JP3866839B2 - 鉄筋連結用の継手及び鉄筋の連結方法 - Google Patents

鉄筋連結用の継手及び鉄筋の連結方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋の連結技術に関し、特に建設現場における配筋作業に関する施工性及び溶接結果の確実性を向上するための改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の鉄筋の連結手段としては、鉄筋の端部にフック等を形成して互いに重ね合せた状態でコンクリートを打設することにより、それらの鉄筋とコンクリートとの付着力を介して鉄筋相互間を連結する重ね継手や、鋼製のカプラなど介して機械的に連結する機械式継手、溶接により連結する溶接継手などが広く知られている。また、近時、連結するそれぞれの鉄筋の端部を収容可能なスリーブ状の継手を使用し、そのスリーブの周面部分に形成した溶接用孔を介して溶接することにより鉄筋相互間を連結する連結手段も開示されている(特開平8−42063号公報)。
【0003】
ところで、複数本の鉄筋を束ねて配筋する束ね配筋を行う場合には、それらの鉄筋相互間の間隔が狭いため、前者の重ね継手や機械式継手、溶接継手などの従来の連結手段による場合には施工上必要とする作業スペースが充分とれないという問題があった。これに対して、スリーブ状の継手を使用し、その周面部分に形成した溶接用孔を介して溶接を行う後者の従来技術の場合には、比較的小さな作業スペースで足りることから、束ね配筋を行う場合にも向いていた。しかしながら、この従来技術においては、前記スリーブの周面部分に形成した溶接用孔を介して溶接作業を行う場合には、前記溶接用孔の一端にアーク溶接用の電極棒を挿入してアーク放電させながら同溶接用孔に沿って単に他端まで移動させ、その溶接用孔を溶接金属で埋めることにより、両鉄筋を連結するというものであったため、鉄筋と前記溶接用孔の内周面との間で的確な溶接状態が確保される保障はなかった。すなわち、前記溶接用孔としては、単に孔が形成されているだけというもので、それらの間の的確な溶接状態を確保するための特段の工夫はなされていなかった。このため、前記溶接用孔が鉄筋側と溶融しただんご状の溶接金属によって埋められることはあっても、溶接用孔の内周面と鉄筋の表面との、特にそれらのすみ部において的確な溶接状態が確保される保障はなかった。したがって、鉄筋相互間の連結強度上きわめて重要な要素である、前記溶接用孔の内周面と鉄筋表面との間の溶接状態に支障が生じやすいといった問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来技術の事情に鑑みてなされたもので、スリーブ状に形成される継手を使用して鉄筋を連結する場合の溶接の仕方に関して改良を行い、そのスリーブの周面部分に溶接用として形成される開口部の、特に継手の軸線に平行な両側の内周面と鉄筋との溶接状態を改善し、より安定した連結状態を確保し得る鉄筋の連結技術を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、スリーブ状の鉄筋連結用の継手の周面部分に溶接用の開口部を形成し、その開口部を、スリーブの軸線に平行な両側の内周面を有し、かつそれらの両側の内周面に対して個別的に溶接が可能な開口幅に形成した。そして、前記継手を用いて、連結対象であるそれぞれの鉄筋の端部間を跨ぎ、かつそれらの端部を囲む状態に継手を設置し、その継手に形成した溶接用の開口部の少なくとも継手の軸線に平行な両側の内周面と前記鉄筋の接触部に対してそれぞれ個別的に溶接を行うという技術手段を採用した。これにより、溶接用の開口部の少なくとも継手の軸線に平行な両側の内周面と鉄筋の接触部との間の的確な溶接状態が確実に得られ、より安定した高強度の連結作用が得られる。なお、スリーブ状の継手を複数の部材から形成するように構成することも可能である。その場合、それらの複数の部材によって形成されるスリーブ状の周面部分に形成する溶接用の開口部は、そのスリーブの軸線に平行な両側の内周面に対してそれぞれ個別的に溶接が可能な開口幅を有することが重要である。また、前記複数の部材を前記開口部の中間から分割し、部材間に溶接用の開口部を形成するように構成することも可能である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施に当り、前記継手の周面部分に形成する溶接用の開口部の具体的な形態は種々の選択が可能である。要するに、少なくともその溶接用の開口部の継手の軸線に平行な両側の内周面と前記鉄筋の接触部に対してそれぞれ個別的に溶接を行うことにより、最も重要なそれらの開口部の両側の内周面と鉄筋との的確な溶接状態を確保し得る形態であればよく、その開口部の具体的な形状や大きさ、設置部位、設置個数などは必要に応じて設定することができる。例えば、継手内に挿入されたそれぞれの鉄筋に対して別々の開口部を対応させたり、両鉄筋に跨る1個の開口部を形成することも可能である。また、1個のスリーブ状の部材から継手を構成してもよいし、複数の部材からスリーブ状の継手を形成するように構成してもよい。その場合、前記開口部の中間から分割した状態の複数の部材からスリーブ状に形成することも可能である。さらに、前記開口部を介して実施される溶接による連結作用に加えて、継手自体を潰して異形鉄筋等からなる鉄筋表面に密着させることにより連結状態を強化することも可能である。
【0007】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例に関して説明する。図1は本発明の一実施例における溶接作業前の状態を示した平面図である。図2は同実施例で使用した継手に形成された開口部の部分を示した部分拡大平面図であり、図3はそのA−A断面図である。また、図4は同実施例の溶接後の状態を示した拡大縦断面図、図5は同じく溶接後の状態を示した部分拡大平面図である。図1に示したように、本実施例においては、鋼材等の金属製からなるスリーブ状の継手1を使用し、その継手1の内方に両側から鉄筋2及び鉄筋3を挿通した上、継手1の周面部に形成した溶接用の開口部4,5を介して、それらの開口部4,5の内周面と前記鉄筋2,3とを溶接することにより両鉄筋2,3を連結するように構成されている。なお、本実施例ではそれぞれの鉄筋2,3の端部に対応して開口部4,5を形成しているが、両鉄筋2,3に跨った状態に開口部を形成することも可能である。前記継手1の軸心部には、その軸線に沿って挿通孔6が形成されており、その挿通孔6に連結対象である前記鉄筋2及び鉄筋3のそれぞれの端部を両側から挿入するように構成されている。また、図2及び図3に示したように、継手1の周面部に形成された前記開口部4,5は、その継手1の軸線に平行な両側の内周面7,8がスリーブの軸心に向けて、本実施例では開度αが約60度になるように、先細のテーパ面に形成されている。さらに、同開口部4,5を構成する前後部の内周面9,10も同様に先細のテーパ面に形成されている。なお、以上の開口部4,5の開口幅や開度αの値に関しては、必要に応じて種々の組合せが選択可能なことはいうまでもない。図中、11は開口部4,5の反対側に対称的に形成された同様の開口部である。
【0008】
次に前記継手1を使用して鉄筋2,3を連結する作業手順に関して説明する。先ず、図1に示したように、それぞれの鉄筋2,3の端部を継手1に形成された挿通孔6に対して両側から挿入する。その場合、鉄筋2,3の端面相互間を突合わせるように挿入してもよいし、図示のように間隔をあけた状態に挿入してもよい。その鉄筋2,3の挿入状態は、開口部4,5を介して確認することができるが、挿入孔6の中央部に鉄筋2,3の端部に係止する係止部を形成してもよい。しかして、鉄筋2,3が図1の状態に挿入された場合には、次の溶接作業に移行する。この溶接作業に際して重要な事項は、前記開口部4,5,11の内周面と鉄筋2,3の表面とをより的確に溶接する点である。そのために、本発明においては、少なくとも、開口部4,5,11の継手1の軸線、すなわち鉄筋2,3に平行な両側の内周面7,8に対して、従来のように一度の溶接操作で同時に両側の内周面7,8を溶接するようなことはせずに、それぞれの内周面7,8に沿って個別的に溶接するという手法を採用した。これにより、少なくとも継手1の軸線、すなわち鉄筋2,3の軸線に平行な両側の内周面7,8と前記鉄筋2,3との的確な溶接状態が確保される結果、安定した連結強度が確実に得られることになる。なお、それぞれの内周面7,8に沿って個別的に溶接する場合に、必ずしも同一方向に溶接操作を行う必要はなく、開口部4,5,11の前後部の内周面9,10も含めて両側の内周面7,8に沿って一巡するように溶接してもよいことはいうまでもない。図4及び図5はそれらの内周面7〜10に沿って順に一巡するように溶接した場合の溶接作業後の状態を示したものであり、図中12はその溶接金属を示したものである。この場合、前述のように、開口部4,5,11の内周面7〜10をスリーブ状の継手1の軸心に向けて先細のテーパ面に形成すれば、溶接作業がし易く、内周面7〜10と鉄筋2,3との、より良好な溶接状態が安定して得られることになる。
【0009】
なお、以上のように、本発明に係る連結作業においては、前記開口部4,5,11の継手1の軸線、すなわち鉄筋2,3の軸線に平行な両側の内周面7,8に対して個別的に溶接を行うことが重要であるが、更に必要に応じてそれらの開口部4,5,11の前後部の短辺の内周面9,10や前記溶接金属12相互間の間隙部13などに対して溶接を繰返すことにより鉄筋2,3間の連結力を強化し得ることはいうまでもない。さらに、それらの溶接による連結作業に前後して、継手1自体を公知のように潰して前記挿通孔6の内面を異形鉄筋等からなる鉄筋2,3の表面に密着させることにより、両鉄筋2,3間の連結状態の強化を図ることも可能である。
【0010】
図6及び図7は、それぞれ継手に関する他の実施例を示した斜視図である。図6に示した実施例では、継手14を2つの継手部片15,16に分割し、それらの継手部片15,16を現場等においてスリーブ状に接合して使用するように構成されている。その接合時期に関しては、配筋作業に応じて、継手部片15,16を接合してスリーブ状の継手14に形成してからその内方に連結対象である両鉄筋を挿通するようにしてもよいし、両鉄筋を連結状態に並べたところへ前記継手部片15,16を被せることによりスリーブ状の継手14を形成するようにしてもよい。なお、継手部片15,16間の接合部は、必ずしも溶接をする必要はない。図中、17〜20は、それぞれの継手部片15,16に形成された溶接用の開口部である。内方の鉄筋側との溶接に際しては、前述の実施例と同様に、それぞれの開口部17〜20の少なくとも継手14の軸線、すなわち鉄筋の軸線に平行な両側の内周面に対して個別的に溶接を実施して鉄筋相互間を連結することになる。図7に示した実施例は、継手21を開口部22〜25の中間から2つの継手部片26,27に分割したもので、使用の仕方に関しては前記継手14の場合と同様である。なお、以上の図6及び図7の実施例においては、継手14,21を2つに分割した場合を例示したが、直径の大きい鉄筋に適用する場合には更に分割数を増やすことも可能である。要は、開口部の継手の軸線、すなわち鉄筋の軸線に平行な両側のそれぞれの内周面に対して個別的に溶接作業が可能なスペースを確保し得るものであればよい。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、スリーブ状の継手の周面部分に形成された溶接用の開口部の少なくとも継手の軸線、すなわち鉄筋の軸線に平行な両側の内周面に対して個別的に鉄筋に対する溶接作業が行われるので、その開口部の両側のそれぞれの内周面と鉄筋表面とが的確かつ確実に溶接される結果、高強度の連結状態が安定して得られる。すなわち、個別的な溶接の実施により、前記開口部の両側のそれぞれの内周面に沿った溶接範囲がより有効に使用されるとともに、より的確な溶接状態が確保されるので、高強度の安定した連結状態が得られることになる。しかも、本発明に係る連結作業には、溶接棒あるいは溶接トーチが入る程度の鉄筋相互間の間隙があれば施工ができるので、複数の鉄筋を束ねて配筋する束ね配筋の場合のように施工スペースの少ない場合にも容易に対応することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の溶接作業前の状態を示した平面図である。
【図2】 同実施例の継手に形成された開口部の部分を示した部分拡大平面図である。
【図3】 図2において指示したA−A断面図である。
【図4】 前記実施例の溶接後の状態を示した拡大縦断面図である。
【図5】 同実施例の溶接後の状態を示した部分拡大平面図である。
【図6】 継手に関する他の実施例を示した斜視図である。
【図7】 継手に関する他の実施例を示した斜視図である。
【符号の説明】
1…継手、2,3…鉄筋、4,5…溶接用の開口部、6…鉄筋の挿通孔、7,8…継手の軸線に平行な両側の内周面、9,10…前後の内周面、11…溶接用の開口部、12…溶接金属、13…溶接金属間の間隙部、14…継手、15,16…継手部片、17〜20…溶接用の開口部、21…継手、22〜25…溶接用の開口部、26,27…継手部片

Claims (4)

  1. 両側から連結対象であるそれぞれの鉄筋の端部を挿入可能に構成されたスリーブ状の部材からなり、その周面部分に溶接用の開口部を形成し、その開口部は、スリーブの軸線に平行な両側の内周面を有し、かつそれらの両側の内周面に対して個別的に溶接が可能な開口幅を有することを特徴とする鉄筋連結用の継手。
  2. 結対象であるそれぞれの鉄筋の端部間を跨ぎ、かつそれらの鉄筋の端部を囲むように分割した複数の部材からなり、それらの複数の部材によって形成されるスリーブ状の周面部分に溶接用の開口部を形成し、その開口部は、スリーブの軸線に平行な両側の内周面を有し、かつそれらの両側の内周面に対して個別的に溶接が可能な開口幅を有することを特徴とする鉄筋連結用の継手。
  3. 連結対象であるそれぞれの鉄筋の端部間を跨ぎ、かつそれらの鉄筋の端部を囲むように分割した複数の部材からなり、それらの複数の部材によって形成されるスリーブ状の周面部分における前記部材間に溶接用の開口部を形成し、その開口部は、スリーブの軸線に平行な両側の内周面を有し、かつそれらの両側の内周面に対して個別的に溶接が可能な開口幅を有することを特徴とする鉄筋連結用の継手。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載した継手を用いて、連結対象であるそれぞれの鉄筋の端部間を跨ぎ、かつそれらの端部を囲む状態に設置し、その継手に形成した溶接用の開口部の少なくとも継手の軸線に平行な両側の内周面と前記鉄筋の接触部に対してそれぞれ個別的に溶接を行うことにより、前記鉄筋相互間を連結することを特徴とする鉄筋の連結方法。
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