JP3868321B2 - ポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法、ポリエチレン被覆鋼材の被覆損傷部の補修方法およびポリエチレン被覆防食構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明はポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法、ポリエチレン被覆鋼材の被覆損傷部の補修方法およびポリエチレン被覆防食構造体に関し、有機ライニングに属するポリエチレン被覆を備えた鋼矢板または鋼管杭の継手部の防食およびポリエチレン被覆損傷部の補修に用いられるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、港湾鋼構造物を対象とした防食法には、主に海水中と海底土中を対象とした電気防食工法、主に海上大気部と飛沫帯と干満帯と海水中を対象とした塗覆装がある。該塗覆装には、塗装、有機ライニング、無機ライニング、ペトロラタムライニング等の方法がある。
【0003】
有機ライニングとしてポリエチレン被覆を有する鋼矢板または鋼管杭に関する発明が、例えば特開昭61−72127号公報に記載されている。
【0004】
図5は、ポリエチレン被覆鋼矢板の一般的な構成を示したもので、両端に継手1aを有する鋼矢板1の表面に表面処理層3a、接着剤層3b、ポリエチレン被覆層3cという形で層を重ね、防食構造を形成している。
【0005】
ポリエチレン被覆による防食は、防食特性、使用実績の面で優れている反面、複雑な形状の被覆にはあまり適さないため、通常、鋼矢板1の継手1aを避けて鋼矢板1枚ごとに施される。
【0006】
従って、ポリエチレン被覆鋼矢板を現地に打設した後、ポリエチレン被覆が完全な連続面にはならず、各鋼矢板1同士の継手部2に無被覆部分が残る結果となる。このような無被覆の継手部2に、海水中で、ポリエチレン被覆を貼り付ける方法が、例えば特開2001−131957号公報に記載されている。
【0007】
図6および図7は、該方法によるポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法を示したもので、ポリエチレン被覆3による防食を施した鋼矢板1の継手1a同士を嵌合した状態で、継手部2の凹部2aに充填材4を充填し、これを覆うようにポリエチレンシート5を被せ、かつポリエチレンシート5の端部をポリエチレン被覆3の表面に貼り付けて、鋼矢板1および継手部2の表面に連続したポリエチレンの防食層を形成している。
【0008】
該ポリエチレン被覆に該ポリエチレンシートを貼り付ける方法としては、図6に示した電熱線6を挟んで通電する熱溶着法と、図7に示した超音波ウェルダー7を用いる超音波法がある。
【0009】
また、鋼矢板や鋼管杭の海上施工(打撃による施工、振動による施工)を想定した場合、施工時においては、ワイヤーロープによる傷、導枠による傷、打ち込みによる傷、ガス切断や溶接の熱による傷、施工後においては、浮遊物の衝突などによる傷等のポリエチレン被覆表面の損傷が考えられる。このようなポリエチレン被覆表面を補修する方法が、例えば特開2001−129892号公報に記載されている。
【0010】
図8および図9は、該方法によるポリエチレン被覆鋼矢板の損傷部の補修方法を示したもので、鋼矢板1の表面を覆ったポリエチレン被覆3の損傷部3dに、水中硬化型樹脂などからなる充填材4を充填し、これを覆うようにポリエチレンシート5を被せ、かつポリエチレンシート5の端部をポリエチレン被覆3の表面に貼り付けて、ポリエチレン被覆3の損傷部3dを完全に覆う防食層を形成している。
【0011】
該ポリエチレン被覆に該ポリエチレンシートを貼り付ける方法としては、図8に示した電熱線6を挟んで通電する熱溶着法と、図9に示した超音波ウェルダー7を用いる超音波法がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記のポリエチレン被覆にポリエチレンシートを貼り付ける方法としては、超音波による方法と熱溶着による方法がある。
【0013】
超音波による方法は、図7および図9のようにポリエチレン被覆3にポリエチレンシート5を重ね、超音波ウェルダー7を用いて直接溶着させるものである。しかしながら、溶着部が直径5mm程度の円形であり、連続的でないために溶着していない部分から海水が浸入するという課題があった。
【0014】
一方の熱溶着による方法は、図6および図8のようにポリエチレン被覆3とポリエチレンシート5との間に、ヒートテープと呼ばれるフィルム状の電熱線6を挟み込み、これに通電して発熱させ、ポリエチレン被覆3とポリエチレンシート5をお互いに溶かして接着するものである。
【0015】
しかしながら、ポリエチレン被覆3に対して、ポリエチレンシート5を全体的に均等かつ十分な力で圧着する方法が確立されていないために、溶着部が不均一になるという課題があった。
【0016】
本願発明の目的は、上記課題を解決するためになされたもので、鋼矢板側のポリエチレン被覆に防食用または補修用のポリエチレンシートを連続的に、しかも均一かつ強固に貼り付けることを可能にしたポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法、ポリエチレン被覆鋼材の被覆損傷部の補修方法およびポリエチレン被覆防食構造体を提供するものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法は、表面にポリエチレン被覆を有する鋼矢板同士の継手部の鋼材表面に取り付けた受けナット(アンカーナット)にボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記継手部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレンとポリエチレン被覆とを溶着させることを特徴とするものである。
【0018】
この場合の押さえ材としては、例えば木材またはFRPを用いることができ、またポリエチレンと押さえ材との間にクッション材としてゴムパッド等を介在することにより、ポリエチレンをポリエチレン被覆の上に均等な圧で固定することができる。
【0019】
また、ポリエチレンとポリエチレン被覆とを溶着させた後、押さえ材、ボルトおよび締付けナットはすべて取り外すことができるが、押さえ材としてFRPなどを用いた場合はこれらの部材は取り付けたままの状態でもよい。また、受けナットは鋼矢板を打設する前、あらかじめ各鋼矢板の継手部の近傍に取り付けておいてもよい。
【0020】
請求項2記載のポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法は、表面にポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部の鋼材表面にボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記継手部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレンとポリエチレン被覆とを溶着させることを特徴とする。この場合、ボルトは鋼矢板を打設する前、あらかじめ各鋼矢板の継手部の近傍に取り付けておいてもよい。
【0021】
また、請求項1および2記載の防食方法の場合、ボルトの設置間隔を小さくすれば、ポリエチレンをより確実に密着させることができる。この場合の設置間隔は継手部に作用する水圧の大きさ等を参酌して決定すればよい。
【0022】
請求項3記載のポリエチレン被覆鋼材の被覆損傷部の補修方法は、表面にポリエチレン被覆を有する鋼材の被覆損傷部の鋼材表面にボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記被覆損傷部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレン被覆とポリエチレンとを溶着させることを特徴とするものである。
【0023】
本願発明の補修方法は、特に鋼矢板や鋼管杭の海上施工時の打ち込み、あるいはガス切断や溶接の熱などによるポリエチレン被覆の傷を補修するために用いられるものである。
【0024】
請求項4記載のポリエチレン被覆防食構造体は、鋼材表面に貼付されたポリエチレン被覆からなる防食層と、鋼材表面に取り付けられたボルトおよび当該ボルトに螺合される締付けナットとからなる取付装置と、前記ポリエチレン被覆の上に貼付されたポリエチレンからなる防食層と、前記ポリエチレン被覆とポリエチレンとの間に挟まれた電熱線からなる固定装置とによって構成されてなることを特徴とするものである。この場合、鋼材表面に受けナットを取り付け、この受けナットにボルトを取り付けてもよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本願発明の実施の形態を図面に基いて説明すると、請求項1記載の発明において、ポリエチレン被覆3cを有しかつ両端の継手1a同士を嵌合させた鋼矢板1の継手部2の場合、図1に示すように、継手部2の鋼矢板1の表面に一定間隔で受けナット10aを溶接等で取付けた後、この受けナット10aにこれと同径のボルト11を螺合して取り付ける。
【0026】
次に、あらかじめ電熱線6を取り付けたポリエチレンシート5を取り付けて継手部2およびポリエチレン被覆3cの縁端部を覆い、その上にクッション材8を取り付け、さらにその上にポリエチレンシート5の押さえ材として、ボルト11に合わせて穴を開けた材木9を取り付ける。
【0027】
また、ボルト11にこれと同径のワッシャー12を取り付け、続いてボルト11にこれと同径の締付けナット10bを締め付けてポリエチレンシート5を固定する。そして、電熱線6に通電して発熱させることにより、ポリエチレンシート5とポリエチレン被覆3cとを連続的かつ強固に溶着して一体化させ、隙間から海水を浸入させない構造とする。
【0028】
なお、ポリエチレンシート5とポリエチレン被覆3cとを溶着した後、図2に示すようにクッション材8、材木9およびボルト11をを取り外す。またボルト11を取り外した後のボルト孔を水中硬化型のエポキシ樹脂で塞ぐ。
【0029】
請求項2記載の発明において、ポリエチレン被覆3cを有しかつ両端の継手1a同士を嵌合させた鋼矢板1の継手部2の場合、図3に示すように、継手部2の鋼矢板1の表面に一定間隔でボルト11を溶接等で取付けた後、あらかじめ電熱線6を取り付けかつボルト11に合わせて穴を開けたポリエチレンシート5を取り付けて継手部2およびポリエチレン被覆3cの縁端部を覆い、その上に押さえ材としてボルト11の間隔に合わせて穴を開けたFRP13を取り付ける。
【0030】
また、ボルト11にこれと同径のワッシャー12を取り付け、かつボルト11にこれと同径の締付けナット10bを締め付けてポリエチレンシート5を固定する。
【0031】
そして、電熱線6に通電して発熱させて該ポリエチレン被覆3cと該ポリエチレンシート5とを連続的かつ強固に溶着させることにより、ポリエチレン被覆3cとポリエチレンシート5とを一体化させ、隙間から鋼材表面に海水を浸入させない構造とする。
【0032】
請求項3記載の発明において、ポリエチレン被覆3cを有する鋼材1の被覆損傷部の場合、図4に示すように、鋼材1の被覆損傷部3dの鋼材表面にボルト11を溶接などによって取り付けた後、あらかじめ電熱線6を取り付けかつボルト11に合わせて穴を開けたポリエチレンシート5を取り付けて被覆損傷部3dおよびポリエチレン被覆3cの縁端部を覆い、その上にポリエチレンシート5の押さえ材としてボルト11に合わせて穴13aを開けたFRP13を取り付け、かつボルト11にこれと同径のワッシャー12を取り付け、さらにボルト11にこれと同径の締付けナット10bを締め付けてポリエチレンシート5を固定する。
【0033】
そして、電熱線6に通電して発熱させてポリエチレン被覆3cとポリエチレンシート5とを連続的かつ強固に溶着させることにより、ポリエチレン被覆3cとポリエチレンシート5とを一体化させ、隙間から海水を浸入させない構造とする。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本願発明をより具体的に説明する。
【0035】
図1、図2、図3は、重防食被覆鋼矢板の継手部に対する防食の実施例、図4は重防食被覆鋼矢板の被覆損傷部に対する補修の実施例を示す。
【0036】
図1において、鋼矢板SP−II型1は、厚さ2.5mmのポリエチレン被覆3cを備え、両端の継手1a同士を嵌合させた長さ100cmの供試体である。手工具および動力工具を用いて鋼矢板1の継手部2の鋼材表面に付着した海洋生物などの付着物を除去した。
【0037】
継手部2には、鋼材表面に90cm間隔でM12受けナット10aを溶接にて取り付け、各受けナット10aにこれと同径のボルト11を螺合して取り付け、かつ継手部2の凹部2aに水中硬化型エポキシ樹脂4を充填した。
【0038】
また、電熱線5本をポリオレフィン製フィルムで挟み込んだフィルム状の電熱線6をあらかじめ取り付けた厚さ2.5mmのポリエチレンシート5で継手部2の凹部2aおよびポリエチレン被覆3cの縁端部を覆った。
【0039】
また、ポリエチレンシート5の上にゴム製クッション材8を貼り付けるとともに、ボルト11に合わせて90cm間隔で穴を開けた角材木9を取り付け、さらにボルト11にこれと同径のワッシャー12を取り付け、かつボルト11と同型の締付けナット10bを締め付けてポリエチレンシート5を固定した。
【0040】
そして、電熱線6に通電して発熱させて、ポリエチレンシート5とポリエチレン被覆3cとを溶着させる。また、ポリエチレンシート5とポリエチレン被覆3cとを溶着した後、図2に示すように、ゴム製クッション材8、角材木9およびボルト11を取り外し、ボルト11を取り外した後のボルト孔を水中硬化型のエポキシ樹脂で塞いだ。
【0041】
この結果、ポリエチレンシート5とポリエチレン被覆3cは、連続的かつ強固に一体化され、継手部2は海水を浸入させない構造となった。
【0042】
図3において、鋼矢板SP−II型1は、厚さ2.5mmのポリエチレン被覆3cを備え、両端の継手1a同士を嵌合させた長さ100cmの供試体である。継手部2の鋼材表面は、手工具および動力工具を用いて、海洋生物等の付着物を除去する。継手部2には、鋼材表面に90cm間隔でM12ボルト11を溶接にて取り付けるとともに、継手部2の凹部2aに水中硬化型エポキシ樹脂4を充填した。
【0043】
また、電熱線5本をポリオレフィン製フィルムで挟み込んだフィルム状の電熱線6をあらかじめ取り付け、かつボルト11に合わせて90cm間隔で穴を開けたポリエチレンシート5で継手部2およびポリエチレン被覆3cを覆った。
【0044】
そしてその上にボルト11の間隔に合わせて90cm間隔で穴を開けたFRP13を取り付け、かつボルト11にこれと同径のワッシャー12を取り付け、ボルト11と同径の締付けナット10bを締め付けてポリエチレンシート5を固定した。
【0045】
そして、電熱線6に通電して発熱させて、ポリエチレン被覆3cとポリエチレンシート5とを溶着させた。この結果、ポリエチレン被覆3cとポリエチレンシート5は、連続的かつ強固に一体化され、継手部2は海水を浸入させない構造となった。
【0046】
図4において、ポリエチレン被覆3cを備えた鋼矢板SP−II型フランジ部から210mm×290mmの大きさに切り出した供試体で、被覆部に100mm×100mmの人工的な損傷部3dを作った。
【0047】
被覆損傷部3dの鋼材表面は、手工具および動力工具を用いて、海洋生物等の付着物を除去する。鋼材表面には、M12ボルト11を溶接にて取り付けるとともに、水中硬化型エポキシ樹脂4を充填した。
【0048】
また、電熱線5本をポリオレフィン製フィルムで挟み込んだフィルム状の電熱線6をあらかじめ取り付け、かつボルト11に合わせて穴を開けたポリエチレンシート5で被覆損傷部3dおよびポリエチレン被覆3cの縁端部を覆った。
【0049】
そしてその上に、ボルト11に合わせて穴を開けたFRP13を取り付け、ボルト11にこれと同径のワッシャー12を取り付け、かつボルト11と同径の締付けナット10bを締め付けてポリエチレンシート5を固定した後、電熱線6に通電して発熱させて、ポリエチレン被覆3cとポリエチレンシート5とを溶着させた。この結果、ポリエチレン被覆3cと該ポリエチレンシート5は、連続的かつ強固に一体化され、被覆損傷部3dに海水を浸入させない構造となった。
【0050】
上記によって、作製した供試体を、1日2回、1回当り3.5時間、定期的に海水がシャワー状にかかる曝露試験場に設置した。396日後にポリエチレンシートを剥がしたところ、継手部2および被覆損傷部3dの鋼材表面が、健全な状態に保たれていることを確認した。
【0051】
【発明の効果】
請求項1記載のポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法は、表面にポリエチレン被覆を有する鋼矢板同士の継手部の鋼材表面に取り付けた受けナットにボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記継手部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレンとポリエチレン被覆とを溶着させるので、特に各ボルトに螺合された締付けナットを均等に締め付けることにより、防食用のポリエチレンを鋼矢板側のポリエチレン被覆の上に均等な圧で密着させることが可能となり、これにより従来の鋼矢板継手部の防食方法に比べて、鋼矢板側のポリエチレン被覆と、防食用のポリエチレンとを連続的かつ強固に一体化させることができる効果がある。
【0052】
また、各ボルトは継手部の鋼材表面に取り付けた受けナットに螺合して取り付けるので、将来の鋼矢板の回収が簡単なだけでなく、ボルト、押さえ材および締付けナットを取り外し、繰り返し使用することができてきわめて経済的である。
【0053】
請求項2記載のポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法は、表面にポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部の鋼材表面にボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記継手部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレンとポリエチレン被覆とを溶着させるので、請求項1記載の防食方法と同様、従来の鋼矢板継手部の防食方法に比べて、鋼矢板側のポリエチレン被覆と、防食用のポリエチレンとを連続的かつ強固に一体化させることができる効果がある。
【0054】
また、各ボルトは鋼矢板の継手部に受けナットを介さず、直接取り付けられているので、受けナットを省略した分コスト削減が図れるとともに、継手部を充填する際に受けナットに邪魔されることなく入念な充填を行うことができる。
【0055】
請求項3記載のポリエチレン被覆鋼材の被覆損傷部の防食方法は、表面にポリエチレン被覆を有する鋼材の被覆損傷部の鋼材表面にボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記被覆損傷部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレン被覆とポリエチレンとを溶着させるので、特に各ボルトに螺合された締付けナットを均等に締め付けることにより、防食用のポリエチレンを鋼矢板側のポリエチレン被覆の上に均等な圧で密着させることが可能となり、これにより従来の鋼材被覆損傷部の補修工法に比べて、鋼材側のポリエチレン被覆と補修用のポリエチレンシートとを連続的かつ強固に一体化させることができる。
【0056】
請求項4記載のポリエチレン被覆防食構造体は、鋼材表面に貼付されたポリエチレン被覆からなる防食層と、鋼材表面に取り付けられたボルトおよび当該ボルトに螺合される締付けナットとからなる取付装置と、前記ポリエチレン被覆の上に貼付されたポリエチレンからなる防食層と、前記ポリエチレン被覆とポリエチレンとの間に挟まれた電熱線からなる固定装置とによって構成されてなるので、構造がきわめて簡単でありながら、ポリエチレン被覆とポリエチレンシートとを連続的かつ強固に一体化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の請求項1に係るポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部を防食する断面図である。
【図2】本願発明の請求項1に係るポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部を防食した断面図である。
【図3】本願発明の請求項2に係るポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部を防食した断面図である。
【図4】本願発明の請求項3に係るポリエチレン被覆を有する鋼材の被覆損傷部を補修した断面図である。
【図5】ポリエチレン被覆を有する鋼矢板の被覆構造を層ごとに示した斜視図である。
【図6】ポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部の防食法で、従来の熱溶着法によって一体化する方法を示した断面図である。
【図7】ポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部の防食法で、従来の超音波法で一体化する方法を示した断面図である。
【図8】ポリエチレン被覆を有する鋼矢板の被覆損傷部の補修法で、従来の熱溶着法によって一体化する方法を示し、(a)はその断面図、(b)は平面図である。
【図9】ポリエチレン被覆を有する鋼矢板の被覆損傷部の補修法で、従来の超音波法で一体化する方法を示し、(a)はその断面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
1…鋼矢板、鋼材
1a…継手
2…継手部
3…ポリエチレン被膜
3a…表面処理層
3b…接着剤層
3c…ポリエチレン層
3d…被覆損傷部
4…充填材
5…ポリエチレンシート(ポリエチレン)
6…電熱線
7…超音波ウェルダー
8…クッション材
9…木材(押さえ部材)
10a…受けナット
10b…締付けナット
11…ボルト
12…ワッシャー
13…FRP(押さえ部材)
Claims (4)
- 表面にポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部の鋼材表面に取り付けた受けナットにボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記継手部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレンとポリエチレン被覆とを溶着させることを特徴とするポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法。
- 表面にポリエチレン被覆を有する鋼矢板の継手部の鋼材表面にボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記継手部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレンとポリエチレン被覆とを溶着させることを特徴とするポリエチレン被覆鋼矢板の継手部の防食方法。
- 表面にポリエチレン被覆を有する鋼材の被覆損傷部の鋼材表面にボルトを取り付け、電熱線を取り付けたポリエチレンで前記被覆損傷部およびポリエチレン被覆を覆い、その上に押さえ材を取り付け、かつ前記ボルトに締付けナットを締め付けて前記ポリエチレンを固定した後、前記電熱線に通電して前記ポリエチレン被覆とポリエチレンとを溶着させることを特徴とするポリエチレン被覆鋼材の被覆損傷部の補修方法。
- 鋼材表面に貼付されたポリエチレン被覆からなる防食層と、前記鋼材表面に取り付けられたボルトおよび当該ボルトに螺合される締付けナットとからなる取付装置と、前記ポリエチレン被覆の上に貼付されたポリエチレンからなる防食層と、前記ポリエチレン被覆とポリエチレンとの間に挟まれた電熱線からなる固定装置とによって構成されてなることを特徴とするポリエチレン被覆防食構造体。
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