JP3879884B2 - 静電印刷用トナーの製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電印刷法において、静電潜像を現像するために使用されるトナー、とりわけ、熱ロールで定着する方式に好適な静電印刷(静電荷像現像)用粉末トナーの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電荷像現像用トナーの製法としては、乾式では、結着用樹脂と着色剤を
溶融混練して、粉砕、分級する粉砕法、並びに湿式では重合時に着色剤を包含させてトナーを得る重合法などがあるが、これらと全く異なる新しい湿式法として、特開平5ー66600号公報などに記載されているいわゆる転相乳化法がある。
【0003】
これは結着樹脂として、中和により自己水分散性を有する、いわゆる自己水分散性樹脂という特定の樹脂を用い、当該樹脂と、着色剤等を、有機溶剤中で混合分散した後、中和剤の存在下に、当該混合物と、水性媒体を混合することで、転相乳化という物理化学的な現象を得て、樹脂の親水ー疎水性のバランスにより、水性媒体中に着色剤を内包する樹脂粒子を生成させ、その後、乾燥してトナーとする方法である。
【0004】
ところで、トナーにとって必要とされる特性の一つとして、定着特性が上げられる。静電荷像現像による印刷システムにおける画像の定着方式としては、熱効率が高く、定着効率に優れる、熱ロール定着方式が一般的である。この定着方式では、ヒートローラー表面に、直接トナーが接触し、加熱、加圧により、トナーが溶融され、紙等に定着されるため、トナーの一部が定着ローラー表面に転移し、さらに、この転移したトナーが次の転写材に再転移する、オフセット現象を生じ、紙等の転写材を汚す問題がある。
【0005】
また、近年では省エネルギー、高速複写等のハード側からの要請に応えるため、より低温定着可能な静電荷像現像用トナーが求められている。しかしながら、低温定着性を優先すると、必然的に、ガラス転移温度が低下し、トナーの凝集温度が低下し、貯蔵中、あるいは現像装置内で凝集が生じるようになり、トナーとして使用不能になるという問題が生ずる。また、同時に、耐ホットオフセット性も低下し、上記オフセット現象による紙等の転写材の汚れも問題となる。
【0006】
すなわち、トナーの定着特性としては、低温から高温まで幅広い定着幅を有し、かつオフセット現象を生ぜず、良好な貯蔵安定性を有するものが求められているわけである。
【0007】
しかしながら、上記公報による製法で得られる単一樹脂型のトナーでは耐ホットオフセット性、低温定着性及び貯蔵安定性という三つの特性を兼備したものは得られない。
【0008】
そこで、ただ一つの自己水分散性樹脂を用いるのではなく、互いに相溶性のある、異なる重量平均分子量を有する2種以上の自己水分散性樹脂を用いるようにすること、たとえば、低分子量の自己水分散性樹脂と、高分子量の自己水分散性樹脂をブレンドした混合物を用いて、転相乳化するという技術的思想を採用することで、特に耐ホットオフセット性の改善が可能であると考えることも出来る。
【0009】
しかしながら、やはりこの場合にも、より厳しい環境条件下、例えば定着試験時のID値が1.4〜1.6で再評価し直すと、耐オフセット性は依然として不十分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、上記技術的思想では、耐ホットオフセット性がまだ不十分であるとともに、トナー粒子を得るという、より根本的な点において、高分子量体を使用したことによる造粒性、すなわち、粒子の分布、及び粒子の形態が不十分であるという問題を含んでいた。
【0011】
【発明が解決するための手段】
本発明は、トナーとして要求される熱特性、すなわち低温定着性と、耐ホットオフセット性と、貯蔵安定性という要求特性をクリアしつつ、転相乳化工程に於ける造粒性に優れたトナーの製法を提供するものである。
【0012】
そこで本発明者等は、上述した本発明が解決しようとする課題に対して、鋭意検討を重ねた結果、転相乳化に用いる中和により自己水分散性となりうる樹脂として、化学組成又は物理特性の異なる樹脂のブレンド、特に、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それを同一反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、ついでもう1種の混合物を重合して得られた中和により自己水分散性となりうる樹脂を用いることで、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、次の発明を提供する。
中和により自己水分散性となりうる樹脂と、着色剤と、有機溶剤を必須成分とする混合物を、前記樹脂を自己水分散性とするに足る量の中和剤の存在下に、水性媒体に転相乳化して、水性媒体中に、着色剤が含有された自己水分散性樹脂の粒子を生成させた後、当該粒子を分離し、それを乾燥するトナーの製造方法において、前記中和により自己水分散性となる樹脂として、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それを同一反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、ついでもう1種の混合物を重合して得られた中和により自己水分散性となりうる樹脂を用いることを特徴とするトナーの製造方法。
【0014】
前記特開平5−66600号公報の発明と同様に、本発明の製法の特徴は、自己水分散性樹脂という特定の樹脂を用いることである。本発明において、当該樹脂は、転相乳化という物理化学的な現象を伴い、樹脂の親水性、疎水性のバランスにより、液媒体中に粒子を形成させる。すなわち、有機溶剤を含んだままの有機連続相と、水のみまたは水を必須成分とする水性媒体(W相)とを混合することによって、乳化剤や分散安定剤を使用することなく、W/O型よりO/Wへの当該樹脂の変換(いわゆる転相乳化)が行われることによって、不連続相化され、粒子が形成される。
【0015】
この転相乳化によるトナー粒子製造方法では、球形度の極めて高いトナー粒子を得ることが出来る。例えば球形度としては、(粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(粒子投影像の周長)で定義される円形度の平均値が0.97以上の実質的に真球のトナー粒子が得られる。
【0016】
この平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し、計算することなどによっても求められるが、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−10000を使用すると容易に得られ、本発明ではこの装置を用いた。
【0017】
本発明の最大の特徴は、例えば組成、分子量の異なる自己水分散性樹脂のブレンドにおいて、従来の製法が、別々に調製した樹脂同志の単なるブレンドであるのに対して、本発明では、同一反応容器中(in situ)で、予め1種の付加重合性単量体混合物を重合してから、もう1種の同混合物を重合した重合体からなる、結果的にブレンドされた樹脂を用いる点にある。
【0018】
単に、別々に調製した、ガラス転移温度の異なる2種以上の自己水分散性樹脂、あるいは酸価の異なる2種以上の自己水分散性樹脂、あるいは分子量の異なる2種以上の自己水分散性樹脂をブレンドしたのでは、転相乳化時の粒子形成が劣化し、トナーとして十分な特性を有するものが得られないという問題を生ずる。これに対して、ひとつの反応容器を用いる様にして、第1段目の反応において少なくとも少量の重合体が生成してから第2段目の付加重合性単量体混合物を同反応系に加えて、未反応の全単量体を重合した場合には、たとえ第1段目と第2段目の各単量体組成に乖離があったり、同各重合体の分子量が異なっていても、第1段目の反応で生じた重合体からなる樹脂成分が、第1段目の反応で未反応の単量体もその中に含んでいるような、反応容器に含まれる全ての成分を相溶化させる作用を有し、その結果、第2段目の重合を終了した後の反応容器中の樹脂は、単なる単純ブレンドによる樹脂に比べて転相乳化時の粒子形成が改善されると推定される。
【0019】
次に本発明の製造方法について詳しく述べる。本発明の製造方法は、基本的には、次の工程からなる。
【0020】
第1工程:
特性が異なる、2種以上の、同一反応容器中で合成された中和により自己水分散性となりうる樹脂、着色剤及び有機溶剤を用いて混合分散(着色剤分散)させ、混合物を得る。
【0021】
この際、特性が異なる、2種以上の、同一容器中で合成された中和により自己水分散性となりうる樹脂と、中和剤(塩基又は酸)とを用いて、予め自己水分散性樹脂を調製して、それを用いてもよい。
【0022】
第2工程:
第1工程で得られた前記混合物を水性媒体(水のみ又は水を必須成分とする液媒体)中に転相乳化させ、トナー粒子を生成する。この場合、前記混合物に水性媒体を加える様にして転相乳化しても、前記混合物を水性媒体に加える様にして転相乳化しても良い。
【0023】
すなわち本発明において、中和剤の存在下にて転相乳化するとは、大別して、▲1▼転相乳化に用いる混合物として、中和により自己水分散性となりうる樹脂を中和剤で中和して得た自己水分散性樹脂を含む混合物を用いて、それを水性媒体中に転相乳化する場合と、▲2▼転相乳化に用いる混合物として、中和により自己水分散性となりうる樹脂を含む混合物を用いて、それをそれが自己水分散性となるに足る量の中和剤を含む水性媒体中に転相乳化する場合とがある。
【0024】
勿論、中和により自己水分散性となりうる樹脂を自己水分散性とするに足る量の中和剤は、混合物側のみ又は水性媒体側のみの存在させてもよいが、両方に分割して存在させる様にしてもよい。
【0025】
転相乳化時の温度は特に制限されないが、系が5〜40℃となる様にするのが良く、出来ればその温度範囲内において、前記混合物と水性媒体との温度差が出来るだけ小さくなる様に調製した上で、それを実施するのが好ましい。
【0026】
この第2工程により、実質的には着色剤が自己水分散性樹脂に包含されたトナー粒子、すなわち着色剤がカプセル化された自己水分散性樹脂からなるカプセル型トナー粒子が、液媒体中に生成する。これがトナー粒子液分散液である。
【0027】
第3工程:
当該粒子が分散した液媒体から、当該粒子を分離する。この場合、そのまま当該粒子の分離を行ってもよいが、通常、有機溶剤を含む水性媒体から、当該有機溶剤を脱溶剤し、前記中和剤とは逆極性の中和剤又はその水溶液を用いて処理が行われる。
【0028】
ここで、逆極性の中和剤(酸又は塩基)にて処理することにより、水性媒体からのトナー粒子の分離が容易になり、後続する工程へ一層スムーズに進行できるようになる。また、帯電特性、とくに環境安定性が向上する。この処理により粒子中の樹脂は、未中和の状態となる。
【0029】
尚、この逆極性の中和剤を用いる前記処理は、樹脂として、例えばポリオキシエチレン繰り返し単位を含むポリオキシアルキレン基等を含有する、中和しなくとも自己水分散性を有する樹脂を用いる場合は、必須工程ではない。
【0030】
次いで、水性媒体中から濾過等により粒子を分離し、乾燥してトナー粉末を得る。
【0031】
次に各行程毎に詳しく説明する。本発明では、第1行程で、同一反応容器中で合成した中和により自己水分散性となる樹脂と、着色剤と、有機溶剤とを必須成分とする混合物を調製する。
【0032】
本発明で用いる自己水分散性樹脂は、例えばアニオン性あるいはカチオン性の親水基を分子鎖中に有する樹脂に、アニオン性ならば塩基を、カチオン性ならば酸を用いて中和することで、当該親水基の親水性を高められた樹脂が挙げられる。
【0033】
この際の親水性の程度は、当該樹脂自体が水に分散できる程度でなければならない。この様な自己水分散性樹脂は、特段に界面活性剤や分散安定剤を併用しなくとも、それを水性媒体と混合することで、転相乳化が起こり、粒子を生成する。
【0034】
中和により自己水分散性となりうる樹脂(酸基あるいは塩基性基を含有する樹脂)中の酸基あるいは塩基性基を中和して、自己水分散性樹脂とするための中和剤として、例えば酸基含有の、中和により自己水分散しうる樹脂の場合には、例えばトリエチルアミン等の第三級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、アンモニア等が挙げられ、一方、塩基性基含有の、中和により自己水分散しうる樹脂の場合には、例えばシュウ酸、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられ、これらにより適切量中和させる。
【0035】
尚、後述第3工程において、中和により自己水分散性となった樹脂の一部又は全部を、中和により自己水分散性となりうる樹脂(酸基あるいは塩基性基含有する樹脂)に変換する必要がある場合には、自己水分散性樹脂中に含まれる親水基の一部又は全部を、潜在的に有する中和により親水性が増加しうる官能基と同極性の中和剤で中和すれば良い。
【0036】
酸基あるいは塩基性基を含有する中和により自己水分散性となりうる樹脂の親水性は、中和により親水性が増加しうる官能基の量或いは中和量(中和率)によりコントロールすることができる。さらにはかかる親水性により後述する第2工程においての、分散時のトナー粒子の大きさが決定される。つまり中和率のコントロールにより任意の粒子径のトナー粒子を容易に得ることが可能である。
【0037】
まず樹脂が自己水分散機能を発現するために必要な、中和された酸基あるいは塩基性基等の官能基の量(中和量、中和率)は、組成や分子量、構造などにより樹脂そのものの親水性がことなるので各々の樹脂により中和率は異なるが、通常、自己水分散性樹脂固形分100gあたり10〜50mg当量なる範囲内である。
【0038】
以下、アニオン性あるいはカチオン性の親水基を分子鎖中に有するが、それが中和されていない樹脂を、中和により自己水分散性となりうる樹脂といい、当該樹脂が中和されたもの又は中和しなくとも水に分散しうるものを自己水分散性樹脂と言う。上記した通り、中和により自己水分散性となりうる樹脂の中和は、第2工程で水性媒体と混合される直前までに行うか、あるいは、転相工程中に水性媒体との混合と同時に行ってもよい。
【0039】
本発明で用いられる、中和により自己水分散性となりうる樹脂及び自己水分散性樹脂としては、付加重合成単量体の共重合体、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂がある。トナーとしての粉体流動性、定着性等のバランスが比較的容易に得られ易いアクリル系樹脂とりわけスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂が好適である。次に、アクリル系樹脂を例にとり、詳細に説明する。
【0040】
本発明において、中和により自己水分散性となりうるアクリル系樹脂とは、分子内に有する、中和により親水性が増加しうる官能基の作用により、水性媒体の作用下で、乳化剤や分散安定剤を実質的に用いることなく、安定なる水性分散体を形成する能力を有するアクリル系樹脂である。
【0041】
当該中和により自己水分散性となりうるアクリル系樹脂としては、例えば酸基あるいは塩基性基を含有したアクリル系重合性単量体類と、この親水基を含有した重合性単量体類以外の重合性単量体を、ラジカル開始剤存在下でラジカル重合させて得られるものが使用できる。
【0042】
本発明では、通常、付加重合性単量体の2種以上を用いて、2種以上の、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度(Tg)が異なる混合物を調製する。Tgは、Foxの式に基づいた計算値が採用できる。2つの混合物を用いて重合を行う場合には、それらは互いに重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のTgが異なる様に、それぞれ二つの混合物を構成する単量体の種類や重量割合を選択して調製したものが各々使用されるし、3つ以上の混合物を用いる場合も同様に、そのうち少なくとも二つの混合物のTgを異ならせる。各混合物を調製するためには、通常、2種以上の付加重合性単量体から各々の混合物が調製される。
【0043】
付加重合性単量体類からなる各々の混合物としては、いずれも、酸価が30〜100の範囲であるものを用いるのが好ましい。
【0044】
最初に重合を行う付加重合性単量体類と引き続き次の重合を行う付加重合性単量体類の重量比は、特に制限されないが、混合物として2つを用いる場合には、例えば30/70〜70/30である。
【0045】
こうした酸基含有アクリル系重合性単量体類としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなどが挙げられる。また、塩基性基含有アクリル系重合性単量体類としては、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジブチルアミノエチル、N−エチル−N−フェニルアミノエチルなどのアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体が挙げられる。
【0046】
酸基あるいは塩基性基含有重合性単量体類以外の重合性単量体類としては、例えば、スチレン系モノマー(芳香族ビニルモノマー)類として、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレンもしくはクロルスチレンがある。
【0047】
アクリル酸エステル類としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシルもしくはアクリル酸ドデシル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アルファクロルアクリル酸メチルが挙げられる。
【0048】
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸フェニル、アルファクロルメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0049】
また、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等を挙げることができる。
【0050】
また、使用する重合開始剤としては、公知慣用の各種の有機過酸化物系の開始剤、アゾ系の開始剤が使用できる。具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0051】
一方、自己水分散性アクリル系樹脂としては、酸基あるいは塩基性基を含有する樹脂の、当該親水性基の中和により親水性が増加しうる官能基が、中和剤により中和されたものであり、この塩構造が当該樹脂の水性媒体中での安定な分散に関与する。かかる塩構造は前記のように、中和により自己水分散性となりうる樹脂中の官能基を中和剤にて中和して得た場合でも、あらかじめ塩構造として樹脂中に存在するものでもその効果は同じである。
【0052】
自己水分散性樹脂としては、ポリオキシエチレン繰り返し単位を含むポリアルキレン基を有するアクリル系樹脂の様に、中和しなくとも自己水分散性を有する樹脂もあるが、これに比べれば、中和により自己水分散性となりうる樹脂を中和して得た自己水分散性樹脂のほうが好ましい。
【0053】
本発明で用いる自己水分散性樹脂は、それ自体で水に分散するが、必要であれば、界面活性剤(乳化剤)や分散安定剤を併用してもよい。しかしそれらの使用量は、最小限に止め、極少量とするのが好ましい。乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンニニルフェノールエーテル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。分散安定剤としては、水溶性高分子化合物が用いられ、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースガムが挙げられる。
【0054】
その他、反応に当たっては、例えばドデシルメルカプタン、四塩化炭素、チオグリコール酸等の連鎖移動剤や、酸性亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元剤、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム等のキレート化剤を併用しても良い。
【0055】
樹脂の合成は、公知慣用の方法がいずれも採用できるが、溶液重合で行うことが好ましい。本発明では、中和により自己水分散性となる樹脂として、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それをまず一つの反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、次いで、前記重合を行ったのと同一の反応容器中で、前記重合の反応生成物の存在下で、もう1種の混合物を重合して得られた中和により自己水分散性となりうる樹脂を用いる。
【0056】
上記した方法で、結果的に2種の異なる自己水分散性樹脂のブレンドとなる様にする場合、例えば、最初の混合物中の付加反応性単量体を、重合率が20〜80%になるまで反応した後、同一反応容器中で、次の反応混合物中の付加反応性単量体類を重合する。
【0057】
3種の異なる自己水分散性樹脂のブレンドとなる様にする場合には、まず、最初の混合物中の付加反応性単量体を、重合率が20〜80%になるまで反応した後、その反応容器に第2の混合物を加え、反応容器中の付加反応性単量体類を重合率が20〜80%になるまで反応し、その反応容器に第3の混合物を加え重合反応を行う様にすることができる。
【0058】
反応容器に含まれる全ての成分を相溶化させる作用を最大限に発揮させるためには、前段の反応容器中の単量体の重合率を上記した範囲としてから、次段の重合に供する混合物を加えて重合を行うのが効果的である。
【0059】
この時の反応容器中の単量体の重合率は、例えばガスクロマトグラフィーにより残存する付加反応性単量体類を定量することで判断することができる。
【0060】
最初の付加重合性単量体類の重合反応を重合途中で終了し、引き続き次の付加重合性単量体類を反応するため、両成分の乖離が解消されるわけである。
【0061】
樹脂を得るに際して使用する有機溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンの如き各種炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tーブタノールの如きアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル等の如きエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如き各種ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルの如き各種エステル類;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの如き各種エーテルエステル類;テトラヒドロフランの如き各種環状エーテル類;塩化メチレンの如き各種ハロゲン化炭化水素類;など、各種の有機溶媒が使用できる。
【0062】
本発明の製造方法では、親水性基、たとえば酸基含有重合性単量体類の樹脂鎖1分子中に含まれる量が均一になる様にすることが、良好な粒度分布を有するトナー粒子を形成する上で好ましい。
【0063】
そのためには、公知慣用の手法を採用することができるが、例えば有機溶媒の中で、溶解度パラメーター(SP)値が9以上の極性有機溶媒を用いることが好ましい。SP値が9以上の極性有機溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、ブチルセロソルブ、ブタノール等が挙げられ、脱溶媒のし易さから、前三者を用いるのが好ましい。さらに、上記極性有機溶媒に対し、0.5〜30重量%、好ましくは2〜20重量%の水を添加した、含水溶媒がより好ましい。該極性有機溶媒に対する含水率が0.5重量%以下であると、酸基の均一性が十分達成されないため好ましくない。また、含水率が30重量%よりも多いと、重合時に樹脂が析出し、重合系が不均一になる場合があり、ともに好ましくない。
【0064】
たとえば、トルエン、キシレンのような疎水性有機溶媒を重合反応時に用いると、酸基含有重合性単量体を用いる場合には、それの重合速度が速く、樹脂鎖1分子中に含まれる酸基量が不均一になり、転相乳化時のトナー粒子形成に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0065】
一方、極性溶剤中に一定量の水を含有した、含水溶媒系では、酸基含有重合性単量体が水に溶け、他の重合性単量体との反応場が異なるためか、反応速度が低下し、各付加重合性単量体類の重合速度が、実質均一となり、転相乳化時に良好なトナー粒子が容易に形成できるので好都合である。
【0066】
本発明の製法である、in−situ重合法では、1段目の高分子量体重合時の有機溶剤中の含水率、及び2段目以降の中、低分子量体重合時の有機溶剤中の含水率が0.5〜30重量%内の一定値でもよいし、あるいは、1段目の高分子量体重合時の有機溶剤中の含水率を高くしてもよい。後者の場合は2段目以降の中、低分子量体重合時の有機溶剤中の含水率としては、1段目に含まれる水により、十分酸基の均一性が保持されるため、新たに含水系の有機溶剤を添加する必要はなく、有機溶剤の添加のみを行うことにより、該含水有機溶剤中の含水率が0.5〜30重量%内になっていればよい。
【0067】
この第1工程において、中和により自己水分散性となりうる樹脂を得るに当たって溶液重合を採用した場合には、得られた樹脂溶液から液媒体を除去して固形分のみとして、当該樹脂固形分を溶解する新たな有機溶媒にそれを溶解して転相乳化用混合物を調製するようにしてもよいが、樹脂溶液中の溶媒を除去することなくそのまま用いて、着色剤を含む転相乳化用混合物を調製することも出来る。
【0068】
尚、最初に重合を行う付加重合性単量体類からなる混合物(A)から生成する樹脂と、前記混合物(A)中の未反応の付加重合性単量体を含んだ樹脂中に、そこに加えられ引き続き重合が行われる、新たな付加重合性単量体類からなる混合物(B)を重合して生成する樹脂とは、重量平均分子量が異なっていてもよい。
【0069】
前者樹脂及び後者樹脂は、前者として、重量平均分子量80000〜500000のものを選択するならば、他方、後者としては、重量平均分子量が6000〜60000となるように、混合物の組成、条件を選択すれば良い。
【0070】
また、最終的な生成樹脂の分子量分布が2山になるような場合には、この時の混合物(A)成分に由来する生成樹脂成分と、主として混合物(B)成分に由来する生成樹脂成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による面積比は、10/90〜60/40とすることが好ましい。なお、ここでいう面積比は、測定したGPCチャートの、谷(Bottom)を堺にして分離したときの各々の面積を比率で示したものである。
【0071】
上記した様にして、例えば重合開始剤未使用か使用したとしても極少量に止めて、始めに無溶剤、もしくは高モノマー濃度となる様にして、最初の重合反応において高分子量の重合体を合成後、それを有機溶媒で希釈し、それと同一容器中前記高分子量の重合体の存在下に、第2番目の混合物を加えて引き続き低分子量体を合成することで、結果的に見れば、高分子量重合体と低分子量重合体のブレンド物が得られる。
【0072】
単一樹脂、あるいは単一樹脂のブレンドでは、分子量2000以上の成分を5重量%程度以上含有するスチレンアクリル樹脂では、転相乳化性が著しく悪化し、トナーとして必要な機械強度や流動性が得られない。そのためにヒートロール定着性、特に耐ホットオフセット性がどうしても不十分となり、トナーとしての実用性に欠けている。
【0073】
これは、最初の、付加重合性単量体類からなる混合物(A)から生成する樹脂と、引き続き次の付加重合性単量体類からなる混合物(B)から生成する樹脂との中間に生成する樹脂が、混合物(A)又は(B)をそれぞれ別々に重合したのでは充分には含まれにくい、3〜8万の分子量領域をより多く含有しているためである。これらの分子量域は、トナーとしての最終性能は別にして、転相乳化時に粒子を形成しやすい。このため、従来よりも高分子量の重合体を含有しているにも関わらず、本発明の製造方法によれば、転相乳化時の良好なトナー粒子がより容易に得られ、優れたものとなる。
【0074】
そもそも転相乳化法では、樹脂の親水、疎水性のバランスにより水性媒体中に粒子が形成されるため、樹脂の組成(ガラス転移温度の違い=樹脂の親水、疎水の違い)や、分子量の違うものをブレンドすることによって、顕著に粒子形成過程が影響を受ける。たとえば、単一樹脂の粒子形成では、重量平均分子量が2万以下、及び10万以上では転相乳化に於ける粒子形成能が低下する傾向にある。従って、本発明で採用する上記した様なIn−situ法により得た樹脂を用いることにより、最も粒子を形成しやすい重量平均分子量や酸価を有する樹脂成分を必要量容易に含めることが出来るので、その結果、粒子形成能そのものとトナー最終性能とのいずれにも優れたトナー粒子製造方法を提供できる。
【0075】
粒子形成にとって最適な樹脂の重量平均分子量として、4〜8万の分子量領域があげられる。また、樹脂酸価においても最適領域としては60〜80があげられる。酸価とは、測定すべき試料の1gを中和するのに必要なKOHのmg数で表す。尚、樹脂酸価は重合前の混合物中のそれとほぼ同一である。
【0076】
また、最初に重合を行う付加重合性単量体類からなる混合物(A)を重合することによって生成する樹脂と、引き続き重合を行うのに加えられる、新たな付加重合性単量体類からなる混合物(B)から生成する樹脂とは、異なったものとなるように配合するのであるが、例えば、前者混合物(A)から生成する樹脂の、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときのガラス転移温度が0〜60℃となる様にし、後者混合物(B)から生成する樹脂の、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときのガラス転移温度が45〜80℃となる様に、各々の混合物を調製して、最終重合後の反応容器中の樹脂成分のガラス転移温度が55〜70℃となる範囲内とすることが好ましい。
【0077】
混合物(A)から得られる樹脂と、混合物(A)の未反応単量体を含む混合物(B)から得られる樹脂とは、分子量及びTgの点で、幾つかの組み合わせを考えることが出来、例えば、前者樹脂を相対的に高分子量かつ相対的に高Tgの樹脂とし、後者樹脂を相対的に低分子量かつ相対的に低Tgの樹脂となる様に組み合わせることもできるが、前者樹脂を相対的に高分子量かつ相対的に低Tgの樹脂とし、後者樹脂を相対的に低分子量かつ相対的に高Tgの樹脂となる様に組み合わせることが、単一樹脂系に比べて、貯蔵安定性を保持しつつ、さらに低温定着性を改善する上では好ましい。
【0078】
本発明の製造方法で、上記好ましい分子量及びTgの組み合わせになる混合物(A)及び(B)を用いる様にすれば、混合物(B)を反応容器に加えてから得られる相対的に分子量の低い樹脂が、混合物(A)から得られる樹脂よりも親水性が高く、かつ流動性も高いため、積極的に粒子表面に局在化する傾向にあり、それらが相溶した樹脂中の、混合物(A)の未反応の単量体を含む混合物(B)に基づく樹脂濃度が粒子表面に近づくほど高くなる。そして親水性基の薄層が粒子最外層に形成される。本発明の効果が発現するに当たっては、この粒子構造の寄与が大きい。
【0079】
従って、混合物(B)の生成樹脂の重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときのガラス転移温度が混合物(A)のそれよりも高くなる様に混合物中の単量体組成を設計することにより、混合物(A)の重合率がより高いほど、相対的に、ガラス転移温度のより高い成分がより高濃度でより粒子表面にくるため、貯蔵安定性を保つ上で好ましい結果が得られる。
【0080】
尚、乾式のトナー製造方法である粉砕法では、本発明の製造方法と同様の単量体組成の樹脂を用いてトナーを製造しても、粒子内の組成が均一となるため、貯蔵安定性が低下し、熱特性のバランスがとれない。
【0081】
上記したような本発明の優れた効果は、転相乳化時のトナー粒子形成能が、本発明の製造方法では良好であるからこそ発現するものであって、同じ転相乳化法でも、水泡等を巻き込んだ実入り不良のトナー粒子を含むトナー粒子が得られる場合があるような転相乳化法によるトナーの製造方法の場合には、樹脂の粒子内流動性が水泡等により阻害され、所望の貯蔵安定性、粒子強度、及び粒度性が得られにくい。
【0082】
また、中和により自己水分散性となりうる樹脂を形成するための混合物(A)、(B)のうち、相対的に分子量の低い樹脂を形成するために用いられる(B)の方の混合物中に、帯電特性をコントロールする、各種モノマー成分を導入することにより、当該トナーの帯電特性を効果的にコントロールすることもできる。
【0083】
本発明の製造方法で用いる、中和により自己水分散性となりうる樹脂は、架橋されていないものであることが好ましい。すなわち、2種以上の付加重合性単量体からなる2以上の混合物には、いずれにも2官能以上の架橋性単量体を含めない様にして調製し、上記に従って各段の重合反応を行う様にするとともに、架橋剤を併用することなく転相乳化する様にするのが好ましい。
【0084】
本発明のトナー粒子の製造方法には、公知慣用の着色剤を用いることができるが、具体的には、例えばカーボンブラック、磁性粉、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガラ、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントブルー15、四三酸化鉄、三二酸化鉄、鉄粉、酸化亜鉛、セレン等を挙げることができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0085】
本発明の第1工程では、通常、上記中和により自己水分散性となりうる樹脂、着色剤及び有機溶剤を必須成分として、必要に応じて中和剤をも含む、転相乳化に用いる混合物(ミルベースと呼ばれる場合がある)が調製される。この際の着色剤の使用量は、通常前記樹脂固形分100重量部当たり、3〜150重量部の範囲から選択される。混合物中の不揮発分は、通常20〜80重量%の範囲内に調整される。
【0086】
また前記混合物を調製する際に用いる有機溶媒としては、上記したものがいずれも使用できる。樹脂を溶液重合した場合には、その時に用いた有機溶媒と同一のものを使用することが出来る。上記した通り、当該溶液重合時に用いた有機溶媒と混合物調製に用いる有機溶媒の各々の種類を変えて用いる様にしてもよい。
【0087】
混合物の調製に当たっては、そこに例えばアセトン、ブタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性、若しくは部分水溶性の有機溶剤を含ませることにより、第2工程におけるトナー粒子の生成が容易になる。
【0088】
本発明において使用し得る、他の構成成分(添加剤成分)としては、帯電制御剤類や離型剤類などの、各種の助剤類が挙げられ、その使用目的および使用条件に応じて、適宜、選択して使用することが出来る。
【0089】
本発明の任意の製造工程において、必要に応じてワックス類、帯電制御剤等の助剤を含有させることもできる。
【0090】
本発明の製造方法には、着色剤を含む転相乳化用混合物を用いるが、それは、着色剤と、中和により自己水分散性となりうる樹脂と、有機溶媒と、上記製造方法に応じた中和剤からなる、前三者のみ又は前四者のみから構成されていてもよいが、当該前三者又は前四者に、更にワックス微粒子を含ませても良い。
【0091】
次にワックスの添加について説明する。本発明では、中和により自己水分散性となりうる樹脂を用い、転相乳化により水性媒体中に粒子を形成するトナー粒子の製造方法において、あらかじめ特定の粒径に分散されたワックス微粒子を該樹脂と着色剤と同時に転相乳化することで、トナー粒子内部にワックス微粒子と着色剤が内包された形態のカプセル型球形トナー粒子を得ることができる。
【0092】
なお、本発明で得られる球形トナー粒子において、ワックス微粒子がトナー粒子内に内包されているかどうかの確認は、例えば、トナー粒子を樹脂に埋包し、ミクロトームで切断し、その薄片状のものをルテニウム酸四酸化物等で染色したサンプルを、TEM(透過型電子顕微鏡)により直接観察することで確認することが出来る。
【0093】
ワックス微粒子は、例えば固形微粒子そのもの又は微粒子液媒体分散体の形態で、混合物中に含めることが出来る。ワックスとしては、混合物中の有機溶媒に溶解しないものが好ましい。
【0094】
本発明に使用されるワックスとしては、比較的低軟化点、もしくは低融点の化合物が好ましく、軟化点(融点)が40〜130℃を有する、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの如き高級炭化水素の石油ワックス類;カルナバワックス、キャンデラワックス、木ロウ、ライスワックスの如き高級エステルの植物系ワックス類;ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィッシュワックスの如き高級炭化水素の合成ワックス類が使用できる。なお、使用されるワックスは軟化点(融点)が異なるものを混合しても良い。
【0095】
ワックス微粒子の中和により自己水分散性となりうる樹脂への分散は、粉砕法と同様に、溶融混練時に混練分散する方法と、湿式で分散する方法があるが、本発明の製造方法では、湿式分散がプロセス上簡便であり好ましい。また、溶融混練では所望の粒子径に分散したワックス微粒子がさらに微分散されたり、場合によっては再凝集することがあり、好ましくない。
【0096】
湿式混練する場合には、樹脂と、着色剤と、ワックス微粒子そのもの又はその液媒体分散体とを同時に分散する場合と、樹脂と、着色剤を分散した後、ワックス微粒子そのもの又はその液媒体分散体を分散する場合の、いずれの方法でも良いが、後者の方法が転相乳化時の造粒性に影響が少ないため、より好ましい。前者の方法では、ワックスの如き疎水性の高い成分が着色剤に吸着し、転相乳化時の粒子形成に悪影響を与える場合がある。
【0097】
本発明の製造方法では、上記ワックスを液媒体中に所定の粒子径に分散した、ワックス微粒子の液媒体分散体が好適に使用出来る。
【0098】
ワックス微粒子の液媒体分散体は、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素類、あるいはメチルイソブチルケトンの如きケトン類等の有機溶媒をワックスの軟化点(融点)以上に温度を上げて、ワックスを溶解もしくは分散した後、通常の撹拌機、またはホモミキサー、ホモジナイザ等によるせん断下に水性媒体を添加して、微分散を行い、所望の粒子径のワックス微粒子を得る。この時必要に応じて分散安定剤を使用しても良い。溶媒の沸点がワックスの軟化点(融点)より低い場合には、加圧下で液温をワックスの軟化点(融点)より高くして溶解もしくは分散するのが好ましい場合もある。またこの分散は、例えば、最初にワックスが所望の粒子径になるように、撹拌速度、時間等を調製する。その後、分散液を冷却し、有機溶媒を留去すればワックスの液媒体分散体が調整できる。
【0099】
また、ワックスの非水系分散液媒体として調整する場合は、例えばイソプロピルアルコールの如きアルコール類;メチルエチルケトンの如きケトン類;酢酸エチルエステルの如きエステル類のようなワックスが溶解しないものを使用し、ワックスの軟化点(融点)以上の温度で、通常の撹拌機、またはホモミキサー、ホモジナイザ等による高速せん断下に微分散を行い、所望の粒子径のワックス微粒子の非水液媒体分散体が得られる。この時、必要に応じて分散安定剤を使用しても良い。
【0100】
本発明に使用されるワックスの軟化点(融点)は、例えば40〜130℃、好ましくは60〜120℃を有するものである。軟化点が40℃よりも低いと、トナーの耐ブロッキング性や貯蔵安定性がが不十分であり、130℃を越えると、定着開始温度が高くなり好ましくない。
【0101】
ワックスの添加量は、中和により自己水分散性となりうる樹脂固形分に対して、固形分にして1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%であり、1重量%より少ないとワックスの添加効果が不充分で、30重量%よりも多いと、樹脂がワックス微粒子を十分内包できず、現像性が劣化するため好ましくない。
【0102】
加えるべきワックス微粒子の粒子径は、得ようとするトナー粒子の粒子径よりもより小さくなる様に選択するのがよく、通常0.1〜3μm、好ましくは0.2〜2μmである。粒子径が0.1μm よりも小さいと、含有量を増加しても、溶融時にトナー粒子表面に溶けだして十分な離型作用を発現できず、一方、粒子径が3μmよりも大きいと、トナー粒子内の含有量が不均一になったり、あるいはトナー粒子表面にワックスが露出し、現像性が劣化するため好ましくない。
【0103】
ワックス微粒子を含む転相乳化用混合物を用いた本発明の製造方法の特徴は、次の通りである。
【0104】
1)あらかじめ所望の粒径に制御されたワックスの微粒子を樹脂溶液中に分散することで、ワックスの粒子径制御が容易なことが挙げられる。言うまでもなく、ワックスの分散粒径は、定着時の離型効果に多大な影響を有しており、粉砕法における溶融混練等では使用するワックスの種類や軟化点(融点)に制限を受けるため、調製が困難となる。特に、ワックス微粒子がトナー粒子内に内包されることにより、粉砕法、あるいは重合法では製法上困難を伴う、比較的低温の軟化点(融点)を有するワックスを用いることが可能である。
【0105】
2)また、転相乳化法では有機相(転相乳化用に用いる混合物)における着色剤や、ワックスの分散状態が転相後、トナー粒子を形成した後も保持されることである。そのため、重合法に見られるような着色剤、あるいはワックスの凝集や、該成分の不均一な内包が見られない。
【0106】
3)また、転相乳化法は、樹脂の親水ー疎水のバランスにより粒子が形成されるため、着色剤や、ワックスの如き疎水性成分はトナー粒子内部に内包され、ワックスに起因する現像性の劣化が生じがたいことが挙げられる。
【0107】
本発明の製造方法によれば、上記特徴により、低温定着と耐ホットオフセット及び巻き付き性に優れ、かつ、優れた現像特性を有する粉体トナーを提供することが可能になる。
【0108】
次に第3工程を説明する。ここでは、当該トナー粒子が分散した水性媒体から、当該粒子のみが分離される。この工程は、水性媒体中にトナー粒子を生成させた後から乾燥までの中間工程である。
【0109】
当該粒子と水性媒体との分離を行うに当たっては、水性媒体中から予め有機溶剤を除去してから、当該粒子との分離を行うのが良い。トナー粒子生成後、例えば減圧蒸留によって有機溶媒を除去することができる。
【0110】
トナー粒子中の自己水分散性樹脂が、中和により自己水分散しうる樹脂を中和剤で中和して得たものの場合には、前記有機溶媒のみが除去されたトナー粒子の水性分散液と、前記したのとは逆極性の中和剤又はその水溶液と混合して、それの中和状態にある、酸基あるいは塩基性基を元の未中和の状態の酸あるいは塩基にもどし、その一部又は全部を、中和により自己水分散性となりうるアニオン型あるいはカチオン型樹脂にしてから、分離し乾燥することもできる。
【0111】
この方法によれば、当該処理前の分散液中に溶解している水溶性樹脂成分が中和されて、トナー粒子表面に付着するため、トナー収率が向上し、トナー粒子粉体の流動性が改善される。工業的には、不可欠な廃液処理の負荷も低減される。
【0112】
また、前記した様に有機溶媒を除去してトナー粒子を液媒体から分離してから、それを水中に再分散させる工程を経てから、前記同様に、中和により自己水分散しうる樹脂を中和剤で中和して得た自己水分散性樹脂の、中和状態にある、酸基あるいは塩基性基を元の未中和の状態の酸あるいは塩基にもどし、その一部又は全部を、中和により自己水分散性となりうるアニオン型あるいはカチオン型樹脂にしてから、再度水性媒体から分離し乾燥することもできる。
【0113】
この場合には、逆極性の中和剤(酸又は塩基)又はその水溶液にて処理することにより、水性媒体からのトナー粒子の分離が容易になり、後続する工程へ一層スムーズに進行できるようになる。この処理により粒子中の樹脂は、未中和の状態となる。
【0114】
また、この操作により粒子表面の塩構造を元の官能基に戻すことで帯電特性、とくに環境安定性が増す。
【0115】
いずれにしても、自己水分散性樹脂→中和により自己水分散性となりうる樹脂の変換は、中和により自己水分散しうる樹脂を中和したのとは逆極性の中和剤又はその水溶液を用いて処理が行われる。
【0116】
トナー粒子中の樹脂がアニオン型自己水分散性樹脂であれば、例えば酸水溶液にてpH2〜3に調整して攪拌し、その自己水分散性樹脂を、中和により自己水分散性となりうる樹脂に変換する。ここでトナー粒子を構成する樹脂を変換することにより湿度の変化などの耐環境性がより改善されたトナーとすることが出来る。
【0117】
なお、酸水溶液としては公知慣用の強酸を用いたものがいずれも使用できる。通常は、0.1〜1Nの塩酸、硫酸、燐酸等の水溶液が用いられる。カチオン型自己水分散性樹脂を用いた場合の塩基水溶液としては、強塩基を用いたものがいずれも使用でき、通常は0.1〜1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0118】
尚、この逆極性の中和剤を用いる前記処理は、樹脂として、例えばポリオキシエチレン繰り返し単位を含むポリオキシアルキレン基等を含有する、中和しなくとも自己水分散性を有する樹脂を用いる場合は、必須工程ではない。
【0119】
水性媒体中から分離されたトナー粒子は、乾燥してトナー粉末を得る。この乾燥は、公知慣用の手法がいずれも採用できるが、例えばトナー粒子が熱融着や凝集しない温度で熱風乾燥でもよいし、凍結乾燥するという方法が挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行うという方法もある。
【0120】
本発明で用いるトナー粒子からなるトナー粉体の粒子サイズとしては、トナーとしての実用的レベル内で任意の大きさを選定できる。現状のマシンとのマッチング性からは、その体積平均粒子径が3〜30μm、好ましくは、4〜12μmの範囲のものが好適である。
【0121】
本発明の製造方法で得られるトナーは、非磁性一成分トナーあるいは磁性一成分トナーとして、又、キャリアと組み合わせることにより二成分現像剤として使用することがでる。
【0122】
キャリアとしては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物、表面処理されたガラス、シリカ等の粉末が使用できる。勿論、アクリル樹脂被覆キャリア、フッ素樹脂被覆キャリア、シリコーン樹脂被覆キャリア等の樹脂被覆キャリアも使用できる。キャリアとしては、例えば20〜200ミクロン程度のものが使用される。
【0123】
本発明で得られたトナーと、キャリアとから二成分型静電荷像現像剤を得る場合には、例えばキャリア100重量部当たり、トナー1〜15重量部となる様な割合で混合して用いればよい。
【0124】
転相乳化法による、単一樹脂系のブレンドによるトナーの製造方法では、転相乳化時の粒子形成能が劣るため、高分子量重合体の分子量及びその含有量を大きく上げることができなかった。
【0125】
また、含有される相対的に分子量の低い樹脂は、親水性、及び流動性も高いため、積極的に粒子表面に局在化する傾向にあり、相溶した樹脂中の当該樹脂の濃度が表面に近づくほど高くなる。そして親水性基の薄層がトナー粒子最外層に形成され、貯蔵安定性に寄与するわけだが、転相乳化時の粒子形成能が劣るため、この効果も小さかった。
【0126】
その結果、ガラス転移温度の異なる樹脂のブレンドにおいても、一方のガラス転移温度を下げることができず、十分な低温定着性は得られなかった。
【0127】
これに対し、本発明の製造方法では、樹脂成分について、ガラス転移温度(組成)の乖離、あるいは分子量の乖離、あるいは従来より比較的高分子量の重合体が比較的多く含有されていても、それがIn−situ法により得られたものであり転相乳化時の球形トナー粒子形成能に優れているために次の効果が得られる。
【0128】
すなわち、中和により自己水分散性となりうる樹脂において、高分子量重合体成分の分子量をより高くすることが出来、かつその含有量をより増加できるため、十分な耐ホットオフセット性が確保できたトナー粒子粉体とすることができる。
【0129】
また同様に、低分子量重合体を含有している場合には、トナー粒子内での組成変化が生じ、貯蔵安定性に優れたトナー粒子とすることができる。
【0130】
その結果、ガラス転移温度の異なる樹脂のブレンドにおいても、一方のガラス転移温度を下げることができ、十分な低温定着性のトナー粒子粉体を得ることができる。
【0131】
また、ワックス微粒子を併用することで、ワックス微粒子及び着色剤が内包されたトナー粒子とすることが出来るので、ワックスを用いない本発明のトナー粒子に比べて、耐ホットオフセット性及び巻き付き性が大幅に改善されたトナー粒子粉体を得ることが出来る。
【0132】
【発明の実施の形態】
本発明は、次の実施形態を含む。
1.中和により自己水分散性となりうる樹脂と、着色剤と、有機溶剤を必須成分とする混合物を、水性媒体に転相乳化して、水性媒体中に、中和剤の存在下に、着色剤が内包された自己水分散性樹脂からなる粒子を生成させた後、当該粒子を分離し、それを乾燥するトナーの製造方法において、前記中和により自己水分散性となる樹脂として、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それを同一反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、ついでもう1種の混合物を重合して得られた中和により自己水分散性となりうる樹脂を用いることを特徴とするトナーの製造方法。
【0133】
2.重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それを同一反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、ついでもう1種の混合物を重合して得られた中和により自己水分散性となりうる樹脂が、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成重合体のガラス転移温度が、0〜60℃となる付加重合性単量体からなる混合物(A)を、重合率が20〜80%となるまで重合した後、同一反応容器中において、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成重合体のガラス転移温度が、45〜80℃となる付加重合性単量体の混合物(B)を重合してなる、中和により自己水分散性となる樹脂である上記1記載の製造方法。
【0134】
3.ワックス微粒子を併用する上記1及び2記載の製造方法。
【0135】
4.着色剤及び/又は、ワックス微粒子が粒子内に内包されていることを特徴とする上記1、2、及び3記載の製造方法。
【0136】
5.付加重合性単量体類の混合物が2種の場合に、(A)と(B)の混合物の重量比が、70/30〜30/70である上記1、2、3及び4記載の製造方法。
【0137】
6.2種以上の付加重合性単量体類の混合物として、酸価が30〜100mg(KOH)/gのものを用いる上記1、2、3、4及び5記載の製造方法。
【0138】
7.溶液重合により重合反応を行い、かつ反応溶媒としてSP値が9以上のものを用いる上記1、2、3、4、5及び6記載の製造方法。
【0139】
8.溶液重合により重合反応を行い、かつ反応溶媒としてSP値が9以上のものを用い、かつ反応溶媒中に水を0.5〜30重量%含有させる上記1、2、3、4、5、6及び7記載の製造方法。
【0140】
9.重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それを同一反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、ついでもう1種の混合物を重合して得られた中和により自己水分散性となりうる樹脂が、架橋されていないものである上記1、2、3、4、5、6、7及び8記載の製造方法。
【0141】
本発明の実施形態を、好ましい実施態様に基づいて説明するとすれば、次の通りである。
【0142】
2種以上の付加重合性単量体及びラジカル重合開始剤からなる、酸価30〜100mg(KOH)/gで、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成重合体のガラス転移温度が0〜60℃となりうる、架橋性付加重合性単量体を含まない混合物を、ひとつの反応容器中、後述するワックスを溶解しない、SP値9以上の有機溶媒と水溶性又は部分水溶性の有機溶媒と水とを含む反応溶媒(水含有率0.5〜30重量%)の存在下で、重合率が20〜80%(重量平均分子量Mw8万〜50万)となるまでを重合してから、ついでもう1種の、2種以上の付加重合性単量体及びラジカル重合開始剤からなる、酸価30〜100mg(KOH)/gで、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成重合体のガラス転移温度が45〜80℃で前記したのより高Tgとなりうる、架橋性付加重合性単量体を含まない混合物を、前記したのと同じ反応容器に加えて、それがMw6千〜6万となる様に、未反応単量体が極力完全に重合して得られた、結果的に、酸価30〜100mg(KOH)/gの、重量平均分子量3〜8万の領域を比較的多く含む、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸系共重合体からなる中和により自己水分散性となりうる樹脂(全体として、Mw8〜18万で、最終的なガラス転移温度55〜70℃、不揮発分30〜70重量%)溶液を得る。
【0143】
当該架橋した部分を全く含まない未架橋のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸系共重合体に、前記溶剤に不溶な有機顔料又は無機顔料を前記樹脂固形分100重量部当たり5〜15重量部となる様に混合し分散させて均一な混合物1を得る。
【0144】
次いで、高級炭化水素の合成ワックス、同石油ワックス、高級エステルの植物ワックスから選ばれる少なくとも1種の、前記混合物1中の溶剤及び共重合体に親和性があるがそれらに溶解(相溶)しない、軟化点(融点)40〜130℃で、平均粒子径0.1〜3μmのワックス微粒子の、分散安定剤を含まないか極少量のみ含む、有機溶剤を含んでいてもよい均一で安定な、水性媒体分散体(エマルジョン)を準備する。
【0145】
上記混合物1に、その樹脂固形分100重量部当たり、ワックス微粒子不揮発分3〜12重量部となる様に上記ワックス水性媒体分散液を加えて混合分散して、ワックス微粒子と着色剤が分散した、塩基による中和により自己水分散性となりうる樹脂の有機溶剤からなる混合物2を得る。
【0146】
この混合物2に、塩基水溶液を前記樹脂の中和率5〜20%となる様に加えて、均一な混合物3を得る。混合物3と転相乳化に用いる水性媒体の温度をいずれも5〜40℃の範囲で出来るだけ同一とする。
【0147】
この混合物3の撹拌下に、水性媒体を滴下して転相乳化を行う。この際の混合物3と水性媒体の温度は出来るだけ同一とする。こうして、顔料微粒子とワックス微粒子が前記樹脂に分散内包された、平均粒子径5〜15μmの球形トナー粒子の水性媒体分散液を得る。
【0148】
この球形トナー粒子の水性媒体分散液から脱溶剤を行い、球形トナー粒子の水分散液(溶剤はゼロか極少量)として、これからトナー粒子のみ濾別し、水に再分散させて、そこに酸水溶液を加えて充分の撹拌して、球形トナー粒子に含まれる、塩基で中和された自己水分散性樹脂を中和により自己水分散性となりうる樹脂に戻す。
【0149】
得られたトナー粒子を含む液媒体について、洗浄を繰り返し、トナー粒子のみを分離して乾燥し、顔料粒子とワックス微粒子が中和により自己水分散性となりうる樹脂に分散内包された球形粒子からなる粉体の静電荷像現像用トナーを得る。
【0150】
【実施例】
次に、本発明を比較例及び実施例により、一層、具体的に説明する。以下において、部、および%はすべて重量基準であるものとする。
【0151】
(参考例1) カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体の合成例滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトンの1000部を仕込んでから、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を、80℃にて2時間かけて滴下した。
【0152】
スチレン 600部
アクリル酸2ーエチルヘキシル 143部
メタクリル酸メチル 180部
アクリル酸 77部
「パーブチルO」 10部
日本油脂(株)社製ラジカル重合開始剤
【0153】
ついで、滴下終了してから、3時間毎に3回「パーブチルO」の3部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。該樹脂のガラス転移温度は70℃、重量平均分子量は52000、酸価は60であった。以下、A−1と略記する。
【0154】
(参考例2) カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体の合成例滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトンの320部を仕込んでから、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を、80℃にて2時間かけて滴下した。
【0155】
スチレン 600部
アクリル酸2ーエチルヘキシル 143部
メタクリル酸メチル 180部
アクリル酸 77部
「パーブチルO」 2 部
【0156】
ついで、滴下終了してから、3時間毎に3回「パーブチルO」の2部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。該樹脂のガラス転移温度は72℃、重量平均分子量は213000、酸価は60であった。以下、A−2と略記する。
【0157】
(参考例3) カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体の合成例滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトンの650部を仕込んでから、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を、80℃にて2時間かけて滴下した。
【0158】
スチレン 600部
アクリル酸2ーエチルヘキシル 143部
メタクリル酸メチル 180部
アクリル酸 77部
「パーブチルO」 60部
【0159】
ついで、滴下終了してから、3時間毎に3回「パーブチルO」の2部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。該樹脂のガラス転移温度は62℃、重量平均分子量は17500、酸価は60であった。以下、A−3と略記する。
【0160】
(参考例4) カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体の合成例滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール/水の114/12/24部を仕込んでから、80℃に昇温し、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を一括して仕込み、反応を開始した。
【0161】
Figure 0003879884
【0162】
ついで、3時間後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定した。粘度がP−Qとなる時点で、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコールの567/63部を添加し、温度が80℃になってから、以下に示されるような割合の混合物を1時間にわたって滴下した。なお、この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーで定量することで1段目の重合率を計算すると、60%であった。
【0163】
Figure 0003879884
【0164】
滴下終了後、3時間毎に3回「パーブチルO」の2部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。以下、A−4と略記する。
【0165】
(参考例5) カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体の合成例滴下装置、温度計、窒素ガス導入官、撹拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール/水の95/10/20部を仕込んでから、80℃に昇温し、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を一括して仕込み、反応を開始した。
【0166】
Figure 0003879884
【0167】
ついで、3時間後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定した。粘度がPとなる時点で、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコールの473/53部を添加し、温度が80℃になってから、以下に示されるような割合の混合物を1時間にわたって滴下した。なお、この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーで定量することで1段目の重合率を計算すると、62%であった。
【0168】
Figure 0003879884
【0169】
滴下終了後、3時間毎に3回「パーブチルO」の2部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。以下、A−5と略記する。
【0170】
(参考例6) カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系共重合体の合成例滴下装置、温度計、窒素ガス導入官、撹拌装置及び還流冷却器を備えた3リットルのフラスコに、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール/水の114/12/24部を仕込んでから、80℃に昇温し、下記の単量体類及び重合開始剤からなる混合物を一括して仕込み、反応を開始した。
【0171】
Figure 0003879884
【0172】
ついで、3時間後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定した。粘度がP−Qとなる時点で、メチルエチルケトン/イソプロピルアルコールの567/63部を添加し、温度が80℃になってから、以下に示されるような割合の混合物を1時間にわたって滴下した。なお、この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーで定量することで1段目の重合率を計算すると、63%であった。
【0173】
Figure 0003879884
【0174】
滴下終了後、3時間毎に3回「パーブチルO」の2部を添加し、さらに4時間反応を継続してから終了した。最後に、メチルエチルケトンで不揮発分が50%になるように調整して樹脂溶液を得た。以下、A−6と略記する。
【0175】
【表1】
Figure 0003879884
【0176】
・酸価:樹脂固形分の1gを中和するに必要なKOHのmg量。
・Mw:ゲルパーミショングロマトグラフィーで測定した重量平均分子量。
・Tg:DSCで測定したガラス転移温度。
【0177】
(比較例1)
参考例1で得られたA−1の樹脂溶液の900部と、「エルフテックス(ELFTEX)8」(米国キャボット社製のカーボンブラック)の50部とを、「アイガーモーターミル Mー250」(アイガージャパン社製のモーターミル)を使用して1時間の間混練せしめた。ついで、メチルエチルケトンで不揮発分を51%に調製してミルベースを作製した。このミルベースの樹脂固形分/顔料の割合は、90/10になる。
【0178】
次いで、この混合物Aの200部に対して、1規定の水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)の9.2部およびイソプロピルアルコールの24部を加え、温度を30℃に保持した後、攪拌しながら、これに、10ml/minで8分間にわたって脱イオン水を滴下し、転相乳化させた。さらに、30分後に脱イオン水の300部を加えた。
【0179】
次に、減圧蒸留によって有機溶剤を除去し、処理液よりトナー粒子を濾別させたのち、当粒子を水中に再分散させた。続いてこの分散液を、0.1N塩酸水溶液(前記したのと逆極性の中和剤水溶液)にてpH2に調整し、30分間攪拌し、トナー粒子中の樹脂を、中和により自己水分散性となりうる樹脂に変換した。
【0180】
得られたトナー粒子を濾別した後、さらに水中に再分散洗浄する操作をした後トナー粒子を水媒体より分離させた。これを凍結乾燥させることにより、目的とするトナー粉を得た。
【0181】
此処に得られたトナーの平均粒径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、8.3ミクロン(μm)であった。
【0182】
(比較例2)
参考例2で得られたA−2の樹脂溶液の270部と、参考例3で得られたA−3の樹脂溶液の630部と、「エルフテックス(ELFTEX)8」(米国キャボット社製のカーボンブラック)の50部とを、「アイガーモーターミル Mー250」(アイガージャパン社製のモーターミル)を使用して1時間の間混練せしめた。ついで、メチルエチルケトンで不揮発分を51%に調製してミルベースを作製した。このミルベースの樹脂固形分/顔料の割合は、90/10になる。また、A−1/A−2の樹脂のブレンド比は、30/70になる。
【0183】
次いで、この混合物Aの200部に対して、トリエチルアミン(中和剤)の2.2部およびイソプロピルアルコールの20部を加え、温度を30℃に保持した後、攪拌しながら、これに、10ml/minで8分間にわたって脱イオン水を滴下し、転相乳化させた。さらに、30分後に脱イオン水の300部を加えた。なお、中和塩基として1N−NaOH水溶液を使用して同様な操作を行った場合には、良好なトナー粒子が得られなかった。
【0184】
次に、減圧蒸留によって有機溶剤を除去し、処理液よりトナー粒子を濾別させたのち、当粒子を水中に再分散させた。続いてこの分散液を、0.1N塩酸水溶液(前記したのと逆極性の中和剤水溶液)にてpH2に調整し、30分間攪拌し、トナー粒子中の樹脂を、中和により自己水分散性となりうる樹脂に変換した。
【0185】
得られたトナー粒子を濾別した後、さらに水中に再分散洗浄する操作をした後トナー粒子を水媒体より分離させた。これを凍結乾燥させることにより、目的とするトナー粉を得た。
【0186】
此処に得られたトナーの平均粒径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、8.5ミクロン(μm)であった。
【0187】
(実施例1)
A−4の樹脂溶液の900部と、「エルフテックス(ELFTEX)8」(米国キャボット社製のカーボンブラック)の50部とを、「アイガーモーターミルMー250」(アイガージャパン社製のモーターミル)を使用して1時間の間混練せしめた。ついで、メチルエチルケトンで不揮発分を51%に調製してミルベースを作製した。このミルベースの樹脂固形分/顔料の割合は、90/10になる。
【0188】
次いで、この混合物Aの300部に対して、1規定の水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)の20.7部およびイソプロピルアルコールの34部及びメチルエチルケトンの30部及び、脱イオン水の90部を加え、良く混合した後、内温を30℃に保持し、攪拌しながら、これに、5ml/minで8分間にわたって脱イオン水を滴下し、転相乳化させた。さらに、30分後に脱イオン水の300部を加えた。尚、転相乳化時の温度は、30℃となる様に両液温度の差がなくなる様に調製した(以下の実施例いずれにおいても同様の温度とした。)。
【0189】
次に、減圧蒸留によって有機溶剤を除去し、処理液よりトナー粒子を濾別させたのち、当粒子を水中に再分散させた。続いてこの分散液を、0.1N塩酸水溶液(前記したのと逆極性の中和剤水溶液)にてpH2に調整し、30分間攪拌し、トナー粒子中の樹脂を、中和により自己水分散性となりうる樹脂に変換した。
【0190】
得られたトナー粒子を濾別した後、さらに水中に再分散洗浄する操作をした後トナー粒子を水媒体より分離させた。これを凍結乾燥させることにより、目的とするトナー粉を得た。
【0191】
此処に得られたトナーの平均粒子径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、7.8ミクロン(μm)であった。
【0192】
(実施例2)
A−5の樹脂溶液を用い、造粒条件として、 1規定の水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)を16.5部に、およびイソプロピルアルコールを37.2部に、メチルエチルケトンを51部に変えた以外は、実施例1と同様にしてトナー粉を得た。
【0193】
此処に得られたトナーの平均粒径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、7.7ミクロン(μm)であった。
【0194】
(実施例3)
A−6の樹脂溶液を用い、造粒条件として、 1規定の水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)を24.8部に、およびイソプロピルアルコールを53部に、メチルエチルケトンを90部に変えた以外は、実施例1と同様にしてトナー粉を得た。 此処に得られたトナーの平均粒径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、8.3ミクロン(μm)であった。
【0195】
(実施例4)
A−4の樹脂溶液の900部と、「エルフテックス(ELFTEX)8」(米国キャボット社製のカーボンブラック)の50部とを、「アイガーモーターミルM−250」(アイガージャパン社製のモーターミル)を使用して1時間の間混練せしめた。このミルベースの樹脂固形分/顔料の割合は、90/10になる。
【0196】
次に、得られたカーボン分散樹脂溶液に、ワックス微粒子液媒体分散体「H808」(中京油脂社製のエマルジョン型ワックス、フィッシャートロプシュワックス、粒子径0.5μm、固形分含有量30%)の45部を添加し、さらに、「アイガー・モーターミル M−250」によって、10分間のあいだ混合、分散させた。ついで、不揮発分濃度を51%に調整し、ミルベースを作製した。
【0197】
次いで、この混合物の300部に対して、1規定の水酸化ナトリウム水溶液(中和剤)の20.7部およびイソプロピルアルコールの34部及びメチルエチルケトンの30部及び、脱イオン水の90部を加え、良く混合した後、内温を30℃に保持し、攪拌しながら、これに、5ml/minで8分間にわたって脱イオン水を滴下し、転相乳化させた。さらに、30分後に脱イオン水の300部を加えた。
【0198】
この後、実施例1と同様な操作を行ってトナー粉を得た。 此処に得られたトナーの平均粒径は、コールター・マルティサイザー2を用いた測定により、7.9ミクロン(μm)であった。
【0199】
なお、得られたトナー粒子は、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、ワックス微粒子がトナー粒子内に内包されておりカプセル型となっているのが確認された。実施例で得られたトナー粒子は、いずれも平均円形度で、0.97以上であり実質的に球形であった。
【0200】
(トナーの定着試験)
比較例および実施例で作製された、凍結乾燥後の各粉体トナーに、「R−972」(日本エアロジル工業株式会社製のシリカ微粒子)を0.5%外添後、該粉体トナーの22.5部と市販フェライトキャリアの427.5部とを配合したものを使用して、ID値が1.5以上になるように紙に画像出しを行った。
【0201】
ID値とは、「マクベス RD−918」(米国Macbeth社製の印刷用反射濃度計)を使用して測定した画像濃度である。
【0202】
画像出し及び定着試験は、「イマジオ DA250」(株式会社リコー製のコピー機、オイルレスタイプ)を、画像出し部及び定着部に分解し改造したものを使用して試験を行った。
【0203】
(定着性の評価基準)
・定着開始温度:画像出しを行った紙を、130mm/秒の速度で、表面温度を制御した熱ロールに通して定着を行った。熱定着後の画像にセロファンテープを貼り、これに100g/cm2なる荷重をかけて貼り付けた後に引き剥がし、そのID値を測定した。定着開始温度とは、セロファンテープ剥離試験を行った後のID値が、セロファンテープ剥離試験を行う前のID値の90%以上になる時の、熱ロールの表面温度で示した。
【0204】
・耐ホットオフセット温度:画像出しを行った紙を、130mm/秒の速度で、表面温度を制御した熱ロール(シリコンオイル非塗布型)を通し、ホットオフセットが発生した温度をホットオフセット発生温度といい、耐ホットオフセット温度とは、ホットオフセットが発生した直前の温度で示した。
・巻き付き性:画像出しを行った紙を、130mm/秒の速度で、表面温度を制御した熱ロール(シリコンオイル非塗布型)を通したときの、熱ロールへの紙の巻き付き現象をいい、問題ない場合を○、紙がそる場合を△、熱ロールに巻き込まれる場合を×、とし示した。
【0205】
なお、定着開始温度、耐ホットオフセット温度及び巻き付き性の評価は、定着温度を5℃刻みで、最高220℃まで行った。
・貯蔵安定性:貯蔵安定性の評価は5gのトナーを50ccガラス製サンプルビンに入れ50℃で7日間放置後、室温に戻してからサンプルビンを反転させ10秒以内で落下したものを合格とした。かつ凝集度を5段階で評価し、示した(5は凝集無しを示し、1は凝集の程度が著しいことを示す)。
【0206】
(造粒性の評価基準)
高分子量体を使用したときに問題になるのは、粒子の形態の良否である。良好な粒子は、光学顕微鏡で観察すると、球形で真っ黒な形態を示すが、状態の悪いものはカーボンが凝集し、光学顕微鏡で観察するとむら状の空隙が透けて見える。このような粒子は、ゆるみ見かけ比重を測定すると、正常な粒子に比べ値が小さく示される。また、トナー諸物性において、貯蔵安定性が低下したり、耐久性が低下するため、トナーとして好ましくない。ここでは、正常な粒子を○、若干粒子周辺にむらがある場合を△、むらが著しいものを×で示す。また、同時にゆるみ見かけ比重(g/cm3)の値を示す。なお、ゆるみ見かけ比重はR972を0.5%外添した後測定した。ここでゆるみ見かけ比重の測定は、ふるいに入れたトナーを振動させながら静置した30cm3の容器内に落下させ、そのトナー重量を測定することにより行った。
【0207】
評価結果は、表2及び3に示した。
【0208】
【表2】
Figure 0003879884
【0209】
【表3】
Figure 0003879884
【0210】
【発明の効果】
転相乳化法により粒子を形成する本発明の製造方法において、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときのガラス転移温度の異なる、2種以上の中和により自己水分散性となる樹脂を同一反応容器中で合成することにより、高分子量体を含有していても、また組成の乖離があっても、それを含むミルベースを用いれば、転相乳化時の球形トナー粒子形成(粒度分布や粒子形態に代表される造粒性)が良好になる、という顕著な効果が得られる。また、このことにより、定着特性のバランスに優れたトナーを得ることができる。
【0211】
さらに、ワックス微粒子を転相乳化時のミルベースに添加することにより、トナー粒子中にワックス微粒子が内包されたカプセル型粒子とすることができ、さらに、耐ホットオフセット性、及び巻き付き性をも顕著に改善できるという、特徴も有する。

Claims (10)

  1. 中和により自己水分散性となりうる樹脂と、着色剤と、有機溶剤を必須成分とする混合物を、前記樹脂を自己水分散性とするに足る量の中和剤の存在下に、水性媒体に転相乳化して、液媒体中に、着色剤が含有された自己水分散性樹脂からなる粒子を生成させた後、当該粒子を分離し、それを乾燥するトナーの製造方法において、前記中和により自己水分散性となる樹脂として、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それを同一反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、前記重合の反応生成物の存在下で、ついでもう1種の混合物を重合して得られた樹脂であって、かつ重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が0〜60℃となる付加重合性単量体からなる混合物(A)を重合した後、前記混合物(A)中の未反応の付加重合性単量体を含んだ樹脂中に、重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成重合体のガラス転移温度が45〜80℃となる付加重合性単量体の混合物(B)を加え、引き続き重合して製造される、中和により自己水分散性となる樹脂を用いることを特徴とするトナーの製造方法。
  2. 前記中和により自己水分散性となる樹脂は、前記混合物(A)を重合率が20〜80%になるまで重合した後、前記混合物(B)を加え引き続き重合して製造されるものである請求項1に記載のトナーの製造方法。
  3. 前記混合物(A)を100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が、前記混合物(B)を100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度より低い請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
  4. 前記混合物(A)を100%反応したと仮定したときの生成樹脂の重量平均分子量が、前記混合物(B)を100%反応したと仮定したときの生成樹脂
    の重量平均分子量より高い請求項3に記載のトナーの製造方法。
  5. ワックス微粒子を併用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 着色剤及び/又はワックス微粒子が粒子内に内包されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 付加重合性単量体類の混合物が2種の場合に、(A)と(B)の混合物の重量比が、70 / 30〜30 / 70である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 溶液重合により重合反応を行い、かつ反応溶媒としてSP値が9以上のものを用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 溶液重合により重合反応を行い、かつ反応溶媒としてSP値が9以上のものを用い、かつ反応溶媒中に水を0.5〜30重量%含有させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 重合する混合物の付加重合性単量体が100%反応したと仮定したときの生成樹脂のガラス転移温度が異なる、2種以上の付加重合性単量体混合物を用いて、それを同一反応容器中、前記複数の混合物のうちの1種の混合物を重合してから、ついでもう1種の混合物を重合して得られた中和により自己水分散性となりうる樹脂が、架橋されていないものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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