JP3879914B2 - 浮力調整可能な植生フロート装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フロートの浮力を増減してフロートを水面に浮遊させたり、逆に水底に沈めたりすることができる浮力調整可能な植生フロート装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、浮力調整可能なフロートを使用した人工浮島を開示するものとして、例えば特開2001-309728号公報に開示の構造がある。これは、水生植物を植生させて自然の植生環境と同等の作用を営ませることが可能な人工浮島を提案するもので、水深が異なる水生植物に対応して、その水位に対する植栽土壌の表面位置を変えることにより多様な水生植物の生育を可能とする旨記載されている。例えば大型の抽水植物または湿性植物では、植栽土壌表面が湖沼の水位と略同一レベルに設定され、小型の抽水植物が植栽される場合は、植物の根元部分が冠水する深さに設定され、さらに浮葉植物ではその略全体が冠水する深さに土壌表面が設定される。植栽される植物の種類に応じて水位に対する土壌表面の高さを変えるには、浮島のフロートの浮力を調整することによりなされる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前掲公報においては、植栽する植物の種類によって必要な水量や土壌量が異なり、植栽部の重量も異なる。それ故、フロートの浮力を調整することにより、植栽する植物の種類にかかわらず水面に設置した植栽フレームの高さを一定に維持しているのである。人工浮島ユニットが複数連結してより大きな人口浮島が構成された場合にも、各ユニットにはそれぞれ異なる種類の植物が植栽され、かつそれぞれ独立して浮力調整される。それ故同一浮力のユニットを複数構成する場合にも1個ずつ浮力設定する必要があり、その作業はユニット数が増えるほど面倒なものとなる。
【0004】
本発明は、複数のフロートを機械的に連結すると同時にフロートの中空体部分同士が連通するよう連通手段を設けることにより浮力調整を容易に行うことができる浮力調整可能な植生フロート装置を実現するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明(請求項1)にかかる浮力調整可能な植生フロート装置は、周囲に嵩高のフレーム部が形成されるとともに中央に低床部が形成され、かつ該低床部に貫通孔が設けられた中空体よりなる複数のフロートと、該フロートの側面に形成され、隣接するフロート同士を連結する連結手段と、隣接する上記フロート同士の上記中空体部分を連通する連通手段と、上記フロートのうち、任意の1個または複数のフロートの底面に形成され、該フロートの中空体内に給水あるいは排水する給排水孔と、上記フロートの上記フレーム部に張り渡される保護ネットと、該保護ネットにて被覆された上記低床部に配置された水の浸透が可能な植生マットとを備え、上記フロートの連通手段を介して空気を上記中空体内へ供給すると同時に上記給排水孔より排水して上記フロートの浮力を増大させ、または上記連通手段を開放してこれより上記中空体内の空気を排気すると同時に上記給排水孔から上記中空体内へ給水することにより、上記フロートの浮力を減少させ、もって上記フロートを浮沈させるものである。
【0006】
かかる構成において、フロートの中空体全域に空気が満たされているときは、最大浮力となり、フロート装置は水面に浮上している。この状態で植生マットに所定の水生植物の苗が植えられ、またはその種が蒔かれる。苗がマットに定着しまたは種が発芽し根が張ってきたとき、その植物に適した育成環境となるよう植生マットの水位に対する位置が調整される。例えば中空体内に給水して浮力を低下させ、フロート自体を水面下に沈める等の調整がなされる。中空体内が完全に水で満たされたときは、フロートの浮力はゼロとなり、水底に沈む。
【0007】
本発明(請求項2)において、上記フロートが微生物分解型樹脂にて形成されてなるものである。かかる構成において、フロートの中空体内がすべて水にて満たされ水底に沈んだ状態で植生マットに植えた海草、水草、藻類等の水生植物が育成する。水生植物の育成と同時にフロートは徐々に分解し、その根が貫通孔を通して水底に伸び、自ら水底に根を張る状態になった頃、完全に分解する。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1〜4において、1は中空体構造のフロートで、平面正方形、側面略扁平形状に構成されている。2はフロートの周囲に形成された嵩高のフレーム部で、フロート1の構造を強化する作用をなす。3はフロート1の中央すなわちフレーム部2に囲まれた部分に形成された低床部、4はこの低床部3に複数個、図示の例では9個垂直方向に形成された貫通孔である。このフロート1は、澱粉等を使用した天然高分子系樹脂、化学合成系脂肪族ポリエステル樹脂等の微生物分解型熱可塑性樹脂のブロー成形法にて形成することができる。フロート1の大きさの一例をあげると縦、横各1m、フレーム部2の厚さ15cm、低床部3の深さ10cmとすることができる。
【0009】
5は、フロート1の各側面に1対ずつ形成された連結手段で、隣接するフロート1同士を連結する。図2において、6は、金属製または樹脂製のコ字形状の連結体で、その先端には球状に膨らんだ抜け止め部7が形成されている。8はフロート1に形成された側面凹部でその中間に平面部9を有し、平面部9の中央には孔10が穿設されている。11は、この孔10にはめ込まれたゴム製グロメットで、中央に垂直方向の貫通孔12が形成されている。フロート1を隣接させ、連結体5を隣接する2つのグロメット11の孔12に上方から差し込むことにより、フロート1は連結される。連結体6、平面部9及びグロメット11にて連結手段5が構成される。
【0010】
図1に示す例は、縦方向3個、横方向4個、合計12個のフロート1を平面長方形形状に連結した状態を示す。グロメット11の弾性により、連結部分は多少屈曲可能であり、水面に浮遊させたとき波に応じて屈曲する。なおフロート1の側面は、連結部分の屈曲動作が可能となるよう、外側に突出した「く」の字型に形成されている。
【0011】
なお図2は、低床部3に植生マット13を敷き、これに水生植物14を発芽させた状態を示し、植生マット13には保護ネット15が被せられている。保護ネット15はフレーム部2の上面角部に形成されたネット固定部材15aにてフレーム部2に固定され、水生植物14が植えられた植生マット13を保護するとともに、これを低床部3に固定する作用をなす。植生マット13は、ヤシの繊維、樹皮繊維を絡ませて圧縮したものが使用でき、水分は貫通孔4を介してマット13内に浸透する。
【0012】
図4において、16は、各フロート1の側面略中央上側に形成された給排気孔で、隣接するフロート1同士はエアパイプ17にて連結されている。給排気孔16がフロート中空体の最上部に設けられているのは、エア排気時、これを完全にするためである。18は、エアパイプ17を給排気孔16に固定するリング状の固定金具で、固定ネジ18bの締め付けにより取付固定される。給排気孔16、エアパイプ17及び固定金具18にて連通手段が構成される。12個のフロート1の隣接する側面部分の給排気孔16はすべてエアパイプ17にて連結され、フロート1内部の中空体部分は連通状態とされている。また連通する相手側フロート給排気孔16が存在しない給排気孔16はキャップ19が被せられて外気と遮断されている。20は、1個のフロート1の空いている給排気孔16に接続されたエアチューブで、フロート1の中空体内部にエアを給排気するものであり、給気の際はエアコンプレッサー(図示せず)に連結され、排気の際は開放状態とされる。
【0013】
21は、エアチューブ20が接続されるフロート1aとは反対側の端に位置する3個のフロート1bの底部に形成された給排水孔である。エアコンプレッサーの駆動によりエアチューブ20からフロート1aにエアが供給された場合、エアは矢印Fで示すようにエアパイプ17を介してすべてのフロート1に供給される。全部のフロート1内部がエアで満たされた後はフロート1bの給排水孔21から外部へ排気される。他方、エアチューブ20を開放すると、このエア給排気孔16からフロート1内のエアが排気され、同時に給排水孔21から水がフロート1内に浸入する。かくしてフロート1内に浸入する水の量(言い換えればフロート1内のエアの量)を加減することにより、連結されたフロート1全体の浮力を調整することができる。すなわちフロート1内を完全に排水状態としたときフロート1には最大浮力が得られ、フロート1は水面に浮遊しており、他方フロート1内を全て水で満たせば浮力はゼロとなり、フロート1は水底に沈下する。
【0014】
フロート1は、ブロー成形法にて密封中空体に形成された後、全フロート1の給排気孔16の先端が切除されて開口とされ、また給排水孔21が形成されるフロート1bのみ給排水孔部分が切除されて開口とされる。
【0015】
かかる構造の植生フロート装置の用法につき説明する。
複数のフロート1が準備され、その低床部3に植生マット13が敷かれ、さらにその上に保護ネット15が被せられて植生マット13が固定される。植生マット13には水生植物14の種が蒔かれ、またはその苗が植えられる。
【0016】
しかる後、フロート1は水面に浮かべた状態で連結手段5にて連結される。次いで隣接するフロート1同士の給排気孔16がエアパイプ17にて接続され連通状態とされる。このときエアが供給されるフロート1aと最も遠い位置にあるフロート1b、すなわちエア供給路Fの最終端に位置するフロート1に給排水孔21を有するフロート1bが配置される。
【0017】
エアが供給されるフロート1aの給排気孔16にエアチューブ20が連結され、エアコンプレッサーを介してフロート1内にエアが供給され、全フロート1内のエア量が調整される。例えば、水生植物14が抽水植物の場合、フロート1の表面と水面が略等しくなるように浮力が設定され、浮葉植物であればフロート1が水面下一定の位置(中層域)に沈んだ状態となるよう浮力調整され、さらに藻類等沈水植物の場合、フロート1内は完全に排気されて沈下される。
【0018】
最終的に水底に根を張る沈下植物の育成においても、その成長を促進するために育成初期段階では照射日光量を増やすためにフロート1を水面下数十センチの中層域に浮遊させておき、その後フロート1を沈下着底させる方法が採用できる。この場合、フロート1を中層域に浮揚させておくには、フロート1に沈下量を制御するフロート1(このフロートは本発明にかかるフロート構造とは異なる一般的な球状フロートが使用できる)を別途付加し、さらにフロート1を所定の位置に停止させておくために数個のアンカーを接続するのが望ましい。
【0019】
フロート1が最終的に着低せしめられ、水生植物14の根が植生マット13から貫通孔4を通って水底に伸びる場合には、自然環境保護の観点から、フロート1を微生物分解型樹脂にて形成するのが望ましい。この場合、分解樹脂は、水底に水生植物14の根が張った後に完全分解状態となることが必要である。
【0020】
【発明の効果】
本発明(請求項1)によれば、複数のフロートが連結されて任意の大きさ及び形状の植生フロートに形成された場合でも、全てのフロートの中空体部分は連通しているために、その給排気及びこれと逆の関係にある給排水が、1個のフロートの給排気孔への給排気にて行うことができ、浮力の調整が極めて簡単である。
【0021】
また本発明(請求項2)によれば、フロートを構成する樹脂材料に微生物分解型樹脂の使用により、水生植物が水底に根を張った後、フロートが自然分解し、環境破壊の原因となることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる浮力調整可能な植生フロート装置の平面図(保護ネットの一部が示されている)である。
【図2】図1のA-A線断面図である。
【図3】図1のB-B線断面図である。
【図4】図2のC部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 フロート
2 フレーム部
3 低床部
4 貫通孔
5 連結手段
6 連結体
9 平面部
11 グロメット
13 植生マット
14 水生植物
15 保護ネット
16 給排気孔
17 エアパイプ
18 固定金具
20 エアチューブ
21 給排水孔

Claims (2)

  1. 周囲に嵩高のフレーム部が形成されるとともに中央に低床部が形成され、かつ該低床部に貫通孔が設けられた中空体よりなる複数のフロートと、
    該フロートの側面に形成され、隣接するフロート同士を連結する連結手段と、
    隣接する上記フロート同士の上記中空体部分を連通する連通手段と、
    上記フロートのうち、任意の1個または複数のフロートの底面に形成され、該フロートの中空体内に給水あるいは排水する給排水孔と、
    上記フロートの上記フレーム部に張り渡される保護ネットと、
    該保護ネットにて被覆された上記低床部に配置された水の浸透が可能な植生マットとを備え、
    上記フロートの連通手段を介して空気を上記中空体内へ供給すると同時に上記給排水孔より排水して上記フロートの浮力を増大させ、または上記連通手段を開放してこれより上記中空体内の空気を排気すると同時に上記給排水孔から上記中空体内へ給水することにより、上記フロートの浮力を減少させ、もって上記フロートを浮沈させることを特徴とする浮力調整可能な植生フロート装置。
  2. 上記フロートが微生物分解型樹脂にて形成されてなることを特徴とする請求項1記載の浮力調整可能な植生フロート装置。
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