JP3871826B2 - ホール輸送性ポリマー及び電子写真用感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用感光体材料として有用な新規ホール輸送性ポリマー、及び、感光層中あるいは表面層に該ホール輸送性ポリマーを含有した高感度で且つ高耐久の電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機感光体(OPC)が複写機、プリンターに多く使用されている。有機感光体の代表的な構成例として、導電性基板上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した積層感光体が挙げられる。電荷輸送層は低分子電荷輸送材料(CTM)とバインダー樹脂より形成される。しかしながら、低分子電荷輸送材料の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損うものとなっている。
【0003】
光導電性高分子材料としては、古くはポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のビニル重合体が電荷移動錯体型の感光体として検討されたが、光感度の点で満足できるものではなかった。一方、前述の積層型感光体の欠点を改良すべく、電荷輸送能を有する高分子材料に関する検討がなされている。例えば、トリフェニルアミン構造を有するアクリル系樹脂[M.Stolka et al,J.Polym.Sci.,vol 21,969(1983)]、ヒドラゾン構造を有するビニル重合体(Japan Hard Copy ‘89 P.67)及びトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(米国特許4,801,517号、同4,806,443号、同4,806,444号、同4,937,165号、同4,959,288号、同5,030,532号、同5,034,296号、同5,080,989号各明細書、特開昭64−9964号、特開平3−221522号、特開平2−304456号、特開平4−11627号、特開平4−175337号、特開平4−18371号、特開平4−31404号、特開平4−133065号各公報)等であるが、実用化には到っていない。
【0004】
また、M.A.Abkowitzらはテトラアリールベンジジン誘導体をモデル化合物として低分子分散型と高分子化されたポリカーボネートとの比較を行っているが、高分子系はドリフト移動度が一桁低いとの結果を得ている[Physical Review B46 6705(1992)]。この原因については明らかではないが、高分子化する事により機械的強度は改善されるものの、感度、残留電位等電気的特性に課題があることを示唆している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、有機感光体用の電荷輸送性高分子材料として特に有用な新規ホール輸送性ポリマーを提供すること、及び、その物を用いることにより、高感度で且つ高耐久な電子写真用感光体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有する新規ホール輸送性ポリマーにより上記課題が解決されることを見出し、本発明に到った
即ち、本発明は以下の(1)〜(7)である。
【0007】
(1)下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有し、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の含量が1モル%以上100モル%以下であり、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000以上1000000以下であるホール輸送性ポリマー。
【補正の内容】
【0008】
【化12】
【0009】
((式中、Aは下記一般式(3)で表される構造のAr 1 及びAr 2 から水素原子を1個ずつ取り除いた2価基、または下記一般式(4)で表される構造のAr 11 及びAr 15 から水素原子を1個ずつ取り除いた2価基、または下記一般式(5)で表される構造のAr 21 及びAr 22 から水素原子を1個ずつ取り除いた2価基を表し、
【0010】
【化13】
【0011】
を表し、Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar2は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar3、Ar4はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【0012】
【化14】
【0013】
を表し、Ar11、Ar13、Ar15、Ar16は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar12、Ar14は置換もしくは無置換のアリレン基を表す。)
【0014】
【化15】
【0015】
を表し、Ar21、Ar22は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar23、 Ar24は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、Y4は単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状または環状のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリレン基を表す。)
Bは置換または無置換の脂肪族2価基、置換または無置換の環状脂肪族2価基、置換または無置換の芳香族2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【0016】
【化16】
【0017】
(ここで、R31、R32、R33、R34、R35、R36は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a、b、e、fは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Z1は単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基、一つ以上の炭素数1〜6のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及びまたは硫黄原子から構成される2価基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0018】
【化17】
【0019】
から選ばれ、Z2、Z3は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R41とR42は結合して炭素数5〜12の炭素環を形成してもよく、R48とR49は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R50とR51は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、hは0〜4の整数、iは0〜20の整数、jは0〜2000の整数を表す。)を表し、
X1はオキシ基、イミノ基、チオ基、オキシカルボニル基、イミノカルボニル基、ウレイレン基、カルボニルオキシカルボニル基、スルフォニル基、イミノスルフォニル基、イミノカルボニルオキシ基を表す。))
(2)下記一般式(6)で表される繰り返し単位と、下記一般式(8)で表される繰り返し単位を有し、式(6)で表される繰り返し単位の含量が1モル%以上100モル%以下であり、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000以上1000000以下であるホール輸送性ポリマー。
【0020】
【化18】
【0021】
式中、Cは下記一般式(9)で表される構造のAr 1 及びAr 2 から水素原子を1個ずつ取り除いた2価基を表し、
【0022】
【化19】
【0023】
を表し、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar2は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、Ar3、Ar4はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。) X2はオキシ基、イミノ基、チオ基、イミノカルボニル基、ウレイレン基、カルボニルオキシカルボニル基、スルフォニル基、イミノスルフォニル基、イミノカルボニルオキシ基を表す。
【0024】
Bは置換または無置換の脂肪族2価基、置換または無置換の環状脂肪族2価基、置換または無置換の芳香族2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【0025】
【化20】
【0026】
(ここで、R31、R32、R33、R34、R35、R36は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a、b、e、fは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Z1は単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基、一つ以上の炭素数1〜6のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及びまたは硫黄原子から構成される2価基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0027】
【化21】
【0028】
から選ばれ、Z2、Z3は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R41とR42は結合して炭素数5〜12の炭素環を形成してもよく、R48とR49は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R50とR51は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、hは0〜4の整数、iは0〜20の整数、jは0〜2000の整数を表す。)を表す。
【0029】
(3)上記一般式(6)、一般式(8)において、X2がイミノカルボニルオキシ基である前記(2)で表されるホール輸送性ポリマー。
【0030】
(4)上記一般式(1)においてAが下記一般式(7)で表されるホール輸送性ポリマー。
【0031】
【化22】
【0032】
(式中、Ar71、Ar73、Ar74、Ar75は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、Ar72、Ar76は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
(5)上記一般式(1)、一般式(2)においてX1 がイミノカルボニルオキシ基である(1)又は(4)で表されるホール輸送性ポリマー。
【0033】
(6)導電性支持体上に感光層を設けた電子写真用感光体において、感光層に(1)ないし(5)のいずれかに記載のホール輸送性ポリマーを有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【0034】
(7)導電性支持体上に複数層からなる感光層を設けた電子写真用感光体において、その表面層に(1)ないし(5)のいずれかに記載のホール輸送性ポリマーを有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
【0035】
上記のように本発明は、電荷輸送能を有する前記一般式(1)又は一般式(6)で示される繰り返し単位を少なくとも含有するホール輸送性ポリマー、電荷輸送能を有する前記一般式(1)又は(6)で示される繰り返し単位のみからなるホール輸送性ポリマー、または電荷輸送能を有する前記一般式(1)と前記一般式(2)又は前記一般式(6)と前記一般式(8)で示される繰り返し単位とからなるランダムまたはブロックまたは交互共重合ホール輸送性ポリマーであり、特に、一般式(1)中のAが一般式(7)で表される上記ホール輸送性ポリマーであり、これらのホール輸送性ポリマーを感光層中または感光層の表面層に含有した電子写真用感光体である。
【0036】
これらのホール輸送性ポリマーは低分子電荷輸送材料を添加しなくても良好なホール輸送性を示し、また、良好な帯電性、透明性を示すので有機半導体素子用の高分子電荷輸送材料として使用できると共に耐摩耗性等の機械的特性も低分子分散型ポリマーと比べて優れている。したがって、このものを感光層中に含有する電子写真用感光体は従来感光体の電気特性を保持しながら高い機械的強度を付加する事ができ、高感度で且つ高耐久な電子写真用感光体が提供できる。また、積層型感光体の場合は摩擦応力を受ける感光層の表面層に本発明のホール輸送性ポリマーを使用することにより機械的強度の付加を最大限有効に作用させることができる。
【0037】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0038】
本発明のホール輸送性ポリマー及び電子写真用感光体に使用されるホール輸送性ポリマーは新規物質であり、以下のような方法によって製造される。
【0039】
本発明のホール輸送性ポリマーは従来公知の縮合系高分子の合成法により製造する事ができ、主として重縮合や重付加によって製造することができる。これらの方法については「新高分子実験学3 高分子の合成・反応(2)縮合系高分子の合成 高分子学会編 共立出版(株)」等に記載されている。
【0040】
例えば、一般式(1)及び(2)においてX1がオキシカルボニル基の場合、これまで公知のポリエステル合成法を適用でき、ジオール(ビスフェノールを含む)とジカルボン酸誘導体の求核アシル置換重合やジカルボン酸の塩と脂肪族ジハライドの脂肪族求核置換重合等によって合成する事ができる。その詳細については上記「新高分子実験学3 高分子の合成・反応(2)縮合系高分子の合成 高分子学会編 共立出版(株)」のページ49〜54、ページ77〜95に記載の方法が適用できる。特に、ページ87〜95に記載されているポリアリレートの合成法が好ましく適用される。
【0041】
さらに具体的には一般式(1)中の2価基Aを有する
HO−A−OH 一般式(8)
で表されるジオールと一般式(2)中の2価基Bを有する
ClCO−B−COCl 一般式(9)
で表される酸クロリドによって容易に合成することができる。その時の反応温度、溶媒、触媒、分子量調節剤等については上記文献中に記載の方法が適用できる。また、一般式(8)及び一般式(9)中のA及びBが入れ替わった物からも同様にして合成できる。また、それらジオール体又は酸クロリド体を混合することによってAの濃度を任意に変えることもできる。
【0042】
また、例えば、一般式(1)及び(2)においてX1がイミノカルボニルオキシ基の場合、これまで公知のポリウレタン合成法を適用でき、ジオールとジイソシアナートの重付加やジアミンとビスクロロホルメートの重縮合等によって合成することができる。その詳細については上記「新高分子実験学3 高分子の合成・反応(2)縮合系高分子の合成 高分子学会編 共立出版(株)」のページ117〜119やページ229〜233に記載の方法が適用できる。
【0043】
さらに具体的には一般式(1)中の2価基Aを有する
HO−A−OH 一般式(8)
で表されるジオールと一般式(2)中の2価基Bを有する
OCN−B−NCO 一般式(10)
で表されるジイソシアナートによって容易に合成することができる。その時の反応温度、溶媒、触媒、分子量調節剤等については上記文献中に記載の方法が適用できる。また、一般式(8)及び一般式(10)中のA及びBが入れ替わった物からも同様にして合成できる。また、それらジオール体又はジイソシアナート体を混合することによってAの濃度を任意に変えることもできる。
【0044】
HO−A−OHで表される重合用出発原料としては特開平7−228557、特開平9−31035、特開平9−278723、特開平9−31034、特開平10−53569、特開平8−198825、特開平9−194442、特開平9−263569、特開平9−202793、特開平9−268164、特開平10−7629、特開平7−267905、特開平11−60544、特願平10−198809等に具体的構造や合成法が記載されており、それらを利用することができる。
【0045】
以上すべての重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤として末端停止剤を用いることができ、従って、本発明で使用されるホール輸送性ポリマーの末端には停止剤にもとずく置換基が結合してもよい。使用される末端停止剤は、例えば従来公知の1価の芳香族ヒドロキシ化合物、1価の芳香族アミン化合物、1価の芳香族チオール化合物、1価の芳香族ハロゲン化合物、1価のカルボン酸又は1価のカルボン酸のハライド誘導体、1価のイソシアナート、1価のクロロホルメート等を目的物に応じて選択し、使用することができる。
【0046】
本発明の電子写真用感光体に有効成分として使用される請求項1〜5で示されるホール輸送性ポリマーの好ましい分子量はポリスチレン換算重量平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合は機械的強度が弱くなり、成膜時にひびが入ったりして実用性に乏しくなる。また、分子量が大きすぎる場合は一般溶媒への溶解性が悪くなったり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になったりしてやはり実用性に乏しくなる。
【0047】
又、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。分岐化剤としては、芳香族性ヒドロキシ基、ハロホーメート基、カルボン酸基、カルボン酸ハライド基又は活性なハロゲン原子等から選ばれる反応基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、又、複数併用してもよい。
【0048】
以上のようにして得られたホール輸送性ポリマーは重合中に使用した触媒や酸化防止剤、又、未反応のジオールや末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して本発明の感光層に使用される。
【0049】
本発明の主要な繰り返し単位である一般式(1)及び一般式(2)についてさらに詳細に説明する。
【0050】
本発明の説明で用いられる置換もしくは無置換のアルキル基としては炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0051】
本発明の説明で用いられる置換もしくは無置換のアルコキシ基とは上述した置換もしくは無置換のアルキル基を有するアルコキシ基を表し、その具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0052】
また、本発明の説明で用いられる置換もしくは無置換のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、2,2−ジフェニルビニル基、フェナンスリル基、アントリル基等が挙げられ、これらは上述した置換もしくは無置換のアルキル基、上述した置換もしくは無置換のアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を置換基として有していてもよい。また、Ar3、Ar4の置換もしくは無置換のアリール基の場合は上記説明に加えて下記一般式(11)で表される基を挙げることができる。
【0053】
【化23】
【0054】
(式中、Z4は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の2価基から選ばれる。
【0055】
【化24】
【0056】
(ここで、R2は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、シアノ基を表し、R3は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、kは1〜12の整数、lは1〜3の整数を表す。))
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0057】
置換もしくは無置換のアリールアミノ基としては、置換もしくは無置換のアリール基が1個乃至2個置換したアミノ基を表す。
【0058】
アシル基としてはアセチル基、ベンゾイル基を上げることができる。
【0059】
本発明中の置換もしくは無置換のアリレン基としては先に定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0060】
以上主に一般式(1)について説明したが同一表記については他の一般式中でも同じ定義である。
【0061】
一般式(1)中のAの主な具体例としては例えば以下のものを挙げることができる。
【0062】
【化25】
【0063】
【化26】
【0064】
【化27】
【0065】
【化28】
【0066】
【化29】
【0067】
本発明ではホール輸送能を有する前記一般式(1)の繰り返し単位のみからなるホール輸送性ポリマーを有効成分として含有させることもできるが機械的特性を調節するためにそれ以外の繰り返し単位との共重合体を使用することが望ましい。それ以外の繰り返し単位としては従来公知の重縮合系ポリマーや重付加系ポリマーとして知られる繰り返し単位をそのまま利用することができる。このような従来公知の繰り返し単位のうち、好ましい例として前記一般式(2)で表される繰り返し単位を挙げることができる。以下にもう一つの主要な繰り返し単位である一般式(2)について説明する。
【0068】
一般式(2)のBが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合の代表的具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、イソホロンジオール等で示されるジオールからヒドロキシ基を2個除いた2価基が挙げられる。
【0069】
また、Bが芳香族の2価基である場合としては本発明中で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。具体例としてはフェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、ピレニレン基、ビフェニレン基等が挙げられる。
【0070】
一般式(2)のBの説明の中でR41とR42が結合して炭素数5〜12の炭素環を形成する場合の具体例としては、炭素環としてはシクロペンタン環、シクロヘキサン環、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン環等が挙げられ、これらにメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が1個から3個置換したものがさらに挙げられる。
【0071】
一般式(1)の繰り返し単位と一般式(2)の繰り返し単位との共重合ポリマーにおいて一般式(1)の繰り返し単位の含有する割合は1モル%以上100モル%以下の範囲で任意に選択することができる。ホール輸送性は一般式(1)の繰り返し単位の割合が多いほど高いホール移動性を示すので1モル%未満になると実質的にホール輸送性を示さなくなってしまう。本発明のホール輸送性ポリマーの使い方にもよるが、ホール輸送性ポリマーとして使用するには一般式(1)の繰り返し単位の含有する割合は1モル%以上であり、好ましくは5モル%以上、より好ましくは20モル%以上含有する事が望ましい。
【0072】
一般式(6)のCの主な具体例としては、例えば以下のものを挙げることができる。
【0073】
【化30】
【0074】
以上本発明のホール輸送性ポリマーについて説明したが、次にこの物を使用した電子写真用感光体について説明する。
【0075】
本発明の感光体の断面図を図1〜図6に示す。
【0076】
本発明の感光体は、前記のようなホール輸送性ポリマーの1種または2種以上を感光層2(2',2'',2''',2'''',2''''')に含有させたものであるが、これらの応用の仕方によって図1、図2、図3、図4、図5あるいは図6に示したごとくに用いることができる。
【0077】
図1における感光体は、導電性支持体1上に増感染料及びホール輸送性ポリマー、場合により結合剤(結着樹脂)よりなる感光層2が設けられたものである。ここでのホール輸送性ポリマーは光導電性物質として作用し、光減衰に必要な電荷担体の生成及び移動はホール輸送性ポリマーを介して行われる。しかしながら、ホール輸送性ポリマーは光の可視領域においてほとんど吸収を有していないので、可視光で画像を形成する目的のためには、可視領域に吸収を有する増感染料を添加して増感する必要がある。
【0078】
図2における感光体は、導電性支持体1上に電荷発生物質3をホール輸送性ポリマー単独あるいは結合剤と併用してなる電荷輸送媒体4の中に分散せしめた感光層2′が設けられたものである。ここでのホール輸送性ポリマーは単独であるいは結合剤との併用で電荷輸送媒体を形成し、一方、電荷発生物質3(無機又は有機顔料のような電荷発生物質)が電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は主として電荷発生物質3が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する作用を担当している。そして、この感光体にあっては電荷発生物質とホール輸送性ポリマーとが、互いに主として可視領域において吸収波長領域が重ならないというのが基本的条件である。これは、電荷発生物質3に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。一般式(1)で表わされる繰り返し単位を含有するホール輸送性ポリマーは波長600nm以上の可視領域にほとんど吸収がなく、一般に可視領域から近赤外領域の光線を吸収し、電荷担体を発生する電荷発生物質3とを組合わせた場合、特に有効に電荷輸送物質として働くのがその特徴である。なお、上記電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。
【0079】
図3における感光体は、導電性支持体1上に電荷発生物質3を主体とする電荷発生層5と、ホール輸送性ポリマーを含有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2''が設けられたものである。この感光体では、電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層5に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方、電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行うもので、光減衰に必要な電荷担体の発生は、電荷発生物質3で行われ、また電荷担体の輸送は、電荷輸送層4で行われる。こうした機構は図2に示した感光体においてした説明と同様である。
【0080】
なお、電荷輸送層4は本発明のホール輸送性ポリマー単独あるいは結合剤との併用で形成される。また電荷発生効率を高めるために、電荷発生層5に本発明のホール輸送性ポリマーを含有させてもよい。同様の目的で、感光層2''中に低分子電荷輸送物質を併用してもよい。後述の感光層2'''〜2'''''についても同様である。
【0081】
図4における感光体は、電荷輸送層4上に保護層6を設けたものである。本構成の場合は、電荷輸送層4上にホール輸送性ポリマーあるいは結合剤との併用で保護層が形成される。当然のことながら、従来多く使用されている低分子分散型電荷輸送層上への形成が効果的である。なお図2に示した感光層2'上へ同様に保護層が設けられてもよい。
【0082】
図5における感光体は図3の電荷発生層5と本発明のホール輸送性ポリマーを含有する電荷輸送層4の積層順を逆にしたものであり、その電荷担体の発生及び輸送の機構は上記の説明と同様にできる。この場合機械的強度を考慮し図6の様に電荷発生層5の上に保護層6を設けることもできる。
【0083】
実際に本発明の感光体を作製するには、図1に示した感光体であれば、ホール輸送性ポリマーの1種または2種以上あるいはそれと結合剤と併用して溶解し、更にこれに増感染料を加えた液をつくり、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2を形成すればよい。
【0084】
感光層の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2に占めるホール輸送性ポリマーの量は30〜100重量%であり、また、感光層2に占める増感染料の量は0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。増感染料としては、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレット6Bのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGエキストラ、エオシンS、エリトロシン、ローズベンガル、フルオレセインのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、シアニンのようなシアニン染料が挙げられる。
【0085】
又、図2に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上のホール輸送性ポリマーあるいは結合剤を併用し溶解した溶液に電荷発生物質3の微粒子を分散せしめ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2'を形成すればよい。
【0086】
感光層2'の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2'に占めるホール輸送性ポリマーの量は40〜100重量%であり、また、感光層2'に占める電荷発生物質3の量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。電荷発生物質3としては、例えばセレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコンなどの無機材料、有機材料としては例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、例えばシーアイピグメントブルー16(CI74100)などのフタロシアニン系顔料、例えばシーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン系顔料などが挙げられる。なお、これらの電荷発生物質は単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0087】
又、上記の電荷発生物質の中で、特にフタロシアニン系顔料との組み合わせにより、高感度で且つ高耐久な感光体を得ることができる。フタロシアニン顔料としては、下記式で表されるフタロシアニン骨格を有する化合物で、M(中心金属)は、金属及び無金属(水素)の元素があげられる。
【0088】
【化31】
【0089】
ここであげられるM(中心金属)は、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、TI、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしくは酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物などの2種以上の元素からなる。中心金属は、これらの元素に限定されるものではない。本発明におけるフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質とは、少なくとも一般式(N)の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体など多量体構造を持つもの、さらに高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。
【0090】
これらの様々なフタロシアニンのうち、中心金属にTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、Hを有する無金属フタロシアニンは、感光体特性的に、特に好ましい。
【0091】
またこれらのフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことも知られており、例えばオキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより、種々の特性も変化する。その中で、感光体特性も、このような結晶系変化に伴い、変化することが報告されている。(電子写真学会誌 第29巻 第4号(1990))、このことから、各フタロシアニンは、感光体特性的に、最適な結晶系が存在し、特にオキソチタニウムフタロシアニンにおいては、y型の結晶系が望ましい。
【0092】
また、これらの電荷発生物質は、フタロシアニン骨格を有する電荷発生物質を2種以上混合していてもかまわない。さらにそれ以外の電荷発生物質と混合していてもかまわない。この場合に混合する電荷輸送物質としては、無機系材料及び有機系材料があげられる。
【0093】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープとしたものが良好に用いられる。
【0094】
一方、有機系材料としては、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフエン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。
【0095】
更に、図3に示した感光体を作製するには、導電性支持体1以上に電荷発生物質を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥するかして、更に必要であればバフ研磨などの方法によって表面仕上げ、膜厚調整などを行って電荷発生層5を形成し、この上に1種又は2種以上のホール輸送性ポリマーあるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成すればよい。
【0096】
なおここで電荷発生層5の形成に用いられる電荷発生物質は、前記の感光層2'の説明と同じものである。
【0097】
電荷発生層5の厚さは5μm以下、好ましくは2μm以下であり、電荷輸送層4の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。電荷発生層5が電荷発生層物質の微粒子3を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質の微粒子3の電荷発生層5に占める割合は10〜100重量%、好ましくは50〜100重量%程度である。また、電荷輸送層4に占めるホール輸送性ポリマーの量は40〜100重量%である。
【0098】
なお、図3における感光層2''に低分子電荷輸送物質を含有してもよいことは前記のとおりであるが、ここに用いられる該電荷輸送物質としては下記のものが挙げられる。
【0099】
オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、同52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号、同55−52063号、同56−81850号などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)など。
【0100】
図4に示した感光体を作成するには、図3に示した感光体上に本発明のホール輸送性ポリマーを単独であるいは結合剤と併用して溶解し塗布し、乾燥して、保護層6が設けられる。保護層の厚さは0.15〜10μmが好ましい。保護層6中に占める本発明のホール輸送性ポリマーの量は40〜100重量%である。
【0101】
図5に示した感光体を作成するには、導電性支持体1上にホール輸送性ポリマーあるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成したのち、この電荷輸送層の上に電荷発生層物質の微粒子を必要によって結合剤を溶解した溶媒中に分散した分散液をスプレー塗工等の方法で塗布乾燥して電荷発生層5を形成すればよい。電荷発生層あるいは電荷輸送層の量比は図3で説明した内容と同様である。
【0102】
このようにして得られた感光体の電荷発生層5の上に前述の保護層6を形成することにより、図6に示す感光体を作成できる。
【0103】
なお、これらのいずれの感光体製造においても、導電性支持体1には、アルミニウムなどの金属板又は金属箔、アルミニウムなどの金属を蒸着したプラスチックフィルム、あるいは導電処理を施した紙などが用いられる。
【0104】
又、結合剤としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネートなどの縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体などが用いられるが、絶縁性で且つ接着性のある樹脂はすべて使用できる。
【0105】
必要により可塑剤を加えることができる。そうした可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが例示できる。また必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。
【0106】
更に、以上のようにして得られる感光体には導電性支持体と感光層の間に、必要に応じて接着層又はバリヤ層を設けることができる。これらの層に用いられる材料としては、ポリアミド、ニトロセルロース、酸化アルミニウム、酸化チタンなどであり、また膜厚は5μm以下が好ましい。
【0107】
本発明の感光体を用いて複写を行うには、感光面に帯電、露光を施した後、現像を行い必要によって紙などへ転写を行う。
【0108】
本発明の感光体は感度が高く、特に耐久性に優れている。
【0109】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、下記実施例において部はすべて重量部である。
【0110】
実施例1
窒素気流下、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)40mlにジオールとして1,4−ビス{4−[N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]スチリル}ベンゼン6.02部を溶解、加熱した。80℃でヘキサメチレンジイソシアナート1.38部を乾燥DMF10mlに溶解したものを滴下した。30分撹拌した後、得られた沈澱物をろ取した。このものにDMF溶解−冷メタノール沈殿の処理を2回実施し、沈殿物をろ取、乾燥して下記構造式(樹脂No.1)のポリウレタン樹脂を得た。得られた目的物は6.48部で収率は99.1%であった。この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で18300、重量平均分子量で35900であった。単結晶NaCl板上のキャスト膜として測定した赤外吸収スペクトルを図7に示す。
【0111】
【化32】
【0112】
実施例2
窒素気流下、1,4−ビス{4−[N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]スチリル}ベンゼン6.02部を乾燥した1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン25mlに60〜65℃で溶解した。乾燥した1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン10mにヘキサメチレンジイソシアナート1.75部を溶解したものを15分で滴下した。その後、95〜100℃に加熱し、2時間撹拌した。触媒としてジブチルスズラウレート0.05部を加え、さらに2時間撹拌した後、フェノール0.08部を加えて30分撹拌した。室温まで冷却した後、反応液をメタノール460ml中に滴下した。得られた沈澱物をろ取、メタノール洗浄した。このものにテトラヒドロフラン溶解−メタノール沈澱の処理を2回実施し、実施例1と同じ構造のポリウレタン樹脂を得た。得られた目的物は5.40部で収率は82.6%であった。この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で10790、重量平均分子量で12900であった。単結晶NaCl板上のキャスト膜として測定した赤外吸収スペクトルを図8に示す。
【0113】
実施例3
ジイソシアナート化合物として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを用いる他は実施例4と同様にして下記構造式(樹脂No.2)のポリウレタン樹脂を得た。収率は98.7%であった。この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で15900、重量平均分子量で33800であった。又、示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は183.7℃であった。単結晶NaCl板上のキャスト膜として測定した赤外吸収スペクトルを図9に示す。
【0114】
【化33】
【0115】
実施例4
ジイソシアナート化合物として2,4−トリレンジイソシアナートを用いる他は実施例4と同様にして下記構造式(樹脂No.3)のポリウレタン樹脂を得た。収率は86.9%であった。この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で11420、重量平均分子量で14130であった。単結晶NaCl板上のキャスト膜として測定した赤外吸収スペクトルを図10に示す。
【0116】
【化34】
【0117】
実施例5
ジイソシアナート化合物としてイソホロンジイソシアナートを用いる他は実施例4と同様にして下記構造式(樹脂No.4)のポリウレタン樹脂を得た。収率は53.7%であった。この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で6570、重量平均分子量で7400であった。単結晶NaCl板上のキャスト膜として測定した赤外吸収スペクトルを図11に示す。
【0118】
【化35】
【0119】
実施例6
ジオールとして1,4−ビス{4−[N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]スチリル}ベンゼンの代わりにN−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミンを使用する他は実施例3と同様にして下記構造式(樹脂No.5)のポリウレタン樹脂を得た。収率は83.6%であった。この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で15100、重量平均分子量で26100であった。単結晶NaCl板上のキャスト膜として測定した赤外吸収スペクトルを図12に示す。
【0120】
【化36】
【0121】
実施例7
ジオールとして1,4−ビス{4−[N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]スチリル}ベンゼンの代わりにN−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミンを使用し、ジイソシアナート化合物としてヘキサメチレンジイソシアナートの代わりに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを用いる他は実施例4と同様にして下記構造式(樹脂No.6)のポリウレタン樹脂を得た。収率は60.6%であった。KBr錠剤法により測定した赤外吸収スペクトルを図13に示す。
【0122】
【化37】
【0123】
実施例8
ジオールとして1,4−ビス{4−[N−フェニル−N−(4−ヒドロキシフェニル)アミノ]スチリル}ベンゼンの代わりにN−{4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル}−N,N−ビス(4−トリル)アミンを使用し、ジイソシアナート化合物としてヘキサメチレンジイソシアナートの代わりに2,4−トリレンジイソシアナートを用いる他は実施例4と同様にして下記構造式(樹脂No.7)のポリウレタン樹脂を得た。収率は61.0%であった。単結晶NaCl板上のキャスト膜として測定した赤外吸収スペクトルを図14に示す。
【0124】
【化38】
【0125】
(感光体実施例)
実施例9
アルミ板上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.3μmの中間層を設けた。この上に電荷発生物質として下記式で表されるビスアゾ化合物をシクロヘキサンと2−ブタノンの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0126】
【化39】
【0127】
次に、電荷輸送物質として実施例1で得られた樹脂No.1のポリウレタン樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、次いで120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して感光体No.1を作製した。
【0128】
かくしてつくられた感光体No.1について市販の静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製SP428型]を用いて暗所で−6kVのコロナ放電を20秒間行って帯電せしめた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位V0(V)を測定した。次いで、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5 luxになるように照射して、V0が1/2になるまでの時間(秒)を求め、露光量E1/2(lux・sec)を算出した。その結果を、以下に示す。
【0129】
Vm(V) 1355
V0(V) 1090
E1/2(lux・sec) 0.97
実施例10
実施例9で用いられた樹脂の代わりに実施例5で得られた樹脂No.2のポリウレタン樹脂を用いる以外は実施例9と同様にして感光体No.2を作製し、評価した。その結果を以下に記す。
【0130】
Vm(V) 1288
V0(V) 980
E1/2(lux・sec) 1.01
また、以上の各感光体を市販の電子写真複写機を用いて帯電せしめた後、原図を介して光照射を行って静電潜像を形成せしめ、乾式現像剤を用いて現像し、得られた画像(トナー画像)を普通紙上に静電転写し、定着したところ、鮮明な転写画像が得られた。現像剤として湿式現像剤を用いた場合も同様に鮮明な転写画像が得られた。
【0131】
【発明の効果】
本発明のホール輸送性ポリマーは従来の低分子分散型ポリマーに比べて電気的特性を損なうことなく耐摩耗性や耐熱性に優れた特性を有している為、これら機械的特性や熱的特性を要求される有機半導体用材料として好適に使用することができる。また、この物を感光層中に用いた電子写真用感光体は電気的特性を損なうことなく感光層の機械的強度を上げることができ、高感度で高耐久の感光体を提供できる。特に、この物を感光層表面に使用する感光体構成では、その機械的特徴を最大限発揮することができ、耐摩耗性を向上させた感光体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図。
【図2】本発明に係る電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図。
【図3】本発明に係る電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図。
【図4】本発明に係る電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図。
【図5】本発明に係る電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図。
【図6】本発明に係る電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図。
【図7】本発明の樹脂No.1(実施例1)の赤外線吸収スペクトル図。
【図8】本発明の樹脂No.2(実施例3)の赤外線吸収スペクトル図。
【図9】本発明の樹脂No.3の赤外線吸収スペクトル図。
【図10】本発明の樹脂No.4の赤外線吸収スペクトル図。
【図11】本発明の樹脂No.5の赤外線吸収スペクトル図。
【図12】本発明の樹脂No.6の赤外線吸収スペクトル図。
【図13】本発明の樹脂No.7の赤外線吸収スペクトル図。
【図14】本発明の樹脂No.8の赤外線吸収スペクトル図。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2,2’,2'',2''',2'''',2''''' 感光層
3 電荷発生物質
4 電荷輸送層又は電荷輸送媒体
5 電荷発生層
6 保護層
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを有し、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の含量が1モル%以上100モル%以下であり、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000以上1000000以下であるホール輸送性ポリマー。
Bは置換または無置換の脂肪族2価基、置換または無置換の環状脂肪族2価基、置換または無置換の芳香族2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
X1はオキシ基、イミノ基、チオ基、オキシカルボニル基、イミノカルボニル基、ウレイレン基、カルボニルオキシカルボニル基、スルフォニル基、イミノスルフォニル基、イミノカルボニルオキシ基を表す。)) - 下記一般式(6)で表される繰り返し単位と、下記一般式(8)で表される繰り返し単位を有し、式(6)で表される繰り返し単位の含量が1モル%以上100モル%以下であり、ポリスチレン換算重量平均分子量が1000以上1000000以下であるホール輸送性ポリマー。
X2はオキシ基、イミノ基、チオ基、イミノカルボニル基、ウレイレン基、カルボニルオキシカルボニル基、スルフォニル基、イミノスルフォニル基、イミノカルボニルオキシ基を表す。
Bは置換または無置換の脂肪族2価基、置換または無置換の環状脂肪族2価基、置換または無置換の芳香族2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
- 上記一般式(6)、一般式(8)において、X2がイミノカルボニルオキシ基である請求項2で表されるホール輸送性ポリマー。
- 上記一般式(1)、一般式(2)においてX1 がイミノカルボニルオキシ基である請求項1又は請求項4で表されるホール輸送性ポリマー。
- 導電性支持体上に感光層を設けた電子写真用感光体において、感光層に請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のホール輸送性ポリマーを有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
- 導電性支持体上に複数層からなる感光層を設けた電子写真用感光体において、その表面層に請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のホール輸送性ポリマーを有効成分として含有することを特徴とする電子写真用感光体。
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