JP3872967B2 - 両面研磨装置、両面研磨方法および両面研磨用支持部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は両面研磨加工技術に関し、特に被加工物の縁だれの低減を目的とした両面研磨方法と両面研磨装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、半導体ウエハ(以下、単にウエハと言う)は種々のデバイス用基板として使用されている。一般にこれらのウエハがデバイスメーカーに供給される鏡面ウエハに仕上げるまでの加工工程の概略を説明すると、まず、引上げ炉により処理されて引き上げられた円柱状の結晶を外周研削して所定の径に仕上げる。続いて、円柱状の結晶を内周刃スライサーによって所定の厚さに切リ出す。次に、所定の厚さのウエハの外周の面取りを行い、後の加工工程及びデバイスプロセスにおける破損を防ぐためウエハ端部の強度を増す。次に、スライス時のソーマークを除去し、また、ウエハの厚さを揃えるためにラッピングをおこなう。その後、エッチングによって表面の加工変質層を除去して研磨工程に引き継ぐ。研磨工程では、デバィスやデバィスプロセスの要件により、それに応じて異なる工程を経由するが、両面ミラーウエハを必要とするときは、最終工程の片面仕上げ研磨の前に両面研磨される。
【0003】
図5は、両面研磨装置の研磨部の平面図であり、図6はそのA−A断面の断面図である。
【0004】
両面研磨装置の研磨部は、中心軸41を中心として回転可能に、円盤状の上定盤42と円盤状の下定盤43とが対面して設けられている。上定盤42には研磨布44a、下定盤43には研磨布44bがそれぞれ貼付され、両研磨布44a、44bの間に、円盤状の複数のキャリアプレート45a、45b…45nが挟み込まれて配置されている。キャリアプレート45a、45b…45nは外周歯車で、また、それぞれのキャリアプレート45a、45b…45nには、それぞれに孔46a〜46nが穿孔されており、被加工物であるウエハ48a、48b…48nが孔46a、46b…46nに挿入されている。中心軸41にはキャリアプレート45a、45b…45nの外周に設けられたギヤと噛合するサンギヤ49が設けられ、キャリアプレート45a、45b…45nの外側には、キャリアプレート45a、45b…45nの外周に設けられたギヤと噛合するインターナルギヤ51が設けられている。
【0005】
これらの構成により、インターナルギヤ51が不図示の駆動装置により中心軸51を中心として回転すると、キャリアプレート45a、45b…45nが自転しながら中心軸51を中心として公転する。上定盤42と下定盤43は、両研磨布44a、44bがキャリアプレート45a、45b…45nの孔46a、46b…46nに挿入されているウエハ48a〜48nと摺動するに伴い、軸41を中心として回転する。その際に研磨液(不図示)が供給されてウエハ48a、48b…48nが研磨される。
【0006】
なお、特開平5−l69365号公報には、ウエハの平坦度を向上させる目的、キャリアプレートにウエハ挿入用の孔の他に中子挿入用の孔を設けて、ウエハの仕上げ寸法の厚さのアルミナ焼結板の中子を挿入して、ウエハの厚さと平坦度を向上させる技術が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の研磨方法による研磨や、特開平5−l69365号公報に開示されている研磨技術では、研磨の際に、ウエハ外周において研磨布は急激に押し込まれるため、粘弾性の影響によりウエハの外周部における圧力が高くなる。そのため、ウエハの外周部に高くなった圧力により、縁だれが発生して、それを抑制することができない。
【0008】
本発明はこれらの事情にもとづいてなされたもので、ウエハ等の被加工物の外周部に縁だれ生じさせない良好な加工の行える両面研磨方法と研磨装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために本発明は、第1の研磨布が張設されるための第1の研磨面を備える上定盤と、第2の研磨布が張設されるための第2の研磨面を備えこの第2の研磨面が前記第1の研磨面と対向して配置される下定盤と、被加工物が嵌入される開口を備え前記上定盤と前記下定盤との間に配置される支持部材と、前記支持部材が嵌入される開口を備え前記上定盤と前記下定盤との間に配置されるキャリアプレートとを備え、前記第1の研磨布と前記第2の研磨布とで前記被加工物を加圧摺動しながらこの被加工物の両面を研磨する両面研磨装置において、
前記支持部材は前記被加工物と前記キャリアプレートとの間に配置され、前記支持部材の最大厚さは、前記被加工物の仕上がり寸法よりも厚く、前記被加工物と接触する側に前記被加工物の仕上がり寸法より厚さの薄い段部が形成されていることを特徴とする両面研磨装置を提供する。
【0010】
また本発明は、被加工物を支持部材の開口内に保持し、この被加工物の両面に対向して配置された第1の研磨布が張設されるための第1の研磨面を備える上定盤と、第2の研磨布が張設されるための第2の研磨面を備えこの第2の研磨面が前記第1の研磨面と対向して配置される下定盤と、前記上定盤と前記下定盤との間に配置されるキャリアプレートとにより前記被加工物を加圧摺接して両面研磨する両面研磨方法であって、
前記被加工物と、前記キャリアプレートの開口内周部との間に嵌入され、最大厚さが前記被加工物の仕上がり寸法よりも厚く、前記被加工物と接触する側に前記被加工物の仕上がり寸法より厚さの薄い段部が形成されている支持部材を有することを特徴とする両面研磨方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図lは、本実施形態の研磨装置の断面の模式図、図2は、本実施形態の研磨装置の構成を回転軸方向から見たときの配置状態を示す模式図、図3は、本実施形態の研磨装置におけるウエハと加圧リングとキャリアプレートとの関係を拡大して示す模式図である。
【0013】
図1に示す研磨装置は、中心軸1を中心として回転可能に設けられた円盤状の上定盤2および下定盤3とが、互いの研磨面を対向させるよう配置されて構成される。上定盤2および下定盤3の各々の研磨面には、それぞれ研磨布4aおよび研磨布4bが所定の張力を有するように張設されている。研磨布4a、4bは、例えば多孔質のフッ素樹脂などから構成されている。研磨布が互いの研磨面により被加工物を挟持可能なよう、上定盤2は中心軸lの軸方向に往復動可能に配置されている。
【0014】
図2に示すように、中心軸1を取り囲むように、厚さ0.7mmの円盤に成形されたエポキシ樹脂製のキャリアプレート5が、等間隔で5枚配置されている。キャリアプレート5の厚さは、被加工物の仕上がり寸法0.75mmよりも薄肉に設定されている。キャリアプレート5の外周面には歯車が設けられている。この歯単と噛合するように、中心軸1にサンギア6が設けられるとともに、インターナルギア7が上定盤2および下定盤3を取り囲むよう配置されている。キャリアプレート5には、開口が形成されている。この開口は、キャリアプレート5の中心から偏心した位置に配置されている。開口には、加圧リング8と被加工物であるウエハ9とが嵌入されている。また、キャリアプレート5の材質は、すくなくともギア部材として機能する程度に硬質であれば、樹脂材料のほか、セラミックス材料や、金属材料なども使用可能である。
【0015】
図3に示すように、厚さ0.78mm程度に粗仕上げされている被加工物であるウエハ9の外周面は、枠体である幅15mm、外周部の厚さ0.8mm、内周部の厚さ0.7mmの円環状に成形されたフッ素樹脂製の加圧リング8の内周面によって保持ざれており、加圧リング8の外周面がキャリアプレート5に対して密着するよう配置されている。加圧リング8の内周面の厚さは被加工物の仕上がり寸法よりも薄くなるよう、外周面の厚さはキャリァプレート5および被加工物の仕上がり寸法よりも厚くなるよう、それぞれ設定されている。また、加圧リング8の両側面は、外周面側から内周面側にかけて、単調にリング内方に傾斜するテーパ形状に整形されている。これにより、研磨布4a、4bは、まず外周面側の厚肉部に接触し、さらに圧力が加えられるにつれて研磨布4a、4bが変形して、内周面側へと接触状態が進行することになる。
【0016】
以上のように構成される研磨装置により、以下のようにして両面研磨加工がなされる。
【0017】
キャリアプレート5を、キャリアプレート5の外周面に刻設された歯車がサンギア6およびインターナルギア7に対して噛み合わされるように、名々が等間隔となるよう、下定盤3に張設された研磨布4b上に配置する。配置されたキャリアプレート5の開口に加圧リング8およびウエハ9を配置する。研磨布4aが張設された上定盤2を中心軸1方向に移動させ、ウエハ9を研磨布4a、4bによって挟持させて固定、または、所定の圧力を加えるよう保持する。
【0018】
次に、研磨布4a、4b間に研磨液を供給しながら、サンギア6およびインターナルギア7を、それぞれ独立に駆動する駆動装置によって転動させる。このとき.各々の回転数は、適宜設定することができる。これによって、キャリアプレート5は研磨布4a、4b間を自転すると共に、中心軸1を中心として相対的に公転する。ウエハ9は、キャリアプレート5の自転軸に対して偏心して回転し、かつ、研磨布4a、4bとの摺動抵抗によって開口中で回転し、かつ、中心軸1を中心として相対的に公転する。これにより、研磨布4a、4bに対して摺動が生じ、研磨が進行する。研磨液としては、メカノケミカル反応を期待する場合は、例えば炭酸バリウム(BaC03)のアルカリ水溶液に研磨剤を混濁させて用いることが出来る。もちろん、スラリーを用いずに行ったり、純水のみを用いたりすることなども可能であり、加工に応じて適宜変更可能である。
【0019】
さて、研磨布4a、4bに対して両定盤2、3から圧力が加えられると、研磨布4a、4bはウエハ9を加圧する前に加圧リング8を加圧する。その際に研磨布4は加圧リング8から圧力を受けて押し込まれて弾性変形する。押し込まれて弾性変形した研磨布4は加圧リング8より厚さの薄いウエハ9の端部側で加圧から解放されると、弾性変形分はすぐに回復するが、粘性分はすぐには回復しない。この状態でウエハ9に接触し始めると、粘性分は押し込まれたままのためウエハ9の外周での圧力増大を低減し、縁だれを低減することができる。この研磨により、ウエハ9の仕上がり寸法が0.75mmの両面が鏡面ウエハが得られる。
【0020】
なお、加圧リング8が存在しない揚合には、ウエハ9外周において研磨布4は急激に押し込まれるため粘弾性の影響によりウエハ9の外周での圧力が増大し、縁だれが大きくなる。
【0021】
また、加圧リング8としては上述した断面形状のほかに、図4(a)〜(d)に示す断面形状について用いることができることを、実験によって確認した。いずれも幅15mmの枠体であり、ウエハ9の仕上がり厚さが0.75mmの場合である。
【0022】
図4(a)に示す加圧リング1lは、厚さに段差を設けずに、一様に0.8mmとしている。加圧リング11に段差による逃げを設けなくとも、ウエハ9の縁だれ抑制に効果がある場合があることを確認した。ただし、本応用例の場合には、加圧リングの厚さが被加工物の厚さに対して厚すぎると、ウエハ9の外周部が研磨されなくなる場合がある。
【0023】
図4(b)に示す加圧リング12は、側面のウエハ9に接する側の1/3のみに0.05mmの段差による段部12aを設けている。この場合、加圧リング12の外周面側の厚さは0.78mm、内周面側の厚さは0.73mmである。テーパ状に限らず、段差による逃げでも効果があることを確認した。この場合、段部12aの加工が単純化可能であり、容易に加工できる。
【0024】
図4(c)に示す加庄リング13は、全体的な形状や厚さは図4(b)と同様である。この場合は、厚さに応じて、内周面側のリング13aと外周面側のリング13bとの2つの枠体に分割してしる。これにより、ウエハ9はキャリアプレートの開口の中で、さらに回転がしやすくなる。また、加圧リング13は2部品から構成されることとなるが、ウエハ9の厚さが異なる場合でも、内周面側のリングのみを交換することにより、容易に対応することができるようになる。
【0025】
図4(d)に示す加圧リング14は、全体的な形状と厚さは図4(b)と同様である。この場合は、加圧リング12の外周面側の厚さに相当するリングを分割可能な3部品で構成している。2つの外周面側のリング14a、14bの間に、これらと同一形状を有するシム14cを挿入可能な構成とした。この構成においては、シム14cの厚さを変えることにより外側リング部の全体の厚さの調整を可能にし、異なる厚さの被加工物の研磨加工を容易にする。
【0026】
上述のように、本発明によれば、キャリアとウエハとの間に加圧リングを装着することにより、研磨布の粘弾性の影響によるウエハ外周部の縁だれを低減することができる。また、加圧リングがキャリア内で回転することにより、ウエハの回転も起こりやすくなり、端部のテーパの発生をさらに低減できる。
【0027】
なお、上述の各実施の形態では、被加工物として半導体ウエハを対象としたが、それらに限らず、両面鏡面研磨の必要な部材に適用することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、ウエハなどの被加工物の外周部に縁だれ生じさせにくい両面研磨方法とその装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の研磨装置の断面の模式図。
【図2】本発明の実施形態の研磨装置の構成を、定盤の回転軸方向から見たときの配置状態を示す模式図。
【図3】本発明の実施形態の研磨装置におけるウエハと加庄リングとキャリアプレートとの関係を拡大して示す模式図。
【図4】(a)〜(d)は、それぞれ加圧リングの変形例の断面形状を示す模式図。
【図5】従来の両面研磨装置の研磨部の平面図。
【図6】従来の両面研磨装置の研磨部のA−A断面の断面図。
【符号の説明】
1…中心軸、2…上定盤、3…下定雛、4a、4b…研磨布、5…キャリアプレート、6…サンギア、7…インターナルギア、8、11、12、13、14…加圧リング、9…ウエハ、l4c…シム
Claims (5)
- 第1の研磨布が張設されるための第1の研磨面を備える上定盤と、第2の研磨布が張設されるための第2の研磨面を備えこの第2の研磨面が前記第1の研磨面と対向して配置される下定盤と、被加工物が嵌入される開口を備え前記上定盤と前記下定盤との間に配置される支持部材と、前記支持部材が嵌入される開口を備え前記上定盤と前記下定盤との間に配置されるキャリアプレートとを備え、前記第1の研磨布と前記第2の研磨布とで前記被加工物を加圧摺動しながらこの被加工物の両面を研磨する両面研磨装置において、
前記支持部材は前記被加工物と前記キャリアプレートとの間に配置され、前記支持部材の最大厚さは、前記被加工物の仕上がり寸法よりも厚く、前記被加工物と接触する側に前記被加工物の仕上がり寸法より厚さの薄い段部が形成されていることを特徴とする両面研磨装置。 - 被加工物を支持部材の開口内に保持し、この被加工物の両面に対向して配置された第1の研磨布が張設されるための第1の研磨面を備える上定盤と、第2の研磨布が張設されるための第2の研磨面を備えこの第2の研磨面が前記第1の研磨面と対向して配置される下定盤と、前記上定盤と前記下定盤との間に配置されるキャリアプレートとにより前記被加工物を加圧摺接して両面研磨する両面研磨方法であって、
前記被加工物と、前記キャリアプレートの開口内周部との間に嵌入され、最大厚さが前記被加工物の仕上がり寸法よりも厚く、前記被加工物と接触する側に前記被加工物の仕上がり寸法より厚さの薄い段部が形成されている支持部材を有することを特徴とする両面研磨方法。 - 第1の研磨布が張設されるための第1の研磨面を備える上定盤と、第2の研磨布が張設されるための第2の研磨面を備えこの第2の研磨面が前記第1の研磨面と対向して配置される下定盤とを備え、
前記第1の研磨布と前記第2の研磨布とで被加工物を加圧摺動しながらこの被加工物の両面を研磨する両面研磨装置に用いられるために、前記被加工物が嵌入される開口を備え前記上定盤と前記下定盤との間に配設される支持部材であって、
前記第1の研磨布及び第2の研磨布が、前記被加工物を加圧する前に加圧するように最大厚さが前記被加工物の厚さよりも厚く、前記被加工物と接触する側に該被加工物の仕上がり寸法より厚さの薄い段部が形成されていることを特徴とする両面研磨装置用の支持部材。 - 前記開口に嵌入された前記支持部材の前記段部が、分割自在に形成されていることを特微とする請求項3記載の両面研磨装置用の支持部材。
- 前記開口に嵌入された前記支持部材が、分割した部材の間にシムを挟持させて厚さの調整が可能であることを特徴とする請求項4記載の両面研磨装置用の支持部材。
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