JP3863289B2 - 重合トナー、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合トナーとその製造方法に関し、さらに詳しくは、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電潜像を現像するための重合トナーとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置において形成される静電潜像は、先ず、現像剤により現像され、次いで、形成された現像剤像は、必要に応じて紙等の転写材上に転写された後、加熱、加圧、溶剤蒸気など種々の方式により定着される。
【0003】
これらの装置で用いられるトナーは、一般に、粉砕トナーと重合トナーのふたつに大別される。前者は、熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、離型剤等を溶融混合して均一に分散させて組成物とした後、該組成物を粉砕、分級することにより製造されるトナー(粉砕法トナーともいう)である。後者は、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、離型剤等を均一に溶解または分散せしめた単量体等組成物を、分散安定剤を含有する水または水を中心とする水系分散媒体中に投入し、液滴粒子の粒径が一定になるまで攪拌し、ここに重合開始剤を添加し、さらに高せん断力を有する混合装置を用いて分散し、該単量体組成物を微小な液滴として造粒した後、重合して得られるトナー(重合法トナーともいう)である。
【0004】
粉砕トナーは、その製造工程の都合上、トナー粒子の粒径分布が広くなる傾向にあり、良好な解像度と階調性のある複写画像を得ようとすると微粉と粗粉を除去するために分級を必要とする。その結果として収率が非常に低くなるという欠点があるばかりでなく、着色剤、帯電制御剤、離型剤等の固体微粒子を熱可塑性樹脂中に均一に分散することが困難であり良好な微細画像が得られない、粒径が不均一であるためトナーの流動性、摩擦帯電性等に大きく影響し、トナーの現像性、耐久性能などの特性が安定しない、より微細な粒子を得ることができない、などの諸問題がある。
一方の重合トナーは、着色剤、帯電制御剤、離型剤等を、低粘度の液体状である単量体中に添加し分散させて製造されるため、樹脂中に分散する粉砕法に比べて、充分な分散性が確保される。また、懸濁重合法では、一般に、所望の粒子径のトナー粒子を収率90%以上で得ることができるので、粉砕法に比べて経済的にも有利である。このように懸濁重合法を採用することにより、上記粉砕法の問題点を解決することができ、特に水系媒体を用いた懸濁重合によるトナーの製造法は、重合体粒子の極めてシャープな粒径分布と良好な電気特性は、解像度の優れたトナーを経済的に製造することを可能にした。
【0005】
さらに近年では、トナーが使用される電子写真方式の複写機、プリンター等において、消費電力の低減化が図られている。電子写真方式の中で、特にエネルギーを消費する工程は、感光体から紙などの転写材上にトナーを転写した後、定着する際のいわゆる定着工程である。
一般に、定着のために150℃以上の熱ロールが使用され、そのエネルギー源として電気が使われている。この熱ロール温度を下げることが、省エネルギーの観点より求められている。
また、複写枚数の高速化、印字枚数の高速化が画像形成装置の複合化、パーソナルコンピューターのネットワーク化が進む中で強く要求されてきている。こうした高速複写機や高速プリンターにおいては、短時間定着が必要になっている。
【0006】
トナーの設計において、こうした画像形成装置よりの要求に応えるには、トナーのガラス転移温度を低下させれば良いが、ガラス転移温度を低下させると、トナーの保存中、あるいはトナーボックス中でトナーがブロッキングを起して、凝集体となり、保存性の悪いトナーとなってしまう。
【0007】
一方、電子写真方式によるカラートナーの場合、通常3から4色のカラートナーを現像し、転写材に一度に、あるいは3から4回分けて転写し、その後定着をしている。このことから、白黒画像に比べ定着するトナーの層厚が厚くなり、また、重なる色が均一に溶融することが要求される。そのためには、トナーの定着温度付近での溶融粘度を従来のものと比べて低く設計する必要がある。トナーの溶融粘度を低くする手法としては、従来のトナー用樹脂に比べて、分子量を低くしたり、ガラス転移温度を下げる等の手法があるが、いずれの手法を採る場合でも、ブロッキングを起し易く、保存性の悪いトナーになってしまう。
【0008】
このように、トナーの定着温度の低下、印字速度の高速化およびカラー化に対応できる手法と保存性とは、逆の相関関係にあるが、この逆の相関関係を解決する手法として、従来より、トナー粒子をガラス転移温度の高いポリマーで被覆したコア・シェル構造を有する重合トナー、いわゆるカプセルトナーが提案されている。
【0009】
従来、カプセルトナーの製造法として、例えば特開昭59−62870号公報には、懸濁重合によって形成された核体粒子を、前記核体粒子のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する単量体系を前記核体粒子に吸着させ成長させる重合方法を用いるトナーの製造方法が提案されている。この他にも、カプセルトナーの製造方法は多く検討されているが(例えば、特開昭60−173552号公報、特開平2−259657号公報、特開昭57−45558号公報など)、何れの方法においても、トナー特性が十分に確保できず、より高い性能や精細画像の要求には応え切れていないのが実状である。
【0010】
ところで、粉砕トナー、重合トナー共に、加熱・加圧による定着工程をもつ画像形成方法においては、加熱ローラー等の加熱体の表面にトナーの一部が付着して、後続の転写紙等に転写・定着されるオフセット現象の問題を抱えている。
この問題を解決するために、重合平均分子量1000〜45000のポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、脂肪酸部分ケン化エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、パラフィンワックス、多価アルコールエステル、脂肪酸アミドなどをオフセット防止剤として用いることが提唱されている(特開昭56−87051号公報)。しかしながらこのようなオフセット防止剤(離型剤ともいう)は、通常、重合トナー製造に際して用いる重合性単量体中で、均一に分散されて使用されるが、分子量の高いオレフィン系の離型剤は分散が困難である。低分子量のパラフィン等の離型剤は単量体に溶解されて、均一に分散されるが、トナー粒径の単量体液滴を安定して製造するのが困難であり、こうした種々の問題は小粒径のカプセル構造を有する重合トナーほど大きな問題となった。実際、懸濁重合によってトナーを製造する場合、これらのオフセット防止剤では十分な効果が得られないことが問題とされている(特開昭60−230663号公報)。当該公報においては、離型剤の平均径d1とトナーの平均径d2の比(d1/d2)が0.4〜2.0である静電荷像現像用トナーが提案されたが、トナー粒径より大きい離型剤を用いると、2成分現像法では、キャリヤー表面にフィルミングを起こし、一成分現像法では、現像ロールやブレードにフィルミングを起こすという問題がある。当該公報の実施例によれば、離型剤を更に細かくする方法として、サンドミルで粉砕する方法が提示されているものの、離型剤をこうした湿式粉砕機でトナー粒径以下まで粉砕することは大変時間と手間を要するばかりでなく、微細化に限度があり、粒径分布が広くなるためトナー内に均一に取り込ませることが困難であった。
【0011】
このような離型剤は、通常は、均一にトナー粒子内部に取り込まれて、定着工程で加温・加圧されトナー粒子表面へと移行してその機能を発揮する。トナー粒子表面に離型剤を付着させる方法には、トナーの流動性低下や画像の低下が指摘されている(特開平5−181315号公報など)。そこで当該公報では、離型剤を乳化して微粒子化し、この微粒子に付着させた後、さらに重合を続ける2段重合でワックスを粒子内部に保持させる方法を提案している。また、特開平6−242633号公報では、離型剤のエマルジョンを重合性単量体と共に重合開始剤存在下で重合させてトナーを製造する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は有機溶剤存在下でのトナー粒子の製造方法において、離型剤をエマルジョン化して使用することの提案である。
【0012】
例えば、離型剤であるポリオレフィンワックスを重合温度以上に加温して溶融し、重合性単量体中に均一分散させた後、重合温度まで温度を下げて当該ワックスを析出させる方法が特開昭63−173067号公報に提唱されている。しかし、ワックスを溶解させる温度では重合性単量体組成物の液滴が小さくできないため、現在の微細画像を実現するトナーの製造には適さない。これは、当該公報の実施例にて得られているトナーの粒径は10μm前後であることからも伺える。
特開平6−161144号公報は、常温で固形、かつ重合性単量体に不溶のいわゆるワックス類を離型剤として重合性単量体100重量部当たり1〜7重量部の割合で混合して重合させたトナーであって、トナー粒子径とその内部に取り込まれたワックス粒子径との関係を規定したトナーが、ワックスの分離がなく、フィルミングやブラックスポット、かぶりのない画質に優れたトナーであることを示されている。しかしながら、ここで提唱されているトナーは、離型剤量が少なく十分な定着性は必ずしも期待できないものであった。
特開平5−197193号公報には、離型剤またはそれを含む層の外側にさらに高軟化点樹脂層を有するトナーが、流動性に優れ、低温での定着性に優れたトナーとして紹介されている。この公報の記載によれば、トナーの製造において、重合性単量体に不溶の離型剤の融点(軟化点)以上の温度で重合を行っているが、このような重合方法では離型剤は重合時に必ずしもトナー内部に球形で存在せず、粒子表面にも露出する。当該公報では、このような問題を解消するために高軟化点樹脂層(B層)を厚くしているが、このようなトナーでは定着性が不十分となる。また、重合性単量体に不溶の離型剤は定着性が不十分であり、定着性を得るために、離型剤を当該公報実施例に記載されているような大量に用いると、光沢過剰となり良好な画質が得られないという問題もあった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐オフセット性を持たせる離型剤を含有するトナーであって、低い定着温度をもち、高速印字に対応でき、カラートナーに好適で、かつ、保存性、流動性に優れ、高解像度で良好な画質を実現する重合トナー、およびその製造方法を提供することにある。
かかる従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、本発明者らは、懸濁重合法によりカプセルトナー粒子を製造する方法であって、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤及び離型剤を含有するコア用単量体等組成物を懸濁重合することにより、コア用着色微粒子を製造し、更に、シェル用単量体を添加し、重合することによって製造されるコア・シェル構造を有する重合トナーにおいて、重合温度を前記コア用重合性単量体に可溶の離型剤のASTM D3418−8によって測定される吸熱ピーク温度以下の温度とすることによって、上記目的を達成できることを見いだし、この知見に基づいて、本発明を完成するに到った。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、離型剤を含有するコア用単量体等組成物を懸濁させ、重合開始剤を用いて重合することにより、コア用着色微粒子を製造し、更に、シェル用単量体と重合開始剤を添加し、重合することによって製造されるコア・シェル構造を有する重合トナーであって、
前記離型剤が、コア用単量体に可溶であり、
重合トナー中の離型剤が、トナー断面の球形度に対する離型剤断面の球形度比1.0〜1.5の範囲内で存在し、
離型剤断面形状の最大長径が、同一トナーの最大長の長径の0.3〜0.7倍である
ことを特徴とする重合トナーが提供され、また、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、離型剤を含有するコア用単量体等組成物を懸濁させ、重合開始剤を用いて重合することにより、コア用着色微粒子を製造し、更に、シェル用単量体と重合開始剤を添加し、重合することによってコア・シェル構造を有する重合トナーの製造方法であって、前記離型剤が、コア用単量体に可溶であり、重合温度が前記離型剤のASTM D3418−8によって測定される吸熱ピーク温度以下の温度であることを特徴とする重合トナーの製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、以下のような好ましい実施態様が提供できる。
(1)分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、離型剤を含有するコア用単量体等組成物を懸濁させ、重合開始剤を用いて重合することにより、コア用着色微粒子を製造し、更に、シェル用単量体と重合開始剤を添加し、重合することによってコア・シェル構造を有する重合トナーであって、
前記離型剤が、3官能以上のアルコールとカルボン酸とからなる多官能エステル化合物からなることを特徴とする重合トナー。
(2)前記多官能エステル化合物が、ペンタエリスリトールと炭素数10〜30個のカルボン酸からなるものである前記(1)の重合トナー。
(3)前記多官能エステル化合物が、ペンタエリスリトール=テトラカルボキシレートであることを特徴とする前記(1)の重合トナー。
(4)前記多官能エステル化合物がペンタエリスリトール=テトラミリステートであることを特徴とする前記(1)の重合トナー。
(5)前記多官能エステル化合物がペンタエリスリトール=テトラパルミテートであることを特徴とする前記(1)の重合トナー。
(6)前記多官能エステル化合物がペンタエリスリトール=テトララウレートであることを特徴とする前記(1)の重合トナー。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明のトナーは、懸濁重合法により製造されるトナーの一つであり、コア・シェル構造を有する重合トナーであって、離型剤が、コア用単量体に可溶であり、重合トナー中の離型剤が、トナー断面の球形度に対する離型剤断面の球形度比1.0〜1.5の範囲内で存在し、離型剤断面形状の最大長径が、同一トナーの最大長の長径の0.3〜0.7倍であることを特徴とする重合トナーである。
このようなトナーは、懸濁重合法によるカプセルトナーを製造する法であって、2段階重合法によって製造するのが最も効率がよい。具体的には、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、離型剤を含有するコア用単量体等組成物を懸濁させ、重合開始剤を用いて重合することにより、コア用着色微粒子を製造し、更に、シェル用単量体と重合開始剤を添加し、重合することによってコア・シェル構造を有する重合トナーの製造方法であって、前記離型剤が、コア用単量体に可溶であり、重合温度を前記離型剤のASTM D3418−8によって測定される吸熱ピーク温度以下に設定する本発明の重合トナーの製造方法である。
本発明の重合トナーの製造方法によれば、実質的にトナー表面に離型剤が呈示せず、トナー粒子内部に球形またはそれに準ずる形状で存在する本発明のトナーが、極めて効率よく得られる。
離型剤の吸熱ピークと重合温度との差は、離型剤が反応系内で溶融しない限り特に制限されないが、通常0.5〜60℃、好ましくは1〜50℃、より好ましくは2〜45℃である。離型剤の吸熱ピーク温度が高い(70℃以上)ものでは重合温度との差が大きくても、重合温度自体が十分に高いので反応が効率よく進行するが、吸熱ピーク温度がさほど高くない(70℃未満)場合では、余り重合温度を下げすぎると、重合反応の進行が遅くなるので、吸熱ピークと重合温度との差は小さめになる。
また、本発明において重合温度とは、少なくともコア粒子を製造する際の重合温度であり、好ましくはトナー粒子製造に係わる重合反応時における温度をいう。
【0017】
(コア粒子の製造方法)
コア粒子の製造は、具体的には以下の方法による。
即ち、コア用ビニル系単量体中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤、その他の添加剤等のコア用原材料をビーズミル等の混合分散機で混合し、分散安定剤を含有する水媒体中に分散させ、懸濁液を撹拌し、液滴を形成する。
次いでそこに重合開始剤を添加し、更に液滴をトナーの大きさまで小さくなるように造粒しコア粒子を得る。造粒の方法は、特に限定されないが、高速回転する回転子と、それを取り囲み且つ小孔または櫛歯を有する固定子との間隙に流通させる方法が好適である。
【0018】
単量体組成物分散液の分散状態は、単量体組成物の液滴の体積平均粒径が、2〜10μm、好ましくは2〜9μm、より好ましくは3〜8μmの状態である。液滴の粒径が大きすぎると、トナー粒子が大きくなり、画像の解像度が低下するようになる。
液滴の体積平均粒径/数平均粒径は、1〜3.0、好ましくは1〜2.0である。該液滴の粒径分布が広いと定着温度のばらつきが生じ、かぶり、フィルミングなどの不具合が生じるようになる。
液滴は、好適には、その体積平均粒径±1μmの範囲に30体積%以上、好ましくは60体積%以上存在する粒径分布のものである。
【0019】
また、本発明においては、前記単量体組成物分散液を得た後、重合反応器に仕込み、重合することが好ましい。具体的には、分散液調製用の容器で単量体組成物を水媒体に添加して単量体組成物分散液を調製し、当該単量体組成物を別の容器(重合反応用容器)に移送し、該容器に仕込み、重合する。
従来の懸濁重合法のごとく、分散液を重合反応器で得、そのまま重合反応をさせる方法では、反応器内にスケールが生起し、粗大粒子が多量に生成しやすくなる。
【0020】
油溶性開始剤の添加時期は、ビニル系単量体中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤、その他の添加剤を添加し、ビーズミル等により均一に分散させた単量体等組成物を調製し、次いで、この混合液を水系分散媒体中に投入し、良く攪拌して、液滴粒子が均一になってから油溶性重合開始剤を添加、混合して、さらに高速回転せん断型撹拌機を用いて、トナー粒子に近い粒径まで造粒した後、5〜120℃の温度で、好ましくは35〜95℃の温度で懸濁重合する。これより低い温度では、触媒活性が高い重合開始剤を用いることになるので、重合反応の管理が困難になる。逆にこれより高い温度では、離型剤がトナー表面にブリードし易く成るので、保存性が悪くなる。
【0021】
このような方法によって製造されるトナー中の離型剤の断面形状は、球形で、トナー断面の球形度に対する離型剤断面の球形度比が1.0〜1.5であり、1.0〜1.3に入るのが好ましい。球形度比は1.5より大きいと離型剤がトナー表面にブリードし易く、流動性、保存性が低下するので好ましくない。
同様に、トナー中の離型剤の断面の長径は、トナー長径の0.7〜0.3倍で、好ましくは0.5〜0.3倍である。0.7倍を超えると離型剤がトナー表面にブリードし易く、流動性と保存性が低下するので好ましくない。
【0022】
ここで球形度比は、トナー断面球形度に対する離型剤断面の球形度比であり、重合したトナーを水系包埋剤で包埋し、凍結法で超薄切片を作製し、コロジオン膜貼り付きメッシュに切片を載せて、透過型電子顕微鏡を用いて合計50個のサンプルを観察して、長径(dtl)と短径(dts)を測定して、トナー断面の球形度(dtl/dts)を求め、同様に、離型剤断面の球形度(dll/dls)を求め、以下の式より、この比の平均値を算出した値である。
球形度比=離型剤断面の球形度/トナー断面の球形度
=(dll/dls)/(dtl/dts)
離型剤断面形状の最大長径の、同一トナーの最大長の長径に対する比(以下、長径の比という)は、トナー断面の最長径に対する離型剤断面の最長径の倍率で求め、具体的には、離型剤の断面の球形度と同様にして、離型剤の断面の最長径(dll)と同じトナー(dtl)の最長径を測定し、合計50個のサンプルから(dll/dtl)この倍率の平均値として算出した値である。
【0023】
(離型剤)
本発明で用いられる離型剤は、通常トナーの離型剤として用いられるもののうち、コア用重合性単量体に可溶なものである。ここで、重合性単量体に可溶であるとは、25℃で、コア用重合性単量体100gに対して3g以上、好ましくは5g以上溶解することを言い、コア用単量体の主成分である重合性単量体に室温で可溶で、軟化点(又は融点)がコア用単量体の重合温度よりも高いものが、トナー単量体中で離型剤の形状を球形化させ、重合後もトナー表面にブリードさせないので好ましい。
こうした離型剤としては3官能以上のアルコールとカルボン酸との縮合物である多官能エステルワックスが好ましい。
スチレン単量体に非可溶性の離型剤では、1度、コア用重合性単量体中で離型剤の融点以上に加温させることによって、コア用重合性単量体中での球形化は可能である。しかしながら温度を下げる段階とコア用単量体が重合する段階で、トナー表面にブリードし易く、本発明の効果は得られない。
【0024】
3官能以上のアルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ペンタグリセロールなどの脂肪族アルコール;フロログルシトール、クエルシトール、イノシトールなどの脂環式アルコール;トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼンなどの芳香族アルコール;D−エリトロース、L−アラビノース、D−マンノース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ラムノース、サッカロース、マルトース、ラクトース、等の糖;エリトリット、D−トレイット、L−アラビット、アドニット、キシリットなどの糖アルコールなどを挙げることができる。これらのうち、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好適である。
【0025】
カルボン酸としては、酢酸、酪酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、マルガリン酸、アラキジン酸、セロチン酸、メリキシン酸、エリカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘニル酸、テトロル酸、キシメニン酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸などの脂環式カルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、トリメリト酸、ヘミメリト酸などの芳香族カルボン酸等を挙げることができる。これらのうち、炭素数10〜30個、好ましくは13〜25個のカルボン酸、特に該炭素数の脂肪族カルボン酸、より具体的にはパルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸が好適である。
【0026】
本発明に用いる多官能エステル化合物において、3官能以上のアルコールと結合する複数のカルボン酸が、異なるものであっても、同じものであってもよいが、好適には、複数のカルボン酸中の炭素数の最大値と最小値との差が9以下、好ましくは5以下のものである。
具体的には、ペンタエリスリトール=テトラステアレート、ペンタエリスリトール=テトラミリステート、ペンタエリスリトール=テトララウレート、ジペンタエリスリトール=ヘキサラウレート、グリセロール=トリアラキン酸などを挙げることができる。
【0027】
(コア用重合性単量体)
本発明に用いるコア用重合性単量体として、モノビニル系単量体を挙げることができる。具体的にはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物;等のモノビニル系単量体が挙げられる。これらのモノビニル系単量体は、単独で用いてもよいし、複数の単量体を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル系単量体のうち、スチレン系単量体またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体が、好適に用いられる。
【0028】
本発明に用いるコア用重合性単量体は、ガラス転移温度が、通常60℃以下、好ましくは、40〜60℃の重合体を形成しうるものである。ガラス転移温度が高すぎると定着温度が高くなり、低すぎると、保存性が低下する。通常、コア用単量体は1種または2種以上を組み合わせて使用することが多い。
【0029】
重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用する単量体の種類と使用割合に応じて以下の式で算出される計算値(計算Tgという)である。
1/Tg=W1/T1+W2/T2+W3/T3+……
ただし、
Tg:共重合体のガラス転移温度(絶対温度)
W1、W2、W3……:共重合体組成物中における特定の単量体の重量%
T1、 T2、 T3……:その単量体からなるホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
【0030】
使用する単量体が1種類の場合には、当該単量体から形成されるホモポリマーのTgを、本発明における重合体のTgと定義する。例えば、ポリスチレンのTgは、100℃であるから、スチレンを単独で使用する場合には、該単量体は、Tgが100℃の重合体を形成するという。使用する単量体が2種類以上あって、生成する重合体がコポリマーの場合には、使用する単量体の種類と使用割合に応じてコポリマーのTgを算出する。例えば、単量体として、スチレン80.5重量%とn−ブチルアクリレート19.5重量%を用いる場合には、この単量体比で生成するスチレン−n−ブチルアクリレート共重合体のTgは55℃であるから、この単量体は、Tgが55℃の重合体を形成するという。
【0031】
更に架橋性単量体を用いることはホットオフセット改善に有効である。架橋性単量体は、2以上の重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を有する単量体である。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のジビニル化合物;3個以上のビニル基を有する化合物;等を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。使用量は、コア用単量体100重量部当たり、0〜2.0重量部、好ましくは、0.1〜1.0重量部である。
【0032】
(分子量調整剤)
必要に応じて用いられる分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは重合途中に添加することができる。分子量調整剤は、単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0033】
(滑剤・分散助剤)
本発明においては、着色剤のトナー粒子中への均一分散等を目的として、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸あるいはNa、K、Ca、Mg、Zn等の金属からなる脂肪酸金属塩、シラン系またはチタン系カップリング剤等の分散助剤;などを使用してもよい。このような滑剤や分散剤は、着色剤の重量を基準として、通常、1/1000〜1/1程度の割合で使用される。
【0034】
(帯電制御剤)
本発明で用いられる帯電制御剤は、一般的に用いられる正帯電性又は負帯電性の帯電制御剤を用いることが可能である。例えば、カルボキシル基又は含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン等が挙げられる。より具体的には、スピロンブラックTRH(保土谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)、ボントロンE−84(オリエント化学社製)、ボントロンN−01(オリエント化学社製)、コピーブルー−PR(ヘキスト社製)、4級アンモニウム塩含有樹脂、スルホン酸基含有樹脂等の帯電制御樹脂を挙げることができる。上記帯電制御剤は、コア用単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部を用いる。
【0035】
(コア用重合開始剤)
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビス−2−メチル−N−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジ−クロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド;等のジアシルパーオキサイド系、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジ−カーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジ−カーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジ−カーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジ−カーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジ−カーボネート、ジ−メトキシブチルパーオキシジ−カーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジ−カーボネート;等のパーオキシジ−カーボネート類、(α、α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート等の過酸化物類などを例示することができる。また、これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤を挙げることができる。これらのうち、油溶性ラジカル開始剤、特に、10時間半減期の温度が40〜80℃、好ましくは45〜80℃で且つ分子量が300以下の有機過酸化物から選択される油溶性ラジカル開始剤、特にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートやt−ブチルパーオキシネオデカノエートが臭気などの揮発成分による環境破壊が少ないことから好適である。
【0036】
トナー製造のための重合開始剤の使用量は、水媒体基準で通常、0.001〜3重量%である。0.001重量%未満では、重合速度が遅く、3重量%超過では、分子量が低くなるので好ましくない。
【0037】
(マクロモノマー)
また、本発明では、保存性、オフセット性と低温定着性とのバランスを良くするためにマクロモノマーを単量体として用いることが好ましい。マクロモノマーは、分子鎖の末端にビニル重合性官能基を有するもので、数平均分子量が、通常、1、000〜30、000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が小さいものを用いると、重合体粒子の表面部分が柔らかくなり、保存性が低下するようになる。逆に数平均分子量が大きいものを用いると、マクロモノマーの溶融性が悪くなり、定着性が低下するようになる。
【0038】
マクロモノマーは、前記モノビニル系単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有するものが好適である。なお、マクロモノマーのTgは、通常の示差熱計(DSC)等の測定機器で測定される値である。
【0039】
本発明に用いるマクロモノマーの具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独でまたは2種以上を重合して得られる重合体、ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマー、特開平3−203746号公報の第4頁〜第7頁に開示されているものなどを挙げることができる。
【0040】
これらマクロモノマーのうち、高いガラス転移温度を有する、特にスチレン及びメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独でまたはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が、本発明に好適である。
マクロモノマーを使用する場合、その量は、モノビニル系単量体100重量部に対して、通常、0.01〜1重量部、好適には0.03〜0.8重量部である。マクロモノマーの量が少ないと、保存性、オフセット性が向上しない。マクロモノマーの量が極端に多くなると定着性が低下するようになる。
【0041】
(着色剤)
着色剤としては、黒色顔料のカーボンブラックの場合、一次粒径が20〜40nmであるものを用いることが特に好ましい。20nmより小さいとカーボンブラックの分散が得られず、かぶりの多いトナーになり、一方、40nmより大きいと、多価芳香族炭化水素化合物の量が多くなって、安全上の問題が起こることがある。
その他の黒色顔料として、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;などを挙げることができる。
【0042】
さらに、磁性カラートナー用着色剤としての染料は、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリン6、C.I.ベーシックグリン4、C.I.ベーシックグリン6等が、顔料として黄鉛、カドミウムイエロ、ミネラルファーストイエロ、ネーブルイエロ、ネフトールイエロS、ハンザイエロG、パーマネントイエロNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、クロムグリン、酸化クロム、ピグメントグリンB、マラカイトグリンレーキ、ファイナルイエログリンG等が挙げられ、フルカラートナー用マゼンタ着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207および209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29および35等が、マゼンタ染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109および121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21および27、C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39および40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27および28などの塩基性染料等が挙げられる。
【0043】
フルカラートナー用シアン着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16および17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45およびフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0044】
また、フルカラートナー用イエロ着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロ1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83、138および180、C.I.バットイエロ1、3および20等が挙げられる。
【0045】
(分散安定剤)
本発明に用いる分散安定剤は、難水溶性金属化合物のコロイドを含有するものが好適である。難水溶性金属化合物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、などの硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、などの炭酸塩;りん酸カルシウムなどのりん酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄の金属水酸化物;等を挙げることができる。これらのうち、難水溶性の金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、重合体粒子の粒径分布を狭くすることができ、画像の鮮明性向上するので好適である。
【0046】
難水溶性金属水酸化物のコロイドを含有する分散剤は、その製法による制限はないが、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性の金属水酸化物のコロイド、特に水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性の金属水酸化物のコロイドを用いることが好ましい。
【0047】
本発明に用いる難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒径分布D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.5μm以下で、D90(個数粒径分布の90%累積値)が1μm以下であることが好ましい。
【0048】
分散剤は、前記の単量体組成物100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部の割合で使用する。この割合が0.1重量部より少ないと、充分な重合安定性を得ることが困難であり、重合凝集物が生成し易くなる。逆に、20重量部を越えると、水溶液粘度が大きくなって、重合安定性が低くなる。
【0049】
本発明においては、必要に応じて、水溶性高分子を含有する分散剤を用いることができる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等を例示することができる。本発明においては、界面活性剤を使用する必要は無いが、帯電特性の環境依存性が大きくならない範囲で懸濁重合を安定に行うために使用することができる。
【0050】
本発明のトナーの製法によって、コア粒子の体積平均粒径が、通常、2〜10μm、好ましくは2〜9μm、より好ましくは3〜8μmが得られる。また、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)が、通常、1.7以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下のものが得られる。
【0051】
本発明において重合体粒子は、前記コア粒子にシェル用単量体を重合して得る。
【0052】
(シェル用単量体)
本発明において用いるシェル用単量体は、コア粒子を構成する重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を得るものである。シェル用単量体を組成する単量体として、スチレン、メチルメタクリレートなどのガラス転移温度が80℃を超える重合体を形成する単量体をそれぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
シェル用単量体からなる重合体のガラス転移温度が少なくともコア粒子用単量体からなる重合体のガラス転移温度よりも高くなるように設定する必要がある。シェル用単量体により得られる重合体のガラス転移温度は、重合法トナーの保存安定性を向上させるために、通常、50℃超過120℃以下、好ましくは60℃超過110℃以下、より好ましくは80℃超過105℃以下である。
コア粒子用単量体からなる重合体とシェル用単量体からなる重合体との間のガラス転移温度の差は、通常、10℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上である。
【0053】
シェル用単量体は、コア粒子の存在下に重合する際に、コア粒子の数平均粒子径よりも小さい液滴とすることが好ましい。シェル用単量体の液滴の粒径が大きくなると、シェルが均一に付着できないので、保存性が低下傾向になる。
シェル用単量体を小さな液滴とするには、シェル用単量体と水系分散媒体との混合物を、例えば、超音波乳化機などを用いて、微分散処理を行う。得られた水分散液をコア粒子の存在する反応系へ添加することが好ましい。
【0054】
シェル用単量体は、20℃の水に対する溶解度により特に限定されないが、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の、水に対する溶解度の比較的高い単量体はコア粒子に速やかに移行しやすくなるので、保存性のよい重合体粒子を得やすい。
一方、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を用いた場合では、コア粒子へ移行が遅くなるので、前述のごとく、単量体を微小な液滴にして重合することが好ましい。また、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を用いた場合でも、20℃の水に対する溶解度が5重量%以上の有機溶媒を反応系に加えることによりシェル用単量体がコア粒子にすばやく移行するようになり、保存性のよい重合体粒子が得やすくなる。
【0055】
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満のシェル用単量体としては、スチレン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の単量体としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;4−ビニルピリジン等の含窒素ビニル化合物;酢酸ビニル、アクロレインなどが挙げられる。
【0056】
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満のシェル用単量体を用いた場合に好適に使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル;ジメチルホルムアミド等のアミドなどを挙げることができる。有機溶媒は、分散媒体(水と有機溶媒との合計量)に対するシェル用単量体の溶解度が0.1重量%以上となる量を添加する。具体的な有機溶媒の量は有機溶媒、シェル用単量体の種類及び量により異なるが、水系分散媒体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.1〜30重量部である。有機溶媒とシェル用単量体とを反応系に添加する順序は特に限定されないが、コア粒子へのシェル用単量体の移行を促進し保存性のよい重合体粒子を得やすくするために、有機溶媒を先に添加し、その後シェル用単量体を添加するのが好ましい。
【0057】
20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体と0.1重量%以上の単量体とを併用する場合には、先ず20℃の水に対する溶解度が0.1重量%以上の単量体を添加し重合し、次いで有機溶媒を添加し、20℃の水に対する溶解度が0.1重量%未満の単量体を添加し重合することが好ましい。この添加方法によれば、重合法トナーの定着温度を調整するためにコア粒子の存在下に重合する単量体から得られる重合体のTgや、単量体の添加量を適宜制御することができる。
【0058】
本発明においては、シェル用単量体に帯電制御剤を混合した後、反応系に添加して重合させることがトナーの帯電性を向上させるために好ましい。
帯電制御剤は、トナーの帯電性を向上させるために、コアに添加して使用されるのが一般的であるが、もちろん、シェルに添加して用いてもよい。ここで用いる帯電制御剤としては、各種の正帯電または負帯電の帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤の具体例としては、ニグロシンN01(オリエント化学社製)、ニグロシンEX(オリエント化学社製)、スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学社製)、T−77(保土ヶ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)、ボントロンE−84(オリエント化学社製)、4級アンモニウム塩含有樹脂、スルホン酸基含有樹脂等の帯電制御樹脂等を挙げることができる。帯電制御剤は、シェル用単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
【0059】
シェル用単量体をコア粒子の存在下に重合する具体的な方法としては、前記コア粒子を得るために行った重合反応の反応系にシェル用単量体を添加して継続的に重合する方法、又は別の反応系で得たコア粒子を仕込み、これにシェル用単量体を添加して段階的に重合する方法などを挙げることができる。
シェル成分用単量体は反応系中に一括して添加するか、またはプランジャポンプなどのポンプを使用して連続的もしくは断続的に添加することができる。
【0060】
(シェル用ラジカル開始剤)
本発明の重合法トナーにおいて、シェル用単量体を添加する際に、水溶性のラジカル開始剤を添加することがコア−シェル型重合体粒子を得やすくするために好ましい。シェル用単量体の添加の際に水溶性ラジカル開始剤を添加すると、シェル用単量体が移行したコア粒子の外表面近傍に水溶性ラジカル開始剤が進入し、コア粒子表面に重合体(シェル)を形成しやすくなるからであると考えられる。
【0061】
水溶性ラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4、4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2、2−アゾビス−2−メチル−N−1、1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド等のアゾ系開始剤;クメンパーオキシド等の油溶性開始剤とレドックス触媒の組合せ;などを挙げることができる。水溶性ラジカル開始剤の量は、水系媒体基準で、通常、0.001〜1重量%である。
【0062】
本発明の重合法トナーにおいて、コア粒子用単量体(コア粒子を形成する重合体)とシェル用単量体との重量比率は、通常、80/20〜99.9/0.1である。
シェル用単量体の割合が過小であると、保存性改善効果が小さく、逆に、過大であると、定着温度の低減の改善効果が小さくなる。
【0063】
本発明のコアーシェル構造の重合法トナーは、その重合体粒子の体積平均粒子径が、通常、2〜10μm、好ましくは2〜9μm、より好ましくは3〜8μmで、粒径分布(体積平均粒子径/個数平均粒子径)が、通常、1.6以下、好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.3以下の粒径分布がシャープな球形の微粒子である。
【0064】
本発明のコア−シェル構造の重合法トナーにおいて、シェルは、その平均厚みが、0.001〜1.0μm、好ましくは0.003〜0.5μm更に好ましくは0.005〜0.2μmであると考えられる。厚みが大きくなると定着性が低下し、小さくなると保存性が低下する。なお、本発明のトナー構造は、コア部のすべてがシェルで覆われている必要はない。
重合法トナーのコア粒子径、及びシェルの厚みは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作為に選択した粒子の大きさ及びシェル厚みを直接測ることにより得ることができ、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒径及びシェルを形成する単量体の量から算定することができる。
【0065】
(外添剤)
必要に応じて、本発明の方法によって製造されるトナーに外添剤を混合することができる。
外添剤としては、無機粒子や有機樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムなどが挙げられる。有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがメタクリル酸エステル共重合体で、シェルがスチレン重合体で形成されたコアシェル型粒子などが挙げられる。これらのうち、無機酸化物粒子、特に二酸化ケイ素粒子が好適である。また、これらの粒子表面を疎水化処理することができ、疎水化処理された二酸化ケイ素粒子が特に好適である。外添剤の量は、特に限定されないが、トナー粒子100重量部に対して、通常、0.1〜6重量部である。
【0066】
外添剤は2種以上を組み合わせて用いても良い。外添剤を組み合わせて用いる場合には、平均粒子径の異なる2種の無機酸化物粒子または有機樹脂粒子を組み合わせる方法が好適である。
具体的には、平均粒子径5〜20nm、好ましくは7〜18nmの粒子(好適には無機酸化物粒子)と、平均粒子径20nm超過2μm以下、好ましくは30nm〜1μmの粒子(好適には無機酸化物粒子)とを組み合わせて付着させることが好適である。なお、外添剤用の粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡で該粒子を観察し、無作為に100個選び粒子径を測定した値の平均値である。
【0067】
前記2種の外添剤(粒子)の量は、トナー粒子100重量部に対して、平均粒子径5〜20nmの粒子が、通常、0.1〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部、平均粒子径20nm超過2μm以下の粒子が、通常、0.1〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部である。平均粒子径5〜20nm粒子と平均粒子径20nm超過2μm以下粒子との重量比は、通常、1:5〜5:1の範囲、好ましくは3:10〜10:3の範囲である。
外添剤の付着は、通常、外添剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサーなどの混合機に入れて撹拌して行う。
【0068】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
本実施例では、以下の方法で評価した。
(トナー粒径)
重合体粒子の体積平均粒径(dv)及び粒径分布即ち体積平均粒径と平均粒径(dp)との比(dv/dp)はマルチサイザー(コールター社製)により測定した。このマルチサイザーによる測定は、アパーチャー径:100μm、媒体:イソトンII、濃度10%、測定粒子個数:50000個の条件で行った。
【0069】
(シェル厚み)
シェルの厚みが厚ければマルチサイザーや電子顕微鏡で測定が可能であるがシェルの厚みが薄い今回の場合には以下の式を用いて算定した。
x=r(1+s/100)1/3 −r (1)
但しr:シェル用単量体を添加前のコア粒径(マルチサイザーの体積粒径:μm)の半径、x:シェル厚み(μm)、s:シェル用単量体の添加部数(コア単量体100重量部に対し)、ρ:シェル樹脂の密度(g/cm3)
【0070】
(吸熱ピーク温度)
ASTM D3418−8に準拠して測定した。DSC曲線は、温度速度10℃/分で昇温させたとき測定されるものである。また、吸熱ピークがブロードである場合、ピークトップを吸熱ピーク温度と判断した。
使用した示差走査熱量計は、セイコー電子工業社製「SSC5200」である。
【0071】
(トナー断面球形度に対する離型剤断面の球形度比:球形度比)
重合したトナーを水系包埋剤で包埋し、凍結法で超薄切片を作製し、コロジオン膜貼り付きメッシュに切片を載せて、透過型電子顕微鏡を用いて観察する。合計50個のサンプルを観察して、長径(dtl)と短径(dts)を測定して、トナー断面の球形度(dtl/dts)を求め、同様に、離型剤断面の球形度(dll/dls)を求め、以下の式より、この比の平均値を算出した。
球形度比=離型剤断面の球形度/トナー断面の球形度
=(dll/dls)/(dtl/dts)
【0072】
(トナー断面の最長径に対する離型剤断面の最長径の倍率:長径の比)
離型剤の断面の球形度と同様にして、離型剤の断面の最長径(dll)と同じトナー(dtl)の最長径を測定し、合計50個のサンプルから(dll/dtl)この倍率を算出し、平均を求めた。
【0073】
(トナーの体積固有抵抗)
トナーの体積固有抵抗は、誘電体損測定器(商品名:TRS−10型、安藤電気社製)を用い、温度30℃、周波数1kHzの条件下で測定した。
【0074】
(トナーの定着温度)
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(8枚機)の定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。定着試験は、改造プリンターの定着ロールの温度を変化させて、それぞれの温度での現像剤の定着率を測定し、温度−定着率の関係を求めることにより行った。
定着率は、改造プリンターで印刷した試験用紙における黒ベタ領域の、テープ剥離操作前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID前、テープ剥離後の画像濃度をID後とすると、定着率は、次式から算出することができる。
定着率(%)=(ID後/ID前)×100
ここで、テープ剥離操作とは、試験用紙の測定部分に粘着テープ(住友スリーエム社製スコッチメンディングテープ810−3−18)を貼り、一定圧力で押圧して付着させ、その後、一定速度で紙に沿った方向に粘着テープを剥離する一連の操作である。また、画像濃度は、マクベス社製反射式画像濃度測定機を用いて測定した。
この定着試験において、定着率80%の定着ロール温度を現像剤の定着温度と評価した。
【0075】
(流動性)
目開きが各々150μm、75μm及び45μmの3種の篩をこの順に上から重ね、一番上の篩上に測定する現像剤を4g精秤して乗せる。次いで、この重ねた3種の篩を、粉体測定機(細川ミクロン社製;商品名「REOSTAT」)を用いて、振動強度4の条件で、15秒間振動した後、各篩上に残った現像剤の重量を測定する。各測定値を以下の式、及びに入れて、流動性の値を算出する。1サンプルにつき3回測定し、その平均値を求めた。
算出式:
a=(150μm篩に残った現像剤重量(g))/4g×100
b=(75μm篩に残った現像剤重量(g))/4g×100×0.6
c=(45μm篩に残った現像剤重量(g))/4g×100×0.2
流動性(%)=100−(a+b+c)
【0076】
(保存性)
現像剤を密閉可能な容器に入れて、密閉した後、該容器を55℃の温度に保持した恒温水槽の中に沈める。8時間経過した後、恒温水槽から容器を取り出し、容器内の現像剤を42メッシュの篩上に移す。この際、容器内での現像剤の凝集構造を破壊しないように、容器内から現像剤を静かに取り出し、かつ、注意深く篩上に移す。この篩を、前記の粉体測定機を用いて、振動強度4.5の条件で、30秒間振動した後、篩上に残った現像剤の重量を測定し、凝集現像剤の重量とした。最初に容器に入れた現像剤の重量に対する凝集現像剤の重量の割合(重量%)を算出した。1サンプルにつき3回測定し、その平均値を保存性の指標とした。
【0077】
(環境依存性)
前述の改造プリンターを用いて、35℃×80RH%(H/H)環境および10℃×20RH%(L/L)の各環境下で初期から連続印字を行い、反射濃度計(マクベス製)で印字濃度が1.3以上で、かつ、白色度計(日本電色製)で測定した非画像部のカブリが10%以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べ、以下の基準で現像剤による画質の環境依存性を評価した。
○:上記画質を維持できる連続印字枚数が10000枚以上、
△:上記画質を維持できる連続印字枚数が5000以上、10000
枚未満、
×:上記画質を維持できる連続印字枚数が5000枚未満。
【0078】
(耐久性)
前述の改造プリンターで、23℃×50RH%室温環境下で、初期から連続印字を行い、反射濃度計(マクベス製)で測定した印字濃度が1.3以上で、かつ、白色度計(日本電色製)で測定した非画像部のカブリが10%以下の画質を維持できる連続印字枚数を調べ、以下の基準で現像剤による画質の耐久性を評価した。
○:上記画質を維持できる連続印字枚数が10000枚以上、
△:上記画質を維持できる連続印字枚数が5000以上、10000
枚未満、
×:上記画質を維持できる連続印字枚数が5000枚未満。
【0079】
[実施例1]
スチレン80.5部及びn−ブチルアクリレート19.5部からなるコア用単量体(得られる共重合体の計算Tg=55℃)と、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名「#25」)7部、帯電制御剤(保土ケ谷化学社製、商品名「スピロンブラックTRH」)1部、ジビニルベンゼン0.3部、ポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6、Tg=94℃)0.5部、通常の攪拌装置で攪拌、混合した後、メディア型分散機により、均一分散した。ここに、ペンタエリスリトール=テトラミリステート15部(30℃での上記コア用重合性単量体100gに対する溶解量(以下、溶解度という)は10g以上である)を添加、混合、溶解して、コア用重合性単量体組成物(混合液)を得た。コア用重合性単量体組成物の調製はすべて室温で行った。
【0080】
他方、室温で、イオン交換水250部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)9.5部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)5.8部を溶解した水溶液を攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。この分散液の調製はすべて室温で行った。上記コロイドの粒径分布をマイクロトラック粒径分布測定器(日機装社製)で測定したところ、粒径は、D50(個数粒径分布の50%累積値)が0.36μmで、D90(個数粒径分布の90%累積値)が0.80μmであった。このマイクロトラック粒径分布測定器による測定においては、測定レンジ=0.12〜704μm、測定時間=30秒、媒体=イオン交換水の条件で行った。
【0081】
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温で、上記コア用重合性単量体組成物を投入し、液滴が安定するまで攪拌し、そこに重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−ネオデカノエート(日本油脂社製「パーブチルND」)6部添加後、エバラマイルダーを用いて15,000rpmの回転数で30分間高剪断攪拌して、単量体混合物の液滴を造粒した。この造粒した単量体混合物の水分散液を、攪拌翼を装着した10Lの反応器に入れ、60℃で重合反応を開始させ、重合転化率がほぼ100%に達したときに、サンプリングし、コアの粒径を測定した。この結果、体積平均粒径(dv)は6.4μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.28であった。
次に、室温で、メチルメタクリレート(計算Tg=105℃)3部と水30部を超音波乳化機にて微分散化処理して、シェル用重合性単量体の水分散液を得た。シェル用重合性単量体の液滴の粒径は、得られた液滴を1%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液中に濃度3%で加え、マイクロトラック粒径分布測定器で測定したところ、D90が1.6μmであった。
前記シェル用重合性単量体及び水溶性開始剤(三菱ガス化学社製、過硫酸アンモニウム)0.3部を蒸留水65部に溶解し、これを反応器に入れ、4時間重合を継続した後、反応を停止し、pH9.5のトナー粒子の水分散液を得た。
【0082】
シェル用単量体を添加する直前にコア粒子を取り出して測定した体積平均粒径(dv)は6.4μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.28であった。またシェル用単量体量とコア粒径から算定したシェル厚は0.03μmで、rtl/rtsは1.2、トルエン不溶解分2%、DSC測定では63℃付近に離型剤の吸熱ピークと50℃にコアのガラス転移温度が現れた。
【0083】
上記により得たコア・シェル型重合体粒子の水分散液を、室温で、攪拌しながら、硫酸により系のpHを4以下にして酸洗浄(25℃、10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えて再スラリー化し水洗浄を行った。その後、再度、脱水と水洗浄を、室温で、数回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥機にて45℃で一昼夜乾燥を行い、重合体粒子を得た。
【0084】
この重合トナーは体積平均粒径(dv)は6.5μmであり、体積平均粒径(dv)/個数平均粒径(dp)は1.30であった。またシェル用単量体量とコア粒径から算定したシェル厚は0.03μmで、球形度比rtl/rtsは1.2、DSC測定では63±2℃のピーク幅の離型剤の吸熱ピークと、50℃にコアのガラス転移温度が現れた。
【0085】
上記により得られたコア・シェル型重合体粒子100部に、室温で、疎水化処理したコロイダルシリカ(商品名:R−202、日本アエロジル社製)0.6部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合して重合法トナーを調製した。このようにして得られた重合法トナーの体積固有抵抗を測定したところ、11.3logΩ・cmであった。
上記により得られた重合法トナーを用いて定着温度を測定したところ115℃であった。また、このトナーの保存性、流動性は、非常に良好であった。結果を表1に示した。その他の画像評価では、画像濃度が高く、カブリ、ムラの無い、解像度の極めて良好な画像が得られた。
【0086】
[実施例2]
実施例1において、使用したペンタエリスリトール=テトラミリステートをペンタエリスリトール=テトラパルミテート(溶解度は10g以上、吸熱ピークは65℃。)に代えた他は、実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。その結果を表1に示した。また、画像評価では、画像濃度が高く、カブリ、ムラの無い、解像度の極めて良好な画像が得られた。
【0087】
[実施例3]
実施例1において、使用したペンタエリスリトール=テトラミリステートをペンタエリスリトール=テトララウレート(溶解度は10g以上、吸熱ピークは53℃。)に、重合開始剤を1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(日本油脂社製「パーオクタND」)に、重合温度を50℃に代えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表1に示した。
【0088】
[比較例1]
実施例1において、使用したペンタエリスリトール=テトラミリステートの量を3部に代えて製造したトナーで、その長径の比が0.2であるものを用いたこと以外は実施例1と同様にして実施した。結果は表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、使用したペンタエリスリトール=テトラミリステートの量を25部に代えて製造したトナーで、その長径の比が0.8であるものを用いた他は実施例1と同様にして実施した。結果は表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
[実施例4]
使用したペンタエリスリトール=テトララウレートをジペンタエリスリトール=ヘキサラウレート(溶解度は10g以上、吸熱ピークは55℃。)に代えた他は実施例3と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。
【0091】
[比較例3]
実施例1において、使用したペンタエリスリトール=テトラミリステートを、パラフィンワックス(溶解度は1g未満、吸熱ピークは60℃。)に換え、60℃で、エバラマイルダーを用い単量体混合物の液滴を造粒し、重合開始剤はt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製「パーブチルO」)に変え、重合温度を60℃から90℃に変えた他は実施例1と同様にして重合体粒子及びトナーを得た。得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。
【0092】
[比較例4]
実施例1において、使用したペンタエリスリトール=テトラミリステートを、予めスチレン中でビーズミルを用いて湿式粉砕した数平均分子量2200の低分子量ポリプロピレン(溶解度は1g未満、吸熱ピークは65℃。)に代えた他は同様にして重合体粒子及びトナーを得た。
得られた重合体粒子及びトナーの評価結果を表2に示した。
【0093】
【表2】
【0094】
【発明の効果】
本発明の重合法トナーは、低い定着温度と良好な耐オフセット性を有し、しかも保存性に優れており、高速印刷用画像形成装置に好適に使用できる。
Claims (2)
- 分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、離型剤を含有するコア用単量体等組成物を懸濁させ、重合開始剤を用いて重合することにより、コア用着色微粒子を製造し、更に、シェル用単量体と重合開始剤を添加し、重合することによって製造されるコア・シェル構造を有する重合トナーであって、
前記離型剤が、コア用単量体に可溶な、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとカルボン酸との縮合物であり、
重合温度が、前記離型剤のASTM D3418−8によって測定される吸熱ピーク温度以下の温度であり、
重合トナー中の離型剤が、トナー断面の球形度に対する離型剤断面の球形度比1.0〜1.5の範囲内で存在し、離型剤断面形状の最大長径が、同一トナーの最大長の長径の0.3〜0.7倍であることを特徴とする重合トナー。 - 分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも重合性単量体、着色剤、離型剤を含有するコア用単量体等組成物を懸濁させ、重合開始剤を用いて重合することにより、コア用着色微粒子を製造し、更に、シェル用単量体と重合開始剤を添加し、重合することによってコア・シェル構造を有する重合トナーを製造する方法であって、
前記離型剤が、コア用単量体に可溶な、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとカルボン酸との縮合物であり、
重合温度が前記離型剤のASTM D3418−8によって測定される吸熱ピーク温度以下の温度であり、
重合トナー中の離型剤が、トナー断面の球形度に対する離型剤断面の球形度比1.0〜1.5の範囲内で存在し、離型剤断面形状の最大長径が、同一トナーの最大長の長径の0.3〜0.7倍であることを特徴とする重合トナーの製造方法。
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