金1に穿設される吐出孔の配列により特に限られない。様々な配列に好適であり、環状配列、格子状配列、千鳥格子状配列等の様々な配列に好適である。また、品質や製糸安定性等を損なわない範囲で、部分的に吐出孔が穿設されない非穿設部が設けられる配列や、紡糸口金から紡出される複数のフィラメント糸を各糸条に分離するための分離帯が設けられる配列、吐出孔の穿設数の分布に疎密が設けられる配列等にも好適である。また、非穿設部、分離帯、穿設数の疎密が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても良い。なお、図1〜図4等において、フィラメント糸11を数本の直線で図示しているが、これはフィラメント糸が紡出されるさまを単に示したものであり、フィラメント糸の単糸数や糸条数、フィラメント糸の集束形態、たわみ状態等や、吐出孔の配列数や配列形態等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。なお、本実施形態は紡糸口金1に穿設される吐出孔の配列により特に限られないが、例えば、特に、一つの紡糸口金から紡出される単糸数が複数の場合は、好ましくは、フィラメント糸の走行経路の最外周面やフィラメント糸の走行経路の最内周面が、フィラメント糸の紡出や走行等を妨げない範囲で、気流吹き出し面5や内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面、整流部材Sの内側面等に、フィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向に近接する様に、紡糸口金1に穿設される吐出孔を配列すると良い。また、本実施形態は紡糸口金1に穿設される吐出孔の配列により特に限られないが、例えば、特に、一つの紡糸口金から紡出される単糸数が複数の場合は、好ましくは、フィラメント糸の走行経路の最内周面の内側にフィラメント糸の非走行領域ができるように紡糸口金1に穿設される吐出孔を配列すると良い。また、本実施形態は紡糸口金1に穿設される吐出孔の配列により特に限られないが、例えば、特に、一つの紡糸口金から紡出される単糸数が複数の場合は、好ましくは、フィラメント糸の走行経路の最内周面の内側のフィラメント糸の非走行領域が大きくなる様に、紡糸口金1に穿設される吐出孔を配列すると良い。理由は上記した通りである。
本実施形態は紡糸パック2により特に限られない。様々な紡糸パックに好適であり、紡糸パックの個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。
本実施形態はスピンブロック4により特に限られない。様々なスピンブロックに好適であり、スピンブロックの個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、図1〜図4等では図示をしていないが、スピンブロックに通常配設される紡糸パックを加熱・保温する紡糸パック加熱器や熱可塑性ポリマーの供給配管、断熱部材、保温部材等や、ポンプ等や追加の加熱部材、加熱手段等が設けられても良く、また、本実施形態はこれらにより特に限られない。なお、図1〜図4等における紡糸口金1、紡糸パック2、支持部材3、スピンブロック4の図示は、あくまで一例であり、紡糸口金1、紡糸パック2、支持部材3、スピンブロック4の外形形状等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。
本実施形態は気流吹き出し部の気流が吹き出されるフィラメント糸側の面である気流吹き出し面5により特に限られない。様々な気流吹き出し面に好適であり、気流吹き出し面の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。なお、内吹き環状冷却手段において、気流吹き出し面の外形形状は一般に環状が多い。フィラメント糸の各単糸を、フィラメント糸の走行経路を囲う環状方向に、均一に冷却し易く、また、環状方向に、均一に気流を供給し易い等の理由からである。従って、気流吹き出し面の外形形状は環状が好ましいが特に限られず、例えば、気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を逸脱しない範囲で楕円や多角形形状、あるいはそれに近い形状であっても本実施形態は好適である。なお、気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を逸脱しない範囲で楕円や多角形形状、あるいはそれに近い形状である場合、気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径は、気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の内接円あるいは外接円の直径が適用される。また、気流吹き出し面の外形形状がフィラメント糸の走行経路方向に沿って変化しても好適であり、また、フィラメント糸の走行経路方向に沿って、気流吹き出し面とフィラメント糸との距離が変化しても好適である。また、その変化が単数あるいは複数あるいは複数種あっても本実施形態は好適である。
本実施形態は気流吹き出し部6により特に限られない。様々な気流吹き出し部に好適であり、気流吹き出し部の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、気流吹き出し部の気流吹き出し面の外形形状に関しては、上記気流吹き出し面の外形形状に関する記載の通りであり、また、気流吹き出し部の全体としての外形形状に関しても上記記載が全般的に当てはまる。なお、気流吹き出し部の気流吹き出し面以外の面の外形形状は特に限られず、また、気流吹き出し部の気流が供給される気流吹き出し面の対向面の形状は特に限られず、例えば、対向面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が環状を多少逸脱した形状であっても本実施形態は好適である。なお、内吹き環状冷却手段において、気流吹き出し部の外形形状や気流吹き出し部の気流が供給される気流吹き出し面の対向面の形状は一般に環状が多い。フィラメント糸の各単糸を、フィラメント糸の走行経路を囲う環状方向に、均一に冷却し易く、また、環状方向に、均一に気流へ圧損を与え易く、また、環状方向に、均一に気流を供給し易い等の理由からである。また、気流吹き出し部のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が部分的に異なる形状であっても本実施形態は好適であり、異なる部分が単数あるいは複数あるいは複数種あっても好適である。また、気流吹き出し部のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の断面の形状が、フィラメント糸の走行経路方向に沿って、単数あるいは複数あるいは複数種変化しても本実施形態は好適である。また、気流吹き出し部の部材は特に限られず、穴やオリフィス、スリット等から構成される部材や、金網、パンチングメタル、ハニカム等の整流格子、粒子や繊維、板等から構成される多孔部材、不織布、繊維等を織ったり編んだりして構成される多孔部材、多孔を有する多孔質部材、セルロースのシートやリング、リボン等を積層して構成される多孔部材、スリット状の溝を有する金属シートや薄板、リング、リボン等を積層して構成される多孔部材、金属粒子や金属繊維等を積層して構成される多孔部材、金属線状体や金属リボン等を巻き付けて構成される多孔部材等やこれらに近い部材であっても好適であり、あるいは単数あるいは複数あるいは複数種の部材から構成されても本実施形態は好適である。また、気流吹き出し部の材質は特に限られず、アルミ、銅、青銅、真鍮、鉄、炭素鋼、ボンデ鋼、ステンレス、ステンレス合金、タングステン、タングステン合金等の金属や、セメント、合成樹脂、天然樹脂、繊維、化学繊維、天然繊維、紙、木材、セルロース、セラミック、カーボン等であっても好適であり、単数あるいは複数あるいは複数種の材質から構成されても本実施形態は好適である。また、断熱部材や保温部材、加熱部材、冷却部材、加熱手段、冷却手段、温度等の計測手段等が設けられても本実施形態には好適である。また、気流吹き出し部が単数あるいは複数あるいは複数種の気流吹き出し部から構成されても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の気流吹き出し部が冷却手段に設けられても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の紡糸口金あるいは紡糸パックに対し、単数あるいは複数あるいは複数種の気流吹き出し部が設けられても本実施形態は好適である。
本実施形態は気流室8、気流供給口9により特に限られない。様々な気流室、気流供給口に好適であり、その個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、ラビリンス構造やハニカム等の整流格子の構造、圧損部材等や上記気流吹き出し部の部材で記載した様な部材、断熱部材、保温部材、加熱部材、冷却部材、加熱手段、冷却手段、温度や圧力、流速等の計測手段、気流調整手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。また、気流吹き出し面から吹き出される気流のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布が均一になるように、気流室8や内吹き環状冷却手段7内の気流流路等に圧損部材等が設けられても良い。また、気流室8や内吹き環状冷却手段7内の気流流路等の大きさ等が、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向に沿って殆ど変化しない構成や、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって拡大、縮小する構成、あるいはフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって拡大と縮小が単数あるいは複数あるいは複数種ある構成等であっても好適である。また、単数あるいは複数あるいは複数種の冷却手段や気流吹き出し部に対し、単数あるいは複数あるいは複数種の気流室、気流供給口が設けられても好適であり、また、単数あるいは複数あるいは複数種の気流室、気流供給口に、単数あるいは複数あるいは複数種の気流、例えば、気流の物質や組成、温度、流速、流量等が異なる気流が供給されても本実施形態は好適である。
本実施形態は内吹き環状冷却手段7により特に限られない。様々な内吹き環状冷却手段に好適であり、その個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、内吹き環状冷却手段やその周辺に、断熱部材、保温部材、加熱部材、加熱手段、冷却部材、冷却手段、温度等の計測手段等の部材や、内吹き環状冷却手段の気流流路内にラビリンス構造やハニカム等の整流格子の構造、圧損部材等や上記気流吹き出し部の部材で記載した様な部材、断熱部材、保温部材、加熱部材、加熱手段、冷却部材、冷却手段、温度等の計測手段等の部材が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。また、本実施形態は内吹き環状冷却手段の上流側部材Jや上流側部材Jの内側面等により特に限られない。特に限られないが、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端における内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径は、好ましくは、気流吹き出し面の上端Tにおける気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように、あるいは小さくなるように設けるのが良い。内吹き環状冷却手段の上流側部材Jで、気流吹き出し面5や気流吹き出し部6等を、より確実に支持、保持あるいはシール等できるためである。また、内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面のフィラメント糸の走行経路方向の下流側の下端における内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径を、気流吹き出し面の上端Tにおける気流吹き出し面のフィラメント糸の走行経路方向に垂直な方向の内径と同じになるように、あるいは小さくなるように内吹き環状冷却手段の上流側部材Jを配設することで、フィラメント糸の走行経路の最外周面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面が更に近接して、フィラメント糸の走行経路の最外周面と内吹き環状冷却手段の上流側部材Jの内側面との間の流路が更に狭くなり、例えば、図12(a)、図12(b)で言えば、上昇流B2の様な上昇流が、フィラメント糸の走行経路の最外周面の外側のフィラメント糸の非走行領域に更に形成され難くなり、冷却斑等の問題を更に発生し難くすることができるためである。また、上記した気流吹き出し面、気流吹き出し部、気流室、気流供給口等の各形態含め、内吹き環状冷却手段に関する上記した各形態が組み合わされた内吹き環状冷却手段であっても本実施形態は好適である。また、単数あるいは複数あるいは複数種の紡糸口金あるいは紡糸パックに対し、単数あるいは複数あるいは複数種の内吹き環状冷却手段が設けられても本実施形態は好適である。なお、図1〜図4等における気流吹き出し面5、気流吹き出し部6、気流室8、気流供給口9、内吹き環状冷却手段7等の図示は、あくまで一例であり、これらの外形形状等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限定されない。また、図1における気流供給口9に記載の矢印は、気流が流れるさまを単に示したものであり、気流の流速や流量、流れ方向等の形態を限定するものではなく、本実施形態はこれに限られない。
本実施形態は気流吹き出し部から吹き出される気流10により特に限られない。様々な気流に好適であり、気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向等や、それらの分布等により特に限られない。気流の成分は例えば、空気や通常の空気に含まれる酸素等の成分、水分を含む空気や、希ガス、窒素等の不活性気体、スチーム等や、これらの混合物であっても本実施形態は好適である。なお、一般には空気や乾燥空気が用いられる場合が多い。気流の温度は例えば、一般に数℃あるいは10℃程度から20℃あるいは30℃程度が用いられる場合が多いが、特に限られない。例えば、徐冷等の目的で上記温度以上の高温の気流が用いられても本実施形態は好適である。気流の流速は例えば、一般に1〜5m/分程度から100〜200m/分程度が用いられる場合が多いが、特に限られない。フィラメント糸の単糸数、単糸繊度、紡糸速度や、冷却開始距離QTD等により、上記範囲内かそれ以外の範囲の流速が用いられても本実施形態は好適である。気流の流れ方向は特に限られず、例えば、水平方向、水平方向よりフィラメント糸の走行経路方向に対し上流側上方向、下流側下方向や、フィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向、あるいはそれより上流側上方向、下流側下方向や、フィラメント糸やその各単糸の走行方向等であっても本実施形態は好適である。なお、特に限られないが、好ましくは、気流の流れ方向は、フィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向、あるいはそれより下流側下方向が良い。気流の流れ方向をフィラメント糸やその各単糸の走行方向に対し垂直な方向より上流側上方向とすると、フィラメント糸やその各単糸に働く空気抵抗等が増加する等の理由からである。気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向等の分布は特に限られず、様々な分布に本実施形態は好適である。気流のフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の流速分布は特に限られず、製糸安定性等を損なわない範囲で、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向に沿って変化の殆どない分布や、フィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって漸増、漸減する分布、あるいはフィラメント糸の走行方向や走行経路方向の上流側から下流側に向かって増加と減少が単数あるいは複数あるいは複数種ある分布等であっても好適である。気流のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布についても特に限られず、同様に製糸安定性等を損なわない範囲で様々な分布に本実施形態は好適である。なお、特に限られないが、内吹き環状冷却手段において、気流のフィラメント糸の走行経路を囲う環状方向の流速分布は一般に均一になるようにすることが多く、その様にすることが好ましい。フィラメント糸の各単糸を環状方向に均一に冷却し易い等の理由からである。なお、気流の成分や温度、湿度、流速、流量、流れ方向、動圧、静圧等やそれらの分布等は一般に調整、制御、管理されることが多い。また、フィラメント糸の品種により、調整されることも多い。また、図1〜図4等において、気流10を多数の矢印で図示しているが、これは気流が吹き出されるさまを単に示したものであり、気流の流速や流量、流れ方向等の形態を限定するものでなく、本実施形態はこれに限られない。
本実施形態は糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段12により特に限られない。様々な手段に好適であり、手段の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られない。また、糸油剤付与手段はガイド給油方式でもローラー給油方式であっても好適であり、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段は非回転手段でも回転手段でも本実施形態は好適である。また、上記手段は設けなくても設けても良く、設ける場合は糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段であれば良く、あるいはそれらの何れかが一つが設けられても良く、あるいはそれらが単数あるいは複数あるいは複数種設けられても、上記各形態が組み合わされた手段が同様に設けられても良く、特に限られず好適である。
本実施形態は糸引取手段13、糸巻取手段14により特に限られない。様々な糸引取手段、糸巻取手段に好適であり、手段の個数、外形形状、外形寸法、取付位置・向き、表面形状、表面仕上げ、表面処理、構造、部材構成、材質等により特に限られず、例えば、糸引取手段は、ローラーやサクションガン等の糸吸引手段、フィラメント糸を気流で送り出す糸送出手段、コンベヤ等の糸搬送手段等であっても好適であり、例えば、糸巻取手段は、フィラメント糸を巻き取るワインダー方式や、フィラメント糸を籠の様な容器で受け取るキャン方式等の糸巻取手段であっても本実施形態は好適である。また、糸引取手段のローラーに複数回フィラメント糸が掛けられても好適であり、糸引取手段が延伸手段を兼ねても好適である。また、糸引取手段や糸巻取手段に、糸油剤付与・集束・ガイド・案内等の手段や、加熱ローラー、加熱チューブ等の糸加熱手段、糸加湿手段、糸リラックス手段、糸延伸手段、糸吸引手段、糸送出手段、糸搬送手段等が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても好適である。また、糸引取手段や糸巻取手段が単数あるいは複数あるいは複数種設けられても、上記各形態が組み合わされた糸引取手段や糸巻取手段が同様に設けられても好適である。