JP3879074B2 - 止水用材料 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は止水用材料に関する。さらに詳しくは、光ファイバーケーブル内や電線ケーブル内への水の流入を防止するのに有用な止水用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ファイバーケーブルや電線ケーブルは地下に埋設されるケースが増加しており、高い水走り防止性能が要求されている。
これらケーブル内の水走りを防止する止水用材料として、特開平5−156234号公報では、不織布やプラスチックシートの支持基材上に加水分解性シリル基を有する樹脂、吸水性樹脂及び必要により他の被膜形成性樹脂からなる吸水性被膜が形成されてなる止水用材料を開示している。
【0003】
この公報記載の止水用材料は、水と接触すると、
▲1▼加水分解性シリル基の作用により、吸水性被膜表面にひび割れが生じて水が被膜内部に浸入し、
▲2▼吸水性樹脂が迅速に吸水膨潤し、
▲3▼吸水膨潤した樹脂がひび割れした被膜の外へ脱離して、
▲4▼例えば、光ファイバ−ケーブルの場合で言えば、ケ−ブル外被と光ファイバ−との間の間隙を塞ぐ等、吸水膨潤した樹脂の作用により速やかに止水するという、ユニークとも言える作用機構による止水効果を有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報記載の止水用材料では、
(1)支持基材としてプラスチックシートを用いたものは、吸水性被膜がプラスチックシートから剥がれたり、一部脱落しやすいという問題があった。
(2)一方、支持基材として不織布を用いたものは、光ファイバーケーブルや電線ケーブルのスロット型スペーサー等に巻き付ける作業において、腰が弱いため、作業性が悪く、さらに巻き付けられたテープがスロット内に凹面状に落ち込んで、光ファイバーに接触してトラブルが発生するという問題があった。特に吸水被膜が湿気により吸湿したりすると、より腰が弱くなり、この様な問題が発生しやすかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ケーブルの細径化、止水用材料の1パット当りの長さの確保等の為には、止水用材料の厚みをより薄くする要求があることも前提として、上記(1)、(2)の問題点が改善された止水用材料を得るべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、「▲1▼厚さ10〜100μmのプラスチックフィルムと、目付量5〜100g/m2の不織布がラミネートされてなる支持基材(1)の不織布面に、被膜形成性樹脂(A)及び粒径5〜200μmの粒子状の吸水性樹脂(B)からなる吸水性被膜(2)が形成されてなり、▲2▼厚みが500μm以下であり、▲3▼剛軟度が60〜170mmであり、▲4▼シート又はテープ状であることを特徴とする止水用材料」;並びに、「この止水用材料が、ケ−ブル外被と光ファイバ−との間に、プラスチックフィルム面がケーブル外被側となるように巻き付けられてなる光ファイバ−ケーブル」である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、該支持基材(1)に用いられるプラスチックフィルムは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、及びこれらプラスチックフィルム同士ラミネートしたものである
好ましいものは、100℃以上の熱変形温度を有する合成樹脂で形成されたものであり、例えばポリプロピレンフィルム及びポリエステルフィルムが挙げられる。ここで、熱変形温度の測定方法は、JIS−K6745に記載されている方法である。
【0007】
100℃以上の熱変形温度を有する合成樹脂で形成されたフィルムを支持基材に用いることにより、止水用材料をスロット型スペーサーに巻き付けた後、その外側に溶融されたポリエチレン樹脂を流して外被を作る際、プラスチックフィルムが熱変形を起こすことが抑制されるため、スロット内に凹面状に落ち込むことがなく、光ファイバーに接触するというトラブルの発生が抑制される。
プラスチックフィルムの厚さは、通常10〜100μm、好ましくは、20〜60μmである。10μmより薄いと、止水用材料の腰の強度(剛軟度)が不十分となり、作業性が悪く、さらにスロット内に落ち込みやすい。一方100μmより厚いと、腰の強度が大きすぎて作業性が悪くなる。
プラスチックフィルムの少なくとも片面(不織布とラミネートする面)は、接着性を良くするために、コロナ処理等により、平滑性を乱した方が好ましい。
【0008】
該支持基材(1)に用いられる不織布の材質としては、生分解のしない合成繊維、例えば、ポリエステル系合成繊維、ポリプロピレン系合成繊維、アクリル系合成繊維など及びこれらの混繊維が挙げられる。
又不織布の製造方法は特に限定しないが、薄手の不織布が得られる方法が好ましく、例えばスパンボンド法やメルトブロー法が挙げられる。
不織布の目付量は5〜100g/m2であり、好ましくは15〜60g/m2である。5g/m2より少ないと、吸水性被膜との接着性が悪い。一方、100g/m2より多いと、得られた止水用材料の厚みが大きくなり、作業性が悪くなる。
【0009】
プラスチックフィルムと不織布をラミネートする方法は特に限定はなく、通常の方法でよい。例えば、グラビアコーターを用いてドライラミネート用接着剤をプラスチックフィルムの上に塗布し、不織布を重ねて乾燥させる方法などがある。
【0010】
本発明において、吸水性被膜(2)の成分である被膜形成性樹脂(A)及び吸水性樹脂(B)は、何れも特開平5−156234号公報記載のものと同様のものを使用できる。即ち、被膜形成性樹脂(A)としては、シリル基を有する樹脂(A1)単独で用いるか、又は(A1)と他の被膜形成性樹脂(A2)を併用することが好ましい。
シリル基を有する樹脂(A1)としては、例えば、シリル基を有するビニル系樹脂(A1−1)、シリル基を有するウレタン樹脂(A1−2)及びこれらの結合したものが挙げられる。これらは併用してもよい。
【0011】
加水分解性シリル基を有するビニル系樹脂(A1−1)としては、例えば、アルコキシシリル基を有するビニル系単量体(イ)とその他のビニル系単量体(ロ)との共重合体が挙げられる。
アルコキシシリル基を有するビニル系単量体(イ)としては、例えばアルコキシシリル基を有するビニルシラン;アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリロキシアルキルシランなど特開平5−156234号公報記載のものが挙げられる。
【0012】
その他のビニル系単量体(ロ)としては、例えば、
(1)(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜20);
(2)芳香族ビニル系単量体;
(3)ハロゲン化ビニル系単量体;
(4)アルキルまたはシクロアルキルビニルエーテル;
(5)ビニルエステル;
(6)ニトリル基含有ビニル系単量体;
(7)アミド基含有ビニル系単量体;
(8)エポキシ基含有ビニル系単量体;
(9)ふっ素置換アルキル基を有するビニル系単量体;
(10)ポリジメチルシロキサン基含有ビニル系単量体;
(11)不飽和モノまたはポリカルボン酸類;
(12)脂肪族または芳香族ビニルスルホン酸;
(13)(メタ)アクリルスルホン酸;
(14)ポリオキシエチレン基含有ビニル系単量体
等特開平5−156234号公報記載のものが挙げられる。
【0013】
これらその他のビニル系単量体(ロ)として例示したもののうち好ましいものは、アニオン性もしくは非イオン性親水基含有ビニル系単量体[上記(11)〜(14)]、特にポリオキシエチレン基含有ビニル系単量体(14)である。その他のビニル系単量体(ロ)は二種以上併用してもよい。
シリル基を有するビニル系樹脂(A1−1)を構成する(イ)と(ロ)の割合は、(イ)は、通常0.01〜60重量%、好ましくは、0.5〜30重量%、(ロ)は、通常40〜99.99重量%、好ましくは、70〜99.5重量%である。
(イ)が0.01重量%未満であると樹脂組成物の塗工性が不良となりまた被膜の吸水速度が小さくなり、60重量%を越えると被膜の吸水速度が小さくなり実用化に耐えなくなる。
【0014】
加水分解性シリル基を有するウレタン樹脂(A1−2)としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオール成分(好ましくは、ポリオキシエチレン鎖を有する親水性ポリオールを含有するポリオール成分)を反応して生成するNCO末端プレポリマーにγ−アミノプロピルトリメトキシシランを反応させたものや、同様のものを反応して生成するOH末端プレポリマーにγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランを反応させたもの等特開平5−156234号公報記載のものが挙げられる。
これらの加水分解性シリル基を有する樹脂(A1)の分子量は特に制限されないが、通常1,000〜100,000、好ましくは3,000〜60,000である。(A1)は大気中に暴露されると常温で網状組織を形成し、硬化する。
【0015】
吸水性樹脂(B)としては、特開平5−156234号公報記載の下記▲1▼〜▲5▼と同様のものが使用でき、これらは2種以上併用してもよい。
▲1▼デンプンもしくはセルロース(a)と、カルボキシル基やスルホン酸基を有する水溶性単量体もしくは加水分解により水溶性となる単量体から選ばれる1種以上の単量体(b)と、架橋剤(c)とを必須成分として重合させ、必要により加水分解を行うことにより得られる吸水性樹脂。
▲2▼(a)と(b)とを重合させ、加水分解したもの
▲3▼(a)の架橋物
▲4▼(b)と(c)との共重合体を必要により加水分解したもの
▲5▼(b)のうち自己架橋性を有するものの重合物
【0016】
これら(B)として例示した吸水性樹脂のうち、好ましいものは、▲1▼、並びに▲4▼のうち、架橋ポリアクリルアミドの部分加水分解物、架橋されたアクリル酸−アクリルアミド共重合体、架橋されたポリアクリル酸(塩)、架橋されたアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、架橋されたイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、および架橋されたカルボン酸変性ポリビニルアルコールである。
吸水性樹脂(B)は通常粒状であり、その粒径は、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。5μmより小さいと、吸水表面が上がるが細かすぎてままこが生じやすく吸水スピードが低下する。一方200μmより大きいと、吸水面が下がり吸水スピードが低下し、さらに塗料化したときの沈降が大きく均一に塗布することが難しくなる。
吸水性樹脂(B)の純水に対する吸水性能は、通常50ml/g以上、好ましくは100〜1,000ml/gである。
【0017】
他の被膜形成性樹脂(A2)としては塗料、コーティング材として一般に用いられている各種の樹脂が挙げられる。たとえば、ラッカー系、アクリルラッカー系、熱硬化アクリル系、アルキッド系、メラミン系、エポキシ系、ウレタン系、エステル系、シリコン系、フッソ系などの樹脂が挙げられる。これら他の被膜形成性樹脂(A2)を用いる場合、好ましいものはウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂である。
【0018】
該吸水性被膜中には、直径が30μm以下で、長さが0.2〜5mmの繊維状物質を0.1〜5重量%含むことが好ましい。
繊維状物質の直径が30μmを越えるもの、長さが5mmを越えるもの、又は添加量が5重量%を越えるものは、吸水性被膜を作るときの塗工性が悪くなる。一方、長さが0.2mmより短いか、又は添加量が0.1重量%より少ないと、吸水速度の向上及び水走り防止の効果が不十分である。
繊維状物質を用いると、次の2つの効果が得られる。
▲1▼繊維状物質の毛細管現象により、吸水速度が上がる。
▲2▼吸水後、吸水膨潤した樹脂が、例えば、光ファイバーケーブルの場合で言うと、ケーブル外被と光ファイバーとの間の間隙を塞ぎ水走りを防止するが、この時、繊維状物質が狭い間隙に詰まり、障害物となるので、水走り防止の効果を大きくしてくれる。
【0019】
特に前記の加水分解性シリル基を有する樹脂(A1)を被膜形成性樹脂(A)用に用いた吸水性被膜の場合は、水が浸入したときに迅速に吸水膨潤し、膨潤した吸水性樹脂が脱落し易い吸水性被膜であるため、さらにこの繊維状物質を入れることにより、脱落が迅速であるとともに、脱落したものが間隙を通して流れていくのを防いでくれる相乗効果がある。
【0020】
ここで、この繊維状物質の種類は、特に制限はなく、合成もしくは天然の有機繊維や無機繊維が挙げられるが、比重が低く、微生物分解されにくく、耐熱性が良好な点で、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維が好ましい。
さらに、該吸水性被膜中には、必要により各種添加剤(界面活性剤、浸透剤、シリル基の加水分解触媒など)を含有していてもよい。
【0021】
本発明において、該吸水性被膜(2)中の各成分の割合は重量基準で以下の通りである。
Figure 0003879074
(A)が0.1未満であると塗工時の被膜形成性が不十分となり、50を越えると被膜の吸水性が低くなる。
(A)として(A1)を単独で使用する場合は、0.1〜30部であることが好ましく、(A1)と(A2)を併用する場合は、(A1)が0.1〜30部、(A2)が20部以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の止水用材料の製法を例示すると、予めプラスチックフィルムと不織布をラミネートして、支持基材(1)を得る。次に被膜形成性樹脂(A)、吸水性樹脂(B)、界面活性剤、繊維状物質、その他添加剤を含有する塗料を支持基材(1)の不織布面上、又は不織布面上とプラスチックフィルム面上の両面に塗布して硬化させることにより本発明の止水用材料が得られる。
塗料の製法としては、特開平5−156234号公報記載の製法と同様の製法が使える。例えば、上記各成分に適当な溶剤を加えて通常の撹拌混合またはボールミル等の混合装置を用いて分散、混合し、さらにシリル基含有樹脂(A1)を用いた場合は、必要により(A1)の加水分解性シリル基を互いに架橋させることにより得られる。この架橋の方法としては特開平5−156234号公報記載と同様の方法がある。
【0023】
支持基材(1)上に上記塗料を塗布する方法としては、特開平5−156234号公報記載の方法と同様の方法が使える。例えば、塗料を必要により適当な溶剤で希釈して粘度を調整し、ブレードコーター、ロールコーター、グラビアコーターなど任意の塗布手段により、支持基材の不織布面に約5〜200g/m2(固形分)の割合で塗布する。
必要により、支持基材のプラスチックフィルム面にも上記塗料を塗布してもよい。この場合のプラスチックフィルム面の塗布量は30g/m2以下が好ましい。30g/m2を越えると、脱落しやすくなる。
【0024】
本発明の止水用材料は、シート又はテープ状であり、光ファイバーケーブルに用いる場合は、スロット型スペーサー等へ巻き付けて用いられるが、この時の本発明の止水用材料の厚みは、通常500μm以下であり、好ましくは350μm以下である。
500μmを越えると、本発明の止水用材料が巻物の製品の場合、1パット当たりの長さが短くなり、そのためテープの交換が頻繁となり、本発明の止水用材料を機械巻きでスロット型スペーサー等に巻き付ける際の作業性が悪くなる。
さらにケーブルとして一般的に望まれている細径化や軽量化とは反対の方向となり好ましくない。
【0025】
又、巻き付け時の作業性の良し悪し、及びスロット内への落ち込みの有無はシート又はテープの腰の強さに影響される。
このシート又はテープの腰の強さを数値化したものとして剛軟度がある(試験法については実施例の中に記載した)。本発明の止水用材料の剛軟度は通常60〜170mmであり、好ましくは80〜140mmである。
60mmより小さいと、テープの腰が弱く巻き付け時にシワが生じ易くなる。一方170mmより大きいと、テープの腰が強すぎて巻き付けにくくなる。
【0026】
本発明において、必要により、吸水性被膜(2)の表面を布帛で被覆することができる。
布帛は、吸水性被膜が吸湿したときに被膜表面のべと付きを防止するものであり、止水性材料の止水機能を妨げないような適度な空隙があり、かつ微生物分解による水素ガス発生がおこらないものでなければならない。
この様な布帛としては、合成繊維不織布、合成繊維織物等が挙げられ、合成繊維としては、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどが使用でき、特に強度や価格の面からスパンボンド法やメルトブロー法で製造された合成繊維長繊維製不織布が好ましい。
布帛の目付量は、通常5〜20g/m2、好ましくは、10〜15g/m2である。前記のように、止水の作用機構が阻害されることなく、べと付きが抑制されるためにはこの範囲とする必要がある。5g/m2未満では、べと付き抑制効果が乏しく、又強度が弱くて加工が難しい。20g/m2を超えると、吸水膨潤した樹脂が布帛中の空隙から通過し難く、止水性能が低下する。
【0027】
本発明の止水用材料は、適当な巾のテープにして、スロット型スペーサー等に巻き付けて光ファイバーケーブル等に用いられるが、このときの巻き付け方法は特に限定されないが、大きく分けてたて沿え巻きと横巻きがあり、横巻きでは、例えば中心式テーピング機、アーム式テーピング機、タンゼンシャル式テーピング機等がある。本発明の止水用材料は、巻き付け時の作業性が優れることが特徴の一つであるが、特にたて沿え巻きのときに大きな効果が得られる。
【0028】
本発明の止水用材料の一例を図面を用いて更に説明する。
図1は本発明の止水用材料の一例を示す断面図である。プラスチックフィルム1と不織布2をラミネートした支持基材3の不織布面に吸水性被膜4がある。
【0029】
図2は本発明の止水用材料の一例を示す断面図である。プラスチックフィルム1と不織布2をラミネートした支持基材3の不織布面に吸水性被膜4があり、その表面を薄いカバー用不織布5で被覆されている。一方支持基材のプラスチックフィルム面にも薄い吸水性被膜4がある。
【0030】
本発明の光ファイバーケーブルは、本発明の止水用材料がケ−ブル外被と光ファイバ−との間に巻き付けられてなるものであるが、以下その一例を示す図面を用いて説明する。
図3はスロットタイプの本発明の水走り防止型光ファイバーケーブルの断面図である。このケーブルは、中心部にコアとしてのテンションメンバー9と、その周りに設けられたスロットを有するスロット型スペーサー10と、そのスロット内に敷設された光ファイバー7と、スロット型スペーサー10の回りに設けられた本発明の止水用材料6と、外被8よりなる。この止水用材料6はテープ状で、吸水性被膜面を内側に向けてスロット型スペーサー10の表面を覆うようにぐるぐる巻きつけられている。
【0031】
ここで、吸水性被膜面を内側に向けて巻き付けるのは、外被がひび割れ等が生じて水が進入した際、吸水性被膜中の吸水性樹脂が速やかに吸水膨潤し、被膜から脱落し、速やかにスロット内の間隙を埋めて水走りを防止することができるようにするためである。
なお、大型の光ファイバーケーブルの場合は、図3に例示したようなケーブルが更に複数の本数束となり、その外側がテープ状の本発明の止水用材料で更にぐるぐる巻きつけられ、且つケ−ブル外被で包まれた二重構造とすればよい。
またこの場合、複数の本数の束のすき間にPP製ヤーンを基材とし、この基材上に前記吸水性被膜が形成された本発明の止水用材料を介在させてもよい。
【0032】
【作用】
図1および図2に例示するような構成の本発明の止水用材料は、優れた止水効果を阻害することなく、作業時の問題及びスロット内への落ち込みによるトラブルを改善したものである。
即ち、本発明の止水用材料をテープ状にして光ファイバーケーブルや電線ケーブルのスロット型スペーサー等に巻き付ける作業において、テープに適度な腰の強度があり、巻き付けやすく、シワになりにくい。
また、支持基材の不織布面に吸水性被膜を形成させているので、支持基材と吸水性被膜との接着性が優れ、巻き付け作業時に吸水性被膜が一部剥がれたり、脱落したりしない。又、テープに適度な腰の強度があるため、スロット型スペーサー等に巻き付けた後、テープがスリット内の間隙に落ち込んで光ファイバーに接触するというトラブルを防ぐことができる。
【0033】
【実施例】
以下製造例、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下%は重量%を表す。
製造例 1
イソプロパノール100gを300mlの四つ口コルベンに仕込み、攪拌しながら83℃に加熱した。
メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのエチレンオキシド8モル付加物80g,
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 1g,
メタクリル酸メチル2−ヒドロキシエチル19g,
n−ラウリルメルカプタン 2g 及び
アゾビスイソバレロニトリル(以下AIVNという)2g
の混合溶液を3時間かけて滴下した。
2時間同温度で反応させた後、AIVN:0.2gを追加して更に2時間反応させた。この様にして共重合体のイソプロパノール50%溶液(P1)を得た。
【0034】
実施例1
ポリエステルフィルム(F1)[厚み25μm,コロナ処理]と、ポリエステル不織布(N1)[40g/m2,商品名アクスターG2040,東レ(株)製]をラミネートして支持基材(1−1)を得た。次に、
共重合体のイソプロパノール50%溶液(P1)29.0g,
ジブチル錫ジラウレート1.0g,
サンウェットIM−5000MPS[三洋化成工業(株)製吸水性樹脂,アクリル酸Na部分架橋型吸水性樹脂,平均粒径20〜50μm]60.0g,
およびMEK10.0g
を配合し、70℃で3時間加熱混合して各塗料を得た。
これをバーコーターで支持基材(1−1)の不織布面に塗布し、105℃で3分間乾燥して、固形分で50g/m2の被膜を有する、全体の厚み230μmの試験サンプルを得た。その物性試験結果を表1に示す(測定法は表1に注記)。
【0035】
実施例2
ポリプロピレンフィルム(F2)[厚み25μm,コロナ処理]とポリエステル不織布(A)をラミネートして支持基材(1−2)を得た。次に、
共重合体のイソプロパノール50%溶液(P1)29.0g,
ジブチル錫ジラウレート1.0g,
サンウェットIM−5000MPS60.0g,
ナイロンの短繊維(直径19μm、長さ1mm)2.0gおよび
MEK10.0g
を配合し、70℃で3時間加熱混合して各塗料を得た。
これをバーコーターで支持基材(1−2)の不織布面に塗布し、その表面に目付量12g/m2の不織布(N2)を貼り合わせ、105℃で3分間乾燥して固形分で100g/m2の被膜を有する全体の厚み310μmの試験サンプルを得た。その物性試験結果を表1に示す(測定法は表1に注記)。
【0036】
比較例1
支持基材(1−1)の替わりに、ポリエステル不織布(N1)を支持基材に用いる以外は、実施例1と同様にして厚み205μmの試験サンプルを得た。その物性試験結果を表1に示す。
【0037】
比較例2
支持基材(1−1)の替わりに、ポリエステルフィルム(F1)を支持基材に用いる以外は、実施例1と同様にして厚み130μmの試験サンプルを得た。その物性試験結果を表1に示す。
【0038】
実施例3
重合体(P1)の替わりにウレタン系塗料用樹脂(P2)を用いる以外は、実施例1と同様にして厚み230μmの試験サンプルを得た。その物性試験結果を表1に示す。
【0039】
比較例3
支持基材(1−1)の替わりに、ポリエステル不織布(N1)を支持基材に用いる以外は、実施例3と同様にして厚み205μmの試験サンプルを得た。その物性試験結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003879074
【0041】
注1)樹脂及び不織布
ウレタン系塗料用樹脂(P2):ポリエステル系ウレタン樹脂,商品名サンプレンIB−1700D,三洋化成工業(株)製、
不織布(N2):ポリエステル長繊維不織布,スパンボンド法,目付12g/m2,商品名マリックス90123WSO,ユニチカ(株)製
【0042】
注2)測定法
1)吸水速度(sec):10cm×10cmの大きさに裁断した試験サンプルを塗布面を上向きにして水平な台の上に置き、サンプルのほぼ中央部に上から1mlの人工海水〔アクアマリン;八洲薬品(株)製〕をピペットで垂らし、人工海水の全量が吸水されるまでの時間を測定した。
【0043】
2)吸水量:ナイロン製の網袋(250メッシュ)の中に10cm×10cmの大きさに裁断した試料片を入れ、これを袋ごと人工海水中に浸した。1時間後に袋ごと空中に引き上げ、静置して重力で15分間水切りしたのち、重量を測定して吸水量を求めた。(網袋のみを用いて上記と同様の操作を行い、この分の重量をブランクとして差し引いた)
【0044】
3)剛軟度:長さ200mm,幅25mmの大きさに裁断して試験片を5枚採取する。試験片を、一端が45度の斜面を持ち、表面がなめらかな水平台の上に短辺をスケールの基線にあわせて置く。
試験片と同じ大きさのおさえ板で試験片をおさえ、斜面の方向に約10mm/secの速度ですべらせ、試験片の一端が斜面と接したときの他端の位置をスケールで読む。剛軟度は移動距離(mm)で示し、5枚の試験片の表および裏を測定しその平均値をもって表す。
[プラスチック実用試験ハンドブッック(プラスチック標準試験法研究会編)のP193に準ずる。]
【0045】
4)作業性:4cm×100cmの大きさに裁断した試料片を、直径約1cmのスロット型スペーサーに吸水性被膜が内側になるようにしてたて沿え巻き、及び隙間ができないように約1cm重なるように横巻きをし、そのときの作業性を調べた。
○ : 巻き付け時の作業性が良好で、すぐに巻けた。
△ : 巻き付け時の作業性が少し悪く、少し時間を要した。
× : 巻き付け時の作業性が悪く、かなり時間を要した。
5)剥離性:10cm×10cmの大きさに裁断した試験サンプルを180度に折り曲げて、吸水性被膜の剥離状態を調べた。
○ : 剥離なし
× : 剥離あり
【0046】
【発明の効果】
(1)本発明の止水用材料は、本来の優れた止水性能(吸水速度・吸水量は非常に大きい)を阻害せずに、光ファイバーケーブルや電線ケーブルのスロット型スペーサー等に巻き付ける時の作業性を改良したものである。
従来の支持基材として不織布を用いたものは、腰が弱いため作業性が悪く、さらにテープがスロット内に落ち込んで光ファイバーに接触するというトラブルがあった。特に、吸水性被膜が湿気により吸湿したりすると、より作業性が悪くなる。一方、支持基材としてプラスチックフィルムを用いたものは、腰は強いが、巻き付けたときのしまり具合が悪く、吸水性被膜がプラスチックフィルムから剥がれやすいという問題がある。
本発明の止水材料は、これらの問題点を解決したものであり、本発明の光ファイバーケーブル用の他、電線ケーブル用等の止水用材料として有用である。
【0047】
(2)本発明の止水材料を使用した本発明の光ファイバーケーブルや、電線ケーブルは、上記のように作業性が優れているので、スペーサーに巻き付けられたテープはシワにならず、又重ね巻きをしたときのテープ同士の重なり具合が一定となりやすく、従って止水性能に優れ有用である。さらに巻き付けたテープがスロット内に落ち込むことによるトラブルが解消されたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の止水用材料の一実施例を示す断面図である。
【図2】 本発明の止水用材料の一実施例を示す断面図である。
【図3】 本発明の光ファイバーケーブルの一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 プラスチックフィルム
2 支持基材用不織布
3 支持基材
4 吸水性被膜
5 カバー用不織布
6 止水用材料
7 光ファイバー
8 外被
9 テンションメンバー
10スロット型スペーサー

Claims (5)

  1. 厚さ10〜100μmで、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム及びナイロンフィルムからなる群より選ばれるプラスチックフィルムと、目付量5〜100g/mの不織布がラミネートされてなる支持基材(1)の不織布面に、被膜形成性樹脂(A)及び粒径5〜200μmの粒子状の吸水性樹脂(B)からなる吸水性被膜(2)が形成されてなり、厚みが500μm以下であり、剛軟度が60〜170mmであり、シート又はテープ状であることを特徴とする止水用材料。
  2. 該プラスチックフィルムが、100℃以上の熱変形温度を有する合成樹脂で形成されてなる請求項1記載の止水用材料。
  3. 被膜形成性樹脂(A)が、加水分解性シリル基を有する樹脂(A1)、又は(A1)と他の被膜形成性樹脂(A2)との併用である請求項1または2記載の止水用材料。
  4. 該吸水性被膜(2)が、直径30μm以下、長さ0.2〜5mmの繊維状物質を0.1〜5重量%含んでなる請求項1〜3のいずれか記載の止水用材料。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載の止水用材料が、ケ−ブル外被と光ファイバ−との間に、プラスチックフィルム面がケーブル外被側となるように巻き付けられてなる光ファイバ−ケーブル。
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