JP3774911B2 - 微小カプセル粒子の製造方法及び電子写真用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、塗料、インキ、静電トナー、化粧品、繊維着色剤等の、固体物質入りカプセル粒子として利用できる微小粒子の製法に関するもので、さらに詳しくは、電子写真・静電記録・静電印刷などにおける静電潜像を現像するための乾式トナーに好適に用いることのできる、染料や顔料等の着色剤入り微小カプセル粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
着色剤を包含したカプセル微小粒子の製造方法の一つとして、物理化学的手法である転相乳化造粒法が知られている。この転相乳化造粒法は、結着剤となるポリマー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に着色剤を分散させた分散液を調整し、別途、水あるいは有機溶剤や分散安定剤を含有させた水等のいわゆる水性媒体を調整し、両者を攪拌しながら混合することによって、水性媒体に安定に分散した着色剤を含有したカプセル微小粒子を作製するものである。かかる方法によって得られるカプセル微小粒子の粒子サイズは、造粒条件を適宜選択することによって、0.1〜100ミクロン範囲の任意の平均粒子径に制御することが可能であり、生成する微小粒子の利用分野を広範なものとしている大きな要因となっている。
【0003】
しかしながら、この転相乳化造粒法によって得られる微小粒子は、数多くの特徴を有しながらも、粒子の物理的強度が低い、熱的物理特性が充分ではないという課題を抱えていた。例えば、電子写真用トナーとして利用しようとした場合に、いくつかの問題点を包含していた。
【0004】
電子写真法においては、原稿画像のアナログ信号あるいはデジタル信号に応じて感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナー粒子で現像し、次いで感光体上に像形成したトナー粒子を紙、シート等の転写材に転写し、熱、圧力等を利用してトナー粒子を定着し、永久画像を得るものである。その際、充分なる画像濃度及び高い解像度の永久画像を得る為には、感光体に形成される静電潜像に対し、所定重量のトナー粒子が潜像に忠実に付着することが必要となる。
【0005】
この為、実用的トナーには、摩擦によって迅速に充分なる帯電量を粒子自身に発現する特性が要求される。通常、この摩擦は、2成分現像方式においてはキャリアとの接触混合によって行われ、1成分現像方式においてはブレードとの接触摩擦を利用して行われている。ここで、1成分現像方式、2成分現像方式いずれの方法においても、充分なる帯電量をトナー粒子に発現せしめる必要上、トナー粒子に過大な機械的ストレスが生じ、それに耐え得る粒子強度が要求されている。粒子強度が不十分な場合には、トナー粒子が破壊されてしまい、均一な帯電量を付与し得ないという不都合が生じてしまう。転相乳化造粒法によって得られる粒子は、ポリマー樹脂が絡み合って粒子化したものであり、必ずしも機械的に充分なる強度を有しておらず、摩擦帯電の為にキャリアと混ぜて長期回転混合した場合に粒子破壊が起こり易いという問題を抱えていた。
【0006】
又、定着特性も実用的トナーを得る上で重要な設計因子となっている。通常広く利用されている熱ローラー定着方式においては、像形成したトナー粒子に熱ローラーを圧接してトナー粒子を熱溶融することによって紙等の転写材に固着される。その際、トナー粒子の結着剤樹脂成分の粘弾性が不充分であると、熱溶融時に樹脂の一部がトナー本体から引き離されて加熱ローラー上に転移し、画像汚れを誘発するいわゆるオフセット現象を起こしてしまう。あるいはホットオフセットを防止できても、粘弾性が不充分であると樹脂を溶融するために高温大容量の熱が必要となり、事実上紙への定着を困難ならしめてトナーを定着できないという不都合を生じてしまう。転相乳化法によって得られる粒子は、このオフセット現象を起こし易く、充分な粘弾性を付与し難いという問題点を抱えていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、物理的強度及び熱的物理特性に優れる微小カプセル粒子の転相乳化造粒による製造方法を提供するもので、さらに詳しくは、トナーとして摩擦帯電に耐え得る機械的粒子強度及び定着特性に優れた粘弾性を有する電子写真用トナーの転相乳化造粒による製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、上記課題を解決するに至った。即ち、本発明は上記課題を解決するために、次の発明を提供する。
【0009】
固体物質(A)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して得られる微小カプセル粒子の製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む有機溶剤(C)溶液を用い、更に乳化剤又は分散安定剤の存在下で転相乳化することを特徴とする微小カプセル粒子の製造方法(第1発明という。)。
【0010】
固体物質(A)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して得られる微小カプセル粒子の製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の、中和により自己水分散性となりうる、酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む有機溶剤(C)溶液を用いて転相乳化することを特徴とする微小カプセル粒子の製造方法(第2発明という。)。
【0011】
着色剤(a)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して、着色剤を包含する結着剤樹脂粒子からなるトナー粒子の水性分散液を得、それから水性媒体を除去乾燥して、乾式トナーとする電子写真用トナーの製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む有機溶剤(C)溶液を用い、更に乳化剤又は分散安定剤の存在下で転相乳化することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法(第3発明という。)。
【0012】
着色剤(a)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して、着色剤を包含する結着剤樹脂粒子からなるトナー粒子の水性分散液を得、それから水性媒体を除去乾燥して、乾式トナーとする電子写真用トナーの製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の、中和により自己水分散性となりうる、酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む前記有機溶剤(C)溶液を用いて転相乳化することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法(第4発明という。)。
【0013】
上記第1〜4発明は、いずれも機械的ストレスに耐える適当な強度の粒子を転相乳化による手法で得る方法に係るものである。
【0014】
本発明で用いる結着剤樹脂は、その分子鎖中に酸性基、例えばカルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基等のアニオン形成能を有する官能基を含有する必要がある。
【0015】
かかるアニオン形成能を有する官能基を含有する結着剤樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。これらは単独使用でも二種以上の併用でもよい。中でも、トナーとしての粉体流動性、定着性等のバランスが比較的容易に得られ易いアクリル系樹脂、とりわけスチレン/アクリレート共重合体系樹脂が好適である。
【0016】
結着剤樹脂としては、充分な機械的強度を発現するに必要なレベルの分子量、通常重量平均分子量として3000〜200000、アクリル系樹脂の場合には、5000〜150000を有するもので、かつ、DSC測定において、ガラス転移温度(Tg)が50〜100℃であるものが好適であり、ヒートロール定着用では、それが60〜80℃程度のものが好ましい。
【0017】
アクリル系樹脂結着剤を例にとると、(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーを重合することにより得られるポリマー樹脂を代表例として挙げることができ、具体的には、例えばスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフィン類、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオンビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシルアクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルメタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルプロペニルケトン等のビニルケトン類等のアクリルモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート等の酸基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種のモノマーとを共重合させることにより、アニオン形成能を有する官能基を含有した結着剤樹脂とすることができる。
【0018】
さらに、かかるアクリル系結着剤樹脂を詳述すれば、酸基を有する重合体不飽和基含有オリゴマーを共重合成分として使用することもでき、無水マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水マレイン酸、α−テルピネン無水マレイン酸付加物等とトリオールのモノアリルエーテル、ペンタエリスリットジアリルエーテルもしくはアリルグリシジルエーテル等との重縮合ないしは付加縮合によって得られるビニル変性ポリエステル類、ジメチロールプロピオン酸、グリセリンモノアリルエーテル、1,2ブタジエンポリオール等とジイソシアネートとの付加重合によって得られるビニル変性ウレタン類、カルボキシル基含有ビニル共重合体にグリシジル基含有モノマーを付加せしめたビニル変性エポキシ類等を挙げることができる。
【0019】
尚、こうしたポリマー樹脂を得るのに使用される重合開始剤としては、勿論、通常のものが使用できるが、例えば過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシドもしくは2−エチルヘキサノエートの如き、各種の過酸化物;またはアゾビスイソブチロニトリルもしくはアゾビスイソバレロニトリルの如き、各種のアゾ化合物などが挙げることができる。
【0020】
ポリマー樹脂は、有機溶剤中で溶液重合して得ても良いし、懸濁重合しても良いし、乳化重合でもよいし、塊状重合で得ても良い。
【0021】
ポリエステル系樹脂結着剤としては、ポリオールと多塩基酸との縮合において、例えばフタル酸の如き二塩基酸を過剰に用いることにより通常のポリエステル樹脂中に容易に酸基を導入せしめることができる。
【0022】
本発明の微小カプセル粒子の製造方法において、アミノカップリング剤化合物が必須成分として用いられる。アミノカップリング剤化合物としては、例えばアミノシランカップリング剤、アミノチタンカップリング剤、アミノアルミニウムカップリング剤等が挙げられ、中でもN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシランカップリング剤が好適に用いることができる。
【0023】
かかるアミノカップリング剤化合物は、上述した酸性基の様なアニオン形成能を有する官能基を含有する結着剤樹脂と組み合わせて転相乳化造粒を行うと、驚くことに、粒子間の凝集を引き起こすことなく、粒子内の結着剤樹脂の架橋剤として作用することが判明した。
【0024】
本発明に用いるアミノカップリング剤化合物の添加量は、結着剤樹脂に対し、0.01〜7重量%好ましくは0.1〜3重量%である。この範囲であれば、微小カプセル粒子をトナー用途に用いる場合に当たっての、樹脂を溶融するために高温大容量の熱も不必要となり、定着に好ましい粘弾性特性を得る事ができるという本発明の効果が容易に得られる。
【0025】
本発明の微小カプセル粒子を製造するにおいて、固体物質(A)としては公知慣用のもの、例えば医薬品、化粧料、香料、食品、着色剤等を用いることができる。電子写真用トナーを製造するに当たっては、固体物質(A)としては、着色剤(a)が用いられる。
【0026】
この際の着色剤としては、公知慣用の着色剤を用いることができ、具体的には、例えばカーボンブラック、磁性粉、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガラ、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントブルー15、四三酸化鉄、三二酸化鉄、鉄粉、酸化亜鉛、セレン等を挙げることができ、1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0027】
本発明において、得られるトナーは、結着剤樹脂中に磁性体微粒子が分散した磁性トナー粒子であってもよい。磁性体微粒子としては、通常用いられている強磁性体ならば如何なるものでも使用することができる。
【0028】
磁性体としては、具体的には、鉄、コバルト、ニッケル等の磁性金属、これらの合金、コバルト添加酸化鉄、酸化クロム等の金属酸化物、Mn・Znフェライト、Ni・Znフェライト等の各種のフェライト、マグネタイト、ヘマタイト等、さらに、これらの表面をシランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタンカップリング剤等の表面処理剤で処理したものや、ポリマーでコーティングしたもの等の粉末が使用できる。
【0029】
固体物質(A)と結着剤樹脂(B)との重量割合は特に限定されるものではないが、トナーの場合もそれ以外の場合も、それらの合計重量を100とした時、着色剤を3〜30重量%になるようにするのが好ましい。
【0030】
本発明の微小カプセル粒子の製造方法における転相乳化方法は、特に限定されるものではないが、順を追って説明するとすれば、例えば次の様な方法が挙げられる。
【0031】
転相乳化をするに当たっては、乳化剤や分散安定剤を必須として用いる方法と、それらを用いずに、結着剤として、乳化分散機能を有するものを採用するという方法がある。
【0032】
また最終的に樹脂成分が部分架橋していれば、機械的ストレスに耐え得る粒子強度が得られるので、樹脂成分の部分架橋は、微小カプセル粒子が得られる任意の段階でよい。従って、予め部分架橋した結着剤樹脂を用いる様にしても、未架橋の結着剤樹脂を用いて、微小カプセル粒子を形成する任意の工程で部分架橋する様にさせることもできる。
【0033】
以下、後者の部分架橋方法を採用した微小カプセル粒子を転相乳化により製造する方法の一例について、より詳しく説明する。
【0034】
まず、前記固体物質(A)が分散した、必要に応じて乳化剤及び/又は分散安定剤を含有しても良い前記結着剤樹脂の有機溶剤溶液を調製し、これにアミノカップリング剤化合物を溶解分散させる。
【0035】
前記有機溶剤溶液を調製するに当たって使用できる有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンもしくはベンゼンの如き、各種の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールの如き、各種のアルコール類;セロソルブもしくはカルビトールの如き、各種のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンの如き、各種のケトン類;酢酸エチルもしくは酢酸ブチルの如き、各種のエステル類;またはブチルセロソルブアセテートの如き、各種のエーテルエステル類などが挙げられる。
【0036】
有機溶剤としては、前記したもののうち疎水性有機溶剤を必須成分として用いることが好ましく、中でも疎水性有機溶剤を主成分として、親水性有機溶剤を併用する様に用いることが、転相乳化を円滑に行える点でより好ましい。
【0037】
その際有機溶剤溶液の不揮発分は、特に制限されないが、通常10〜70重量%が好適である。
【0038】
次いで、上記で得た固体物質(A)とアミノカップリング剤化合物が分散した、分散安定剤を含有しても良い結着剤樹脂の有機溶剤溶液を、水性媒体中に転相乳化することによって、水性媒体中での微小粒子の造粒が行われる。勿論、この場合には、当該有機溶剤溶液に水性媒体を加えて転相乳化を行っても良いし、当該有機溶剤溶液を水性媒体に加えて転相乳化を行っても良い。
【0039】
この転相乳化造粒を円滑に進める為に、有機溶剤溶液中及び/又は水性媒体中に乳化剤及び/又は分散安定剤を含有せしめることができる。
【0040】
分散安定剤としては、一般的には、水溶性高分子化合物が用いられ、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースガムが挙げられる。乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンニニルフェノールエーテル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これら乳化剤と分散安定剤とは併用することができる。
【0041】
この様にして得られた微小カプセル粒子の水性分散液は、固体物質(A)が内包された結着剤樹脂の球形粒子であり、その粒子内部がアミノカップリング剤にて部分架橋された水性媒体に安定に分散した微小粒子水性分散液である。
【0042】
ここで、結着剤樹脂として自己水分散性樹脂を用いれば、分散安定剤や乳化剤を使用せずに転相乳化造粒を行うことができる。
【0043】
自己水分散性樹脂とは、中和により親水性基となりうる官能基を分子中に含有した樹脂で、それら親水性となりうる官能基の一部又は全部が中和剤により中和された場合に、乳化剤や分散安定剤を用いることなく、安定した水性分散液を形成する能力を有する樹脂を言う。
【0044】
この樹脂における中和により親水基となりうる官能基としては、例えば、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基などのいわゆる酸性基が挙げられ、カルボキシ基含有アニオン型樹脂を例にとると、当該樹脂の、中和によりアニオン性の親水性基となりうるカルボキシル基の含有量は、特に制限されるものではないが、酸価40程度以上が、上記転相乳化法による粒子形成が容易であるので好ましい。特に好ましくは酸価50〜150である。
【0045】
上記自己水分散性樹脂に使用する中和剤は、当該樹脂が水性媒体中で自己水分散しうる程度の親水性を呈するものであれば、その種類に限定されるものではなく、アニオン型樹脂を用いて本発明を実施するに当たっては、水中で容易にカチオンイオンを生成する化合物を用いることができる。
【0046】
本発明では、アミノカップリング剤を用いるので、それを中和剤として使用っすることができる。アミノカップリング剤のみでなく、それにカップリング機能を有さない通常の中和剤を併用することが好ましい。
【0047】
効果的な中和剤の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸アンモニウム、第三リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の金属塩基性化合物、アンモニア、或いはモノ、ジ、又はトリメチルアミン、モノ、ジ、又はトリエチルアミン、モノ、又はジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノ、ジ、又はトリエタノールアミン、モノ、ジ、又はトリイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジイミン等の有機アミン化合物を挙げることができる。
【0048】
前記アニオン型樹脂を中和する際に用いる、中和剤として、例えば金属塩基性化合物は、転相乳化時に得られる微小カプセル粒子の粒子径分布をより狭くすることができるという長所があり、一方、有機アミン化合物は、耐環境特性を良好とすることができるという長所がある。
【0049】
かかる自己水分散性樹脂を結着剤樹脂とした転相乳化造粒は、通常、固体物質(A)を分散させた、自己水分散性樹脂の有機溶剤溶液中に中和剤とアミノカップリング剤化合物とを添加分散した後、水性媒体と混合して転相乳化するか、又は、固体物質(A)とアミノカップリング剤化合物とを分散させた、自己水分散性樹脂有機溶剤溶液と、中和剤を含有させた水性媒体とを混合して転相乳化することによって、固体物質(A)が内包された結着剤樹脂が部分架橋した球形カプセル粒子の水性分散液とすることができる。電子写真用トナーの場合、前記固体物質(A)として着色剤(a)を用い、乾式トナーのように粉体微小粒子として使用する場合には、このカプセル粒子の水性分散液から水性媒体を除去乾燥することによって容易に粉体粒子とすることができる。
【0050】
水性分散液からは、有機溶剤のみを除去してから、水を除去する様にすると、トナー粒子同志の融着をより少なくすることができ好ましい。必要であれば、有機溶剤を除去した後に、結着剤樹脂を自己水分散性とするのに用いたのと逆極性の中和剤を水分散液に加えて逆中和を行ってから濾過して乾燥することもできる。
さらに、結着剤樹脂中の酸性基を分散液を得るのと同極性の中和剤で再度中和してやることもできる。
【0051】
トナー粒子を製造するためには、上記転相乳化造粒方法の中でも、分散安定剤を別途除去するための水洗工程等の別工程が不要であり、生産性にも優れる点で、乳化剤や分散安定剤を実質的に用いない、自己水分散性樹脂を結着剤とする転相乳化法が好ましい。
【0052】
乳化剤や分散安定剤を用いない、自己水分散性樹脂を利用した転相乳化法は、他の転相乳化製法トナーと比較して、乳化剤や分散安定剤の最終トナー粉体中への残留が無いために、帯電特性のより安定した乾式トナーとすることができる。
【0053】
本発明で用いるトナー粒子水性分散液を得るに当たっては、その製造の任意の工程において、必要に応じてワックス類、帯電制御剤等の助剤を含有させることもできる。
【0054】
助剤としては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類、金属石鹸、ステアリン酸亜鉛の如き滑剤、或いは酸化セリウム、炭化ケイ素の如き研磨剤、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、アゾ系含金属染料、アゾクロムコンプレックス等の帯電制御剤等が挙げられる。
【0055】
本発明のトナー粉体の粒子サイズとしては、トナーとしての実用的レベル内で任意の大きさを選定できる。現状のマシンとのマッチング性からは、その体積平均粒子径が3〜30μm、好ましくは、4〜12μmの範囲のものが好適である。
【0056】
本発明の電子写真用トナーは、非磁性一成分トナーあるいは磁性一成分トナーとして、又、キャリアと組み合わせることにより二成分現像剤として使用することができ、とりわけ二成分現像剤として良好な特性を得ることができる。
【0057】
キャリアとしては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物、表面処理されたガラス、シリカ等の粉末が使用できる。勿論、アクリル樹脂被覆キャリア、フッ素樹脂被覆キャリア、シリコーン樹脂被覆キャリア等の樹脂被覆キャリアも使用できる。キャリアとしては、例えば20〜200ミクロン程度のものが使用される。
【0058】
本発明で得られたトナーと、キャリアとから二成分型静電荷像現像剤を得る場合には、例えばキャリア100重量部当たり、トナー1〜15重量部となる様な割合で混合して用いればよい。
【0059】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な実施の形態を電子写真用トナーを例に説明すると、次の通りである。
【0060】
まず、酸価50〜150、重量平均分子量2〜6万、ガラス転移温度(Tg)50〜100℃を有する、中和により自己水分散性となりうる、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体の疎水性有機溶剤溶液を得る。
【0061】
次いで、当該溶液に親水性有機溶剤、着色剤として顔料を加えて混合した後、さらに金属塩基性化合物水溶液とアミノシランカップリング剤とを添加する。この際のカップリング剤の添加量は、前記結着剤樹脂が部分架橋にとどまる様に、前記樹脂不揮発分に対して0.1〜3重量%の範囲とする。金属塩基性化合物は、前記樹脂が自己水分散しうる様に前記カップリング剤と併用される。この様にしてミルベースが調製され、それを攪拌しながら、そこに水を滴下して、部分架橋トナー粒子の水性分散液を得る。
【0062】
さらに前記トナー粒子の軟化温度よりも低い温度となる様に減圧蒸留を行って有機溶剤をこの分散液から除去し、それに酸水溶液を加えて、濾過洗浄し、トナー粒子を水に再分散し、これに有機アミン化合物を加えて充分に攪拌してから、濾過乾燥して、体積平均粒子径4〜12μmの、部分架橋した結着剤樹脂に顔料が内包されたトナー粒子からなる乾式トナー粉体を得る。
【0063】
キャリア粒子100重量部に、この乾式トナー粉体1〜10重量部を加えて二成分型電子写真用現像剤を得る。
【0064】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
メチルエチルケトン200gを反応器に入れ加熱して80℃にした。次いで、以下に示されるような割合の混合物を約2時間に亘って滴下した。その間反応は窒素気流中で行った。
【0066】
メタクリル酸 45g
スチレン 207g
アクリル酸−2−エチルヘキシル 33g
メタクリル酸メチル 15g
パーブチルO〔日本触媒(株)製〕 3g
メチルエチルケトン 12g
【0067】
上記した混合物の滴下終了1時間後に、パーブチルOを0.25g追加添加し、さらにその後2時間にして0.25gを加えて24時間反応を続行せしめた。反応終了後、不揮発分が54重量%の、中和により自己水分散性となりうるスチレン−アクリル系共重合体樹脂溶液が得られた。この樹脂は、酸価100、重量平均分子量4万であった。
【0068】
この共重合体溶液200g、イソプロピルアルコール35g、および「MA−100」〔三菱化成工業(株)製カーボンブラック〕12.0gを混練機「アイガーM−250VSE−EXJ」(米国アイガー社製混練機)にて1時間混合した後、1Nーカセイソーダ水溶液11.5g、及びアミノカップリング剤化合物としてN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 SH6020〕0.5gを加え、スリーワンモーターを用いて、350rpmにて攪拌しながら水を滴下して転相乳化を行い、着色剤が内包された、自己水分散性樹脂からなるトナー粒子水性分散液を得た。トナー粒子を、コールターカウンターで測定したところ平均粒子径が8ミクロンのトナー粒子であった。又、スライドガラス上に上記トナー粒子水性分散液を採取し、カバーガラスを乗せて指で強く圧着して粒子分散液を広げ、電子顕微鏡で観察したところ、粒子間の凝集が全く無い独立した真球状のトナー粒子であることが確認された。
【0069】
次いでトナー粒子の軟化点よりも低い温度となる様に、減圧蒸留により有機溶剤を除去し、pH6になるまで0.01Nの塩酸水溶液を加え、濾過・洗浄した後、このトナー粒子を水に戻してトナー粒子水性分散液を得た。このトナー粒子水性分散液に対し、トリエチルアミン0.31gを加え、充分に攪拌を行った。その後、濾過して
凍結乾燥機で3日処理して乾式トナーを得た。このトナーは流動性に優れ、粒子の凝集は全く観察されなかった。
【0070】
このトナーの溶融粘度をフローテスター(島津製作所(株)製)にて測定したところ、100000ポイズで222℃を示した。
【0071】
得られた乾式トナーを、平均粒子径80μmのフェライトキャリア100重量部に対し5重量部の割合で混合攪拌して現像剤を調整し、市販の電子複写機にて複写テストを行ったところ、ホットオフセットを発生すること無く、均一画像濃度を有する20000枚以上の原稿に忠実な鮮明な画像が得られた。
【0072】
(比較例1)
実施例1で用いたアミノカップリング剤化合物を加えずに、トナー粒子水性分散液を作製した。すなわち、トナー粒子内部が架橋されていないトナー粒子を調整した。
コールターカウンターで測定したところ平均粒子径は8ミクロンのトナー粒子であった。実施例1と同様に、スライドガラス上にこのトナー粒子水性分散液を採取し、カバーガラスを乗せて指で強く圧着して粒子分散液を広げ、電子顕微鏡で観察したところ、楕円形に変形した粒子が観測され、機械的に弱い粒子であることが確認された。
【0073】
また乾式トナーとした後、溶融粘度をフローテスター(島津製作所(株)製)にて測定したところ、100000ポイズで143℃を示した。
【0074】
得られた乾式トナーを、平均粒子径80μmのフェライトキャリア100重量部に対し5重量部の割合で混合攪拌して現像剤を調整し、市販の電子複写機にて複写テストを行ったところ、初期の段階からホットオフセットを発生し、地汚れの激しい画像しか得られなかった。
【0075】
【発明の効果】
請求項1の発明では、固体物質を用いて、部分架橋した結着剤樹脂に分散又は内包された微小カプセル粒子を転相乳化造粒により製造するので、機械的ストレスに耐え得る適当な強度の粒子が容易に得られるという格別顕著な効果を奏する。
【0076】
請求項2の発明では、自己水分散性樹脂を用いるので、乳化剤や分散安定剤を用いる様な請求項1の方法に比べて、それを除去する工程が不要で、より生産性に優れるという効果をも更に奏する。
【0077】
請求項5の発明では、着色剤を用いて、部分架橋した結着剤樹脂に分散又は内包された微小カプセル粒子を転相乳化造粒により製造し乾燥してトナーとするので、キャリアとの混合時或いはブレードとの接触時の摩擦に基づく機械的ストレスに耐え得る強度と定着における良好な耐オフセット性を兼備するトナー粒子が容易に得られるという格別顕著な効果を奏する。
【0078】
請求項6の発明では、着色剤を用いて、部分架橋した自己水分散性の結着剤樹脂に分散又は内包された微小カプセル粒子を転相乳化造粒により製造し乾燥してトナーとするので、乳化剤や分散安定剤を用いる様な請求項5の方法に比べて、それを除去する工程が不要で、より生産性に優れるという効果をも更に奏する。
Claims (8)
- 固体物質(A)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して得られる微小カプセル粒子の製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む有機溶剤(C)溶液を用い、更に乳化剤又は分散安定剤の存在下で転相乳化することを特徴とする微小カプセル粒子の製造方法。
- 固体物質(A)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して得られる微小カプセル粒子の製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の、中和により自己水分散性となりうる、酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む有機溶剤(C)溶液を用いて転相乳化することを特徴とする微小カプセル粒子の製造方法。
- アミノカップリング化合物が、アミノシランカップリング剤である請求項1又は2の製造方法。
- さらに塩基性化合物を併用する請求項2記載の製造方法。
- 着色剤(a)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して、着色剤を包含する結着剤樹脂粒子からなるトナー粒子の水性分散液を得、それから水性媒体を除去乾燥して、乾式トナーとする電子写真用トナーの製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む有機溶剤(C)溶液を用い、更に乳化剤又は分散安定剤の存在下で転相乳化することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
- 着色剤(a)を分散させた結着剤樹脂(B)の有機溶剤(C)溶液を水性媒体で転相乳化して、着色剤を包含する結着剤樹脂粒子からなるトナー粒子の水性分散液を得、それから水性媒体を除去乾燥して、乾式トナーとする電子写真用トナーの製造方法において、該結着剤樹脂(B)として、橋かけ構造を有さない、非ゲル状の有機溶剤可溶性の、中和により自己水分散性となりうる、酸性基含有結着剤樹脂を用い、且つ該酸性基含有結着剤樹脂中に部分橋かけ構造を形成するに足るアミノカップリング化合物を含む前記有機溶剤(C)溶液を用いて転相乳化することを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
- アミノカップリング化合物が、アミノシランカップリング剤である請求項5又は6の製造方法。
- さらに塩基性化合物を併用する請求項6記載の製造方法。
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