JP3861332B2 - 自転車用部品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自転車用のリム、タイヤ、スポーク代用のディスク等の自転車用部品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自転車用部品の材料としてゴムや樹脂等の高分子材料が多用される。ゴムは、例えば自転車用タイヤ等の材料又は表面材料として用いられ、樹脂は、例えばディスクでタイヤを支えるタイプの自転車におけるスポーク代用の該ディスク、リム等の材料又は表面材料として用いられる。
【0003】
表面がゴムからなるものについては、他物品との摺動性を向上させ、他物品との接触による摩耗、劣化を防止し、また表面の撥水性を向上させるために、表面にグリースやワックスを塗布したり、基材にオイルを添加して成形したり等する。表面が樹脂からなるものについては特にこのような処置は施していない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、自転車用部品に関して自転車のタイヤ等の表面にグリースやワックスを塗布する方法では、使用開始時には比較的良好な所望特性が得られても、時間とともに表面のグリースやワックスが他部分へ分散したり、吸収されたり、脱落したりして少なくなり、摺動性が低下し、表面の摩耗、劣化が生じやすくなり、撥水性が低下して汚れが付着し易くなる。
【0005】
また、基材中にオイルを添加して成形する方法では、使用開始時には比較的良好な摺動性等の所望特性が得られても、時間とともに表面部分に含まれるオイルが相手方物品に吸収される等して少なくなり、摺動性が低下し、表面の摩耗、劣化が生じやすくなり、撥水性が低下する。
例えば自転車のタイヤでは空気を入れたり抜いたりするときに金属製のリムとの摩擦により表面が摩耗、劣化し易くなり、その結果、摺動性、撥水性が低下する。
また、表面が樹脂からなるものについても同様で、リムではタイヤとの接触によりそれぞれ表面が摩耗、劣化し易く、摺動性、撥水性が悪い。
また、自転車用ディスクでは、撥水性が悪いために、雨天時に雨滴が付着してスピードを上げ難い。
【0006】
そこで本発明は、他の物品との摺動性が良好で、耐摩耗性に優れ、劣化し難く、さらに撥水性に優れる自転車用部品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明は、表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜が形成されている自転車用部品を提供する。
また本発明は、表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜を形成する工程を含む自転車用部品の製造方法を提供する。
【0008】
なお、前記自転車用部品における炭素膜を形成する表面の一部又は全部として、特に他物品との接触面を挙げることができ、この「他物品」には、自転車における他部材の他、自転車用部品の種類によっては水滴等も含む。
【0009】
本発明に係る自転車用部品は、表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性、撥水性を有する炭素膜が形成されているため、その部分での他物品との滑りが良く、またその部分は他物品との摩擦により摩耗、劣化し難い。さらに、該炭素膜が摩耗し難いことから良好な潤滑性が長期にわたり維持される。また、該炭素膜が撥水性を有することから、雨天時に使用してもその部分には雨滴が付着し難く、汚れが付着し難い。
【0010】
本発明に係る自転車用部品としては、タイヤ、リム、スポーク代用のディスク等を例示できる。
本発明における自転車用部品基体は、少なくとも膜形成面が有機材料、例えばゴム、樹脂、炭素から選ばれた少なくとも1種の有機材料からなるものである場合を例示できる。
【0011】
ゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等を例示できる。
【0012】
樹脂のうち、熱硬化性樹脂としては、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等を例示できる。
【0013】
熱可塑性樹脂としては、ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ2塩化ビニル、ポリビニルブチラート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルホルマール等)、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエーテル、ポリエステル系樹脂(ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体等)、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート、変性アクリル等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、66、610、11等)、セルロース系樹脂(エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロース、硝酸セルロース等)、ポリカーボネート、フェノキシ系樹脂、フッ素系樹脂(3フッ化塩化エチレン、4フッ化エチレン、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン、フッ化ビニリデン等)、ポリウレタン等を例示できる。
【0014】
本発明における炭素膜としては、代表例としてDLC(Diamond Like Carbon) (ダイアモンド状炭素)膜を挙げることができる。DLC膜は、潤滑性良好であり、また、他物品との摩擦により摩耗し難く、且つ、その厚さを調整することにより、該膜で被覆された基体が柔軟性を有するものである場合にも該基体本来の柔軟性を損なわないようにすることができる程度の適度な硬度を有する炭素膜である。また、撥水性が良好である。さらに、比較的低温で形成できる等、成膜を容易に行うことができる。
【0015】
いずれにしても前記炭素膜の膜厚は、基体上に密着性良好に形成でき、さらに基体の保護膜として十分機能できるとともに、基体が柔軟性を有するものである場合にも該基体本来の柔軟性を損なわない範囲内であればよい。
【0016】
本発明方法においては、前記炭素膜形成に先立ち、前処理として、前記基体の膜形成面を前処理用ガス、例えばフッ素(F)含有ガス、水素(H2 )ガス及び酸素(O2 )ガスから選ばれた少なくとも1種の前処理用ガスのプラズマに曝してもよい。
この場合、本発明の自転車用部品において、その基体はこのような前処理を施されたものとなる。
【0017】
前記フッ素含有ガスとしては、フッ素(F2 )ガス、3フッ化窒素(NF3 )ガス、6フッ化硫黄(SF6 )ガス、4フッ化炭素(CF4 )ガス、4フッ化ケイ素(SiF4 )ガス、6フッ化2ケイ素(Si2 6 )ガス、3フッ化塩素(ClF3 )ガス、フッ化水素(HF)ガス等を挙げることができる。
【0018】
自転車用部品基体を、前記前処理用ガスのプラズマに曝すことにより、基体表面が清浄化され、又はさらに基体表面粗度が向上する。これらは、炭素膜の密着性向上に寄与し、高密着性炭素膜を得ることができる。
【0019】
前記基体の膜形成面がゴム、樹脂等の有機材料からなる場合、前処理にフッ素含有ガスプラズマを採用するときは、これによって基体表面がフッ素終端され、水素ガスプラズマを採用するときはこれによって基体表面が水素終端される。フッ素−炭素結合及び水素−炭素結合は安定であるため、前記のように終端処理することで膜中の炭素原子が基体表面部分のフッ素原子又は水素原子と安定に結合を形成する。そしてこれらのことから、その後形成する炭素膜と前記基体との密着性を向上させることができる。
また、酸素ガスプラズマを採用するときは、基体表面に付着した有機物等の汚れを特に効率良く除去でき、これらのことからその後形成する炭素膜と前記基体との密着性を向上させることができる。
【0020】
本発明において、炭素膜形成に先立って行うプラズマによる基体の前処理は、同種類のプラズマを用いて或いは異なる種類のプラズマを用いて複数回行っても構わない。例えば、該基体を酸素ガスプラズマに曝した後、フッ素含有ガスプラズマ又は水素ガスプラズマに曝し、その上に炭素膜を形成するときには、基体表面がクリーニングされた後、該面がフッ素終端又は水素終端されて、その後形成する炭素膜と該基体表面との密着性は非常に良好なものとなる。
【0021】
本発明における炭素膜形成方法としては、ゴム、樹脂等の比較的耐熱性に劣る材料を用いた基体に熱的損傷を与えない温度範囲で膜形成できる方法として、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、特にプラズマCVD法を用いる場合は、被成膜基体のプラズマによる前処理と炭素膜形成とを同一の装置で行うことができる。
【0022】
プラズマCVD法により炭素膜を形成する場合のプラズマ原料ガスとしては、炭素膜形成に一般に用いられるメタン(CH4 )、エタン(C2 6 )、プロパン(C3 8 )、ブタン(C4 10)、アセチレン(C2 2 )、ベンゼン(C6 6 )、4フッ化炭素(CF4 )、6フッ化2炭素(C2 6 )等の炭素化合物ガス、及び必要に応じて、これらの炭素化合物ガスにキャリアガスとして水素ガス、不活性ガス等を混合したものを用いることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る自転車用部品の製造に用いることができる成膜装置の1例の概略構成を示す図である。図3(A)は本発明に係る自転車用部品の1例(スポーク代用ディスク)を示す図である。図3(B)は、炭素膜被覆スポーツ用品の1例(ボール)の断面を参考的に示す図である。
【0024】
この装置は、排気装置11が付設された真空チャンバ1を有し、チャンバ1内には電極2及びこれに対向する位置に電極3が設置されている。電極3は接地され、電極2にはマッチングボックス22を介して高周波電源23が接続されている。また、電極2にはその上に支持される被成膜基体を成膜温度に加熱するためのヒータ21が付設されている。また、チャンバ1にはガス供給部4が付設されて、内部にプラズマ原料ガスを導入できるようになっている。ガス供給部4には、マスフローコントローラ411、412・・・及び弁421、422・・・を介して接続された1又は2以上のプラズマ原料ガスのガス源431、432・・・が含まれる。
【0025】
この装置を用いて、例えば図3(B)に示すスポーツ用品を製造するにあたっては、スポーツ用品基体S1を他物品との接触面S1’を対向する電極3の方に向けて電極2上に配置し、排気装置11の運転にてチャンバ1内部を所定の真空度にする。次いで、ガス供給部4からチャンバ1内にフッ素含有ガス、水素ガス及び酸素ガスのうち1種以上のガスを前処理用ガスとして導入するとともに高周波電源23からマッチングボックス22を介して電極2に高周波電力を供給し、これにより前記導入した前処理用ガスをプラズマ化し、該プラズマの下で基体S1の表面処理を行う。なお、この表面処理(前処理)は行うことが望ましいが、必ずしも要しない。
【0026】
次いで、必要に応じてチャンバ1内を再び真空引きした後、ガス供給部4からチャンバ1内に成膜用原料ガスとして炭素化合物ガスを導入するとともに高周波電源23から電極2に高周波電力を供給し、これにより前記導入した炭素化合物ガスをプラズマ化し、該プラズマの下で基体S1表面に炭素膜を形成する。
【0027】
前記表面処理及び成膜を行う間、該基体が例えば立体構造物である場合、例えば基体の一部を電極2に接触させて、図示しない回転駆動手段にて基体を回転させ、基体の外表面(他物品との接触面)にほぼ均一に表面処理及び成膜が行われるようにする。
【0028】
このようにして、図3(B)に示すように、スポーツ用品基体S1の他物品との接触面(外表面)S1’にほぼ均一に炭素膜Fが形成された炭素膜被覆スポーツ用品が得られる。
【0029】
この装置を用いて本発明に係る自転車用部品を製造するにあたっても、前記スポーツ用品の製造と同様にして、自転車用部品基体S2の他物品との接触面S2’(図3(A)参照)に前記表面処理及び炭素膜形成を行い、図3(A)に示すように、自転車用部品基体S2(図示の例ではスポーク代用のディスク)の雨や塵埃等に曝される両側面S2’にほぼ均一に炭素膜Fが形成された炭素膜被覆自転車用部品が得られる。
【0030】
本発明方法を実施するにあたり、図1の装置に代えて図2に示す成膜装置を用いることもでき、この場合、基体が立体構造物であるときにも該基体の表面に効率よく膜形成することができる。
【0031】
図2の装置は、誘導結合型のプラズマCVD装置であり、真空容器1’を有しており、容器1’の外周には誘導コイル電極5が巻回して設けられ、該電極5両端にはマッチングボックス51及び高周波電源52が接続されている。また、真空容器1’の外側には、被成膜基体S1を成膜温度に加熱するためのヒータ21’が設けられている。
【0032】
また、真空容器1’には排気装置11’を配管接続してあるとともに、成膜用原料ガスのガス供給部4’を配管接続してある。ガス供給部4’には、マスフローコントローラ411’、412’・・・・及び弁421’、422’・・・・を介して接続された1又は2以上の成膜用原料ガスを供給するガス源431’、432’・・・・が含まれている。
【0033】
図2は参考例としてスポーツ用品基体S1に炭素膜を形成する様子を示しているが、自転車部品基体S2に炭素膜を形成することも可能である。この装置を用いて基体に炭素膜を形成するにあたっては、図1の装置を用いた基体への表面処理及び炭素膜形成と同様にし、但し、原料ガスのプラズマ化を誘導コイル電極5への高周波電力印加により行う。この場合も、表面処理(前処理)は行うことが望ましいが、必ずしも要しない。
【0034】
次に、図1の装置を用いて、自転車用部品の材料として用いられる、エチレン−プロピレン−ジエン系モノマーの三元共重合体ゴム(EPDM)からなる試験片やポリイミドからなる試験片の表面にDLC膜を形成した実験例(EPDMについては実験例1〜5、ポリイミドについては実験例6〜10)を説明する。
【0035】
実験例1
前述した、図1の装置を用いた炭素膜形成において、前処理用ガスプラズマによる試験片の前処理を行わず、該試験片の外表面に直接DLC膜を形成した。
試験片材質 EPDM
サイズ 20cm×20cm×厚さ1cm
高周波電極2サイズ 40cm×40cm
成膜条件
成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
成膜真空度 0.1Torr
成膜速度 500Å/min
成膜時間 20min
【0036】
実験例2
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で水素ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0037】
実験例3
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件でフッ素化合物ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0038】
実験例4
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらに水素ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0039】
実験例5
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらにフッ素化合物ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0040】
実験例6
前述した、図1の装置を用いた炭素膜形成において、前処理用ガスプラズマによる試験片の前処理を行わず、該試験片の外表面に直接DLC膜を形成した。
試験片材質 ポリイミド
サイズ 20cm×20cm×厚さ1cm
高周波電極2サイズ 40cm×40cm
成膜条件
成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
成膜真空度 0.1Torr
成膜速度 500Å/min
成膜時間 20min
【0041】
実験例7
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で水素ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0042】
実験例8
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件でフッ素化合物ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0043】
実験例9
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらに水素ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0044】
実験例10
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらにフッ素化合物ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
【0045】
次に、前記実験例1、2、3、4、5により得られたDLC膜被覆試験片、DLC膜を形成していない未処理の同様の試験片(比較実験例1)及び前記実験例6、7、8、9、10により得られたDLC膜被覆試験片、DLC膜を形成していない未処理の同様の試験片(比較実験例2)について、アルミニウム材との摩擦係数及びダイアモンド材との摩耗特性、さらに撥水性をそれぞれ評価した。また、実験例1〜10により得られた各DLC膜被覆試験片についてDLC膜と試験片との密着性を評価した。
【0046】
摩擦係数は、試験片表面にアルミニウムからなるピン状物品の先端部を当接させ、且つ、該ピン状物品に10gの荷重をかけた状態でこのピンを20mm/secの速度で移動させたときの値を測定し、摩耗特性は、試験片表面にダイアモンドからなるピン状物品の先端部を当接させ、且つ、それに100gの荷重をかけた状態で20mm/secの速度で移動させ、1時間あたりに摩耗した深さを測定することで評価した。膜密着性は、円柱状部材を接着剤を用いて膜表面に接合させ、該円柱状部材を膜に対して垂直方向に引っ張って該膜を試験片本体から剥離させ、剥離に要した力を測定する引っ張り法により評価した。撥水性は、試験片上に水滴をおき、その接触角を測定することで評価した。
【0047】
なお、接触角は、空気中にある固体面上に液体があるとき、固体、液体、気体の3相の接触点で液体に引いた接線と固体面のなす角のうち、液体を含む方の角をいい、大きいほど撥水性が良いことを示す。結果を次表に示す
摩擦係数 摩耗特性 膜密着強度 接触角
(μm/h) (kg/mm2) ( ° )
実験例1 1 0.9 2 100
実験例2 1 0.7 4 100
実験例3 1 0.7 4 100
実験例4 1 0.5 5 100
実験例5 1 0.5 5 100
実験例6 1 0.7 2 110
実験例7 1 0.6 4 110
実験例8 1 0.6 4 110
実験例9 1 0.5 5 110
実験例10 1 0.5 5 110
比較実験例1 3 2.5 ─ 80
比較実験例2 3 1.8 ─ 85
【0048】
このように、DLC膜を被覆した実験例1〜5及び実験例6〜10の各試験片では、アルミニウム材との間の摩擦係数はDLC膜を被覆していない比較実験例1及び比較実験例2の試験片よりそれぞれ小さく、潤滑性(摺動性)がよいことが分かる。また、ダイアモンド材との間の摩耗特性値もDLC膜を被覆していない比較実験例1及び2の試験片より小さかった。
【0049】
前記実験例1〜10の各DLC膜の試験片本体への密着強度は、DLC膜形成に先立ち試験片本体表面に対しプラズマによる前処理を施した実験例2〜5の試験片の方が、前処理を施さない実験例1の試験片より、また実験例7〜10の試験片の方が、前処理を施さない実験例6の試験片より、それぞれ大きかった。
【0050】
DLC膜を被覆した実験例1〜5及び実験例6〜10の各試験片では、水の接触角はDLC膜を被覆していない比較実験例1及び比較実験例2の試験片よりそれぞれ大きく、撥水性がよいことが分かる。
【0051】
以上のことから、表面の一部又は全部に炭素膜(特にDLC膜)を形成した本発明の自転車用部品は、潤滑性、耐摩耗性、撥水性に優れることが分かる。なお、炭素膜とこれと接触する他物品との摺動性は、炭素膜とアルミニウム材との摺動性とほぼ同様であるため、本発明の自転車用部品は炭素膜形成部分では他の物品との摺動性が優れると言える。
さらに前処理を施した後形成した炭素膜は密着性が優れることが分かる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように本発明によると、他の物品との摺動性が良好で、耐摩耗性に優れ、劣化し難く、さらに撥水性に優れる自転車用部品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る自転車用部品の製造に用いることができる成膜装置の1例の概略構成を示す図である。
【図2】 本発明に係る自転車用部品の製造に用いることができる成膜装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図3】 図(A)は本発明に係る自転車用部品の1例を示す図であり、図(B)はスポーツ用品の1例を参考的に示す断面図である。
【符号の説明】
1、1’ 真空チャンバ
11、11’ 排気装置
2 高周波電極
21、21’ ヒータ
22、51 マッチングボックス
23、52 高周波電源
3 接地電極
4、4’ プラズマ原料ガス供給部
5 誘導コイル電極
S1 被成膜スポーツ用品基体
S1’ 基体S1の他物品との接触面
S2 被成膜自転車用部品基体
S2’ 基体S2の他物品との接触面
F 炭素膜

Claims (12)

  1. 表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜が形成されている自転車用部品であり、該自転車用部品の基体の膜形成面が有機材料からなっているとともに少なくともフッ素(F)含有ガスのプラズマに曝されることでフッ素終端処理されており、該基体の膜形成面に前記耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜が形成されていることを特徴とする自転車用部品。
  2. 前記自転車用部品の基体の膜形成面は酸素ガスのプラズマに曝されてクリーニング処理された後、前記フッ素終端処理されており、該基体の膜形成面に前記耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜が形成されている請求項1記載の自転車用部品。
  3. 表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜が形成されている自転車用部品であり、該自転車用部品の基体の膜形成面が有機材料からなっているとともに酸素ガスのプラズマに曝されてクリーニング処理された後、水素ガスのプラズマに曝されることで水素終端処理されており、該基体の膜形成面に前記耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜が形成されていることを特徴とする自転車用部品。
  4. 前記炭素膜はDLC膜である請求項1、2又は3記載の自転車用部品。
  5. 前記有機材料はゴム又は樹脂である請求項1、2、3又は4記載の自転車用部品。
  6. 前記炭素膜はプラズマCVD法で形成された炭素膜である請求項1から5のいずれかに記載の自転車用部品。
  7. 表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜を形成する工程を含む自転車用部品の製造方法であり、該自転車用部品の基体の膜形成面が有機材料からなっており、前記炭素膜形成工程実施に先立ち、該自転車用部品基体の膜形成面を少なくともフッ素(F)含有ガスのプラズマに曝してフッ素終端処理する前処理工程を実施し、該前処理工程後に、該膜形成面に前記耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜を形成することで前記炭素膜形成工程を実施することを特徴とする自転車用部品の製造方法。
  8. 前記前処理工程では、前記自転車用部品基体の膜形成面を酸素ガスのプラズマに曝してクリーニング処理した後、前記フッ素終端処理を実施する請求項7記載の自転車用部品の製造方法。
  9. 表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜を形成する工程を含む自転車用部品の製造方法であり、該自転車用部品の基体の膜形成面が有機材料からなっており、前記炭素膜形成工程実施に先立ち、該自転車用部品基体の膜形成面を酸素ガスのプラズマに曝してクリーニング処理した後、水素ガスのプラズマに曝すことで水素終端処理する前処理工程を実施し、該前処理工程後に、該膜形成面に前記耐摩耗性、潤滑性、撥水性のある炭素膜を形成することで前記炭素膜形成工程を実施することを特徴とする自転車用部品の製造方法。
  10. 前記有機材料はゴム又は樹脂である請求項7から9のいずれかに記載の自転車用部品の製造方法。
  11. 前記炭素膜をプラズマCVD法により形成する請求項7から10のいずれかに記載の自転車用部品の製造方法。
  12. 前記炭素膜をDLC膜とする請求項7から11のいずれかに記載の自転車用部品の製造方法。
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