JP3866312B2 - 電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔の製造方法 - Google Patents
電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は電解コンデンサの中低圧陽極に使用されるアルミニウム合金箔の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電解コンデンサ中低圧陽極用箔は、通常アルミニウム箔を交流エッチングして粗面化し、約 200V以下の電圧で化成処理して製造されている。かかる電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム箔の具備すべき特性は静電容量の大きいことである。そこで従来から静電容量を増大させるために、箔の製造工程中に電気化学的、又は化学的エッチングを施して表面を粗面化し、表面積を増大させることが行われている。
【0003】
このような電解コンデンサ中低圧陽極用箔の製造工程の一例を以下に示す。即ちアルミニウム溶湯から半連続鋳造法によってスラブを鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延によって0.3〜0.6mm 程度の厚さの板材(箔地)とし、さらに20〜100μm程度の厚さまで箔圧延し、その後上記のようにエッチングを施して製造されている。なお鋳塊を熱間圧延する前に均質化処理することや、必要に応じて冷間圧延の途中に中間焼鈍を施したり、最終箔焼鈍を施すことも通常行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来この種の電解コンデサ中低圧陽極用箔としては、アルミニウム中の不可避的不純物であるFe、Siの含有量を極力少なくした高純度のアルミニウム箔が用いられていた。その理由はアルミニウム中のFe、Si含有量が増加するとエッチングの際に箔表面が異常に溶解するので表面積拡大率を大きくすることができず、従って静電容量が小さいものとなってしまうからである。ところがFe、Siを極力排除した高純度アルミニウム箔はコストが非常に高くなるといった欠点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、Fe、Si含有量の比較的多いアルミニウム箔であっても異常溶解による静電容量の低下を招くことなく、高容量の電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム箔が得られ、しかも安価な箔の提供を可能としたものである。
【0006】
即ち本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、箔中のFe、Si含有量の多い場合であっても、アルミニウム合金溶湯から直接連続鋳造圧延法によって製造したアルミニウム合金板を所定の圧延率で冷間圧延を行った後熱処理し、その後さらに冷間圧延する工程で製造することにより、エッチングの際の異常溶解を防止して静電容量を高くすることが可能であることを知見するに至り、かかる知見に基いて本発明を完成したものである。
【0007】
本発明は、アルミニウムの純度が99.9wt%以上で、Feを20〜200wtppm、Siを20〜300wtppm、Cuを0〜100wtppm含有するアルミニウム合金溶湯を連続的に鋳造圧延して厚さ25mm以下の板状とした後、30%以上の冷間圧延を行ってから400℃以上の温度で加熱処理を施し、その後 250℃以下の温度で圧延を行うことを特徴とする電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔の製造方法である。
【0008】
【作用】
本発明においてアルミニウムの純度を99.9wt%以上としたのは、99.9wt%未満では異常溶解を防止することが困難となるため静電容量が小さいものとなってしまうからである。
【0009】
次に先ず本発明に係るアルミニウム合金中への添加元素の役割について説明する。Fe、Siはアルミニウム中に不可避的に含有されるものであるが、これらが形成する金属間化合物は、電極箔形成の際のエッチング時に異常溶解を起こさせる原因となる。そこで本発明では、Feを20〜200wtppm、Siを20〜300wtppmの範囲に限定する。即ちFeが200wtppmを越え、Siが300wtppmを越えると、金属間化合物の形成が増加して異常溶解を低減することが困難となり、一方、Feが20wtppm未満、Siが20wtppm未満ではコストが上昇し、本発明の目的を達成できない。なお、SiはFeと比較して固溶し易く、金属間化合物形成による異常溶解が生じにくいため含有量の許容上限を大きくしたものである。
【0010】
またCuは、エッチングを均一にする効果がある。しかしCu含有量が100wtppmを越えると異常溶解が発生して静電容量が減少してしまう。従ってCu含有量は0〜100wtppmに限定される。
なおその他不純物元素は純度99.9wt%のアルミニウムに含まれる範囲とする。
【0011】
次に製造方法について説明する。本発明では、上記組成範囲のアルミニウム合金溶湯を連続的に鋳造圧延して、直接板厚25mm以下の鋳造板とする。上記連続鋳造圧延によって得られる鋳造板の板厚を25mm以下と限定したのは、Fe、Siなどの不純物元素の強制固溶及び凝固時に形成する金属間化合物の微細分散化が十分に行われて連続鋳造圧延の効果が十分に生かされる板厚、即ち溶湯の冷却が均一かつ急速に行われるような鋳造状態の得られる板厚範囲だからである。鋳造板の板厚が25mmを越えて厚くなると、完全な急冷凝固がはかれなくなって、金属間化合物の量が増大し、また金属間化合物が粗大化する。従って板厚は薄ければ薄いほど良いことになるが、3mm未満の厚さでは鋳造が困難となると共に、上記効果が飽和してしまうので3mm未満の板厚とすることは好ましくなく、望ましくは5〜10mmの厚さを持つ連続鋳造圧延板を成形するようにするのがよい。
【0012】
ここでアルミニウム合金溶湯を連続的に鋳造圧延するには、2つの対向して回転する鋳造用ロール、又は走行する鋳造用ベルト等で構成される鋳型の間に配置されたノズルを経て溶湯を上記鋳型内に供給し、鋳型で冷却して凝固させればよい。この方法は、直接連続鋳造圧延法として知られており、3C法、ハンター法、ヘーゼル法等が工業的に用いられているが、本発明はこれら方法のみに限定されるものではない。
【0013】
次に本発明では、連続鋳造圧延によって得られた鋳造板に30%以上の冷間圧延を行ってから400℃以上の温度で熱処理を施す。熱処理前の冷間圧延は、この後施される熱処理時の不純物元素の再固溶及び凝固組織の破壊作用を促進する効果がある。冷間圧延率が30%未満の場合、鋳造組織の破壊が十分に行われないため、箔をエッチングした際、スジ状の模様が発生し易くなり、外観上問題となる。従って、熱処理前の冷間圧延率は30%以上とする必要がある。
【0014】
そして冷間圧延に続く熱処理は、鋳造時に微細に形成した金属間化合物を再固溶させる効果及び凝固組織を破壊して均質な組織とする効果がある。この際、鋳造時に形成される金属間化合物は、微細であるほど再固溶しやすく、従って低温・短時間の熱処理とすることが可能となる。この熱処理は、400℃未満であるとその効果が十分でなく、金属間化合物が再固溶しきれずに残り、異常溶解が発生する。従って、400℃以上の温度、より好ましくは450℃以上の温度で0.5時間以上の熱処理を行うのがよい。
【0015】
次いで、上記のように熱処理を施した連続鋳造圧延板を250℃以下の温度に冷却し、250℃を越える温度に加熱するような状態に置くことなく、冷間圧延及び箔圧延を施して電解コンデンサ中低圧陽極用箔とする。これは高速・強圧下圧延時など冷間圧延時の加工発熱が多い条件あるいは中間焼鈍や仕上げ焼鈍などによって圧延板が250℃を越える温度に加熱された場合には、過飽和の状態で固溶している不純物元素が金属間化合物を形成し析出してくるからである。そしてこれら金属間化合物によって異常溶解が発生し、静電容量が減少してしまう。従って、熱処理後の圧延は250℃以下の温度、より好ましくは200℃以下の温度で行うのがよい。
【0016】
上記アルミニウム合金箔は、これを常法に従ってエッチング処理を行い、その後化成処理を施して、電解コンデンサ中低圧陽極用箔として用いられる。
【0017】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基いてさらに詳細に説明する。
【0018】
(実施例1)表1に示した組成のアルミニウム合金A〜Gの溶湯を連続鋳造圧延して厚さ8mmの帯状板とした。そしてこれらを表2に示す条件で冷間圧延を行ってから加熱処理した後それぞれ冷却し、200℃以下の温度で冷間圧延を施して厚さ0.1mmの箔とした。また従来例として従来組成のアルミニウム合金H,Iについては厚さ200mmの半連続鋳造スラブを通常の方法で面削、均質化処理(600℃×5時間)した後熱間圧延して板厚8mmとし、その後200℃以下の温度で冷間圧延を施して厚さ0.1mmの箔とした。
【0019】
このように得られた箔について 55 ℃のエッチング液(5%塩酸と 0.5 %燐酸の混合水溶液)中に浸漬し、交流 60Hz 、 10 A/dm 2 を与えながら2分間エッチングした。その後これらアルミニウム箔を 60 ℃の化成溶液(5%アジピン酸アンモニウム水溶液)に浸漬して 20 Vで化成処理し、LCRメーターを用いて静電容量を測定した。さらにエッチング前後の重量変化から溶解減量を求めた。そしてこれらの結果を、表2の従来例N o. 9のアルミニウム合金Hから得られた箔の静電容量及び溶解減量の値を 100 %としたときの相対値(%)で表わして表2に併記した。
またエッチング後の箔表面のスジ状模様の有無についても調べ、その結果を表2に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
表2から明らかなように本発明例N o. 1〜5のものは、高純度アルミニウムHから得られた従来例N o. 9と同様特性は良好である。これに対して本発明の組成範囲から外れるアルミニウム合金を用いた比較例はいずれも従来例N o. 9に比べて溶解減量は大きく、静電容量は小さい。
【0023】
(実施例2)表1のアルミニウム合金Cを用いて表3に示すように連続鋳造圧延を行い、又は半連続鋳造後面削と均質化処理(600℃×5時間)を施して熱間圧延を行い、各種厚さの帯状板を得てから表中の圧延率で冷間圧延を行い、その後加熱処理を施し、さらに冷間圧延もしくはその途中で中間焼鈍を行って厚さ 0.1mmの箔を製造した。これら得られた箔について実施例1と同様に溶解減量及び静電容量を測定し、これらの値を本発明例No.11の値を 100%としたときの相対値(%)で表わして表3に併記した。
またエッチング後のスジ状模様の有無についても調べ、その結果を表3に示した。
【0024】
【表3】
【0025】
表3から明らかなように製造条件のいずれかが本発明の範囲から外れる比較例No. 14 〜 19 はどれも本発明例のものと比べて特性は劣る。
【0026】
【発明の効果】
このように本発明によれば従来の高純度アルミニウム箔の場合と同等の高静電容量を有する電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔が従来より安価に得られる等の効果がある。
Claims (1)
- アルミニウムの純度が99.9wt%以上で、Feを20〜200wtppm、Siを20〜300wtppm、Cuを0〜100wtppm含有するアルミニウム合金溶湯を連続的に鋳造圧延して厚さ25mm以下の板状とした後、30 %以上の冷間圧延を行ってから 400 ℃以上の温度で加熱処理を施し、その後 250 ℃以下の温度で圧延を行うことを特徴とする電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔の製造方法。
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JP29910495A JP3866312B2 (ja) | 1995-10-24 | 1995-10-24 | 電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP29910495A JP3866312B2 (ja) | 1995-10-24 | 1995-10-24 | 電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔の製造方法 |
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JPH09118966A JPH09118966A (ja) | 1997-05-06 |
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JP29910495A Expired - Fee Related JP3866312B2 (ja) | 1995-10-24 | 1995-10-24 | 電解コンデンサ中低圧陽極用アルミニウム合金箔の製造方法 |
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JP (1) | JP3866312B2 (ja) |
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1995
- 1995-10-24 JP JP29910495A patent/JP3866312B2/ja not_active Expired - Fee Related
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