JP2018091987A - シアントナー用顔料分散液及びシアントナーの製造方法 - Google Patents

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政治 松原
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隆成 萱森
直哉 舎川
Naoya Shakawa
直哉 舎川
紘司 伊沢
Koji Izawa
紘司 伊沢
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Abstract

【課題】本発明の課題は、シアン単色における色域を拡大し、高い色再現性と着色力を実現するシアントナー用顔料分散液を提供することである。
【解決手段】本発明のシアントナー用顔料分散液は、顔料、界面活性剤及び水を含有し、吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95〜1.05の範囲内となるように調整され、最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、下記条件式(I)を満たすことを特徴とする。
1.05≦B/A≦1.15・・・(I)
【選択図】なし

Description

本発明は、シアントナー用顔料分散液及びシアントナーの製造方法に関し、より詳しくは、シアン単色における色域を拡大し、高い色再現性と着色力を実現するシアントナー用顔料分散液及びシアントナーの製造方法に関する。
近年、複写機に使用されるトナーの高品質化などにより、消耗品のコストダウンの要求が高まっている。そのような中で、転写残トナーや紙間パッチを減らしてトナー消費量を低減化する方法や、トナーの着色力を上げるためにトナー中の顔料を増やし、その結果紙上のトナー量を低減するという方法が検討されてきている。
また、トナーの着色力や高い色再現性を実現する手段として、トナー中に含有される顔料微粒子を微細化し、優れた光透過性を得ることで色域を拡大するトナー製造技術確立の試みがなされている(例えば、特許文献1、2参照。)。
しかし、顔料微粒子の微分散化が過剰になると過分散を起こし、分散粒子の表面を傷つけ粘度が上がってしまうことがある。さらに、微粒子のもつ1次粒子の構造が破壊され、有機顔料本来の性質が損なわれてしまうことがある。
このような現象に対して、分散剤を多量に用いて対処することが考えられるが、組成物中における有機顔料(Pigment)の含有量(P)に対する分散剤(Dispersant)の含有量(D)の比率(D/P比)が大きくなり、重合トナー作製時の製造性の低下や排水中の分散剤の処理に負荷をかけてしまう懸念を生じる。そのような状態を生じさせないために粘度や分散径を確認していたが、微分散化した分散液の評価(分散径など)の結果の信頼性が低下し、分散の進行の程度の判断が困難となるため、色再現性の向上のためにもより正確な指標が求められるようになってきた。
また、微小ビーズを用い軸配位子含有着色剤化合物の顔料を微分散化して、シアントナーの着色剤として用いることで色相、彩度が良好で、色再現範囲を広くする試みもなされている(例えば、特許文献3参照。)。
しかし、これは微分散化しても凝集力が強くなりにくい構造を顔料自身が有していることにより達成できているものであり、条件が制限されている。
特開平6−266161号公報 特開2007−298912号公報 特開2012−68437号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、シアン単色における色域を拡大し、高い色再現性と着色力を実現するシアントナー用顔料分散液及びシアントナーの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが0.95〜1.05の範囲内となるように調整されているとき、最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比(吸光度比:B/A)を特定の数値範囲内とすることにより、シアン単色における色域を拡大し、高い色再現性と着色力を実現するシアントナー用顔料分散液及びシアントナーの製造方法を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.顔料、界面活性剤及び水を含有するシアントナー用顔料分散液であって、
吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95〜1.05の範囲内となるように調整され、
前記最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、下記条件式(I)を満たすことを特徴とするシアントナー用顔料分散液。
1.05≦B/A≦1.15・・・(I)
2.前記顔料として、銅フタロシアニンを含有することを特徴とする第1項に記載のシアントナー用顔料分散液。
3.結着樹脂及び顔料を含むトナー母体粒子を含有するシアントナーの製造方法であって、
前記結着樹脂を含む樹脂分散液を調製する工程と、
第1項又は第2項に記載の前記シアントナー用顔料分散液を調製する工程と、
前記樹脂分散液と前記シアントナー用顔料分散液とを混合し、結着樹脂微粒子と顔料微粒子とを凝集・融着させてトナー母体粒子を形成する工程と、
を有し、
前記顔料を、前記結着樹脂(100質量%)に対し、4.0〜6.5質量%の範囲内で含有させることを特徴とするシアントナーの製造方法。
4.前記シアントナー用顔料分散液を調製する工程では、遠心分離方式により前記顔料微粒子を分散して、前記シアントナー用顔料分散液を調製することを特徴とする第3項に記載のシアントナーの製造方法。
本発明の上記手段により、シアン単色における色域を拡大し、高い色再現性と着色力を実現するシアントナー用顔料分散液及びシアントナーの製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
分散開始時において、顔料微粒子の多くは2次粒子となっている。この2次粒子を分散機を用いて微細化を進めていくと、徐々に1次粒子へと微細化されていく。これに伴い、顔料分散液の吸収スペクトルは、凝集体である2次粒子に由来する波形から1次粒子に由来する波形へと変化していく。
ここで、更にエネルギーを投入していくと、吸収スペクトルの波形は更に変化してしまう。これは、更なるエネルギーの投入により、1次粒子をも傷つけ過分散を起こしてしまい、粒子サイズが更に小さいものを生じるためと考えられる。
微分散化においては、顔料由来の二つの極大ピークが600nm付近と700nm付近に観測され、この強度が変化していく。波長600〜650nmの吸収が1次粒子由来の吸収(例えば、銅フタロシアニン)であり、波長700〜750nm付近の吸収が2次粒子由来の吸収であると考えている。分散が進むにつれて2次粒子が減っていく。一方、600〜650nmの吸収が増加するため、この波長の補色である青緑(シアン)色が知覚されるようになっていくものと考えられる。
そこで、本発明においては、吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aを0.95〜1.05の範囲内となるように調整し、最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)を、条件式(I)を満たすようにすることで、過分散を起こすことなく、十分に1次粒子として分散した状態とすることができ、トナー化した際に好ましい色相を示すものと考えている。
従来、顔料微粒子の分散の経過は、光散乱を用いた粒度分布測定装置(例えば、日機装(株)製、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計UPA−EX)を使用して粒度分布を測定し分散状態を判断していたが、一般的な有機顔料は針状結晶のものが多く、その形状や分散の分布により測定結果が大きくばらつくことがよくあった。そのため、分散状態の正確な把握には電子顕微鏡写真などを必要とするが、その場合、判断までに大きく時間を要してしまう。時間をかけることができないような状況では、測定回数を増やすなどしてデータの確度を高めるなどしてきた。しかし、本発明のシアントナー用顔料分散液によれば、吸収スペクトルという短時間、簡便な測定で分散状態を判断でき、その再現性も高いため、生産工程において安定して顔料分散液を調製することが可能となる。
本発明のシアントナー用顔料分散液は、吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95〜1.05の範囲内となるように調整され、最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が条件式(I)を満たすことを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、色域の再現性の観点から、顔料として銅フタロシアニンを含有することが好ましい。
また、結着樹脂及び顔料を含むトナー母体粒子を含有するシアントナーの製造方法であって、結着樹脂を含む樹脂分散液を調製する工程と、上記シアントナー用顔料分散液を調製する工程と、樹脂分散液とシアントナー用顔料分散液とを混合し、結着樹脂微粒子と顔料微粒子とを凝集・融着させてトナー母体粒子を形成する工程と、を有し、顔料を、結着樹脂(100質量%)に対し、4.0〜6.5質量%の範囲内で含有させるシアントナーの製造方法を提供することができる。
本発明の実施態様としては、顔料微粒子の凝集を抑制できる観点から、シアントナー用顔料分散液を調製する工程では、遠心分離方式により顔料微粒子を分散して、シアントナー用顔料分散液を調製することが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《シアントナー用顔料分散液》
本発明のシアントナー用顔料分散液は、少なくとも顔料、界面活性剤及び水を含有し、吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが0.95〜1.05の範囲内となるように調整され、最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、下記条件式(I)を満たすことを特徴とする。
1.05≦B/A≦1.15・・・(I)
吸光度比(B/A)が1.05より小さいと、十分な着色力が得られず、吸光度比(B/A)が1.15より大きいと、色域の再現性が低下する。
〈シアントナー用顔料分散液の吸収スペクトルの測定〉
シアントナー用顔料分散液の吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計 V−530(日本分光(株)社製)を用いて、室温(25℃)で行う。
波長300〜900nmの範囲内に発現した吸収スペクトルのピークのうち、波長700〜750nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Aとする。このとき、吸光度Aが0.95〜1.05の範囲内に収まっていない場合には、その範囲内に収まるように水で希釈し、濃度の調整を行う。
この状態で、波長600〜650nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Bとする。得られた各吸光度から、吸光度比の値(B/A)を算出する。
〈顔料〉
本発明に係る顔料は、いわゆる着色剤である。
顔料としては、公知のシアン顔料が使用可能であり、好ましくはフタロシアニン系顔料が挙げられ、その中でも銅フタロシアニンがより好ましい。
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、同60などが使用される。
顔料のシアントナー用顔料分散液に占める割合(添加量)は、好ましくは5〜30質量%の範囲内であり、より好ましくは10〜20質量%の範囲内である。
なお、顔料分散液中には、必要に応じて、本発明の作用効果を損なわない範囲内で他のシアン顔料が含有されてもよい。
〈界面活性剤〉
本発明に係る界面活性剤は、顔料の分散を促進する分散剤として機能するものである。界面活性剤は、分散させた微粒子の凝集を防ぐのに有用である。
界面活性剤としては、公知の種々のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデイシルトリメチルアンオニウムブロマイド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノリルフェニルポリキオシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、スチリルフェニルポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
これら界面活性剤は、所望に応じて、1種単独で使用されてもよいし、又は2種以上が組み合わされ使用されてもよい。
界面活性剤のシアントナー用顔料分散液に占める割合(添加量)は、好ましくは臨界ミセル濃度以上であり、例えば0.3〜1.0質量%の範囲内である。
〈水〉
本発明に係る水は、顔料の分散媒となるものである。
水としては、顔料分散液に使用される公知の水が使用可能であり、好ましくはイオン交換水が使用される。
〈シアントナー用顔料分散液の特性〉
(個数平均粒径)
シアントナー用顔料分散液中の顔料微粒子の個数平均粒径は、80〜250nmの範囲内であることが好ましく、80〜150nmの範囲内であることがより好ましい。
ここで、シアントナー用顔料分散液中の顔料微粒子の「個数平均粒径」とは、顔料微粒子の微細化を示す指標となるものであって、具体的には、動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて下記条件下で測定して得られた測定値である。
サンプル屈折率 1.51
サンプル比重 1.5(球状粒子換算)
溶媒屈折率 1.33
溶媒粘度 0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 測定セルにイオン交換水を投入し調整する。
シアントナー用顔料分散液では、顔料微粒子が過分散を起こさなければ、顔料微粒子が細かいほうが有機顔料としての性能を発揮しやすい。
個数平均粒径が80nm以上であれば、トナー作製時に凝集体が形成されにくく、着色力が低下することがない。個数平均粒径が250nm以下であれば、顔料微粒子が分散しやすく、色再現性及び着色力が向上する。
《シアントナー》
本発明に係るシアントナーは、少なくとも、結着樹脂及び顔料を含むトナー母体粒子を含有する。
〈トナー母体粒子〉
本発明に係るトナー母体粒子は、少なくとも結着樹脂と顔料とを含んで構成されている。
本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子といい、トナー母体粒子又はトナー粒子の集合体をトナーという。トナー母体粒子は、一般的には、そのままでもトナー粒子として用いることもできるが、本発明においては、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをトナー粒子として用いる。
(顔料)
顔料としては、上述したように、公知のシアン顔料が使用可能である。
顔料は、後述する結着樹脂(100質量%)に対し、4.0〜6.5質量%の範囲内で含有されている。
(結着樹脂)
本発明に係るシアントナーは、上記顔料とともに結着樹脂を含んで構成されている。
結着樹脂としては、シアントナーに用いられている従来のものを用いることができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体、スチレン・p−クロロスチレン共重合体、スチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ビニルトルエン共重合体、スチレン・ビニルナフタレン共重合体、スチレン・アクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリル酸エチル共重合体、スチレン・アクリル酸ブチル共重合体、スチレン・アクリル酸オクチル共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・メタクリル酸エチル共重合体、スチレン・メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン・α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ビニルメチルケトン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・アクリロニトリル・インデン共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。
低い温度でトナー画像を定着させる低温定着性の観点からは、結着樹脂として、少なくともポリエステル樹脂を用いることが好ましい。また、低温定着性及びトナーの耐熱保存性の観点からは、結着樹脂として非晶性樹脂(特に、非晶性ポリエステル樹脂)を用いるか、あるいは非晶性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを組み合わせて用いることが好ましく、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを組み合わせて用いることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントとが化学的に結合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)及び非晶性樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
結着樹脂中、ハイブリッド樹脂や結晶性ポリエステル樹脂は分散相(ドメイン)を形成し、非晶性樹脂(特に、非晶性ポリエステル樹脂)は連続相(マトリックス)を形成する相分離構造を有している。なお、結着樹脂が上記のような特定の相分離構造を有していることは、例えば、トナーを必要に応じて四酸化オスミウム等で着色して、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)で観察などを行うことによって確認できる。
このような特定の相分離構造の形成は、ハイブリッド樹脂又は結晶性ポリエステル樹脂(以下、ハイブリッド樹脂等ともいう。)及び非晶性樹脂の分子構造や、上記樹脂の含有量に依存する。上記特定の相分離構造を形成するため、結着樹脂を構成するハイブリッド樹脂等の含有量は、結着樹脂の全量に対して、20質量%以上60質量%未満であることが好ましい。また、上記範囲内とすることにより、ハイブリッド樹脂等の添加による各種物性の向上効果が得やすくなる。特に、低温定着性及び帯電均一性をより向上させるという観点からは、30質量%以上50質量%未満であることがより好ましく、30質量%以上45質量%未満であることが更に好ましい。なお、トナーからのハイブリッド樹脂等の単離・抽出方法としては、例えば特許第3869968号等に記載の方法(ソックスレー抽出器を用いた方法)を採用することができ、これにより含有割合を特定することができる。
一方、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂の含有量は、結着樹脂の全量に対して、40質量%以上80質量%未満であることが好ましい。さらに、非晶性樹脂の含有量は、結着樹脂の全量に対して、50質量%以上70質量%未満とすることがより好ましく、55質量%以上70質量%未満であることが更に好ましい。なお、結着樹脂中に含まれる樹脂としては、ハイブリッド樹脂等及び非晶性樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、好ましくは結着樹脂はハイブリッド樹脂等及び非晶性樹脂からなる。
結着樹脂として、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂とを組み合わせて用いる場合には、ハイブリッド樹脂が分散相を形成し、非晶性樹脂が連続相を形成する相分離構造を有し、トナーの示差走査熱量測定(DSC)における1回目の昇温過程におけるハイブリッド樹脂由来の吸熱ピークの温度をTm1(℃)とし、吸熱ピークに基づく吸熱量をΔH1(J/g)とし、2回目の昇温過程における吸熱ピークに基づく吸熱量をΔH2(J/g)としたとき、下記式(1)及び(2)の関係を満たすことが好ましい。
0.95<ΔH2/ΔH1・・・(1)
55≦Tm1≦80・・・(2)
上記式(1)に示されるΔH2/ΔH1の値は、大きいほどハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が抑制されていることを示し、その上限は1である。したがって、上記式(1)のように、ΔH2/ΔH1の値が0.95よりも大きいとき、結着樹脂中に含まれるハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶は抑制された状態にある。したがって、加熱定着後も可塑化することなく、良好な画像保存性が保持される。一方で、相溶が抑制された状態にある場合、上述のとおり、帯電均一性や機械的強度が低下することがあるが、結着樹脂が非晶性樹脂セグメントを含むハイブリッド樹脂を含むことにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性が良好となる。これにより、画像保存性を損なうことなく、帯電均一性や機械的強度をバランスよく向上させることができる。
さらに、ΔH2/ΔH1の値が0.95よりも大きいと、結着樹脂中のハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が抑制されているため、当該非晶性樹脂の可塑化が不十分となりやすく、結果として低温定着性が損なわれる懸念がある。しかしながら、ハイブリッド樹脂を用いることにより、非晶性樹脂を適度に軟化させることができるため、低温定着性もまた優れる。
上記ΔH2/ΔH1の値は、画像保存性を向上させるという観点から、0.96よりも大きいことが好ましい。一方、帯電均一性を向上させるという観点から、ΔH2/ΔH1の値は、0.99未満であることが好ましく、0.98未満であるとより好ましい。すなわち、0.96<ΔH2/ΔH1<0.99であると好ましく、0.96<ΔH2/ΔH1<0.98であるとより好ましい。
上記式(2)に示されるTm1の値は、ハイブリッド樹脂の融点であり、当該融点が上記式(2)の範囲内であると、トナーを十分に軟化させることができ、十分な低温定着性を確保することができる。種々の特性をバランスよく向上させるという観点から、上記Tm1の値は、下記式(3)の関係を満たすことがより好ましい。
70≦Tm1≦80・・・(3)
さらに、Tm1は、78℃以下であることが特に好ましい。すなわち、70≦Tm1≦78であることが特に好ましい。
以下、結晶性ポリエステル樹脂等及び非晶性樹脂について、それぞれ説明する。
(1)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂
(1.1)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントとが化学的に結合した樹脂である。
上記において、結晶性ポリエステル樹脂セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントとは、ポリエステル以外の非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
(1.1.1)結晶性ポリエステル樹脂セグメント
結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、トナーの示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂セグメントをいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/minで測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、その樹脂は、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂セグメントを有するハイブリッド樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントは、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分から生成される。この際、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを構成する多価カルボン酸成分の炭素数C(acid)及び多価アルコール成分の炭素数C(alcohol)は、下記式(4)〜(6)の関係を満たすことが好ましい。
0≦|C(acid)−C(alcohol)|≦4・・・(4)
6≦C(acid)・・・(5)
6≦C(alcohol)・・・(6)
上記を満たす多価カルボン酸及び多価アルコールを用いることにより、ΔH1、ΔH2及びTm1を上記式(1)及び(2)の関係を満たすように調整しやすくなる。また、多価カルボン酸成分の炭素数C(acid)及び多価アルコール成分の炭素数C(alcohol)の上限は特に制限されないが、C(acid)は20以下、C(alcohol)は20以下であることが好ましい。
上記式(4)を満たすことにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの分子鎖の規則性が高まり、結晶性がより高くなる。また、上記式(5)及び(6)を満たすことにより、異なる分子間での結晶性ポリエステル樹脂セグメント同士の相互作用が増大し、結晶性がより高くなる。
なお、多価カルボン酸成分を2種以上含有する場合、上記C(acid)は、最も含有量の多い多価カルボン酸成分の炭素数とする。同量の場合は、炭素数が最も大きい多価カルボン酸成分の炭素数をC(acid)とする。
同様に、多価アルコール成分を2種以上含有する場合、上記C(alcohol)は、最も含有量の多い多価アルコール成分の炭素数とする。同量の場合は、炭素数が最も大きい多価アルコール成分の炭素数をC(alcohol)とする。
さらに、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分をともに2種以上含有する場合は、いずれか1種の多価カルボン酸成分の炭素数と、いずれか1種の多価アルコール成分の炭素数との関係において上記式(4)を満たしていれば、すべて上記式(4)を満たす形態に包含される。
また、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、以下では、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、上述の結晶性の向上効果が得られやすいことから、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸とともに用いることのできる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するためのジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸の含有量を50モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは100モル%である。ジカルボン酸成分における脂肪族ジカルボン酸の含有量を50モル%以上とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの結晶性を十分に確保することができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。脂肪族ジオールとしては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジオール成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、上述の結晶性の向上効果が得られやすいことから、炭素数2〜12の脂肪族ジオールであることが好ましく、上記式(6)を満たす脂肪族ジオール、すなわち炭素数6〜12の脂肪族ジオールがより好ましい。
必要に応じて用いられる脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量を50モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは70モル%以上であり、更に好ましくは80モル%以上であり、特に好ましくは100モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量を50モル%以上とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの結晶性を確保することができ、製造されるトナーに優れた低温定着性が得られるとともに最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]を、1.5/1〜1/1.5とすることが好ましく、更に好ましくは1.2/1〜1/1.2である。ジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率が上記範囲内にあることにより、ΔH1、ΔH2及びTm1を上記式(1)及び(2)の関係を満たすように調整しやすくなる。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントの形成方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該セグメントを形成することができる。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントの製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、アミン化合物等が挙げられる。
具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等などを挙げることができる。
チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。
アルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。
これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合温度は特に限定されるものではないが、150〜250℃の範囲内であることが好ましい。
また、重合時間は特に限定されるものではないが、0.5〜10時間とすることが好ましい。
重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量に対して80質量%以上98質量%未満であることが好ましい。さらに、上記含有量は、90質量%以上95質量%未満であることがより好ましく、91質量%以上93質量%未満であることが更に好ましい。上記範囲内とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
なお、ハイブリッド樹脂中の各セグメントの構成成分及び含有割合は、例えばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定により特定することができる。
ここで、ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントの他に、以下で詳述するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントを含む。ハイブリッド樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメント及びポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であることが好ましい。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
さらに、上記観点からは、結晶性ポリエステル樹脂セグメントが、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントを主鎖として、グラフト化されていることが好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖としてポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメントを有し、側鎖として結晶性ポリエステル樹脂セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。
上記形態とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの配向をより高めることができ、ハイブリッド樹脂の結晶性を向上させることができる。結果として、上記式(1)を満たすΔH1及びΔH2を有するハイブリッド樹脂を得やすくなる。
なお、ハイブリッド樹脂には、更にスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、結晶性ポリエステル樹脂セグメント中でもよいし、以下で詳説するポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント中であってもよい。
(1.1.2)ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント(単に「非晶性樹脂セグメント」ともいう。)は、結着樹脂を構成する非晶性樹脂とハイブリッド樹脂との親和性を制御するために必須のセグメントである。非晶性樹脂セグメントが存在することで、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性が向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、帯電均一性等を向上させることができる。
非晶性樹脂セグメントは、上記ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分である。ハイブリッド樹脂中(更には、トナー中)に非晶性樹脂セグメントが含有されていることは、例えばNMR測定、メチル化反応P−GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
また、非晶性樹脂セグメントは、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂セグメントである。このとき、当該セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について、DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg1)が、30〜80℃の範囲内であることが好ましく、特に40〜65℃の範囲内であることが好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg1)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
非晶性樹脂セグメントは、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、非晶性樹脂セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性樹脂セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂を含むトナーが上記のような非晶性樹脂セグメントを有するものであれば、その樹脂は、本発明でいう非晶性樹脂セグメントを有するハイブリッド樹脂に該当する。
非晶性樹脂セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(すなわち、ハイブリッド樹脂以外の樹脂)と同種の樹脂で構成されることが好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との親和性がより向上し、ハイブリッド樹脂が非晶性樹脂中に更に取り込まれやすくなり、帯電均一性等がより一層向上する。また、ΔH1及びΔH2の値を制御しやくなる。
ここで、「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合が共通に含まれていることを意味する。ここで、「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を指す。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。さらに例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は樹脂セグメント)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。したがって、これらは同種の樹脂である。
非晶性樹脂セグメントを構成する樹脂成分は特に制限されないが、例えば、ビニル樹脂セグメント、ウレタン樹脂セグメント、ウレア樹脂セグメントなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性を制御しやすいという理由から、ビニル樹脂セグメントが好ましい。
ビニル樹脂セグメントとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂セグメント、スチレン・アクリル酸エステル樹脂セグメント、エチレン・酢酸ビニル樹脂セグメントなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂セグメントのなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・アクリル酸エステル樹脂セグメント(スチレン・アクリル樹脂セグメント)が好ましい。したがって、以下では、非晶性樹脂セグメントとしてのスチレン・アクリル樹脂セグメントについて説明する。
スチレン・アクリル樹脂セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH=CH−Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものを含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物やメタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
以下に、スチレン・アクリル樹脂セグメントの形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレン・アクリル樹脂セグメントの形成に使用可能なものは以下に示すものに限定されるものではない。
先ず、スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、1種単独でも、又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」を総称したもので、例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」を総称したものである。
これらのアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。すなわち、スチレン単量体と2種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と2種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
非晶性樹脂セグメント中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂セグメントの全量に対し、40〜90質量%の範囲内であることが好ましい。また、非晶性樹脂セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂セグメントの全量に対し、10〜60質量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、ハイブリッド樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
さらに、非晶性樹脂セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントに化学的に結合するための化合物もまた付加重合されて構成されていることが好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル樹脂セグメントに含まれる、多価アルコール由来のヒドロキシ基(−OH)又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基(−COOH)とエステル結合する化合物を用いると好ましい。すなわち、非晶性樹脂セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基(−COOH)又はヒドロキシ基(−OH)を有する化合物を更に重合して構成されていることが好ましい。
このような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
非晶性樹脂セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有率は、非晶性樹脂セグメントの全量に対し、0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・アクリル樹脂セグメントの形成方法は、特に制限されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。
油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
非晶性樹脂セグメントの含有量は、ハイブリッド樹脂の全量に対して、3質量%以上15質量%未満であることが好ましい。さらに、上記含有量は、5質量%以上10質量%未満であることがより好ましく、7質量%以上9質量%未満であることが更に好ましい。上記範囲内とすることにより、ハイブリッド樹脂に十分な結晶性を付与することができ、上記式(1)の関係を満たすための結着樹脂を得ることができる。なお、ΔH1及びΔH2は、結着樹脂中におけるハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との含有比率や、結晶性ポリエステル樹脂セグメント及び非晶性樹脂セグメントの化学構造等に依存するものであるが、特に、ハイブリッド樹脂中の非晶性樹脂セグメントの含有量比を上記範囲内とすることにより、上記式(1)を満たすための結着樹脂を容易に得ることができる。
(1.1.3)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)の製造方法
本発明に係る結着樹脂に含まれるハイブリッド樹脂の製造方法は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとを分子結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法(I)〜(III)が挙げられる。
(I)非晶性樹脂セグメントをあらかじめ重合しておき、当該非晶性樹脂セグメントの存在下で結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、上述した非晶性樹脂セグメントを構成する単量体(好ましくは、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体といったビニル単量体)を付加反応させて非晶性樹脂セグメントを形成する。次に、非晶性樹脂セグメントの存在下で、多価カルボン酸と多価アルコールとを重合反応させて結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する。このとき、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させるとともに、非晶性樹脂セグメントに対し、多価カルボン酸又は多価アルコールを付加反応させることにより、ハイブリッド樹脂が形成される。
上記方法において、結晶性ポリエステル樹脂セグメント又は非晶性樹脂セグメント中に、これらセグメントが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。具体的には、非晶性樹脂セグメントの形成時、非晶性樹脂セグメントを構成する単量体の他に、結晶性ポリエステル樹脂セグメントに残存するカルボキシ基(−COOH)又はヒドロキシ基(−OH)と反応可能な部位及び非晶性樹脂セグメントと反応可能な部位を有する化合物を使用する。すなわち、この化合物が結晶性ポリエステル樹脂セグメント中のカルボキシ基(−COOH)又はヒドロキシ基(−OH)と反応することにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントは非晶性樹脂セグメントと化学的に結合することができる。
もしくは、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの形成時、多価アルコール又は多価カルボン酸と反応可能であり、かつ、非晶性樹脂セグメントと反応可能な部位を有する化合物を使用してもよい。
上記の方法を用いることにより、非晶性樹脂セグメントに結晶性ポリエステル樹脂セグメントが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(II)結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する。また、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成する反応系とは別に、上述した非晶性樹脂セグメントを構成する単量体を付加重合させて非晶性樹脂セグメントを形成する。このとき、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、上記で形成した結晶性ポリエステル樹脂セグメントと、非晶性樹脂セグメントとを反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
また、上記反応可能な部位が結晶性ポリエステル樹脂セグメント及び非晶性樹脂セグメントに組み込まれていない場合は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが共存する系を形成しておき、そこへ結晶性ポリエステル樹脂セグメント及び非晶性樹脂セグメントと結合可能な部位を有する化合物を投入する方法を採用してもよい。そして、当該化合物を介して、結晶性ポリエステル樹脂セグメントと非晶性樹脂セグメントとが分子結合した構造のハイブリッド樹脂を形成することができる。
(III)結晶性ポリエステル樹脂セグメントをあらかじめ形成しておき、当該結晶性ポリエステル樹脂セグメントの存在下で非晶性樹脂セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド樹脂を製造する方法
この方法では、まず、多価カルボン酸と多価アルコールとを縮合反応させて重合を行い、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを形成しておく。次に、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの存在下で、非晶性樹脂セグメントを構成する単量体を重合反応させて非晶性樹脂セグメントを形成する。このとき、上記(I)と同様に、結晶性ポリエステル樹脂セグメント又は非晶性樹脂セグメント中に、これらセグメントが互いに反応可能な部位を組み込んでおくと好ましい。なお、このような反応可能な部位を組み込む方法は、上述のとおりであるため、その詳細な説明は省略する。
上記の方法を用いることにより、結晶性ポリエステル樹脂セグメントに非晶性樹脂セグメントが分子結合した構造(グラフト構造)のハイブリッド樹脂を形成することができる。
上記(I)〜(III)の形成方法の中でも、(I)の方法は非晶性樹脂鎖に結晶性ポリエステル樹脂鎖をグラフト化した構造のハイブリッド樹脂を形成しやすいことや生産工程を簡素化できるため好ましい。(I)の方法は、非晶性樹脂セグメントをあらかじめ形成してから結晶性ポリエステル樹脂セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、トナーに適したハイブリッド樹脂を確実に形成することができるので好ましい。
(1.2)結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、特に制限されるものではなく、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂を幅広く適用することができる。ここで、結晶性ポリエステル樹脂とは、上記したポリエステル樹脂のうち、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。
結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されず、例えば、結晶性ポリエステル樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂について、この樹脂が上記のように明確な吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
結晶性ポリエステル樹脂のゲル浸透クロマトグラフ分析装置(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2000〜20000の範囲内である。このような範囲内であると、得られるトナー粒子が粒子全体として融点の低いものにならず耐ブロッキング性に優れ、また、低温定着性にも優れる。
結晶性ポリエステル樹脂の示差走査熱量測定装置(DSC)による融点(Tm)は、50℃以上120℃未満であることが好ましく、60℃以上90℃未満であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の融点が上記範囲内にあることにより、低温定着性及び定着分離性が適切に得られるため好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、DSCにより測定される吸熱ピーク温度を結晶性ポリエステル樹脂の融点とする。例えば、結晶性ポリエステル樹脂のTmは、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量測定装置を用いて得ることができる。この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、液体窒素を用いて200℃から0℃まで−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行う。2度目の昇温時の吸熱曲線から解析を行い、結晶性ポリエステル樹脂の極大ピークより吸熱ピーク温度を算出し、かかる吸熱ピーク温度をTmとすることができる。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価(酸価AV)は5〜45mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは5〜30mgKOH/gの範囲内である。酸価が45mgKOH/g以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行いやすい点で好ましい。
ここで、酸価は、ポリエステル樹脂1gに含まれる酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmgで表したものである。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K 0070:1966に準じて求めることができる。なお、以下、他の樹脂の酸価は、上記と同様にして求めることができる。
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分から生成される。多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2〜3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、以下では特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸を併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖型のものを用いることが好ましい。直鎖型のものを用いることによって、結晶性が向上するという利点がある。ジカルボン酸成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22である直鎖型の脂肪族ジカルボン酸を用いることがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ドデカンジカルボン酸(1,10−ドデカン二酸)、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
上記の脂肪族ジカルボン酸の中でも、入手容易性の観点から、炭素原子の数が6〜14である直鎖型の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、アジピン酸、1,8−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ドデカンジカルボン酸(1,10−ドデカン二酸)であることがより好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸を用いることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の使用量は、結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジカルボン酸成分全体を100モル%とした場合の80モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは100モル%である。脂肪族ジカルボン酸の使用量を80モル%以上とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができ、製造されるトナーに優れた低温定着性が得られ、最終的に形成される画像に光沢性が得られるとともに融点降下による画像保存性の低下が抑制され、更に、当該結晶性ポリエステル樹脂を含む油相液を用いて油滴を形成させるときに、確実に乳化状態を得ることができる。
また、ジオール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましく、必要に応じて脂肪族ジオール以外のジオールを含有させてもよい。ジオール成分としては、脂肪族ジオールの中でも、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜22である直鎖型の脂肪族ジオールを用いることがより好ましい。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点、確実な低温定着性の発現という観点から、主鎖を構成する炭素原子の数が2〜14のものが好ましい。
ジオール成分としては、分岐型の脂肪族ジオールを用いることもできるが、この場合、結晶性の確保の観点から、直鎖型の脂肪族ジオールとともに使用し、かつ、当該直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにして使用することが好ましい。このように直鎖型の脂肪族ジオールの割合を高めにして使用することによって、結晶性が確保されて製造されるトナーに優れた低温定着性が確実に得られ、最終的に形成される画像において融点降下による画像保存性の低下が抑制され、更には耐ブロッキング性が確実に得られる。
ジオール成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
結晶性ポリエステル樹脂を形成するためのジオール成分としては、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは90モル%以上であり、更に好ましくは100モル%である。ジオール成分における脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を確保することができ、製造されるトナーに優れた低温定着性が得られるとともに最終的に形成される画像に光沢性が得られる。
脂肪族ジオール以外のジオールとしては、二重結合を有するジオール、スルホン酸基を有するジオールなどが挙げられ、具体的には、二重結合を有するジオールとしては、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオールなどが挙げられる。ジオール成分における二重結合を有するジオールの含有量は20モル%以下とすることが好ましい。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコール、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど3価のアルコールも併用することができる。
結晶性ポリエステル樹脂は、前記の構成成分の中から任意の組合せで、従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は組み合せて用いることができる。
具体的には、重合温度140〜270℃の範囲内で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるとよい。
上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシ基[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]を、1.5/1〜1/1.5の範囲内とすることが好ましく、更に好ましくは1.2/1〜1/1.2の範囲内である。ジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率が上記範囲内にあることにより、所望の分子量を有する結晶性ポリエステル樹脂を確実に得ることができる。
結晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒は、後述する非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒と同様のものを用いることができる。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー全体(100質量%)に対して通常1〜40質量%の範囲内、好ましくは5〜20質量%の範囲内となる量とすることが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の添加量が40質量%以下であると、外添剤の埋没やフィルミングなどの発生が少ない。また、1質量%以上であると低温定着性向上の効果が効果的に得られる。
(2)非晶性樹脂
非晶性樹脂は、上記ハイブリッド樹脂とともに結着樹脂を構成する。非晶性樹脂は、特に限定されるものではないが、当該樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
DSC測定において1度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg1とし、2度目の昇温過程におけるガラス転移温度をTg2としたとき、非晶性樹脂のTg1は35〜80℃の範囲内であることが好ましく、特に45〜65℃の範囲内であることが好ましい。また、非晶性樹脂のTg2は20〜70℃の範囲内であることが好ましく、特に30〜55℃の範囲内であることが好ましい。
非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg1及びTg2)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量測定装置を用いて得ることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、液体窒素を用いて200℃から0℃まで−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行う。各昇温時の吸熱曲線から解析を行い、非晶性樹脂(特に非晶性ポリエステル樹脂)のオンセット温度をTg1及びTg2とする。
非晶性樹脂は、上記「(1.1.2)ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント」の項に記載のセグメントを構成する樹脂成分を含んでいることが好ましい。すなわち、非晶性樹脂は、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などであることが好ましい。さらに、非晶性樹脂は、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂等といった、非晶性ポリエステル樹脂であってもよい。
結着樹脂に含まれる非晶性樹脂は、ハイブリッド樹脂の非晶性樹脂セグメントと同種の樹脂で構成されることが好ましい。ここで、「同種の樹脂で構成される」とは、同種の樹脂のみからなる形態であってもよいし、又は、同種の樹脂のみならず、他の非晶性樹脂を含む形態であってもよい。ただし、同種の樹脂と他の非晶性樹脂とを含む形態の場合、当該同種の樹脂の含有量は、非晶性樹脂全量に対して15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
さらに、非晶性樹脂は、ハイブリッド樹脂等の非晶性樹脂セグメントと同種の樹脂に由来するセグメントと、他の非晶性樹脂に由来するセグメントを有する共重合体であってもよい。このとき、共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれであってもよいが、ハイブリッド樹脂等との相溶性を制御しやすいという観点から、グラフト共重合体であることが好ましい。ただし、この場合、ハイブリッド樹脂等の非晶性樹脂セグメントと同種の樹脂に由来するセグメントの含有量は、非晶性樹脂全量に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
なお、「同種の樹脂」に係る定義は、上記「(1.1.2)ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント」の項において説明したため、詳細な説明を省略する。
非晶性樹脂は、その可塑性を制御しやすいという観点から、重量平均分子量(Mw)が、5000〜150000の範囲内であることが好ましく、10000〜70000の範囲内であることがより好ましい。
非晶性樹脂として用いられる樹脂は、上記の樹脂の中でも、ビニル樹脂及びスチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂であることが好ましい。これらの樹脂は、特にハイブリッド樹脂の非晶性樹脂セグメントがビニル樹脂セグメントである場合において、ハイブリッド樹脂との相溶性を制御しやすく、また、ΔH1及びΔH2の値を制御しやすいという点で好適である。
したがって、以下では、ビニル樹脂及びスチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂について説明する。
(2.1)ビニル樹脂
非晶性樹脂としてビニル樹脂を用いる場合、ビニル樹脂としては、ビニル化合物を重合したものであれば特に制限されないが、例えば、アクリル酸エステル樹脂、スチレン・アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のビニル樹脂のなかでも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン・アクリル酸エステル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)が好ましい。スチレン・アクリル樹脂を構成する単量体としては、上記「(1.1.2)ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント」の項において、スチレン・アクリル樹脂セグメントを構成する単量体として挙げた化合物と同様のものが使用できる。
よって、詳細な説明を省略するが、スチレン単量体としてはスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルが挙げられる。これらスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
また、他の単量体が重合されていてもよく、その例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン・アクリル樹脂中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、40〜90質量%の範囲内であることが好ましい。また、スチレン・アクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、10〜60質量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、非晶性樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
スチレン・アクリル樹脂中の上記他の単量体に由来する構成単位の含有率は、スチレン・アクリル樹脂の全量に対し、0.5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。
スチレン・アクリル樹脂の製造方法は、特に制限されず、上記「(1.1.2)ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント」の項において説明した、スチレン・アクリル樹脂セグメントの形成方法と同様の方法によって製造することができる。
(2.2)スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂(非晶性ポリエステル樹脂)
非晶性樹脂として、非晶性のスチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂を用いてもよい。ここで、「スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂」とは、非晶性のポリエステル分子鎖(以下、ポリエステルセグメントとも称する。)に、スチレン・アクリル共重合体分子鎖(以下、スチレン・アクリル共重合体セグメントとも称する。)を分子結合させた構造のポリエステル分子より構成される樹脂のことである。すなわち、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂は、ポリエステルセグメントにスチレン・アクリル共重合体セグメントを共有結合させた共重合体構造を有する樹脂である。
ここで、非晶性樹脂として用いられるスチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂は、以下の点で上記ハイブリッド樹脂と明確に区別される。すなわち、非晶性のスチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂を構成するポリエステルセグメントは、上記ハイブリッド樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂セグメントとは異なり、明確な融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する非晶性の分子鎖である。これは、トナーについて示差走査熱量測定(DSC)を行うことによって確認できる。また、ポリエステルセグメントを構成する単量体(化学構造)は、結晶性ポリエステル樹脂セグメントを構成する単量体(化学構造)とは異なるため、例えば、NMR等の分析によっても区別することができる。
上記ポリエステルセグメントは、多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分によって形成される。
上記多価アルコール成分としては、特に限定されるものではないが、帯電性やトナー強度の観点から、芳香族ジオール又はその誘導体であることが好ましく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができる。
これらの中でも、特にトナーの帯電均一性を向上させるという観点から、多価アルコール成分としてはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。これらの多価アルコール成分は、1種単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
上記多価アルコール成分と縮合させる多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、フマル酸、無水マレイン酸、アルケニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸類、及びこれらの酸の低級アルキルエステル、酸無水物などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
ポリエステルセグメントの形成方法は特に制限されず、上記「(1.1.1)結晶性ポリエステル樹脂セグメント」の項において説明した、結晶性ポリエステル樹脂セグメントの形成方法と同様の方法によって製造することができる。
上記スチレン・アクリル共重合体セグメントは、上記「(1.1.2)ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂セグメント」の項において説明したスチレン・アクリル樹脂セグメントと同様の単量体に由来する分子鎖である。よって、当該セグメントを構成する単量体の種類、組成比率、当該セグメントの形成方法等について、詳細な説明は省略する。
スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂中のポリエステルセグメントの含有率は、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂の全量に対し、40〜90質量%の範囲内であることが好ましい。
また、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂中のスチレン・アクリル共重合体セグメントの含有率は、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂の全量に対し、10〜30質量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、スチレン・アクリル変性ポリエステル樹脂の可塑性を制御することが容易となる。
非晶性樹脂としては、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを縮合してなる非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂である。つまり、通常は融点(示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピークを有さず、比較的高いガラス転移点温度(Tg)を有するものである。より具体的には、非晶性樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂の示差走査熱量測定装置によるTgは、40〜90℃の範囲内であることが好ましく、特に45〜80℃の範囲内であることが好ましい。非晶性樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂のTgが上記の範囲にあることにより、低温定着性、定着分離性及び耐画像保存性が適切に得られるため好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC−60A)を用いて得ることができる。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行う。2度目の昇温時の吸熱曲線から解析をおこない、オンセット温度を非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
非晶性樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂のゲル浸透クロマトグラフ分析装置(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3000〜100000の範囲内、より好ましくは4000〜70000の範囲内である。非晶性樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)がかかる範囲内である場合、得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
非晶性ポリエステル樹脂の合成(縮合)に用いられる多価アルコール成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどの脂肪族ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などを挙げることができ、また、3価以上の多価アルコール成分としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。さらに、製造コストや環境性から、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルアルコールなどを用いてもよい。また、非晶性ポリエステル樹脂を形成し得る多価アルコール成分としては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,4−ジオール、9−オクタデセン−7,12−ジオールなどの不飽和多価アルコールなども用いることができる。これらの多価アルコール成分は、1種単独で用いてもよく2種以上併
用してもよい。
これらの中でも、帯電性やトナー強度の観点から、多価アルコール成分としてはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及び/又はビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。これらエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの付加モル数は、安定した縮重合反応の完結の観点から、1〜20モルの範囲内が好ましく、1〜10モルの範囲内がより好ましい。
多価アルコール成分と縮合させる2価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ドデカンジカルボン酸(1,10−ドデカン二酸)、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類、及びこれらの酸の低級アルキルエステル、酸無水物などが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
これら多価カルボン酸の中でも、特にアルケニルコハク酸又はその無水物を用いると、他の官能基に比べ疎水性の高いアルケニル基が存在することにより、より容易に結晶性ポリエステル樹脂と相溶することができる。アルケニルコハク酸成分の例としては、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、並びにこれらの酸無水物、酸塩化物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルを挙げることができる。
さらに、3価以上のカルボン酸を含有することにより、高分子鎖が架橋構造をとることができ、該架橋構造をとることにより、高温側での弾性率の低下を抑制させることができ、高温側でのオフセット性を向上させることができる。
上記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸や1,2,5−ベンゼントリカルボン酸などのトリメリット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、並びにこれらの酸無水物、酸塩化物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルなどが挙げられるが、トリメリット酸(無水物)が特に好適である。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は、70〜140℃の範囲内が好ましく、70〜125℃の範囲内がより好ましい。このような範囲内であると低温定着及び適度な光沢を得る点で好ましい。非晶性ポリエステル樹脂の軟化温度は、フローテスターなどにより求めることができる。
また、非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、5〜45mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは5〜30mgKOH/gの範囲内である。酸価が45mgKOH/g以下であれば、吸湿性が高くなることもなく、高湿度下においても帯電性が低くなるのを防止することができる点で好ましい。また、5mgKOH/g以上であれば、樹脂粒子の分散安定性を保持することができ、トナー製造が行いやすい点で好ましい。
非晶性樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂の他、特開2011−197659号公報に記載のスチレン・アクリレン系樹脂などが挙げられる。
非晶性樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂は、上記構成成分の中から任意の組合せで、従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、また組み合せて用いることができる。
具体的には、重合温度140〜270℃の範囲内で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助溶剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分とともに重縮合させるとよい。
上記の多価アルコール成分(特にジオール成分)と多価カルボン酸成分(特にジカルボン酸成分)との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]を、1.5/1〜1/1.5の範囲内とすることが好ましく、更に好ましくは1.2/1〜1/1.2の範囲内である。多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率が上記範囲内にあることにより、所望の分子量を有する非晶性ポリエステル樹脂を確実に得ることができる。
非晶性樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒は、酢酸チタン、プロピオン酸チタン、ヘキサン酸チタン、オクタン酸チタンなどの脂肪族モノカルボン酸チタン、シュウ酸チタン、コハク酸チタン、マレイン酸チタン、アジピン酸チタン、セバシン酸チタンなどの脂肪族ジカルボン酸チタン、ヘキサントリカルボン酸チタン、イソオクタントリカルボン酸などの脂肪族トリカルボン酸チタン、オクタンテトラカルボン酸チタン、デカンテトラカルボン酸チタンなどの脂肪族ポリカルボン酸チタン、などの脂肪族カルボン酸チタン類、安息香酸チタンなどの芳香族モノカルボン酸チタン、フタル酸チタン、テレフタル酸チタン、イソフタル酸チタン、ナフタレンジカルボン酸チタン、ビフェニルジカルボン酸チタン、アントラセンジカルボン酸チタンなどの芳香族ジカルボン酸チタン、トリメリット酸チタン、ナフタレントリカルボン酸チタンなどの芳香族トリカルボン酸チタン、ベンゼンテトラカルボン酸チタン、ナフタレンテトラカルボン酸チタンなどの芳香族テトラカルボン酸チタン、などの芳香族カルボン酸チタン類、脂肪族カルボン酸チタン類や芳香族カルボン酸チタン類のチタニル化合物類及びそのアルカリ金属塩類、ジクロロチタン、トリクロロチタン、テトラクロロチタン、テトラブロモチタンなどのハロゲン化チタン類、テトラブトキシチタン(チタンテトラブトキサイド)、テトラオクトキシチタン、テトラステアリロキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類、チタンアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドビスアセチルアセトナート、チタントリエタノールアミネート、などのチタン含有触媒である。
上記非晶性樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒の使用量は、樹脂合成時のモノマー全量に対して、0.01〜10.0質量%の範囲内が好ましく、0.02〜7.0質量%の範囲内がより好ましい。このような範囲内であると、未反応モノマーの残存がなくなる点で好ましい。
非晶性樹脂(特に非晶性ポリエステル樹脂)の含有量は、トナー全体(100質量%)に対して通常50〜95質量%の範囲内、好ましくは50〜80質量%の範囲内となる量とすることが好ましい。このような範囲内であると得られるトナーが耐ブロッキング性に優れ、低温定着性も得ることができる。
(3)結着樹脂の形態
本発明のトナーに含まれる結着樹脂は、ハイブリッド樹脂等と、非晶性樹脂とを含んで
いれば、その形態(樹脂粒子の形態)はいかなるものであってもよい。
例えば、結着樹脂により構成される樹脂粒子(結着樹脂粒子)は、いわゆる単層構造を有するものであってもよいし、コア・シェル構造(コア粒子の表面にシェル部を形成する樹脂を凝集、融着させた形態)を有するものであってもよい。コア・シェル構造の樹脂粒子は、着色剤やワックス等を含有したガラス転移温度が比較的低めの樹脂粒子(コア粒子)表面に、比較的高めのガラス転移温度を有する樹脂領域(シェル部)を有する。
なお、コア・シェル構造は、シェル部がコア粒子を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル部がコア粒子を完全に被覆せず、コア粒子が一部露出しているものも含む。
コア・シェル構造の断面構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することが可能である。
コア・シェル構造の樹脂粒子とする場合、ハイブリッド樹脂等及び非晶性樹脂が、コア粒子又はシェル部のいずれかに含まれていればよいが、結晶性ポリエステル樹脂セグメントに起因する帯電性の低下を抑制し、帯電均一性をより向上させるという観点から、少なくとも、ハイブリッド樹脂等がコア粒子に含まれている形態であることが好ましい。このとき、非晶性樹脂は、コア粒子及びシェル部のいずれに含まれていてもよいが、コア粒子においてハイブリッド樹脂等及び非晶性樹脂を含み、シェル部において非晶性樹脂を含む形態であると特に好ましい。このような形態とすることにより、コア粒子においてハイブリッド樹脂等と非晶性樹脂との親和性が高くなり、かつハイブリッド樹脂等が表面により露出しにくくなるため、帯電均一性とともに機械的強度を更に向上させることができる。
コア部の含有量は、コア部とシェル部との合計の樹脂量を100質量%として、30〜95質量%の範囲内が好ましい。
(その他の成分)
また、上記したようにトナー母体粒子中には、必須成分である結着樹脂及び顔料の他、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤などの内添剤、無機微粒子、有機微粒子、滑材などの外添剤が含有されていてもよい。
(1)離型剤(ワックス)
離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。
具体的には、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックスなどの低分子量ポリオレフィン類ワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1、18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス(合成エステルワックス)、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油などの植物系ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの鉱物、石油系ワックス、及びこれらの変性物などが挙げられる。これらの離型剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
離型剤の融点は、好ましくは40〜160℃の範囲内であり、より好ましくは50〜120℃の範囲内である。融点を上記範囲内にすることにより、シアントナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成が行える。
離型剤の含有量は、シアントナー全体(100質量%)に対して通常0.5〜25質量
%の範囲内、好ましくは3〜20質量%の範囲内となる量とされる。このような範囲内であるとホットオフセット防止や分離性確保の効果がある。
また、乳化会合法(乳化凝集法)により各トナーを得る場合の離型剤(粒子)の大きさとしては、体積平均粒径(体積基準のメジアン径)で10〜1000nmの範囲内が好ましく、50〜500nmの範囲内がより好ましく、80〜300nmの範囲内が特に好ましい。このような範囲内であると、離型剤が溶融した際、画像表面へ溶出しやすく画像分離性の点で好ましい。
(2)荷電制御剤
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。荷電制御剤としては、例えば、プラス帯電用としてニグロシン系の電子供与性染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩、アルキルアミド、金属錯体、顔料、弗素処理活性剤等、マイナス帯電用として電子受容性の有機錯体、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等を挙げることができる。
荷電制御剤の含有量は、最終的に得られるトナー粒子中における結着樹脂100質量部に対して通常0.1〜10質量部の範囲内、好ましくは0.5〜5質量部の範囲内となる量とされる。このような範囲内であると、トナー補給後の帯電立ち上がりが確保できる点で好ましい。
荷電制御剤粒子の大きさとしては、数平均1次粒径で10〜1000nmの範囲内が好ましく、50〜500nmの範囲内がより好ましく、80〜300nmの範囲内が特に好ましい。
(3)外添剤
トナーとしての帯電性能や流動性、あるいはクリーニング性を向上させる観点から、トナー母体粒子の表面に公知の無機微粒子や有機微粒子などの粒子、滑材を外添剤として添加することできる。
無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウムなどによる無機微粒子を好ましいものとして挙げられる。
必要に応じてこれらの無機微粒子は疎水化処理されているのが望ましい。本発明では、疎水化処理された無機微粒子の中でも、高い帯電性の観点から、疎水性シリカが好ましい。かかる疎水性シリカは、作製(内製)してもよいし、疎水性フュームドシリカや疎水性ゾルゲルシリカなどの市販品を入手してよい。
無機微粒子(疎水化処理されたものも含む)の平均粒径は、10〜700nmの範囲内が好ましく、10〜500nmの範囲内がより好ましい。このような範囲内であると、耐久を通して安定した画像が得られる点で好ましい。
また、無機微粒子(疎水化処理されたものも含む)の形状は、特に制限されるものではなく、球形や不定形状など任意の形状のものが利用できる。
有機微粒子としては、数平均1次粒径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。このような範囲内であると、耐久を通して安定した画像が得られる点で好ましい。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機微粒子を使用することができる。
有機微粒子の数平均1次粒径は、画像解析法により測定される。具体的には、走査型電子顕微鏡「JSM−7401(JEOL社製)」を用いて、倍率3万倍でトナーの写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX(登録商標)AP」((株)ニレコ製)ソフトウェアバージョンVer.1.32を用いて、写真画像上の有機微粒子について2値化処理し、有機微粒子の任意の100個についての水平方向フェレ径を算出、その平均値を数平均1次粒径とする。ここで水平方向フェレ径とは、外添剤の画像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。凝集体としてトナー表面に存在する場合は、該凝集体を形成する1次粒子の数平均1次粒径を測定するものとする。なお、以下の各種粒子等の数平均1次粒径は、上記と同様にして求めることができる。
滑材は、クリーニング性や転写性を更に向上させる目的で使用されるものであって、滑材としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩などの高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
これら外添剤は、種々のものを組み合わせて使用してもよい。
外添剤の含有量は、トナー粒子全体(外添剤を含む)に対して0.1〜10.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜8.0質量%の範囲内であることがより好ましい。このような範囲内であると、耐久を通して安定した画像が得られる点で好ましい。
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置を使用して添加する方法が挙げられる。
(3.1)外添剤に含まれる「疎水性シリカ」の表面存在比率
本発明では、カラートナー及び特色トナーの各トナー粒子が、(外添剤として)疎水性シリカを含み、カラートナー及び特色トナーの各トナー粒子をX線光電子分光(XPS)法で測定した表面のケイ素元素の含有率A(atom%)と炭素元素の含有率B(atom%)との比の値(A/B)が、カラートナーよりも特色トナーの方が大きいことが望ましい。すなわち、トナー粒子は、通常、外添剤として、疎水性シリカを含有している。この場合に、XPS法で測定したトナー粒子表面のSiとCの比率(Si/C)(=A/B)は、カラートナーよりも特色トナーの方が大きいことが望ましい。これは、外添剤に含まれる「疎水性シリカ」の存在は、多少ではあるが、トナー粒子間の樹脂の融合を阻害するものといえる。それゆえ、カラートナーよりも特色トナーの粒子表面に多くの「疎水性シリカ」が存在することで、より効果的に色にじみの発生を抑制することができるものといえる。かかる観点から、カラートナーの(A/B)の最大値(すなわち、YMCK等の各トナーの中で(A/B)が最も大きいもの)よりも、特色トナーの(A/B)の方が、0.01〜0.8の範囲内で大きいことが好ましく、0.1〜0.7の範囲内で大きいことがより好ましい。
なお、カラートナーの(A/B)は、好ましくは0.15〜0.50の範囲内、より好ましくは0.20〜0.50の範囲内である。このような範囲内であると、カラートナーのトナー粒子同士の融合に影響を及ぼさず、適切な帯電量を保持できる点で好ましい。
一方、特色トナーの(A/B)は、好ましくは0.30〜1.0の範囲内、より好ましくは0.40〜0.90の範囲内である。このような範囲内であると、色にじみの発生を抑制しつつ、適切な帯電量を保持できる点で好ましい。
(3.2)外添剤に含まれる疎水性シリカの表面存在比率の測定法(XPS法)
トナー粒子表面のケイ素原子数と炭素原子数の比率は、X線光電子分光(XPS)分析装置により測定が可能である。X線光電子分光(XPS)分析装置は、トナー粒子の試料表面にX線を照射し、発生する光電子のエネルギーを測定することで、試料に含有される原子とその電子状態を分析するものである。その仕組みは、物質にX線を照射すると原子軌道の電子が励起され、光電子として原子軌道外に排出される。ここで、光電子は、E=hν−EB(EBは電子の結合エネルギー)に従ったエネルギー値を有するものなので、X線のエネルギーが一定のもの、すなわち、単一波長のX線であれば、EBで表される結合エネルギーを求めることができる。電子の結合エネルギーは、各原子に固有の軌道エネルギーとなることから、この値から原子の種類を同定することができる。本発明では、公知のX線光電子分光(XPS)分析装置により、トナー粒子表面のケイ素(Si)原子数と炭素(C)原子数の比率を算出することができる。
〈シアントナーの製造方法〉
シアントナーを製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化会合法(乳化凝集法)、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性、コア・シェル構造形成の容易性の観点からは、乳化会合法(乳化凝集法)で製造することが好ましい。以下、乳化会合法(乳化凝集法)によるシアントナーの製造方法につき具体的に説明するが、これらに制限されるものではない。
〈乳化会合法(乳化凝集法)〉
乳化会合法(乳化凝集法)は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された結着樹脂の微粒子(以下、「樹脂微粒子」ともいう。)の分散液を、本発明に係る顔料の微粒子などのトナー粒子構成成分の分散液(例えば、顔料微粒子の水系分散液〔Cy〕)と混合し、凝集剤を添加することによって所望の粒径となるまで凝集(会合)させ、その後又は凝集(会合)と同時に、樹脂微粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー粒子(以下、便宜上、トナー母体粒子も含めてトナー粒子という。)を形成する方法である。
ここで、樹脂微粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
樹脂微粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂微粒子に内添剤を含有させる場合には、中でもミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
トナー粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂微粒子を内添剤を含有したものとしてもよく、また、別途内添剤のみよりなる内添剤微粒子の分散液を調製し、当該内添剤微粒子を、樹脂微粒子を凝集(会合)させる際に、ともに凝集(会合)させてもよい。
また、乳化会合法(乳化凝集法)によってはコア・シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア・シェル構造を有するトナー粒子は、まず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と顔料微粒子とを凝集(、融着)させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂微粒子を添加して、コア粒子表面にシェル層用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
乳化会合法(乳化凝集法)によりトナーを製造する場合、好ましい実施形態によるトナーの製造方法は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂分散液(結晶性ポリエステル樹脂分散液)及び非晶性樹脂分散液、並びに顔料分散液(顔料微粒子の水系分散液〔Cy〕)を調製する工程(以下、調製工程とも称する)(a)と、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂分散液(結晶性ポリエステル樹脂分散液)、非晶性樹脂分散液及び顔料分散液を混合して凝集・融着させる工程(以下、凝集・融着工程とも称する)(b)と、を含む。以下、各工程(a)及び(b)、並びにこれらの工程以外に任意で行われる各工程(c)〜(f)について詳述する。
(a)調製工程
工程(a)は、より詳細には下記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂分散液(結晶性ポリエステル樹脂分散液)調製工程、非晶性樹脂分散液調製工程及び顔料分散液調製工程があり、また、必要に応じて、離型剤分散液調製工程などを含む。なお、実施例に示すように、結着樹脂として、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)を用いることは必須ではないため、当該ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂分散液(結晶性ポリエステル樹脂分散液)調製工程も任意であり、必要に応じて行えばよい。すなわち、調製工程(a)は、非晶性樹脂分散液調製工程と、顔料分散液調製工程を含むものであればよい。
(a1)ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド樹脂)分散液(結晶性ポリエステル樹脂分散液)調製工程
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂分散液(結晶性ポリエステル樹脂分散液)調製工程は、トナー粒子を構成するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)を合成し、このハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)を水系媒体中に微粒子状に分散させてハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子の分散液を調製する工程である。
ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)の製造方法は、上記記載したとおりであるため、その詳細を割愛する。ハイブリッド樹脂を製造する場合、上記式(1)及び(2)を満たすために、ハイブリッド樹脂中の結晶性ポリエステル樹脂セグメント及び非晶性樹脂セグメントの含有割合を上記好ましい範囲内とすることが好ましい。また、ハイブリッド樹脂及び非晶性樹脂の種類(化学構造)、特に、ハイブリッド樹脂中の結晶性ポリエステル樹脂セグメントを構成する多価アルコール成分の炭素数(C(alcohol))及び多価カルボン酸成分の炭素数(C(acid))などを調節し、上記の好ましい範囲内とするとよい。
ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液の調製方法としては、例えば溶剤を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法、あるいはハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)を酢酸エチルなどの溶剤に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶剤処理を行う方法などが挙げられる。
ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)を水系媒体中に分散させる方法としては、当該樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。
上記水系媒体とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
また、ハイブリッド樹脂を用いる場合、結晶性ポリエステル樹脂セグメント中にカルボキシ基を含む場合がある。このような場合、当該セグメントに含まれるカルボキシ基をイオン乖離させて、水相に安定に乳化させて乳化を円滑に進めるためにアンモニア、水酸化ナトリウムなどを添加してもよい。
上記油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(2種類以上使用する場合はその合計使用量)は、樹脂100質量部に対して、通常1〜300質量部の範囲内、好ましくは10〜200質量部の範囲内、更に好ましくは25〜100質量部の範囲内である。このような範囲内であると、粒度分布が均一な樹脂微粒子の分散液を得ることができる点で好ましい。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2000質量部の範囲内であることが好ましく、100〜1000質量部の範囲内であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記範囲内とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。ここで用いられる水系媒体とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。
水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子を溶解しないアルコール系有機溶媒を用いることが好ましい。また、水系媒体には、必要に応じて、アミンやアンモニアが溶解されていてもよい。
水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが適量添加されていてもよい。
分散安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの無機化合物を挙げることができる。得られるトナー母体粒子中より分散安定剤を除去する必要が
あることから、リン酸三カルシウムなどのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、環境面の視点からは、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリスチレン・アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
このような油相液の乳化分散(上記分散処理)は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
分散の際には、溶液を加熱することが好ましい。加熱条件は特に限定されるものではないが、通常50〜90℃程度である。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
このように準備されたハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子分散液におけるハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmの範囲内とすることが好ましく、更に好ましくは80〜500nmの範囲内である。このような範囲内であると、安定したトナー製造の点で好ましい。
なお、当該樹脂微粒子(油滴)(樹脂粒子)の体積平均粒径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)等)で測定することができる。微粒子(油滴)の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液におけるハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子の含有量(固形分濃度)は、分散液100質量%に対して10〜50質量%の範囲内とすることが望ましく、より望ましくは15〜40質量%の範囲内である。このような範囲内であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a2)非晶性樹脂微粒子分散液調製工程
非晶性樹脂分散液調製工程は、トナー粒子を構成する非晶性樹脂、好ましくは非晶性ポリエステル樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に微粒子状に分散させて非晶性樹脂微粒子の分散液を調製する工程である。
非晶性樹脂の製造方法は上記記載したとおりであるため、詳細を割愛する。
非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、非晶性樹脂を得るための単量体から非晶性樹脂微粒子を形成し、当該非晶性樹脂微粒子の水系分散液を調製する方法(I)や、非晶性樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を、転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒(溶剤)を除去する方法(II)が挙げられる。
方法(I)では、まず、非晶性樹脂を得るための単量体を重合開始剤とともに水系媒体中に添加して重合し、基礎粒子を得る。次に、当該樹脂微粒子が分散している分散液中に、非晶性樹脂を得るためのラジカル重合性単量体及び重合開始剤を添加し、上記基礎粒子にラジカル重合性単量体をシード重合する手法を用いることが好ましい。
このとき、重合開始剤としては、水溶性重合開始剤を用いることができる。水溶性重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
また、非晶性樹脂微粒子を得るためのシード重合反応系には、非晶性樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタ
ンなどのメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネートなどのメルカプトプロピオン酸、スチレンダイマーなどを用いることができる。これらは、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
方法(II)において、油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、上記と同様に、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、具体的には、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
有機溶媒(溶剤)の使用量(2種類以上使用する場合は、その合計使用量)は、非晶性樹脂100質量部に対して、通常10〜500質量部、好ましくは100〜450質量部の範囲内、更に好ましくは200〜400質量部の範囲内である。
水系媒体の使用量は、油相液100質量部に対して、50〜2000質量部の範囲内であることが好ましく、100〜1000質量部の範囲内であることがより好ましい。水系媒体の使用量を上記範囲内とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
また、上記と同様に、水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
このような油相液の乳化分散は、上記と同様に、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、上記(a1)において説明したものを用いることができる。
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、非晶性樹脂微粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、徐々に撹拌状態で昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。
上記方法(I)又は(II)によって準備された非晶性樹脂分散液における非晶性樹脂微粒子(油滴)の粒径は、体積平均粒径で、60〜1000nmの範囲内とすることが好ましく、更に好ましくは80〜500nmの範囲内である。
なお、体積平均粒径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA−150」(日機装社製)等)で測定することができる。この油滴の体積平均粒径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさによりコントロールすることができる。
また、非晶性樹脂分散液における非晶性樹脂微粒子の含有量は、5〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%の範囲内である。このような範囲内であると、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
(a3)顔料分散液調製工程
顔料分散液調製工程は、シアントナー粒子を作製する場合、必須の工程であって、顔料を水系媒体中に微粒子状に分散させて顔料微粒子の分散液を調製する工程である。
当該水系媒体は上記で説明したとおりであり、上記(a1)工程のハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)の分散に用いられる水系媒体と同様のものを用いることができる。この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。界面活性剤や樹脂微粒子も上記(a1)工程で説明した通りである。
水系にて顔料分散液を調製する場合、既存の公知の分散機を用いて顔料を分散させることができる。具体的には、界面活性剤の存在下、超音波分散機、ホモジナイザー、ディスパーミル、クレアミックス、サンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミル等を使用でき、MSCミル(日本コークス(株)製)を使用することが好ましい。
MSCミルとは、遠心分離方式によるスクリーンレスタイプの湿式ビーズミルである。この分散機によって小径ビーズを用いて分散を行うことにより、顔料の1次結晶に過度の負荷をかけることなく分散を行うことができ、トナー中での顔料微粒子の凝集を抑えることが可能となる。これは、MSCミルが分散場において遠心分離方式を用いていることで、分散場におけるビーズと顔料微粒子間で過剰なエネルギーでの衝突が抑制されていることと、小径ビーズを用いたことによるビーズの顔料微粒子への衝突エネルギーが緩和されることで、顔料微粒子への過度な負荷が軽減されているためであると考えられる。
MSCミルを使用する場合、ミルの周速は7〜13m/sの範囲内が好ましく、更に好ましくは9〜11m/sの範囲内である。上記範囲内で運転可能なスラリー流量を設定するのが好ましい。周速が7m/sよりも速いとビーズとスラリーとの分離不良を起こさず、ビーズの偏りなどを引き起こすことがない。また、周速が13m/sよりも遅いと、ビーズと顔料微粒子との衝突エネルギーが小さく、結晶そのものを破壊する過分散を引き起こすことがない。過分散を起こしてしまうと、分散安定性が低下する。ポンプ流量は、上記周速で運転できる範囲内で適宜設定することができる。
ビーズとしては、公知のビーズが使用可能であり、好ましくはジルコニア、ガラスなどが使用される。
ビーズの直径は、0.1〜0.5mmの範囲内のものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.2mmの範囲内のものを選定する。ビーズの直径が小さいほうが効率よく顔料微粒子の分散を進めることができるためである。ビーズの直径が0.1mm以上であれば、使用可能な分散装置が制約されることもなく、従来の分散装置を適宜使用することができる。ビーズの直径が0.5mm以下であれば、顔料の微細化を図るのが容易であり、顔料が分散しやすく、色再現性及び着色力を向上させることができる。
ビーズの充填率は、装置によって異なるが、MSCミルにおいては45〜85体積%の範囲内が好ましく、更に好ましくは50〜75体積%の範囲内である。充填率が45体積%以上であれば、運動エネルギーや衝突頻度が低くなりすぎず、衝突や摩砕による分散を効果的に進めることができる。充填率が85体積%以下であれば、ビーズと顔料微粒子との衝突エネルギーが小さく、結晶そのものを破壊する過分散を引き起こすおそれがない。
また、顔料分散液〔Cy〕における顔料微粒子の含有量(固形分濃度)は、10〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲内である。このような範囲内であると、色再現性確保の効果がある。
(a4)離型剤分散液調製工程
離型剤分散液調製工程は、トナー粒子として離型剤を含有するものを所望する場合に必要に応じて行う工程であって、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤微粒子の分散液を調製する工程である。
水系媒体は上記で説明したとおりであり、上記(a1)工程のハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)の分散に用いられる水系媒体と同様のものを用いることができる。この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。界面活性剤や樹脂微粒子も上記(a1)工程で説明したとおりである。
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
離型剤を分散させるにあたり、必要に応じて加熱を行ってもよい。加熱温度としては、分散性を向上させる観点から、離型剤の融点±20℃の範囲内であることが好ましい。
離型剤微粒子の体積平均粒径は、10〜300nmの範囲内とすることが好ましい。このような範囲内であると、良好な定着性が得られる点で好ましい。
また、離型剤分散液における離型剤微粒子の含有量(固形分濃度)は、10〜50質量%の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは15〜40質量%の範囲内である。このような範囲内であると、ホットオフセット防止と分離性確保の効果がある。
(b)凝集・融着工程
凝集・融着工程は、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液、非晶性樹脂分散液及び顔料分散液、また必要に応じて、離型剤分散液、などの他の成分を添加、混合し、pH調整による微粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する工程である。
この凝集・融着工程も、必要に応じて、機械的エネルギーや加熱手段を利用して行うことができる。なお、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液は任意成分であり、必要に応じて添加すればよい。すなわち、凝集・融着工程(b)は、少なくとも非晶性樹脂分散液と顔料分散液を添加、混合し、その後の凝集、融着の操作を行えばよい。
(b1)凝集工程
凝集工程においては、まず得られた各分散液を混合して混合液とし、非晶性樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、撹拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる。pH(液温25℃)としては、2.0〜7.0の範囲内が好ましく、2.0〜5.0の範囲内がより好ましい。このような範囲内であると、粒度分布がシャープな凝集が可能となる点で好ましい。pHを調整するためには、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、重炭酸塩、アンモニア、苛性カリ、苛性ソーダ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを用いることができる。この際、凝集剤を使用することも有効である。
この工程では、上記式(1)及び(2)を満たすように、分散液を混合して混合液とするのが好ましい。ここで、上記式(1)及び(2)を満たすために、結着樹脂中のハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)及び非晶性樹脂の含有割合を調節し、上記の好ましい範囲内となるように各分散液量を調節すると好適である。
次に、上記混合液に、アルカリ金属塩や第2族元素を含む塩等を凝集剤として添加した後、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)及び非晶性樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱して凝集を進行させ凝集粒子を形成する(同時に、凝集粒子同士を融着させてもよい。)。
具体的には、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液と、非晶性樹脂分散液と、顔料分散液と、必要に応じて離型剤分散液とを混合して混合液とし、塩化マグネシウム等の凝集剤を添加することにより、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子と、非晶性樹脂微粒子と、顔料微粒子と、必要に応じて離型剤微粒子とを凝集させる(同時に粒子同士を融着させてもよい。)。そして、凝集した粒子の大きさが目標の大きさになったときに、食塩水等の塩を添加して凝集を停止させる。
用いられる凝集剤は、分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。
無機金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びこれらの水和物などの金属塩、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、マグネシウム塩、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。また、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これら凝集剤は、単独でも又は2種以上を組み合わせても使用することができる。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、より適している。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。
凝集工程においては、凝集剤を添加した後に放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。このように、凝集剤を添加した後に、凝集用分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)及び非晶性樹脂のガラス転移温度以上とすることが好ましい。この理由は明確ではないが、放置時間の経過によって粒子の凝集状態が変動して、得られるトナー粒子の粒径分布が不安定になったり、表面性が変動したりする問題が発生するおそれがあるからである。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内である。
凝集剤を添加する温度は、特に限定されないが、結着樹脂であるハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)及び非晶性樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましい。すなわち、凝集剤を添加した後、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は0.8℃/分以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は、特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、凝集用分散液がガラス転移温度以上の温度に到達した後、当該凝集用分散液の温度を一定時間、好ましくは体積平均粒径が4.5〜7.0μmの範囲内になるまで保持することにより、融着を継続させることが肝要である(第1の熟成工程)。また、熟成中の粒子の形状係数(円形度)を測定し、好ましくは0.920〜1.000になるまで第1の熟成工程を行うことが好ましい。
これにより、粒子の成長(ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子、非晶性樹脂微粒子、顔料微粒子及び必要に応じて離型剤微粒子)の凝集を効果的に進行させる(と同時に融着(粒子間の界面の消失)させる)ことができ、最終的に得られるトナー粒子の耐久性を向上することができる。
なお、コア・シェル構造の結着樹脂を得る場合には、上記の第1の熟成工程において、シェル部を形成する樹脂(好ましくは非晶性樹脂)の水系分散液を更に添加し、上記で得られた単層構造の結着樹脂の粒子(コア粒子)の表面にシェル部を形成する樹脂を凝集、融着させる。これにより、コア・シェル構造を有する結着樹脂が得られる(シェル化工程)。この際、シェル化工程に引き続き、コア粒子表面へのシェルの凝集、融着をより強固にし、かつ粒子の形状が所望の形状になるまで、更に反応系の加熱処理を行うとよい(第2の熟成工程)。この第2の熟成工程は、コア・シェル構造を有するトナー粒子の平均円形度が、上記円形度の範囲内になるまで行えばよい。
凝集粒子が所望の粒径になったところで、非晶性樹脂微粒子を追添加することで、コア凝集粒子の表面を非晶性樹脂で被覆した構成のトナー(コア・シェル粒子)を作製することができる。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。なお、コア・シェル粒子を形成しない場合には、当該操作を行う前の凝集粒子が所望の粒径になったところで、以下の凝集停止工程を行えばよい。
凝集の際には加熱、昇温することが好ましい。この際、加熱、昇温によって、融着温度以上になった場合には、融着工程も同時に進行することとなる。
昇温速度としては0.1〜5℃/分の範囲内で行うことが好ましい。このような範囲内であると、粒度分布がシャープな凝集が可能となる点で好ましい。
また、加熱温度(ピーク温度)は、40〜100℃の範囲内で行うことが好ましい。このような範囲内であると、粒度分布がシャープな凝集が可能となる点で好ましい。
(b2)凝集停止工程
凝集粒子が、例えば、コールターカウンター等で測定を行い、所望の平均粒径になったところで、反応系内の各種の微粒子の粒径成長(凝集)を停止させる(以下、凝集停止工程とも称する)。粒径成長(凝集)の停止は、反応系内における微粒子の凝集作用を抑制するために、凝集工程における微粒子の凝集作用が促進されるpH環境から脱する方向にpH調整することができる、塩基化合物からなる凝集停止剤を添加することにより、行われる。凝集粒子の所望の平均粒径は、特に限定されるものではないが、4.5〜7.0μm程度であることが好ましい。このような範囲内であると、高画質な画像が得られる点で好ましい。
この凝集停止工程においては、反応系のpH(液温25℃)を5.0〜9.0の範囲内に調整することが好ましい。このような範囲内であると、所望の粒径で即座に凝集を停止できる点で好ましい。
凝集停止剤(塩基化合物)としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩、グルコナール、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、GLDA(市販のL−グルタミン酸N,N二酢酸)、フミン酸及びフルビン酸、マルトール及びエチルマルトール、ペンタ酢酸及びテトラ酢酸、カルボキシ基及びヒドロキシ基の両方の官能基を有する公知の水溶性ポリマー類(高分子電解質)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、及びこれらの水溶液などが挙げられる。凝集停止工程においては、凝集工程に準じて撹拌を行ってもよい。
(b3)融着工程
融着工程は、上記凝集停止工程(b2)を経た後又は、凝集工程(b1)と同時に、反応系を所期の融着温度に加温することにより、凝集粒子を構成する各微粒子を融着させて凝集粒子を融合して、融合粒子を形成させる工程である。
この融着工程における融着温度は、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)の融点以上であることが好ましく、融着温度は、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)の融点より0〜20℃高い温度であることが好ましい。
加熱の時間としては、融合がなされる程度行えばよく、0.5〜10時間程度行えばよい。好ましくは、例えば、フロー式粒子像分析装置(例えば、ホソカワミクロン株式会社製、フロー式粒子像分析装置 FPIA−2000)等を用いて測定しながら、所望の形状係数(例えば、0.96程度)に達するまで行えばよい。
この凝集・融着工程においては、凝集系における各微粒子を安定に分散させるために、水系媒体中に界面活性剤を追加してもよい。
この凝集・融着工程におけるハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子/非晶性樹脂微粒子の添加割合(質量比)は、好ましくは1〜100である。このような範囲内であれば、得られるトナーが耐熱保管性に優れ、また低温定着性に優れる。当該要件は、非晶性樹脂微粒子とハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)微粒子を併用して凝集・融着工程を行う場合に適用し得るものである。
なお、トナー粒子中に他の内添剤を導入する場合は、この凝集・融着工程の前に内添剤のみよりなる内添剤分散液を調製し、この凝集・融着工程においてハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液、非晶性樹脂分散液及び顔料分散液とともに当該内添剤微粒子の分散液を混合する方法が好ましい。
上記(凝集)融合後に上記トナー粒子の分散液を冷却し、融合粒子を得る。冷却速度は好ましくは0.2〜20℃/分、より好ましくは2〜20℃/分である。このような範囲内であると、冷却後のトナー粒子表面が滑らかである点で好ましい。冷却方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
乳化凝集法によりトナー粒子を得る場合、トナー粒子の体積中位径は、凝集粒子の粒径成長を制御(凝集条件)することにより制御することができる。
本発明においては、結着樹脂(100質量%)に対し、顔料を4.0〜6.5質量%の範囲内で含有させる。顔料の含有率が4.0質量%より小さいと、十分な着色力を安定して維持することができず、十分な画像濃度を出すために画像上のトナー付着量が増えてしまい、トナー消費量が増えてしまう。一方で、6.5質量%大きいと、色再現性が低下し、色域が狭くなるおそれがある。
乳化会合法(乳化凝集法)によりトナーを得る場合、上記凝集・融着工程の後、形状係数(円形度)の制御工程を有することが好ましい。
すなわち、好適な一実施形態は、シアントナーの製造方法が、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液、非晶性樹脂分散液、及び顔料分散液を調製する工程(a)と、ハイブリッド樹脂(結晶性ポリエステル樹脂)分散液、非晶性樹脂分散液及び顔料分散液を混合して凝集・融着させる工程(b)と、トナーの形状係数(円形度)を制御するための形状係数(円形度)の制御工程(c)と、を有する。
(c)形状係数(円形度)の制御工程(c)
形状係数(円形度)の制御処理としては、具体的には、凝集・融着工程で得られた粒子を加熱する加熱処理が挙げられる。加熱温度及び保持時間により形状係数(円形度)を制御することができる。加熱温度を高くする、又は保持時間を長くすることにより、形状係数(円形度)を1に近づけることができる。ただし、トナー粒子同士の再凝集が発生するため、加熱温度を過度に高くすることは好ましくない。また、同様の理由で、保持時間を過度に長くすることも好ましくない。
形状係数(円形度)の制御処理における加熱温度としては、形状係数(円形度)を1に近づける観点から、70〜95℃の範囲内であることが好ましく、70〜90℃の範囲内であることがより好ましい。
また、加熱温度での保持時間としては特に制限されるものではなく、形状係数(円形度)が目標値(1に近い数値)になるまで行えばよい。
形状係数(円形度)の制御は、加温中に形状係数(円形度)の測定装置にて体積中位径が2μm以上の粒径の円形度を測定し、所望の円形度であるかどうかを適宜判断することによって制御が可能である。
なお、体積中位径は、コールター原理を採用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザー3」等)により測定される体積基準の中位径(体積基準メジアン径)である。
さらに、乳化会合法(乳化凝集法)におけるシアントナーの製造方法においては、(d)濾過・洗浄工程、(e)乾燥工程、(f)外添剤添加工程を含んでいてもよい。
(d)濾過・洗浄工程
濾過・洗浄工程では、得られたトナー粒子の分散液を冷却して冷却後のスラリーとし、この冷却されたトナー粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、トナー粒子を固液分離してトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(トナー母体粒子:ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離及び洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。
濾過・洗浄工程においては適宜、pH調整や粉砕などを行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。洗浄することにより濾別されたトナー粒子から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する。洗浄処理は、濾液の電気伝導度が、例えば5〜10μS/cmレベルになるまで洗浄(水洗)処理を行うものである。
(e)乾燥工程
乾燥工程では、洗浄処理されたトナー粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理されたトナー粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
また、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
(f)外添剤添加工程
この外添剤添加工程は、乾燥処理されたトナー母体粒子表面に、流動性、帯電性の改良及びクリーニング性の向上などの目的で、荷電制御剤や種々の無機微粒子、有機微粒子、又は滑剤などの外添剤を添加する工程であって、必要に応じて行われる。外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置を挙げることができる。また、トナー粒子の粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じフルイによる分級を行ってもよい。
〈現像剤〉
以上のようなシアントナーは、例えば磁性体を含有させて1成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して2成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
2成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子を用いることが好ましい。
キャリアの体積平均粒径としては、15〜100μmの範囲内ものが好ましく、25〜60μmの範囲内のものがより好ましい。
キャリアとしては、更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレートの共重合体、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、フッ素含有重合体系樹脂などが用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂など使用することができる。
〈定着方法〉
シアントナーを使用する好適な定着方法としては、いわゆる接触加熱方式のものを挙げることができる。接触加熱方式としては、特に熱圧定着方式、更には熱ロール定着方式及び固定配置された加熱体を内包した回動する加圧部材により定着する圧接加熱定着方式を挙げることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特記しない限り、各操作は室温(25℃)で行った。
《ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A〕の調製》
〈ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔a〕の合成〉
下記組成の付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及びラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
(付加重合系樹脂等)
スチレン 35質量部
ブチルアクリレート 9質量部
アクリル酸 4質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 7質量部
また、下記組成の重縮合系樹脂の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
(重縮合系樹脂)
セバシン酸 278質量部
ドデカンジオール 280質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.8質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に、200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて1時間反応させることによりハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔a〕を得た。得られたハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔a〕は、数平均分子量(Mn)が4000、融点が76℃であった。
〈ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A〕の調製〉
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔a〕30質量部を溶融させて溶融状態のまま、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(株式会社ユーロテック製)に対して毎分100質量部の移送速度で移送した。また、この溶融状態のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〔a〕の移送と同時に、当該乳化分散機に対して、水性溶媒タンクにおいてアンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈した、濃度0.37質量%の希アンモニア水を熱交換機で100℃に加熱しながら0.1リットル/分の移送速度で移送した。そして、この乳化分散機を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転することにより、体積平均粒径が200nm、固形分量が30質量部のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A〕を調製した。
《非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔X〕の調製》
〈第1段重合〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3Lを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、再度液温80℃とし、下記組成の単量体混合液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液〔x1〕を調製した。
(単量体混合液)
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68.0質量部
〈第2段重合〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3Lに溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、樹脂微粒子の分散液〔x1〕260質量部と、下記組成の単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた溶液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
(単量体及び離型剤)
スチレン 284質量部
n−ブチルアクリレート 92質量部
メタクリル酸 13質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
離型剤:ベヘン酸ベヘネート(融点73℃) 190質量部
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6gをイオン交換水200mLに溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液〔x2〕を調製した。
〈第3段重合〉
さらに、樹脂微粒子の分散液〔x2〕にイオン交換水400mLを添加してよく混合した後、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400mLに溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、下記組成の単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂からなる非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔X〕を調製した。
(単量体混合液)
スチレン 400質量部
n−ブチルアクリレート 128質量部
メタクリル酸 28質量部
メタクリル酸メチル 45質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
得られた非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔X〕について、非晶性樹脂微粒子の体積平均粒径が220nm、ガラス転移点(Tg)が55℃、重量平均分子量(Mw)が32000であった。
ガラス転移点(Tg)は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定した。
《シェル用樹脂微粒子の水系分散液〔S〕の調製》
〈ポリエステル樹脂(シェル用樹脂〔S〕)の合成〉
下記組成の付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマーおよびラジカル重合開始剤を滴下ロートに入れた。
(付加重合系樹脂等)
スチレン 80質量部
ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
重合開始剤(ジ−t−ブチルパーオキサイド) 16質量部
また、下記組成の重縮合系樹脂の原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、攪拌器および熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
(重縮合系樹脂)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
次いで、撹拌下で付加重合系樹脂の原料モノマーを90分かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて未反応の付加重合モノマーを除去した。
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)を0.4質量部投入し、235℃まで昇温、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)にて1時間反応を行った。
次に200℃まで冷却したのち、減圧下(20kPa)にて所望の軟化点に達するまで反応を行った。次いで、脱溶剤を行い、シェル用樹脂〔s〕を得た。
〈シェル用樹脂微粒子の水系分散液〔S〕の調製〉
得られたシェル用樹脂〔s〕100質量部を、400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、あらかじめ作製した濃度0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム水溶液638質量部と混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US−150T」(日本精機製作所製)でV−LEVEL 300μAで30分間超音波分散後した後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V−700」(BUCHI社製)を使用し、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して、体積平均粒径が160nm、固形分量が13.5質量%のシェル用樹脂微粒子の水系分散液〔S〕を調製した。
《シアントナー用顔料分散液(顔料微粒子の水系分散液)の調製》
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製〉
n−ドデシル硫酸ナトリウム13質量部をイオン交換水77質量部に投入し、溶解・撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、シアン着色剤C.I.Pigment Blue 15:3を10質量部徐々に添加し、ジルコニアビーズ(φ0.1mm)を充填率60体積%に設定した「MSCミル」(日本コークス社製)により分散処理を行って、シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕を調製した。このとき、分散時間は、分散液30gに対して1分となるように設定した。MSCミルの周速は11m/sとした。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy1〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は105nmであった。また、吸光度比は1.10であった。
なお、本実施例において、シアントナー用顔料分散液の吸光度比は、紫外可視分光光度計 V−530(日本分光(株)社製)を用いて、吸収スペクトルを測定することにより算出した。
具体的には、波長300〜900nmの範囲内に発現した吸収スペクトルのピークのうち、波長700〜750nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Aとした。このとき、吸光度Aが0.95〜1.05の範囲内に収まっていない場合には、その範囲内に収まるように水で希釈し、濃度の調整を行い、これをシアントナー用顔料分散液とした。
この状態で、波長600〜650nmの範囲内において最大の吸光度を有するピークを決定し、その吸光度を読み取り、これを吸光度Bとした。得られた各吸光度から、吸光度比(B/A)を算出した。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy2〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、使用するジルコニアビーズをφ0.2mmのジルコニアビーズに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy2〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy2〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は108nmであった。また、吸光度比は1.07であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy3〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、使用するジルコニアビーズをφ0.2mmのガラスビーズに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy3〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy3〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は110nmであった。また、吸光度比は1.05であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy4〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、使用するジルコニアビーズの充填率を45体積%に変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy4〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy4〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は110nmであった。また、吸光度比は1.06であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy5〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、使用するジルコニアビーズの充填率を85体積%に変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy5〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy5〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は101nmであった。また、吸光度比は1.14であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy6〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、MSCミルの周速を7m/sに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy6〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy6〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は112nmであった。また、吸光度比は1.05であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy7〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、MSCミルの周速を13m/sに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy7〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy7〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は104nmであった。また、吸光度比は1.13であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy8〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy7〕の調製において、使用するジルコニアビーズをφ0.3mmのジルコニアビーズに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy8〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy8〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は104nmであった。また、吸光度比は1.01であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy9〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、使用するジルコニアビーズの充填率を40体積%とし、MSCミルの周速を15m/sに変更したこと以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy9〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy9〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は101nmであった。また、吸光度比は1.04であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy10〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、使用するジルコニアビーズの充填率を95体積%とし、MSCミルの周速を6m/sに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy10〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy10〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は103nmであった。また、吸光度比は1.03であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy11〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、分散機としてSCミル(日本コークス社製)を使用し、ジルコニアビーズをφ0.2mmのジルコニアビーズ、ジルコニアビーズの充填率を71体積%とし、MSCミルの周速を13m/sに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy11〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy11〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は104nmであった。また、吸光度比は1.04であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy12〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy11〕の調製において、ジルコニアビーズをφ0.3mmのジルコニアビーズに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy12〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy12〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は110nmであった。また、吸光度比は1.00であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy13〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、分散機としてクレアミックス(エム・テクニック社製)を使用し、クレアミックスの周速を31m/sに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy13〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy13〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は120nmであった。また、吸光度比は0.94であった。
〈シアントナー用顔料分散液〔Cy14〕の調製〉
シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の調製において、使用するジルコニアビーズの充填率を85体積%とし、MSCミルの周速を14m/sに変更した以外は同様にして、シアントナー用顔料分散液〔Cy14〕を調製した。
得られたシアントナー用顔料分散液〔Cy14〕について、顔料微粒子の個数平均粒径は103nmであった。また、吸光度比は1.20であった。
シアントナー用顔料分散液の調製方法をまとめたものを、下記表Iに示す。
Figure 2018091987
《シアントナーの作製》
〈シアントナー〔1〕の作製〉
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂微粒子の水系分散液〔X〕348.8質量部(固形分換算)、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂微粒子の水系分散液〔A〕56.3質量部(固形分換算)、イオン交換水1500質量部を投入した後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10(液温25℃)に調整した。
その後、シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕22.5質量部(固形分換算)を投入し、次いで、塩化マグネシウム30質量部をイオン交換水30質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。その後、昇温を開始し、この系を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積平均粒径が6.0μmになった時点で、シェル用樹脂微粒子の水系分散液〔S〕45質量部(固形分換算)を30分間かけて投入し、反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに、昇温を行い、90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、形状係数(平均円形度)の測定装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数:4000個)形状係数(平均円形度)を測定し、形状係数(平均円形度)が0.945になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子〔1X〕を得た。
得られたトナー粒子〔1X〕100質量部に、疎水性シリカ(数平均1次粒径:12nm、疎水化度:68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均1次粒径:20nm、疎水化度:63)1.0質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/s、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去する外添剤処理を施すことにより、シアントナー〔1〕を作製した。
シアントナー〔1〕に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアをトナー濃度が6質量%となるように添加して混合することにより、現像剤〔1〕を作製した。
外添処理前のトナー粒子〔1X〕の平均粒径は6.5μmであり、外添処理前のトナー粒子〔1X〕の形状係数は0.945であった。
〈シアントナー〔2〕〜〔7〕の作製〉
シアントナー〔1〕の作製において、シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕を表IIに記載のシアントナー用顔料分散液に変更した以外は同様にして、外添処理前のトナー粒子〔2X〕〜〔7X〕、シアントナー〔2〕〜〔7〕、現像剤〔2〕〜〔7〕を作製した。
〈シアントナー〔8〕及び〔9〕の作製〉
シアントナー〔1〕の作製において、シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の添加量をそれぞれ20.3質量部(固形分換算)、27.0質量部(固形分換算)に変更した以外は同様にして、外添処理前のトナー粒子〔8X〕及び〔9X〕、シアントナー〔8〕及び〔9〕、現像剤〔8〕及び〔9〕を作製した。
〈シアントナー〔10〕〜〔15〕の作製〉
シアントナー〔1〕の作製において、シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕を表IIに記載のシアントナー用顔料分散液に変更した以外は同様にして、外添処理前のトナー粒子〔10X〕〜〔15X〕、シアントナー〔10〕〜〔15〕、現像剤〔10〕〜〔15〕を作製した。
〈シアントナー〔16〕の作製〉
シアントナー〔14〕の作製において、シアントナー用顔料分散液〔Cy12〕の添加量を29.3質量部(固形分換算)に変更した以外は同様にして、外添処理前のトナー粒子〔16X〕、シアントナー〔16〕、現像剤〔16〕を作製した。
〈シアントナー〔17〕及び〔18〕の作製〉
シアントナー〔1〕の作製において、シアントナー用顔料分散液〔Cy1〕の添加量をそれぞれ16.7質量部(固形分換算)、29.7質量部(固形分換算)に変更した以外は同様にして、外添処理前のトナー粒子〔17X〕及び〔18X〕、シアントナー〔17〕及び〔18〕、現像剤〔17〕及び〔18〕を作製した。
〈シアントナー〔19〕の作製〉
シアントナー〔1〕の作製において、シアントナー用顔料分散液をシアントナー用顔料分散液〔Cy14〕に変更した以外は同様にして、外添処理前のトナー粒子〔19X〕、シアントナー〔19〕、現像剤〔19〕を作製した。
《評価》
〈色再現性(ΔEab)〉
現像剤〔1〕〜〔19〕をそれぞれ620mm/min(約130枚/分)に設定した市販のフルカラー高速複合機「bizhub PRO C6500(コニカミノルタ社製)」に搭載し、形成したトナー画像をそれぞれ評価した。
なお、評価に用いた転写紙として「PODグロスコート紙128g/m(王子製紙(株)製)」を用いた。
温度20℃、湿度50%RHの環境下において、シアン単色(C)(ここでは、現像剤〔1〕〜〔19〕をそれぞれシアン単色(C)として用いた。)のベタ画像(縦2cm×横2cmのサイズ)を形成し、その色成分をL表色系におけるa−b座標に表した。a−b座標における(−37、−50)の点を中心とし、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を表IIに示す。なお、ΔEab<5(中心からの色差が5未満)に入ったものを合格とした。
◎:中心からの色差0.5以内(ターゲットの中心域):ΔEab≦0.5
〇:中心からの色差0.5超4.5以内:0.5<ΔEab≦4.5
△:中心からの色差4.5超5未満(ターゲットの境界域):4.5<ΔEab<5
×:中心からの色差5以上(ターゲット外):5≦ΔEab
なお、「L表色系」は、色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、L軸方向が明度を示し、a軸方向が赤−緑方向の色相を表し、b軸方向が黄−青方向の色相を示すものである。a及びbは、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD50光源、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角を2°とし、UV−cutフィルターを使用し、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定するものとする。
〈着色力(ID)〉
色再現性評価後、上記で得られた定着画像のソリッド部の画像濃度(ID)を反射濃度計(商品名:「X−Rite model 404」、X−Rite社製)により測定し、下記評価基準に従って評価した。
評価結果を表IIに示す。なお、画像濃度の数値が高いものほど、画像濃度が高いことを示す。
◎:画像濃度1.50以上
○:画像濃度1.33以上1.50未満
×:画像濃度1.33未満
Figure 2018091987
なお、表II中、顔料微粒子の含有率(質量%)とは、結着樹脂(100質量%(=非晶性樹脂+ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂+シェル用樹脂(固形分換算)))に対する含有率を示している。
〈まとめ〉
表IIから明らかなように、本発明のシアントナーは、比較例のシアントナーと比べて、色再現性及び着色力に優れていることが確認された。
以上から、吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が条件式(I)を満たすシアントナー用顔料分散液、及び顔料を、結着樹脂(100質量%)に対し、4.0〜6.5質量%の範囲内で含有させるシアントナーの製造方法が、シアン単色における色域を拡大し、高い色再現性と着色力を実現することに有用であることがわかる。

Claims (4)

  1. 顔料、界面活性剤及び水を含有するシアントナー用顔料分散液であって、
    吸収スペクトルにおいて、波長700〜750nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Aが、0.95〜1.05の範囲内となるように調整され、
    前記最大値Aに対する波長600〜650nmの範囲内に観測される吸光度の最大値Bの比の値(吸光度比:B/A)が、下記条件式(I)を満たすことを特徴とするシアントナー用顔料分散液。
    1.05≦B/A≦1.15・・・(I)
  2. 前記顔料として、銅フタロシアニンを含有することを特徴とする請求項1に記載のシアントナー用顔料分散液。
  3. 結着樹脂及び顔料を含むトナー母体粒子を含有するシアントナーの製造方法であって、
    前記結着樹脂を含む樹脂分散液を調製する工程と、
    請求項1又は請求項2に記載の前記シアントナー用顔料分散液を調製する工程と、
    前記樹脂分散液と前記シアントナー用顔料分散液とを混合し、結着樹脂微粒子と顔料微粒子とを凝集・融着させてトナー母体粒子を形成する工程と、
    を有し、
    前記顔料を、前記結着樹脂(100質量%)に対し、4.0〜6.5質量%の範囲内で含有させることを特徴とするシアントナーの製造方法。
  4. 前記シアントナー用顔料分散液を調製する工程では、遠心分離方式により前記顔料微粒子を分散して、前記シアントナー用顔料分散液を調製することを特徴とする請求項3に記載のシアントナーの製造方法。
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