JP2852409B2 - 湛液水耕栽培方法 - Google Patents

湛液水耕栽培方法

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JP2852409B2
JP2852409B2 JP7126489A JP12648995A JP2852409B2 JP 2852409 B2 JP2852409 B2 JP 2852409B2 JP 7126489 A JP7126489 A JP 7126489A JP 12648995 A JP12648995 A JP 12648995A JP 2852409 B2 JP2852409 B2 JP 2852409B2
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仁一 西村
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辰弘 岩本
裕也 藤本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、栽培容器に収容された
培養液の上面近傍にフロートマットを、その表面の一部
は培養液に浸り、一部は空中に露出するように設けて作
物の根部を位置させ、フロートマットの上面と所定の空
間をおいて上蓋を兼ねる定植パネルを設置して作物の茎
葉部を支持させて栽培するようにした新しい形態の湛液
水耕栽培方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】養液栽培は、NFT、ロックウール耕を
主体に、平成5年現在、全国で690haの栽培面積が
ある。近年の水耕栽培方式は、植物工場のように重装備
化の方向にあり、その導入費用、付帯設備等から農家は
容易に取り組み難いのが現状である。農業生産における
水耕栽培のさらなる普及のため、簡易で低コストな水耕
装置の開発が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】農家の高齢化、後継者
不足が深刻化する中で、軽労・省力的な農業生産技術が
求められている。この課題を解決するためのアプローチ
として、本願発明者らは簡易水耕装置の開発を行った。
その具体的目標として、.できるだけ構造がシンプル
で低コストな水耕装置であること、.電源を要せず
(ポンブによる培養液楯環を行わない)、地下埋設タン
ク等の付帯設備も不要であること、.野菜の安定生産
が可能なこと、等の課題を設定し、これらの問題解決を
図ることを目的に開発を行った。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明は、 A.栽培容器にビニールフイルムを敷いて所定量の培養
液を収容し、この培養液の上面近傍に、ロックウールマ
ットを上に、浮き部材を下にして全体を防根シートで覆
ったフロートマットを、上記浮き部材の浮力でロックウ
ールマットを支え、該ロックウールマットの表面の一部
は培養液に浸り、一部は空中に露出するように設け、該
フロートマットの上面に作物の根部を位置させ、該根部
に、フロートマットの下方から培養液を、フロートマッ
トの上面側から空気をそれぞれ供給して栽培するように
したことを特徴としている。
【0005】B.上記フロートマットの表面に凹凸を形
成し、作物の根部の一部は培養液に浸り、一部は空気中
に露出する状態にし、さらにフロートマットの上面と所
定の空間をおいた上方位置に上蓋を兼ねる定植パネルを
設け、該定植パネルの植え穴に茎葉部を支持させて作物
を栽培するようにしたことを特徴としている。
【0006】C.幼植物の育苗と定植に当たっては、吸
水資材を円筒状に巻いて合成樹脂製中空円筒内に固定
し、上部に播種穴を開けた状態の円筒チップを作製し、
吸水資材の下部を培養液に浸して播種穴に播種して発
芽、発根させ、根の伸長した株を上記定植パネルに所定
間隔で穿設した多数の植え穴に定植するようにしたこと
を特徴としている。
【0007】
【作用】上記の手段によって本発明の湛液水耕栽培方法
は、以下の作用を行う。 .ロックウールマットの表面の一部は培養液に浸り、
一部は空中に露出するように設けたフロートマットの上
面に作物の根部を位置させ、この根部に、フロートマッ
トの下方から培養液を、フロートマットの上面側から空
気をそれぞれ供給して栽培することにより、作物の根域
環境が好適化し、管理が容易で安定した生産性が得られ
る。
【0008】.フロートマットの表面に凹凸を形成
し、作物の根部の一部は培養液に浸り、一部は空気中に
露出する状態にし、さらにフロートマットの上面と所定
の空間をおいた上方位置に上蓋を兼ねる定植パネルを設
け、該定植パネルの植え穴に茎葉部を支持させて作物を
栽培することにより、フロートマットの表面を伸張する
作物の根は、培養液と空気に同時に接し、水ストレスを
受けない。
【0009】.幼植物の育苗と定植に当たっては、吸
水資材を円筒状に巻いて合成樹脂製中空円筒内に固定
し、上部に播種穴を開けた状態の円筒チップを作製し、
吸水資材の下部を培養液に浸して播種穴に播種して発
芽、発根させ、根の伸長した株を上記定植パネルに所定
間隔で穿設した多数の植え穴に定植することにより、固
定培地を用いることなく育苗から定植栽培まで行うこと
ができ、汎用性を有する。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付の図面を参照し
て具体的に説明する。まず本発明は、「野菜生産の省力
化のための簡易水耕装置の開発」の一環として、対象野
菜を葉菜類とし、省力的で低コストな水耕装置の開発を
行い、その結果、図1に示すフロートマット水耕装置1
を発明した。この水耕装置1の新規性は、.フロート
マット6による根域環境の好適化、.円筒チップ9に
よる育苗及び定植法の2点である。
【0011】フロートマット水耕装置1は、栽培容器2
内に図示しないビニールフィルムを敷いて所定量の培養
液3を収容し、この培養液3の上面近傍に自重では液体
中に沈む性質を有する吸水性資材であるロックウールマ
ット4を、浮き部材である発泡スチロール板5により浮
かせて、その表面の一部は培養液3に浸り、一部は空中
に露出するようにしてフロートマット6を形成し、この
フロートマット6の上面に作物Aの根部Bを位置させ
て、フロートマット6の下方から作物Aの根部Bに培養
液3を供給し、フロートマット6の上面側から作物Aの
根部Bに空気を供給して吸収させ、作物Aの栽培を行う
ものである。
【0012】また、上記フロートマット6は、図1ない
し図3に示すように、その表面を平らにし、縦方向に仕
切り突起4aを形成する。フロートマット6の表面を伸
張する作物Aの根部Bは、その一部は培養液3に浸り、
一部は空気中に露出する状態にし、フロートマット6の
上面と所定の空間をおいて栽培容器2の上部に、フロー
トマット6の上面に根部Bを位置させた作物Aの茎葉部
Cを支持する植え穴7を開けた定植パネル2dを設け、
該定植パネル2dにより茎葉部Cを支持して作物Aの栽
培を行う。
【0013】上記定植パネル2dには所定間隔に多数の
植え穴7が穿設されており、これら各植え穴7に育苗し
た幼植物を定植して栽培する。また、この装置1により
育苗を行うときには、図4に示すように、吸水資材8で
あるレーヨン不織布を円筒状に巻いて、合成樹脂製中空
円筒に固定した円筒チップ9を用いて吸水資材8の下部
を培養液3に浸し、その播種穴10に播種して発芽させ
育苗を行うのである。この育苗の際、図5に示すよう
に、発泡スチロールからなる育苗用浮き板14により支
持させるようにする。
【0014】本発明の要部の構成について、さらに詳細
に説明する。 1.フロートマット6について ロックウールマット4は吸水性が強いが、自重で水中に
沈む性質がある。このロックウールマット4を発泡スチ
ロール板5の浮力で支え、ロックウールマット4の表面
の一部は培養液3に浸り、一部は空中に露出するような
状態にすることにより、作物Aの根部Bに培養液3と空
気を適度に供給でき、根域環境の好適化によって生育が
旺盛となる。培養液3の表面近傍に浮かせるこのような
マットをフロートマット6と名づけた。具体的には、浮
き部材である発泡スチロール板5に、薄いロックウール
マット4を1層または2層に敷いて表面に凹凸をつけ、
全体を防根シート13で覆って作製した。
【0015】 2.フロートマット水耕法と従来の養液栽培方式との相
違点 従来の養液栽培方式は以下のように分類される。 .固形培地を用いる方法 礫耕、砂耕、もみがらくんたん耕、ロックウール耕 .固形培地を用いない方法 湛液水耕=湛液通気法、循環法、循環強制通気法、液面
上下法、毛管水耕NFT 噴霧耕
【0016】本発明によるフロートマット水耕法は、湛
液水耕の一つの方式である。湛液でかつ、培養液を循環
させない、通気も行なわない、という点では、毛管水耕
に最も近い。ただし、毛管水耕と決定的に異なるのは、
フロートマット6では、根が培養液3と空気に同時に接
するようなマットの表面状態を作り出した点である。
【0017】毛管水耕の場合、発泡スチロール等の浮き
板に吸水性不織布を載せ、培養液上に浮かせる。垂れ下
がった不織布が毛管現象によって培養液を吸収し、根に
養水分を供給する。従って、根は完全に空気中にさらさ
れており、水ストレスにより生育が不良になることが多
かった。これに対して本発明のフロートマット水耕法で
は、根Bを支持するマット6は水の上に浮くのではな
く、表面形状が凹凸になったマット6がロックウールマ
ット4と浮き板5のバランスで培養液3に浸った状態で
培養液3に浮き、表面の一部は培養液3中に浸り、一部
は空気中に出るような状態になる。この点が従来の毛管
水耕と大きく異なっている。この栽培法によると、野菜
は水ストレスを受けることもなく生産が安定する。
【0018】3.円筒チップ9による育苗 これまでの水耕栽培ではウレタン育苗が一般的である。
しかし、根の生育に酸素を必要とする野菜(例えばホウ
レンソウ)は、多湿なウレタンマット中に根が貫入せ
ず、ウレタン育苗が困難であった。そこで、新たに円筒
チップ9による育苗法を開発した。円筒チップ9は、吸
水資材8(レーヨン不織布等、長さ10cm)をポリエ
チレン製中空円筒(φ18mm、長さ3cm)内に固定
し、上部に播種穴10(φ6mm)を開けたものであ
る。この円筒チップ9(吸水資材8)の下端を培養液中
に浸し、播種して発芽、発根させ、根の伸長した株を定
植パネル2dの植え穴7に移植する。
【0019】円筒チップ9による育苗では、吸水資材8
の下端を培養液に浸しており、播種穴10の近傍は毛管
水で十分に湿る。播種穴10に置床された種子は、発根
後に吸水資材8から養水分を吸収し、かつ周囲の空気に
触れながら、円筒内を下へと伸長する。吸水資材8は円
筒形であるので、根が絶えず接触し乾くことはない。こ
のように、円筒チップ9の発芽環境は、発芽率の標準検
定法(吸水濾紙上の発芽)とほぼ同様であり、根に十分
な空気と水を与えることができる。円筒チップ9による
育苗法も、これまでにない新規なものである。
【0020】次に、フロートマット水耕装置1を用いた
野菜栽培の試験例について説明する。 [試験例1] フロートマット水耕1による夏と冬のホ
ウレンソウ栽培 露地トンネル内に水耕装置1を設置し、大塚A処方の1
/4、1/2、1、2、4単位の濃度の培養液3を用
い、ホウレンソウ品種“おかめ”(夏作)、“トライ”
(冬作)を栽培した。培養液3の温度は、夏期は26
℃、冬期は5℃前後と大きく変動したが、フロートマッ
ト水耕装置1によるホウレンソウの生育は良好であっ
た。夏作では1単位、冬作では2単位の培養液濃度で収
量が高く、夏期は25日で100g、冬期は2ヶ月余り
で40gの葉重に達した(表1参照)。
【0021】
【表1】
【0022】 [試験例2] フロートマット水耕1と土耕栽培におけ
るアブラナ科野菜の生育比較 雨よけハウス内で、フロートマット水耕1及び土耕栽培
により各種アブラナ科野菜を栽培し、その生育比較を行
なった。葉菜類としてミズナ、コマツナ、パクチョイ、
チンゲンサイ、カラシナ、茎菜類としてコールラビ、カ
イランを用い、1994年9月24日に播種、11月9
日に収穫した。葉菜類では、フロートマット水耕1と土
耕栽培はほぼ同等の収量で、株のまとまりや柔らかさに
おいては水耕栽培が優った。また、肥大茎を収穫するコ
ールラビ、カイランでは、フロートマット水耕1の収量
が土耕栽培よりはるかに優った(図6参照)。このよう
に、フロートマット水耕1により野菜の安定生産が実証
された。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本発明の湛液水耕栽
培方法によれば、以下の効果を奏することができる。 .野菜生産における省力化技術の一つであり、これま
での養液栽培方式の中では、毛管水耕に最も近い栽培法
と位置づけることができる。 .フロートマットは、自重で沈むロックウールを発泡
スチロールの浮き板の浮力で支えて形成するが、さらに
マット表面に凹凸をつけて、一部が水中、一部は水面上
に浮くようにすることによって、マット表面を伸長する
根は培養液と空気に同時に接し、水ストレスを受けるこ
とがない。 .本発明による水耕装置による野菜の生育は土耕栽培
と同等、あるいはそれ以上であった。 .また本発明の装置は、電源を必要としない、設置コ
ストやランニングコストが低廉であるなど、従来の技術
に比べ有利となっている。 .この発明によって、今後水耕栽培がさらに普及する
ことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)はフロートマット水耕装置の側面断面
図、(b)は同正面断面図である。
【図2】栽培容器及び植え穴の平面図である。
【図3】(a)はフロートマットの平面図、(b)はフ
ロートマットの断面図、(c)フロートマットの使用状
態の断面図である。
【図4】(a)は育苗用円筒チップの断面図、(b)は
同平面図である。
【図5】容器に培養液を入れて円筒チップによる育苗を
行っている状態の側面図である。
【図6】葉菜類及び茎菜類におけるフロートマット水耕
と土耕栽培の生育の違いを示すグラフである。
【符号の説明】
1 フロートマット水耕装置 2 栽培容器 2d 定植パネル 3 培養液 4 ロックウールマット 4a 仕切り突起 5 浮き部材(発泡スチロール板) 6 フロートマット 7 植え穴 8 吸水資材(レーヨン不織布) 9 円筒チップ 10 播種穴 13 防根シート 14 育苗用浮き板(発泡スチロール) A 作物 B 根部 C 茎葉部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡田 敏壽 京都府綾部市篠田町家の谷1番地1 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01G 31/00 604 A01G 31/00 601 A01G 31/00 615 A01G 31/00 617

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 栽培容器にビニールフィルムを敷いて
    定量の培養液を収容し、この培養液の上面近傍に、ロッ
    クウールマットを上に、浮き部材を下にして全体を防根
    シートで覆ったフロートマットを、上記浮き部材の浮力
    でロックウールマットを支え、該ロックウールマットの
    表面の一部は培養液に浸り、一部は空中に露出するよう
    に設け、該フロートマットの上面に作物の根部を位置さ
    せ、該根部に、フロートマットの下方から培養液を、フ
    ロートマットの上面側から空気をそれぞれ供給して栽培
    するようにしたことを特徴とする湛液水耕栽培方法。
  2. 【請求項2】 上記フロートマットの表面に凹凸を形成
    し、作物の根部の一部は培養液に浸り、一部は空気中に
    露出する状態にし、さらにフロートマットの上面と所定
    の空間をおいた上方位置に上蓋を兼ねる定植パネルを設
    け、該定植パネルの植え穴に茎葉部を支持させて作物を
    栽培するようにしたことを特徴とする請求項1記載の湛
    液水耕栽培方法。
  3. 【請求項3】 幼植物の育苗と定植に当たっては、吸水
    資材を円筒状に巻いて合成樹脂製中空円筒内に固定し、
    上部に播種穴を開けた状態の円筒チップを作製し、吸水
    資材の下部を培養液に浸して播種穴に播種して発芽、発
    させ、根の伸長した株を上記定植パネルに所定間隔で
    穿設した多数の植え穴に定植するようにしたことを特徴
    とする請求項2記載の湛液水耕栽培方法。
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