JP3868822B2 - 追記型光ディスク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、追記型光ディスクに関する。更に詳しくは、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して、信号面にグルーブを形成した成形基板上に、色素記録層を形成してなる、耐静電気性に優れた追記型光ディスクに関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性などの機械的特性に優れている上、透明性にも優れた樹脂であり、幅広い分野で利用されている。特に、オーディオディスク、レーザディスク、光ディスクメモリ、または光磁気ディスク等のレーザ光を利用して情報の再生、追記書換えを行なう光学式情報記録媒体に用いられる光学式ディスクとして用途を拡げている。
【0003】
このポリカーボネートの工業的製法としては、ビスフェノールAとホスゲンを塩化メチレン溶媒中で反応させる界面重合法が一般的であるが、この方法は工業的に取り扱いの難しいホスゲンや塩化メチレンを用いる必要があることから、近年、これらの化合物を用いず、ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを原料に、無溶媒下、エステル交換反応によりポリカーボネートを製造する方法が一部工業化されている(特開昭63−51429号、特開平2−153925号、特公平6−99552号公報等参照)。
上記エステル交換反応によって製造されるポリカーボネートは、コンパクトディスク(CD)製造に使用される材料となっている。しかしながら、米国特許第5,606,008号に開示されているような溶融縮合法で作成したポリカーボネートから製造したCDでは、その特徴として、高い負の静電荷(典型的には<−2.0kV)が発生する。この高い負の静電荷により、成形品は、ほこりを寄せ付け、そのようなディスクの最終品質を落としてしまうことになり得る。また、高い静電荷により、ディスク同士が引き付けあい、輸送工程中、たとえば射出成形機からの移送中にディスクが互いにくっついてしまうため、CD製造を停止したりその歩留まりが落ちたりするという状況に至ることにもなり得る。さらに、色素塗布時の濡れ性増加により、色素塗布不良が発生していた。書き換え可能な基板をディスク表面にスピンコートするCD用途の場合、書き換え可能な層の均一な湿潤のためには、低い負の静電荷が必要である。
上記問題を解決するべく、エステル交換反応によって製造された芳香族ポリカーボネート樹脂から得られ、CD作成時の高い負の静電荷を抑制する手法が開示されている。
【0004】
上記問題を解決するべく、様々な手法が提案されている。例えば、帯電防止性芳香族ポリカーボネート組成物が特開昭62−207358号公報に開示されている。これらの組成物は、CD、ビデオディスクなどのような高密度光学情報記録媒体に用いられ、適切な帯電防止特性をもっていると報告されている。これらの組成物中の帯電防止剤は、芳香族ポリカーボネートに対して0.01〜4.8重量部のレベルで使用する部分的にエステル化された酸性リン酸誘導体に限定されている。
【0005】
また、特開平11−279396号公報には、芳香族ポリカーボネート組成物中に約0.05%(芳香族ポリカーボネートに対する重量%)未満の非酸性帯電防止剤を用いると、成型されたCDの静電荷を約−2kVから約+2kVまでの間に制限する組成物が得られると示されている。しかしながら、耐静電気性には、ある程度の効果はあるものの、スタンパーへの付着物が多量に発生し、それが原因となって製品ディスク表面に付着物が付くという悪影響が見られた。
上記のように、これらの提案はある程度の効果はあるものの実用化には程遠く、早期に耐静電気性に優れた追記型光ディスクが望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、耐静電気性に優れ、かつスタンパーへの付着物が低減した追記型光ディスクを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、耐静電気性に優れ、かつスタンパーへの付着物が低減した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を見い出すべく鋭意検討したところ、特定の帯電防止剤を特定量、芳香族ポリカーボネート樹脂に添加し、さらに離型剤を特定量未満添加することにより、耐静電気性に優れ、かつスタンパーへの付着物が低減した追記型光ディスクが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、下記の(a)〜(d)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して、信号面にグルーブを形成した成形基板上に、色素記録層を形成してなる追記型光ディスクに存する。
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.01重量%未満で0.0001重量%以上の離型剤、(c)芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.002〜0.05重量%の熱安定剤、および(d)芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.001〜0.1重量%の帯電防止剤
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の追記型光ディスクは、芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定量の離型剤、特定量の熱安定剤そして特定量の帯電防止剤を含んだ樹脂組成物から成る。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、公知の界面法とエステル交換法(溶融法)によって得られるが、好ましくはエステル交換法によって得られるものであり、さらに詳しくは、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを用い、エステル交換触媒の存在下、エステル交換反応によって得等れるものである。本発明で用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、分子内に芳香族性水酸基を2個有する化合物であり、好ましくは、下記式(1)で表される化合物である。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Wは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数2〜8のアルキリデン基、炭素数5〜15のシクロアルキレン基、炭素数5〜15のシクロアルキリデン基又は、−O−,−S−,−CO−,−SO−,−SO2−で示される2価の基からなる群から選ばれるものであり、Y及びZは、ハロゲン又は炭素数1〜6の炭化水素基であり、p及びqは0〜2の整数であり、YとZ、pとqは、いずれも、同一であっても異なっていてもよい。)
【0012】
前記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が例示されるが、特に好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略す)が挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独でも、2種以上を混合してもよい。
本発明で使用される炭酸ジエステルは下記の一般式(2)で表される。
【0013】
【化2】
O
‖
A−O−C−O−A’ 式(2)
【0014】
(式中A及びA’は炭素数1〜18の脂肪族基あるいは置換脂肪族基、又は芳香族基あるいは置換芳香族基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
前記一般式(2)で表される炭酸ジエステルは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネート、およびジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは単独、あるいは2種以上を混合してもよい。
【0015】
本発明で芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するには、特に芳香族ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAと炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートが用いられ、ジフェニルカーボネートはビスフェノールA1モルに対して、1.01〜1.30モル、好ましくは1.02〜1.20の量で用いられることが好ましい。モル比が1.001より小さくなると、製造された芳香族ポリカーボネート樹脂の末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、また、モル比が1.300より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望の分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造が困難となる。
【0016】
本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂を得るためには、エステル交換触媒が使用される。該触媒としてはアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、あるいはアミン系化合物などの塩基性化合物を併用することも可能であるが、物性面や取り扱いの面で、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が単独で使用されることが特に好ましい。
【0017】
この触媒量としては、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、1×10-8〜5×10-6モルの範囲で用いられるのが好ましく、さらに好ましくは1×10-7〜3×10-6モルの範囲で、特に好ましくは2×10-7〜2×10-6モルの範囲で用いられる。この量より少なければ、所定の分子量、末端ヒドロキシ基量の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られない傾向があり、この量より多い場合は、ポリマー色相が悪化し、分岐が多くなりポリマーの成形性が損なわれる傾向がある。
【0018】
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩などが挙げられる。
【0019】
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどが挙げられる。
【0020】
塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素などのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0021】
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
【0022】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンなどが挙げられる。
エステル交換反応は一般には二段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は、9.3×104〜1.33×103Paの減圧下に120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜5時間、好ましくは0.1〜3時間反応させる。ついで、反応系の減圧度を上げながら反応温度を高め、最終的には133Pa以下の減圧下、240〜320℃の温度で重縮合反応を行う。
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの反応でもよく、使用する装置は、槽型、管型、あるいは塔型のいずれの形式であってもよい。
【0023】
本発明の追記型光ディスクの樹脂組成物で使用する離型剤は、射出成型中に金型から容易に離型できるようにする化合物である。離型剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.01重量%未満含む必要がある。離型剤の好ましい量は芳香族ポリカーボネート樹脂に対して約0.0095重量%未満である。離型剤の最も好ましい量は芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.009重量%未満である。離型剤が芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.01重量%以上含まれると、スタンパーへの付着物が多量に発生し、それが原因となって製品ディスク表面に付着物が付くという悪影響が見られる。離型剤の下限量としては、0.0001重量%以上、好ましくは0.0005重量%以上である。
【0024】
離型剤としては、公知の離型剤が使用でき、その中で好ましい離型剤はペンタエリトリトールテトラステアレート及びステアリン酸モノグリセリドである。また、本発明の組成物中では、上記離型剤を単独または組合せて使用することができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物で使用する熱安定剤としては、例えば、射出成形時、追記型光ディスクに熱安定性を付与する目的で添加する。本発明の追記型光ディスクには、熱安定剤を、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.002〜0.05重量%含んでいることが必要である。好ましい量としては、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.002〜0.04重量%含むのが好ましい。熱安定剤が芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.05重量%を超えて存在すると、耐加水分解性が悪化する傾向にある。
【0026】
熱安定剤としては公知の熱安定剤が使用でき、その中で好ましい熱安定剤はホスファイト系化合物であり、特に好ましくはトリス(2,4‐ジ‐tert‐ブチルフェニル)ホスファイト及びトリス‐ノニルフェニルホスファイトである。また、本発明の組成物中では、上記熱安定剤を単独または組合せて使用することができる。
【0027】
本発明の追記型光ディスクの製造に用いる樹脂組成物には、帯電防止剤を、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.001〜0.1重量%含むことが必要である。好ましくは、0.005〜0.09重量%である。好ましい帯電防止剤としては、ジステアリルヒドロキシルアミン、トリフェニルアミン、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、ピリジン−N−オキシド、エトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンステアリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルが挙げられる。このうち、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートが特に好ましい。
【0028】
上記帯電防止剤を特定量用いて光学式ディスクを製造すると、−2.0k
V以下の負の帯電圧が低くなり、ほこりを寄せ付けつけなくなったり、さらには、色素塗布時の濡れ性が低下し、色素塗布不良が起こりにくくなる。一方、上記帯電防止剤を含有しない芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて光学式ディスクを製造すると、−2.0kVを越える負の帯電圧が高くなり、ほこりを寄せ付
けやすくなったり、さらに、色素塗布時の濡れ性増加により、色素塗布不良が発生しやすくなる。本発明の耐静電気性に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂により製造した、光学式ディスクの帯電圧は−2〜8kVの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは−1.5〜7.5kVの範囲であり、特に好ましくは、−1.0〜7.0kVの範囲である。
【0029】
本発明の追記型光ディスクの樹脂組成物は、上記離型剤、熱安定剤、帯電
防止剤及び芳香族ポリカーボネート樹脂とを、従来から公知の方法で混合することができる。例えば、各成分をリボンブレンダーやスーパーミキサー等で芳香族ポリカーボネート樹脂粉末と分散混合した後、押出機等で溶融混練する方法等が選択できる。
【0030】
さらに本発明の樹脂組成物は、その物性を損なわない限りにおいて樹脂の混合時、成形時に他の樹脂、添加剤、たとえば顔料、染料、強化剤、充填剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、流動性改良剤などを添加することができる。
【0031】
本発明の追記型光ディスクは、上記芳香族ポリカーボネート樹脂の射出成形により製造される、グルーブと言われる同心円状に配置された複数の案内溝を形成した成形基板を素材とする。この射出成形の際、所定のスタンパーにあらかじめ刻印されているサブミクロンの大きさのピットやグルーブの形状が、円盤状透明な成形基板の表面(本明細書では、「信号面」と言う。)に忠実に転写させて得られる。
【0032】
また、追記型光ディスクの代表的なものとしては、例えば、上記成形基板上に、色素記録層、反射層、そして保護層が、この順に積層された構成のCD−R型の光ディスクの他、上記成形基板上に、色素記録層、反射層、そして所望により設けられる保護層からなる積層体と円盤状基板(ダミー板)とを、記録層が内側となるように接着剤で貼り合わせた構成のDVD−R型の光ディスク、及び、上記積層体2枚をそれらの記録層がいずれも内側となるように接着剤で貼り合わせた構成のDVD−R型の光ディスクがある。
本発明方法においては、上記追記型光ディスクで、信号の記録、読み取りを行う色素記録層は、色素を基板上の信号面に直接塗布することによって、形成される。
【0033】
さらに、色素の塗布は、通常、スピンコート法を利用して、有機色素を有機溶媒に溶解させた色素溶液を、成形基板の信号面に形成されたグルーブを充満するように塗布することにより行われる。スピンコート法は、一般に、塗布液付与装置(ディスペンスノズル)、スピナーヘッド、飛散防止壁、そして排気装置から構成されてなるスピンコート装置を用い、下記の手順に従い実施される。まず、スピナーヘッド上に成形基板を載置し、次いで、スピナーヘッドを駆動モータにより回転させながら、該基板の内周部の表面に、好ましくは、グルーブの最内周縁より2〜3mm内方の位置に、塗布液付与装置のノズルから塗布液を供給する。基板上に供給された塗布液は遠心力により外周側に放射状に流延し、塗布膜を形成する。スピンコート操作の間、飛散防止壁の上方に設けた開口部(気体導入部)から空気等の乾燥気体を導入し、その気体を該塗布膜上に流通させ、スピンコート装置の下方から排気する。この気体の流通によって、塗布膜から溶媒が除去され、塗布膜は乾燥される。また必要に応じてベーキングと呼ばれる乾燥オーブンに基板を投入して残存溶媒をできるだけ完全に除去する。
【0034】
追記型光ディスクの場合、色素としては、レーザー光波長域(300〜850nm)に吸収領域のある色素が選ばれる。具体的には、アゾ色素、シアニン色素、フタロシアニン色素、アズレニウム色素、スクアリリウム色素、ポリメチン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、インドアニリン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、トリアリルメタン色素、アミニウム色素、ジイモニウム色素、アゾ系配位子化合物と金属とからなる金属キレート系色素、金属錯体等、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、アゾ系、シアニン系、フタロシアニン系のいずれかの有機色素である。これらの色素は信号の感度に優れ、溶媒に溶解しやすく、耐光性が良好であり、高品質の追記型光ディスクを得ることを可能にする。
【0035】
色素溶液用の有機溶媒としては、具体的には、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素、ジメチルホルムアミド等のアミド、シクロヘキサン等の炭化水素、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール、2,2,3,3−テトラフロロプロパノール等のフッ素系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。これらの溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して、単独または二種以上を適宜併用することができる。好ましくは、2,2,3,3−テトラフロロプロパノール、オクタフロロペンタノール、ジブチルエーテル等のフッ素系溶剤である。
【0036】
さらに、色素記録層表面にAgやAuといった反射膜がスパッタ法にて成膜されて反射層が、また必要に応じ、反射層表面に保護膜をコートすることによって保護層が形成された積層体が得られる。CD−Rの場合は単板で形成されるが、DVD−Rの場合は上記の基板を2枚貼り合わせることによって高密度化を達成できる。
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。なお、以下の実施例において得られた追記型光ディスクの物性及び評価は以下のように
して測定した。
(1)芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)
6g/lの塩化メチレン溶液をウベローデ粘度計を用い固有粘度を測定し、次式により粘度平均分子量を求めた。
【0037】
【数1】
[η]=1.23×10-4(Mv)0.83
【0038】
2)成形基板の帯電圧(kV)
実施例及び比較例により得られた成形直後の成形基板の帯電圧をSK−200静電場計(KEYENCE(株)製)を用い、基板から6.0cmの距離のところで測定した。
(3)スタンパー付着物量(μg)
実施例及び比較例により得られた成形基板5000ショットの射出成形後、使用したスタンパーをシャーレに入れ、アセトン50mlを用いて、スタンパー付着物を溶解させ、該アセトン溶液をエバポレーターで濃縮、乾固させた後、さらに50℃で3時間真空乾燥させ、付着物量を測定した。
【0039】
(4)成形基板の耐加水分解性試験
実施例及び比較例により得られた成形基板を120℃、100%Rhの水蒸気中で8時間保持した。ヘーズメーターNDH2000(日本電色工業(株)製)を用い、成形平板の処理前及び処理後のヘーズを測定した。処理前後のヘーズ値が小さいほど、耐加水分解性が良いことを示す。
(5)色素塗布むらの評価方法
実施例及び比較例によって得られた追記型光ディスクの最内周の真円から内方へのはみ出し位置を光学顕微鏡で観察し、全周に渡り0.5mm以上のはみ出しが一部分でもあれば、塗布むら「あり」、0.5mm以上のはみだしが全くなければ塗布むら「なし」とした。
【0040】
[実施例1]
(芳香族ポリカーボネート樹脂の製造)
コンデンサーを具備したステンレス製20リットルの竪型攪拌反応装置にビスフェノールA2283g(10.0モル)、ジフェニルカーボネート2313g(10.8モル)および触媒として0.01N水酸化ナトリウム0.7ml(ビスフェノールA1モルに対して7×10-7モル)を仕込み窒素置換を行った。この混合物を220℃で40分かけて原料モノマーを溶融した後、220℃/1.33×104Paで60分、240℃/2.00×103Paで60分、280℃/66.7Paで60分間反応を行った。反応終了後、ポリマーをギヤポンプで押出機に送液し、押出機でp−トルエンスルホン酸ブチルを触媒失活剤として芳香族ポリカーボネート樹脂に対して0.0002%、離型剤としてステアリン酸モノグリセリドを0.008%、熱安定剤としてAS329(トリス‐ノニルフェニルホスファイト、旭電化工業(株)製)を0.005%、帯電防止剤としてノニオンLT221(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、日本油脂(株)製)を0.05%を添加し、混練した。その結果、粘度平均分子量15,400の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られた。
【0041】
(成形基板の製造)
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を、下記の条件で射出成形し、成形基板を得た。
成形機:住友重機DISK3
金型:12cmφCD、DVD用金型
成形基板厚み:1.2mm
スタンパーのグルーブ深さ:160nm
スタンパーのグルーブのピッチ:0.80μm
成形機のシリンダーの最高設定温度:360℃
スタンパーが装着されている側の金型の設定温度:130℃
射出時間:0.1秒
冷却時間:7.0秒
スクリュー回転数:360rpm
スクリュー径:25mmφ
型締め力: 射出、保圧中20T、冷却中25T
【0042】
(色素の塗布)
上記で得られた成形基板に、アゾ系有機色素をオクタフロロペンタノールに溶解させた色素溶液の塗布を行った。スピンコート法を利用して、成形基板の信号面に形成されたグルーブを充満するように塗布した。塗布開始位置はグルーブの最内周縁より2mm内方とした。最内周の塗布回転数は100rpmとし、その後の基板全面に渡る塗布は5000rpmとした。その後乾燥オーブンに基板を投入して残存溶媒を除去し、追記型光ディスクを作成した。
成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
【0043】
[実施例2]
実施例1において、離型剤としてステアリン酸モノグリセリド0.005%を添加した他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。
成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
【0044】
[実施例3]
実施例1において、離型剤としてステアリン酸モノグリセリド0.002%を添加した他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。
成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例4]
実施例1において、帯電防止剤としてATMER110(エトキシル化ソルビタンモノラウレート、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株))0.05%を添加した他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。
成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、離型剤としてステアリン酸モノグリセリド0.015%添加した他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。
成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
【0046】
[比較例2]
実施例1において、離型剤としてステアリン酸モノグリセリド0.025%を添加した他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。
成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
【0047】
[比較例3]
実施例1において、帯電防止剤としてノニオンLT221を添加しなかった他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、帯電防止剤としてノニオンLT221を0.15%添加した他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。
成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
[比較例5]
実施例1において、熱安定剤としてAS2112を0.1%添加した他は、実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得た。また、この芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて、実施例1と同様に追記型光ディスクを作成した。成形基板(色素塗布前)の帯電圧、耐加水分解性試験、基板を5000ショット成形したスタンパー付着物の重量、及び追記型光ディスクの色素塗布むらの各評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明の追記型光ディスクは、耐静電気性に優れ、かつスタンパーへの付着物が低減した高品質の追記型光ディスクを提供することができる。
Claims (5)
- 下記の(a)〜(d)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して、信号面にグルーブを形成した成形基板上に、色素記録層を形成してなる追記型光ディスク。
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.01重量%未満で0.0001重量%以上の離型剤、(c)芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.002〜0.05重量%の熱安定剤、および(d)芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、0.001〜0.1重量%の帯電防止剤 - 帯電防止剤がジステアリルヒドロキシルアミン、トリフェニルアミン、トリ−n−オクチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、ピリジン−N−オキシド、エトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンステアリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル及びポリオキシエチレンステアリルエーテルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の追記型光ディスク。
- 帯電防止剤が、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートであることを特徴とする請求項1記載の追記型光ディスク。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂が芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換法により製造された樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の追記型光ディスク。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとジフェニルカーボネートとのエステル交換法により製造された樹脂であることを特徴とする請求項4記載の追記型光ディスク。
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