JP3866609B2 - 車両検知装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両による磁気の変化から車両を検知する車両検知装置に係り、特に、対象とする道路を通行する車両を選択的に検知できる車両検知装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
道路上のある地点で地磁気を計測した場合、時間的に一定なある値が得られる。道路上を磁性体の塊である車両が通行する場合には、その磁性体に磁気が集中するため計測される磁気の強度が時間的に変化する。また、磁性体が磁化している場合には、その磁化の方向と地磁気の方向とが等しい場合には強め合い、反対の場合には弱め合うため、計測される磁気の強度がより大きく変化する。このような磁界感応型の車両検知装置として、例えば、特開平6−325288号公報に記載の発明がある。この発明では、車両が磁気センサの設置点を通過していくと、磁気センサの出力が変化する。この時の磁気センサの出力波形を捉えて車両が通過したことを検知する。2つの磁気センサが道路に沿って間隔をおいて設置されているので、1台の車両の通過に対して2つの磁気センサから時間差のある車両検知信号が生じる。このようにして、道路上を走行する車両の台数と速度とを得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術の問題点は以下のとおりである。
【0004】
走行車線の地中または橋梁裏側に磁気センサを設置し、その直上を通過した車両を検知しようとしたとする。車線が上下に(立体的に)輻輳しているときに、輻輳した車線(対象とする道路の上または下に位置する道路)を大きく磁化された車両や鋼材を搭載した車両が走行すると、これらの車両が引き起こす磁気変化が大きいため、この磁気変化が磁気センサに検知され、対象とする道路を車両が通過したと誤判断してしまうことがある。この場合、実際の通行量よりも多くの通行量がカウントされてしまう。即ち、従来技術は、道路が輻輳していると、車両を検知する精度が低いという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、対象とする道路を通行する車両を選択的に検知できる車両検知装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、車両による磁気の変化から道路を通行する車両を検知する車両検知装置において、道路の長手方向の2箇所に設置した2つの磁気センサと、これら2つの磁気センサの出力信号の差分信号を演算する演算装置と、前記差分信号またはその微分信号が予め設定された閾値を超えたとき前記2つの磁気センサの出力信号が対象とする道路を通行する車両による磁気変化を表していると判定する判定装置とを備えたものである。
また、車両による磁気の変化から道路を通行する車両を検知する車両検知装置において、道路の長手方向の2箇所に設置した2つの磁気センサと、これら2つの磁気センサの出力信号の位相差(ここで位相差は、車両による磁気の変化を検知した磁気センサの出力信号の波形の時間をt、同位相点が両波形に表われるために要した時間(車両が2つの磁気センサ間を通過するのに要した時間)をΔtとしたとき、Δt/tを意味する)を演算する演算装置と、前記位相差が予め設定された閾値を超えたとき前記2つの磁気センサの出力信号が対象とする道路を通行する車両による磁気変化を表していると判定する判定装置とを備えたものである。
【0007】
前記判定装置は、前記2つの磁気センサの出力信号の時間差を求め、この時間差と前記2つの磁気センサの設置間隔とから車両の速度を演算してもよい。
【0008】
前記判定装置は、前記演算した車両の速度に応じて前記閾値を変化させてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0010】
図1に示されるように、本発明に係る車両検知装置は、道路の長手方向の2箇所に設置した2つの磁気センサ1a,1bと、これら2つの磁気センサ1a,1bの出力信号V1 ,V2 の差分信号V1 −V2 または位相差Δt/tを演算する演算装置2と、前記差分信号またはその微分信号または前記位相差が予め設定された閾値を超えたとき前記2つの磁気センサの出力信号が対象とする道路を通行する車両による磁気変化を表していると判定する判定装置3とを備える。位相差Δt/tの定義、演算装置2の演算内容は後述する。判定装置3は、対象とする道路を通行する車両による磁気変化を表している出力信号V1 ,V2 に対応させてパルス信号I1 ,I2 を発生するようになっている。
【0011】
図2に示されるように、車線が上下に輻輳している場所を例にとる。ある車線(ここでは下の道路)に磁気センサ1a,1bを設置したとする。設置する位置は、地上の道路であれば道路地中、高架橋・橋梁部であれば橋梁裏側である。以下、道路といえば橋梁も含むものとする。4aは、対象とする道路を通行する車両であり、4bは、対象としない上の道路を通行する車両である。
【0012】
以下、本発明に係る車両検知装置の原理を説明する。
【0013】
車両は、磁性体の塊であり、その構造上、前後方向に磁化している場合が多い。また、磁化していない場合であっても、磁性体に磁気が集中するため、等価的に磁化している場合と同等の影響を周囲磁気に与える。なお、磁化の強さは、車両の磁性体含有量や磁化の履歴により、車両の寸法や車種によらない。
【0014】
車両が磁化した場合の磁気分布の一例を図3に示す。正面図に見られるように、車両4の中心部(磁気中心)から放射状に磁力線10が分布している。また、側面図に見られるように、磁力線10は、車両4の前部から車両の上部及び下部(道路中)を通って車両4の後部に入る。11は、このような磁力線10を生じる仮想磁石である。このように、車両4による磁気を仮想磁石11による磁気として考察することができる。磁気センサ1は車両4の中心部の下に設置されているものとする。車両4の磁気に基づく、磁気センサ1が設置された地点における磁気の強さは以下で与えられる。
【0015】
磁石(仮想磁石)の磁化の強さをmとすると、磁気センサ1が設置されたP点における磁化の強さ(磁石のN極による磁化の強さHn、S極による磁化の強さHs)は、次の式で与えられる。ここでは、車両の前方がS極、後方がN極とする。
【0016】
【数1】
Figure 0003866609
【0017】
図4に、これらのパラメータの関係を示す。この図では、車両の前後方向(道路長手方向)をX、左右方向をY、上下方向をZとする。P点におけるZ方向の磁界Hzは、次のようになる。
【0018】
【数2】
Figure 0003866609
【0019】
通常、磁気センサ1は地表から0.5m程度の深さの位置に設置される。また、車両の磁気中心は地表から0.5mないし10m程度の高さの位置にある。
【0020】
ここで、図2の例について考察する。磁気センサ1a,1bの埋設深さを地表から0.5m、2つの磁気センサ1a,1bの道路長手方向の設置間隔を5.5m、車両の磁気中心の高さを地表から0.5mとし、車両4aが一定速度で走行したとする。このときの両磁気センサ1a,1bの出力の時間変化は、図5の(1)、(2)に示されるように、両磁気センサ1a,1bの設置位置が車両の進行方向においてずれがあるため、2つの出力波形は互いに時間的にシフトした関係になる。なお、各磁気センサ出力は、各々の最大値で規格化してある。
【0021】
次に、上の道路を車両4bが一定速度で走行したとする。磁気センサ1a,1bと車両4bとの離隔距離は10m以上になっている。なお、ここでは上下の道路間隔を15mとする。他の条件は、車両4aの場合と同じとする。このときの両磁気センサ1a,1bの出力の時間変化は、図5の(5)、(6)に示されるように、車両4aの場合と同じように互いに時間的にシフトした関係になる。しかし、(1)、(2)と(5)、(6)とを比較すると、出力波形の形状が異なっている。車両4aの場合は、最初の立ち下がりから最後の立ち下がりまでの時間tが短く、車両4bの場合は、時間tが長い。このように、車両と磁気センサとの距離が長くなると、車両により磁気の変化が及ぶ時間的範囲が大きくなる。車両による磁気の大きさは、式(1)から明らかなように、距離の二乗に反比例するため、磁気センサに与える影響(P点における磁化の強さ)は小さくなり、通常車両ではその影響は見えない。しかし、何らかの原因により車両が強く磁化されている場合には、車両と磁気センサとの距離が長くても、磁化の強さmが大きいため、その影響は無視できなくなる。
【0022】
図5の(1)と(5)、又は(2)と(6)の比較から明らかなように、磁気センサの出力は、車両と磁気センサとの距離が長くなるにつれて、時間tが長くなる。従って、車両と磁気センサとの距離が2つの磁気センサ相互の設置間隔よりも十分に大きい場合には、磁気センサ1aの出力と磁気センサ1bの出力との波形の位相差が小さくなる。ここで、位相差は、車両による波形の時間をtとし、同位相点が両波形に表われるために要した時間(車両が2つの磁気センサ間を通過するのに要した時間)をΔtとすると、Δt/tにより得ることができる。また、図5の(3)、(7)に示すように、両磁気センサ1a,1bの出力の差分をとった場合には、車両と磁気センサとの距離が長くなるにつれて、位相差Δt/tが小さくなるため、差分値が小さくなる。
【0023】
さらに、その差分波形の微分をとると、図5の(4)、(8)に示すように、車両と磁気センサとの距離が長くなるにつれて、差分波形の変化が緩やかになるため、微分値が小さくなる。
【0024】
以上のことから、2つの磁気センサの出力信号の位相差または差分、もしくはその差分の微分の信号を予め定めた閾値と比較し、その信号が閾値より小さい場合には、その磁気センサの出力信号は、直近の車両に起因するものではないと判断することができる。
【0025】
次に、図1、図2および図6を用いて本発明に係る車両検知装置の動作を説明する。ここでは、まず磁気センサ直近の車線(対象とする道路)を車両4aが走行し、続いて、輻輳した車線(対象としない道路)を車両4bが走行したものとする。
【0026】
磁気センサ1a,1bは、それぞれの車両4a,4bによる磁気変動を感知し、信号V1 ,V2 を出力する。演算装置2においては、信号V1 ,V2 をもとに位相差Δt/tを演算し、出力する。判定装置3では、信号V1 ,V2 を位相差Δt/tが得られるまで保持し、位相差Δt/tと閾値との比較により車両が通過した道路を判別し、磁気センサ1a,1bの出力信号V1 ,V2 のうち対象とする道路を走行した車両による信号のみに基づいてパルス状の車両検知信号I1 ,I2 を出力する。車両検知信号I1 ,I2 は、それぞれ磁気センサ1a,1bの出力信号V1 ,V2 の変化に時間的に対応して出力されるので、車両検知信号I1 ,I2 相互間の時間間隔は、磁気センサ1a,1bの出力信号V1 ,V2 の立ち上がり、立ち下がり、或いはピーク相互間の時間間隔を保存している。
【0027】
従って、図6の(1)、(2)に示されるように、磁気センサ1a,1bの出力信号V1 ,V2 は、まず、対象とする道路を走行した車両4aにより波形時間t(ここでは最初の立ち上がりから次の立ち上がりまで)が短い変化波形が得られ、続いて、遠方を走行した車両4bにより波形時間tが長い変化波形が得られる。それぞれの変化波形について位相差Δt/tを求めると、図6の(3)に示されるように、はじめに値の大きい位相差信号が得られ、次いで値の小さい位相差信号が得られる。はじめの位相差信号は閾値より大きく、次の位相差信号は閾値より小さい。よって、判定装置3からの車両検知信号I1 ,I2 は、図6の(4)、(5)に示されるように、車両4aの通過にのみ対応して得られる。
【0028】
なお、ここでは位相差Δt/tによる判定を行ったが、差分或いは微分の信号による判定も有効であることは勿論である。
【0029】
次に、車両速度を演算する実施形態を説明する。
【0030】
図7に示した車両検知装置では、判定装置3は、図1で説明した機能に加え、2つの磁気センサ1a,1bの出力信号V1 ,V2 の変化点の時間差、或いは車両検知信号I1 ,I2 の時間差を求め、この時間差と2つの磁気センサ1a,1bの設置間隔とから対象とする道路を通過した車両4aの速度vを演算する。
【0031】
さらに、図8に示した車両検知装置では、車両4aの速度vを演算するだけでなく、その速度vの値をフィードバックさせて閾値を変化させる。これにより、車両の速度変化に対応させることができる。即ち、車両4a,4bの速度が速くなると、図5で説明した波形時間tが短くなり、その結果、相対的に差分或いは微分が大きくなるので、この対策として閾値を大きくする。逆に、車両4a,4bの速度が遅くなると、波形時間tが長くなって相対的に差分或いは微分が小さくなるので、その対策として閾値を小さくする。
【0032】
以上の説明では、互いに輻輳した2つの車線のうち下の車線を対象として磁気センサ1a,1bを設置したが、輻輳する車線数や磁気センサを設置する車線をこれに限定するものではない。
【0033】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0034】
(1)磁気変化により車両の通過を判断する場合に、遠方の車線を走行する車両の影響による磁気変化を誤検出する確率が低減し、直近の車線を走行する車両のみを検知する高精度な車両検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両検知装置の回路図である。
【図2】本発明の車両検知装置を設置した道路とこれに輻輳する道路とを示した側面図である。
【図3】車両における磁気分布図である。左は正面図、右は側面図である。
【図4】車両による磁気センサ設置点の磁界に関係するパラメータの図である。左は正面図、右は側面図である。
【図5】本発明の車両検知装置の原理説明のための各部信号の時間波形図である。(1)は車両4aに対する磁気センサ1aの出力、(2)は車両4aに対する磁気センサ1bの出力、(3)は両磁気センサ1a,1bの出力の差分、(4)はその差分の微分、(5)は車両4bに対する磁気センサ1aの出力、(6)は車両4bに対する磁気センサ1bの出力、(7)は両磁気センサ1a,1bの出力の差分、(8)はその差分の微分であり、各横軸は時間である。
【図6】本発明の車両検知装置の動作説明のための各部信号の時間波形図である。(1)は磁気センサ1aの出力、(2)は磁気センサ1bの出力、(3)は位相差Δt/t、(4)は判定装置3が出力する車両検知信号I1 、(5)は判定装置3が出力する車両検知信号I2 である。
【図7】本発明の一実施形態を示す車両検知装置の回路図である。
【図8】本発明の一実施形態を示す車両検知装置の回路図である。
【符号の説明】
1,1a,1b 磁気センサ
2 演算装置
3 判定装置
4,4a,4b 車両

Claims (4)

  1. 車両による磁気の変化から道路を通行する車両を検知する車両検知装置において、道路の長手方向の2箇所に設置した2つの磁気センサと、これら2つの磁気センサの出力信号の差分信号を演算する演算装置と、前記差分信号またはその微分信号が予め設定された閾値を超えたとき前記2つの磁気センサの出力信号が対象とする道路を通行する車両による磁気変化を表していると判定する判定装置とを備えたことを特徴とする車両検知装置。
  2. 車両による磁気の変化から道路を通行する車両を検知する車両検知装置において、道路の長手方向の2箇所に設置した2つの磁気センサと、これら2つの磁気センサの出力信号の位相差(ここで位相差は、車両による磁気の変化を検知した磁気センサの出力信号の波形の時間をt、同位相点が両波形に表われるために要した時間(車両が2つの磁気センサ間を通過するのに要した時間)をΔtとしたとき、Δt/tを意味する)を演算する演算装置と、前記位相差が予め設定された閾値を超えたとき前記2つの磁気センサの出力信号が対象とする道路を通行する車両による磁気変化を表していると判定する判定装置とを備えたことを特徴とする車両検知装置。
  3. 前記判定装置は、前記2つの磁気センサの出力信号の時間差を求め、この時間差と前記2つの磁気センサの設置間隔とから車両の速度を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の車両検知装置。
  4. 前記判定装置は、前記演算した車両の速度に応じて前記閾値を変化させることを特徴とする請求項記載の車両検知装置。
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