JP3865854B2 - 振動子を用いた角速度センサ - Google Patents

振動子を用いた角速度センサ

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は振動子を用いた角速度センサに関し、特に、振動子に作用するコリオリ力を容量素子の静電容量の変化に基づいて検出する角速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車産業や機械産業などでは、運動する物体の加速度や角速度を正確に検出できるセンサの需要が高まっている。一般に、三次元空間内において自由運動する物体には、任意の向きの加速度および任意の回転方向の角速度が作用する。このため、この物体の運動を正確に把握するためには、XYZ三次元座標系における各座標軸方向ごとの加速度と各座標軸まわりの角速度とを独立して検出する必要がある。
【0003】
角速度を検出するためのセンサとしては、振動子を用いた角速度センサが注目を集めている。この振動子を用いた角速度センサの基本原理は、互いに直交する3軸について、第1の軸方向に振動子を振動させた状態において、第2の軸方向に作用するコリオリ力を検出することにより、第3の軸まわりの角速度を求めるものである。これは、第1の方向に移動中の物体に対して、第3の軸まわりの角速度が作用すると、第2の軸方向にコリオリ力が作用するという物理現象を利用したものである。この第2の軸方向のコリオリ力を検出すれば、第3の軸まわりの角速度を間接的に求めることができる。
【0004】
このような原理に基づく角速度センサとして、たとえば、特許協力条約に基づく国際公開第WO94/23272号公報には、コリオリ力を容量素子の静電容量の変化に基づいて検出することにより、二軸もしくは三軸まわりの角速度を検出することができる多軸角速度センサが開示されている。このセンサは、コリオリ力が作用すると、容量素子の電極間隔に変化が生じるような構造を有し、容量素子の静電容量の変化をモニタすることにより、作用した角速度を検出することが可能になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
振動子に作用するコリオリ力を、静電容量素子を利用して検出する上述の角速度センサは、本体部分の機械的構造が比較的単純になるため、大量生産に適し、かなり低コストでの商業利用が見込まれている。しかしながら、本体部分の構造に比べ、信号処理回路部分の単純化は不十分であり、実用化する上でのコスト低下を阻んでいる。すなわち、この種の角速度センサでは、容量素子の静電容量の変化を何らかの電気信号として取り出す信号処理が不可欠であるが、このような信号処理を行うためのアナログ回路はいくつか提案されているものの、回路構成はかなり複雑なものにならざるを得ない。
【0006】
また、デジタル信号を用いた制御技術が一般化している今日では、角速度センサからの信号を利用する形態としても、デジタル信号としての利用形態が主流になってきており、デジタル信号としての利用に適した単純な信号処理回路の実現が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、単純で効率的な信号処理回路をもった、振動子を用いた角速度センサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、第1の軸方向に振動中の振動子に対して、この第1の軸に直交する第2の軸方向に作用するコリオリ力を検出することにより、第1の軸および第2の軸の双方に直交する第3の軸まわりの角速度を求める角速度センサにおいて、
センサを構成する要素の一部もしくは全部を収容する装置筐体と、
装置筐体内に収容された振動子と、
第1の軸方向に振動することができ、かつ、第2の軸方向のコリオリ力の作用により傾斜することができるように、振動子を装置筐体に対して所定の自由度をもって支持する支持手段と、
振動子を第1の軸方向に、所定の周期φで振動させる駆動手段と、
振動子側に形成された変位電極と、装置筐体側に形成された固定電極と、を有し、第2の軸の正方向を向いたコリオリ力が作用したとき、振動子の傾斜により電極間隔が小さくなり、第2の軸の負方向を向いたコリオリ力が作用したとき、振動子の傾斜により電極間隔が大きくなるように配置された第1の容量素子と、
振動子側に形成された変位電極と、装置筐体側に形成された固定電極と、を有し、第2の軸の正方向を向いたコリオリ力が作用したとき、振動子の傾斜により電極間隔が大きくなり、第2の軸の負方向を向いたコリオリ力が作用したとき、振動子の傾斜により電極間隔が小さくなるように配置された第2の容量素子と、
第1の容量素子と抵抗素子とを組み合わせてなる第1の遅延回路と、
第2の容量素子と抵抗素子とを組み合わせてなる第2の遅延回路と、
周期φをもった第1の周期信号を発生し、この第1の周期信号を第1の遅延回路に与える第1の信号供給回路と、
周期φをもち、第1の周期信号に対して所定の位相差pをもった第2の周期信号を発生し、この第2の周期信号を第2の遅延回路に与える第2の信号供給回路と、
第1の遅延回路から出力される第1の遅延信号と、第2の遅延回路から出力される第2の遅延信号と、の位相差を示す位相差信号を生成する位相差検出回路と、
この位相差信号を上記周期φの半分に相当する周期φ/2ごとの期間に区切り、奇数番目の期間に示された位相差および偶数番目の期間に示された位相差の少なくとも一方に基づいて第3の軸まわりの角速度を検出する角速度検出回路と、
を設けたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
第2の容量素子として、振動子側に形成された変位電極と、装置筐体側に形成された固定電極と、を有する可変容量素子を用いる代わりに、所定の固定容量をもった固定容量素子を用いるようにしたものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
角速度検出回路が、奇数番目の期間に示された位相差と偶数番目の期間に示された位相差との差に基づいて角速度を検出するようにしたものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1または第2の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
位相差検出回路が、第1の遅延信号と第2の遅延信号との排他的論理和を求める第1の論理素子により位相差検出を行い、この第1の論理素子が出力する位相差信号のパルス幅によって位相差を示すようにし、
角速度検出回路が、周期φをもった第3の周期信号を発生する第3の信号供給回路と、この第3の周期信号と位相差信号との論理積を求める第2の論理素子と、を有し、この第2の論理素子により、位相差信号の奇数番目のパルスと偶数番目のパルスとを分離し、奇数番目のパルスのパルス幅および偶数番目のパルスのパルス幅の少なくとも一方に基づいて角速度を検出するようにしたものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第1または第2の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
位相差検出回路が、第1の遅延信号と第2の遅延信号との排他的論理和を求める第1の論理素子により位相差検出を行い、この第1の論理素子が出力する位相差信号のパルス幅によって位相差を示すようにし、
角速度検出回路が、周期φをもった第3の周期信号を発生する第3の信号供給回路と、この第3の周期信号に対して論理反転状態にある第4の周期信号を発生する第4の信号供給回路と、第3の周期信号と位相差信号との論理積を求める第2の論理素子と、位相差信号に対して論理反転状態にある反転位相差信号を発生する第3の論理素子と、第4の周期信号と反転位相差信号との論理積を求める第4の論理素子と、第2の論理素子の出力信号と第4の論理素子の出力信号との論理和を求める第5の論理素子と、を有し、第5の論理素子の出力信号のパルス幅に基づいて角速度を検出するようにしたものである。
【0013】
(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1〜第5の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
第2の信号供給回路が、第1の信号供給回路が発生する第1の周期信号に対して所定の位相差pをもった第2の周期信号を発生させ、
角速度検出回路が、コリオリ力が作用していない状態における位相差を基準値として定義し、実際に検出された位相差が基準値より大きい場合には、その差分を第1の回転方向に関する角速度として出力し、実際に検出された位相差が基準値より小さい場合には、その差分を、第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に関する角速度として出力するようにしたものである。
【0014】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1〜第6の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
駆動手段に、振動子側に形成された変位電極と装置筐体側に形成された固定電極とからなる駆動用容量素子と、この駆動用容量素子に対して周期φの交流駆動信号を供給する駆動信号供給回路と、を設け、駆動用容量素子内に作用するクーロン力により振動子を振動させるようにしたものである。
【0015】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第1〜第6の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
振動子の少なくとも一部を磁性材料によって構成し、
駆動手段に、振動子の磁性材料部分に作用する磁場を発生させる磁場発生部と、この磁場発生部に周期φの交流信号を供給する駆動信号供給回路と、を設け、磁場発生部に交流信号に基づいた周期的磁場を発生させて振動子を振動させるようにしたものである。
【0016】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第1の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
一部分が装置筐体に固定され、かつ、一部分に振動子が固定された可撓性をもった変位基板によって支持手段を構成し、
この変位基板に対向するように、装置筐体に固定基板を設け、変位基板上に形成された変位電極と、固定基板上に形成された固定電極と、によって容量素子を構成するようにしたものである。
【0017】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第9の態様に係る振動子を用いた角速度センサにおいて、
変位基板に垂直で、かつ、振動子の重心と第3の軸方向とを含む平面を定義し、この平面に対して第1の側に第1の容量素子を形成し、この平面に対して第1の側とは逆の第2の側に第2の容量素子を形成するようにしたものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0019】
§1. センサ本体部の基本構造
図1は、本発明の一実施形態に係る角速度センサのセンサ本体部の基本構造を示す側断面図である。この角速度センサには、この図1に示すセンサ本体部の他に、信号処理回路が必要であるが、信号処理回路の構成については後述する。
【0020】
図1に示すように、変位基板110と固定基板120とは、互いに所定間隔を保って対向するように配置されており、変位基板110の下面には、所定の質量をもった振動子130が固着されている。ここに示す例では、変位基板110および固定基板120は、いずれも円盤状の基板であり、その周囲部分が装置筐体140によって固定されている。また、変位基板110の下面に固着された振動子130は、この実施形態では、円柱状の錘りである。一方、装置筐体140は、円筒状の構造体であり、変位基板110の外周部および固定基板120の外周部は、この装置筐体140の内周部に固着されている。
【0021】
ここでは、説明の便宜上、静止状態の振動子130の重心Gの位置に原点Oを定義し、図の右方にX軸、紙面に垂直な方向にY軸、図の上方にZ軸をとったXYZ三次元座標系を考えることにする。変位基板110は、可撓性を有しており、いわゆるダイヤフラムとして機能する基板であり、外力を加えることにより、振動子130をZ軸方向に振動させることができる。これに対して、固定基板120は剛性を有し、外力が作用しても実質的な撓みは生じない。変位基板110と固定基板120とは、いずれもXY平面に平行になるように支持されており、外力が作用しない状態では、両基板は互いに平行になる。
【0022】
変位基板110の上面には、図2の上面図に示されているように、5枚の電極E11〜E15が形成されている。電極E11,E12はいずれもX軸に関して線対称の同一形状を有し、両者は互いにY軸に関して線対称となる位置に配置されている。一方、電極E13,E14はいずれもY軸に関して線対称の同一形状を有し、両者は互いにX軸に関して線対称となる位置に配置されている。また、電極E15は、その中心がZ軸上に位置する円盤状の電極である。この5枚の電極E11〜E15は、変位基板110とともに変位する電極であり、以下、変位電極と呼ぶことにする。
【0023】
一方、固定基板120の下面には、図3の下面図に示されているように、5枚の電極E21〜E25が形成されている。これらの電極は固定基板120側に固定された電極であるため、以下、固定電極と呼ぶ。5枚の固定電極E21〜E25は、それぞれ5枚の変位電極E11〜E25と同じ形状の電極であり、各変位電極に対して鏡像関係の位置に配置されている。したがって、変位電極E11〜E15とこれに対向する固定電極E21〜E25とによって、5組の容量素子が形成されることになる。ここでは、電極対E11,E21からなる容量素子を第1の容量素子C1と呼び、電極対E12,E22からなる容量素子を第2の容量素子C2と呼び、電極対E13,E23からなる容量素子を第3の容量素子C3と呼び、電極対E14,E24からなる容量素子を第4の容量素子C4と呼び、電極対E15,E25からなる容量素子を第5の容量素子C5と呼ぶことにする。
【0024】
§2. 角速度の検出原理
ここで述べる実施形態の角速度センサは、装置全体に作用するX軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを同時に検出することができる二軸角速度センサである。たとえば、振動子130をZ軸方向に振動させた状態において、この装置筐体140に対してY軸まわりの角速度ωyが作用すると、X軸方向にコリオリ力Fxが作用する(振動子130の質量をm、速度をVzとすると、作用するコリオリ力Fxは、Fx=2・m・Vz・ωyとなる)。したがって、このコリオリ力Fxを検出することができれば、Y軸まわりの角速度ωyを間接的に求めることができる。X軸上に配置された第1の容量素子C1と第2の容量素子C2とは、このX軸方向のコリオリ力Fxを検出する機能を有する。ここで、YZ平面(変位基板110に垂直で、かつ、振動子130の重心GとY軸とを含む平面)を考えると、第1の容量素子C1は、このYZ平面の第1の側に位置し、第2の容量素子C2は、このYZ平面の第2の側に位置する。このように、X軸方向のコリオリ力Fxを効率良く検出するためには、YZ平面のそれぞれ反対側に、かつ対称となる位置に配置された一対の容量素子C1,C2を用いるのが好ましい。
【0025】
また、振動子130をZ軸方向に振動させた状態において、装置筐体140に対してX軸まわりの角速度ωxが作用すると、Y軸方向にコリオリ力Fyが作用する。したがって、このコリオリ力Fyを検出することができれば、X軸まわりの角速度ωxを間接的に求めることができる。Y軸上に配置された第3の容量素子C3と第4の容量素子C4とは、このY軸方向のコリオリ力Fyを検出する機能を有する。ここで、XZ平面(変位基板110に垂直で、かつ、振動子130の重心GとX軸とを含む平面)を考えると、第3の容量素子C3は、このXZ平面の第1の側に位置し、第4の容量素子C4は、このXZ平面の第2の側に位置する。このように、Y軸方向のコリオリ力Fyを効率良く検出するためには、XZ平面のそれぞれ反対側に、かつ対称となる位置に配置された一対の容量素子C3,C4を用いるのが好ましい。
【0026】
上述したように、各容量素子C1〜C4はいずれもコリオリ力の検出に用いられる検出用容量素子であるのに対し、第5の容量素子C5は振動子130をZ軸方向に振動させるために用いられる駆動用容量素子である。ここでは、この駆動用容量素子C5を用いて、振動子130を振動させる原理を説明しよう。いま、図4の側断面図に示すように、変位電極E15に正電荷を供給し、固定電極E25に負電荷を供給した場合を考えよう(電荷の極性をそれぞれ逆にしてもよい)。このように、対向する一対の電極にそれぞれ異なる電荷を供給すると、両者間にクーロン力が作用し、両電極間に引力が働くことになる。ここで、固定基板120は剛性をもった基板であるのに対し、変位基板110は可撓性をもった基板であるため、このクーロン引力により、図4に示されているように、変位基板110が撓み(弾性変形)を生じ、変位電極E15が固定電極E25へ接近することになる。別言すれば、振動子130はZ軸正方向に速度+Vzをもって運動することになる。
【0027】
このように、振動子130がZ軸正方向に移動中に、変位電極E15および固定電極E25への電荷供給を中止すると、クーロン引力は消滅する。すると、変位基板110のもつ弾性変形に対する復元力により、振動子130はZ軸負方向に速度−Vzをもって運動することになる。このとき、振動子130の重心Gは、もとの原点Oの位置(図1に示す静止状態の位置)を通り越し、図5の側断面図に示されているように、更に下方へと運動を続けることになる。
【0028】
そこで、図6に示すように、周期φをもった交流駆動信号Uを変位電極E15と固定電極E25との間に供給すれば、振動子130は周期φをもってZ軸方向に振動することになる。実際には、たとえば、固定電極E25を接地し、変位電極E15に対して、図6に示すような交流駆動信号Uを供給すればよい。もっとも、交流駆動信号Uによってエネルギーが供給されている期間は、周期φの前半期間t1のみであり、後半期間t2には、何らエネルギー供給は行われていないので、振動子130の振動は、原点O(静止状態にあるときの重心Gの位置)を中心とした単振動にはならない。すなわち、Z軸正方向への運動は、クーロン力によってZ軸正方向に積極的に吸引することにより得られる運動であるのに対し、Z軸負方向への運動は、Z軸負方向に積極的に吸引することにより得られる運動ではなく、変位基板110の復元力に基づく運動である。このため、原点Oの位置を基準としたとき、Z軸正方向の振幅とZ軸負方向の振幅とは、必ずしも等価にはならない。しかしながら、中心位置が原点Oよりやや上方へ移動するものの、振動子130の上下運動はほぼ単振動となり、実用上は問題はない。もちろん、周期φの後半期間t2において、Z軸負方向へのクーロン力を作用させるような機構を付加すれば、原点Oを中心とした単振動を行わせることは可能であるが、構造はより複雑にならざるを得ない。
【0029】
結局、このような交流駆動信号Uを駆動用容量素子C5に供給することにより、振動子130は、図6に示すような速度Vzをもって、周期φでZ軸の正負両方向に運動することになる(実際には、速度Vzは、図示のような鋸歯状波ではなく、正弦波に近いなだらかな波形になると予想されるが、ここでは説明の便宜上、図示のような単純な波形を示す)。速度Vz=0の時点は、振動子130が最大振幅位置(最上点もしくは最下点位置)に到達した時点に相当する。図6の期間Pは、速度Vzが正の値をとる第1の期間P1と、負の値をとる第2の期間P2とが交互に現れることを示しており、各期間P1,P2は、周期φの半分の長さをもった期間になる。別言すれば、第1の期間P1は、図4に示すように、振動子130が図の上方へと運動している期間であり、第2の期間P2は、図5に示すように、振動子130が図の下方へと運動している期間である。
【0030】
このように、振動子130がZ軸に沿って振動している限りでは、変位基板110と固定基板120とは平行な関係を維持している。すなわち、図4に示す状態では、両基板の間隔は小さくなり、図5に示す状態では、両基板の間隔は大きくなるが、両基板が平行であるという関係は維持されている。ところが、Y軸まわりの角速度ωyが作用している状態では、X軸方向のコリオリ力が発生するため、この両基板の平行状態は維持されなくなる。たとえば、図7の側断面図に示すように、装置筐体140に対してY軸まわりの角速度ωyが作用していた状態において、振動子130が速度+Vzで図の上方へ運動すると、X軸正方向のコリオリ力+Fxが発生することになる。振動子130に対して、このようなコリオリ力+Fxが作用すると、変位基板110には図示のような撓みが生じ、振動子130は図示のように傾斜することになる。その結果、通常の状態(角速度が作用していない状態)に比べると、第1の容量素子C1を構成する一対の電極E11,E12の電極間隔は小さくなり、逆に、第2の容量素子C2を構成する一対の電極E12,E22の電極間隔は大きくなる。別言すれば、角速度ωyの作用により、第1の容量素子C1の静電容量値は大きくなり、第2の容量素子C2の静電容量値は小さくなる。
【0031】
ところが、図8の側断面図に示すように、振動子130が速度−Vzで図の下方へ運動すると、運動方向が逆転したために、作用するコリオリ力の方向も逆転することになり、X軸負方向のコリオリ力−Fxが発生することになる。振動子130に対して、このようなコリオリ力−Fxが作用すると、変位基板110には図8に示すような撓みが生じ、振動子130は図7とは逆の方向に傾斜することになる。その結果、通常の状態(角速度が作用していない状態)に比べると、第1の容量素子C1を構成する一対の電極E11,E12の電極間隔は大きくなり、逆に、第2の容量素子C2を構成する一対の電極E12,E22の電極間隔は小さくなる。別言すれば、角速度ωyの作用により、第1の容量素子C1の静電容量値は小さくなり、第2の容量素子C2の静電容量値は大きくなる。
【0032】
ここで注意すべき点は、上述の議論で、各容量素子の静電容量値が「大きくなる」、あるいは「小さくなる」という表現は、あくまでも角速度ωyが作用していない通常の状態と、角速度ωyが作用したときの状態とを比較した表現である。すなわち、振動子130を振動させた状態においては、角速度が何ら作用していなくても、各容量素子の電極間隔は周期φで狭くなったり広くなったり、周期的に変化を繰り返している。たとえば、図4に示すように、振動子130が図の上方へと移動した時点では、各容量素子の電極間隔は狭くなり、静電容量値は大きくなるのに対し、図5に示すように、振動子130が図の下方へと移動した時点では、各容量素子の電極間隔は広くなり、静電容量値は小さくなる。このように、各容量素子の静電容量値は、周期φで絶えず変化していることになる。
【0033】
結局、各容量素子の静電容量値の変化分には、振動子130の振動に起因する要素と、角速度の作用に起因する要素とが含まれていることになる。本発明に係る角速度センサでは、次の§3で述べる信号処理回路を採用することにより、角速度の作用に起因する要素のみを抽出することができる。
【0034】
§3. 角速度を検出するための信号処理回路
図9は、本発明に係る角速度センサに用いる信号処理回路の一部を示す回路図である。この回路図で、可変容量素子C1,C2は、それぞれ上述したセンサ本体部における第1の容量素子C1および第2の容量素子C2に相当する。実際には、この例では、図9の容量素子C1の接地側の電極が固定電極E21であり、抵抗素子R1に接続されている電極が変位電極E11である。同様に、図9の容量素子C2の接地側の電極が固定電極E22であり、抵抗素子R2に接続されている電極が変位電極E12である。ここで、容量素子C1および抵抗素子R1により第1の遅延回路が構成され、容量素子C2および抵抗素子R2により第2の遅延回路が構成されており、抵抗素子R1の抵抗値と抵抗素子R2の抵抗値は互いに等しい。
【0035】
ここで、図の入力端子T1に周期φをもった第1の周期信号φ1を与えると、第1の遅延回路(R1,C1)からは第1の遅延信号D1が出力され、図の入力端子T2に周期φをもった第2の周期信号φ2を与えると、第2の遅延回路(R2,C2)からは第2の遅延信号D2が出力されることになる。これら一対の遅延信号D1,D2は、排他的論理和演算を行う論理素子L1に与えられ、両遅延信号D1,D2の位相差を示す位相差信号Aが出力端子T3に得られる。
【0036】
いま、この図9に示す回路に対して、図10に示すような第1の周期信号φ1および第2の周期信号φ2を与えた場合を考える。ここで、第1の周期信号φ1は、周期φをもったデューティ比50%の矩形波信号である。また、第2の周期信号φ2は、同じく周期φをもったデューティ比50%の矩形波信号であるが、第1の周期信号φ1に対して所定の位相差pをもった信号である。ここでは、位相差p=π/2(周期φの1/4)に設定している。
【0037】
第1の遅延信号D1および第2の遅延信号D2は、それぞれ第1の周期信号φ1および第2の周期信号φ2を遅延させて得られる信号であるから、遅延時間をそれぞれd1,d2とすれば、図10に示すような信号になる。なお、実際には、CR遅延回路を通った遅延信号は、波形になまりが生じることになるが、本願の波形図では、説明の便宜上、各信号をなまりのない状態で示すことにする。
【0038】
さて、ここではまず、角速度が作用していない通常の状態におけるこの信号処理回路の動作を考えてみる。いま、振動子130をZ軸方向に周期φで振動させると、容量素子C1,C2を構成する一対の電極の間隔は、大きくなったり小さくなったりするので、容量素子C1,C2の静電容量値は周期φで変化することになる。しかしながら、既に述べたように、角速度が作用していない状態では、振動子130は傾斜することなしに振動するので、容量素子C1の静電容量値と容量素子C2の静電容量値とはどの瞬間においても互いに等しくなる。このため、図9に示す回路図における第1の遅延回路(R1,C1)による遅延時間d1と、第2の遅延回路(R2,C2)による遅延時間d2とは等しくなる。したがって、第1の遅延信号D1と第2の遅延信号D2との間には、第1の周期信号φ1と第2の周期信号φ2との位相差p(この例の場合、p=π/2)がそのまま維持され、位相差信号Aとしては、図10に示すように、期間t10もしくは期間t20に相当するパルス幅をもったパルス信号が得られる。ここで、期間t10=t20であり、これは位相差pに相当する期間になる。
【0039】
図10のタイミングチャートの位相差信号Aにおける期間t10は、奇数番目のパルスの期間を示し、期間t20は、偶数番目のパルスの期間を示している(ここでは、便宜上、第1の周期信号φ1の最初の立上がりエッジ部分を起点として、それ以後に最初に現れるパルスを奇数番目のパルスとして数えることにする)。このように、角速度が作用していない状態では、t10=t20となる。ここではこのパルス幅を基準幅と呼ぶことにする。ところが、Y軸まわりの角速度ωyが作用した環境下では、位相差信号Aに含まれるパルスのパルス幅が、この基準幅から外れることになる。別言すれば、第1の遅延信号D1と第2の遅延信号D2との位相差が、角速度ωyの作用により変化することになる。その理由は、§2で述べた検出原理を考慮すれば、容易に理解できよう。すなわち、角速度ωyが作用すると、図7あるいは図8に示すように、振動子130が傾斜するため、容量素子C1の静電容量値と容量素子C2の静電容量値との間に差が生じることになり、第1の遅延回路(R1,C1)による遅延時間d1と、第2の遅延回路(R2,C2)による遅延時間d2とに差が生じるからである。
【0040】
ここでは、図11に示すタイミングチャートを参照しながら、角速度ωyが作用している環境下でのこの信号処理回路の動作を説明しよう。既に述べたように、駆動用容量素子C5に対し、周期φをもった交流駆動信号Uを供給すると、振動子130はZ軸方向の速度VzをもってZ軸方向に振動することになる。このとき、図11に期間Pとして示すように、速度Vzが正の値をとる第1の期間P1と、負の値をとる第2の期間P2とが交互に現れることになるが、第1の期間P1では、図7に示すように振動子130が傾斜し、第2の期間P2では、図8に示すように振動子130が傾斜する。このように、振動子130を振動させた状態において、図9に示す回路に第1の周期信号φ1および第2の周期信号φ2を供給すると、図11に示すような第1の遅延信号D1および第2の遅延信号D2が得られることになる。
【0041】
ここで、図11に示す第1の遅延信号D1の立上がりエッジの遅延時間d11は、図10に示す遅延時間d1よりも大きくなり、逆に、立ち下がりエッジの遅延時間d12は、図10に示す遅延時間d1よりも小さくなる。これは、遅延時間d11は第1の期間P1に得られる遅延時間であるのに対し、遅延時間d12は第2の期間P2に得られる遅延時間であるためである。すなわち、第1の期間P1では、図7に示すように振動子130が傾斜するため、容量素子C1の容量値は、振動子130が傾斜しない状態(すなわち、角速度が作用していない状態)に比べて大きくなり、遅延時間d11はd1よりも大きくなる。逆に、第2の期間P2では、図8に示すように振動子130が傾斜するため、容量素子C1の容量値は、振動子130が傾斜しない状態(すなわち、角速度が作用していない状態)に比べて小さくなり、遅延時間d12はd1よりも小さくなる。
【0042】
一方、図11に示す第2の遅延信号D2の立上がりエッジの遅延時間d21は、図10に示す遅延時間d2よりも小さくなり、逆に、立ち下がりエッジの遅延時間d22は、図10に示す遅延時間d2よりも大きくなる。これは、遅延時間d21は第1の期間P1に得られる遅延時間であるのに対し、遅延時間d22は第2の期間P2に得られる遅延時間であるためである。すなわち、第1の期間P1では、図7に示すように振動子130が傾斜するため、容量素子C2の容量値は、振動子130が傾斜しない状態(すなわち、角速度が作用していない状態)に比べて小さくなり、遅延時間d21はd2よりも小さくなる。逆に、第2の期間P2では、図8に示すように振動子130が傾斜するため、容量素子C2の容量値は、振動子130が傾斜しない状態(すなわち、角速度が作用していない状態)に比べて大きくなり、遅延時間d22はd2よりも大きくなる。
【0043】
このように、角速度ωyの作用により、両周期信号の遅延時間に変化が生じると、位相差信号Aとしては、図11に示すように、期間t11もしくは期間t21に相当するパルス幅をもったパルス信号になる。ここで、一点鎖線で示すパルスは、図10に示した期間t10=t20と同じパルス幅、すなわち標準幅をもったパルスを示すものである。この図11のタイミングチャートの位相差信号Aにおける期間t11は、奇数番目のパルスの期間を示し、期間t21は、偶数番目のパルスの期間を示している。このように、本発明に係る信号処理回路では、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスとで、異なる挙動をとることは注目すべきである。すなわち、この例では、奇数番目のパルスは、パルス幅がいずれも基準幅より小さくなっているのに対し、偶数番目のパルスは、パルス幅がいずれも基準幅より大きくなっている。
【0044】
ここで、実際のパルス幅と基準幅との差は、作用した角速度ωyの大きさに対応する。すなわち、大きな角速度が作用すれば、それだけ大きなコリオリ力が作用し、振動子130は大きく傾斜するので、静電容量値は大きく変化し、遅延時間も大きく変化することになる。また、作用する角速度ωyの向き(右まわりか、左まわりか)は、実際のパルス幅が基準幅より大きくなるか、小さくなるか、を決定する要因となる。すなわち、図7あるいは図8の例では、図において左まわりの矢印で示す角速度ωyが作用した場合を示したが、逆に、右まわりの矢印で示す角速度−ωyが作用した場合には(本出願では、図において左まわりの角速度を正、右まわりの角速度を負と便宜上定義している)、コリオリ力の方向が逆転し、これまで述べてきた現象と逆の現象が起こることになる。その結果、図11に示す位相差信号Aとは逆に、奇数番目のパルスは、パルス幅が基準幅より大きくなり、偶数番目のパルスは、パルス幅が基準幅より小さくなる。
【0045】
このように、位相差信号Aに含まれる1つのパルスのパルス幅を測定し、交流駆動信号φとの位相関係に基づいて、この1つのパルスが奇数番目のパルスか偶数番目のパルスかを特定し、測定したパルス幅を基準幅と比較することにより、瞬時の角速度ωyの向きと大きさとを認識することができる。したがって、時系列で得られるパルスのパルス幅を次々と測定してゆけば、角速度の値を連続的に得ることができる。また、パルス幅の積算値を求めるようにすれば、ある程度の期間内の平均的な角速度値を得ることができる。
【0046】
ただ、位相差信号Aに含まれる奇数番目のパルスと偶数番目のパルスとは、互いに異なる挙動をとるため、別個の取り扱いをする必要がある。たとえば積算値を求める場合、全パルスについてのパルス幅をそのまま積算してしまうと正しい結果は得られない。すなわち、図11に示す位相差信号Aの全パルスについてのパルス幅を積算すると、基準幅よりも小さなパルス幅をもった奇数番目のパルスと基準幅よりも大きなパルス幅をもった偶数番目のパルスとが相殺されてしまう。そこで、位相差信号Aを周期φ/2ごとの期間に区切り、奇数番目のパルスが存在する奇数番目の期間と、偶数番目のパルスが存在する偶数番目の期間とを定義し、奇数番目のパルスについてのパルス幅と偶数番目のパルスについてのパルス幅とを別個独立して求めるようにすればよい。
【0047】
たとえば、図11に示すように、第3の周期信号φ3を用意する。この第3の周期信号φ3は、周期φをもつデューティー比50%の矩形波信号であるが、図にハッチングを施したハイレベルの区間に、位相差信号Aの奇数番目のパルス(期間t11のパルス幅をもつパルス)が含まれるように位相を調整した信号である。たとえば、試作用のセンサ本体部と試作用の回路とを用いて、位相差信号Aを実験的に求め、この位相差信号Aに含まれる奇数番目のパルスの中心位置が、第3の周期信号φ3のハイレベル区間の中心位置に一致するように、位相差の調整を行うようにすればよい。そして、この第3の周期信号φ3と、位相差信号Aとの論理積に相当する信号を求めれば、この信号には、奇数番目のパルスのみが含まれることになるので、奇数番目のパルスのパルス幅のみを選択的に取り出すことが可能になる。逆に、図11に示すように、第3の周期信号φ3に対して論理反転状態にある第4の周期信号φ3を用意し、この第4の周期信号φ3と、位相差信号Aとの論理積に相当する信号を求めれば、この信号には、偶数番目のパルスのみが含まれることになるので、偶数番目のパルスのパルス幅のみを選択的に取り出すことが可能になる。
【0048】
なお、パルス幅を積算するには、たとえば、選択的に取り出した一方のパルスを含んだ信号を平滑用コンデンサに与えて平滑化し、アナログ電圧値として積算値を得る手法を採ることもできるし、あるいは、周期φに対して十分に短い周期で動作するカウンタによりパルス幅をカウントし、デジタルカウント値として積算値を得る手法を採ることもできる。
【0049】
こうして得られた奇数番目のパルスについてのパルス幅も、偶数番目のパルスについてのパルス幅も、いずれも角速度ωyの向きおよび大きさに関する情報を有している。すなわち、前者は、図11に示す位相差信号Aの期間t11に相当するものであるから、標準幅よりも小さければ、左まわりの角速度ωyの作用を示し、標準幅よりも大きければ、右まわりの角速度−ωyの作用を示すことになる。逆に、後者は、図11に示す位相差信号Aの期間t21に相当するものであるから、標準幅よりも大きければ、左まわりの角速度ωyの作用を示し、標準幅よりも小さければ、右まわりの角速度−ωyの作用を示すことになる。また、いずれの場合も、標準幅と実際のパルス幅との差が、作用した角速度の大きさを示すことになる。
【0050】
このように、奇数番目のパルスについてのパルス幅も、偶数番目のパルスについてのパルス幅も、いずれも角速度ωyの向きおよび大きさに関する情報を有しているので、原理的には、いずれか一方だけを用いて角速度の検出が可能である。しかしながら、精度の高い検出値を得る上では、両方のパルス幅をともに利用するのが好ましい。そのためには、奇数番目のパルスについてのパルス幅と、偶数番目のパルスについてのパルス幅との差をとるようにすればよい。同じ角速度が作用した場合、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスとは、一方のパルス幅が大きくなると、他方のパルス幅は小さくなるという相補的な挙動をとるため、両者の差をとることにより、両方をともに利用した検出が可能になる。このように、奇数番目のパルスと偶数番目のパルスとの双方を利用した検出を行うことができる、より実用的な信号処理回路を以下に述べる。
【0051】
§4. 角速度を検出するための実用的な信号処理回路
図12は、本発明に係る角速度センサに用いる実用的な信号処理回路を示す回路図である。この信号処理回路は、検出用回路71と駆動用回路72とによって構成されている。検出用回路71は、図1に示すセンサ本体部を用いて、Y軸まわりに作用する角速度ωyを検出するための回路であり、駆動用回路72は、そのような検出を行う際に、振動子130をZ軸方向に振動させるための駆動を行う回路である。
【0052】
ここで、検出用回路71の上段に示された抵抗素子R1,R2、容量素子C1,C2、排他的論理和演算を行う論理回路L1は、図9に示した回路の各構成要素と全く同じものである。また、第1の信号供給回路10は、第1の周期信号φ1を発生させる回路を示しており、第2の信号供給回路20は、第2の周期信号φ2を発生させる回路を示している。この信号処理回路では、更に、第3の周期信号φ3を発生させて入力端子T4に与える第3の信号供給回路30と、第4の周期信号φ3を発生させて入力端子T5に与える第4の信号供給回路40とが設けられている。ここで、第3の周期信号φ3,第4の周期信号φ3は、図11のタイミングチャートに示された各信号である。
【0053】
論理回路L2は、出力端子T3に得られた位相差信号Aと、入力端子T4に与えられた第3の周期信号φ3との論理積演算を行い、出力信号A1を得る回路である。また、論理回路L3は、出力端子T3に得られた位相差信号Aを論理反転し、反転位相差信号Aを求める回路であり、論理回路L4は、この反転位相差信号Aと、入力端子T5に与えられた第4の周期信号φ3との論理積演算を行い、出力信号A2を得る回路である。更に、論理回路L5は、出力信号A1と出力信号A2との論理和演算を行い、出力信号Bを求める回路であり、その後段に接続された積算回路50は、出力信号Bに含まれる全パルスのパルス幅を積算し、積算値を示す出力信号Cを出力する回路である。かくして、出力端子T6には、所定の積算値を示す出力信号Cが得られることになる。
【0054】
一方、駆動用回路72は、実質的に、駆動信号供給回路60によって構成される回路である。この駆動信号供給回路60は、駆動用容量素子C5に対して供給する交流駆動信号Uを発生させる回路である。交流駆動信号Uは、既に述べたように、周期φをもった周期信号であり、この交流駆動信号Uを第5の容量素子C5に供給することにより、振動子130をZ軸方向に振動させることができる。
【0055】
さて、この図12に示す信号処理回路の動作を図13のタイミングチャートに基づいて説明しよう。この回路の出力端子T3に、図13に示すような位相差信号Aが得られることは既に§3で述べたとおりである。ここで、一点鎖線で示すパルスは、角速度が作用していない状態で得られる標準幅をもったパルスである。この例では、左まわりの角速度ωyの作用により、奇数番目のパルスのパルス幅(期間t11)は標準幅より小さくなり、偶数番目のパルスのパルス幅(期間t21)は標準幅より大きくなっている。論理回路L2では、この位相差信号Aと第3の周期信号φ3との論理積演算が行われ、出力信号A1が得られる。出力信号A1は、位相差信号A内の奇数番目のパルスのみを抽出した信号になる。一方、論理回路L3で反転された反転位相差信号Aの波形と、入力端子T5に与えられる第4の周期信号φ3の波形とは、図13に示すとおりになり、論理回路L4の出力信号A2は、図示のように、所定の期間t21に相当するパルス幅をもったパルスになる。ここで、期間t21と期間t21とは、相補的な関係にある。すなわち、t21+2・t21=φ/2(半周期)の関係にあるので、期間t21が大きくなれば、期間t21は小さくなり、期間t21が小さくなれば、期間t21は大きくなる。
【0056】
論理回路L5では、信号A1と信号A2との論理和信号Bが得られるが、この論理和信号Bは、図13に示すように、期間t11(奇数番目のパルスのパルス幅)をもったパルスと、期間t21(偶数番目のパルスのパルス幅に対して相補的な値)をもったパルスと、を含む信号になる。このため、論理和信号Bに含まれる全パルスのパルス幅の積算値Sは、位相差信号Aの奇数番目のパルスについての積算値と、偶数番目のパルスについての積算値との差に相当する値になる。積算回路50は、この積算値Sを示す出力信号Cを出力端子T6に与える。積算値Sは、図13の最下段に示すハッチング部分の面積の合計に相当する。
【0057】
この積算値Sと角速度ωyとの間には、たとえば、図14のグラフに示すような関係がある。なお、図14では、説明の便宜上、両者間の線形関係を示すグラフを示したが、実際には、両者間の関係は必ずしも線形関係にはならない。しかしながら、両者の関係は必ず単調増加(あるいは単調減少)関数となり、積算値Sと角速度ωyとの間には、必ず1対1の対応関係が得られる。したがって、積算値Sが特定されれば、必ず角速度ωyの値が特定されることになる。図14に示す線形関係のグラフの場合、積算値Sが基準積算値S0(角速度のない状態で得られる標準幅をもったパルスについての積算値)をとる場合には、Y軸まわりの角速度ωy=0であることを示しており、基準積算値S0よりも大きな積算値S0+ΔSをとる場合には、Y軸まわりの角速度ωyが正の値(たとえば左まわり)であることを示し、基準積算値S0よりも小さな積算値S0−ΔSをとる場合には、Y軸まわりの角速度ωyが負の値(たとえば右まわり)であることを示している。
【0058】
なお、第1の周期信号φ1と第2の周期信号φ2との間に所定の位相差pを設定する理由は、基準積算値S0を零でない所定の値に設定するためである。すなわち、位相差p=0に設定すると、基準積算値S0=0となってしまい、角速度の向き(右まわりか、左まわりか)について正しい情報を得ることができなくなる。位相差pを予め設けておけば、基準積算値S0を零でない所定の値に設定することができ、実際に得られた積算値Sが、この基準積算値S0より大きいか、小さいか、という情報により、作用した角速度の向きを認識することができ、実際に得られた積算値Sと基準積算値S0との差ΔSにより、作用した角速度の大きさを認識することができるのである。ΔSがある程度大きくなっても、角速度の向きを正しく認識できるようにするためには、基準積算値S0をできるだけ大きな値に設定するのが好ましい。そのためには、位相差p=π/2に設定するのが最も好ましい。
【0059】
§5. その他の実施形態
以上、本発明を図示する基本的な実施形態に基づいて説明したが、ここでは、本発明の別な実施形態をいくつか述べておく。
【0060】
(1) 角速度ωxの検出
これまで、図1に示す構造をもったセンサ本体部を用いて、Y軸まわりに作用した角速度ωyを検出するための信号処理回路を述べてきたが、この図1に示す角速度センサは、Y軸まわりの角速度ωyとともに、X軸まわりの角速度ωxを検出する機能を有する。Y軸まわりの角速度ωyは、質量mの振動子130を速度VzでZ軸方向に振動させながら、X軸方向に作用するコリオリ力Fx(Fx=2・m・Vz・ωy)を測定すれば求めることができた。同様に、X軸まわりの角速度ωxは、質量mの振動子130を速度VzでZ軸方向に振動させながら、Y軸方向に作用するコリオリ力Fy(Fy=2・m・Vz・ωx)を測定すればよい。
【0061】
図12の検出用回路71は、X軸上に配置された第1の容量素子C1および第2の容量素子C2を組み込んだ信号処理回路であり、出力端子T6には、コリオリ力Fxに基づく角速度ωyの検出値が得られた。そこで、この検出用回路71と全く同じ回路を用意し、第1の容量素子C1および第2の容量素子C2の部分を、それぞれ第3の容量素子C3および第4の容量素子C4に置き換えれば、出力端子T6には、コリオリ力Fyに基づく角速度ωxの検出値が得られることになる。ここでは、このように、検出用回路71におけるC1,C2を、C3,C4に置き換えた回路を検出用回路73と呼ぶことにする。
【0062】
図1に示すセンサ本体部は、本来、角速度ωx,ωyを同時に検出することができる構造をもっている。すなわち、図2および図3に示す各電極のうち、電極E15,E25(容量素子C5)は、振動子130をZ軸方向に振動させるために用いられ、電極E11,E21(容量素子C1)および電極E12,E22(容量素子C2)はコリオリ力Fxに基づいて角速度ωyを検出するために用いられ、電極E13,E23(容量素子C3)および電極E14,E24(容量素子C4)はコリオリ力Fyに基づいて角速度ωxを検出するために用いられる。したがって、このセンサ本体部に二軸角速度センサとしての機能をもたせるためには、図12に示す検出用回路71および駆動用回路72の他に、上述した検出用回路73を用意しておけばよい。駆動用回路72を用いて振動子130をZ軸方向に振動させれば、検出用回路71の出力端子T6には、角速度ωyが得られ、検出用回路73の出力端子T6には、角速度ωxが得られることになる。
【0063】
(2) 単一の容量素子を用いた検出
これまで述べてきた例では、1つの軸まわりの角速度検出に、一対の容量素子を用いている。たとえば、角速度ωyの検出には、容量素子C1,C2が用いられ、角速度ωxの検出には、容量素子C3,C4が用いられる。このように一対の容量素子を用いる形態は、単一の容量素子を用いる形態に比べて検出精度を高めることができるので、実用上は好ましい実施形態である。しかしながら、本発明の技術思想は、一対の容量素子を用いた形態に限定されるものではない。ここでは、参考のために、単一の容量素子を用いた場合でも、角速度の検出が可能なことを示しておく。
【0064】
たとえば、単一の容量素子C1のみを用いても、角速度ωyの検出が可能なことを示そう。この場合、容量素子C2は不要になるが、その代わりに、所定の固定容量をもった固定容量素子C0を用いるようにすればよい。すなわち、図12に示す検出用回路71において、容量素子C2を固定容量素子C0に置き換えればよい。容量素子C2は、図1に示すセンサ本体部の電極E12,E22によって構成される可変容量素子であったが、ここで用いる固定容量素子C0は、静電容量値が固定の素子であり、どこに設けてもかまわない。たとえば、検出用回路71を実装するための回路基板上に、コンデンサ素子として設けておけば十分である。
【0065】
いま、図7に示すように、振動子130が速度+Vzをもって運動中に、角速度ωyが作用したときの状態を考えると、既に述べたように、コリオリ力+Fxの作用により、容量素子C1の電極間隔は、角速度ωyが作用していなかった場合に比べて小さくなる。同様に、図8に示すように、振動子130が速度−Vzをもって運動中に、角速度ωyが作用したときの状態を考えると、既に述べたように、コリオリ力−Fxの作用により、容量素子C1の電極間隔は、角速度ωyが作用していなかった場合に比べて大きくなる。このように、単一の容量素子C1にのみ着目しても、やはりコリオリ力の作用による静電容量値の変化は生じているのである。したがって、単一の容量素子C1のみを用いた場合でも、図11に示すタイミングチャートにおいて、遅延信号D1が得られることには変わりはない。
【0066】
ただ、可変容量素子C2の代わりに、固定容量素子C0を用いた場合、もう一方の遅延信号D2は、図11のタイミングチャートに示すものとは若干異なってくる。すなわち、静電容量値が固定であるため、周期信号φ2を常に一定の遅延時間だけ遅らせた固定の信号になる。しかしながら、遅延信号D1は角速度の作用に応じて変化する信号であるため、両者の位相差を示す位相差信号Aには、角速度の作用を示す信号成分が含まれていることになり、既に述べたとおりの動作により、角速度の検出が可能である。
【0067】
(3) 別な振動態様
これまで述べた例は、電極E15,E25からなる第5の容量素子に交流駆動信号Uを与えて、振動子130をZ軸方向に振動させていたが、振動子130の振動方向は必ずしもZ軸方向に限定する必要はない。たとえば、図15に示すような2種類の交流駆動信号U1,U2(互いに位相差がπであるデューティ比50%の矩形波信号)を用意し、第1の交流駆動信号U1を第1の容量素子C1に与え、第2の交流駆動信号U2を第2の容量素子C2に与えれば、振動子130は、図示のようなX軸方向の速度成分VxをもってX軸方向に振動することになる。
【0068】
このように、振動子130をX軸方向に振動させた状態において、たとえば、容量素子C3,C4を用いてY軸方向に作用するコリオリ力Fyを検出するようにすれば、Z軸まわりの角速度ωzを検出することが可能になる。あるいは、容量素子C5および固定容量素子C0を用いてZ軸方向に作用するコリオリ力Fzを検出するようにすれば、Y軸まわりの角速度ωyを検出することが可能になる。
【0069】
なお、いずれの振動態様をとる場合でも、振動子130を最も効率的に振動させることができる共振周波数をもった交流駆動信号Uを与え、この共振周波数で振動させるのが好ましい。共振周波数の値は、たとえば、試作品について種々の周波数の交流駆動信号を与える実験を行えば求めることができる。
【0070】
(4) センサ本体部のより実用的な構造
図1に示すセンサ本体部の構造は、本発明の一実施形態を示すものであり、この他にも種々の構造のものを用いることが可能である。たとえば、図16は、本発明に用いるセンサ本体部のより実用的な構造を示す側断面図である。可撓性をもった変位基板210の上に、固定基板220が取り付けられている。固定基板220の外周部には脚部221が形成されており、この脚部221の底面が変位基板210の上面に固着されている。したがって、変位基板210と固定基板220とは所定間隔を隔てて、平行な状態に支持されている。変位基板210の下面中央部には、振動子230が固着されている。また、この振動子230の周囲には、台座240が設けられており、この台座240によって、変位基板210はベース基板250に対して支持されている。振動子230の上方および下方には、若干の空間が確保されているため、図の上下方向への振動が可能である。
【0071】
図17は、変位基板210の上面図である。この図に示されているように、変位基板210の上面には5枚の変位電極E31〜E35が形成されている。これらは、図2に示す実施形態における変位電極E11〜E15に相当するものである。一方、図18は、固定基板220の下面図である。この固定基板220の下面には、単一の共通電極E40が形成されている。この共通電極E40は、図3に示す実施形態における固定電極E21〜E25に相当するものである。図12の回路図を見ればわかるように、実際の信号処理回路では、各容量素子C1〜C5の一方の電極はいずれも接地されることになる。したがって、一方を共通電極E40とし、この共通電極E40を接地するようにすれば、実用上は支障は生じない。むしろ、構造を単純化する上では、このように一方を共通電極にするのが好ましい。特に、固定基板220にセンサ筐体を兼ねさせるとともに、これを導電性材料で構成すれば、固定基板220自体を共通電極として用いることが可能になり、構造は更に単純化される。
【0072】
(5) 振動子の別な駆動方法
これまで述べた実施形態は、駆動用の容量素子に交流駆動信号を与えることにより、振動子を振動させていたが、振動子に振動エネルギーを供給する方法としては、どのような方法を採ってもかまわない。たとえば、図19に示す実施形態は、図16に示す実施形態において、振動子の駆動方法を磁力を利用した方法に変えた例である。すなわち、台座245の桁上げを行い、振動子230の下方に、磁場発生部300を設置するようにし、この磁場発生部300に対して、駆動信号供給回路310から周期φの交流信号を供給するようにしている。磁場発生部300としては、たとえば、一般的な電磁コイルを用いればよい。振動子230の少なくとも一部を鉄,コバルト,ニッケルなどの磁性材料によって構成しておき、磁場発生部300に周期φの交流信号に基づいた周期磁場を発生させれば、振動子230を図の上下方向に振動させることができる。この場合、駆動用の容量素子C5を構成する変位電極E35は不要になる。
【0073】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係る振動子を用いた角速度センサによれば、コリオリ力の作用により振動子に傾斜が生じるような構成とし、この傾斜に基づく静電容量の変化を2つの周期信号の位相差として検出するようにしたため、信号処理回路を単純化することができ、効率的な角速度検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る角速度センサのセンサ本体部の基本構造を示す側断面図である。
【図2】図1に示すセンサ本体部における変位基板110の上面図である。
【図3】図1に示すセンサ本体部における固定基板120の下面図である。
【図4】図1に示すセンサ本体部において、振動子130を図の上方へ運動させた状態を示す側断面図である。
【図5】図1に示すセンサ本体部において、振動子130を図の下方へ運動させた状態を示す側断面図である。
【図6】図1に示すセンサ本体部において、振動子130を図の上下方向へ振動させるために供給する交流駆動信号Uおよび振動子130の速度成分Vzの波形を示すタイミングチャートである。
【図7】図1に示すセンサ本体部において、振動子130が図の上方へ運動中に、Y軸まわりの角速度ωyに基づくX軸方向のコリオリ力+Fxが作用した状態を示す側断面図である。
【図8】図1に示すセンサ本体部において、振動子130が図の下方へ運動中に、Y軸まわりの角速度ωyに基づくX軸方向のコリオリ力−Fxが作用した状態を示す側断面図である。
【図9】本発明に係る角速度センサに用いる信号処理回路の一部を示す回路図である。
【図10】図9に示す信号処理回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】図9に示す信号処理回路の動作を説明するための更に別なタイミングチャートである。
【図12】本発明に係る角速度センサに用いる実用的な信号処理回路を示す回路図である。
【図13】図12に示す信号処理回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図14】図12に示す信号処理回路によって得られる積算値Sと角速度ωyとの関係を示すグラフである。
【図15】図1に示すセンサ本体部において、振動子130を図の左右方向へ振動させるために供給する交流駆動信号U1,U2および振動子130の速度成分Vxの波形を示すタイミングチャートである。
【図16】本発明に用いるセンサ本体部のより実用的な構造を示す側断面図である。
【図17】図16に示すセンサ本体部における変位基板210の上面図である。
【図18】図16に示すセンサ本体部における固定基板220の下面図である。
【図19】図16に示すセンサ本体部において、振動子の駆動方法を変えた実施形態の構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
10〜40…信号供給回路
50…積算回路
60…駆動信号供給回路
71…検出用回路
72…駆動用回路
110…変位基板
120…固定基板
130…振動子
140…装置筐体
210…変位基板
220…固定基板
221…脚部
230…振動子
240,245…台座
250…ベース基板
300…磁場発生部
310…駆動信号供給回路
A…位相差信号
A1,A2…論理積信号
…反転位相差信号
B…出力信号
C…出力信号
C1〜C5…容量素子
D1,D2…遅延信号
d1,d2,d11,d12,d21,d22,t21…遅延時間
E11〜E15…変位電極
E21〜E25…固定電極
E31〜E35…変位電極
E40…共通電極
G…重心
L1〜L5…論理素子
p…位相差
P1,P2…奇数番目の期間,偶数番目の期間
R1,R2…抵抗素子
S…積算値
S0…基準積算値
T1〜T6…入出力端子
t1,t2,t10,t11,t20,t21…期間(パルス幅)
U,U1,U2…交流駆動信号
Vx,Vz…X軸,Z軸方向の速度成分
φ1,φ2,φ3,φ3…周期φの周期信号
ωy…Y軸まわりの角速度

Claims (10)

  1. 第1の軸方向に振動中の振動子に対して、前記第1の軸に直交する第2の軸方向に作用するコリオリ力を検出することにより、前記第1の軸および前記第2の軸の双方に直交する第3の軸まわりの角速度を求める角速度センサであって、
    センサを構成する要素の一部もしくは全部を収容する装置筐体と、
    前記装置筐体内に収容された振動子と、
    前記第1の軸方向に振動することができ、かつ、前記第2の軸方向のコリオリ力の作用により変位することができるように、前記振動子を前記装置筐体に対して所定の自由度をもって支持する支持手段と、
    前記振動子を前記第1の軸方向に、所定の周期φで振動させる駆動手段と、
    前記振動子側に形成された変位電極と、前記装置筐体側に形成された固定電極と、を有し、前記第2の軸の正方向を向いたコリオリ力が作用したとき、前記振動子の当該コリオリ力の作用に起因する変位により静電容量値が小さくなり、前記第2の軸の負方向を向いたコリオリ力が作用したとき、前記振動子の当該コリオリ力の作用に起因する変位により静電容量値が大きくなるように配置された第1の容量素子と、
    前記振動子側に形成された変位電極と、前記装置筐体側に形成された固定電極と、を有し、前記第2の軸の正方向を向いたコリオリ力が作用したとき、前記振動子の当該コリオリ力の作用に起因する変位により静電容量値が大きくなり、前記第2の軸の負方向を向いたコリオリ力が作用したとき、前記振動子の当該コリオリ力の作用に起因する変位により静電容量値が小さくなるように配置された第2の容量素子と、
    前記第1の容量素子の静電容量値に起因して遅延時間が定まる第1の遅延回路と、
    前記第2の容量素子の静電容量値に起因して遅延時間が定まる第2の遅延回路と、
    前記周期φをもった第1の周期信号を発生し、この第1の周期信号を前記第1の遅延回路に与える第1の信号供給回路と、
    前記周期φをもった第2の周期信号を発生し、この第2の周期信号を前記第2の遅延回路に与える第2の信号供給回路と、
    前記第1の遅延回路から出力される第1の遅延信号と、前記第2の遅延回路から出力される第2の遅延信号と、の位相差を示す位相差信号を生成する位相差検出回路と、
    前記位相差信号を前記周期φの半分に相当する周期φ/2ごとの期間に区切り、奇数番目の期間に示された位相差および偶数番目の期間に示された位相差の少なくとも一方に基づいて第3の軸まわりの角速度を検出する角速度検出回路と、
    を備えることを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  2. 請求項1に記載の角速度センサにおいて、
    第2の容量素子として、振動子側に形成された変位電極と、装置筐体側に形成された固定電極と、を有する可変容量素子を用いる代わりに、所定の固定容量をもった固定容量素子を用いるようにしたことを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  3. 請求項1または2に記載の角速度センサにおいて、
    角速度検出回路が、奇数番目の期間に示された位相差と偶数番目の期間に示された位相差との差に基づいて角速度を検出することを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  4. 請求項1または2に記載の角速度センサにおいて、
    位相差検出回路が、第1の遅延信号と第2の遅延信号との排他的論理和を求める第1の論理素子により位相差検出を行い、この第1の論理素子が出力する位相差信号のパルス幅によって位相差を示すようにし、
    角速度検出回路が、周期φをもった第3の周期信号を発生する第3の信号供給回路と、この第3の周期信号と前記位相差信号との論理積を求める第2の論理素子と、を有し、この第2の論理素子により、前記位相差信号の奇数番目のパルスと偶数番目のパルスとを分離し、前記奇数番目のパルスのパルス幅および前記偶数番目のパルスのパルス幅の少なくとも一方に基づいて角速度を検出することを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  5. 請求項1または2に記載の角速度センサにおいて、
    位相差検出回路が、第1の遅延信号と第2の遅延信号との排他的論理和を求める第1の論理素子により位相差検出を行い、この第1の論理素子が出力する位相差信号のパルス幅によって位相差を示すようにし、
    角速度検出回路が、周期φをもった第3の周期信号を発生する第3の信号供給回路と、この第3の周期信号に対して論理反転状態にある第4の周期信号を発生する第4の信号供給回路と、前記第3の周期信号と前記位相差信号との論理積を求める第2の論理素子と、前記位相差信号に対して論理反転状態にある反転位相差信号を発生する第3の論理素子と、前記第4の周期信号と前記反転位相差信号との論理積を求める第4の論理素子と、前記第2の論理素子の出力信号と前記第4の論理素子の出力信号との論理和を求める第5の論理素子と、を有し、前記第5の論理素子の出力信号のパルス幅に基づいて角速度を検出することを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    第2の信号供給回路が、第1の信号供給回路が発生する第1の周期信号に対して所定の位相差pをもった第2の周期信号を発生させ、
    角速度検出回路が、コリオリ力が作用していない状態における位相差を基準値として定義し、実際に検出された位相差が前記基準値より大きい場合には、その差分を第1の回転方向に関する角速度として出力し、実際に検出された位相差が前記基準値より小さい場合には、その差分を、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に関する角速度として出力することを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    駆動手段に、振動子側に形成された変位電極と装置筐体側に形成された固定電極とからなる駆動用容量素子と、この駆動用容量素子に対して周期φの交流駆動信号を供給する駆動信号供給回路と、を設け、前記駆動用容量素子内に作用するクーロン力により振動子を振動させることを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の角速度センサにおいて、
    振動子の少なくとも一部を磁性材料によって構成し、
    駆動手段に、前記振動子の磁性材料部分に作用する磁場を発生させる磁場発生部と、この磁場発生部に周期φの交流信号を供給する駆動信号供給回路と、を設け、前記磁場発生部に前記交流信号に基づいた周期的磁場を発生させて振動子を振動させることを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  9. 請求項1に記載の角速度センサにおいて、
    一部分が装置筐体に固定され、かつ、一部分に振動子が固定された可撓性をもった変位基板によって支持手段を構成し、
    前記変位基板に対向するように、前記装置筐体に固定基板を設け、前記変位基板上に形成された変位電極と、前記固定基板上に形成された固定電極と、によって容量素子を構成するようにしたことを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
  10. 請求項9に記載の角速度センサにおいて、
    変位基板に垂直で、かつ、振動子の重心と第3の軸方向とを含む平面を定義し、この平面に対して第1の側に第1の容量素子を形成し、この平面に対して前記第1の側とは逆の第2の側に第2の容量素子を形成したことを特徴とする振動子を用いた角速度センサ。
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