JP3878239B2 - 循環器系疾患予防治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルギン酸オリゴ糖又はその塩を有効成分として含む循環器系疾患予防治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
コレステロールは、アセチル-CoAよりメバロン酸やスクアレンなどの中間体を経て、20数段階の複雑な反応により生合成される。その複雑な反応においてHMG-CoA (ヒドロキシメチルグルタリル-CoA)還元酵素は律速酵素として知られ、その阻害剤として発見されたコンパクチンはコレステロール低下剤として実用化されている。そして、ACAT(アシル-CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ) も同様にコレステロール代謝における律速酵素として注目され、その阻害剤の開発が進められている。そのACAT阻害剤は、腸管に働けば食事からのコレステロール吸収を阻害し、食事性の高コレステロール血症に効力を発揮するだけでなく、血管壁のマクロファージに働けば、泡沫化を抑制して動脈硬化の予防にプラスに作用すると考えられている。すなわち、ACAT阻害剤は、抗高脂血症剤及び抗動脈硬化剤として一度に期待される臨床的に非常に意義深い新薬である。その例として、アミド基をもつもの(アミド剤)、尿素骨格をもつもの(ウレア剤)、イミダゾール基をもつもの(イミダゾール剤)の3つに大別することができるが、オリゴ糖の例はない。さらに、ACAT阻害剤の中には組織(臓器)ターゲッティングという安全性の問題も残されている。例えば、ACAT阻害剤の投与により掻痒感、発疹、頭重、頭痛、めまい、食欲不振、下痢、腹部満腹感、便秘、悪心・嘔吐、心窩部不快感、筋肉痛、胆石形成等の副作用を生ずる場合がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルギン酸オリゴ糖又はその塩を有効成分として含む循環器系疾患予防治療剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題の基づいて鋭意研究を行った結果、アルギン酸オリゴ糖又はその塩が循環器系疾患予防治療剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アルギン酸オリゴ糖又はその塩を有効成分として含む循環器系疾患予防治療剤である。
【0005】
ここで、アルギン酸オリゴ糖又はその塩としては、アルギン酸又はその塩をアルテロモナス属に属する微生物の菌体又はその処理物で処理したものが挙げられ、アルテロモナス属に属する微生物としてはアルテロモナス・エスピーNo.1786 が挙げられる。
また、アルギン酸オリゴ糖又はその塩は、単独又はいずれの組み合わせにより用いてもよい。
【0006】
さらに、アルギン酸オリゴ糖又はその塩としては、次式I:
【0007】
【化4】
Figure 0003878239
【0008】
(式中、Rは水素原子又は金属イオンを表し、R’はG、M、G−G、M−G、M−M、G−G−G、G−G−M、G−M−G、G−M−M、M−G−G、M−M−G、M−M−M又はM−G−M(Mは次式II:
【0009】
【化5】
Figure 0003878239
【0010】
(Rは前記と同様である。)
で示されるD−マンニュロン酸を表し、Gは次式III:
【0011】
【化6】
Figure 0003878239
【0012】
(Rは前記と同様である。)
で示されるL−グルロン酸を表し、各単糖間の結合はα−又はβ−1,4結合である。)を表す。)
で示される化合物のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0013】
「少なくとも1つ」とは、上記各種アルギン酸又はその塩を、前記と同様に単独又はいずれかの組み合わせにより用いることができることを意味する。例えば、上記式Iにおいて、R’がG又はMであるものを単独で用いることはもちろん、R’がG−G、M−G、G−G−Mなどの2糖又は3糖の2種以上を組み合わせて用いてもよく、さらに、2糖のアルギン酸ナトリウムオリゴ糖と3糖のアルギン酸カリウムオリゴ糖との組み合わせなどのように、異なるアルギン酸オリゴ糖の塩を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
循環器系疾患としては、高脂血症(例えば高コレステロール血症、高中性脂肪血症など)又は動脈硬化(例えばアテローム性動脈硬化など)が挙げられる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の循環器系疾患予防治療剤に含まれる有効成分であるアルギン酸オリゴ糖又はその塩は、アルギン酸又はその塩に、アルテロモナス属に属する微生物が生産するアルギン酸又はその塩の分解酵素、即ちアルギン酸リアーゼを作用させて得ることができる。アルギン酸とは、D−マンニュロン酸とL−グルロン酸を構成糖とする多糖類の一つであり、その塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム又はこれらの混合物が挙げられる。また、アルギン酸オリゴ糖の塩としては、例えば、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖、アルギン酸カリウムオリゴ糖、アルギン酸カルシウムオリゴ糖又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0016】
先ず、本発明の循環器系疾患予防治療剤に含まれる有効成分であるアルギン酸オリゴ糖又はその塩を得るために用いられるアルギン酸リアーゼを生産する微生物について説明する。
かかる微生物としては、アルテロモナス属に属する微生物が挙げられ、アルテロモナス・エスピー No.1786を例示することができる。
【0017】
アルテロモナス・エスピー No.1786は、魚介類の腸及びその内容物よりアルギン酸ナトリウムを唯一の炭素源としてスクリーニングを実施した結果、カブトガニの腸より分離されたものであり、その形態学的性質及び生理学的性質は下記の表1に示す通りである。
【0018】
【表1】
Figure 0003878239
【0019】
上記表1に示す菌株の性質に基づいて清水らの方法〔海洋微生物研究法、学会出版センター、 228〜239 (1985)参照〕に従って同定を試みた結果、上記微生物 (本菌株) は、アルテロモナス属に属することが判明した。尚、本菌株は、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に、FERM P-11685として寄託されている。
【0020】
上記表1に示す性質を有する菌株を培養し、得られた培養物から通常の精製手法によってアルギン酸リアーゼを分離精製する。
培地としては、例えば、アルギン酸ナトリウム(1.00%)、硫酸ナトリウム(1.00%)、塩化カリウム(0.08%)、硫酸マグネシウム(7水和物)(1.24%)、リン酸水素二カリウム(3水和物)(0.01%)、塩化アンモニウム(0.10%)、クエン酸鉄アンモニウム(0.01%)及び塩化カルシウム(0.15%)を含む培地組成が挙げられる。
【0021】
培養は、例えば、凍結乾燥菌体アルテロモナス・エスピー No.1786株を2回前培養 (各々25℃、2日) 後、本培養 (25℃、1日) を行う。
このようにして上記微生物を培養することによって、アルギン酸リアーゼが蓄積された培養上清又は微生物を含む培養物が得られる。次に、該培養物を材料にして、蛋白質の分離、精製に用いられる方法によりアルギン酸リアーゼを得ることができる。例えば、上記培養液から分画分子量500,000 限外濾過膜 (ロミコン社製) により菌体を取り除いて粗アルギン酸リアーゼ溶液とするほか、更に、該粗アルギン酸リアーゼ溶液について、塩析法、遠心分離法、各種クロマトグラフィー、電気泳動等を適当に組み合わせて精製を行ってもよい。各種クロマトグラフィーとしては、疎水、ゲルろ過、イオン交換、逆相、アフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。また、精製品の純度及びその分子量の確認のため、SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法やゲル濾過法等を用いることもできる。
【0022】
このようにして得られたアルギン酸リアーゼの酵素的性質は次の通りである。▲1▼作用:アルギン酸又はその塩を基質として上記微生物の生産するアルギン酸リアーゼを反応させた時、反応生成物であるアルギン酸オリゴ糖又はその塩の二重結合に由来する特異吸収波長である230nm における吸光度の増加、及び生じるオリゴ糖による還元力の増加が確認された。
【0023】
▲2▼至適pH:上記微生物の生産するアルギン酸リアーゼは、pH7.0〜7.5の範囲で相対活性量が高く、相対活性量が最大になるpH7.0が至適pHである。▲3▼至適温度及び熱安定性:上記微生物の生産するアルギン酸リアーゼは、45〜55℃の範囲で高く、相対活性量が最大になる50℃が至適温度であった。また、室内での濃縮を行っても失活しなかった。
【0024】
▲4▼酵素活性:下記組成の反応液を用い、アルギン酸ナトリウムとアルギン酸リアーゼを50℃にて10分間反応させ、生成したオリゴ糖量をネルソン・ソモギー法により測定することにより、アルギン酸リアーゼの酵素活性を測定できる。この酵素活性は、1分間に1μmoleのマンニュロン酸に相当するアルギン酸ナトリウムオリゴ糖を生成する酵素量を1単位として示す。酵素活性測定には、アルギン酸カリウムを用いても良い。
【0025】
(反応液の組成)
・0.5%アルギン酸ナトリウム(和光純薬製) を含む0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.0) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.45ml
・酵素液・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05ml
尚、本発明のアルギン酸オリゴ糖又はその塩を製造するためには、上記本菌株を通常の変異手段を適用して得られる変異株であってアルギン酸リアーゼ産生能を有する菌株を培養して得られるアルギン酸リアーゼも使用することができる。次に、原料のアルギン酸又はその塩に、前記アルギン酸リアーゼを反応させてアルギン酸オリゴ糖又はその塩を得る。
【0026】
尚、この場合、アルギン酸又はその塩とアルギン酸リアーゼとの反応温度は45〜55℃、反応時のpHが7.0〜7.5の条件で行うのが好ましく、50℃、pH7.0の条件で行うのが更に好ましい。
本発明のアルギン酸オリゴ糖又はその塩としては、末端が4,5−不飽和ウロン酸であり、D−マンニュロン酸及びL−グルロン酸を構成糖とするオリゴ糖であり、例えば、次式I:
【0027】
【化7】
Figure 0003878239
【0028】
(式中、Rは水素原子又は金属イオンを表し、R’はG、M、G−G、M−G、M−M、G−G−G、G−G−M、G−M−G、G−M−M、M−G−G、M−M−G、M−M−M又はM−G−M(Mは次式II:
【0029】
【化8】
Figure 0003878239
【0030】
(Rは前記と同様である。)
で示されるD−マンニュロン酸を表し、Gは次式III:
【0031】
【化9】
Figure 0003878239
【0032】
(Rは前記と同様である。)
で示されるL−グルロン酸を表し、各単糖間の結合はα−又はβ−1,4結合である。)を表す。)
で示される化合物のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0033】
また、前記式(I)、(II)及び(III) において、Rは水素原子又は種々の金属イオンを表す。金属イオンとしては、例えば、Na、K 、Ca1/2 、Mg1/2 、Cu1/2 、Zn1/2 、Fe1/2 、Fe1/3 などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
以上のようにして得られるアルギン酸オリゴ糖又はその塩の活性成分は、そのまま本発明の循環器系疾患予防治療剤として用いることができ、凍結乾燥、噴霧乾燥、熱風乾燥等の方法で乾燥しておくことができる。
【0035】
本発明の循環器系疾患予防治療剤は、高脂血症又は動脈硬化に対する予防及び治療を目的として用いることができる。また、投与する方法は経口により行い、その投与形態としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。また、その投与量は動物か人間かによって、また、年齢及び健康状態により異なり、広範囲に変えることができる。この場合、本発明の循環器系疾患予防治療剤の有効量と適切な希釈剤及び薬理学的に使用し得る担体との組成物として投与される有効量は、配合量として全量の0.001 〜20重量%、好ましくは0.01〜20重量%であり、1日1回から数回に分けて2日以上投与される。
【0036】
本発明の循環器系疾患予防治療剤を経口投与する場合、剤形により乳糖や澱粉等の賦形剤を含有させることもでき、他の薬剤(ビタミン剤)との併用も可能である。
本発明において、アルギン酸オリゴ糖又はその塩が循環器系疾患予防治療剤として有効であることを裏付ける薬理試験、及び毒性試験を以下に述べる。
【0037】
〔試験例1〕循環器系疾患予防治療試験
動物(ラット)を用い、本発明の循環器系疾患予防治療剤としての効果を調べるため、以下の試験を行った。
自然発症高血圧ラット(SHR系,6週齢)を試験動物として用いた。オリゴ糖(3%のアルギン酸カリウムオリゴ糖)を餌中に加えて投与した群(オリゴ糖群,6匹)とオリゴ糖を加えない群(対照群,6匹)に分けて飼育した。5週間後、それぞれのラットの肝臓を摘出し、ACAT活性を測定した。
【0038】
ACAT活性は、肝臓ミクロソーム分画において、Oleoyl-coenzyme A を基質として添加し、酵素反応後生成したOleoyl cholesterolをHPLCで分離・定量することにより求めた。
その結果、対照群の活性が210.7 ±17.8pmol/min/mg protein であるのに対し、オリゴ糖群が133.3 ±12.4pmol/min/mg protein となった。この値の間は、統計処理の結果、p <0.01で有意な差として認められた。
【0039】
この結果により、アルギン酸オリゴ糖にACAT阻害作用が認められた。
従って、本発明の循環器系疾患予防治療剤は、高脂血症又は動脈硬化の予防治療に有効であると考えられる。
【0040】
〔試験例2〕毒性試験
アルギン酸の分解物を用いてマウスに対する急性毒性試験を行った。
OECD化学物質毒性試験指針(1987)に準拠したマウスにおける急性経口毒性試験において、5週齢のICR系雌雄マウスを使用し(1群10匹)、マウス胃ゾンデを用いて強制単回投与した。投与日では投与1時間以内及び5時間目おける死亡例及び死亡率を記録し、更に投与後1〜14日目における死亡例及び死亡率を記録した。なお、アルギン酸の分解物を投与しない群を対照群とした。
【0041】
結果を表2(雄)及び表3(雌)に示す。表2及び表3より、アルギン酸の分解物の単回投与による致死量は雌雄ともに2,000mg/kg以上であるものと認められた。
【0042】
【表2】
Figure 0003878239
【0043】
【表3】
Figure 0003878239
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0045】
〔実施例1〕 アルギン酸塩オリゴ糖の調製
(1) アルギン酸リアーゼの調製
(培地組成)
・アルギン酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.00%
・硫酸ナトリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.00%
・塩化カリウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.08%
・硫酸マグネシウム(7水和物)・・・・・・・・・・・・・・・・1.24%
・リン酸水素二カリウム(3水和物)・・・・・・・・・・・・・・0.01%
・塩化アンモニウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.10%
・クエン酸鉄アンモニウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.01%
・塩化カルシウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.15%
上記組成の培地を用い、凍結乾燥菌体アルテロモナス・エスピー No.1786株を2回前培養 (25℃、2日) 後、本培養 (25℃、1日) を行った。その結果、酵素活性が培養液1ml当たり、0.90単位であるアルギン酸リアーゼ培養液が生産された。
上記培養液から分画分子量500,000 限外濾過膜 (ロミコン社製) により菌体を取り除いて粗アルギン酸リアーゼ溶液とした。
【0046】
(2) アルギン酸ナトリウムオリゴ糖の製造
アルギン酸ナトリウム (10.0kg) を90L の脱塩水に溶解後、上記(1) で得られた粗アルギン酸リアーゼ溶液 (50,000U)を加え、40℃で6時間攪拌しながら反応させた。反応液を除蛋白、脱塩後、凍結乾燥してアルギン酸ナトリウムオリゴ糖粉末を4.2kg得た。
【0047】
(3) アルギン酸カリウムオリゴ糖の製造
アルギン酸カリウム (10.0kg) を90L の脱塩水に溶解後、上記(1) で得られた粗アルギン酸リアーゼ溶液 (50,000U)を加え、40℃で6時間攪拌しながら反応させた。反応液を除蛋白、脱塩後、凍結乾燥してアルギン酸カリウムオリゴ糖粉末を4.2kg得た。
【0048】
尚、同様にしてアルギン酸カリウムとアルギン酸ナトリウムとの混合物を用いれば、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖とアルギン酸カリウムオリゴ糖との混合物が得られる。
【0049】
(4) アルギン酸カルシウムオリゴ糖の製造
(2)及び(3)で得られたアルギン酸ナトリウムオリゴ糖及びアルギン酸カリウムオリゴ糖を、酢酸カルシウムをはじめとする各種の水溶液のカルシウム塩と一緒に電気透析装置 (旭化成工業 (株) 製、商品名、マイクロアシライザー) で処理した。
その結果、アルギン酸ナトリウムオリゴ糖(4.2 kg) からアルギン酸カルシウムオリゴ糖が3.3kg得られた。
【0050】
〔参考例1〕
本参考例は、本発明のアルギン酸ナトリウムオリゴ糖の重合度の分析例を示すものである。
重合度の決定は、マス分析及びNMR分析により行った。マス分析には、ジャスコインタナショナル(株)製の液体クロマトグラフ質量分析装置を用い、NMR分析には日本電子(株)製を用いた。
【0051】
次に、実施例1で調製したアルギン酸ナトリウムオリゴ糖をDEAE GLASS(ナカライテスク社製)を用いたNaClによる0〜0.25M グラジエント溶出による高速液体クロマトグラフィー(HPLC) に供し、フラクションコレクターで分画した。この溶出パターンを図1に示す。230nm に吸収のある画分1〜8(以下、それぞれ「P1」、「P2」、・・・「P8」とする)を回収し、それぞれの画分を同じ条件で再クロマトすると、表4記載のようなオリゴ糖(P1〜P6、P7−1〜P7−6及びP8の画分)が得られた。
【0052】
なお、表4において「P7−1」〜「P7−6」とは、P7が6画分に分画されたものを意味する。
これらのオリゴ糖をマス分析に供した結果、表4に示すようなm/zのピークが検出され、そのm/z値よりそれぞれ重合度を推定した。さらに、NMR分析を行ったところ、図2に示すように本発明のアルギン酸ナトリウムオリゴ糖の構造が示された。図2中、「△」は4,5−不飽和ウロン酸を表し、M及びGは、それぞれ式(II)で示されるD−マンニュロン酸、式(III) で示されるL−グルロン酸を表す。また、本参考例では、式(I) 、(II)及び(III) 中、Rがナトリウムである化合物を用いた。なお、アルギン酸カリウムオリゴ糖及びアルギン酸カルシウムオリゴ糖の構造も同一の構造であった。また、各単糖間の結合は、α−又はβ−1,4結合である。
【0053】
【表4】
Figure 0003878239
【0054】
【発明の効果】
本発明により、循環器系疾患予防治療剤が提供される。本発明の循環器系疾患予防治療剤は、安全でかつ安定である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルギン酸ナトリウムオリゴ糖のHPLCの結果を示す図である。
【図2】アルギン酸ナトリウムオリゴ糖の構造を示す図である。

Claims (4)

  1. 次式I:
    Figure 0003878239
    (式中、Rは水素原子又は金属イオンを表し、R’はG、M、G−G、M−G、M−M、G−G−G、G−G−M、G−M−G、G−M−M、M−G−G、M−M−G、M−M−M又はM−G−M(Mは次式 II
    Figure 0003878239
    (Rは前記と同様である。)で示されるD−マンニュロン酸を表し、Gは次式 III:
    Figure 0003878239
    (Rは前記と同様である。)で示されるL−グルロン酸を表し、各単糖間の結合はα−又はβ−1,4結合である。)を表す。)
    で示される化合物のうちの少なくとも1つであるアルギン酸オリゴ糖又はその塩を有効成分として含む高脂血症又は動脈硬化の予防治療剤。
  2. アルギン酸オリゴ糖又はその塩が、アルギン酸又はその塩をアルテロモナス属に属する微生物の菌体又はその処理物で処理したものである請求項1記載の高脂血症又は動脈硬化の予防治療剤。
  3. アルテロモナス属に属する微生物がアルテロモナス・エスピーNo.1786である請求項2記載の高脂血症又は動脈硬化の予防治療剤。
  4. アルギン酸オリゴ糖又はその塩が、単独又はいずれかの組み合わせにより用いられるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高脂血症又は動脈硬化の予防治療剤。
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