JP3768489B2 - 植物栽培装置及び植物栽培方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、栽培槽内の培地に植物の根系を形成させ、培地を介して植物の生育に必要な栄養分を植物に施肥することにより植物の栽培を行う植物栽培技術に関するものであり、特に、灌水・施肥管理及び設備の設置及び保守管理が容易な植物栽培技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、農産物の多収穫化、高品質化、省労力化を図るべく、養液栽培方法が広く行われるようになってきている。養液栽培方法とは、土壤を用いることなく、固型の培地や水中に根系を形成させ、植物の生育に必要な栄養分は、植物ごとに固有の吸肥特性に応じた成分組成、適濃度をもつ培養液によって与え、根には適度の酸素供給を行って作物を栽培する方法である。
【0003】
従来の養液栽培方法としては、代表的なものとして、灌液型循環式水耕(非特許文献1,p.51〜83参照)、NFT(非特許文献1,p.84〜103参照)、及び、ロックウール耕、礫耕、砂耕などの固型培地耕(非特許文献1,p.14〜50,104〜131参照)等が知られている。
【0004】
灌液型循環式水耕とは、ベッド内に一定の水位で培養液を保持し、タンクとベッド間又はベッド間相互で培養液を強制循環させることにより、ベッドに植栽された植物の水耕栽培を行う方法である。この方法によれば、根への酸素補給をいかに効果的に行うかが課題となり、その酸素補給方法についても種々の方法が考案されている。
【0005】
NFTとは、緩傾斜をつけたフィルムを利用した水路状のベッドに、上方から培養液を少量ずつ流下させ、流下した培養液をタンクに戻して培養液を循環させる方式である。
【0006】
固型培地耕とは、培地に礫、砂、籾殻燻炭、バーミキュライト、パーライト、ロックウールなどの無機物、又は樹脂、ヤシ殻、ピートモス、おがくず、籾殻などの天然有機物、若しくはポリウレタン、ポリフェノール、ビニロンなどの有機合成物を使用して、培地に間歇的に培養液の供給を行う方法である。
【0007】
また、養液栽培と土耕栽培の利点を取り入れた方法として養液土耕栽培方法も知られている。この養液土耕栽培方法は、植物の作付け前の施肥は行わず、植物の作付け後に、土壤の持つ養分供給力、養分保持力、緩衝作用を活かしながら、植物の生育に合わせて養液を点滴灌水により供給していくことを特徴とする。
【0008】
一方、特許文献1では、ポリプロピレン等の合成樹脂製の袋状のバックに培土を充填し、このバックの表面の適所に切り込みを設け、この切り込みを通じて培土に植物を植栽して栽培するバック式栽培方法が提案されている。
【0009】
図25はバック式栽培方法による植物の栽培状況を示した図である。バック101内は、透水性を有するポリプロピレン製の不織布を素材としており、平面的に見て縦×横=30×60cm程度の長方形の袋に形成されている。バック101の内容量は約12〜15リットルである。このバック101に、培土が充填されている。培土は、主に、籾殻、ピートモス、バーミキュライト、椰子殻(パームピート)等を主成分としたものが使用される。また、バック101の表面には、縦×横=5×5cm程度の十字の切れ込み102が設けられている。そして、この切れ込みを通して、植物103が植栽されている。このようにバック101に植物を植栽することで、植物を比較的容易に持ち運ぶことが可能となる。
【0010】
植物103の栽培を行う場合には、図25に示したように、支持枠110の上面にエキスパンドメタル111を敷いた架台112の上にバック101を並べて配置する。そして、ドリップ灌水管113を用いて各バック101に点滴灌水を行うことで、植物103の栽培を行う。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−322378号公報
【非特許文献1】
社団法人日本施設園芸協会編,「最新 養液栽培の手引き」,株式会社誠文堂新光社,1996年6月15日,p.14−131
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の養液栽培方法又は養液土耕栽培方法は、それぞれ長所、短所があるが、何れにおいても共通して、多収穫を得るために植物の栽培株数を増やすと設備が大きくなり、初期投資や維持管理に多大な費用を要するという欠点がある。従って、小規模農家においては、これらの設備を導入することが困難な場合が多い。
【0013】
養液栽培においては、植物の生育に必要な水分及び肥料分を充分に保持させるために、植物の根系を形成させるベッドのサイズや重量が大きくなる。そのため、植物の栽培地として広い土地が必要である。従って、耕地面積の狭い小規模農家において、空いている狭い土地でこれらの栽培方法を行うことは困難である。
【0014】
養液土耕栽培についても、同様に、植物を植える土壤として、従来の植物の平地栽培と同様の広い土地を必要とする。
【0015】
一般に、植物の水吸収は培地が充分に湿り、空気が乾燥している状態では盛んであるが、培地が乾燥し始めると、植物は気孔を閉じて水の蒸散を制限する。水分ストレスが大きいと、このような気孔の開閉が頻繁に生じて植物の光合成能力を低下させるため植物の生育が制限される。従って、栽培植物の成長を促進するためには、土壤内部を常に充分に湿った状態に保つ必要がある。
【0016】
従来の養液土耕栽培では、培地として土壤を使用している。そのため、土壤内部の温湿度環境を安定的に保とうとした場合、気温、湿度、日照等の外部条件の変化の影響を緩和するため、一定の圃場容水量を確保できるだけの量の土壤が必要である。土壤量が少なすぎて圃場容水量が少なくなると、外部の気温や湿度、日照量、気流、植物の水分消費量等の外部条件によって土壤内の温湿度が容易に変化し、養液の供給量制御による土壤内の温湿度の安定化が困難となるからである。
【0017】
一般の土壤は、大半は土壤粒子間の孔隙に毛管水として水分を保持しているが、単位体積あたりの保水力があまり大きくない。従って、土壤内部の温湿度環境を安定的に保つためには、必然的に比較的多くの量の土壤が必要である。従って、従来の養液土耕栽培においては、培地の軽量化を図ることが困難である。
【0018】
また、培地に土壤を用いた植物栽培の場合、土壌内の水分環境を安定させるためには、気温条件、日照条件、湿度条件、植物の水分消費条件等の様々な条件に合わせた養液の供給制御が必要となる。そのため、培地の量が少なくなるほど養液供給量の制御が難しい。そして、培地量を比較的多くしたとしても、ある程度は培地が加湿気味となったり乾燥気味となったりして植物の根に供給される水の量に変動が生じる。従って、植物に対して水分ストレスをある程度以上は小さくすることが難しい。
【0019】
また、固型培地耕や養液土耕栽培においては、植物への養液の供給は、点滴灌水チューブを用いて点滴灌水を行う方法が広く用いられている。しかし、この場合、養液中の肥料分が点滴灌水チューブの内部に付着して、管内を閉塞することがある。そのため、配管の維持管理に費用と労力を要する。また、経済的な面を考えると、一般に養液の供給設備の設備費は高額であり、小規模経営の農家には導入しにくいという欠点がある。
【0020】
更に、植物の栽培では、小面積の育苗圃場において育苗を行った後に、広い面積の栽培圃場に苗を定植して栽培を行うことが多い。この場合、育苗床で育苗した植物の苗を定植する場合に、苗の掘り起こし、搬送、本圃への植え付けという作業が必要であり、多くの労力を必要とする。
【0021】
一方、特許文献1記載のバック式栽培方法によれば、簡単な設備により実施することが可能である。従って、設備コストが低廉であるため、小規模農家においても設備の導入が可能である。また、バック単位での栽培槽の移動が可能であるため、植栽された植物の成長に応じて、バックごと植物の移動が容易であるという優れた利点を有している。
【0022】
しかしながら、バック内に充填された限られた量の培土において植物を栽培するため、水分の蒸散による培土内における含水量の変動が大きい。従って、植物の根に供給される水分量の変動が大きい。特に、バック内の培土量を減らすと、上述のように、植物に加わる水分ストレスが大きくなり、植物の生育に悪影響が現れる。
【0023】
逆に、品質の高い植物を生産しようとする場合には、バックの容量を大きくし、充分な培土をバック内に充填するとともに、きめ細かい灌水管理を行えばよい。しかしながら、バック内の培土量を多くすると、バックが重くなり持ち運び作業が不便となる。バックは可撓性の繊維により構成されているために、内部に培土が充填されていると折れ曲がりやすい。従って、特に、植物が植栽された状態でバックを運ぶ場合、植物に損傷を加えないようにするため、バックが折れ曲がらないように注意して搬送する必要がある。
【0024】
また、バック単位に植栽可能な植物の量が少ないため、単位面積あたりに植栽可能な植物の数が制限される。従って、圃場面積に対する植物の生産効率が落ちる。
また、きめ細かい灌水管理を人手によって行おうとすると、多くの管理労力を要する。逆に、自動的に灌水管理を行う場合には、設備費が高額となる。
【0025】
そこで、本発明の目的は、栽培設備の小型化・軽量化・低廉化を可能とし、栽培植物の移動を容易に行うことができ、単位圃場面積あたりに栽培可能な植物の株数が多く、灌水や施肥の管理も容易であり、かつ多収穫、高品質な植物の栽培を可能とする植物栽培技術を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の植物栽培装置の第1の構成は、袋状の包容材により形成され、植物を植えるための開口部が形成された栽培槽と、前記包容材の内面底部に敷かれた保水性を有する保水材と、粉体状又は粒体状若しくは繊維状の高吸水性ポリマーを含有する培地と、を備えていることを特徴とする。
【0027】
植物は包容材に形成された開口部を通して培地に植栽される。そして、培地に灌水することで、植物の栽培が行われる。培地は高吸水性ポリマーを含有しているため、保水容量及び保肥力が大きい。更に、包容材の内面底部に敷かれた保水材にも保水させることができる。そのため、植物の栽培に必要とされる培地は少量でよく、栽培槽を小型化・軽量化することが可能となる。従って、栽培槽の設置場所を選ばず、狭い場所でも栽培槽の設置が可能となる。また、養液栽培のような大規模な設備は必要としないため、植物栽培装置を低廉な価格で容易に導入することが可能である。
【0028】
また、栽培槽を小型化・軽量化できるため、栽培槽の運搬が容易である。従って、栽培する植物の成長や時期に応じて、栽培槽を適所に運搬することが容易となる。栽培槽を小型化することによって、育苗圃場では複数の栽培槽の間隔を詰めて育苗を行い、本圃では栽培槽の間隔を広げて植物の栽培を行うことができる。そのため、栽培植物の植え替えを行うことなく、育苗から収穫まで一貫して同じ栽培槽で行うことができる。従って、植物の植え替えが不要であり、植物栽培に要する労力が大幅に軽減される。
【0029】
また、本圃での植物の収穫が終わると、他の栽培槽で栽培された植物を、育苗圃場から本圃に運んで次々と生産することが可能である。従って、本圃の植物生産効率が向上する。また、栽培槽を小型化することにより、小さい圃場面積でより多くの株数の植物を栽培することができる。従って、単位圃場面積あたりで栽培可能な植物の株数を向上させることができる。
【0030】
また、栽培槽の保水容量が大きいため、灌水回数を減らすことができる。更に、高吸水性ポリマーは、吸水するとゲル状となり植物の根との接触が良好となる。そのため、植物の根は水を効率的に吸収することが可能で、植物に加わる水分ストレスは小さい。従って、灌水管理が容易となるとともに、栽培植物の多収穫化、高品質化を図ることができる。
【0031】
更に、栽培槽を小型化・軽量化することで、栽培槽を栽培棚等の高架台に吊り下げて植物の高架栽培を行うことが可能となる。このとき、高架栽培における高架台に加わる重量負担は小さい。従って、高架台に高い強度が要求されることがなく、装置を大型化することが容易である。また、軽量化により高架台に多くの栽培槽を懸吊することが可能となるため、狭い栽培面積で植物の生産量を向上させることができる。また、高架栽培とすることにより、土壌伝染病、土壌害虫、雑草の被害がなくなる。従って、これらに対する農薬散布が不要となると共に、生産される植物の品質が向上する。
【0032】
ここで、「植物」の種類は、特に特定するものではなく、例えば、レタス、イチゴ等の野菜類、コスモス、パンジー、ラン等の花卉類などの栽培に適用される。「粉体」とは、付着力などの粒子間相互作用が1個の粒子の重力に比べて大きい粒子の集合体をいい、「粒体」とは、粉体よりも粒子径の大きい粒子の集合体をいう。
【0033】
「高吸水性ポリマー」とは、主として分子鎖中に多くのカルボキシル基のようなアニオン基を持つ高分子架橋物であって、イオン基の水和により多量の水を吸収・膨潤しヒドロゲルを形成する高分子化合物をいう。一般に、高分子電解質等の水溶性ポリマーをグラフト重合による3次元化、橋かけ剤による橋かけ重合、水溶性高分子の3次元化、自己橋かけによる網状化、放射線照射による網状化、結晶構造の導入等により不溶化して生成される。「高吸水性ポリマー」としては、デンプン系の高吸水性ポリマー、合成ポリマー系の高吸水性ポリマー、セルロース系の高吸水性ポリマーがあるが、何れを使用することも可能である。具体的には、例えば、メビオール株式会社製の「スカイジェル」(商品名)、昭和電工株式会社製の「ノニオレックスNA−010」(商品名)、株式会社興人製の「サーモゲル」(商品名)等を使用することができる。
【0034】
「培地」は、高吸水性ポリマーを含有するものであればよく、含有比率については特に特定するものではない。しかしながら、培地の空気孔隙比を適度な量に確保するためには、乾燥培地1リットルに対して約0.5〜1gの高吸水性ポリマーを混合することが好ましいことが実験的に確かめられている。
【0035】
「包容材」とは、培地が分散しないように包容する容器材をいい、材料は特に限定するものではなく、例えば、硬質樹脂、ポリエステル繊維やビニル繊維等の繊維材を用いた織布又は不織布やゴムシート等が使用される。粉体状又は粒径状の高吸水性ポリマー粒子の粒径については、特に限定するものではないが、経験上、平均粒径が0.01〜2.0mmφ、より好ましくは0.5〜2.0mmφ程度とすることが望ましい。平均粒径が0.5mmφよりも小さくなると、高吸水性ポリマーを他の資材と混合するときにうまく混ざりにくい傾向があり、また、平均粒径が2.0mmφよりも大きい場合も、高吸水性ポリマーを他の資材と混合するときにうまく混ざりにくい傾向があるからである。「保水材」としては、親水性ポリエステルの不織布などが使用される。
【0036】
尚、包容材の外側に藻が発生し、生産物である植物がこの藻に接触することによって汚れた状態となることを防止するために、包容材の外面を酸化チタン膜によりコーティング処理してもよい。これにより、光が酸化チタンの表面にO2 -とOHという、2種の活性酸素を発生させ、これにより分解力が発揮され、藻などの有機物が分解されるため、藻の発生が抑えられる。
【0037】
また、本発明においては、前記培地には、ピートモス、バーミキュライト、パーライト、シリカ、ボラ土、有機合成物のうちの少なくとも一つを含有させることができる。
【0038】
これによれば、ピートモス、バーミキュライト、パーライト、シリカ、ボラ土、有機合成物(以下、「ピートモス等」という)が培地内部に多くの孔隙を作る。そのため、培地内部に植物の根に必要な適度な空気が保持される。すなわち、ピートモス等が高吸水性ポリマー粒子の粒子間隔を押し広げる役割をし、吸水して膨潤・ヒドロゲル化する高吸水性ポリマー粒子の粒子間に多くの空気孔隙を確保する。すなわち、培地の空気孔隙率(培地の全体積に対する培地中の空気の体積の比)を大きくする作用を有する。このように空気孔隙率が適当に確保されることにより、培地内に適度な空気が保持され、植物が根腐れを起こすことが防止される。
【0039】
また、ピートモスやバーミキュライトは、陽イオン交換容量(CEC)が大きいため保肥力が高い。そのため、灌水により培養土から肥料が溶け出した培地養液中の肥料成分(例えば、NH4 +等)を多く吸着して培地中にとどめる。そして、培地内の水に溶け込んだ肥料成分の濃度が低下すると、吸着している肥料成分を放出し、培地内には常に肥料成分が安定して供給される。従って、植物に対する肥料濃度ストレスが緩和され、植物の生育がより促進される。
【0040】
また、包容材として、可撓性を有するシート状の部材を用いることができる。
「可撓性を有するシート状の部材」とは、例えば、繊維材、ポリエステルシート、ビニルシート、ゴムシート等である。包容材を可撓性シート材で構成すると、軽量で、かつ、栽培地の状況に合わせて栽培槽を自由に曲げて設置することが可能となる。また、包容材内部の高吸水性ポリマーは、水分を吸収することによって著しく体積が膨張するが、包容材が可撓性を有するために自由に変形し、高吸水性ポリマーの体積膨張を吸収することができる。そのため、培地が包容材の開口部分から溢れ出すことが防止される。
【0041】
また、包容材に通気性をもたせることもできる。これにより、包容材を通して培地内に空気が供給され、培地内の空気が欠乏することが防止される。
【0042】
また、包容材に透水性をもたせることもできる。これにより、過剰な灌水は排水され、根腐れを起こしにくくなる。
【0043】
本発明の植物栽培装置の第2の構成は、前記第1の構成において、前記栽培槽は、縦長袋状の包容材により構成され、前記栽培槽の長手方向に1列に並んで前記開口部が複数個形成されていることを特徴とする。
【0044】
この構成により、栽培槽が縦長袋状であるため、その一端又は両端を持って搬送することができる。従って、運搬が容易であり、栽培槽の運搬時の作業性が向上する。
【0045】
また、栽培槽が縦長袋状であるため、栽培槽を水平に架設した棒状体に吊すことも容易である。従って、栽培槽を空中に吊した状態で植物を栽培することが容易となる。
【0046】
更に、植物を植栽するための開口部は、栽培槽の長手方向に1列に並んで複数個形成されているので、栽培槽を壁面(例えば、斜面や塀等)に吊して栽培する場合でも、植物同士が接触することがない。従って、斜面栽培や壁面栽培に使用することも可能である。
【0047】
本発明の植物栽培装置の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記包容材は、透根性を有していることを特徴とする。
【0048】
このように包容材に透根性をもたせた場合、栽培する植物の根が成長すると、根端は包容材を突き抜けて空中に突出する。空中に突出した根端は、乾燥した環境におかれるため、成長を停止する。そして、成長を停止した根端の基部付近から多数の二次根が補償的に形成される。これにより、植物の根は親根や二次根に多数の分岐を有する形状に成長し、根巻き(ルーピング)を生じることがない。そのため、植物の根張りがよくなり、植物の成長が促進される。また、親根先端部や二次根先端からは多数の毛根が発生する。そのため、植物の養水分の吸収がよく、植物が活性化され成長が促進される。
【0049】
ここで、「透根性」とは、植物の細根がスムーズに通り抜けることができる性質をいい、細根が通り抜けることのできる細孔が多数形成されていることを意味する。具体的には、一般的に、細根の太さは直径0.5〜1.0mm程度なので、包容材が透根性を有するためには、例えば、直径約0.3〜2.0mm程度の穴が多数あいたシート又はネットであれば透根性を有することになる。
【0050】
本発明の植物栽培装置の第4の構成は、前記第1乃至3の何れか一の構成において、水平又はほぼ水平に架設された吊下支持部材を備え、前記吊下支持部材に対し、二以上の前記栽培槽が、隣接し合うもの同士が互いに接触しあった状態で吊り下げられていることを特徴とする。
【0051】
通常、栽培槽を吊下支持部材に単独で吊り下げて、栽培槽内で植物を栽培した場合、植物の成長に従って、植物の茎、葉等の地上部分の重量が大きくなる。そのため、栽培槽内部の培地の重量に対する植物の地上部分の重量の比率が大きくなると、吊下支持部材に対する植物の地上部分の重量の偏りによって、栽培槽が傾く。
【0052】
しかし、二以上の前記栽培槽を隣接し合うもの同士が互いに接触しあった状態で吊り下げることで、各栽培槽が安定し、栽培植物の地上部分の重量が大きくなっても栽培槽が傾くことが防止される。
【0053】
また、包容材が透根性を有している場合には、接触し合った栽培槽の間で、植物の根が隣の栽培槽内まで伸長する。従って、各栽培槽の植物の根系の体積が広がる。これにより、各植物の養水分の吸収が更に良好となる。また、各植物は培地の含水量の変化の影響もより受けにくくなる。
【0054】
本発明の植物栽培装置の第5の構成は、前記第4の構成において、前記吊下支持部材は、樋状又は多数の開口を有する管状に形成されており、前記吊下支持部材の樋内又は管内に収容されたドリップ灌水管を備えていることを特徴とする。
【0055】
この構成により、培地にはドリップ灌水管によって点滴灌水がされる。そのため、培地に過剰な灌水がされ続けることがないので、培地内部に適度な空隙が維持され、培地中の気相が確保される。従って、常に培地の気相と液相の割合を適度な比率に保つことが可能となり、常に植物の生育に最適な条件を確保することができる。
【0056】
ドリップ灌水管は吊下支持部材の管内又は樋内に収容されているので、栽培槽を吊下支持部材に脱着する際に、邪魔にならない。従って、栽培槽の脱着作業が容易となる。また、ドリップ灌水管は吊下支持部材で保護されると同時に支持される。そのため、この脱着作業中に、誤ってドリップ灌水管を損傷することを防止できる。
【0057】
また、ドリップ灌水管から漏出する灌水は、吊下支持部材の下方に滴下される。このとき、各栽培槽は、隣接し合うもの同士が互いに接触しあった状態にあるため、ドリップ灌水管から漏出する灌水は、何れかの栽培槽に滴下されて吸収されると、毛管現象により他の栽培槽にも染み渡って総ての栽培槽に灌水が行われる。
【0058】
また、各栽培槽は、苗の植え付けや培土の交換等の作業のために、比較的頻繁に吊下支持部材に脱着する必要がある。一方、上記構成によれば、ドリップ灌水管を各栽培槽の中に通す必要がなく、予めドリップ灌水管を吊下支持部材の中に通しておけば、吊下支持部材に栽培槽を吊り下げるだけで設置が完了する。故に、吊下支持部材に対して栽培槽の脱着を容易に行うことが可能となり、作業性が向上する。
【0059】
ここで、「ドリップ灌水管」としては、オンラインタイプ(灌水管に開口を設け、灌水管から直接灌水を行うもの)のドリップチューブ(点滴灌水チューブ)やインラインタイプ(灌水管に枝管を設け、灌水管から離れた場所で灌水を行うもの)のドリッパを使用することができる。例えば、オンラインタイプのものとしては、ネタフィム社製の「ラム17」(商品名)、「スーパータイフーン100」(商品名)、「ストリームライン80」(商品名)、「流滴」(商品名)、「ドリップライン2000」(商品名)、「ユニラム17」(商品名)、ブラストロ社製の「エデンA」(商品名)、「カティーフ」(商品名)、「ダガンB」(商品名)、「ハイドロドリップ」(商品名)、チャピン社製の「ダブルウォールドリップ」(商品名)、「チャピン」(商品名)、レゴ社製の「レゴ」(商品名)などを使用することができる。また、インラインタイプのものとしては、ネタフィム社製の「ポットドリッパ」(商品名)、「ボタンドリッパ」(商品名)を使用することができる。
【0060】
また、培地にはあらかじめ肥料を含ませておき、点滴灌水によって水のみを供給することができる。肥料を含む養液の点滴を行うのではなく、灌水のみを行うことで、ドリップ灌水管が肥料成分(例えば、鉄成分等)の沈着により閉塞するといったことはなく、ドリップ灌水管の保守管理も極めて容易となる。
【0061】
本発明の植物栽培装置の第6の構成は、前記第4の構成において、隣接し合う前記各栽培槽の間に保持されたドリップ灌水管を備えていることを特徴とする。
【0062】
この構成により、ドリップ灌水管を設置する場合には、栽培槽を吊下支持部材に吊り下げた後に、ドリップ灌水管を栽培槽に挟み込むだけでよい。従って、ドリップ灌水管の設置が容易であり、設置作業の作業性が向上する。
【0063】
本発明の植物栽培装置の第7の構成は、前記第4乃至6の何れか一の構成において、隣接し合う前記各栽培槽の間の空間に保持された温度調節材を備えていることを特徴とする。
【0064】
この構成により、冬季において気温が下がった場合においても、温度調節材を加熱することにより培地及び植物周辺の大気の温度調節をすることができる。また、夏期においても、極度に気温が上昇した場合でも、温度調節材を冷却することで、培地及び植物周辺の大気の温度調節をすることができる。これにより、植物に対する温度ストレスを緩和させることが可能となる。
【0065】
また、温度調節材を設置する場合には、栽培槽を吊下支持部材に吊り下げた後に、温度調節材を栽培槽に挟み込むだけでよい。従って、温度調節材の設置が容易であり、設置作業の作業性が向上する。
【0066】
ここで、温度調節材としては、温湯管や通水管のような温度調節管のほか、ヒートパイプ(真空状態にしたパイプの中に、適量の作動液(水、ナトリウム等)とその還流を促進するグルーブを装備した熱伝導素子)、熱伝導性テープ等を使用することができる。
【0067】
本発明の植物栽培装置の第8の構成は、前記第4乃至7の何れか一の構成において、前記吊下支持部材に吊り下げられ、前記各栽培槽を下面から持ち上げた状態で支持する支持体を備えていることを特徴とする。
【0068】
吊下支持部材のない場合、少量の培地を用いて栽培槽で植物を栽培した場合、灌水が栽培槽の下部に溜まって、その重みで栽培槽が縦長に変形する場合がある。縦長に変形した栽培槽では、植物の苗が植え付けられた培地の表面は、水平ではなく、傾斜した状態となる。一方、植物は、その習性上、鉛直上方に向かって成長する。従って、栽培槽において育成された植物は、根元付近の茎が曲がったものとなる。ネギや白菜、レタス等の野菜は、このように根元の曲がった形状のものは、市場価格が低い。
【0069】
しかしながら、支持体によって各栽培槽を下面から持ち上げた状態で支持することにより、栽培槽内の培地の表面を平坦に維持することができる。そのため、培地に植え付けられた植物は、平地に植えられた状態と同様の状態で生育する。従って、栽培される植物がいびつな形状となることが防止され、栽培植物の商品価値が低下することを防止することができる。
【0070】
ここで、支持体としては、可撓性、通気性、透水性、透根性を有する部材を使用するのが好ましい。支持体が可撓性を有することで、栽培槽の形状や大きさに適合して支持体が変形する。支持体が通気性を有することで、支持体と包容材を通して、培地に空気が供給され、培地内の空気の欠乏が防止される。支持体が透水性を有することで、仮に培地に過剰な灌水が供給された場合でも、圃場容水量を超える水は重力水として、包容材と支持体を通って下部に排水される。従って、培地が水分過剰な状態となることが防止され、植物の根腐れが発生したり、植物に大きな水分ストレスが加わることが防止される。更に、支持体が透根性を有することで、包容材を通して張り出した植物の根の根端は、支持体を突き抜けて空気中に曝され、成長が停止する。そのため、根巻きが防止され、二次根形成及び毛根形成が促進され、植物の生育が良好となる。
【0071】
このような支持体の材料としては、例えば、金網、プラスチック製の網等を使用することができる。
【0072】
本発明の植物栽培装置の第9の構成は、前記第4乃至8の何れか一の構成において、少なくとも前記各栽培槽の下面を被覆して設けられた集水シートと、前記集水シートの下部に設けられ、集水シートにより集水される水を貯水する縦長の貯水部と、前記貯留部の底部の所定の箇所に設けられた排水口と、を備えていることを特徴とする。
【0073】
この構成によれば、仮に培地に過剰な灌水が供給された場合、圃場容水量を超える水は重力水として、包容材を通って外部に排水されるが、一旦集水シートの下部の貯留部に貯留される。貯留部は縦長であるため、少量の水が流入した場合でも、貯留部内の水位が高くなる。従って、集水シートに弛みがある場合にも、過剰な灌水を効率よく集水し、排水することが可能となる。
【0074】
本発明の植物栽培装置の第10の構成は、前記第1乃至3の何れか一の構成において、平面、斜面又は垂直面上に敷設された遮水層、前記遮水層の上面に敷設された透水性を有する透水層、及び、前記透水層の上面に敷設された遮根層を有する灌水基盤と、前記灌水基盤の上面に、互いに隔離して複数個並べられた前記栽培槽と、を備えていることを特徴とする。
【0075】
この構成により、斜面上部に灌水された場合、水は透水層を通って下方に移動する。このとき、透水層は抵抗が大きく、毛管現象も生じるため、灌水された水は灌水基盤の全体に広がる。従って、灌水基盤上に配置された各栽培槽に、水は満遍なく行き渡る。各栽培槽に到達した水は、毛管現象によって栽培槽の底部の保水材に吸い上げられ、各栽培槽内に保水される。また、各栽培槽は各々が隔離して配置されているので、各栽培槽間において直接水が移動することはない。従って、傾斜下部の栽培槽も傾斜上部の栽培槽も均等に灌水される。そのため、栽培槽ごとに植物の成長に差が生じることが防止される。
【0076】
また、各栽培槽には、保水材の毛管現象による吸い上げによって灌水が行われることから、各栽培槽が過剰灌水となることはなく常に適量の水が供給される。従って、植物の根に加わる水分ストレスが小さく、生育が良くなるため、品質の良い植物を生産することができる。
【0077】
本発明の植物栽培方法の第1の構成は、透水性を有する袋状の包容材からなる栽培槽の内面底部に保水性を有する保水材を敷き、前記栽培槽の内部に、粉体状又は粒体状若しくは繊維状の高吸水性ポリマーを含有する培地を詰めて、前記培地に植物を植栽して栽培することを特徴とする。
【0078】
この構成により、培地中に含まれる高吸水性ポリマーと保水材とによって、栽培槽の保水容量は非常に大きくなる。従って、灌水回数を減らすことができるため、植物の栽培が容易となる。また、培地の保水容量が大きいため、植物の栽培に必要な培地の量は少なくてもよい。そのため、栽培槽を小型化・軽量化することができ、栽培槽の搬送が容易となる。従って、栽培槽を適所に持ち運んで植物の栽培を行うことが可能となる。
【0079】
本発明の植物栽培方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記培地に、ドリップ灌水管により点滴灌水を行うことにより植物を栽培することを特徴とする。
【0080】
この構成によって、植物への過剰な灌水を避けることができる。そのため、栽培時の水の節約をすることができる。また、過剰な灌水を行うと、余分な水は栽培槽の外に排水されるが、排水と共に培地中の肥料も流亡する。しかし、点滴灌水を行うことにより、無駄な排水を少なくすることができるため、肥料の流亡を防止することができる。
【0081】
本発明の植物栽培方法の第3の構成は、前記第1又は2の構成において、前記栽培槽を空中に吊り下げた状態で植物を栽培することを特徴とする。
【0082】
これにより、土壌病害虫の被害を防止することができる。また、雑草の種子や根が侵入しにくいため、雑草が繁殖する心配もなくなる。従って、土壌妨害虫の駆除や雑草の防除のための農薬を使用する必要がなくなる。
【0083】
本発明の植物栽培方法の第4の構成は、前記第1又は2の構成において、透根性を有する袋状の包容材からなる前記栽培槽に前記培地を詰めて、前記培地に植物を植栽して栽培することを特徴とする。
【0084】
この構成により、栽培槽内において、植物の根が根巻きを起こすことを防止することができる。また、植物の根系において、二次根、毛根の発達が促進され、根系の養水分の吸収効率が向上する。その結果、植物の生育が促進され、品質の良い植物を生産することができる。
【0085】
本発明の植物栽培方法の第5の構成は、前記第3又は4の構成において、水平又はほぼ水平に架設された吊下支持部材に、二以上の前記栽培槽を、隣接し合うもの同士が互いに接触しあった状態に吊り下げて、前記各栽培槽において植物の栽培を行うことを特徴とする。
【0086】
この構成により、吊り下げられた栽培槽が安定するため、植物の生育に伴って栽培槽の重心が多少傾いた場合であっても、栽培槽が傾くことが防止される。
【0087】
本発明の植物栽培方法の第6の構成は、前記第3の構成において、前記吊下支持部材に吊り下げられられた吊下支持体により、前記各栽培槽を下面から持ち上げて支持した状態で、前記各栽培槽において植物の栽培を行うことを特徴とする。
【0088】
この構成により、栽培槽内部の培地の表面が水平に保たれるので、栽培植物の根元付近の茎や葉が曲がって成長することが防止され、植物の商品価値の低下を防ぐことができる。
【0089】
本発明の植物栽培方法の第7の構成は、前記第1又は2の構成において、平面、斜面又は垂直面上に敷設された遮水層、前記遮水層の上面に敷設された透水性を有する透水層、及び、前記透水層の上面に敷設された遮根層を有する灌水基盤の上面に、複数の前記栽培槽を互いに隔離して載置し、前記灌水基盤の透水層に対して灌水を行うことにより、植物の栽培を行うことを特徴とする。
【0090】
この構成により、灌水基盤の透水層に対して灌水を行うことで、各栽培槽に対して均等に灌水を行うことができる。従って、灌水管理が容易となる。
【0091】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0092】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置の断面図であり、図2は本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置の側面図である。
【0093】
図1において、植物栽培装置の栽培槽1は、培地2と、培地2を包容する袋状の包容材3とを備えている。培地2は、平均粒径0.01〜0.5mmφの粒体状の高吸水性ポリマーと、肥料を含んだ培養土とを含有する。高吸水性ポリマーは、メビオール株式会社製の「スカイジェル」(商品名)が使用され、培養土としては、ピートモス及びパーライトが使用されている。なお、培養土はこれに限られたものではなく、バーミキュライト、シリカ、ボラ土、有機合成物を使用することも可能である。また、肥料としては、肥効調節型肥料が添加されている。高吸水性ポリマーの混合比率は、乾燥ピートモスの容積1リットルに対して高吸水性ポリマー0.5〜1.0gの割合とされている。包容材3は縦長の袋状に形成されている。また、包容材3は、通気性・透水性を有するポリプロピレンの織布により構成されており、具体的には日本石油化学株式会社製の「植物の栽培用シート」(商品名)が使用されている。この包容材3は、可撓性を有し、培地2の膨潤による体積変化を吸収するとともに、自由に折り曲げることが可能である。この織布には、全体に直径0.5〜1.0mm程度の網目が形成されており、細根がスムーズに通過できるため、透根性を有する。
【0094】
包容材3の内側底部には厚さ約5〜10mmの親水性ポリエステルの不織布シートからなる保水材4が布かれており、この保水材4は吸水性を有している。包容材3の側部には長手方向に並んで複数の開口部5が設けられており、開口部5を通して包容材3の外に茎及び葉を出すように植物6が培地2に植えられている。植物6の根系6aは、培地2内に形成されている。なお、開口部5は、包容材3の左右側面に交互に複数個設けられている。このように、左右交互に開口部5を設けたのは、隣接する植物6,6の葉同士が接触しない間隔で、かつ、なるべく高密度で植物の植え付けを行うことを可能とするためである。また、左右均等に植物6,6を植え付けることにより、栽培槽1の左右の重量バランスがほぼ均等となり、栽培槽1が左右何れか一方に傾斜することが防止される。
【0095】
包容材3の上部には、8番線の針金からなる支持体7が通されている。この支持体7はフック状の吊下部8により、地面に対して水平となるように空中に固定された吊下棒9に脱着自在な状態で吊り下げて止められている。これにより、栽培槽1は吊下棒9に吊り下げられた状態とされている。
【0096】
包容材3の内部の培地2の上面には、培地2に対して点滴灌水を行うドリップ灌水管10が配設されている。このドリップ灌水管10を通して、培地2には水が点滴灌水される。なお、ドリップ灌水管10には住化農業資材株式会社製の「ストリームライン60」(商品名)が使用されている。
【0097】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置について、以下その植物栽培方法について説明する。
【0098】
まず、栽培槽1の吊下部8を吊下棒9から外した状態で、包容材3の内部に培地2を充填する。次に、培地2に植物6を植えて、吊下部8により栽培槽1を吊下棒9に吊り下げた後、栽培槽2にドリップ灌水管10を通す。ドリップ灌水管10の吸水側は、吸水ポンプ(図示せず)に接続し、吸水ポンプによって一定の圧力を加えた水をドリップ灌水管10に供給することにより、灌水を行う。
【0099】
灌水された水の一部は、培地2に含まれる高吸水性ポリマーに吸収され、高吸水性ポリマーは水を吸収して膨潤する。また、水の一部は、培地2内の孔隙に、毛管水として保水される。これにより、培地2には多量の水が保水される。
【0100】
培地2に含まれる高吸水性ポリマーは、高分子電解質等の水溶性ポリマーが架橋して網目状の構造となり不溶化したものである。そのため、高分子鎖に付いている親水基が網目状の高分子鎖の間に水分子を捕獲して膨張しゲル状となり、自重の50〜100倍以上の水を吸水し保持する。この高吸水性ポリマーに保持された水の大部分は自由水又は半結合水の状態にあり、大部分が植物6が利用可能なpF値1.6〜4.2の水である。
【0101】
また、高吸水性ポリマーは粒体状であるため、吸水してヒドロゲル化した場合にも、各高吸水性ポリマーの粒子間に一定の空気孔隙が確保される。そのため、培地2内の空気が完全に欠乏することが防止される。従って、高吸水性ポリマーを培地2に含有させることで、植物6の生育に必要な水、空気及び肥料を空間中に固定させることができる。また、栽培する植物6自体は培地2及び包容材3により空間中に固定される。
【0102】
一方、灌水された水の一部は、培地2内を浸透し、その下部にある保水材4に吸収されて保水される。このように、保水材4が、灌水の一部を保水することで、培地2の水分が不足した場合には、毛管現象によって保水材4から培地2に水が供給されるため、培地2の保水量の変動が緩和される。また、これにより長期間にわたって培地2が適度な保水状態に維持される。すなわち、栽培槽1全体としての保水量が大きくなる。これにより、灌水効率が向上し、灌水の供給間隔をより長くすることが可能となる。
【0103】
更に、保水材4に保水しきれない水は、透水性を有する包容材3の下部から、重力水として滴下排出される。これにより、培地2内が水分過剰な状態となって空気不足となり、植物6が根腐れが発生したり、植物に大きな水分ストレスが加わることが防止される。
【0104】
また、培地2には最初から肥料が含まれているため、灌水は水のみを行い、肥料の養液の灌水は行わない。これにより、肥料成分(鉄成分等)の沈着によりドリップ灌水管が閉塞するといったトラブルが発生することがなく、ドリップ灌水管の維持管理が極めて容易となる。また、養液を灌水に混入して供給する装置も不要であり、装置全体としての構成も簡単となり、低廉な価格で植物栽培装置を提供することができる。
【0105】
灌水を行うことによって、培地2内の肥料分は水に溶解するが、溶解した肥料分は、培地2中の高吸水性ポリマーやピートモス等により保持又は吸着され、保肥される。従って、植物6は肥料に不足することはない。すなわち、培養土に肥料が含まれているため、灌水を行うだけで肥料が培地2中に溶け出しバランスのとれた培地養液で満たされる。すなわち、窒素・リン酸・カリなどの成分が、植物が吸収し易い水溶液の形で培地2中に存在し、植物6の養分吸収量が高まる。従って、植物6の生育が促進され、植物6の高生産及び高品質化が図られる。
【0106】
ここで、高吸水性ポリマーは、肥料成分であるアンモニア態窒素(NH4−N)及び塩基類(MgO、K2O、CaO等)を保持する作用を有する。すなわち、保肥作用も有する。植物の生育には、特に窒素・リン酸・カリが重要であるが、このうち培養土中の窒素肥料に含まれる窒素成分は硝化細菌により有機態→NH4 +→NO2 -→NO3 -のように早期に変化する。このNO3 -は水に溶けやすいため、水の移動により流亡しやすい。しかしながら、高吸水性ポリマーが、水とともにNO3 -をも培地2中に保持するために、培地2の保肥力は通常の土壤に比べて大きい。
【0107】
また、高吸水性ポリマーは高い保水力を有するため、植物の生育に必要とされる培地2の量は少なくてもよい。従って、栽培槽1全体を小型化・軽量化することができる。具体的には、灌水が行われ培地2に圃場容水量の水が供給された状態において、栽培槽1の長さ1mあたりの重量を3〜10kg程度とすることができる。従って、吊下棒7として特別な枠やスペースをとる必要はなく、例えば、ビニルハウスの梁などに栽培槽1を懸吊して植物の栽培を行うことができる。
【0108】
また、高吸水性ポリマーが水を大量に保持するために、培地2の圃場容水量が大きく、気温条件、日照条件、湿度条件、植物6の水分消費条件等の様々な条件の変化に伴う培地2内部の保湿状態の変化が緩和される。そのため、植物6の根系6aに対して水分ストレスを極めて小さくすることができる。従って、植物6が常に継続して光合成を行うことができ、植物6の生育がより促進される。
【0109】
また、培地2に適度に灌水が供給されている限り、包容材3は常に水で湿った状態にある。従って、培地2の温度が上昇した場合、包容材3に浸透した水分が蒸発し蒸発潜熱により培地2が冷却される。すなわち、包容材3自体が温度変化緩衝作用を有する。従って、植物6の根に対する温度変化によるストレスを小さくすることも可能となる。
【0110】
一方、上述のように、高吸水性ポリマーに吸収された水は、平均的に通常の自由水に比べてpF値が大きい(すなわち、半結合状態の水が多く含まれる)。従って、通常の自由水と比べると蒸発しにくい。それに加え、培地2の圃場容水量が大きいため、灌水は殆どが培地2に吸収され、重力水として流亡する灌水の量を極力少なくすることができる。従って、灌水を可能な限り植物に与えることができるため、灌水の利用効率がよく、灌水回数を大幅に軽減することができる。
【0111】
実験では、通常の土壤で約3回の灌水を行うところを、高吸水性ポリマーを上述の割合で含む培土においては1回の灌水を行えばすむことが実証された。従って、灌水管理が容易化され、管理労力が低減される。
【0112】
図3は本実施の形態の植物栽培装置をビニルハウスの梁に懸吊して設置した例を示す図である。従来の養液栽培等では、栽培槽の重量が大きいために、栽培槽を既存のビニルハウスの梁に懸吊することなどは不可能であったが、本実施の形態の植物栽培装置は、栽培槽1が極めて軽量であるため、図3に示すように、既存のビニルハウスの梁に栽培槽1を懸吊して植物を栽培することも可能となる。従って、従来使用されていなかったスペースに栽培槽1を設置することで、スペースの有効活用が可能となり、また、農業経営の増収・増益を図ることができる。
【0113】
このように、本実施の形態の植物栽培装置によれば、植物の栽培槽を小型化、軽量化することができ、空き地や狭い土地にも栽培槽を容易に設置することが可能となる。また、設備費が低廉で、灌水や施肥の管理も容易であり、農作業の労力が低減される。さらに、多収穫、高品質な植物の栽培が可能となる。
【0114】
最後に、包容材3として使用した透根性を有するシートが、植物の根に及ぼす作用について説明する。
【0115】
図4は包容材の付近における植物の根の成長過程を表す図である。
図4(a)において、植物の親根11の根端12は、成長するに従って伸長し、包容材3の内面に達する。ここで、包容材3は透根性を有する部材により構成されているため、親根11の根端12は、包容材3の網目3aを突き抜けて、包容材3の外部まで伸長する。包容材3の外部に伸長した植物の親根11の根端12は、外気により乾燥し、根端12には乾燥ストレスが加わる。そのため、根端12は成長を停止する。これにより、植物の親根11の成長が止まるため、根巻きが生じることがなくなる。
【0116】
次に、根端12の伸長が停止した場合、親根11の根端12の近傍に、二次根形成が始まる。尚、二次根形成は、根端12の伸長が停止していない場合にも生じるが、その位置は、根端12から一定の距離離れ、親根11の繊維束要素が内皮が一定の生育段階に達しなければ、二次根始原体は形成されない。すなわち、基本的に植物は株を安定させるために主根や1次根のような親根11の伸長が優先的に生じるため、二次根形成は遅れる。従って、根端長(根の先端から、最初に出現した二次根の位置までの長さ)は長くなる。しかしながら、乾燥ストレスにより根端12の伸長が停止した場合、根端12の近くに二次根14が補償的に形成される(図4(b)参照)。また、親根11の伸長が停止した分だけ、二次根形成が促進され、比較的多数の太くて長い二次根14が形成される。更に、親根11の根端12付近や二次根14には、多数の毛根13,13’が顕著に多く形成される。これらの毛根13,13’は、培地2内の養水分の吸収機能が高く、植物の養分吸収が良好となる。その結果、植物の成長が良好となる。
【0117】
このように、包容材3として透根性を有するシートを使用することにより、二次根形成が促進されるため、限られた量の培地2の中において、養水分の吸収効率のよい根系が形成される。そして、植物の養水分の吸収機能が向上する結果、植物の成長が良好となる作用が生じる。
【0118】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2に係る植物栽培装置の断面図である。
図5において、培地2、包容材3、保水材4、開口部5、植物6、根系6aは実施の形態1と同様であるため、同一の符号を付して説明は省略する。
【0119】
本実施の形態における植物栽培装置の栽培槽1'は、地面20の上に載置された状態で設置されている。この場合、包容材としては、通気性・透水性を有するポリエステル繊維のような部材としてもよいが、植物6が湿潤な環境を好む花卉類などの場合には、包容材としてゴムシートを使用してもよい。
【0120】
また、本実施の形態においては、ドリップ灌水管の代わりに、点滴灌水が可能なドリッパ21が使用されている。このドリッパ21は、培地2に先端が差し込まれ、培地2中に灌水を注入するスタビライザ21aと、スタビライザ21aに灌水を供給する給水チューブ21bにより構成されている。給水チューブ21bの一端部は、栽培槽1’に平行に配設された給水パイプ22に接続されている。この給水パイプ22には、給水ポンプ(図示せず)から、一定の水圧で給水が行われる。ドリッパ21は、栽培槽1’の各所に、灌水に適当な間隔をおいて複数個設けられている。このように構成することで、ドリップ灌水管を包容材3の中に通す必要がなくなり、栽培槽1’の設置が容易となる。
【0121】
また、本実施の形態においては、包容材3の内部の培地2の上面に、培地2の温度を調節する温度調節管23が敷設されている。この温度調節管23には、温水又は冷水が、加温媒体又は冷却媒体として流され、培地2及びその周囲の空気の温度を調節する。このように構成することで、寒さや暑さに弱い花卉類のような植物の栽培も容易となる。
【0122】
図6は実施の形態2の植物栽培装置を地面に設置した例を示す図である。
尚、図6は、給水パイプ22及びドリッパ21を敷設する前の状態である。また、包容材3として、ゴムシートを使用している。このように、休閑中の農地に本実施の形態の栽培装置の栽培槽1’を設置して植物の栽培を行うことで、土地の有効活用ができ、農業経営の増収・増益にもつなげることができる。
【0123】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3に係る植物栽培装置の斜視図、図8は本発明の実施の形態3に係る植物栽培装置の栽培槽付近の断面図である。
【0124】
図7、図8において、本実施形態に係る植物栽培装置30は、傾斜した架台31の上面に、不透水性の遮水シート32、透水シート33、透水遮根シート34からなる灌水基盤35が形成されている。そして、灌水基盤35の上面には、複数の栽培槽36が、傾斜方向に間隔をおいて並べて水平に載置されている。
【0125】
灌水基盤35の傾斜最上部には、灌水基盤35の全幅にわたり灌水管42が水平に配設されている。この灌水管42から水又は養液が灌水基盤35に供給される。
【0126】
遮水シート32は、通常のビニルシート、ポリエステルシート等を使用することができる。また、透水シート33は、養水分を浸透させるとともに保水性を有する不織布やスポンジ等のシートが使用される。透水遮根シート34は、栽培槽36に栽培される植物の細根を遮根するシートであり、透水性を有するシートが使用される。
【0127】
栽培槽36は、培地37を包容する横長の袋状に形成された包容材38と、包容材38の内底部に敷設された保水材39を有している。包容材38は、実施の形態1と同様に、通気性、透水性、及び透根性を有するシート部材である。また、包容材38の上部には、所定の間隔で開口部40が形成されており、この開口部40に植物41が植栽される。
【0128】
培地37には、実施の形態1で説明したものと同様のものが使用されている。保水材39には、透水シート33よりも吸水性の大きい不織布や高吸水性ポリマー繊維が使用される。具体的には、保水材39としては、例えば、ポリエステル繊維等を使用することができる。
【0129】
以上のように構成された本実施形態の植物栽培装置30において、以下その作用を説明する。
【0130】
灌水管42から供給された水又は養液は、透水シート33に浸透し、架台31の傾斜により、重力水として透水シート33内を斜面下方に移動する。透水シート33内の重力水が各栽培槽36の下部に達すると、重力水は栽培槽36の包容材38に浸透し、保水材39及び培地37に吸収され保水される。
【0131】
各栽培槽36に供給された灌水は、一旦保水材39及び培地37に吸収され保水されることから、灌水を中断しても、各栽培槽36は、比較的長時間に渡って湿潤な状態が保たれる。すなわち、灌水を行う時間間隔を長くすることができ、植物栽培時の灌水管理が容易となる。
【0132】
また、重力水は、透水シート33を伝わって、灌水基盤35の全体に広がるため、各栽培槽36は満遍なく灌水される。そして、各栽培槽36は、所定の間隔だけ離隔して配置されているため、各栽培槽36間での水の移動はない。そのため、傾斜上部の栽培槽36から傾斜下部の栽培槽36に向かって水が移動することはない。従って、傾斜上部の栽培槽36が灌水不足となり、傾斜下部の栽培槽36が過剰灌水となることが防止される。
【0133】
更に、風が強いときでも栽培槽36が揺れることがなく、安定性に優れている。
【0134】
(実施の形態4)
図9は本発明の実施の形態4に係る植物栽培装置の要部断面図である。本実施形態の植物栽培装置50は、培地51を包容する包容材により構成された二つの栽培槽52,52を有している。培地51は、実施の形態1と同様、粒体状の高吸水性ポリマーと培養土とを含有したものが使用されている。また、栽培槽52,52を構成する包容材は、実施の形態1と同様に、通気性、透水性、透根性を有するポリプロピレンの織布が使用されている。
【0135】
本実施形態における栽培槽52のサイズは縦が約60cmで幅が約10cm程度の大きさの袋体であり、内容量は約1.5リットルである。この栽培槽52に吸水材54を敷いて培地51を充填し、吸水させると、全体の重量は約1.4kg程度となり、持ち運びやすい大きさと重さとなる。
【0136】
各栽培槽52の上部には、8番線の針金からなる支持体52aが通されている。そして、この支持体は、空中に水平に固定された吊下支持部材53に、フック状の吊下部52bにより掛架されている。そして、左右の栽培槽52,52同士は互いに側面が接触し合った状態で釣り合っている。
【0137】
このように、本実施形態においては、左右の栽培槽52,52同士が互いに接触しあった状態となるように掛架することで、栽培槽52,52が安定し、植栽された植物58,58の成長に伴って多少の左右重量のアンバランスが生じた場合でも、栽培槽52,52が傾くことが防止される。
【0138】
すなわち、例えば、図1のような植物栽培装置では、栽培槽1は、吊下部8によって吊下棒9に1点で支持されているので、左右に回転しやすい。従って、栽培槽1の左右に突き出して植えられた植物の成長速度が異なった場合、例えば、右側の植物の生育がよく、左側の植物の生育が悪かった場合、栽培槽1は左側に傾きやすい。
【0139】
しかしながら、本実施形態における植物栽培装置50の場合には、各栽培槽52は、吊下部52bにより吊下支持部材53に支持され、かつ、両栽培槽52,52同士が側面で互いに接触し合っている。そのため、両栽培槽52,52は、それぞれの重量がアンバランスとなっても回転しにくい。従って、例えば、一方の植物の生育がよく、他方の植物の生育が悪かった場合でも、両栽培槽52,52は安定性がよく傾きにくい。
【0140】
吊下支持部材53は、アルミニウム合金によって構成されており、断面が三日月型の樋状体からなる。吊下支持部材53内部の溝53aは、内面の断面形状が円弧状であり、その溝開口部53bが鉛直下方を向くように配設されている。
【0141】
また、栽培槽52,52の内底面には、実施の形態1と同様に、保水材54が敷かれている。そして、栽培槽52,52の左右側部には、実施の形態1と同様、開口部55,55が形成されており、この開口部55,55を通して栽培槽52,52の外側に茎及び葉が出るように、植物58,58が培地51,51に植えられている。
【0142】
吊下支持部材53の溝53a内には、培地51,51に対し点滴灌水を行うドリップ灌水管56が収容されている。ここで、ドリップ灌水管56の直径は、吊下支持部材53の溝53aの幅よりも大きく構成されている。従って、ドリップ灌水管56は、特に紐や針金などで支持しなくても、溝53aの両端で支持され、溝53a内に保持される。
【0143】
また、左右の栽培槽52,52の間の空間には、培地51,51を加温又は冷却する温度調節管57が、両栽培槽52,52に挟まれた状態で保持されている。温度調節管57は、左右の栽培槽52,52の間に挟んであるだけであり、特に紐や針金などで吊下支持部材53に固定する必要はない。すなわち、左右の栽培槽52,52が、それぞれの自重により互いに押し合った状態で吊り下げられた状態にあるため、特に温度調節管57を吊下支持部材53に固定しなくても、温度調節管57は充分に保持され、落下することはない。
【0144】
また、必要に応じて、左右の栽培槽52,52の間の空間に水溶性の肥料を保持させることもできる。これにより、肥料が水に溶けて包容材を通して培地51中に浸透し、施肥を行うことができる。
【0145】
次に、本実施形態に係る植物栽培装置を使用した植物栽培方法について説明する。図10は植物の苗の養成状態を表す図、図11は苗の運搬状態を表す図、図12は植物栽培装置に苗を設置した状態を表す図である。
【0146】
植物を栽培する場合、まず、栽培槽52を吊下支持部材53から取り外し、栽培槽52内に新しい培地51を詰めた後、開口部55を通して培地51に植物の苗を植える。このように、栽培槽52を吊下支持部材53から取り外してから苗を植えることができるため、作業が容易であり、作業効率がよい。また、栽培槽52は、吊下支持部材53を掛架されているだけなので、脱着が容易である。
【0147】
次に、育苗が必要な場合には、図10のように、栽培槽52を、実施の形態3で説明した植物栽培装置と同様に、傾斜した架台31上に敷設された灌水基盤35の上に栽培槽52を広げて載置して育苗を行う。また、場合によっては、温度管理や日照管理のされた育苗圃場で育苗を行うようにしてもよい。
【0148】
培地51は、少量でも充分な保水力及び保肥力を有するため、栽培槽52の中に詰める培地51の量は少量である。従って、栽培槽52自体は、軽量であり、図11に示したように、栽培槽52を片手で持ち運ぶこともできる。そして、育苗が終わった段階で、栽培槽52を広い栽培圃場に運び、図12に示したように、植えられた植物が外側になるようにして、栽培槽52を吊下支持部材53に掛架する。そして、図9に示したように、左右の栽培槽52,52の間に、培地51を加温又は冷却する温度調節管57を挟み込んで保持する。このように、温度調節管57は挟み込むだけで設置することができるため、設置作業が簡単であり作業性がよい。
【0149】
温度調節管57には、温度調節された循環水を流すことにより、培地51の温度を調節する。また、吊下支持部材53の溝53a内に設けられたドリップ灌水管56から、灌水を漏出させる。漏出した灌水は、吊下支持部材53の下部に形成された溝開口部53bから下方に滴下する。この灌水によって、左右の栽培槽52,52内の培土51,51が均等に灌水される。このように、1つのドリップ灌水管56によって、左右の栽培槽52,52内の培土51,51を均等に灌水することができるため、灌水設備の構成が簡単であり、設備費が低廉化される。
【0150】
また、栽培槽52の持ち運びが容易であるため、栽培槽52を育苗圃場に詰めて置いて苗の養成を行った後に、栽培槽52ごと植物の苗を運んで、吊下支持部材53に掛架して植物を栽培することができる。従って、小面積で少ない労働力で植物の栽培を簡単に行うことが可能となる。
【0151】
更に、栽培圃場において、栽培槽52で育成した栽培植物の収穫が終わると、育苗圃場から、新しい苗の植えられた栽培槽52を運び、収穫の終わった栽培槽52と取り替えることで、効率的な植物の栽培を行うことが可能となる。従って、小面積の栽培圃場で高効率な植物栽培が可能となる。
【0152】
(実施の形態5)
図13は本発明の実施の形態5に係る植物栽培装置の要部断面図である。
図13において、培土51、栽培槽52,52、支持体52a,52a、吊下部52b,52b、保水材54,54、開口部55,55、ドリップ灌水管56は、実施の形態4と同様のものであるため、同符号を付して説明は省略する。
【0153】
本実施の形態における植物栽培装置60は、吊下支持部材53’として、樋状のC字樋を使用している。このC字樋は、ステンレスや塩化ビニルにより構成される。そして、吊下支持部材53’の溝53a’内にドリップ灌水管56が差し込まれている。吊下支持部材53’の溝開口部53b’の幅は、ドリップ灌水管56の幅よりも狭いため、ドリップ灌水管56は、吊下支持部材53’の溝53a’内に保持される。また、吊下支持部材53’の溝開口部53b’と通して、ドリップ灌水管56から培地51に直接点滴灌水される構成とされている。
【0154】
栽培槽52,52の底部には、栽培槽52,52を下面から持ち上げた状態で支持する支持体61が設けられている。そして、支持体61は、吊下紐61bによって吊下支持部材53’に吊り下げられている。支持体61は、プラスチック製のネットによって構成されており、栽培槽52の通気性、透水性、及び透根性を妨げないように構成されている。
【0155】
このように、支持体61によって栽培槽52,52を下面から持ち上げた状態で支持することで、栽培槽52,52内の培地の表面はほぼ水平状体に保たれる。
【0156】
すなわち、もし、支持体61がない場合には、図14に示したように、保水材54,54の強度が弱い場合、灌水の重みによって、栽培槽52,52は次第に長細く変形していく。これにより、培土51,51の表面が傾斜したり、植えられている植物59,59が傾斜したりする。一方、植物59は、鉛直上方に向かって成長する性質がある。そのため、植物59の根元付近の茎や葉が曲がる。例えば、図14のように、栽培槽にネギを植えた場合、根元の曲がったネギが生産される。このように、葉茎菜類などにおいて根元の曲がったものは、商品価値が低くなるため好ましくない。
【0157】
一方、本実施形態の植物栽培装置60では、支持体61によって栽培槽52,52を下面から持ち上げて支持するため、栽培槽52,52が縦長に変形することが防止される。従って、図13に示したように、植えられている植物59が傾くことが防止されるため、根元の部分が曲がっていない植物を生産することが可能となる。従って、葉茎菜類などを生産する場合でも、根元の曲がりにより商品価値が低くなることが防止される。
【0158】
(実施の形態6)
図15は本発明の実施の形態6に係る植物栽培装置の要部断面図、図16は図15の集水シートの斜視図である。
【0159】
図15において、培地51、栽培槽52,52、支持体52a,52a、吊下部52b,52b、保水材54,54、開口部55,55、ドリップ灌水管56、及び植物58は、図9と同様のものであるため、同符号を付して説明は省略する。
【0160】
本実施の形態の植物栽培装置70においては、吊下支持部材53”として、円形の管の一部に切り欠き溝53b”が形成されたC字状の樋部材を使用している。切り欠き溝53b”の幅は、ドリップ灌水管56の幅よりも狭く形成されている。これにより、ドリップ灌水管56は、吊下支持部材53”の溝53a”内に保持されている。また、実施の形態5と同様、ドリップ灌水管56から、直接培地51に点滴灌水が行われる。
【0161】
また、本実施形態の植物栽培装置70においては、栽培槽52,52の外側を覆って設けられた集水シート71を備えていることを特徴とする。集水シート71は、栽培槽52,52の下面を被覆して設けられており、集水シート71の下部には、集水シート71により集水される水を貯水する貯水部71aが形成されている。
【0162】
集水シート71は、図16に示したように、1枚のポリエステルのシートを2つに折り、折り目よりも少し端部に近い部分71cを、ところどころ間隔をおいてヒートシールして貯水部71aを形成している。そして、貯水部71aの下部には、所々、排水口71dが開けられている。
【0163】
栽培槽52の外側を覆うようにして、集水シート71の両端を吊下支持部材53”の上方に回し、集水シート71の両端を幅広プレート状のクリップ72により挟持することにより、集水シート71は吊下支持部材53”に保持されている。
【0164】
培地51には、ドリップ灌水管56により点滴灌水がされるが、灌水が培地の圃場容水量を超えた場合、栽培槽52a,52bの底部から集水シート71に水が滴下し、集水シート71の貯水部71aに集水される。集水された水は、排水口71dから排水される。従って、栽培槽52,52の各箇所から水が滴り落ちることを防止し、特定の箇所に水が集められて排水される。
【0165】
尚、集水シート71の下部に貯水部71aを設けたのは、このように縦長の集水部71aを設けることで、少量の水が集水された場合でも水位を高くするためである。水位が高いと、水が流れやすいので、排水口71dまで水が流れて排水されやすくなる。
【0166】
【実施例】
以下、本発明の植物栽培装置について、保水性試験及び植物の生育試験を行ったので、その結果について説明する。
【0167】
(実施例1)
実施例1では、上記実施形態4において説明した植物栽培装置について、保水性試験を行った結果を示す。
【0168】
試験は、表1に示したような所定の方法で調整した4種類の栽培槽を、60分間水プールに浸漬し、その後、各栽培槽をフックを用いて空中に吊り下げて、各経過時間に対する重量の変化を測定することにより行った。
【0169】
試験に使用した栽培槽は、以下の表1のように調整されたものを使用した。
【表1】
Figure 0003768489
【0170】
各栽培槽には、培地約1リットルを充填した。表1の培地量は、各栽培槽に充填された培地の重さを表したものである。また、表1の全体重量とは、培養土の重量に、高吸水性ポリマー、保水材、フック、又はグラスファイバの重量を加えたものである。
【0171】
供試材料としては、以下のような材料を使用した。
Figure 0003768489
【0172】
培地に高吸水性ポリマーを混合する場合には、培養土1リットルに対して10gfの高吸水性ポリマーを混合した。
【0173】
以上の条件により測定を行った結果、表2のような結果が得られた。
【表2】
Figure 0003768489
【0174】
図17は各栽培槽の給水前の全体重量に対する給水後の重量の比の時間変化を表す図、図18は給水後30分経過後の栽培槽の状態を示す図である。図17より、「マット・ジェルなし」及び「マットのみ」に比べて、「ジェルのみ」及び「マット+ジェル」は約2倍程度多くの保水力を有することが分かる。
【0175】
また、「ジェルのみ」及び「マット+ジェル」の保水量はほぼ等しいが、「ジェルのみ」のほうが「マット+ジェル」に比べて重量減少の傾きが大きい。すなわち、灌水により保水された水が流出しやすいことが分かる。
【0176】
また、図18において、図中の付番1,2,3,4は、それぞれ、表1の番号1,2,3,4に対応している。図18より、高吸水性ポリマーを含む3番と4番の培地は、保水することにより膨張する。このとき、包容材は袋状のシートで構成されているので、培地の膨張に対して柔軟に変形し、培地が溢れ出すことがないことが分かる。
【0177】
(実施例2)
実施例2では、上記実施形態4において説明した植物栽培装置により、リーフレタスの栽培試験を行った結果を示す。
【0178】
図19は栽培槽内に保水材を敷いて培地に高吸水性ポリマーを混合しないで栽培した場合(a)及び保水材も高吸水性ポリマーも使用しなかった場合(b)について栽培試験により得られたリーフレタスを表す図である。また、図20は保水材も高吸水性ポリマーも使用しなかった場合に栽培試験により得られたリーフレタスを表す図、図21は栽培槽内に保水材を敷いて培地に高吸水性ポリマーを混合して栽培した場合について栽培試験により得られたリーフレタスを表す図である。
【0179】
栽培試験は、水平に渡した棒に栽培槽をフックで吊して、ドリップ灌水管により点滴灌水を行って栽培することにより実施した。
【0180】
図19から分かるように、栽培槽内に保水材を敷いて培地に高吸水性ポリマーを混合しないで栽培した場合(a)及び保水材も高吸水性ポリマーも使用しなかった場合(b)には、生産されたリーフレタスは全体的に小さめのものとなる。リーフレタス1株あたりの重量は、保水材も高吸水性ポリマーも使用しなかった場合(b)では110〜130g、栽培槽内に保水材を敷いて培地に高吸水性ポリマーを混合しないで栽培した場合(a)では、120〜150gであった。また、(b)の場合には、図20に示したように、リーフレタスの株間の生育にムラが生じる現象が見られた。これは、株間では多少なりとも生育に差があるが、保水材も高吸水性ポリマーも使用しなかった場合、培地内の養水分の量のムラが大きく、培地が部分的に乾燥しやすい。特に、点滴灌水の場合には、特定の点から灌水が行われるために、培地の部分的乾燥が生じやすいと考えられる。このように、培地が部分的に乾燥すると、リーフレタスの株間の生育差が助長され、その結果、リーフレタスの株間の生育にムラが生じるものと考えられる。
【0181】
一方、栽培槽内に保水材を敷いて培地に高吸水性ポリマーを混合して栽培した場合では、図21に示したように、かなりの大型なリーフレタス株に成長した。本試験で得られたリーフレタス1株あたりの重量は、220〜250gであり、上記(a)、(b)の場合に比べて約2倍の重量に成長した。
【0182】
これは、栽培槽の保水性及び保肥力が高く、リーフレタスの根圏の水分環境及び肥料環境が安定しているためであると考えられる。すなわち、リーフレタスに加わる水分ストレス、肥料ストレスが小さく、リーフレタス株の生育が促進されるからであると考えられる。
【0183】
(実施例3)
図22は実施形態4の植物栽培装置により高設栽培を行っている状況を表す図である。
【0184】
図22に示すように、植物の高設栽培を行う場合、栽培槽の重量が軽量であるため、吊下支持部材として物干し竿を使用することが可能である。
【0185】
(実施例4)
図23及び図24は本発明の植物栽培槽をテーブル野菜に使用した例を表す図である。
【0186】
図23のように、テーブル上に敷き板を置き、この敷き板状にプラスチック鎖等で囲いを作る。そして、この囲いの上にビニルシートを敷いて、その上に、実施形態1〜4で説明したような、植物を植栽した栽培槽を載せる。このように、テーブル上に新鮮な野菜を載せて、食事中に野菜を摘んでそのまま食すことができる。また、同様に花卉類を置いて、テーブル上で観賞することもできる。
【0187】
このように、栽培槽自体が小型・軽量であり、また、高設栽培により清潔な環境で植物の栽培ができるため、テーブル野菜やテーブル上において観賞する花卉の栽培槽としても使用することができる。
【0188】
【発明の効果】
以上のように、本発明の植物栽培装置の第1の構成によれば、一般の土壤と同程度の保水力、保肥力を得るために必要な培地の量は極めて少なくてすむため、栽培槽を小型化・軽量化することが可能となる。従って、少ない栽培面積で植物の多収穫が可能となるため、場所を選ばず、空き地や狭い土地にも栽培槽を容易に設置することが可能となる。従って、農業生産者に活用されていない土地や空間、例えば、既存のビニルハウスの枠に栽培槽を懸吊して設置することも可能となり、農業生産者の所得向上にもつながる。また、一般の圃場に設置する場合でも、単位圃場面積あたりの植物の栽培株数を増やすことができ、生産効率が改善される。
【0189】
また、設備が簡単であり、低廉な価格で植物栽培装置の設備を導入することが可能である。従って、小規模経営の農家や家庭菜園を行う一般家庭においても容易に導入することが可能となる。
【0190】
また、灌水の利用効率がよく、灌水回数を大幅に軽減することができるため、灌水の管理も容易となる。また、植物に対して加わる水分ストレスや肥料濃度ストレスを緩和することができるため、植物の生育が促進され、多収穫・高品質の植物栽培が可能となる。
【0191】
また、小型・軽量とできるために、搬送が容易であり、植物の成長に合わせて、栽培槽を育苗圃場や本圃等の適所に運んで植物の栽培を行うことが容易となる。
【0192】
また、栽培槽が小型であるため、栽培槽を移動させて配置密度を変えることで、植物の栽培密度を自由に変えることができるので、育苗から本圃栽培まで一貫して栽培槽内で行うことができる。従って、苗の移植作業が不要であり、農作業の労力を大幅に軽減することができる。
【0193】
また、肥料を最初から培養土に含ませておけば、養液による施肥の必要がなく、灌水のみで植物の栽培ができる。そのため、養液供給装置などの設備は不要で栽培設備が簡単であり、また肥料成分の沈殿・付着等による灌水配管の閉塞もなく、極めて低廉な設備費及び維持管理費で植物栽培を行うことができる。
【0194】
また、本発明の植物栽培装置の第2の構成によれば、栽培槽の形状が縦長であるために搬送が容易であり、栽培槽の運搬時の作業性が向上する。また、栽培槽を空中に吊した状態で植物を栽培することが容易となる。更に、栽培槽を斜面栽培や壁面栽培に使用することも可能である。
【0195】
また、本発明の植物栽培装置の第3の構成によれば、包容材に透根性を持たせることで、根巻きを防止し、二次根や毛根の発達が促進されるため、植物の養水分吸収が活性化され、品質の良い植物を生産することができる。
【0196】
また、本発明の植物栽培装置の第4の構成によれば、二以上の栽培槽を、隣接し合うもの同士が互いに接触しあった状態で吊り下げることで、植物の成長に伴って栽培槽が重量的にアンバランスとなっても、栽培槽が傾斜することが防止される。また、包容材が透根性を有している場合には、接触し合った栽培槽の間で、植物の根が隣の栽培槽内まで伸長し、植物の養水分吸収が改善されるとともに、更に水分ストレスを受けにくくなる。従って、より品質の良い植物の生産が可能となる。
【0197】
また、本発明の植物栽培装置の第5の構成によれば、ドリップ灌水によって常に植物の生育に最適な条件を確保することができる。また、栽培槽を吊下支持部材に脱着する際に、ドリップ灌水管を損傷したり、ドリップ灌水管が邪魔になることがなく、脱着作業が容易となる。また、1つのドリップ灌水管により、吊下支持部材に吊り下げられた各栽培槽に灌水できるので、灌水設備が簡単であり、灌水管理も容易となる。
【0198】
また、本発明の植物栽培装置の第6の構成によれば、栽培槽の設置作業中等に、誤ってドリップ灌水管を損傷することを防止することができる。また、吊下支持部材に対して栽培槽の脱着を容易に行うことが可能となり、作業性が向上する。
【0199】
また、本発明の植物栽培装置の第7の構成によれば、植物に対しする温度ストレスを緩和させることが可能となるため、植物の生育が促進され、植物の多収穫化を図ることができる。また、温度調節材の設置が容易であり、設置作業の作業性が向上する。
【0200】
また、本発明の植物栽培装置の第8の構成によれば、支持体によって各栽培槽を下面から持ち上げた状態で支持することにより、栽培槽内の培地の表面を平坦に維持することができる。従って、栽培される植物がいびつな形状となることが防止され、栽培植物の商品価値が低下することを防止することができる。
【0201】
また、本発明の植物栽培装置の第9の構成によれば、圃場容水量を超える過剰な水は、一旦集水シートの下部の貯留部に貯留される。貯留部は縦長であるため、少量の水が流入した場合でも、貯留部内の水位が高くなる。従って、集水シートに弛みがある場合にも、過剰な灌水を効率よく集水し、排水することが可能となる。
【0202】
また、本発明の植物栽培装置の第10の構成によれば、斜面又は垂直面上で植物の栽培ができるため、狭い面積や傾斜地においても植物の栽培ができるようになる。また、斜面上部一端から灌水を行えば、総ての栽培槽に灌水することができるので、灌水設備が簡単となり、設備費が低廉となる。また、斜面や垂直面上で植物を栽培することができるため、壁面緑化にも利用することができる。
【0203】
また、本発明の植物栽培方法の第1の構成によれば、培地の保水力が高く、保肥力も有するために、少量の培地で、植物の生育に適当な保水量及び保肥量を確保できる。更に、植物の根に対して水分ストレスを極めて小さくすることができる。従って、植物の生育がより促進され、植物の収穫量が増大し、品質が向上する。また、灌水回数を大幅に削減することができるため、栽培管理が極めて楽になる。
【0204】
また、本発明の植物栽培方法の第2の構成によれば、無駄な排水を少なくすることができるため、肥料の流亡を防止することができる。従って、施肥を少なくすることができる。
【0205】
また、本発明の植物栽培方法の第3の構成によれば、土壌病害虫の被害を防止することができる。特に、イチゴ栽培のように土壤病害虫の影響が大きな植物の栽培管理が容易化される。また、雑草の種子や根が侵入しにくいため、雑草が繁殖する心配もなくなる。従って、土壌妨害虫の駆除や雑草の防除のための農薬を使用する必要がなくなる。そして、農作業の省力化が図られる。
【0206】
また、本発明の植物栽培方法の第4の構成によれば、包容材から突き出した植物の根端は成長が止まり、二次根形成、毛根形成が促進されるため、植物の養水分の吸収が良好となり、植物の生育が良好となる。
【0207】
また、本発明の植物栽培方法の第5の構成によれば、吊り下げられた各栽培槽が安定し、上述のように、植物が成長した場合でも、植物の茎や葉等の地上部分の重量で各栽培槽が傾斜することが防止される。
【0208】
また、本発明の植物栽培方法の第6の構成によれば、培地の表面をほぼ水平な状態に保つことができ、植物の茎の根元部分が曲がって成長することを防止できる。そのため、栽培される植物の商品価値の低下を防止することができる。
【0209】
また、本発明の植物栽培方法の第7の構成によれば、灌水基盤の透水層に対して灌水を行うことで、各栽培槽に対して均等に灌水を行うことができる。従って、灌水管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置の断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置の側面図である。
【図3】 実施の形態1の植物栽培装置をビニルハウスの梁に懸吊して設置した例を示す図である。
【図4】 包容材の付近における植物の根の成長過程を表す図である。
【図5】 本発明の実施の形態2に係る植物栽培装置の断面図である。
【図6】 実施の形態2の植物栽培装置を地面に設置した例を示す図である。
【図7】 本発明の実施の形態3に係る植物栽培装置の斜視図である。
【図8】 本発明の実施の形態3に係る植物栽培装置の栽培槽付近の断面図である。
【図9】 本発明の実施の形態4に係る植物栽培装置の要部断面図である。
【図10】 植物の苗の養成状態を表す図である。
【図11】 苗の運搬状態を表す図である。
【図12】 植物栽培装置に苗を設置した状態を表す図である。
【図13】 本発明の実施の形態5に係る植物栽培装置の要部断面図である。
【図14】 支持体61がない場合の植物栽培装置の状態を表す図である。
【図15】 本発明の実施の形態6に係る植物栽培装置の要部断面図である。
【図16】 図15の集水シートの斜視図である。
【図17】 各栽培槽の給水前の全体重量に対する給水後の重量の比の時間変化を表す図である。
【図18】 給水後30分経過後の栽培槽の状態を示す図である。
【図19】 栽培槽内に保水材を敷いて培地に高吸水性ポリマーを混合しないで栽培した場合(a)及び保水材も高吸水性ポリマーも使用しなかった場合(b)について栽培試験により得られたリーフレタスを表す図である。
【図20】 は保水材も高吸水性ポリマーも使用しなかった場合に栽培試験により得られたリーフレタスを表す図である。
【図21】 栽培槽内に保水材を敷いて培地に高吸水性ポリマーを混合して栽培した場合について栽培試験により得られたリーフレタスを表す図である。
【図22】 実施形態4の植物栽培装置により高設栽培を行っている状況を表す図である。
【図23】 本発明の植物栽培槽をテーブル野菜に使用した例を表す図である。
【図24】 本発明の植物栽培槽をテーブル野菜に使用した例を表す図である。
【図25】 バック式栽培方法による植物の栽培状況を示した図である。
【符号の説明】
1,1’ 栽培槽
2 培地
3 包容材
4 保水材
5 開口部
6 植物
6a 根系
7 支持体
8 吊下部
9 吊下棒
10 ドリップ灌水管
11 親根
12 根端
13,13’ 毛根
14 二次根
20 地面
21 ドリッパ
21a スタビライザ
21b 給水チューブ
22 給水パイプ
23 温度調節管
30 植物栽培装置
31 架台
32 遮水シート
33 透水シート
34 透水遮根シート
35 灌水基盤
36 栽培槽
37 培地
38 包容材
39 保水材
40 開口部
41 植物
42 灌水管
50 植物栽培装置
51 培地
52,52 栽培槽
52a 支持体
52b 吊下部
53,53’,53” 吊下支持部材
53a,53a’,53a” 溝
53b,53b’ 溝開口部
53b” 切り欠き溝
54 保水材
55 開口部
56 ドリップ灌水管
57 温度調節管
58,59 植物
60 植物栽培装置
61 支持体
61b 吊下紐
70 植物栽培装置
71 集水シート
71a 貯水部

Claims (11)

  1. 袋状の包容材により形成され、植物を植えるための開口部が形成された栽培槽と、
    前記包容材の内面底部に敷かれた保水性を有する保水材と、
    粉体状又は粒体状若しくは繊維状の高吸水性ポリマーを含有する培地と、
    水平又はほぼ水平に架設された吊下支持部材と、を備え、
    前記吊下支持部材に対し、二以上の前記栽培槽が、隣接し合うもの同士が互いに接触しあった状態で吊り下げられており、
    前記吊下支持部材は、樋状又は多数の開口を有する管状に形成されており、
    前記吊下支持部材の樋内又は管内に収容されたドリップ灌水管を備えていることを特徴とする植物栽培装置。
  2. 前記栽培槽は、縦長袋状の包容材により構成され、前記栽培槽の長手方向に1列に並んで前記開口部が複数個形成されていることを特徴とする請求項1記載の植物栽培装置。
  3. 前記包容材は、透根性を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物栽培装置。
  4. 隣接し合う前記各栽培槽の間の空間に保持された温度調節材を備えていることを特徴とする請求項乃至の何れか一に記載の植物栽培装置。
  5. 前記吊下支持部材に吊り下げられ、前記各栽培槽を下面から持ち上げた状態で支持する支持体を備えていることを特徴とする請求項乃至の何れか一に記載の植物栽培装置。
  6. 少なくとも前記各栽培槽の下面を被覆して設けられた集水シートと、
    前記集水シートの下部に設けられ、集水シートにより集水される水を貯水する縦長の貯水部と、
    前記貯留部の底部の所定の箇所に設けられた排水口と、
    を備えていることを特徴とする請求項乃至の何れか一に記載の植物栽培装置。
  7. 袋状の包容材により形成され、植物を植えるための開口部が形成された栽培槽と、
    前記包容材の内面底部に敷かれた保水性を有する保水材と、
    粉体状又は粒体状若しくは繊維状の高吸水性ポリマーを含有する培地と、
    平面、斜面又は垂直面上に敷設された遮水層、前記遮水層の上面に敷設された透水性を有する透水層、及び、前記透水層の上面に敷設された遮根層を有する灌水基盤と、
    前記灌水基盤の上面に、互いに隔離して複数個並べられた前記栽培槽と、
    を備えていることを特徴とする植物栽培装置。
  8. 前記栽培槽は、縦長袋状の包容材により構成され、前記栽培槽の長手方向に1列に並んで前記開口部が複数個形成されていることを特徴とする請求項7記載の植物栽培装置。
  9. 前記包容材は、透根性を有していることを特徴とする請求項7又は8に記載の植物栽培装置。
  10. 透水性を有する袋状の包容材からなる栽培槽の内面底部に保水性を有する保水材を敷き、
    前記栽培槽の内部に、粉体状又は粒体状若しくは繊維状の高吸水性ポリマーを含有する培地を詰めて、
    前記培地に植物を植栽して栽培する植物栽培方法であって、
    平面、斜面又は垂直面上に敷設された遮水層、前記遮水層の上面に敷設された透水性を有する透水層、及び、前記透水層の上面に敷設された遮根層を有する灌水基盤の上面に、複数の前記栽培槽を互いに隔離して載置し、前記灌水基盤の透水層に対して灌水を行うことにより、植物の栽培を行うことを特徴とする植物栽培方法。
  11. 前記培地に、ドリップ灌水管により点滴灌水を行うことにより植物を栽培することを特徴とする請求項10記載の植物栽培方法。
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