JP3934703B2 - 電子写真用感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用感光体に関し、詳しくは感光層中に電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を含有した高感度で且つ高耐久の電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機感光体(OPC)が複写機、プリンターに多く使用されている。有機感光体の代表的な構成例として、導電性基板上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した積層感光体が挙げられる。電荷輸送層は低分子電荷輸送材料(CTM)とバインダー樹脂より形成される。しかしながら、低分子電荷輸送材料の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損うものとなっている。
【0003】
光導電性高分子材料としては古くはポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のビニル重合体が電荷移動錯体型の感光体として検討されたが、光感度の点で満足できるものではなかった。一方、前述の積層型感光体の欠点を改良すべく、電荷輸送能を有する高分子材料に関する検討がなされている。例えばトリフェニルアミン構造を有するアクリル系樹脂〔M.Stolka et al,J.Polym.Sci.,vol 21,969(1983)〕、ヒドラゾン構造を有するビニル重合体(Japan HardCopy‘89P.67)及びトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(米国特許4,801,517号、同4,806,443号、同4,806,444号、同4,937,165号、同4,959,288号、同5,030,532号、同5,034,296号、同5,080,989号各明細書、特開昭64−9964号、特開平3−221522号、特開平2−304456号、特開平4−11627号、特開平4−175337号、特開平4−18371号、特開平4−31404号、特開平4−133065号各公報)等であるが、実用化には到っていない。
又、M.A.Abkowitzらはテトラアリールベンジジン誘導体をモデル化合物として低分子分散型と高分子化されたポリカーボネートとの比較を行っているが、高分子系はドリフト移動度が一桁低いとの結果を得ている〔Physical Review B46 6705(1992)〕。この原因については明らかではないが、高分子化することにより機械的強度は改善されるものの、感度、残留電位等電気的特性に課題があることを示唆している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の実状に鑑みてなされたものであって、電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を用いることにより、高感度で且つ高耐久な電子写真用感光体を提供することを、その目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、導電性支持体上に、下記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる新規芳香族ポリカーボネート樹脂及び下記一般式(II)ならびに(III)で示される繰り返し単位からなる新規芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有する感光層を設けることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明に到った。
【0006】
即ち、本発明は以下の(1)〜(4)である。
(1)導電性支持体上に下記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有する感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【0007】
【化9】
【0008】
〔式中、nは5〜5000の整数、Ar1及びAr4は同一又は異なる芳香族炭化水素の2価基、Ar2及びAr3は同一又は異なる置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の複素環基を表わす。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基または、
【0009】
【化10】
【0010】
(ここで、R1及びR2は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、l及びmは各々独立して0〜4の整数であり、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、
【0011】
【化11】
【0012】
から選ばれ、Zは脂肪族炭化水素の2価基を表わし、aは0〜20の整数、bは1〜2000の整数、R3,R4は各々独立して置換又は無置換のアルキル基ないしは置換又は無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)を表わす。〕
(2)導電性支持体上に下記一般式(II)および(III)で表わされる繰り返し単位からなり、繰り返し単位の組成比が0<k/(k+j)≦1である芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有する感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【0013】
【化12】
【0014】
〔式中、kは5〜5000の整数、jは0〜5000の整数、Ar1及びAr4は同一又は異なる芳香族炭化水素の2価基、Ar2及びAr3は同一又は異なる置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の複素環基を表わす。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基または、
【0015】
【化13】
【0016】
(ここで、R1及びR2は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、l及びmは各々独立して0〜4の整数であり、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、
【0017】
【化14】
【0018】
から選ばれ、Zは脂肪族炭化水素の2価基を表わし、aは0〜20の整数、bは1〜2000の整数、R3,R4は各々独立して置換又は無置換のアルキル基ないしは置換又は無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)を表わす。〕
(3)芳香族ポリカーボネートが下記一般式(IV)で表わされる繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする上記(1)記載の電子写真用感光体。
【0019】
【化15】
【0020】
〔式中、n,Ar2,Ar3,Xは上記(1)と同義〕
(4)芳香族ポリカーボネートが下記一般式(V)および(III)で表わされる繰り返し単位からなり、繰り返し単位の組成比が0<k/(k+j)≦1である芳香族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする上記(2)記載の電子写真用感光体。
【0021】
【化16】
【0022】
〔式中、k,j,Ar2,Ar3,Xは上記(2)と同義〕
上記のように本発明の電子写真用感光体は、感光層中に第3級アミン構造を有する前記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂、または第3級アミン構造を有する前記一般式(II)で示される繰り返し単位と前記一般式(III)で示される繰り返し単位とからなる芳香族ポリカーボネート樹脂を含有したものであるが、これら芳香族ポリカーボネート樹脂が電荷輸送能をもち、且つ高い機械的強度を有するため、本感光体は高感度で且つ高耐久なものとなる。以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0023】
本発明の電子写真用感光体は上記したように感光層中に前記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂または前記一般式(II)で示される繰り返し単位と前記一般式(III)で示される繰り返し単位とからなる芳香族ポリカーボネート樹脂を含有するものであるが、これらの芳香族ポリカーボネート樹脂は新規物質であり、以下のような方法によって製造される。
【0024】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、従来ポリカーボネート樹脂の製造法として公知のビスフェノールと炭酸誘導体との重合と同様の方法で製造できる。すなわち、本発明の上記一般式(II)又は一般式(V)で表わされる繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記一般式(VI)又は一般式(VII)で表わされる第3級アミノ基を有するジオール化合物と、ビスアリールカーボネートとのエステル交換法、ホスゲンとの溶液または界面重合によるホスゲン法、あるいはジオールから誘導されるビスクロロホーメートを用いるビスクロロホーメート法等により製造される。この際、下記一般式(VIII)で表わされるジオール化合物を併用することによって、上記一般式(I)又は一般式(IV)で表わされる繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂、更に、上記一般式(II)で表わされる繰り返し単位と上記一般式(III)で表わされる繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは上記一般式(V)で表わされる繰り返し単位と上記一般式(III)で表わされる繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂を製造することができ、こうすることによって所望の特性を備えた芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。上記一般式(II)で表わされる繰り返し単位と上記一般式(III)で表わされる繰り返し単位との割合及び上記一般式(V)で表わされる第3級アミノ基を有する繰り返し単位と上記一般式(III)で表わされる繰り返し単位との割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。
【0025】
【化17】
【0026】
HO−X−OH (VIII)
〔各式中のAr1〜Ar4,Xは前義と同じ。〕
一般式(VI)及び一般式(VII)で示される第3級アミノ基を有するジオール化合物の具体例を以下に示す。Ar2,Ar3が同一又は異なる置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基である場合、及び置換もしくは無置換の複素環基である場合の具体例としては以下のものを挙げることができる。
【0027】
(1)芳香族炭化水素基;フェニル基、縮合多環基としてナフチル基、ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ〔a,d〕シクロヘプテニリデンフェニル基、非縮合多環基としてビフェニリル基、ターフェニリル基、または
【0028】
【化18】
【0029】
ここで、Wは−O−,−S−,−SO−,−SO2−,−CO−及び以下の2価基を表わす。
【0030】
【化19】
【0031】
で表わされる。R6は水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基を表わす。
【0032】
(2)複素環基;チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基などが挙げられる。
また、Ar1及びAr4で示される芳香族炭化水素の2価基としては上記Ar2及びAr3で示した芳香族炭化水素基の2価基が挙げられる。
上述の芳香族炭化水素基及び複素環基は以下に示す基を置換基として有してもよい。又、これら置換基は上記一般式中のR5の具体例として表わされる。
【0033】
(3)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(4)アルキル基;好ましくはC1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
【0034】
(5)アルコキシ基(−OR7);R7は上記(4)で定義したアルキル基を表わす。具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0035】
(6)アリールオキシ基;アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的にはフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
(7)置換メルカプト基またはアリールメルカプト基;具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0036】
(8)
【0037】
【化20】
【0038】
式中、R8及びR9は各々独立に(4)で定義したアルキル基またはアリール基を表わし、アリール基としては例えばフェニル基、ビフェニリル基またはナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。またアリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。具体的にはジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。
【0039】
(9)メチレンジオキシ基、またはメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基またはアルキレンジチオ基等が挙げられる。
一般式(VIII)で示されるジオール化合物の具体例を以下に示す。
【0040】
1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の脂肪族ジオールや1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等の環状脂肪族ジオールが挙げられる。
【0041】
又、芳香環を有するジオール化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルオキシド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0042】
本発明の感光体の断面図を図1〜図6に示す。
本発明の感光体は前記のような芳香族ポリカーボネート樹脂の1種または2種以上を感光層2(2’,2'',2''',2'''',2''''')に含有させたものであるが、これらの応用の仕方によって図1、図2、図3、図4、図5あるいは図6に示したごとくに用いることができる。
【0043】
図1における感光体は導電性支持体1上に増感染料及び芳香族ポリカーボネート樹脂、場合により結合剤(結着樹脂)よりなる感光層2が設けられたものである。ここでの芳香族ポリカーボネート樹脂は光導電性物質として作用し、光減衰に必要な電荷担体の生成及び移動は芳香族ポリカーボネート樹脂を介して行われる。しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂は光の可視領域においてほとんど吸収を有していないので、可視光で画像を形成する目的のためには、可視領域に吸収を有する増感染料を添加して増感する必要がある。
【0044】
図2における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を芳香族ポリカーボネート樹脂単独あるいは結合剤と併用してなる電荷輸送媒体4の中に分散せしめた感光層2’が設けられたものである。ここでの芳香族ポリカーボネート樹脂は単独であるいは結合剤との併用で電荷輸送媒体を形成し、一方、電荷発生物質3(無機又は有機顔料のような電荷発生物質)が電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は主として電荷発生物質3が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する作用を担当している。そしてこの感光体にあっては電荷発生物質と芳香族ポリカーボネート樹脂とが、互いに主として可視領域において吸収波長領域が重ならないというのが基本的条件である。これは電荷発生物質3に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。一般式(I)の繰り返し単位で表わされる芳香族ポリカーボネート樹脂は可視領域にほとんど吸収がなく、一般に可視領域の光線を吸収し、電荷担体を発生する電荷発生物質3とを組合せた場合、特に有効に電荷輸送物質として働くのがその特長である。なお、上記電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を併用してもよい。
【0045】
図3における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を主体とする電荷発生層5と、芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2''が設けられたものである。この感光体では電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層5に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行うもので、光減衰に必要な電荷担体の発生は電荷発生物質3で行われ、また電荷担体の輸送は電荷輸送層4で行われる。こうした機構は図2に示した感光体においてした説明と同様である。
【0046】
なお電荷輸送層4は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂単独あるいは結合剤との併用で形成される。また電荷発生効率を高めるために、電荷発生層5に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有させてもよい。同様の目的で感光層2''中に低分子電荷輸送物質を併用してもよい。後述の感光層2'''〜2'''''についても同様である。
【0047】
図4における感光体は電荷輸送層4上に保護層6を設けたものである。本構成の場合は電荷輸送層4上に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤との併用で保護層が形成される。当然のことながら、従来多く使用されている低分子分散型電荷輸送層上への形成が効果的である。なお図2に示した感光層2’上へ同様に保護層が設けられてもよい。
【0048】
図5における感光体は図3の電荷発生層5と芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する電荷輸送層4の積層順を逆にしたものであり、その電荷担体の発生及び輸送の機構は上記の説明と同様にできる。この場合機械的強度を考慮し図6のように電荷発生層5の上に保護層6を設けることもできる。
実際に本発明の感光体を作製するには、図1に示した感光体であれば、芳香族ポリカーボネート樹脂の1種または2種以上あるいはそれと結合剤と併用して溶解し、更にこれに増感染料を加えた液をつくり、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2を形成すればよい。
【0049】
感光層の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜20μが適当である。感光層2に占める芳香族ポリカーボネート樹脂の量は30〜100重量%であり、又、感光層2に占める増感染料の量は0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。増感染料としてはブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレット6Bのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGエキストラ、エオシンS、エリトロシン、ローズベンガル、フルオレセインのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、シアニンのようなシアニン染料が挙げられる。
又、図2に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤を併用し溶解した溶液に電荷発生物質3の微粒子を分散せしめ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2’を形成すればよい。
【0050】
感光層2’の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜20μmが適当である。感光層2’に占める第3級アミン化合物の量は40〜100重量%であり、又、感光層2’に占める電荷発生物質3の量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。電荷発生物質3としては、例えばセレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコンなどの無機顔料、有機顔料としては例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、例えばシーアイピグメントブルー16(CI74100)などのフタロシアニン系顔料、例えばシーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン系顔料などが挙げられる。なお、これらの電荷発生物質は単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0051】
更に図3に示した感光体を作製するには、導電性支持体1上に電荷発生物質を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥するかして、更に必要であればバフ研磨などの方法によって表面仕上げ、膜厚調整などを行って電荷発生層5を形成し、この上に1種又は2種以上の芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成すればよい。
なおここで電荷発生層5の形成に用いられる電荷発生物質は、前記の感光層2’の説明と同じものである。
【0052】
電荷発生層5の厚さは5μm以下、好ましくは2μm以下であり、電荷輸送層4の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜20μmが適当である。電荷発生層5が電荷発生層物質の微粒子3を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質の微粒子3の電荷発生層5に占める割合は10〜100重量%、好ましくは50〜100重量%程度である。又、電荷輸送層4に占める化合物の量は40〜100重量%である。
なお、図3における感光層2''に低分子電荷輸送物質を含有してもよいことは前記のとおりであるが、ここに用いられる該電荷輸送物質としては下記のものが挙げられる。
【0053】
オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、同52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号、同55−52063号、同56−81850号などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭5−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)など。
【0054】
図4に示した感光体を作成するには、図3に示した感光体上に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を単独であるいは結合剤と併用して溶解し塗布し、乾燥して、保護層6が設けられる。保護層の厚さは0.15〜10μmが好ましい。保護層6中に占める本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の量は40〜100重量%である。
【0055】
図5に示した感光体を作成するには導電性支持体1上に芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成したのち、この電荷輸送層の上に電荷発生層物質の微粒子を必要によって結合剤を溶解した溶媒中に分散した分散液をスプレー塗工等の方法で塗布乾燥して電荷発生層5を形成すればよい。電荷発生層あるいは電荷輸送層の量比は図3で説明した内容と同様である。
このようにして得られた感光体の電荷発生層5の上に前述の保護層6を形成することにより、図6に示す感光体を作成できる。
【0056】
なお、これらのいずれの感光体製造においても、導電性支持体1にはアルミニウムなどの金属板又は金属箔、アルミニウムなどの金属を蒸着したプラスチックフィルム、あるいは導電処理を施した紙などが用いられる。
又、結合剤としてはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネートなどの縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体などが用いられるが、絶縁性で且つ接着性のある樹脂はすべて使用できる。必要により可塑剤が結合剤に加えられているが、そうした可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが例示できる。また必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。
【0057】
更に以上のようにして得られる感光体には導電性支持体と感光層の間に、必要に応じて接着層又はバリヤ層を設けることができる。これらの層に用いられる材料としては、ポリアミド、ニトロセルロース、酸化アルミニウムなどであり、また膜厚は1μm以下が好ましい。
本発明の感光体を用いて複写を行うには、感光面に帯電、露光を施した後、現像を行い必要によって紙などへ転写を行う。
本発明の感光体は感度が高く、また耐久性に優れている。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、下記実施例において部はすべて重量部である。
製造例
出発物質として、下記構造の第3級アミノ基を有する化合物を用いた。
【0059】
【化21】
【0060】
乾燥THF50mlにN,N−ビス(3−ヒドロキシフェニル)−N’,N’−ビス(4−トリル)−m−フェニレンジアミン3.13g(0.0065mol)、トリエチルアミン1.71g(0.017mol)を溶解した。この溶液にジエチレングリコールビスクロロフォーメート1.67g(0.0072mol)を乾燥THF10mlに溶かしたものを、水冷下、30分かけて滴下した。滴下終了後、粘稠混合物をさらに15分間撹拌し、0.13gのフェノールを3mlの乾燥THFに溶かしたものを加えた。5分間撹拌の後、得られた粘稠混合物をメタノール中に沈殿させ、粗生成物を濾取した。このものにジクロロメタン溶解−メタノール沈殿の処理を2回施し、沈殿物を濾取、乾燥して下記構造式のポリカーボネート樹脂(化合物No.1)を得た。得られた目的物は3.30gで収率は80.5%であり、ガラス転移点は82.6℃であった。
【0061】
【化22】
【0062】
この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は以下のようであった。
数平均分子量 25400
重量平均分子量 40200
また、元素分析結果は以下のとおりであった。
【0063】
実施例
アルミ板上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.3μmの中間層を設けた。この上に電荷発生物質として下記式で表わされるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンとメチルエチルケトンの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して約1μmの電荷発生層を形成した。
【0064】
【化23】
【0065】
次に電荷輸送物質として製造例1で得られたポリカーボネート樹脂No.1をジクロロメタンに溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、次いで120℃で20分間乾燥して厚さ約20μmの電荷輸送層を形成して感光体No.1を作製した。
かくしてつくられた感光体No.1について市販の静電複写紙試験装置〔(株)川口電機製作所製SP428型〕を用いて暗所で−6kVのコロナ放電を20秒間行って帯電せしめた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位V0(V)を測定した。次いでタングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、V0が1/2になるまでの時間(秒)を求め、露光量E1/2(lux・sec)を算出した。その結果、Vo=−986(V),E1/2=0.84(lux・sec)であった。
【0066】
【発明の効果】
本発明の電子写真用感光体は感光層中に第3級アミン構造を有する前記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂、または第3級アミン構造を有する前記一般式(II)で示される繰り返し単位と前記一般式(III)で示される繰り返し単位とからなる芳香族ポリカーボネート樹脂を含有したものであるが、これら芳香族ポリカーボネート樹脂は電荷輸送能をもち且つ高い機械的強度を有するため、本感光体は高感度で且つ高耐久なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図、
【図2】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図3】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図4】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図5】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図6】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【符号の説明】
1 導電性支持体
2,2’、2''、2'''、2''''、2'''''感光層
3 電荷発生物質
4 電荷輸送層又は電荷輸送媒体
5 電荷発生層
6 保護層
Claims (4)
- 導電性支持体上に下記一般式(I)で示される繰り返し単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有する感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
- 導電性支持体上に下記一般式(II)および(III)で表わされる繰り返し単位からなり、繰り返し単位の組成比が0<k/(k+j)≦1である芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有する感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
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