JP7314530B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナー - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナー Download PDF

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Description

本発明は、静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーに関し、更に詳しくは、高温高湿下でのトナー画像形成において、帯電特性及び二次転写性に優れ、かつ画質(粒状性)に優れたトナー画像が得られる静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーに関する。
静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)を用いる電子写真方式の画像形成は、従来からの文書作成に代表されるモノクロプリントに加え、フルカラープリントが主流となってきている。
近年の電子写真方式では、複写機の高速化や高画質化が要望されており、特に、記録媒体、例えば、紙との明度差が大きい黒色トナーで形成した画像は、得られるトナー画像全体への影響が大きく、紙上に静電潜像を忠実に再現することが強く求められる。
一方、近年多くのカラー複写機では、中間転写体上に各色のトナー画像を形成し、記録媒体へ一括転写する方法が採用されている。そのためトナーに対しては、現像部での帯電特性だけでなく、現像工程、一次転写工程を経た二次転写工程時に十分な電界応答性を保持していることが必要であり、帯電性に加えて高い電荷保持性が必要とされる。
しかし、カーボンブラックを着色剤として用いる黒色トナーでは、十分に着色されたトナー画像を得るためにトナー中においてカーボンブラックを増量すると、絶縁性が低下して電荷保持性が失われてしまう。逆に、絶縁性を確保するためにカーボンブラックを減量すると、印刷物の画像濃度が得られない、という問題があった。
上記問題に対し、カーボンブラックと無機系青色顔料を併用した電子印刷用黒色トナーが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されている方法によれば、カーボンブラック量を低下させ、トナー全体としての絶縁性を維持しながら、黒色画像濃度を確保できるとされている。また、トナー中における着色剤粒子の二次粒子の粒径分布とアスペクト比を規定することで、高い着色力を実現し、様々な環境中で画像を出力しても弱帯電性及び逆帯電性のトナーが少なく帯電安定性に優れるトナーが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のいずれも、トナー構造の緻密な制御ができておらず、カーボンブラックの分散性が不十分であり、かつトナーの製造過程で、顔料等のトナー表面への露出があり、電荷保持性が十分ではなかった。
また、着色剤としてカーボンブラックを用い、樹脂と着色剤から構成されるトナーをコア・シェル構造とし、結着樹脂の酸価を調整してカーボンブラックの凝集状態をコントロールし、転写性が向上したトナーが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、トナー製造工程で加熱する際に凝集状態が崩れ、カーボンブラックの分散が不十分となり、電荷保持性が十分ではなかった。
このように、いずれも、黒色トナーとして、近年の高速化/高画質化に対応するには電荷保持性が不十分なために、特に高温高湿環境下での二次転写性と画質に問題があった。
特開平04-182672号公報 特開2003-028027号公報 特開2010-191043号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高温高湿下でのトナー画像形成において、帯電特性及び二次転写性に優れ、かつ画質(粒状性)に優れたトナー画像が得られる静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、少なくとも、静電荷像現像用トナーの製造方法で、トナー粒子が、少なくとも結着樹脂と、カーボンブラック及び銅フタロシアニン化合物を含有し、前記銅フタロシアニン化合物の含有量が、前記トナー粒子の全質量に対して、0.3~2.0質量%の範囲内であり、銅フタロシアニン化合物の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)を特定の範囲内とし、前記銅フタロシアニン化合物の分散液において、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aを特定の範囲となるように調整し、かつ、前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(B/A)を特定の範囲となるように調整した静電荷像現像用トナーの製造方法により、高温高湿下でのトナー画像形成において、帯電特性及び二次転写性に優れ、かつ画質(粒状性)に優れたトナー画像が得られる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも、結着樹脂と顔料を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記トナー粒子が、少なくとも結着樹脂と、前記顔料としてカーボンブラックと銅フタロシアニン化合物を含有し、
前記銅フタロシアニン化合物の含有量が、前記トナー粒子の全質量に対して、0.3~2.0質量%の範囲内であり、
前記銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が2.0~6.0の範囲内であり、
前記銅フタロシアニン化合物の分散液の吸収スペクトルにおいて、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95~1.05の範囲内となるように調整し、かつ、
前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、下記条件式(1)を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
条件式(1) 0.90≦B/A≦1.04
2.前記銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が、3.0~5.0の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
3.前記吸光度比の値(B/A)が、下記条件式(2)を満たすことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
条件式(2) 0.95≦B/A≦1.03
4.前記トナー粒子が、前記結着樹脂として、少なくともビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
5.少なくとも、結着樹脂と顔料を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー粒子が、少なくとも結着樹脂と、前記顔料としてカーボンブラックと銅フタロシアニン化合物を含有し、
前記銅フタロシアニン化合物の含有量が、前記トナー粒子の全質量に対して、0.3~2.0質量%の範囲内であり、
前記銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が2.0~6.0の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
6.前記銅フタロシアニン化合物が、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが0.95~1.05の範囲内にあり、かつ、
前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、0.90~1.04の範囲内であることを特徴とする第5項に記載の静電荷像現像用トナー。
本発明の上記手段により、高温高湿下でのトナー画像形成において、帯電特性及び二次転写性に優れ、かつ画質(粒状性)に優れたトナー画像が得られる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
従来、静電荷像現像用の黒色トナーにおいては、カーボンブラックに対し、シアン顔料を併用する方法がとられていた。抵抗値の高いシアン顔料は、抵抗値の低いカーボンブラックの一部を代替する形で含有され、帯電性の改善を図っていた。これに対し、本発明では、シアン顔料として銅フタロシアニン化合物を用い、当該銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)を2.0~6.0の範囲内とすることで、トナー製造中に熱を加えてもカーボンブラック同士の凝集を阻害し、カーボンブラックの分散性が向上して帯電性や電荷保持性が向上する、という単なる代替以上の効果を見出した。
なお、銅フタロシアニン化合物をシアントナーとして用いる際は、アスペクト比が2.0~6.0とすることで過剰帯電が防げる(帯電性低下)効果が確認されているが、本発明ではより抵抗の低いカーボンブラックが存在しており、カーボンブラックの凝集を阻害することで帯電性や電荷保持性が向上する、という逆の効果が得られたと推測している。
また、銅フタロシアニン化合物の分散液の吸収スペクトルにおいて、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95~1.05の範囲内となるように調整し、かつ、前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)を、0.90~1.04の範囲内とすることで、二次粒子を減らしつつ、過分散を防ぐことができ、上記の効果が得られたものと推測している。
詳しくは顔料である銅フタロシアニン化合物の分散開始時において、顔料微粒子の多くは二次粒子となっている。この二次粒子を、分散機を用いて微細化を進めていくと、徐々に一次粒子へと微細化されていく。これに伴い、銅フタロシアニン化合物の分散液の吸収スペクトルは、凝集体である二次粒子に由来する波形から一次粒子に由来する波形へと変化していく。
ここで、更にエネルギーを投入していくと、吸収スペクトルの波形は更に変化してしまう。これは、更なるエネルギーの投入により、一次粒子をも傷つけ過分散を起こしてしまい、粒子サイズが更に小さいものを生じるためと考えられる。
微分散化においては、顔料由来の二つの極大ピークが600nm付近と700nm付近に観測され、この強度が変化していく。波長600~650nmの吸収が一次粒子由来の吸収(例えば、銅フタロシアニン)であり、波長700~750nm付近の吸収が二次粒子由来の吸収であると考えている。分散が進むにつれて二次粒子が減っていく。
そこで、本発明においては、吸収スペクトルにおいて、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aを0.95~1.05の範囲内となるように調整し、最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)を、前記条件式(1)を満たす範囲にすることで、過分散を起こすことなく、十分に一次粒子として分散した状態とすることができ、トナー化した際に好ましい色相を示すものと考えている。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、少なくとも、結着樹脂と顔料を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、前記トナー粒子が、少なくとも結着樹脂と、前記顔料としてカーボンブラックと銅フタロシアニン化合物を含有し、前記銅フタロシアニン化合物の含有量が、前記トナー粒子の全質量に対して、0.3~2.0質量%の範囲内であり、前記銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が2.0~6.0の範囲内であり、前記銅フタロシアニン化合物の分散液の吸収スペクトルにおいて、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95~1.05の範囲内となるように調整し、かつ、前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、0.90~1.04の範囲内であることを特徴とする。これらの特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、更に、銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が3.0~5.0の範囲内であることが、カーボンブラックの凝集をより阻害し、トナー粒子表面への顔料の露出する度合いを低減することにより、本発明の目的効果をより発現できる点で好ましい。
また、吸光度比(B/A)を0.95~1.03の範囲内とすることにより、銅フタロシアニン化合物の二次粒子がより減少し、均一に一次粒子として分散され、カーボンブラックも分散されやすくなる点で好ましい。
また、前記トナー粒子が、前記結着樹脂として、少なくともビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、及び結晶性ポリエステル樹脂より構成されていることが好ましい。ビニル樹脂中に顔料を分散させており、そのビニル樹脂中に非晶性及び結晶性のポリエステル樹脂が存在することにより顔料の移動(凝集)が抑えられる、と推測される。また、本発明ではポリエステル樹脂によってトナー表面を覆うコア・シェル構造が好ましい態様であり、顔料の表面露出を抑えられる、と推測される。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《静電荷像現像用トナー》
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と、顔料としてカーボンブラックと銅フタロシアニン化合物を含有しているトナー粒子より構成させていることを特徴とする。
〔銅フタロシアニン化合物〕
本発明に係る銅フタロシアニン化合物は、一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が2.0~6.0の範囲内であることを特徴とする。
(銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)の算出)
本発明で規定する個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)(以下、「平均アスペクト比」ともいう。)は、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、遠心分離と上澄みの除去とを繰り返すことによりTHF可溶分を除去した後、不溶分をTHFに分散し、超音波分散させてから、電子顕微鏡で観察することで、平均アスペクト比を算出する。なお、トナーの結着樹脂のTHFの溶解性が悪く顕微鏡での観察が困難である場合や、銅フタロシアニン化合物がTHFに溶解し上澄みが着色してしまう場合には、他の溶媒を用いることもできる。
具体的には、電子顕微鏡の画像を画像解析装置(ルーゼックス(登録商標)、株式会社ニレコ製)にて解析し、銅フタロシアニン化合物の一次粒子を取り囲む長方形のうち面積が最小となるもの(外接矩形)の長辺と短辺の長さの比の値から算出する。また、長辺の長さを一次粒子の長径(長軸の長さ)とし、短辺の長さを一次粒子の短径とする。5つ以上の視野について無作為に抽出した合計500個以上の長短比の値(アスペクト比)の平均値を算出し、これを個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)(平均アスペクト比)とする。
本発明の静電荷像現像用トナーを構成するトナー粒子は、カーボンブラックと銅フタロシアニン化合物が共存している。カーボンブラックの一次粒子はほぼ真球(アスペクト比1.0~1.1)であり、銅フタロシアニン化合物の一次粒子は繊維状である。電子顕微鏡観察時に、繊維状のものだけをピックアップして、銅フタロシアニン化合物のアスペクト比を測定する。そのほかにも、銅フタロシアニン化合物の分散液を観察する方法、又は、静電荷像現像用トナーの定着樹脂等を適当な溶媒により溶解したのち、カーボンブラックと銅フタロシアニン化合物粒子を分離して観察する方法でもよい。
本発明では、前記平均アスペクト比が2.0以上であることにより、一次粒径が小さくても、銅フタロシアニン化合物が粒子分散液中及びトナー中で分散した状態で存在することが可能になる。また、前記平均アスペクト比が6.0以下であることにより、色相角が過度にブルー側になることを抑制でき、所望の色域(明度及び彩度)を確保できるトナーとすることができる。
トナーの着色力を向上させる観点から、前記銅フタロシアニン化合物のトナー中での一次粒子の平均アスペクト比は、3.0~5.0の範囲内であることが好ましく、3.5~4.5の範囲内であることがさらに好ましい。
前記平均アスペクト比を2.0~6.0の範囲内とするための手段としては、前記銅フタロシアニン化合物の製造工程において、結晶化する際の溶媒の種類、温度、析出速度、分散、その他の条件等によって制御することができる。
(銅フタロシアニン化合物の分散液の吸光特性)
本発明に係る銅フタロシアニン化合物の分散液は、具体的には、シアン顔料である銅フタロシアニン化合物、界面活性剤及び水より構成され、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法においては、当該銅フタロシアニン化合物の分散液の吸収スペクトルとして、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95~1.05の範囲内となるように調整し、かつ、前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、0.90~1.04の範囲内とすることを特徴とする。
〈銅フタロシアニン化合物の分散液の吸収スペクトルの測定〉
銅フタロシアニン化合物の顔料分散液の吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計 V-530(日本分光(株)社製)を用いて、室温(25℃)で行う。
波長300~900nmの範囲内に発現した吸収スペクトルのピークのうち、波長700~750nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Aとする。このとき、吸光度Aが0.95~1.05の範囲内に収まっていない場合には、その範囲内に収まるように水で希釈し、濃度の調整を行う。
この状態で、波長600~650nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Bとする。得られた各吸光度から、吸光度比の値(B/A)を算出する。
(銅フタロシアニン化合物の化学構造的要件)
本発明に係る銅フタロシアニン化合物は、既存の銅フタロシアニン化合物を用いてもよいが、無置換の銅フタロシアニン化合物であることが、所望の色域(明度及び彩度)の色の画像が得られやすい点で好ましい。
また、銅フタロシアニン化合物は、無置換の銅フタロシアニン化合物のみを含有してもよいし、置換の銅フタロシアニン化合物のみを含有してもよいし、無置換の銅フタロシアニン化合物及び置換の銅フタロシアニン化合物の両方を含有してもよい。
銅フタロシアニン化合物が無置換の銅フタロシアニン化合物及び置換の銅フタロシアニン化合物を同時に含む場合、置換の銅フタロシアニン化合物が銅フタロシアニン化合物の結晶構造を乱す部分となり、後述するソルベントソルトミリングなどによる着色剤(銅フタロシアニン化合物)の1次粒子の作製時に1次粒径を小さくすることや粒径分布の制御が容易になるため、着色力及び色再現性等の制御がより容易に行えるため好ましい。
また、置換の銅フタロシアニン化合物を含有することで、置換の銅フタロシアニン化合物の置換基(官能基)により結着樹脂側との相溶性が良くなり、結着樹脂中に取り込まれやすくなる(シアン顔料(着色剤)のトナー全体への分散性が良くなる)点でも優れている。
また、ここで「無置換」とは、銅フタロシアニン骨格上の水素原子が置換基により置換されていないことを意味する。「置換」とは、銅フタロシアニン骨格上の水素原子が置換基により置換されていることを意味する。
前記無置換の銅フタロシアニン化合物には、α型、β型、ε型等の結晶型があり、本発明では、β型が、色相、発色性、安定性及び分散性の点で好ましい。具体的に、β型としては、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4などが挙げられ、α型としてはC.I.Pigment Blue15、C.I.Pigment Blue15:1、C.I.Pigment Blue15:2などが挙げられ、ε型としては、C.I.Pigment Blue15:6などが挙げられる。
前記置換の銅フタロシアニン化合物は、下記一般式(I)又は(II)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(I) P-(Y)
一般式(II) P-(A-Z)
上記式中、Pは銅フタロシアニン環のn個の水素を除いた残基を表す。Yは第1~3級アミノ基、カルボキシ基、スルホン酸基又はそれと塩基若しくは金属との塩を表す。Aは2価の連結基を表す。Zは第1~2級アミノ基の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基、又は窒素を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基を表す。mは1~4の整数を表し、nは1~4の整数を表す。
第2~3級アミノ基としては、例えばモノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられ、前記カルボキシ基やスルホン酸基と塩を形成する塩基や金属としては、例えばアンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの有機塩基、カリウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウムなどの金属が挙げられる。Aの二価の連結基としては、例えば炭素数1~3のアルキレン基、-CO-、-SO-、-SONH(CH-等が挙げられ、Zとしては、例えばフタルイミド基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
その中でも、前記置換の銅フタロシアニン化合物が、塩基性の置換基(アミノ基等)により置換されていることにより、塩基性の置換基と結晶性ポリエステル樹脂の酸基及びエステル基との間に相互作用が生じ、帯電性の制御性も向上するため好ましい。
前記銅フタロシアニン化合物のトナー中での一次粒子の個数平均長径は、色味と転写性の観点から70~220nmの範囲内であることが好ましく、110~140nmの範囲内であることがより好ましい。
前記銅フタロシアニン化合物のトナー中での一次粒子の個数平均長径が70nm以上であることにより、色相角が過度にブルー側になることを抑制でき、かつ、カーボンブラック凝集による転写不良を抑制できるため好ましい。また、前記個数平均長径が220nm以下であることにより、トナー中の銅フタロシアニン化合物の分散性が向上して着色力が向上し、かつ、トナー作製時にトナー中に確実に銅フタロシアニン化合物が取り込まれて、カーボンブラック凝集による転写不良を抑制できる点で好ましい。
前記銅フタロシアニン化合物のトナー中での含有量は、色味と転写性の観点から0.3~2.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~1.0質量%であることがより好ましい。
銅フタロシアニン化合物のトナー中での含有量が、0.3~2.0質量%の範囲内であることにより、カーボンブラック凝集による転写不良を抑制できる。また、上記のような少ない量とすることで着色力を損なわずに色相角が過度にブルー側になることを抑制できる。
ここで、銅フタロシアニン化合物の製造方法としては、公知慣用の製造方法をいずれも採用できる。
(銅フタロシアニン化合物の製造方法)
銅フタロシアニン化合物の製造方法としては、例えばワイラー法と呼ばれる無水フタル酸と尿素と金属塩とを反応させ金属フタロシアニンを合成する方法や、フタロニトリル法と呼ばれるフタロニトリルと金属塩とを反応させ金属フタロシアニンを合成する方法を用いることができる。
また、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、イミド、エステルの如き誘導体の存在下で、無水フタル酸と尿素と金属塩とを反応させ金属フタロシアニンを合成する方法(特開昭61-203175号公報参照)や、パラフィン系炭化水素溶媒とナフテン系炭化水素溶媒とを併用して金属フタロシアニンを合成する方法(特開平8-27388号公報参照)を用いることもできる。
銅フタロシアニン化合物の製造方法の他の実施形態としては、銅フタロシアニン化合物は、粗顔料を精製することにより調製される。すなわち、粗顔料を顔料化処理することによって得ることができる。この顔料化処理方法としては、特に限定はなく、各種の顔料化処理法を採用することができるが、多量の有機溶剤中で粗顔料を加熱撹拌するソルベント処理よりも、著しい結晶成長を抑制でき、かつ銅フタロシアニン化合物のアスペクト比が制御されやすい点で、ソルベントソルトミリング処理を採用するのが好ましい。
このソルベントソルトミリングとは、粗顔料と無機塩と有機溶剤とを混練摩砕することを意味する。具体的には、粗顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練摩砕を行う。この際用いられる混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒径0.5~50μmの範囲内の無機塩を用いることがより好ましい。このような無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
無機塩の使用量は、粗顔料1質量部に対して6~20質量部の範囲内とするのが好ましく、8~15質量部の範囲内とするのがより好ましい。
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤としての水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、2-(イソペンチルオキシ)エタノール、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。
当該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01~15質量部が好ましい。
本発明で用いられる銅フタロシアニン化合物を得るに当たっては、無置換の銅フタロシアニン化合物の粗顔料のみをソルベントソルトミリングしてもよいし、無置換の銅フタロシアニン化合物の粗顔料と置換の銅フタロシアニン化合物とを併用してソルベントソルトミリングしてもよい。
無置換の銅フタロシアニン化合物の粗顔料と置換の銅フタロシアニン化合物とを併用してソルベントソルトミリングして得た銅フタロシアニン化合物は、無置換の銅フタロシアニン化合物と置換の銅フタロシアニン化合物とを含む銅フタロシアニン化合物となる。そして無置換の銅フタロシアニン化合物と置換の銅フタロシアニン化合物とを含む全体として前記平均アスペクト比の範囲内となっている。
〔カーボンブラック〕
本発明の静電荷像現像用トナーにおいて、銅フタロシアニン化合物と併用するブラック顔料であるカーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどを使用することができる。また、カーボンブラックの他に、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどを併用することができる。磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどを使用することができる。
(界面活性剤)
本発明に係る銅フタロシアニン化合物及びカーボンブラックの分散液の調製に適用可能な界面活性剤は、顔料の分散を促進する分散剤として機能するものである。界面活性剤は、分散させた微粒子の凝集を防ぐのに有用である。
界面活性剤としては、公知の種々のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデイシルトリメチルアンオニウムブロマイド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
これら界面活性剤は、所望に応じて、1種単独で使用されてもよいし、又は2種以上が組み合わされ使用されてもよい。
(銅フタロシアニン化合物の分散液の特性)
〈個数平均粒径〉
アスペクト比が2.0~6.0の範囲内にある銅フタロシアニン化合物を含有する分散液の特性を示す指標としては、前述の本発明の効果の発現機構及び作用機構において記載したように、吸光度の最大値Aに対する最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)を用いることが特に好ましいが、その他にも、必要に応じて個数平均粒径を指標とすることもでき、この場合には、個数平均粒径としては80~250nmの範囲内であることが好ましく、80~150nmの範囲内であることがより好ましい。
ここで、銅フタロシアニン化合物の顔料微粒子の「個数平均粒径」とは、顔料微粒子の微細化を示す指標の一つで、具体的には、動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて下記条件下で測定して得られた測定値である。
サンプル屈折率 1.51
サンプル比重 1.5(球状粒子換算)
溶媒屈折率 1.33
溶媒粘度 0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 測定セルにイオン交換水を投入し調整する。
銅フタロシアニン化合物の分散液では、顔料微粒子が過分散を起こさなければ、顔料微粒子が細かいほうが有機顔料としての性能を発揮しやすい。
個数平均粒径が80nm以上であれば、色相角が過度にブルー側になることを抑制でき、かつ、カーボンブラックの凝集による転写不良を抑制できる。個数平均粒径が250nm以下であれば、着色力が向上し、かつ、トナー作製時にトナー中に確実にフタロシアニン化合物が取り込まれて、カーボンブラックの凝集による転写不良を抑制することができる。
(カーボンブラックの分散液の特性)
〈個数平均粒径〉
本発明においては、カーボンブラックの個数平均粒径は、80~250nmの範囲内であることが好ましい。カーボンブラックの個数平均粒径は、上記銅フタロシアニン化合物の顔料微粒子の個数平均粒径の測定で用いたのと同様の方法で求めることができる。
〔結着樹脂〕
本発明に係るトナーを構成する結着樹脂は、特に制限はないが、少なくともビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、及び結晶性ポリエステル樹脂で構成されていることが好ましい。
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)又はヒドロキシカルボン酸と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な融解ピークを有する樹脂をいう。明確な融解ピークとは、具体的には、結晶性ポリエステル樹脂単独の下記に示す示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、65~85℃の範囲内であることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の融点が上記範囲であることにより、十分な低温定着性及び優れた画像保存性が得られる。なお、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。ここに、結晶性ポリエステル樹脂の融点は、上述の結晶性ポリエステル樹脂単独の示差走査熱量測定によって得られたDSC曲線において、2回目の昇温過程における融解ピークのピークトップ温度である。なお、当該DSC曲線において融解ピークが複数存在する場合は、一番吸熱量の大きい融解ピークのピークトップ温度を融点とする。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価カルボン酸成分とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するための多価アルコール成分とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができ、例えば直接重縮合やエステル交換法を、単量体の種類によって使い分けて製造することが好ましい。
また、直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸を、前記多価カルボン酸及び/又は多価アルコールと組み合わせて用いることができる。
また、結晶性ポリエステル樹脂を形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.2/1~1/1.2の範囲内である。
結晶性ポリエステル樹脂は、その酸価が5~30mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。この酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じた手順により測定される。
結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、5~20質量%の範囲内であることが好ましい。結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が5質量%以上であることにより、十分な低温定着性を確実に得ることができる。また、結着樹脂における結晶性ポリエステル樹脂の含有割合が20質量%以下であることにより、トナーの製造においてトナーに結晶性ポリエステル樹脂を確実に導入することができる。
(スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂としては、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとが結合してなるスチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。
ここで、「スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂」とは、結晶性のポリエステル分子鎖(結晶性ポリエステル重合セグメント)に、スチレン・アクリル共重合体分子鎖(スチレン・アクリル重合セグメント)を化学結合させた、ブロック共重合体構造のポリエステル分子から構成される樹脂のことである。
結晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は、特に制限されない。当該重合セグメントの形成に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの具体的な種類ならびにこれらの単量体の重縮合条件は、上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
一方、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を構成するスチレン・アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。用いられるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、特に制限されないが、例えば、下記のものから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
(1)スチレン単量体
スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体など。
(2)(メタ)アクリル酸エステル単量体
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル(n-ブチル(メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体など;
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸双方を包含する。
スチレン・アクリル重合セグメントは、上記の単量体に加え、以下の単量体をさらに用いて形成されていてもよい。
(3)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなど;
(4)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど;
(5)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど;
(6)N-ビニル化合物類
N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンなど;
(7)その他の単量体
ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体など。
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントの含有割合は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂100質量%に対して、60~99質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂におけるスチレン・アクリル重合セグメントの含有割合(以下、「スチレン・アクリル変性量」ともいう。)は、特に制限されないが、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂100質量%に対して、1~40質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・アクリル変性量は、具体的には、スチレン・アクリル変性結晶性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂材料の全質量、すなわち、結晶性ポリエステル重合セグメントとなる未変性の結晶性ポリエステル樹脂を合成するための単量体と、スチレン・アクリル重合セグメントとなるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体と、これらを結合させるための両反応性単量体を合計した全質量に対する、スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の合計の質量の割合をいう。
ここで、「両反応性単量体」とは、スチレン・アクリル重合セグメントと結晶性ポリエステル重合セグメントとを結合する単量体で、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基と、の双方を分子内に有する単量体である。
両反応性単量体の使用量は、低温定着性を向上させる観点から、スチレン・アクリル重合セグメントを構成する単量体の総量を100質量%として1~20質量%の範囲内が好ましい。
(非晶性樹脂)
本発明において、非晶性樹脂としては非晶性ポリエステル樹脂、(非晶性)ビニル樹脂を用いることができる。
非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められないものをいう。つまり、従来公知の融点(示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピークを有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有するものである。より具体的には、非晶性樹脂の示差走査熱量測定装置によるTgは、35~70℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~65℃の範囲内である。非晶性樹脂のTgが35℃以上であることにより、トナーに十分な熱的強度を与えることができ、十分な耐熱保管性が得られる。また、非晶性樹脂のTgが70℃以下であることにより、十分な低温定着性が確実に得られる。
非晶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量は、数平均分子量(Mn)が1500~25000、重量平均分子量(Mw)が10000~80000の範囲内であることが好ましい。非晶性樹脂の分子量が上記の範囲にあることにより、十分な低温定着性及び優れた耐熱保管性が確実に両立して得られる。非晶性樹脂のGPCによる分子量測定は、測定試料として非晶性樹脂を用いたことの他は上記と同様にして行われるものである。
〈非晶性ポリエステル樹脂〉
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5~45mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。酸価が45mgKOH/g以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行い易い点で好ましい。なお、酸価は、結晶性ポリエステル樹脂の説明にて記載の方法と同様にして求めることができる。
非晶性ポリエステル樹脂は、1種の非晶性ポリエステル樹脂でもよいが、2種以上の非晶性ポリエステル樹脂の混合物であってもよい。
非晶性ポリエステル樹脂は、公知のポリエステル樹脂を使用することができる。非晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とから合成される。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、BPA-PO(ビスフェノールAのプロピレンオキサイドnモル付加物)、BPA-EO(ビスフェノールAのエチレンオキサイドnモル付加物)等のジオールを用いることができる。また、例えば、グリセリン、ソルビトール、1,4-ソルビタン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールを用いることができる。
また、多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸;マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸;これらの塩、低級アルキルエステル及び酸無水物等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸や1,2,5-ベンゼントリカルボン酸等のトリメリット酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリト酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、これらの塩、低級アルキルエステル及び酸無水物等が挙げられる。
多価カルボン酸成分としてジカルボン酸と、3価以上のカルボン酸とを含有する場合、3価以上のカルボン酸の添加量は、多価カルボン酸成分の総モル数に対して、1~30モル%の範囲内であることが好ましい。
また、多価カルボン酸成分としては、前述の化合物の他に、スルホン酸基を有するジカルボン酸成分が含まれていてもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の製造は、特に制限されないが、重合温度180~260℃として、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合反応により行い、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させることが好ましい。重合時間は、特に制限されないが、1~10時間であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、例えば、ナトリウム、リチウム等を含むアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等を含む第2族金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等を含む金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
触媒の添加量としては、特に制限されないが、多価カルボン酸全量に対して0.00001~10質量%の範囲内であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の5~30質量%であることが好ましい。
〈非晶性ビニル樹脂〉
非晶性ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の非晶性ビニル樹脂の中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル樹脂(以下、「スチレン・アクリル樹脂」とも称する)が好ましい。したがって、以下では、非晶性ビニル樹脂としてのスチレン・アクリル樹脂について説明する。
スチレン・アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステルを含むものである。
以下に、スチレン・アクリル樹脂の形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用される単量体は、下記に限定されるものではない。
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル単量体等が挙げられる。
スチレン・アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、60~85質量%の範囲内であることが好ましい。また、スチレン・アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、15~40質量%の範囲内であることが好ましい。
さらに、スチレン・アクリル樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が付加重合されてもよい。
スチレン・アクリル樹脂中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、0.1~15質量%の範囲内であることが好ましい。
非晶性ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂全体の40~95質量%の範囲内であることが好ましい。
〔離型剤〕
本発明のトナーは、離型剤を含有し得る。離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
具体的には、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
離型剤としては、結着樹脂を構成する樹脂と相溶するなどの相互作用を有さないものを用いることが好ましい。
離型剤の含有割合は、トナー中に1~20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~20質量%の範囲内である。トナーにおける離型剤の含有割合が上記範囲であることにより、分離性及び定着性が確実に両立して得られる。
離型剤のトナーへの導入方法としては、トナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる粒子を非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点より高い温度に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
また、非晶性樹脂が、例えば、スチレン・アクリル樹脂である場合には、凝集、融着工程に供される非晶性樹脂粒子(スチレン・アクリル樹脂粒子)に離型剤をあらかじめ混合させておくことによって、当該離型剤をトナーへ導入することもできる。
具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させる。この溶液を、界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂粒子の分散液を調製することができる。
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。
荷電制御剤の含有割合は、トナー中に0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1~5質量%の範囲内である。
〔外添剤〕
トナー母体粒子の表面には、流動性や帯電性を制御する目的で、外添剤を付着させる。
外添剤としては、従来公知の金属酸化物粒子を使用することができ、例えば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、及び酸化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独でも又は2種以上を併用してもよい。
シリカ粒子に関して、ゾル・ゲル法により作製されたシリカ粒子を用いることができる。ゾル・ゲル法で作製されたシリカ粒子は、粒径分布が狭いという特徴を有しているため、付着強度のバラツキを抑制する点で好ましい。
ゾル・ゲル法により形成されたシリカ粒子の個数平均1次粒径は、70~150nmの範囲内であることが好ましい。個数平均1次粒径がこのような範囲内にあるシリカ粒子は、他の外添剤に比べて粒径が大きいのでスペーサーとしての役割を有し、その他の粒径の小さい外添剤が現像機中で撹拌混合されることによって、トナー母体粒子中に埋め込まれるのを防止する効果を有し、また、トナー母体粒子同士が融着するのを防止する効果を有している。
また、スチレン、メタクリル酸メチル等の単独重合体やこれらの共重合体等の有機粒子を外添剤として使用してもよい。
外添剤として用いられる金属酸化物粒子は、カップリング剤等の公知の表面処理剤により表面の疎水化処理が施されているものが好ましい。上記表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等が好ましい。
また、表面処理剤として、シリコーンオイルを用いることもできる。シリコーンオイルの具体例としては、例えば、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状化合物や、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。また、側鎖、片末端、両末端、側鎖片末端、側鎖両末端等に変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いてもよい。該変性基の例としては、アルコキシ基、カルボキシ基、カルビノール基、高級脂肪酸変性、フェノール基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基等が挙げられるが、特に制限されるものではない。また、例えば、アミノ/アルコキシ変性等数種の変性基を有するシリコーンオイルであってもよい。
また、ジメチルシリコーンオイルと上記の変性シリコーンオイル、さらには他の表面処理剤とを用いて混合処理又は併用処理しても構わない。併用する処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸等を例示することができる。
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために外添剤として滑剤を使用することも可能である。例えば、以下のステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
これら外添剤の添加量の総量は、トナー母体粒子100質量部に対して、0.1~10質量%の範囲内が好ましく、1~5質量%の範囲内がより好ましい。
本発明のトナーにおいては、結着樹脂及び着色剤を含有するコア粒子と、該コア粒子の表面に被覆されるシェル層とを含むコア・シェル構造を有することが好ましい。なお、シェル層は、コア粒子を完全に被覆するものに限られず、一部コア粒子表面が露出されていてもよい。トナーがコア・シェル構造であることにより、帯電安定性や耐熱保管性を得ることができる。シェル層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、非晶性のポリエステル樹脂や非晶性ビニル樹脂などを用いることが好ましい。
コア・シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて、トナーの断面の構造を観察することによって確認することができる。
《トナーの各特性値》
〔トナーの平均粒径〕
本発明のトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3~8μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは4~7μmの範囲内である。
この平均粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
トナーの体積基準のメジアン径は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径とされる。
〔トナーの平均円形度〕
本発明のトナーにおいては、このトナーを構成する個々のトナー粒子について、帯電特性の安定性、低温定着性の観点から、平均円形度が0.930~1.000の範囲内であることが好ましく、0.950~0.995の範囲内であることがより好ましい。平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
本発明において、トナーの平均円形度は、「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。
具体的には、試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA-3000」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
〔トナーの軟化点〕
トナーの軟化点は、当該トナーに低温定着性を得る観点から、80~120℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは90~110℃の範囲内である。
トナーの軟化点は、下記に示すフローテスターによって測定されるものである。
具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器「SSP-10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製し、次いで、この成型サンプルを、24℃、50%RHの環境下において、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)により、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、軟化点とされる。
《トナーの製造方法》
本発明のトナーは、以下の手順を含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここでは一例を開示することに過ぎず、本発明は、以下の製造方法の例に制限されることがない。
本発明のトナーは、水系媒体中で作製される湿式法によって製造されることが好ましく、例えば乳化凝集法などによって製造することができる。
乳化凝集法は、結着樹脂を構成する樹脂粒子の水性分散液を必要に応じてその他のトナー構成成分の粒子の水性分散液と混合し、pH調整による粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
以下では、トナーの製造方法の一例として、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を用いた場合について説明する。
このようなトナーの製造方法の具体的な一例としては、
(1)着色剤を水系媒体中に分散させ、着色剤粒子分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程;
(2)結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させ、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製する結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程;
(3)必要に応じて離型剤及び荷電制御剤などのトナー構成成分が含有された非晶性樹脂(非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂)を水系媒体中に分散させ、非晶性樹脂粒子分散液(非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液、非晶性ビニル樹脂粒子分散液)を調製する非晶性樹脂粒子分散液調製工程;
(4)上記(1)~(3)で得られた各分散液を用いて、非晶性樹脂粒子、結晶性ポリエステル樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集、融着させて凝集粒子を形成する凝集、融着工程;
(5)凝集粒子を熱エネルギーにより熟成して形状調整を行い、トナー母体粒子分散液を作製する熟成工程;
(6)トナー母体粒子分散液を冷却する冷却工程;
(7)冷却したトナー母体粒子分散液より当該トナー母体粒子を固液分離し、トナー母体粒子表面より界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程;
(8)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程;
(9)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添処理工程;
から構成される。
本発明において、「水系媒体」とは、水50~100質量%と、水溶性の有機溶媒0~50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒を使用することが好ましい。
(1)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
着色剤は、後述の非晶性樹脂粒子分散液調製工程においてミニエマルション法を用いてあらかじめ非晶性樹脂を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させることによってトナー中に導入してもよい。
(2)結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程
結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、結晶性ポリエステル樹脂を界面活性剤が添加された水系媒体中に超音波分散法やビーズミル分散法などにより分散させる水系直接分散法、結晶性ポリエステル樹脂を溶剤中に溶解させ、これを水系媒体中に分散させて乳化粒子(油滴)を形成した後、溶剤を除去する溶解乳化脱溶法、転相乳化法などが挙げられる。
この結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液調製工程において得られる結晶性ポリエステル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
(3)非晶性樹脂粒子分散液調製工程
非晶性樹脂が非晶性ポリエステル樹脂である場合は、合成した非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させることによって、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製することができる。非晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、上述の結晶性ポリエステル樹脂を水系媒体中に分散させる方法と同様の方法を用いることができる。
非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル形成濃度(CMC)以上の濃度の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体を加え、撹拌を行いつつ所望の重合温度で水溶性重合開始剤を加え、重合を行うことにより、非晶性ビニル樹脂粒子分散液を調製することができる。
また、同様に非晶性樹脂が非晶性ビニル樹脂である場合、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体に対して、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解又は分散させた液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させることにより、非晶性樹脂粒子分散液を調製することもできる。なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このような非晶性樹脂粒子分散液調製工程においては、機械的エネルギーを付与して乳化(液滴の形成)する処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において形成させる非晶性樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成のものとすることもでき、この場合、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)により調製した樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合、第3段重合)する方法を採用することができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
(重合開始剤)
使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を使用することができる。具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルなどの過酸化物類;2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2′-アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、水溶性重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸を好ましく用いることができる。
また、重合開始剤としては、過硫酸塩とメタ重亜硫酸塩、過酸化水素とアスコルビン酸のようなレドックス重合開始剤を用いることもできる。
(連鎖移動剤)
非晶性樹脂(特には非晶性ビニル樹脂)粒子分散液調製工程においては、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
この非晶性樹脂粒子分散液調製工程において得られる非晶性樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
(4)凝集、融着工程
この工程は、上記の工程で形成した分散液に含まれる着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を、水系媒体中で凝集、融着させるものである。この工程では、水系媒体中に非晶性樹脂粒子分散液、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を添加して、これらの粒子を凝集、融着させる。
着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子を凝集、融着する具体的な方法としては、水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加し、次いで、非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂の融解ピーク温度以上の温度に加熱することによって、着色剤粒子、非晶性樹脂粒子及び結晶性ポリエステル樹脂粒子などの粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進め、所望の粒径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う方法である。
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかに結着樹脂に係る非晶性樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分以内であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。
また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナーの成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナーの耐久性を向上させることができる。
(凝集剤)
使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができ、これらの中で、少量で凝集を進めることが可能であり、凝集性の制御も容易であることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
(5)熟成工程
この工程は、具体的には、凝集粒子を含む系を加熱撹拌することにより、凝集粒子の形状が所望の平均円形度になるまで、加熱温度、撹拌速度、加熱時間を制御して、トナー母体粒子を形成する工程である。この工程においては、熱エネルギー(加熱)によりトナー母体粒子の形状制御を行うことが好ましい。
(6)冷却工程~(8)乾燥工程
冷却工程、濾過、洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
(9)外添処理工程
この外添処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に、外添剤を添加、混合する工程である。
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に粉体状の外添剤を添加して混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いることができる。
《現像剤》
本発明のトナーは、磁性又は非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
キャリアとしては、例えば鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、これらの中ではフェライト粒子を用いることが好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。
キャリアとしては、体積平均粒径が15~100μmの範囲内のものが好ましく、25~80μmの範囲内のものがより好ましい。
《画像形成装置》
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができ、このような画像形成方法が行われる画像形成装置としては、例えば静電荷像担持体である感光体と、トナーと同極性のコロナ放電によって当該感光体の表面に一様な電位を与える帯電手段と、一様に帯電された感光体の表面上に画像データに基づいて像露光を行うことにより静電荷像を形成させる露光手段と、トナーを感光体の表面に搬送して前記静電荷像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、当該トナー像を必要に応じて中間転写体を介して転写材に転写する転写手段と、転写材上のトナー像を加熱定着させる定着手段を有するものを用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着温度(定着部材の表面温度)が130~200℃とされる比較的低温の画像形成装置において好適に用いることができる。
また、本発明のトナーは、定着速度(通紙速度)が50~700mm/sec、好ましくは300~700mm/secとされる速度範囲の画像形成装置において好適に用いることができる。
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例で使用する銅フタロシアニン化合物の詳細を下記に示す。
・銅フタロシアニン化合物P1:アスペクト比(Db/Da)が4.1のC.I.Pigment Blue15:4
・銅フタロシアニン化合物P2~P5:アスペクト比(Db/Da)が、表Iに記載の2.0~6.0の範囲にあるC.I.Pigment Blue15:3(本発明)
・銅フタロシアニン化合物P6:アスペクト比(Db/Da)が1.8のC.I.Pigment Blue15:3(比較例)
・銅フタロシアニン化合物P7:アスペクト比(Db/Da)が7.2のC.I.Pigment Blue15:3(比較例)
《着色剤分散液の作製》
〔シアン顔料分散液の調製〕
下記の方法に従って、銅フタロシアニン化合物の分散液(以下、「シアン顔料分散液」と称す。)を調製した。
(シアン顔料分散液D1の調製)
n-ドデシル硫酸ナトリウム13質量部をイオン交換水77質量部に投入し、溶解・撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、シアントナーの着色剤として銅フタロシアニン化合物P1の10質量部を徐々に添加した。添加完了後、予備分散としてジルコニアビーズ(φ0.3mm)を充填率60%に設定した「SCミル」(日本コークス工業株式会社製)により分散処理を行い、シアン顔料微粒子の水系のシアン顔料分散液D1を調製した。
〈メジアン径D50の測定〉
得られたシアン顔料分散液D1中の顔料微粒子のメジアン径D50を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、125nmであった。
〈シアン顔料分散液の吸光度比B/Aの測定〉
また、吸光度の測定は、下記の方法に従って行った。
上記シアン顔料分散液D1の吸収スペクトルを、紫外可視分光光度計 V-530(日本分光(株)社製)を用いて、室温(25℃)で行った。
波長300~900nmの範囲内に発現した吸収スペクトルのピークのうち、波長700~750nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Aとした。このとき、吸光度Aが0.95~1.05の範囲内に収まっていない場合には、その範囲内に収まるように水で希釈し、濃度の調整を行った。
この状態で、波長600~650nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Bとし、得られた各吸光度から、吸光度比の値(B/A)を算出した。得られたシアン顔料分散液D1の吸光度比の値(B/A)は1.01であった。
〈シアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daの測定〉
上記シアン顔料分散液中にシアン顔料粒子の電子顕微鏡の画像を画像解析装置(ルーゼックス(登録商標)、株式会社ニレコ製)にて解析し、銅フタロシアニン化合物であるシアン顔料分散液中にシアン顔料粒子の一次粒子を取り囲む長方形のうち面積が最小となるもの(外接矩形)の長辺と短辺の長さの比の値からアスペクト比Db/Daを算出した。 具体的には、長辺の長さを一次粒子の長径(長軸の長さ)とし、短辺の長さを一次粒子の短径とし、10つの視野について無作為に抽出した合計500個以上のシアン顔料粒子の長短比の値(アスペクト比)の平均値を算出し、これを個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)(平均アスペクト比)として求めた。
その結果、シアン顔料分散液中にシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daは、4.1であった。
(シアン顔料分散液D2~D5の調製)
前記シアン顔料分散液D1の調製において、銅フタロシアニン化合物P1を表1のように変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液D2~D5を調製した。得られたシアン顔料分散液D2~D5のそれぞれのメジアン径D50、吸光度比及びシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daを同様の方法で測定し、得られた結果を表Iに示す。
(シアン顔料分散液D6の調製)
前記シアン顔料分散液D1の調製において、ジルコニアビーズ(φ0.3mm)の充填率を45%に変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液D6を調製した。得られたシアン顔料分散液D6のメジアン径D50、吸光度比及びシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daを同様の方法で測定し、得られた結果を表Iに示す。
(シアン顔料分散液D7の調製)
前記シアン顔料分散液D1の調製において、ジルコニアビーズ(φ0.3mm)の充填率を30%に変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液D7を調製した。得られたシアン顔料分散液D7のメジアン径D50、吸光度比及びシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daを同様の方法で測定し、得られた結果を表Iに示す。
(シアン顔料分散液D8の調製)
前記シアン顔料分散液D1の調製において、ジルコニアビーズ(φ0.3mm)の充填率を75%に変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液D7を調製した。得られたシアン顔料分散液D8のメジアン径D50、吸光度比及びシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daを同様の方法で測定し、得られた結果を表Iに示す。
(シアン顔料分散液D9及びD10の調製)
前記シアン顔料分散液D1の調製において、銅フタロシアニン化合物P1を、それぞれ銅フタロシアニン化合物P6(アスペクト比(Db/Da):1.8)、銅フタロシアニン化合物P7(アスペクト比(Db/Da):7.2)に変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液D9及びD10を調製した。得られたシアン顔料分散液D9及びD10のメジアン径D50、吸光度比及びシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daを同様の方法で測定し、得られた結果を表Iに示す。
(シアン顔料分散液D11の調製)
前記シアン顔料分散液D1の調製において、ジルコニアビーズ(φ0.3mm)の充填率を25%に変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液D11を調製した。得られたシアン顔料分散液D11のメジアン径D50、吸光度比及びシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daを同様の方法で測定し、得られた結果を表Iに示す。
(シアン顔料分散液D12の調製)
前記シアン顔料分散液D1の調製において、ジルコニアビーズ(φ0.3mm)の充填率を80%に変更した以外は同様にして、シアン顔料分散液D12を調製した。得られたシアン顔料分散液D12のメジアン径D50、吸光度比及びシアン顔料粒子のアスペクト比Db/Daを同様の方法で測定し、得られた結果を表Iに示す。
なお、各シアン顔料分散液において、表Iには記載していないが、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aは、すべて0.95~1.05の範囲内であった。
Figure 0007314530000001
〔カーボンブラック分散液の調製〕
ドデシル硫酸ナトリウム 90質量部
カーボンブラック リーガル330R(キャボット社製) 200質量部
イオン交換水 1600質量部
上記各成分を混合した溶液を、ウルトラタラックスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、超音波分散機で20分間の処理を施して、カーボンブラック微粒子の水系のカーボンブラック分散液を調製した。
得られたカーボンブラック分散液中のカーボンブラック微粒子のメジアン径D50を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定した結果、110nmであった。
〔ビニル樹脂粒子分散液の調製〕
下記の方法に従って、ビニル樹脂粒子分散液を調製した。
(第1段重合:ビニル樹脂粒子分散液(A)の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃として、下記単量体の混合液を1時間かけて滴下した。
スチレン 480.0質量部
n-ブチルアクリレート 250.0質量部
メタクリル酸 68.0質量部
n-オクチルメルカプタン 16.4質量部
滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、ビニル樹脂粒子分散液(A)を調製した。
(第2段重合:ビニル樹脂粒子分散液(B)の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱した。加熱後、上記第1段重合により調製したビニル樹脂粒子分散液(A)を固形分換算で300質量部と、下記単量体、連鎖移動剤及び離型剤を90℃にて溶解させた混合液と、を添加した。
〈混合液の調製〉
スチレン 243.0質量部
n-ブチルアクリレート 45.5質量部
2-エチルヘキシルアクリレート 45.5質量部
メタクリル酸 33.1質量部
n-オクチルメルカプタン 5.5質量部
ベヘン酸ベヘネート(離型剤、融点73℃) 130.0質量部
循環経路を有する機械式分散機(CLEARMIX;エム・テクニック社製)により、1時間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、この系を78℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、ビニル樹脂粒子分散液(B)を調製した。
(第3段重合:ビニル樹脂粒子分散液の調製)
上記第2段重合により得られたビニル樹脂粒子分散液(B)に、さらにイオン交換水400質量部を添加し、よく混合した後、過硫酸カリウム6.0質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加した。さらに、81℃の温度条件下で、下記単量体及び連鎖移動剤の混合液を90分かけて滴下した。
スチレン 354.8質量部
n-ブチルアクリレート 143.2質量部
メタクリル酸 52.0質量部
n-オクチルメルカプタン 8.0質量部
滴下終了後、85℃の温度条件下で2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂粒子分散液を調製した。
〔結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製〕
下記モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
テトラデカン二酸 440質量部
1,6-ヘキサンジオール 173質量部
次いで、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、240℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次いで、190℃まで冷却した後、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学株式会社製)に溶解し、あらかじめ調製しておいた0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液640質量部と混合した。混合液を撹拌しながら、超音波ホモジナイザーUS-150T(株式会社日本精機製作所製)によりV-LEVEL 300μAで35分間の超音波分散処理を行った。その後、40℃に加温した状態で、ダイヤフラム真空ポンプV-700(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製した。得られた分散液中の結晶性ポリエステル樹脂粒子のメジアン径D50は150nmであった。
〔非結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製〕
下記非晶性ポリエステル樹脂の単量体を、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を備えた四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 59.1質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 281.7質量部
テレフタル酸 63.9質量部
コハク酸 48.4質量部
撹拌下で、滴下ロートに入れた混合液を四つ口フラスコへ90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の単量体を除去した。その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.4質量部投入し、235℃まで昇温し、常圧下(101.3kPa)にて5時間、さらに減圧下(8kPa)にて1時間、反応を行った。
次いで、200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)にて反応を行った後、脱溶剤を行い、非晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は22000であり、酸価は15.5mgKOH/gであり、ガラス転移点(Tg)は60℃であった。
得られた非晶性ポリエステル樹脂100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、あらかじめ調製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液600質量部と混合した。混合液を撹拌しながら、超音波ホモジナイザー(US-150T)によりV-LEVEL 400μAで30分間の超音波分散処理を行った。その後、40℃に加温した状態で、ダイヤフラム真空ポンプ(V-700;BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、固形分量が13.5質量%の非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を調製した。得られた非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液中の非晶性ポリエステル樹脂粒子のメジアン径D50は110nmであった。
《トナーの作製》
〔トナー1の作製〕
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、ビニル樹脂粒子分散液を441質量部(固形分換算)、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を45質量部(固形分換算)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩を樹脂比で1質量%(固形分換算)及びイオン交換水200質量部を投入した。室温下(25℃)下で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.2に調整した。
さらに、カーボンブラック分散液50質量部(固形分換算)を投入し、塩化マグネシウム40質量部をイオン交換水40質量部に溶解させた溶液を、撹拌下、30℃において15分間かけて添加した。5分間放置した後、上記調製したシアン顔料分散液D1を4質量部(固形分換算)投入した。5分間放置した後、90分かけて81℃まで昇温し、81℃に到達後、粒子径の成長速度が0.02μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)により測定したメジアン径D50が6.1μmになるまで成長させた。6.1μmに到達したところで撹拌速度を調整して、粒子径の成長を止めつつ、トナー母体粒子前駆体の平均円形度が0.915になるまで粒子の融着を進行させた。
次いで、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液54質量部(固形分換算)を60分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、粒子径の再成長抑制のために塩化ナトリウム15質量部をイオン交換水60質量部に溶解させた水溶液を添加し、トナー母体粒子の平均円形度が0.970になるまで粒子の融着を進行させた。その後、2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した。洗浄後、35℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子を得た。
得られたトナー母体粒子100質量部に、疎水性シリカ粒子(個数平均一次粒径:12nm、疎水化度:68)0.6質量部、疎水性酸化チタン粒子(個数平均一次粒径:20nm、疎水化度:63)1.0質量部及びゾルゲルシリカ(数平均一次粒子径=110nm、)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)により回転翼周速40mm/sec、32℃で20分間混合した。混合後、45μmの目開きのふるいを用いて粗大粒子を除去し、トナー1を作製した。
〔トナー2~8の作製〕
上記トナー1の作製において、シアン顔料分散液D1を、それぞれシアン顔料分散液D2~D8に変更した以外は同様にして、トナー2~8を作製した。
〔トナー9の作製〕
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、ビニル樹脂粒子分散液を486質量部(固形分換算)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩を樹脂比で1質量%(固形分換算)及びイオン交換水200質量部を投入した。室温下(25℃)下で、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを10.2に調整した。
次いで、カーボンブラック分散液50質量部(固形分換算)を投入し、塩化マグネシウム40質量部をイオン交換水40質量部に溶解させた溶液を、撹拌下、30℃において15分間かけて添加した。5分間放置した後、シアン顔料分散液D1を4質量部(固形分換算)投入した。5分間放置した後、90分かけて85℃まで昇温し、85℃に到達後、粒子径の成長速度が0.02μm/分となるように撹拌速度を調整して、コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)により測定したメジアン径D50が6.1μmになるまで成長させた。6.1μmに到達したところで撹拌速度を調整して、粒子径の成長を止めつつ、トナー母体粒子前駆体の平均円形度が0.915になるまで粒子の融着を進行させた。
次いで、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液54質量部(固形分換算)を60分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、粒子径の再成長抑制のために塩化ナトリウム15質量部をイオン交換水60質量部に溶解させた水溶液を添加し、トナー母体粒子の平均円形度が0.970になるまで粒子の融着を進行させた。その後、2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。その後の工程は、上記トナー1の調製と同様にして、トナー9を得た。
〔トナー10~13の作製〕
トナー1の作製において、シアン顔料分散液D1を、それぞれシアン顔料分散液D9~D12に変更した以外は同様にして、トナー10~13を作製した。
《現像剤1~13の作製》
上記作製したトナー1~13のそれぞれに対し、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤1~13をそれぞれ作製した。
《現像剤の評価》
上記作製した現像剤1~13について、それぞれ620mm/min(約130枚/分)に設定した市販のフルカラー高速複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタ社製)」に搭載し、下記の各評価を実施した。
〔HH帯電量の評価〕
各現像剤を装填した上記フルカラー高速複合機を、高温高湿環境(30℃、80%RH)下に48時間放置した後に、印字率10%の帯状ベタ画像を10枚印刷した後、フルカラー高速複合機より測定用の二成分現像剤である各現像剤を0.5gサンプリングし、電界分離法により、トナー帯電量を以下の手順で測定した。
(1)現像剤0.5gをマグネットローラー上にセットし、あらかじめ質量を測定しておいた円筒の対向電極をセットした。
(2)トナー極性と同極性に3kVのバイアスを印加し、この状態でマグネットローラーを2400rpmで60秒間回転させた。
(3)上記マグネットローラーの回転終了後、対向電極間の電圧V(V)と対向電極の質量を測定し、対向電極に付着したトナーの質量M(g)と、コンデンサの容量(ここでは1μF)と対向電極間の電圧Vとの積Q(μC)より、トナー帯電量Q/M(μC/g)を算出し、これを高温高湿度環境下(HH)での帯電量であるHH帯電量(μC/g)とした。
〔HH二次転写率の測定〕
各現像剤を装填した上記フルカラー高速複合機を、高温高湿環境(30℃、80%RH)下に48時間放置した後に、印字率10%の帯状ベタ画像を10枚印刷した後、画像濃度が1.40のソリッド画像(20mm×50mm)をプリントし、その際の二次転写率を、下記計算式(A)に従って求めた。なお、中間転写ベルト上に転写されたトナー質量は、二次転写前の中間転写ベルト上のトナーを粘着テープにて回収し、質量を計測することで求めた。転写材に転写されたトナー質量は、定着器を通過する前の画像を採取し、定着前のソリッド画像のトナーに乾燥窒素を吹き付けて除去し、当該ソリッド画像を担持していた紙の当該吹き付け前後での質量の差分によって求めた。
計算式(A) 二次転写率=(転写材に転写されたトナー質量/中間転写ベルト上に転写されたトナー質量)×100(%)
〔画質の評価:粒状性GI値の測定〕
各現像剤を装填した上記フルカラー高速複合機を、高温高湿環境(30℃、80%RH)下に48時間放置した後に、印字率10%の帯状ベタ画像を形成する印刷を10万枚プリントした後、階調率32段階の階調パターンを出力し、この階調パターンの粒状性について評価した。粒状性の評価は、階調パターンのCCDによる読み取り値にMTF(Modulation Transfer Function)補正を考慮したフーリエ変換処理を施し、人間の比視感度にあわせたGI値(Graininess Index)を測定し、最大GI値を求めた。GI値は小さいほど粒状性がよい。なお、このGI値は、日本画像学会誌39(2)、84・93(2000)に掲載されている値である。
以上により得られた結果を、表IIに示す。
Figure 0007314530000002
表IIに示す結果より明らかなように、本発明のトナーは、比較例のトナーに比べて、高温高質環境下における帯電特性及び二次転写率に優れ、かつ、得られるトナー画像の画質(粒状性)に優れていることがわかる。

Claims (6)

  1. 少なくとも、結着樹脂と顔料を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    前記トナー粒子が、少なくとも結着樹脂と、前記顔料としてカーボンブラックと銅フタロシアニン化合物を含有し、
    前記銅フタロシアニン化合物の含有量が、前記トナー粒子の全質量に対して、0.3~2.0質量%の範囲内であり、
    前記銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が2.0~6.0の範囲内であり、
    前記銅フタロシアニン化合物の分散液の吸収スペクトルにおいて、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95~1.05の範囲内となるように調整し、かつ、
    前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、下記条件式(1)を満たすことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
    条件式(1) 0.90≦B/A≦1.04
  2. 前記銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が、3.0~5.0の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 前記吸光度比の値(B/A)が、下記条件式(2)を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
    条件式(2) 0.95≦B/A≦1.03
  4. 前記トナー粒子が、前記結着樹脂として、少なくともビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  5. 少なくとも、結着樹脂と顔料を含有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
    前記トナー粒子が、少なくとも結着樹脂と、前記顔料としてカーボンブラックと銅フタロシアニン化合物を含有し、
    前記銅フタロシアニン化合物の含有量が、前記トナー粒子の全質量に対して、0.3~2.0質量%の範囲内であり、
    前記銅フタロシアニン化合物の一次粒子の個数平均短径Daに対する個数平均長径Dbの比の値(Db/Da)が2.0~6.0の範囲内であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  6. 前記銅フタロシアニン化合物が、波長700~750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが0.95~1.05の範囲内にあり、かつ、
    前記最大値Aに対する波長600~650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、0.90~1.04の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の静電荷像現像用トナー。
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