JP4193287B2 - トナー及びその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機やプリンターなどに用いられる静電荷像現像用の負帯電性トナー及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
トナーの乾式製法としては、結着樹脂に着色剤などを溶融混練後粉砕し分級するという粉砕法があり、また湿式製法としては、着色剤などを分散させた重合性モノマーを液媒体中で重合させて着色粒子を形成後、該粒子を乾燥粉体として取り出すという重合法や、特開平5−66600号公報などに記載されている転相乳化法などがある。
【0003】
近年、粉体トナーには、解像度などの画質向上や、消費電力低減などのための低温定着に対するニーズが高い。画質向上にはトナーの小粒径化が有効であることから、小粒径化した際の帯電性制御や粉体流動性確保が容易で、コスト的にも有利性が期待される湿式法トナーの開発が盛んに行われている。
【0004】
定着性については、耐ホットオフセット温度域を広げるには結着樹脂に高分子量成分を含有することで、また低温定着性を得るには結着樹脂のガラス転移温度を下げ、低分子量成分を含有することで対応が可能である。しかしながら、結着樹脂にガラス転移温度の低い樹脂を使用するとトナーの耐熱保存性が不十分になり実用上問題があった。
【0005】
このような相反する性能を満足させるために、トナー粒子を多層構造とし、粒子の内側と外側とで異なる組成の樹脂を用いた形のトナーの製法が提案されている。この製法は、粒子の内側にガラス転移温度が低い樹脂を用いることにより、低温定着性を促進させる一方で、粒子の表面には、粒子の内側よりも、ガラス転移温度が高い樹脂を用いることにより、必要な耐熱保存性を確保しながら、ヒートロール定着性に優れたトナーを提供するものである。
【0006】
多層構造を有するトナーの製造方法としては、例えば、in situ重合法、 界面重合法、コアセルベーション法あるいはスプレー・ドライ法による製造方法などが提案されている。
【0007】
しかしながら、これらの製造方法は、操作ないしは処理が容易でなく、製造工程も非常に繁雑である。特に、乳化剤などの懸濁安定剤を用いた場合には、得られるトナー粒子表面に懸濁安定剤が残存しトナーの帯電特性等に悪影響を及ぼすため、多量の水を用いて繰り返し洗浄を行わねばならないなどの問題点がある。
【0008】
このような問題点がなく、低温定着性と耐熱保存性を両立させるため、特開平5−333583号公報、特開平8−334927号公報には、中和により自己水分散性を示す樹脂、非自己水分散性を示す樹脂又は中和された前記樹脂よりも自己水分散性が弱い樹脂、及び、着色剤等を有機溶剤に溶解又は分散させ、次いで、攪拌しながら、適量の水を加えることにより、乳化剤等の懸濁安定剤を使用することなく、水性媒体中に転相乳化させて微粒子を生成させ、生成した微粒子を乾燥させて乾式トナーとする転相乳化法による多層構造を有するトナーの製造方法が提案されている。
【0009】
これらの製造方法では、自己水分散させるに必要な中和剤量を調整することにより、トナー粒径の制御が容易であり、特殊な操作や装置を必要としない製造方法である。しかしながら、これらの製造方法であっても、必ずしも、定着温度幅が十分に満足したトナーが得られなかった。転相乳化法トナーの製法においては、その転相乳化性の点から使用できる樹脂の分子量には限界があり、ビニル系共重合体においては重量平均分子量が300,000以下で、好ましくは200,000以下である。即ち、良好に転相乳化できる程度の分子量の樹脂のみでは、充分なる耐ホットオフセット性を得ることはできない。
【0010】
そこで、転相乳化法によるトナーの製法において、耐ホットオフセット性を向上させるために、特開平9−292737号公報及び特開平10−10774号公報には、粒子内架橋法が提案されている。これらの粒子内架橋法は、架橋性官能基を有し、かつ、良好に転相乳化できる程度の分子量を有する自己水分散性樹脂を使用して転相乳化を行い、球形のトナー粒子の水分散体を作製し、次いで、粒子内で樹脂の少なくとも一部を架橋する技術である。
【0011】
この技術により、転相乳化法トナーにおける耐ホットオフセット性を向上させることができるが、この粒子内架橋法によって得られるトナーであっても、低温定着性がいまだ不十分である、という問題点があった。
【0012】
以上のように、従来技術では、低温定着性と耐ホットオフセット性に優れ、かつ実用的な耐熱保存性を有する、高画質対応の小粒径トナーを製造することはできなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、低温定着性を有しながら耐ホットオフセット性、耐熱保存性に優れ、かつ、画像品質にも優れる球形カプセル化トナーおよびその製法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題につき鋭意検討した結果、次のようなことを見出し本発明を完成した。
【0015】
1.少なくとも一部が架橋された結着樹脂と着色剤を必須成分とする樹脂粒子(I)の表面に、該結着樹脂よりもガラス転移温度の高い酸性基含有樹脂が固着されたトナーが、優れた定着性と耐熱保存性を有し、また良好な画像が得られる。
【0016】
2.本発明のトナーにおいては、結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶解分の含有率は0.5〜70重量%が好適であり、また、表面に固着させる樹脂の酸性基としてはカルボキシル基が好適であり、さらに、平均円形度が0.97以上(本発明では東亜医用電子(株)製のフロー式粒子像分析装置FPIPー1000にて測定)の球形トナーが好適である。
【0017】
3.このようなトナーは、樹脂粒子(I)の水性分散液に、中和により自己水分散性及び/又は水溶性となる酸性基含有樹脂を塩基性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さくガラス転移温度が高い微粒子(II)の水性分散液を均一に混合し、酸で樹脂粒子(I)の表面に微粒子(II)を析出させ、次いで、これから液媒体を除去して乾燥し、この乾燥粉体を加熱下で攪拌混合処理することによって好適に得られる。
【0018】
4.樹脂粒子(I)は、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂、架橋剤、着色剤を必須成分として含む混合物を、塩基性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化した後、加熱架橋するか、あるいは、着色剤の分散した架橋性モノマーを含む重合性モノマーを液媒体中で重合させることによって好適に得られる。
【0019】
以下に本発明の詳細を述べる。
【0020】
まず、着色剤と少なくとも一部が架橋された結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の組成および製法に関して以下述べる。
【0021】
前記結着樹脂としては、トナーバインダー樹脂として使用しうるもので且つ架橋性基を有する樹脂を含有していればいずれでもよく、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。その中でも、トナーとしての優れた帯電性や定着性が得られやすいスチレン(メタ)アクリル樹脂が本発明に好適である。また、樹脂粒子(I)の結着樹脂として、分子量やガラス転移温度の異なる複数の樹脂をブレンドして使用することも、ヒートロール定着温度幅の拡大などが行いやすくなり、本発明に好適である。
【0022】
結着樹脂のガラス転移温度(DSC法で測定)は30〜70℃程度が好ましく、低温定着性と耐熱保存性のバランスを取り易いことから40〜65℃が特に好適である。
【0023】
このような結着樹脂は、テトラヒドロフランを使用したソックスレー抽出による不溶解成分が0.5〜70重量%で、テトラヒドロフラン可溶分における分子量が、5,000〜200,000にある一つのピークと、200,000以上とりわけ500,000以上に少なくとも一つのピーク又は肩を有するものが好ましい。
【0024】
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知慣用の着色剤を用いることができ、顔料が好ましく、以下のようなものが例示できる。
【0025】
ブラックトナーに用いることのできる黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、シアニンブラック、アニリンブラック、フェライト、マグネタイト等が挙げられる。又は、下記の有彩色顔料を黒色となる様に調製したものを使用することが出来る。
【0026】
イエロートナーに用いることのできる黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ハンザイエロー5G、ハンザイエローG、ハンザイエローGR、ハンザイエローA、ハンザイエローRN、ハンザイエローR、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、パーマネントイエローNCG、バルカンファーストイエロー5G、バルカンファーストイエローR、キノリンイエローレーキ、アンスラゲンイエロー6GL、パーマネントイエローFGL、パーマネントイエローH10G、パーマネントイエローHR、アンスラピリミジンイエロー、その他イソインドリノンイエロー、クロモフタルイエロー、ノボパームイエローH2G、縮合アゾイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー等が挙げられる。
【0027】
マゼンタトナーに用いることのできる赤色顔料としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、パーマネントレッドBL、パーマネントレッドF5RK、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチンングレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、パーマネントカーミンFBB、ベリノンオレンジ、イソインドリノンオレンジ、アンスアンスロンオレンジ、ピランスロンオレンジ、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット、ペリレンレッド等が挙げられる。
【0028】
シアントナーに用いることのできる青色顔料としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ファナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーRS、インダスレンブルーBC、インジコ等が挙げられる。
【0029】
着色剤の使用量は、結着樹脂100重量部当たり3〜50重量部であり、より好ましくは3〜15重量部である。
【0030】
樹脂粒子(I)の、他の構成成分(添加剤成分)としては、離型剤等各種の助剤類が挙げられ、その使用目的および使用条件に応じて、適宜、選択して使用することが出来る。例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、金属石鹸、ステアリン酸亜鉛の如き滑剤等があげられる。
【0031】
樹脂粒子(I)の製法はいかなる方法でもよく特に限定はされないが、以下に述べるような転相乳化法あるいは重合法が小粒径で球形の粒子が得られやすいために本発明の効果が顕著に発現できるので好ましい。その中でも、乳化剤や分散剤を使用しない転相乳化法が操作性やVOC(揮発性有機化合物)含有量の低減、帯電の環境安定性などの点から特に好適である。
【0032】
転相乳化法による樹脂粒子(I)の製法について述べる。これは、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂、架橋剤、着色剤を必須成分として含む混合物を、塩基性中和剤の存在下に水性媒体(水あるいは水を主成分とする液媒体)と混合し転相乳化して造粒した後、加熱架橋して、着色剤を内包した粒子を得る方法である。
【0033】
本発明において、アルカリ中和により自己水分散性となりうる樹脂とは、分子内に有する、中和により親水性が増加しうる官能基(酸性基)の作用により、水性媒体の作用下で、乳化剤や分散安定剤を実質的に用いることなく、安定な水性分散体あるいは水溶液を形成する能力を有する樹脂である。これは、中和の度合い(中和率)により、親水性の度合いが適宜調節できるので、当該樹脂自体が水に分散できる程度に中和率を設定することが好ましい。この様な自己水分散性樹脂を水性媒体と混合することで、転相乳化が起こり、粒子が形成される。この際、
樹脂の親水性の程度により、転相乳化における粒子の大きさが決定されるので、中和率のコントロールにより任意の粒径を容易に得ることが可能である。
【0034】
当該樹脂が樹脂中に有する中和により親水性の増加しうる酸性の官能基としては、たとえば 、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、硫酸基などがあり、中でもカルボキシル基が好ましい。樹脂が自己水分散性、あるいは水溶性を発現するために適切な中和率は、モノマー組成や分子量などにより樹脂そのものの親水性が異なるので、各々の樹脂により異なる。
【0035】
中和により自己水分散性となりうる酸性基含有スチレンアクリル樹脂としては、酸基を含有したラジカル重合性単量体類と、この酸基含有のラジカル重合性単量体類以外のラジカル重合性単量体類を、重合開始剤存在下で、ラジカル重合させて得られるものが使用できる。これらを得るための重合反応は、溶液重合でも、懸濁重合、乳化重合でも適宜利用できる。
【0036】
こうした酸性基含有重合性単量体類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチルなどが挙げられる。
【0037】
酸性基含有重合性単量体類以外の重合性単量体類としては、例えば、
(1)スチレン系モノマー:スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレンもしくはクロルスチレン
【0038】
(2)アクリル酸エステル類:アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、
アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシルもしくはアクリル酸ドデシル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アルファクロルアクリル酸メチル
【0039】
(3)メタクリル酸エステル:メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸フェニル、アルファクロルメタクリル酸メチル
【0040】
(4)アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、
【0041】
(5)ビニルエーテル:ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、
【0042】
(6)ビニルケトン:ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン
【0043】
(7)N−ビニル化合物:N−ビニルピロール、Nービニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0044】
また、前記樹脂を得る場合には、溶液重合の場合には、汎用の有機溶剤を使用できる。使用する有機溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレン、ベンゼン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンの如き各種炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tーブタノールの如きアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル等の如きエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンの如き各種ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルの如き各種エステル類;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの如き各種エーテルエステル類;テトラヒドロフランの如き各種環状エーテル類;塩化メチレンの如き各種ハロゲン化炭化水素類;など、各種の有機溶媒が使用できる。
【0045】
また、使用する重合開始剤としては、公知慣用の各種の有機過酸化物系の開始剤、アゾ系の開始剤が使用できる。具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0046】
樹脂粒子(I)の結着樹脂に使用する酸性基含有スチレンアクリル樹脂としては、酸価30〜150(mgKOH/g)、重量平均分子量6000〜300000、ガラス転移温度30〜70℃のような組成のものが好適である。
【0047】
本発明で用いる中和剤は、酸性基含有樹脂を自己水分散性に変換するためには塩基性中和剤が使用され、また、中和により塩構造となった酸性基含有樹脂を元の酸性基に戻すためには酸性中和剤が使用される。塩基性中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機金属類、アンモニア等の無機アルカリ、また、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第二級アミン、トリエチルアミン等の第三級アミン、ヒドラジン等の有機アミン類が挙げられ、酸性中和剤としては、例えば塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸、シュウ酸、蟻酸、酢酸、琥珀酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0048】
樹脂粒子(I)を転相乳化法で造粒した後の粒子内架橋は、結着樹脂の架橋性官能基と架橋剤との加熱反応によって行う。結着樹脂の架橋性官能基がカルボキシル基である場合には、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂、1分子中にグリシジル基を平均2個以上有する化合物、1分子中に1,3−ジオキソラン−2−オン−4イル基を平均2個以上有する化合物、1分子中にカルボジイミド基を平均2個以上有する化合物、1分子中にオキサゾリン基を平均2個以上有する化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。また、結着樹脂の架橋性官能基が水酸基である場合には、架橋剤としては、例えば、アミノプラスト樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0049】
架橋性官能基を結着樹脂に導入する方法については、架橋性官能基がカルボキシル基である場合には、中和により親水性を増す官能基を導入する項で述べた方法と全く同じ方法でよく、架橋性官能基が水酸基である場合には、架橋性官能基として水酸基を有するビニル系樹脂は、酸性基を有する重合性単量体類とその他の重合性ビニル単量体とを(共)重合させる際に、水酸基を有する重合性単量体を併用して共重合させることにより容易に製造することができる。
【0050】
水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、「プラクセル FM−2」や「プラクセル FA−2」(ダイセル化学工業株式会社製)に代表されるラクトン化合物を付加した(メタ)アクリル系モノマー類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマー類、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマー類、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0051】
本発明では、樹脂の合成、取り扱い、設計の容易さ、及び、高分子量化又は架橋反応の容易さから、結着樹脂の中和により親水性を増す官能基および架橋性官能基が共にカルボキシル基である樹脂であって、架橋剤が一分子平均2個以上のグリシジル基を有する化合物である組合せが好ましい。
【0052】
一分子平均2個以上のグリシジル基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの如きフェノール類のグリシジルエーテル類;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルの如き各種グリコールやポリオールのグリシジルエーテル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等の如きグリシジルエステル類;グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基を有する重合性モノマーを共重合したビニル系共重合体;エポキシ化ポリブタジエン;ジグリシジルアニリン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン如きグリシジルアミン化合物などが挙げられる。
【0053】
結着樹脂と架橋剤との反応は、水性媒体中で行われるので、水の沸点以下の温度で反応させることが好ましく、また、粒子の融着を避けるために、粒子のガラス転移温度よりも余り高くない温度で反応を行なうことが好ましい。このような比較的低温の温和な条件で反応させることができる架橋剤としては、下記一般式(1)および(2)で表されるグリシジル基を有するグリシジルアミン化合物が最も好ましい。
【化1】
Figure 0004193287
(式中、R1及びR2は、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、置換基を有していても良い芳香環基又は脂環基を表わし、R3は炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。)
【0054】
そのような最も好ましい架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−α−フェニルエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルイソフォロンジアミンなどが挙げられる。
【0055】
架橋剤は、1分子中にグリシジル基を平均2〜6個有しているものが好ましく、1分子中に平均2〜4個有しているものがより好ましい。1分子中に有するグリシジル基の数の平均が2個よりも少ない場合、高分子量化又は架橋化反応が充分に進行しない傾向にあり、また、1分子中に有するグリシジル基の数の平均が6個よりも多い場合、部分的に架橋密度が高過ぎるものが生成してしまう傾向にあるので、好ましくない。
【0056】
結着樹脂とその架橋剤との割合は、特に制限されるものではない。架橋性官能基がカルボキシル基である場合を例にとれば、カルボキシル基1当量に対して、グリシジル基が0.001〜0.5当量の範囲となる量のグリシジル基を有する化合物を用いることが好ましく、カルボキシル基1当量に対して、グリシジル基が0.01〜0.3当量の範囲となる量のグリシジル基を有する化合物を用いることがより好ましい。カルボキシル基1当量に対するグリシジル基の量が0.001当量よりも少ない場合、高分子量化又は架橋が不十分になる傾向にあり、また、カルボキシル基1当量に対するグリシジル基の量が0.5当量よりも多い場合、架橋が進み過ぎ、得られたトナーの定着性が低下する傾向にあるので、好ましくない。
【0057】
中和により親水性を増す官能基及び架橋性官能基が共にカルボキシル基である樹脂を結着樹脂として用いる場合、カルボキシル基の量は、酸価(樹脂固形分1gを中和するのに必要なKOHのmg量)が10〜150の範囲が好ましい。酸価が10より低い場合、水性媒体への転相乳化性が低下する傾向にあり、また、高分子量化又は架橋反応が充分に進まない傾向にあるので好ましくない。酸価が150よりも高い場合、得られたトナーの吸湿性が高くなる傾向にあるので好ましくない。なお、中和により親水性を増す官能基及び架橋性官能基がともにカルボキシル基である場合、親水性を増すのは中和剤でもって中和されたカルボキシル基であり、架橋にあずかるのは主に中和されないカルボキシル基である。
【0058】
この架橋反応は、水性媒体の沸点以下の温度であって、かつ、粒子の融着を避けるために、粒子のガラス転移温度よりも余り高くない温度で行なうのが好ましい。そのような反応温度は、40〜100℃の範囲が好ましく、50〜90℃の範囲が特に好ましい。架橋反応に要する時間は、架橋反応がほぼ完結するのに要する時間であればよい。
【0059】
中和により親水性を増す官能基と架橋性官能基とがカルボキシル基である樹脂を用い、かつ架橋剤が、少なくとも一分子中に平均2以上のグリシジル基を有する化合物を用いる場合において、カルボキシル基とグリシジル基の反応を、比較的低温で温和な条件で反応させるためには、前述した如きグリシジルアミン化合物を使用することが好ましい。
【0060】
架橋剤としてグリシジルアミン化合物及びその他のグリシジル基含有化合物を使用する場合、2−メチルイミダゾールなどの公知の触媒を使用したり、グリシジル基の一部にジブチルアミンなどの第二級モノアミン等を付加して、グリシジル基含有化合物に自己触媒能を付与する方法なども採用できる。
【0061】
また、結着樹脂は、DSC(示差走査熱量計)で測定したガラス転移温度が30〜70℃の範囲にあるものが好ましく、40〜65℃の範囲がさらに好ましい。ガラス転移温度が40℃よりも低い場合には得られるトナーの耐熱保存安定性が悪くなる傾向にあり、また70℃よりも高い場合には得られるトナーの定着開始温度が高くなる傾向にあり好ましくない。
【0062】
さらに、結着樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量(ポリスチレン換算ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した値)は10,000〜300,000の範囲にあるものが好ましく、20,000〜150,000の範囲にあるものがより好ましい。重量平均分子量が10,000よりも小さい場合、転相後に水相に溶ける樹脂が多くなり、トナーの収率が減少する傾向にあり、また、架橋反応が十分に進行しない傾向にあるので好ましくない。重量平均分子量が300,000よりも大きい場合、転相乳化し難くなる傾向にあるので好ましくない。
【0063】
結着樹脂に、非自己水分散性で、ガラス転移温度が0〜60℃と低く、数平均分子量が400〜1,500の範囲にある低分子量樹脂をブレンドして用いると、定着開始温度を下げられるという効果が発現される。数平均分子量が400より低い場合は、転相乳化中に固化する傾向にあり好ましくなく、また、数平均分子量が1,500より大きい場合、転相乳化し難くなる傾向にあり好ましくない。
この低分子量樹脂のブレンド比率は、5〜80重量%の範囲が好ましく、10〜60重量%の範囲が低温定着性と耐熱保存性のバランスからより好ましい。
【0064】
上記した樹脂粒子(I)は、トナーとして使用される際の画像品質などから、平均粒子径が3〜15μm、特に3〜8μmが好ましく、転相乳化後の液媒体から有機溶剤を除去した水性スラリーとして次工程に使うのが好都合である。また、樹脂粒子(I)は、転相乳化後の液媒体から有機溶剤を除去し、水性スラリーを濾別、ウエットケーキを洗浄した後、水に再分散し、酸水溶液により、酸性基含有樹脂中に含まれる塩部分を、元の酸性基に戻す事が好ましい。
【0065】
次に、重合法による樹脂粒子(I)の製法について述べる。これは、着色剤の分散した架橋性モノマーを含む重合性モノマーを、液媒体中で重合させて、少なくとも一部が架橋された結着樹脂に着色剤が内包された粒子を得る方法である。
【0066】
例えば分散安定剤や乳化剤の存在下に、着色剤と、結着樹脂を形成しうる重合性モノマー(架橋性モノマーを含有する)とを液媒体中に懸濁もしくは乳化分散させ、重合開始剤の存在下、撹拌しながら、ラジカル重合によるポリマー化反応を行って、球形の、結着樹脂中に着色剤を内包したトナー粒子の水性分散液を得るものである。
【0067】
ラジカル重合性単量体としては、具体的には、例えばスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオンビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシルアクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルメタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、エチレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールモノアクリート、テトラメチレンエーテルグリコールモノアクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルプロペニルケトン等のビニルケトン類等のアクリルモノマーが挙げられ、これらは、それぞれ単独で、もしくは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
架橋させるために、2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する反応性モノマーを併用する。2つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する反応性モノマーとしては、例えばブタジエン、イソプレン等の共役ジエン、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
前記した結着樹脂を構成する単量体組成は、重合体のガラス転移温度が30〜70℃となる様に調製される。
【0070】
尚、こうしたポリマー樹脂を得るのに使用される重合開始剤としては、勿論、通常の油溶性又は水溶性のものが使用できるが、例えば過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシドもしくは2−エチルヘキサノエートの如き、各種の過酸化物;またはアゾビスイソブチロニトリルもしくはアゾビスイソバレロニトリルの如き、各種のアゾ化合物などが挙げることができる。
【0071】
懸濁重合に際しては、重合に用いる液媒体に不溶かつ単量体可溶の重合開始剤を必須として選択して用い、乳化重合に際しては、水溶性重合開始剤を必須として選択して使用される。重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、全重合性単量体100重量部当たり、0.01〜5重量部である。
【0072】
重合によって形成される結着樹脂は、重合条件等により任意に調製することができるが、重量平均分子量として、10,000〜500,000となる様にするのが好ましい。
【0073】
懸濁重合時に使用できる、前記分散安定剤としては、一般的には、水溶性高分子化合物が用いられ、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースガム、ラムザンガム等が挙げられる。さらには水不溶性で粒径が0.01〜5μmの無機微粉末も、懸濁分散安定剤として使用でき、例えばリン酸三カルシウム、タルク、ベントナイト、カオリン、酸化チタン、アルミナ、亜鉛華、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性ケイ酸マグネシウム、水酸化チタン、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0074】
これらは分散安定剤は、単独使用でもよいし、2種以上の併用でもよい。その使用量は、全反応性モノマー100重量部当たり、通常0.1〜10重量部である。
【0075】
乳化重合に使用できる前記乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンニニルフェノールエーテル等の非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。これらは単独使用でもよいし、2種以上の併用でもよい。その使用量は、全反応性モノマー100重量部当たり、通常0.01〜5重量部である。
【0076】
懸濁重合に当たって、分散安定剤に乳化剤を一部併用してもよいし、乳化重合に当たって、乳化剤に分散安定剤を一部併用してもよい。また、上記分散安定剤や乳化剤に代えて、自己乳化性エポキシ樹脂や自己乳化性ポリウレタン樹脂を用いることもできる。
【0077】
重合性単量体、着色剤、分散安定剤及び前記単量体不溶の液媒体、前記液媒体に不溶かつ前記単量体に可溶の重合開始剤を同時に加えて、撹拌して単量体液滴を重合してもよいが、重合性単量体及び着色剤を、例えばボールミルやコロイドミル等で、予め充分に混合して、次いでそれを重合開始剤、分散安定剤を含む前記液媒体に加えて、例えばホモジナイザー、ローターステーター式ミキサー、スタティックミキサー等により撹拌を行い、重合性単量体を必須とする単量体液滴を液媒体中に懸濁させ、撹拌を続けながら、所定の粒子径のトナー粒子が形成されるまで重合を行うことが好ましい。
【0078】
このような重合を行うに当たって使用できる液媒体としては、蒸留水、イオン交換水等の水の他、例えばトルエン、キシレンもしくはベンゼンの如き、各種の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールの如き、各種のアルコール類;セロソルブもしくはカルビトールの如き、各種のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンの如き、各種のケトン類;酢酸エチルもしくは酢酸ブチルの如き、各種のエステル類;またはブチルセロソルブアセテートの如き、各種のエーテルエステル類などが挙げられる。
【0079】
このような懸濁重合法及び乳化重合法における、反応条件は、特に制限されるものではなく、いずれの方法においても、通常、室温〜80℃で、15分〜24時間である。
【0080】
次に、樹脂粒子(I)の表面に酸性基含有樹脂の析出・固着ついて述べる。これは、前記のような方法で得られる樹脂粒子(I)の水性分散液に、中和により自己水分散性及び/又は水溶性となる酸性基含有樹脂を塩基性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さくガラス転移温度が高い微粒子(II)の水性分散液を均一に混合し、酸で樹脂粒子(I)の表面に微粒子(II)を析出させ、次いで、これから液媒体を除去して乾燥し、この乾燥粉体を加熱下で攪拌混合処理して、酸性基含有樹脂が表面に固着したトナーを得るものである。
【0081】
微粒子(II)に使用しうる中和により自己水分散性/又は水溶性となる酸性基含有樹脂としては、特に限定はされないが、良好な負帯電性が得られやすいことなどから酸性基含有のスチレン(メタ)アクリル樹脂やポリエステル樹脂が好適で、良好な定着性の確保からスチレン(メタ)アクリル樹脂が特に好適である。中和により自己水分散性/又は水溶性となる酸性基含有スチレン(メタ)アクリル樹脂については、樹脂粒子(I)の説明で述べたと同様な性状を有するものであるが、微粒子(II)に使用する樹脂のガラス転移温度は、耐熱保存性を確保するために、樹脂粒子(I)よりも高くすることが好ましい。
【0082】
微粒子(II)の樹脂粒子(I)表面への添加量は、樹脂粒子(I)に対して、0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜6重量%である。添加量が多すぎる場合には、帯電量が高くなり過ぎるとともに帯電の経時安定性が低下する傾向があり好ましくない。
【0083】
本発明において樹脂粒子(I)あるいは微粒子(II)を転相乳化で作る場合に用いる有機溶剤は、使用する樹脂を溶解するものであれば、いずれの有機溶剤でもよい。また、樹脂合成で用いた有機溶剤を、そのまま使用してもよい。前述した様な、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン系溶剤が使用される。この場合、例えばアセトン、ブタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性、若しくは部分水溶性の有機溶剤を併用することにより、転相乳化における粒子の生成が容易になる。好ましくは、容易に脱溶剤され得るアセトン、メチルエチルケトンまたは酢酸エチル、テトラヒドロフランなどの、いわゆる低沸点溶剤の使用が適切である。
【0084】
微粒子(II)の水スラリーは、逆中和前の樹脂粒子(I)の水スラリーと同様の操作で得られる。微粒子(II)の平均粒子径としては、樹脂粒子(I)よりも小さい必要があり、10nm〜1μm、特に好ましくは10〜100nmである。
【0085】
微粒子(II)の樹脂粒子(I)表面への析出は、樹脂粒子(I)および微粒子(II)の水性分散液を均一に混合して、攪拌しながら、酸性の中和剤を加えて、微粒子(II)を元の中和されていない状態(未中和状態)の酸性基に戻すことにより行う。これは、酸中和により微粒子(II)の親水性が低下するために樹脂粒子(I)の表面に析出されるのである。この場合、微粒子(II)の析出速度が速すぎると、微粒子同士が凝集して、樹脂粒子(I)の表面に均一に析出しないばかりか、樹脂粒子(I)同士をも凝集させることになり好ましくない。ここで塩化カルシウムのような金属塩を加えると酸の滴下による急激な析出を防止することが出来る。この析出工程は撹拌下で行うのが一般的であり、攪拌翼としては、特に制限はないが、ファウドラー翼のごとき空気の巻き込みの少ないものが好ましい。
【0086】
析出させる際に使用する酸性中和剤は、スラリーのPHが2〜5となるまで添加し、所定のPHにあわせた後、30分間ほど攪拌を行い、微粒子(II)を樹脂粒子(I)の表面に完全に付着させる。
【0087】
微粒子(II)の樹脂粒子(I)への添加量は、樹脂粒子(I)の固形分に対し、0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜6重量%とすることが好ましい。
【0088】
微粒子(II)が表面に付着された樹脂粒子(I)を、液媒体から遠心分離機等により濾過分離してトナー粒子のウエットケーキを得る。ウエットケーキの乾燥には、公知慣用の乾燥方法がいずれも採用でき、例えばトナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱乾燥してもよいし、凍結乾燥するという方法が挙げられる。また、連続瞬間気流式乾燥機やスプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行うという方法もある。
【0089】
乾燥後に、ヘンシェルミキサーやハイブリダイザーなどの公知慣用の粉体の攪拌混合機を用いて加熱下に攪拌混合し、粒子表面の安定化・均一化を図る。トナー粒子の凝集が発生しない温度範囲(例えば60℃程度)に加熱しながら5〜60分程度の時間攪拌混合すると粒子表面に固着された酸性基含有樹脂の安定化・均一化が促進され、結果として帯電の経時安定性などが特段に向上するので、この処理工程は本発明の製造方法の重要な要素をなすものである。
【0090】
本発明で用いるトナー粒子の粒径としては、トナーとしての実用的レベル内で任意の大きさを選定できる。現状のマシンとのマッチング性からは、その体積平均粒子径が3〜15μmの範囲のものが好適である。特に体積平均粒径が3〜8μm程度の小粒径トナーが解像度や階調性などの画像品質に優れ好ましい。
【0091】
上記のような方法で得られたトナー粒子には、静電荷像現像剤として適切な流動性や帯電性を確保するために、通常、無機微粒子を外添する。このような無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素などが挙げられる。これら無機微粒子の外添量は、トナー粒子に対し、0.1〜5重量%程度、特に好ましくは0.1〜3重量%程度である。なお、本発明の負帯電性トナーでは、このような無機微粒子に加えて各種の有機微粒子を併用して外添しても良い。
【0092】
本発明のトナーは、非磁性一成分トナーあるいは磁性一成分トナーとして、又、キャリアと組み合わせることにより二成分現像剤として使用することができ、良好な定着性と耐熱保存性を有するとともに、良好な帯電特性発現により高品質の画像を得ることができる。
【0093】
キャリアとしては、公知慣用のものがいずれも使用できる。例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物、表面処理されたガラス、シリカ等の粉末が使用でき、それらのアクリル樹脂被覆キャリア、シリコーン樹脂被覆キャリア、フッ素樹脂被覆キャリア、フッ素/アクリル樹脂被覆キャリア等の樹脂被覆キャリアが、本発明のトナーに用いるのにより好適である。キャリアの平均粒径としては、特に限定はないが、20〜200ミクロン程度のものが好適に使用される。
【0094】
【発明の実施の形態】
本発明は以下の実施形態を含む。
【0095】
1.着色剤と少なくとも一部が架橋された結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の表面に、酸性基含有樹脂が固着されたトナー。
【0096】
2.結着樹脂が、テトラヒドロフラン不溶解分0.5〜70重量%となるまで架橋されたものである上記1記載のトナー。
【0097】
3.表面に固着されている樹脂の酸性基がカルボキシル基である上記1記載のトナー。
【0098】
4.平均円形度が0.97以上の球形である上記1記載のトナー。
【0099】
5.樹脂粒子(I)の水性分散液に、中和により自己水分散性及び/又は水溶性となる酸性基含有樹脂を塩基性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化して得られる、樹脂粒子(I)よりも平均粒子径が小さくガラス転移温度が高い微粒子(II)の水性分散液を均一に混合し、酸で樹脂粒子(I)の表面に微粒子(II)を析出させ、次いで、これから液媒体を除去して乾燥し、この乾燥粉体を加熱下で攪拌混合処理して得られる、上記1記載のトナーの製造方法。
【0100】
6.樹脂粒子(I)が、中和により自己水分散性となる酸性基含有樹脂、架橋剤、着色剤を必須成分として含む混合物を、塩基性中和剤の存在下に水性媒体と混合し転相乳化した後、加熱架橋して得られる、着色剤が内包された粒子である、上記5記載の製造方法。
【0101】
7. 樹脂粒子(I)が、着色剤の分散した架橋性モノマーを含む重合性モノマーを、液媒体中で重合させて得られる粒子である、上記5記載のトナーの製造方法。
【0102】
【実施例】
以下、樹脂合成例などや実施例、比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。以下において、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」をそれぞれ表わし、「水」は「脱イオン水」の意である。
【0103】
(カルボキシル基含有樹脂Aー1の合成)
メチルエチルケトン980部を反応容器に入れ、80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を、窒素気流中で約2時間かけて滴下した。
アクリル酸 77.0部
スチレン 592.7部
アクリル酸ブチル 330.3部
「パーブチルO」 30.0部
メチルエチルケトン 20.0部
【0104】
滴下終了の3時間後に、更に「パーブチルO」2部を反応液に加え、その後、3時間おきに、「パーブチルO」2部を加え、15時間の間80℃に保持して反応を続けた。
【0105】
反応終了後、不揮発分が48%、重量平均分子量が20,000、酸価が80、ガラス転移温度が30℃の共重合体の樹脂溶液(A−1)を得た。この共重合体を樹脂A−1と略記する。
なお、ガラス転移温度は、島津製作所製の「DSC50」を用いて、ヘリウム気流下、昇温速度10℃/分で測定した。
【0106】
(カルボキシル基含有樹脂Aー2の合成)
メチルエチルケトン114部、イソプロピルアルコール12部及び水24部を反応容器に入れ、80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を、窒素気流中で、一括して仕込み、反応を開始した。
アクリル酸 54.0部
スチレン 330.0部
アクリル酸ブチル 216.0部
「パーブチルO」 0.6部
【0107】
反応開始3時間経過後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定した。粘度がM−Nとなる時点で、メチルエチルケトン567部及びイソプロピルアルコール63部から成る混合溶媒を添加した。この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて定量して重合率を計算した結果、51%であった。反応溶液の温度を80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を1時間かけて滴下した。
アクリル酸 54.0部
スチレン 413.0部
アクリル酸ブチル 133.0部
「パーブチルO」 18.0部
【0108】
滴下終了後、3時間ごとに3回「パーブチルO」2部を添加し、さらに4時間反応を継続させた。反応終了後、この樹脂溶液を加熱脱気し、固形化処理を行なった。この固形化樹脂は2山の分子量分布をもち、その重量平均分子量は110、000であった。また、この2山をその境目で区切ると、重量平均分子量が35,000と360,000の2つの部分に分割でき、その比が78対22であった。この固形化樹脂の酸価は70、ガラス転移温度は59℃であった。この固形樹脂を樹脂A−2と略記する。
【0109】
(カルボキシル基含有樹脂Aー3の合成)
メチルエチルケトン114部、イソプロピルアルコール12部及び水24部を反応容器に入れ、80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を、窒素気流中で、一括して仕込み、反応を開始した。
アクリル酸 54.0部
スチレン 364.8部
アクリル酸ブチル 181.2部
「パーブチルO」 0.6部
【0110】
反応開始3時間経過後から1時間おきに、反応樹脂溶液の約10部をサンプリングし、同量のメチルエチルケトンで希釈し、ガードナー粘度計で粘度を測定した。粘度がM−Nとなる時点で、メチルエチルケトン567部及びイソプロピルアルコール63部から成る混合溶媒を添加した。この時のモノマー残存率をガスクロマトグラフィーを用いて定量して重合率を計算した結果、51%であった。反応溶液の温度を80℃に加熱した後、以下に示した割合の混合物を1時間かけて滴下した。
アクリル酸 54.0部
スチレン 456.6部
アクリル酸ブチル 89.4部
「パーブチルO」 18.0部
【0111】
滴下終了後、3時間ごとに3回「パーブチルO」2部を添加し、さらに4時間反応を継続させた。反応終了後、この樹脂溶液を加熱脱気し、固形化処理を行なった。この固形化樹脂は2山の分子量分布をもち、その重量平均分子量は110、000であった。また、この2山をその境目で区切ると、重量平均分子量が35,000と360,000の2つの部分に分割でき、その比が78対22であった。この固形化樹脂の酸価は70、ガラス転移温度は70℃であった。この固形樹脂を樹脂A−3と略記する。
【0112】
(ミルベースM−1の調製)
樹脂溶液(A−1) 750部(固形分で360部)
固形樹脂A−2 540部
「ELFTEX8」(キャボット社製のカーボンブラック)100部
メチルエチルケトン 310部
を予備混合した後、「アイガーモーターミル M−250」を用いて1時間混練し、次に「H808」(中京油脂製乳化ワックス、固形分30部)100部を同様に混練分散させ、不揮発分が55%となるまでメチルエチルケトンを加えて、ミルベースM−1を調製した。
【0113】
(ミルベースM−2の調製)
固形樹脂A−2 450部
「ハイマーSB−75」 450部
(三洋化成(株)製の低分子量ポリスチレン;Mn=900、Tg=33℃)
「ELFTEX 8」 100部
「H808」 100部
メチルエチルケトン 700部
を、M−1の場合と同様にして、不揮発分55%のミルベースM−2を調製した。
【0114】
(樹脂粒子(I)の水スラリーの調製例1)
ミルベースM−1 545.5部(固形分で300部)
「TETRAD−X」 0.37部
(三菱瓦斯化学工業(株)製のN,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミン;グリシジル基平均官能基数=4、グリシジル基当量=100g/eq)
1規定水酸化ナトリウム水溶液 49.0部
水 70部
イソプロピルアルコール 65.0部
を反応容器に仕込み、攪拌しながら水を滴下することによって転相乳化させて、着色樹脂粒子の分散液を得た。さらに、20分間攪拌した後、減圧蒸留により、脱溶剤を行ない有機溶剤を除去した後、スラリー濃度が約20%になるように水を加えて、樹脂粒子の水性分散液を得た。この水性分散液を攪拌しながら70℃にて4時間架橋反応を行なってから室温まで冷却した後、濾過した。濾取したケーキに、固形分が約20%になるように水を加えて再スラリー化し、濾過・水洗した後、濾取した含水ケーキに水を加えて体積平均粒径6.8μmの球形の樹脂粒子(I)を20%含有する水スラリーを得た。
【0115】
(樹脂粒子(I)の水スラリー調製例2)
ミルベースM−2 545.5部(固形分で300部)
「TETRAD−X」 0.426部
1規定水酸化ナトリウム水溶液 21.0部
水 160部
イソプロピルアルコール 84.0部
を反応容器に仕込み、同様にして、体積平均粒径6.9μmの球形の樹脂粒子(I)を20%含有する水スラリーを得た。
【0116】
(非架橋の樹脂粒子の水スラリー調製例1および2)
架橋剤を使用しない以外は、樹脂粒子(I)の水スラリー調製例1、2と同様にして、非架橋で、体積平均粒径がそれぞれ6.7μm、6.9μmの球形着色樹脂粒子を20%含有する水スラリー1および2を得た。
【0117】
(微粒子(II)の水スラリーの調製例)
カルボキシル基含有樹脂A−3の300部をメチルエチルケトン450部に溶解した溶液750部と1規定水酸化ナトリウム水溶液150部を反応容器に仕込み、攪拌しながら500部の水を滴下することによって転相乳化させて、体積平均粒径0.1μm以下の樹脂微粒子の分散液を得た。さらに、20分間攪拌した後、減圧蒸留により、脱溶剤を行ないスラリー濃度が約30%の微粒子(II)の水スラリーを得た。
【0118】
(実施例1)
樹脂粒子(I)の水スラリーの調製例1で得られたスラリー1000部と微粒子(II)の水スラリーの調製例で得られたスラリー150部(固形分45部)を反応容器に仕込み、攪拌しながら0.1%塩化カルシウム水溶液150部を加えた後、1規定塩酸350部を添加し、スラリーのPHを2.5とし、微粒子(II)を樹脂粒子(I)の表面に析出させた。これを濾過・水洗してから、真空混合乾燥機を用いて約40℃にて乾燥し粉体粒子を得た。次いで、この粉体をヘンシェルミキサーに入れ、ジャケット温度を60℃に保ちながら、約10分間、攪拌混合して、微粒子(II)が表面に強固に固着されたトナー粒子を得た。
【0119】
これは平均円形度0.983の球形で、SEM(走査型電子顕微鏡)による観察で、表面に微少の凹凸が認められた。この粒子のTHF不溶解分は結着樹脂に対し38%であった。
【0120】
このトナー粒子100部に疎水性シリカ(日本アエロジル製RY200)2 部と酸化チタン(テイカ製MT−150)0.5部をヘンシェルミキサーを使用して外添しトナーを得た。
【0121】
(実施例2)
樹脂粒子(I)の水スラリーの調製例2で得られたスラリー1000部と微粒子(II)の水スラリーの調製例で得られたスラリー150部を反応容器に仕込み、実施例1と同様にして、トナー粒子を得た。
【0122】
これは平均円形度0.984の球形で、SEMによる観察で、表面に微少の凹凸が認められた。この粒子のTHF不溶解分は結着樹脂に対し33%であった。
【0123】
この粉体粒子に実施例1と同様な外添を施してトナーを得た。
【0124】
(比較例1および2)
非架橋の樹脂粒子の水スラリー調製例1および2で得られた水スラリー1および2に、実施例1と同様にして、表面に高Tgの酸性基含有樹脂が固着され、疎水性シリカと酸化チタンが外添された球形トナーを得た。
【0125】
(比較例3および4)
樹脂粒子(I)の水スラリーの調製例1および2で得られたスラリーを反応容器に仕込み、攪拌しながら1規定塩酸を添加し、スラリーのPHを3としてから、濾過・水洗し、真空混合乾燥機を用いて乾燥し粉体粒子を得た。次いで、この粉体粒子に、実施例1と同様な外添を施してトナー(表面に高Tgの酸性基含有樹脂A−3の固着がなされてない)を得た。
【0126】
実施例1〜2と比較例1〜4で得た黒色トナーにつき次のような試験を行った。
【0127】
(現像試験)
実施例1〜2と比較例1〜4で得た黒色トナーを市販のプリンター(Lexmark Optra S)のトナーカートリッジに充填して画出し試験を行ったところ、いずれも解像性および階調性など点で優れた印刷画像が得られた。特に、高Tgの酸性基含有樹脂を表面に固着したトナーで顕著であった。
【0128】
また、この画出し試験500枚毎に、クリーニング後の感光体ドラム上に残ったトナー量をテープ剥離法で定量するとともに、印刷紙の汚れ程度を評価することにより、上記試作トナーのブレードクリーニング性を比較したところ、高Tgの酸性基含有樹脂を表面に固着したトナー(実施例1,2および比較例1,2)は、そのような処理を施していないトナー(比較例3、4)よりもブレードクリーニング性が向上することが確認された。この理由は明瞭ではないが、樹脂を表面に固着したトナーは表面に微少の凹凸があるため、そのような処理を施さない、表面がより平滑な球形トナーに比べて、ブレードによる掻き取りがしやすくなるため、と推測している。
【0129】
(定着試験)
市販の複写機(リコー社製のIMAGIO MF530)の改造機を用いて未定着画像を形成し、同機の定着装置を改造したものを使用し、紙送り速度を120mm/秒に制御した上で、熱ロールの表面温度を5℃刻みで90〜200℃に変化させて定着温度を調べた。
【0130】
この定着性の判定は、トナー画像上に住友スリーエム(株)製の「スコッチメンディングテープ」を載せ、これに、100g/cm2 の加重をかけた後、ゆっくりと引き剥がし、その画像濃度の変化をマクベス濃度計を用いて測定した。
【0131】
画像濃度1.4〜1.6の黒ベタ画像を用い、メンディングテープ剥離試験前後の画像濃度の比が90%以上となる熱ロールの最低温度を定着開始温度とし、ホットオフセットが発生する熱ロールの最低温度を定着上限温度として定着温度幅を求めた。
【0132】
(耐熱保存安定性)
各トナーをガラス製サンプル瓶に入れ、50℃で7日間放置し、室温に戻した後の粒子の凝集度合いで判定した。5は変化なし、4は少し触れると崩れる、3は少し力を入れると崩れる、2はかなり力を入れると崩れる、1は固化を示す。実用上、この値が3以上なら合格で、2以下は不合格である。
【0133】
以上の評価結果を表1に示した。定着温度幅の測定上限は前記の通り200℃までであるが、実施例1と比較例3については、200℃においてもホットオフセットが発生せず。定着温度の上限が200℃以上であることがわかった。
【0134】
この表から、結着樹脂が架橋された粒子で、その表面に高Tgの酸性基含有樹脂が固着した実施例のトナーが、優れた定着性と耐熱保存性を有することが分かる。
【0135】
【表1】
Figure 0004193287
【0136】
【発明の効果】
本発明では、粒子内部をガラス転移温度の低い架橋された樹脂組成とし、粒子表面にガラス転移温度の高い酸基含有樹脂を固着させることにより、優れた定着性と耐熱保存性を兼ね備えたトナーが得られる。このようにトナー粒子表面に酸基含有樹脂を固着することにより、帯電性や耐刷性、さらにはブレードクリーニングも向上する。また、本トナーに好適な製造方法として、結着樹脂の少なくとも一部が架橋された着色剤含有樹脂粒子の製法、および該樹脂粒子表面への酸性基含有樹脂の固着方法が開示されている。

Claims (5)

  1. 着色剤と、カルボキシル基または水酸基を架橋性官能基として含有する樹脂の少なくとも一部が架橋された結着樹脂を必須成分とする樹脂粒子(I)の表面に、酸性基含有樹脂よりなる微粒子(II)が固着され、前樹脂粒子(I)はカルボキシル基または水酸基を架橋性官能基として含有する樹脂を含む混合物を、転相乳化法で造粒した後に、結着樹脂中のカルボキシル基または水酸基を架橋剤と反応させて得られるものであり、かつ平均円形度((粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(粒子投影像の周長)で定義される円形度の平均値)が0.97以上の球形であることを特徴とするトナー。
  2. 前記架橋性官能基を有する樹脂は中和により自己水分散性となる酸性基を含有する請求項1に記載のトナー。
  3. 前記架橋性官能基がカルボキシル基である請求項1または2に記載のトナー。
  4. 結着樹脂が、テトラヒドロフラン不溶解分0.5〜70重量%となるまで架橋されたものである請求項1または2に記載のトナー。
  5. 表面に固着されている樹脂の酸性基がカルボキシル基である請求項1または2に記載のトナー。
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