JP3862820B2 - 柱・柱接合金物および接合構造 - Google Patents

柱・柱接合金物および接合構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、上下の角形鋼管柱を高力ボルト等で接合する柱・柱接合金物および接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、上下の鋼管柱を接合する場合、現場溶接によっている。しかし、現場溶接によると、溶接品質上の問題点があり、工期もかかり、またコストが高くなるという問題点もある。そのため、無溶接で接合する構造が望まれる。
従来、上下の鋼管柱を無溶接で相互に接合する構造として、例えば次の▲1▼〜▲3▼に示す構造が提案されている。
▲1▼上下の鋼管柱の間にボックス状の接合金物を介在させ、前記接合金物の壁面にタップ孔を形成しておいて、上下の鋼管柱を添え板と共に前記タップ孔にボルト接合するもの。前記タップ孔の代わりに、接合金物の裏面にナットを溶接をしておくものもある。
▲2▼上下の鋼管柱に渡って添え板を重ね、添え板と上下の鋼管柱の管壁とを、ワンサイドボルトあるいは片側締め込みリベット等と呼ばれる軸状締め付け金具で接合するもの。ワンサイドボルトは、先端を孔内に貫通させ、基端側で操作を行うことで、先端に頭部を塑性変形で拡径状態に形成し、ナット無しで締結できるようにした金物であり、閉鎖断面での使用に開発されたものである。
▲3▼上下の鋼管柱の管径が異なる場合は、中間にテーパ状の拡径部を有する接合金物を介在させる。この接合金物の上下部に、上下の鋼管柱を各々添え板と共に前記ワンサイドボルトで接合する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記▲1▼のタップ孔を形成したジョイントボックスでは、タップ孔の加工に手間がかかるうえ、タップ孔では堅固なボルト接合を行うことが難しい。タップ孔に代えて裏ナット溶接を行うものでは、締め付け性は向上するが、通常のトルシア型等の高力ボルトを使用することができず、締め付け力の管理が難しい。そのため、接合品質の安定化が図り難い。
上記▲2▼のワンサイドボルトを用いるものは、外面からだけの操作で接合が可能であり、また堅固な接合が可能であるが、ワンサイドボルトの締め付け時に塑性変形で形成される頭部の径は小さく、そのためボルト挿通孔の孔径に余裕を得ることができない。そのため、建方に高精度が必要とされ、仮ボルトを挿通しておいて、柱,梁を仮組しておき、仮ボルトを抜いてワンサイドボルトによる本締めを行う等の作業が必要となる。そのため、建方に手間と時間がかかる。しかも、ワンサイドボルトは構成が複雑な部品であるため、高価であり、これを用いると架構のコストが高くなる。
前記▲3▼の接合金物とワンサイドボルトとを組み合わせて用いる場合も、前記と同様に建方の手間,時間の課題、およびコスト高の課題がある。
【0004】
このような課題を解消するため、鋼管柱にハンドホールを設け、通常の高力ボルトを用いることを考えたが、ハンドホールの形成による鋼管柱の断面欠損により、鋼管柱の強度が不足する。この断面欠損を補うために、鋼管柱に厚肉のものや管径の大きいものを使用すると、強度が十分な箇所まで無駄に鋼材が使用されることになり、不経済である。
【0005】
この発明は、現場溶接が不要で品質が安定し、かつ通常の高力ボルト等のボルト・ナットを用いて接合できて作業性が良く、建方時に外部で取り合いができて建方時間が短縮でき、また材料の無駄な増加を伴うことなく、堅固な接合が行え、コスト低下も図れる柱・柱接合金物および接合構造を提供することを目的とする。
この発明の他の目的は、ハンドホールの形成に伴って角筒体が長くなることを回避でき、かつ強度も確保できるようにすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の柱・柱接合金物は、各側面にボルト挿通孔を有し一部の側面に作業者の手が入るハンドホールが形成された鋼製の角筒体と、この角筒体のハンドホールが形成された側面の両側へこの側面と同一平面でヒレ状に張り出す補強片とでなる。
この構成の柱・柱接合金物は、上下の角形鋼管柱の間に配置され、これら鋼管柱と角筒体とに渡り重なる添え板と共に上下の角形鋼管柱にボルト接合される。この場合に、ハンドホールから作業者の手を入れ、鋼管柱の内部からボルトを挿通することにより、通常の高力ボルト等を用いて接合が行える。そのため、裏ナット溶接等が不要となる。また、高力ボルトによる組立では、孔径にワンサイドボルトほどの厳しい精度は要求されず、仮ボルト等による仮組み等を必要とせずに、簡単に建方が行える。角筒体のハンドホールを形成した側壁部は、ヒレ状に張り出す補強片で補強され、ハンドホールの形成に伴う,断面欠損,剛性低下等が補える。補強片は、工場溶接等で簡単に品質良く接合でき、また必要箇所だけに設ければ良いため、鋼材使用量を最小限として強度確保ができる。さらに、補強片を添え板とのボルト接合に利用できるため、ハンドホールの形成のために角筒体の側面に添え板との接合のためのボルト挿通孔の形成箇所が十分に得られなくても、添え板と堅固にボルト接合し、堅固な柱・柱接合構造とすることができる。
【0007】
この構成の柱・柱接合金物において、前記角筒体を、上部が下部よりも小径に形成された段付き角筒状としても良い。この場合、ハンドホールは角筒体の下部に形成することが望ましい。
一般に、柱に作用する荷重は、上階に至るほど小さくなるため、このように上下の管径の異なる角筒体を用いることにより、上側の柱を細く、下側の柱を太くして、材料の無駄なく、強度確保を図ることができる。ハンドホールは、角筒体の下側の管径の太い箇所に形成することにより、十分な孔径のハンドホールを得ることができて、作業が行い易く、しかも、ハンドホールの形成に伴う強度低下を両側の補強片で補強することが容易となる。
【0008】
この柱・柱接合金物は、次の逃がし部付き添え板と組み合わせ、接合金物組合せ体として使用することが好ましい。上記逃がし部付き添え板は、柱・柱接合金物における角筒体の前記ハンドホールが形成された側面およびその両側の補強片と鋼管柱の側面とに渡って重なり、かつ前記ハンドホールを露出させる切欠状の逃がし部を有し、前記角筒体の側面、両側の補強片、および鋼管柱のボルト挿通孔と整合するボルト挿通孔を有するものである。
このように、ハンドホールを露出させる切欠状の逃がし部を有する添え板を用いることにより、前記補強片の使用と相まって、ハンドホールの邪魔となることなく、添え板の十分な面積を確保し、堅固なボルト接合を行うことができる。
【0009】
この発明の柱・柱接合構造は、この発明の柱・柱接合金物を用いたものであり、次の構成とされる。すなわち、上部が下部よりも小径に形成された段付き角筒状に形成されて前記上部および下部の各側面にボルト挿通孔を有し、かつ下部の一部の側面に作業者の手の入るハンドホールを有する柱・柱接合金物を設ける。この柱・柱接合金物を、上下の角形の鋼管柱間に突き合わせ状態に介在させ、これら上下の鋼管柱と柱・柱接合金物とを、この柱・柱接合金物の上部および下部とに渡って各々重なる添え板と共にボルト接合する。これら添え板のうち、前記ハンドホールが形成された側面の添え板は、柱・柱接合金物における角筒体の前記ハンドホールが形成された側面およびその両側の補強片と鋼管柱の側面とに渡って重なり、かつ前記ハンドホールを露出させる切欠状の逃がし部を有する逃がし部付き添え板とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1および図2と共に説明する。この柱・柱接合構造は、図1(B)に示す柱・柱接合金物1と、同図(A)に示す一対の逃がし部付き添え板2とでなる接合金物組合せ体3を用い、一般部の添え板4,5と共に、上下の角形鋼管柱6,7を接合するものである。
柱・柱接合金物1は、上部8aが下部8bよりも小径に形成された段付き角筒状の角筒体8に、鋼板の切片からなる補強片9を溶接して構成される。角筒体8の上部8aと下部8bとの間の中間部は、下側へ次第に広がるテーパ部8cとされている。角筒体8は、絞り加工により前記の段付き角筒状としたものであっても、上部8aと下部8bとテーパ部8cを別体に形成して溶接したものであっても良い。
【0011】
角筒体8の上部8aおよび下部8bには、四側面にボルト挿通孔10,11が上下および左右に各々複数列に設けられ、かつ下部8bの一対の対向する側面における上側部分にハンドホール12が各々形成してある。ハンドホール12は、図示の例では真円状の丸孔としたが、上下に長い楕円であっても、各角部を丸めた矩形状としても、他の種々の形状としても良い。楕円とした場合、断面欠損量を少なくすることができる。なお、角筒体8におけるハンドホール12を形成した側面のボルト挿通孔11は、この側面における下部のみに形成してある。
角筒体8のハンドホール12が形成された各側面の両側へは、この側面と同一平面でヒレ状に張り出す一対の補強片9が各々設けられている。補強片9は、角筒体8の下部8bの略全高にわたる高さの矩形状の鋼板からなり、角筒体8のハンドホール12が形成された側面と隣合う側面に溶接されている。補強片9には、上下にボルト挿通孔15が形成されている。なお、補強片9の形状は、矩形に限らず、図3に示すように上縁がテーパ状となった台形状のものであっても良い。また、補強片9にはアングル材(図示せず)を用い、その片方のフランジを角筒体8に溶接してもう片方のフランジをひれ状に突出させるようにしても良い。
【0012】
逃がし部付き添え板2は、柱・柱接合金物1における角筒体8の前記ハンドホール12が形成された側面およびその両側の補強片9と下側鋼管柱7の側面とに渡って重なり、かつ前記ハンドホール12を露出させる切欠状の逃がし部16を有し、角筒体8の側面、両側の補強片9、および下側の鋼管柱7のボルト挿通孔17と整合するボルト挿通孔18を有する。逃がし部付き添え板2の側面形状は、上部の幅が両側の補強片9に重なる位置まで延び、補強片9よりも下方に延びる部分が次第に狭まって下端が下側鋼管柱7と同じかそれ以下の幅となる6角形状とされ、その上辺の中央に前記逃がし部16が略逆台形の切欠状に形成されている。
【0013】
建築現場において、柱・柱接合金物1は、その下端が下側の鋼管柱7の上端に突き合わせられるように配置され、下側の鋼管柱7とは、一対の逃がし部付き添え板2と、残り2面の一般部の添え板5とを用いて、高力ボルト等のボルト・ナット21により接合される。添え板5は、角筒体8の下部8bの側面と下側鋼管柱7の上端の側面とに渡って重ねられ、互いに整合するボルト挿通孔17,18間に挿通された前記ボルト・ナット21により接合される。
柱・柱接合金物1の上端は、上側の鋼管柱6の下端と突き合わせ状態とされ、これら上側の鋼管柱6の四側面と、柱・柱接合金物1の角筒体8の四側面とに渡って重ねられる添え板4により、上側の鋼管柱6とボルト接合される。その接合用のボルト・ナット22は、添え板4に設けられたボルト挿通孔20と、鋼管柱6および角筒体8の上部8aに各々形成されたボルト挿通孔19,10とに渡って挿通され、締め付けられる。
【0014】
この構成によると、現場において、ハンドホール12から作業者の手を入れ、鋼管柱6,7の内部からボルトを挿通することにより、通常の高力ボルト等を用いて接合が行える。そのため、ナットを溶接等で鋼管柱6,7や柱・柱接合金物1の裏面に仮止めしておく必要がなく、前準備の手間が省ける。また、高力ボルトによる組立では、孔径にワンサイドボルトほどの厳しい精度は要求されず、仮ボルト等による仮組み等を必要とせずに、簡単に建方が行える。そのため作業性が良い。
角筒体8のハンドホール12を形成した側壁部は、ヒレ状に張り出す補強片9で補強され、ハンドホール12の形成に伴う剛性低下等が補える。補強片9は、工場溶接等で簡単に品質良く接合でき、また必要箇所だけに設ければ良いため、角筒体8の全体を厚肉のものにする必要がなく、鋼材使用量を最小限として強度確保ができる。さらに、補強片9を添え板2とのボルト接合に利用できるため、ハンドホール12の形成のために角筒体8の側面に添え板2との接合のためのボルト挿通孔11を形成する箇所が十分に得られなくても、添え板2と堅固にボルト接合し、堅固な柱・柱接合構造とすることができる。
【0015】
柱・柱接合金物1は、段付き角筒状とし、上側の柱を細く、下側の柱を太くしているが、そのため材料の無駄なく、強度確保を図ることができる。ハンドホール12は、角筒体8の下側の管径の太い箇所に形成してあるため、十分な孔径のハンドホール12を得ることができて、作業が行い易く、しかも、ハンドホール12の形成に伴う強度低下を両側の補強片9で補強することが容易となる。
【0016】
【発明の効果】
この発明の柱・柱接合金物は、各側面にボルト挿通孔を有し一部の側面に作業者の手が入るハンドホールが形成された鋼製の角筒体と、この角筒体のハンドホールが形成された側面の両側へこの側面と同一平面でヒレ状に張り出す補強片とでなるものであるため、現場溶接が不要で品質が安定し、かつ通常の高力ボルト等のボルト・ナットを用いて接合できて作業性が良く、建方時に外部で取り合いができて建方時間が短縮でき、また材料の無駄な増加を伴うことなく、堅固な接合が行え、コスト低下も図れる。
前記角筒体を、上部が下部よりも小径に形成された段付き角筒状とし、前記ハンドホールを角筒体の下部に形成した場合は、十分な孔径のハンドホールを得ることができて、作業が行い易く、しかもハンドホールの形成に伴う強度低下を両側の補強片で補強することが容易となる。
この柱・柱接合金物を、ハンドホールの逃がし部付きの添え板と組み合わせて接合金物組合せ体として使用する場合は、ハンドホールの邪魔となることなく、添え板の十分な面積を確保して堅固なボルト接合を行うことができ、しかもハンドホールの形成に伴って角筒体が長くなることを回避できる。
この発明の柱・柱接合構造は、上記の段付き角筒状の角筒体と逃がし部付き添え板と組み合わせた接合構造であるため、現場溶接が不要で品質が安定し、かつ通常の高力ボルト等のボルト・ナットを用いて接合できて作業性が良く、建方時に外部で取り合いができて建方時間が短縮でき、また材料の無駄な増加を伴うことなく、堅固な接合が行え、コスト低下も図れ、しかもハンドホールの形成に伴って角筒体が長くなることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかる柱・柱接合構造の斜視図、(B)はその柱・柱接合金物の斜視図である。
【図2】同柱・柱接合構造の破断正面図である。
【図3】この発明の他の実施形態にかかる柱・柱接合金物の斜視図である。
【符号の説明】
1…柱・柱接合金物
2…逃がし部付き添え板
3…接合金物組合せ体
4,5…一般部の添え板
6,7…鋼管柱
8…角筒体
8a…上部
8b…下部
9…補強片
12…ハンドホール
16…逃がし部

Claims (5)

  1. 各側面にボルト挿通孔を有し一対の対向する側面に作業者の手が入るハンドホールが形成された鋼製の角筒体と、この角筒体のハンドホールが形成された各側面の両側へこの側面と同一平面でヒレ状に張り出す補強片とでなり、上下の角形鋼管柱の間に配置されてこれら鋼管柱と前記角筒体とに渡って重なる添え板と共に上下の角形鋼管柱にボルト接合され、前記補強片は、前記添え板のうちの、前記補強片が設けられた角筒体の側面に重ねられる添え板に重ねてボルト接合される柱・柱接合金物。
  2. 前記角筒体を、上部が下部よりも小径に形成された段付き角筒状とし、前記ハンドホールは前記角筒体の下部に形成した請求項1記載の柱・柱接合金物。
  3. ・柱接合金物と逃がし部付き添え板とでなり、前記柱・柱接合金物は、各側面にボルト挿通孔を有し一部の側面に作業者の手が入るハンドホールが形成された鋼製の角筒体と、この角筒体のハンドホールが形成された側面の両側へこの側面と同一平面でヒレ状に張り出す補強片とでなり、上下の角形鋼管柱の間に配置されてこれら鋼管柱と前記角筒体とに渡って重なる添え板と共に上下の角形鋼管柱にボルト接合されるものであり、前記逃がし部付き添え板は、柱・柱接合金物における角筒体の前記ハンドホールが形成された側面およびその両側の補強片と鋼管柱の側面とに渡って重なり、かつ前記ハンドホールを露出させる切欠状の逃がし部を有し、前記角筒体の側面、両側の補強片、および鋼管柱とボルト接合されるものとした接合金物組合せ体。
  4. 前記角筒体を、上部が下部よりも小径に形成された段付き角筒状とし、前記ハンドホールは前記角筒体の下部に形成した請求項3記載の接合金物組合せ体。
  5. 上部が下部よりも小径に形成された段付き角筒状に形成されて前記上部および下部の各側面にボルト挿通孔を有し、かつ下部の一部の側面に作業者の手の入るハンドホールを有する柱・柱接合金物を設け、この柱・柱接合金物を、上下の角形の鋼管柱間に突き合わせ状態に介在させて、これら上下の鋼管柱と柱・柱接合金物とを、この柱・柱接合金物の上部および下部と上下の鋼管柱とに渡って各々重なる添え板と共にボルト接合し、これら添え板のうち、前記ハンドホールが形成された側面の添え板は、柱・柱接合金物における角筒体の前記ハンドホールが形成された側面およびその両側の補強片と鋼管柱の側面とに渡って重なり、かつ前記ハンドホールを露出させる切欠状の逃がし部を有する逃がし部付き添え板とした柱・柱接合構造。
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