JP3995801B2 - 電子写真用感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用感光体に関し、詳しくは感光層中に電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂を含有した高感度で且つ高耐久の電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機感光体(OPC)が複写機、プリンターに多く使用されている。有機感光体の代表的な構成例として、導電性基板上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した積層感光体が挙げられる。電荷輸送層は低分子電荷輸送材料(CTM)とバインダー樹脂より形成される。しかしながら、低分子電荷輸送材料の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損うものとなっている。
【0003】
光導電性高分子材料としては古くはポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のビニル重合体が電荷移動錯体型の感光体として検討されたが、光感度の点で満足できるものではなかった。一方、前述の積層型感光体の欠点を改良すべく、電荷輸送能を有する高分子材料に関する検討がなされている。例えばトリフェニルアミン構造を有するアクリル系樹脂〔M.Stolka et al,J.Polym.Sci.,vol 21,969(1983)〕、ヒドラゾン構造を有するビニル重合体(Japan HardCopy‘89P.67)及びトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(米国特許4,801,517号、同4,806,443号、同4,806,444号、同4,937,165号、同4,959,288号、同5,030,532号、同5,034,296号、同5,080,989号各明細書、特開昭64−9964号、特開平3−221522号、特開平2−304456号、特開平4−11627号、特開平4−175337号、特開平4−18371号、特開平4−31404号、特開平4−133065号各公報)等であるが、実用化には到っていない。
【0004】
又、M.A.Abkowitzらはテトラアリールベンジジン誘導体をモデル化合物として低分子分散型と高分子化されたポリカーボネートとの比較を行っているが、高分子系はドリフト移動度が一桁低いとの結果を得ている〔Physical Review B46 6705(1992)〕。この原因については明らかではないが、高分子化することにより機械的強度は改善されるものの、感度、残留電位等電気的特性に課題があることを示唆している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の実状に鑑みてなされたものであって、電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂を用いることにより、高感度で且つ高耐久な電子写真用感光体を提供することを、その目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、導電性支持体上に特定の構成単位を含有する新規芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有する感光層を設けることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明は以下の(1)〜(6)である。
【0008】
(1)導電性支持体上に少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位を含有したポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【0009】
【化7】
【0010】
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。Ar5は置換もしくは無置換のアリール基を表す。Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を表す。)
(2)導電性支持体上に少なくとも下記一般式(I)及び下記一般式(II)で表される構成単位からなり、一般式(I)で表される構成単位の組成比をk、一般式(II)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【化2】
(式中、Ar 1 、Ar 2 、Ar 3 、Ar 4 は置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。Ar 5 は置換もしくは無置換のアリール基を表す。Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を表す。)
【化3】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化4】
(ここで、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO 2 −、−CO−、
【化5】
から選ばれ、Z 1 、Z 2 は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R 6 とR 7 は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R 6 、R 7 はR 2 、R 3 と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R 13 、R 14 は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R 15 、R 16 は各々独立して炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
(3)導電性支持体上に少なくとも下記一般式( III) で表される構成単位を含有したポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【化6】
(式中、Ar 5 は置換もしくは無置換のアリール基を表す。Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を表す。)
(4)導電性支持体上に少なくとも下記一般式( III) 及び下記一般式( II )で表される構成単位からなり、一般式( III) で表される構成単位の組成比をk、一般式( II )で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【化7】
(式中、Ar 5 は置換もしくは無置換のアリール基を表す。Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、又は、置換又は無置換のアリール基を表す。)
【化8】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化9】
(ここで、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO 2 −、−CO−、
【化10】
から選ばれ、Z 1 、Z 2 は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R 6 とR 7 は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R 6 、R 7 はR 2 、R 3 と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R 13 、R 14 は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R 15 、R 16 は各々独立して炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
(5)導電性支持体上に少なくとも下記一般式( IV )で表される繰り返し単位を含有したポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【化11】
(6)導電性支持体上に少なくとも下記一般式( IV )及び下記一般式( II )で表される構成単位からなり、一般式( IV )で表される構成単位の組成比をk、一般式( II )で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
【化12】
【化13】
[式中、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化14】
(ここで、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO 2 −、−CO−、
【化15】
から選ばれ、Z 1 、Z 2 は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換の アリーレン基を表し、R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R 6 とR 7 は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R 6 、R 7 はR 2 、R 3 と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R 13 、R 14 は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R 15 、R 16 は各々独立して炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
【0022】
上記のように本発明の電子写真用感光体は、感光層中に電荷輸送能を有する前記一般式(I)、前記一般式(III)及び前記一般式(IV)で示される構成単位を少なくとも含有するポリカーボネート樹脂、電荷輸送能を有する前記一般式(I)、前記一般式(III)及び前記一般式(IV)で示される構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂、または電荷輸送能を有する前記一般式(I)、前記一般式(III)及び前記一般式(IV)で示される構成単位と前記一般式(II)で示される構成単位とからなる共重合ポリカーボネート樹脂であるが、これらポリカーボネート樹脂が電荷輸送能をもち、且つ高い機械的強度を有するため、本感光体は高感度で且つ高耐久なものとなる。
【0023】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
本発明の電子写真用感光体は上記したように感光層中に少なくとも前記一般式(I)で示される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂を有効成分として含有する感光層を設けたものである。これらのポリカーボネート樹脂は新規物質であり、以下のような方法によって製造される。
【0025】
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は従来ポリカーボネート樹脂の製造法として公知の、ビスフェノールと炭酸誘導体との重合と同様の方法で製造できる。すなわち、下記一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオールを少なくとも1種以上使用し、ホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物との界面重合法により製造される。これら公知の製造法については例えばポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日刊工業新聞社)等に記載されている。又、一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオール1種以上と併用して下記一般式(VIII)で表されるジオールを使用し、機械的特性等の改良された共重合体とすることができる。この場合、一般式(VIII)で表されるジオールを1種あるいは複数併用してもよい。一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオールと一般式(VIII)で表されるジオールとの割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。又、適当な重合操作を選択することによって共重合体の中でもランダム共重合体を得ることができる。例えば、一般式(V)、(VI)、(VII)で表される電荷輸送能を有するジオールと一般式(VIII)で表されるジオールをはじめから均一に混合してホスゲンとの縮合反応を行えば一般式(V)あるいは(VI)あるいは(VII)で表される構成単位と一般式(II)で表される構成単位とからなるランダム共重合体が得られる。
【0026】
以上すべての重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤として末端停止剤を用いることが望ましく、従って、本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。使用される末端停止剤は、1価の芳香族ヒドロキシ化合物、1価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体、1価のカルボン酸または1価のカルボン酸のハライド誘導体等である。
【0027】
これらの末端封止剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。好ましい末端封止剤は、1価の芳香族ヒドロキシ化合物であり、フェノール、p−tert−ブチルフェノールまたはp−クミルフェノール等を使用することができる。本発明の電子写真用感光体に有効成分として使用される一般式(I)で示される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜500000であり、より好ましくは10000〜200000である。
【0028】
又、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。分岐化剤としては、芳香族性ヒドロキシ基、ハロホーメート基、カルボン酸基、カルボン酸ハライド基または活性なハロゲン原子等から選ばれる反応基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0029】
以上のようにして得られた少なくとも前記一般式(I)で示される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂は重合中に使用した触媒や酸化防止剤、又、未反応のジオールや末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して本発明の感光層に使用される。これら精製操作も先のポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日刊工業新聞社)等に記載されている従来公知の方法を使用できる。
【0030】
【化13】
【0031】
次に本発明の主要な構成単位である一般式(I)についてさらに詳細に説明する。
【0032】
前記一般式(I)中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリレン基を表す。
【0033】
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4のアリーレン基としては置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。Ar1、Ar2、Ar3、Ar4のアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基としては以下のものを挙げることができる。
【0034】
フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられ、これらは上述した置換もしくは無置換のアルキル基、上述した置換もしくは無置換のアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、下記一般式(X)で表されるアミノ基を置換基として有していてもよい。
【0035】
【化14】
【0036】
[式中、R19、R20は置換もしくは無置換のアルキル基。置換もしくは無置換のアリール基を表すと共にR19とR20が共同で環を形成したり、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。このような具体例としてピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。]
R19、R20の置換もしくは無置換のアルキル基としては以下のものを挙げることができる。
【0037】
炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0038】
R19、R20の置換もしくは無置換のアリール基は、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4でアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基として定義されたアリール基を表す。
【0039】
前記一般式(I)中、Ar5は置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0040】
Ar5の置換もしくは無置換のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、下記一般式(XI)で表される基及びピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環基から誘導される1価基が挙げられる。これらはR19、R20で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4でアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基として定義されたアリール基置換、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を置換基として有していてもよい。
【0041】
【化15】
【0042】
[式中、R21、R22はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar6はアリーレン基を表す。hは1〜3の整数を表す。]
R21、R22のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0043】
R21、R22の置換もしくは無置換のアルキル基はR19、R20で定義された置換もしくは無置換のアルキル基と同様である。
【0044】
R21、R22の置換もしくは無置換のアリール基はAr1、Ar2、Ar3、Ar4でアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基として定義されたアリール基に加えて下記一般式(XII)で表される基を挙げることができる。
【0045】
【化16】
【0046】
[式中、Bは−O−、−S−、−SO−、SO2−、−CO−及び以下の2価基から選ばれる。
【0047】
【化17】
【0048】
(ここで、R23は、水素原子、R19、R20で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4でアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基として定義されたアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R24は、水素原子、R19、R20で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4でアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基として定義されたアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表す。)]
R23のアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0049】
R23のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0050】
R23のアミノ基としてはAr1、Ar2、Ar3、Ar4でアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基の置換基として定義されたアミノ基を表す。Ar6のアリーレン基としてはAr1、Ar2、Ar3、Ar4で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0051】
前記一般式(I)中のRにおける置換又は無置換のアルキル基としては、前記R19、R20で例示されたアルキル基を挙げることができ、また、置換又は無置換のアリール基としては前記Ar5と同様である。
【0052】
以上一般式(I)の構成単位について説明したが同一の記号についつては他の一般式中でも同じ定義である。
【0053】
以下に一般式(I)で表される構成単位の代表的具体例を示す。
【0054】
【化18】
【0055】
以上、本発明に使用するポリカーボネート樹脂およびその製造に関して説明したが、さらに詳細には、本出願人の出願に係る平成10年6月10日出願(整理番号9802766)の明細書を参照されたい。
【0056】
本発明では、電荷輸送能を有する前記一般式(I)の構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂を有効成分として含有させることもできるが、機械的特性を調節するためのそれ以外の構成単位との共重合体を使用することもできる。それ以外の構成単位としては従来公知のポリカーボネート樹脂の構成単位をそのまま利用することができる。例えば、ポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日刊工業新聞社)等に記載されている基本単位を利用することができる。このような従来公知の構成単位のうち、好ましい例として前記一般式(II)で表される構成単位を挙げることができる。以下にもう一つの主要な構成単位である一般式(II)についてその原料となる前記一般式(VIII)の例を挙げて詳細に説明する。
【0057】
一般式(VIII)のXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオールの代表的具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン等である。
【0058】
また、Xが芳香族の2価基である場合としてはAr1、Ar2、Ar3、Ar4で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。また、Xは以下に示される2価基を表す。
【0059】
【化19】
【0060】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0061】
【化20】
【0062】
から選ばれ、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
これらの中で、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基はいずれもR19、R20で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4でアリーレン基を誘導する置換もしくは無置換のアリール基と同様である。又、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。又、Z1、Z2が置換もしくは無置換の脂肪族の2価基である場合としてはXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオールからヒドロキシ基を除いた2価基を挙げることができる。又、Z1、Z2が置換もしくは無置換のアリーレン基である場合としてはAr1、Ar2、Ar3、Ar4で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0063】
これらXが芳香族の2価基である場合の好ましいジオールの代表的具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジフェニル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3,3′,3′−テトラメチル−6,6′−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3′,4,4′−テトラヒドロ−4,4,4′4′−テトラメチル−2,2′−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)−7,7′−ジオール、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、2,6−ジヒドロキシベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイドロキノン、レゾルシン、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。又、ジオール2モルとイソフタロイルクロライド又はテレフタロイルクロライド1モルとの反応により製造されるエステル結合を含む芳香族ジオール化合物も有用である。
【0064】
以上一般式(II)の構成単位についてその原料となる一般式(VIII)の例を挙げて説明したが同一の記号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0065】
一般式(I)の構成単位と一般式(II)の構成単位との共重合ポリカーボネート樹脂において一般式(I)の構成単位の含有する割合は任意の範囲で選択することができるが、一般式(I)の構成単位の含有率はポリカーボネート樹脂の電荷輸送性に対応しているので、好ましくは全構成単位中5モル%以上、より好ましくは20モル%以上含有する事が望ましい。
【0066】
以上本発明の電子写真用感光体に使用される電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂の構造について説明してきたが、このものを感光層中に含有させる実施形態について以下に説明する。
【0067】
本発明の感光体の断面図を図2〜図7に示す。
【0068】
本発明の感光体は前記のような芳香族ポリカーボネート樹脂の1種または2種以上を感光層2(2’,2'',2''',2'''',2''''')に含有させたものであるが、これらの応用の仕方によって図2、図3、図4、図5、図6あるいは図7に示したごとくに用いることができる。
【0069】
図2における感光体は導電性支持体1上に増感染料及び電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂、場合により結合剤(結着樹脂)よりなる感光層2が設けられたものである。ここでのポリカーボネート樹脂は光導電性物質として作用し、光減衰に必要な電荷担体の生成及び移動はポリカーボネート樹脂を介して行われる。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は光の可視領域においてほとんど吸収を有していないので、可視光で画像を形成する目的のためには、可視領域に吸収を有する増感染料を添加して増感する必要がある。
【0070】
図3における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂単独あるいは結合剤と併用してなる電荷輸送媒体4の中に分散せしめた感光層2’が設けられたものである。ここでの芳香族ポリカーボネート樹脂は単独であるいは結合剤との併用で電荷輸送媒体を形成し、一方、電荷発生物質3(無機又は有機顔料のような電荷発生物質)が電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は主として電荷発生物質3が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する作用を担当している。そしてこの感光体にあっては電荷発生物質とポリカーボネート樹脂とが、互いに主として可視領域において吸収波長領域が重ならないというのが基本的条件である。これは電荷発生物質3に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。一般式(I)で表わされる構成単位を含有するポリカーボネート樹脂は波長600nm以上にほとんど吸収がなく、一般に可視領域から近赤外領域の光線を吸収し、電荷担体を発生する電荷発生物質3とを組合せた場合、特に有効に電荷輸送物質として働くのがその特長である。なお、上記電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。
【0071】
図4における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を主体とする電荷発生層5と、電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂を含有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2''が設けられたものである。この感光体では電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層5に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行うもので、光減衰に必要な電荷担体の発生は電荷発生物質3で行われ、また電荷担体の輸送は電荷輸送層4で行われる。こうした機構は図2に示した感光体においてした説明と同様である。
【0072】
なお電荷輸送層4は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂単独あるいは結合剤との併用で形成される。また電荷発生効率を高めるために、電荷発生層5に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有させてもよい。同様の目的で感光層2''中に低分子電荷輸送物質を併用してもよい。後述の感光層2'''〜2'''''についても同様である。
【0073】
図5における感光体は電荷輸送層4上に保護層6を設けたものである。本構成の場合は電荷輸送層4上に本発明のポリカーボネート樹脂あるいは結合剤との併用で保護層が形成される。当然のことながら、従来多く使用されている低分子分散型電荷輸送層上への形成が効果的である。なお図2に示した感光層2’上へ同様に保護層が設けられてもよい。
【0074】
図6における感光体は図3の電荷発生層5とポリカーボネート樹脂を含有する電荷輸送層4の積層順を逆にしたものであり、その電荷担体の発生及び輸送の機構は上記の説明と同様にできる。この場合機械的強度を考慮し図7のように電荷発生層5の上に保護層6を設けることもできる。
【0075】
実際に本発明の感光体を作製するには、図2に示した感光体であれば、電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂の1種または2種以上あるいはそれと結合剤と併用して溶解し、更にこれに増感染料を加えた液をつくり、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2を形成すればよい。
【0076】
感光層の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2に占める芳香族ポリカーボネート樹脂の量は30〜100重量%であり、又、感光層2に占める増感染料の量は0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。増感染料としてはブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレット6Bのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGエキストラ、エオシンS、エリトロシン、ローズベンガル、フルオレセインのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、シアニンのようなシアニン染料が挙げられる。
【0077】
又、図3に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上の電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤を併用し溶解した溶液に電荷発生物質3の微粒子を分散せしめ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2’を形成すればよい。
【0078】
感光層2’の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2’に占める電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の量は40〜100重量%であり、又、感光層2’に占める電荷発生物質3の量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。電荷発生物質3としては、例えばセレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコンなどの無機材料、有機材料としては例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、例えばシーアイピグメントブルー16(CI74100)などのフタロシアニン系顔料、例えばシーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン系顔料などが挙げられる。なお、これらの電荷発生物質は単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。
【0079】
又、上記の電荷発生物質の中で、特にフタロシアニン系顔料との組み合わせにより、高感度でかつ高耐久な感光体を得ることができる。フタロシアニン顔料としては、下記式で表されるフタロシアニン骨格を有する化合物で、M(中心金属)は、金属及び無金属(水素)の元素が挙げられる。
【0080】
【化21】
【0081】
ここで挙げられるM(中心金属)は、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしくは酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物などの2種以上の元素からなる。中心金属は、これらの元素に限定されるものではない。本発明におけるフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質とは、少なくとも上記一般式の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体など多量体構造を持つもの、さらに高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また、基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。
【0082】
これらの様々なフタロシアニンのうち、中心金属にTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、Hを有する無金属フタロシアニンは、感光体特性的に特に好ましい。
【0083】
またこれらのフタロシアニンは、様々な結晶型を持つことも知られており、例えばオキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多型を有している。同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶型が変わることにより、種々の特性も変化する。その中で感光体特性も、このような結晶型変化に伴い変化することが報告されている(電子写真学会誌 第29巻 第4号(1990))。このことから、各フタロシアニンは、感光体特性的に最適な結晶型が存在し、特にオキソチタニウムフタロシアニンおいては、y型の結晶型が望ましい。
【0084】
また、これらの電荷発生物質は、フタロシアニン骨格を有する電荷発生物質を2種以上混合していてもかまわない。さらにそれ以外の電荷発生物質と混合していてもかまわない。この場合に混合する電荷輸送物質としては、無機系材料及び有機系材料が挙げられる。
【0085】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物やアモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0086】
一方、有機系材料としては、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。
【0087】
更に図4に示した感光体を作製するには、導電性支持体1に電荷発生物質を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥するかして、更に必要であればバフ研磨などの方法によって表面仕上げ、膜厚調整などを行って電荷発生層5を形成し、この上に1種又は2種以上の電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成すればよい。
【0088】
なおここで電荷発生層5の形成に用いられる電荷発生物質は、前記の感光層2’の説明と同じものである。
【0089】
電荷発生層5の厚さは5μm以下、好ましくは2μm以下であり、電荷輸送層4の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。電荷発生層5が電荷発生層物質の微粒子3を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質の微粒子3の電荷発生層5に占める割合は10〜100重量%、好ましくは50〜100重量%程度である。又、電荷輸送層4に占める電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂の量は40〜100重量%である。
【0090】
なお、図4における感光層2''に低分子電荷輸送物質を含有してもよいことは前記のとおりであるが、ここに用いられる該電荷輸送物質としては下記のものが挙げられる。
【0091】
オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、同52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号、同55−52063号、同56−81850号などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭5−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)など。
【0092】
図5に示した感光体を作成するには、図4に示した感光体上に本発明の電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を単独であるいは結合剤と併用して溶解し塗布し、乾燥して、保護層6が設けられる。保護層の厚さは0.15〜10μmが好ましい。保護層6中に占める本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の量は40〜100重量%である。
【0093】
図6に示した感光体を作成するには導電性支持体1上に電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成したのち、この電荷輸送層の上に電荷発生層物質の微粒子を必要によって結合剤を溶解した溶媒中に分散した分散液をスプレー塗工等の方法で塗布乾燥して電荷発生層5を形成すればよい。電荷発生層あるいは電荷輸送層の量比は図4で説明した内容と同様である。
【0094】
このようにして得られた感光体の電荷発生層5の上に前述の保護層6を形成することにより、図7に示す感光体を作成できる。
【0095】
なお、これらのいずれの感光体製造においても、導電性支持体1にはアルミニウムなどの金属板又は金属箔、アルミニウムなどの金属を蒸着したプラスチックフィルム、あるいは導電処理を施した紙などが用いられる。
【0096】
又、結合剤としてはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネートなどの縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体などが用いられるが、絶縁性で且つ接着性のある樹脂はすべて使用できる。必要により可塑剤が結合剤に加えられているが、そうした可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが例示できる。また必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。
【0097】
更に以上のようにして得られる感光体には導電性支持体と感光層の間に、必要に応じて接着層又はバリヤ層を設けることができる。これらの層に用いられる材料としては、ポリアミド、ニトロセルロース、酸化アルミニウム、酸化チタンなどであり、また膜厚は1μm以下が好ましい。
【0098】
本発明の感光体を用いて複写を行うには、感光面に帯電、露光を施した後、現像を行い必要によって紙などへ転写を行う。
【0099】
本発明の感光体は感度が高く、また耐久性に優れている。
【0100】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、下記実施例において部はすべて重量部である。
【0101】
製造例1
電荷輸送能を有するジオールとしての表1のA−1に示す構造のN,N−ビス[3−(3−ヒドロキフェノキシ)フェニル)]−スチルベン−4−アミン2.50部と共重合ジオールとしての2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.87部と分子量調節剤としての4−tert−ブチルフェノール0.0155部を撹拌反応容器に入れ、窒素気流下で水酸化ナトリウム2.61部とナトリウムハイドロサルファイト0.046部を水30.7部に溶解させた液を加えて加熱撹拌して溶解させた。その後、20℃まで冷却し、ホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネート1.50部をジクロロメタン25.6部に溶解させた液を強く撹拌しながら加えてエマルジョンを形成させながら反応させた。その後室温で15分撹拌した後トリエチルアミン0.0064部を加えて室温で60分撹拌反応させた。その後、クロロギ酸フェニル0.10部をジクロロメタン5部に溶かした液を加えて室温で120分撹拌反応させた。その後、ジクロロメタン250部を加えて有機層を分液した。この有機層を3%の水酸化ナトリウム水溶液、2%の塩酸水溶液の順で洗浄し、最後に水で洗浄した。この有機層を多量のメタノール中に滴下して白色のポリカーボネート樹脂を析出させ、表2に示すランダム共重合ポリカーボネート樹脂(樹脂No.1)を得た。この物の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところポリスチレン換算の分子量は、数平均分子量で70287、重量平均分子量で133089であった。又、示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は120.9℃であった。また、このポリカーボネート樹脂のIRチャートを図1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
製造例2〜6
ジオールの種類及び組成比を変えて実施例1と同様な操作を行い、樹脂No.2〜3のポリカーボネート樹脂を得た。結果を表2にまとめて示す。なお、樹脂No.2のガラス転移温度は128.9℃、同No.3のガラス転移温度は114.2℃であった。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
以下に実施例を示すが実施例中のポリカーボネート樹脂No.は製造例で示した上記樹脂No.に対応する。
【0107】
実施例1
アルミ板上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.3μmの中間層を設けた。この上に電荷発生物質として下記式で表されるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンと2−ブタノンの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0108】
【化22】
【0109】
次に、電荷輸送物質として製造例1で得られた樹脂No.1のポリカーボネート樹脂をジクロロメタンに溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、次いで120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して感光体No.1を作製した。
【0110】
かくしてつくられた感光体No.1について市販の静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製SP428型]を用いて暗所で−6KVのコロナ放電を20秒間行って帯電せしめた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位Vo(V)を測定した。次いで、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5 luxになるように照射して、Voが1/2になるまでの時間(秒)を求め、露光量E1/2(lux・sec)を算出した。その結果を、表3に示す。
【0111】
実施例2〜3
実施例1で用いられた樹脂No.1の代わりに製造例で得られた樹脂No.2〜3のポリカーボネート樹脂を用いる以外は実施例1と同様にして感光体No.2〜3を作製し、評価した。その結果を表3にまとめて記す。
【0112】
【表4】
【0113】
また、以上の各感光体を市販の電子写真複写機を用いて帯電せしめた後、原図を介して光照射を行って静電潜像を形成せしめ、乾式現像剤を用いて現像し、得られた画像(トナー画像)を普通紙上に静電転写し、定着したところ、鮮明な転写画像が得られた。現像剤として湿式現像剤を用いた場合も同様に鮮明な転写画像が得られた。
【0114】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子写真用感光体は、その感光層中に少なくとも電荷能を有する特定のポリカーボネート樹脂を有することにより、該ポリカーボネートが高い電荷輸送能を持ち、かつ高い機械的強度を持ち得るため、本感光体は高感度でかつ高耐久なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂のIRチャート、
【図2】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図、
【図3】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図4】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図5】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図6】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図、
【図7】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2,2’、2''、2'''、2''''、2'''''感光層
3 電荷発生物質
4 電荷輸送層又は電荷輸送媒体
5 電荷発生層
6 保護層
Claims (6)
- 導電性支持体上に少なくとも下記一般式(I)及び下記一般式(II)で表される構成単位からなり、一般式(I)で表される構成単位の組成比をk、一般式(II)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
- 導電性支持体上に少なくとも下記一般式(III)及び下記一般式(II)で表される構成単位からなり、一般式(III)で表される構成単位の組成比をk、一般式(II)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
- 導電性支持体上に少なくとも下記一般式(IV)及び下記一般式(II)で表される構成単位からなり、一般式(IV)で表される構成単位の組成比をk、一般式(II)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
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