JP3374661B2 - 画像形成装置回転部品及びその製造方法 - Google Patents

画像形成装置回転部品及びその製造方法

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JP3374661B2 JP16702796A JP16702796A JP3374661B2 JP 3374661 B2 JP3374661 B2 JP 3374661B2 JP 16702796 A JP16702796 A JP 16702796A JP 16702796 A JP16702796 A JP 16702796A JP 3374661 B2 JP3374661 B2 JP 3374661B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真方式の複
写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置の部品
に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式の画像形成装置部品の材質
として、樹脂、ゴム等の高分子材料が多用されている。
例えば熱可塑性樹脂は、各種フレーム類、用紙トレイ、
ギア、ベアリング等の材料として用いられ、熱硬化性樹
脂は、ギア、ベアリング等の材料として用いられ、ゴム
は、現像器における現像ローラ、用紙にトナー像を加熱
加圧下に定着させる定着装置の定着ローラ及び加圧ロー
ラ、定着ローラに離型剤を塗布する塗布ローラ、静電潜
像担持体上の潜像を現像して形成したトナー像を用紙に
転写するための転写ローラ、転写後静電潜像担持体上に
残留するトナーを除去するクリーニングローラ等のロー
ラや、転写手段として採用されることがある転写ベルト
等のベルトのような回転部品の表面材料として用いられ
ている。
【0003】このような、表面が高分子材料からなる画
像形成装置部品は他物品との摺動性が劣るため、例えば
前記ギアやベアリング等の摺動性が要求される樹脂製部
品については、これを向上させるため、表面にグリース
を塗布したり、基材にオイルを添加して成形したり等す
る。また、ゴムを主体とするローラ、ベルト等の部品に
ついては、表面にフッ素系樹脂(例えばポリテトラフル
オロエチレン等)膜のような摺動性に優れる膜をコーテ
ィングしたり、ゴム基材にオイルを添加して成形したり
等する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ギア、
ベアリング等の摺動部品表面にグリースを塗布する方法
では、該部品使用開始時には比較的良好な摺動性が得ら
れても、時間とともに表面のグリースが他部分へ分散し
たり、吸収されたりして少なくなり、摺動性が低下す
る。
【0005】また、基材中にオイルを添加して画像形成
装置部品に成形する方法では、該部品使用開始時には比
較的良好な摺動性が得られても、時間とともに表面部分
に含まれるオイルが相手方物品に吸収される等して少な
くなり、摺動性が低下する。なお、この場合、例えば定
着装置部品については、該定着装置ではトナーを定着さ
せるために通常200°C程度にまで加熱されるため、
使用できるオイルの種類が限られるという問題もある。
【0006】また、フッ素系樹脂膜をコーティングする
方法では、360〜400°C程度で20〜40分間程
度の膜の焼き付けが必要であるため、画像形成装置部品
基体の材質が限られるという問題もあった。そこで本発
明は、他の物品との摺動性が良好で、耐摩耗性に優れた
画像形成装置部品、特に回転部品及びその製造方法を提
供することを課題とする。
【0007】また、本発明は、かかる画像形成装置回転
部品を、該部品の基体材質を広い範囲から選択して製造
できる画像形成装置回転部品の製造方法を提供すること
も課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明は、画像形成装置の回転部品(感光体を除く)
であって、他物品との接触面に耐摩耗性、潤滑性のある
ダイアモンド状炭素膜が形成されており、該画像形成装
回転部品の基体は該ダイアモンド状炭素膜の形成面が
ゴム、樹脂から選ばれた少なくとも1種の有機材料から
なり、柔軟性を有し、該ダイアモンド状炭素膜は該基体
の膜形成面の柔軟性を損なわない範囲の厚さに形成され
ていることを特徴とする画像形成装置回転部品を提供す
る。また本発明は、画像形成装置の回転部品(感光体を
除く)を製造する方法であって、他部品との接触面に耐
摩耗性、潤滑性のあるダイアモンド状炭素膜を形成する
工程を含み、該画像形成装置回転部品の基体は該ダイア
モンド状炭素膜の形成面がゴム、樹脂から選ばれた少な
くとも1種の有機材料からなり、柔軟性を有し、前記工
程では該ダイアモンド状炭素膜を前記基体の膜形成面の
柔軟性を損なわない範囲の厚さに形成することを特徴と
する画像形成装置回転部品の製造方法を提供する。
【0009】なお、上記「他物品」には画像形成装置に
おける他の部品の他、部品によっては摺動接触すること
がある用紙等も含む。本発明に係る画像形成装置部品
は、画像形成装置部品基体の他部品との接触面に耐摩耗
性、潤滑性を有するダイアモンド状炭素膜が形成されて
いるため、他物品との滑りが良く、また他部品との摩擦
により摩耗し難い。さらに、該炭素膜が摩耗し難いこと
から良好な潤滑性が長期にわたり維持される。また、炭
素膜は画像形成装置部品の使用温度(例えば、定着ロー
ラでは通常200°C程度)内では特に特性の変化は生
じない。
【0010】本発明における画像形成装置回転部品は、
ローラやベルトのような回転部品である。ローラとして
は、現像ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、塗布ロー
ラ、転写ローラ、クリーニングローラ等を例示できる。
またベルトとしては転写ベルト等を例示できる。本発明
における画像形成装置回転部品基体は、少なくとも他物
品との接触面すなわち膜形成面がゴム、樹脂から選ばれ
た少なくとも1種の有機材料からなるものである。
【0011】ゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、エ
チレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリ
エチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴ
ム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ
素ゴム等を例示できる。樹脂のうち、熱硬化性樹脂とし
ては、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、
メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、フラ
ン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリ
コン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等を例示できる。
【0012】また、熱可塑性樹脂としては、ビニル系樹
脂(ポリ塩化ビニル、ポリ2塩化ビニル、ポリビニルブ
チラート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポ
リビニルホルマール等)、ポリ塩化ビニリデン、塩素化
ポリエーテル、ポリエステル系樹脂(ポリスチレン、ス
チレン・アクリロニトリル共重合体等)、ABS、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル
系樹脂(ポリメチルメタクリレート、変性アクリル
等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、66、610、
11等)、セルロース系樹脂(エチルセルロース、酢酸
セルロース、プロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロー
ス、硝酸セルロース等)、ポリカーボネート、フェノキ
シ系樹脂、フッ素系樹脂(3フッ化塩化エチレン、4フ
ッ化エチレン、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレ
ン、フッ化ビニリデン等)、ポリウレタン等を例示でき
る。
【0013】また、本発明におけるダイアモンド状炭素
DLC(Diamond Like Carbon)膜) は、潤滑性良好
であり、また、他物品との摩擦により摩耗し難く、且
つ、その厚さを調整することにより、該膜で被覆された
柔軟性を有する画像形成装置部品基体本来の柔軟性を損
なわない程度の適度な硬度を有するものにでき、また電
気絶縁性が良好である。さらに、比較的低温で形成でき
る等、成膜を容易に行うことができる。
【0014】本発明においては、前記ダイアモンド状
素膜の膜厚は、画像形成装置部品基体上に密着性良好に
形成でき、さらに画像形成装置部品基体の保護膜として
十分機能できるとともに、柔軟性を有する画像形成装置
部品基体本来の柔軟性を損なわない範囲内にある。ま
た、本発明方法において、前記ダイアモンド状炭素膜形
成に先立ち、前処理として、前記画像形成装置部品基体
の膜形成面を前処理用ガス、例えばフッ素(F)含有ガ
ス、水素(H2 )ガス及び酸素(O2 )ガスから選ばれ
た少なくとも1種の前処理用ガスのプラズマに曝すこと
が考えられる。この場合、本発明の画像形成装置部品に
おいて、前記画像形成装置部品基体は、このような前処
理を施されたものである。
【0015】前記フッ素含有ガスとしては、フッ素(F
2 )ガス、3フッ化窒素(NF3 )ガス、6フッ化硫黄
(SF6 )ガス、4フッ化炭素(CF4 )ガス、4フッ
化ケイ素(SiF4 )ガス、6フッ化2ケイ素(Si2
6 )ガス、3フッ化塩素(ClF3 )ガス、フッ化水
素(HF)ガス等を挙げることができる。前記画像形成
装置部品基体を、前記前処理用ガスのプラズマに曝すこ
とにより、基体表面が清浄化され、又はさらに基体表面
粗度が向上する。これらは、炭素膜の密着性向上に寄与
し、高密着性炭素膜を得ることができる。
【0016】また、本発明に係る画像形成装置部品はそ
の基体のダイアモンド状炭素膜の形成面がゴム、樹脂か
ら選ばれた少なくとも1種の有機材料からなっている
が、フッ素含有ガスプラズマを採用するときは、これに
よって基体表面がフッ素終端され、水素ガスプラズマを
採用するときはこれによって基体表面が水素終端され
る。フッ素−炭素結合及び水素−炭素結合は安定である
ため、前記のように終端処理することで膜中の炭素原子
が基体表面部分のフッ素原子又は水素原子と安定に結合
を形成する。そしてこれらのことから、その後形成する
炭素膜と前記基体との密着性を向上させることができ
る。
【0017】また、酸素ガスプラズマを採用するとき
は、基体表面に付着した有機物等の汚れを特に効率良く
除去でき、これらのことからその後形成する炭素膜と前
記基体との密着性を向上させることができる。本発明に
おいて、炭素膜形成に先立って行うプラズマによる画像
形成装置部品基体の前処理は、同種類のプラズマを用い
て或いは異なる種類のプラズマを用いて複数回行っても
構わない。例えば、該基体を酸素ガスプラズマに曝した
後、フッ素含有ガスプラズマ又は水素ガスプラズマに曝
し、その上に炭素膜を形成するときには、基体表面がク
リーニングされた後、該面がフッ素終端又は水素終端さ
れて、その後形成する炭素膜と該基体表面との密着性は
非常に良好なものとなる。
【0018】また、本発明におけるダイアモンド状炭素
膜形成方法としては、ゴム、樹脂のように比較的耐熱性
に劣る材料を用いた画像形成装置部品基体に熱的損傷を
与えない温度範囲で膜形成できる方法として、プラズマ
CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法
等を挙げることができるが、特にプラズマCVD法を用
いる場合は、被成膜基体のプラズマによる前処理と炭素
膜形成とを同一の装置で行うことができる。
【0019】プラズマCVD法により炭素膜を形成する
場合のプラズマ原料ガスとしては、炭素膜形成に一般に
用いられるメタン(CH4 )、エタン(C2 6 )、プ
ロパン(C3 8 )、ブタン(C4 10)、アセチレン
(C2 2 )、ベンゼン(C 6 6 )等の炭化水素化合
物ガス、及び必要に応じて、これらの炭化水素化合物ガ
スにキャリアガスとして水素ガス、不活性ガス等を混合
したものを用いることができる。
【0020】本発明において、炭素膜は画像形成装置部
品基体の他物品との接触面のみならず、これに加えてそ
の他の表面の一部又は全部にも形成されていてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。図1は画像形成装置部品の製造に
用いることができる成膜装置の1例の概略構成を示す図
である。また、図3は本発明に係る画像形成装置部品
(回転部品)の1例の断面図である。
【0022】この装置は、排気装置11が付設された真
空チャンバ1を有し、チャンバ1内には電極2及びこれ
に対向する位置に電極3が設置されている。電極3は接
地され、電極2にはマッチングボックス22を介して高
周波電源23が接続されている。また、電極2にはその
上に支持される被成膜基体Sを成膜温度に加熱するため
のヒータ21が付設されている。また、チャンバ1には
ガス供給部4が付設されて、内部にプラズマ原料ガスを
導入できるようになっている。ガス供給部4には、マス
フローコントローラ411、412・・・及び弁42
1、422・・・を介して接続された1又は2以上のプ
ラズマ原料ガスのガス源431、432・・・が含まれ
る。
【0023】この装置を用いて本発明に係る画像形成装
置部品を製造するにあたっては、画像形成装置部品基体
Sを他物品との接触面S1を対向する電極3の方に向け
て電極2上に配置し、排気装置11の運転にてチャンバ
1内部を所定の真空度にする。次いで、ガス供給部4か
らチャンバ1内にフッ素含有ガス、水素ガス及び酸素ガ
スのうち1種以上のガスを前処理用ガスとして導入する
とともに高周波電源23からマッチングボックス22を
介して電極2に高周波電力を供給し、これにより前記導
入した前処理用ガスをプラズマ化し、該プラズマの下で
基体Sの表面処理を行う。なお、この表面処理(前処
理)は行うことが望ましいが、必ずしも要しない。
【0024】次いで、必要に応じてチャンバ1内を再び
真空引きした後、ガス供給部4からチャンバ1内に成膜
用原料ガスとして炭化水素化合物ガスを導入するととも
に高周波電源23から電極2に高周波電力を供給し、こ
れにより前記導入した炭化水素化合物ガスをプラズマ化
し、該プラズマの下で基体S表面に炭素膜を形成する。
【0025】画像形成装置部品基体Sの前記表面処理及
び成膜を行う間、該基体が例えばローラやベルトのよう
な回転部品である場合、例えば基体Sの一部を電極2に
接触させて、図示しない回転手段にて基体Sをその軸の
回りに回転させ、基体Sの外周面(他物品との接触面)
にほぼ均一に表面処理及び成膜が行われるようにする。
【0026】このようにして、図3に示すように、画像
形成装置部品基体S(図示の例ではローラ)の他物品と
の接触面(外表面)S1にほぼ均一に炭素膜Fが形成さ
れた炭素膜被覆画像形成装置部品が得られる。なお、図
3のローラではシャフトLを通したゴム層Cでローラ基
体Sが構成されている。また、本発明に係る画像形成装
置部品が、ローラのように立体構造物であるとき、図2
に示す成膜装置を用いることができ、この場合、該部品
基体の外表面に効率良く膜形成することができる。
【0027】図2の装置は、誘導結合型のプラズマCV
D装置であり、真空容器1´を有しており、容器1´の
外周には誘導コイル電極5が巻回して設けられ、該電極
5両端にはマッチングボックス51及び高周波電源52
が接続されている。また、真空容器1´の外側には、被
成膜基体Sを成膜温度に加熱するためのヒータ21´が
設けられている。
【0028】また、真空容器1´には排気装置11´を
配管接続してあるとともに、成膜用原料ガスのガス供給
部4´を配管接続してある。ガス供給部4´には、マス
フローコントローラ411´、412´・・・・及び弁
421´、422´・・・・を介して接続された1又は
2以上の成膜用原料ガスを供給するガス源431´、4
32´・・・・が含まれている。
【0029】この装置を用いて本発明に係る画像形成装
置部品を製造するにあたっては、図1の装置を用いた画
像形成装置部品基体Sの表面処理及び炭素膜形成と同様
にし、但し、原料ガスのプラズマ化を誘導コイル電極5
への高周波電力印加により行う。この場合も、表面処理
(前処理)は行うことが望ましいが、必ずしも要しな
い。
【0030】次に、図1の装置を用いて、画像形成装置
部品の材料として用いられる、エチレン−プロピレン−
ジエン系モノマーの三元共重合体ゴム(EPDM)から
なる試験片の表面にDLC膜を形成した実験例を説明す
る。 実験例1 前述した、図1の装置を用いた画像形成装置部品の製造
において、前処理用ガスプラズマによる試験片の前処理
を行わず、該試験片の外表面に直接DLC膜を形成し
た。
【0031】 試験片材質 EPDM サイズ 20cm×20cm×厚さ1cm 高周波電極2サイズ 40cm×40cm 成膜条件 成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 100sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、300W 成膜真空度 0.1Torr 成膜速度 500Å/min 成膜時間 20min 実験例2 前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の
条件で水素ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条
件は前記実験例1と同様とした。
【0032】 前処理条件 前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、300W 処理真空度 0.1Torr 処理時間 5min 実験例3 前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の
条件でフッ素化合物ガスプラズマによる前処理を施し
た。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
【0033】 前処理条件 前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、300W 処理真空度 0.1Torr 処理時間 5min 実験例4 前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の
条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さ
らに水素ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成
膜条件は前記実験例1と同様とした。
【0034】 第1前処理条件 前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、300W 処理真空度 0.1Torr 処理時間 5min 第2前処理条件 前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、300W 処理真空度 0.1Torr 処理時間 5min 実験例5 前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の
条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さ
らにフッ素化合物ガスプラズマによる第2の前処理を施
した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
【0035】 第1前処理条件 前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、300W 処理真空度 0.1Torr 処理時間 5min 第2前処理条件 前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、300W 処理真空度 0.1Torr 処理時間 5min 次に、前記実験例1、2、3、4、5により得られたD
LC膜被覆試験片、DLC膜を形成していない未処理の
同様の試験片(比較実験例1)及び同様の試験片の表面
にポリテトラフルオロエチレン膜を焼き付けて形成した
もの(比較実験例2)について、アルミニウム材との摩
擦係数及びダイアモンド材との摩耗特性をそれぞれ評価
した。また、実験例1、2、3、4、5により得られた
各DLC膜被覆試験片についてDLC膜と試験片との密
着性を評価した。また、比較実験例2により得られたポ
リテトラフルオロエチレン膜被覆試験片のポリテトラフ
ルオロエチレン膜と試験片との密着性も評価した。
【0036】なお、前記各実験例のDLC膜形成は12
0°Cより低温下で行えたが、比較実験例2のポリテト
ラフルオロエチレン膜形成は360°Cでの膜の焼き付
けが必要であった。摩擦係数は、試験片表面にアルミニ
ウムからなるピン状物品の先端部を当接させ、且つ、該
ピン状物品に10gの荷重をかけた状態でこのピンを2
0mm/secの速度で移動させたときの値を測定し、
摩耗特性は、試験片表面にダイアモンドからなるピン状
物品の先端部を当接させ、且つ、それに100gの荷重
をかけた状態で20mm/secの速度で移動させ、単
位時間あたりに摩耗した厚さを測定することで評価し
た。膜密着性は、円柱状部材を接着剤を用いて膜表面に
接合させ、該円柱状部材を膜に対して垂直方向に引っ張
って該膜を試験片本体から剥離させ、剥離に要した力を
測定する引っ張り法により評価した。
【0037】結果を次表に示す。 摩擦係数 摩耗特性 膜密着強度 (μm/h) (kg/mm2) 実験例1 1 0.9 2 実験例2 1 0.7 4 実験例3 1 0.7 4 実験例4 1 0.5 5 実験例5 1 0.5 5 比較実験例1 6 10.3 ─ 比較実験例2 1 0.9 2 このように、DLC膜を被覆した実験例1から5の各試
験片では、アルミニウム材との間の摩擦係数はDLC膜
を被覆していない比較実験例1の試験片より小さく、潤
滑性がよいことが分かる。また、ダイアモンド材との間
の摩耗特性値もDLC膜を被覆していない比較実験例1
の試験片より小さかった。
【0038】また、前記実験例1から5の各DLC膜の
試験片本体への密着強度は、DLC膜形成に先立ち試験
片本体表面に対しプラズマによる前処理を施した実験例
2から5の試験片の方が、前処理を施さない実験例1の
試験片よりも大きかった。また、試験片表面にポリテト
ラフルオロエチレン膜を形成した比較実験例2の試験片
は、アルミニウム材との間の摩擦係数、ダイアモンド材
との間の摩耗特性値及び膜密着性のいずれも実験例1の
DLC膜被覆試験片と同様の値を示したが、膜形成に3
60°Cという高温を要した。
【0039】以上のことから、画像形成装置部品基体の
外表面にダイアモンド状炭素膜(DLC膜)を形成した
本発明の画像形成装置部品は、潤滑性、耐摩耗性に優れ
ることが分かる。なお、炭素膜とこれと接触する他の画
像形成装置部品との摺動性は、炭素膜とアルミニウム材
との摺動性とほぼ同様であるため、本発明の画像形成装
置部品は他の画像形成装置部品との摺動性が優れると考
えられる。また、前処理を施した後形成した炭素膜は密
着性が優れることが分かる。
【0040】また、本発明の画像形成装置部品の製造方
法において、ダイアモンド状炭素膜(DLC膜)形成を
プラズマCVD法により行うときには、比較的低温で成
膜を行えることが分かる。なお、スパッタリング法、イ
オンプレーティング法によりDLC膜を形成した場合も
同様の結果が得られた。
【0041】
【発明の効果】以上のように本発明によると、他の物品
との摺動性が良好で、耐摩耗性に優れた画像形成装置
転部品及びその製造方法を提供することができる。ま
た、本発明によると、かかる画像形成装置回転部品を、
該部品の基体材質を広い範囲から選択して製造できる画
像形成装置回転部品の製造方法も提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る画像形成装置部品の製造に用いる
ことができる成膜装置の1例の概略構成を示す図であ
る。
【図2】本発明に係る画像形成装置部品の製造に用いる
ことができる成膜装置の他の例の概略構成を示す図であ
る。
【図3】本発明に係る画像形成装置部品の1例の断面図
である。
【符号の説明】
1、1´ 真空チャンバ 11、11´ 排気装置 2 高周波電極 21、21´ ヒータ 22、51 マッチングボックス 23、52 高周波電源 3 接地電極 4、4´ プラズマ原料ガス供給部 5 誘導コイル電極 S 被成膜画像形成装置部品基体 S1 基体Sの他物品との接触面 F 炭素膜 C ゴム層 L シャフト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−90484(JP,A) 特開 昭63−217303(JP,A) 特開 平8−53116(JP,A) 特開 平9−160457(JP,A) 特開 平3−213870(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 16/56 C30B 29/04 G03G 5/00 - 21/00 WPI(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子写真方式による画像形成装置の回転
    部品(感光体を除く)であって、他物品との接触面に耐
    摩耗性、潤滑性のあるダイアモンド状炭素膜が形成され
    ており、該画像形成装置回転部品の基体は該ダイアモン
    ド状炭素膜の形成面がゴム、樹脂から選ばれた少なくと
    も1種の有機材料からなり、柔軟性を有し、該ダイアモ
    ンド状炭素膜は該基体の膜形成面の柔軟性を損なわない
    範囲の厚さに形成されていることを特徴とする画像形成
    装置回転部品
  2. 【請求項2】 前記画像形成装置回転部品の基体の膜形
    成面が、フッ素(F)含有ガス、水素(H2 )ガス及び
    酸素(O2 )ガスから選ばれた少なくとも1種のガスの
    プラズマに曝されたものである請求項1記載の画像形成
    装置回転部品
  3. 【請求項3】 前記ダイアモンド状炭素膜が、プラズマ
    CVD法により形成されたものである請求項1又は2記
    載の画像形成装置回転部品
  4. 【請求項4】 電子写真方式による画像形成装置の回転
    部品(感光体を除く)を製造する方法であって、他物品
    との接触面に耐摩耗性、潤滑性のあるダイアモンド状炭
    素膜を形成する工程を含み、該画像形成装置回転部品の
    基体は該ダイアモンド状炭素膜の形成面がゴム、樹脂か
    ら選ばれた少なくとも1種の有機材料からなり、柔軟性
    を有し、前記工程では該ダイアモンド状炭素膜を前記基
    体の膜形成面の柔軟性を損なわない範囲の厚さに形成す
    ることを特徴とする画像形成装置回転部品の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ダイアモンド状炭素膜形成に先立
    ち、前処理として、前記画像形成装置回転部品の基体の
    膜形成面をフッ素(F)含有ガス、水素(H 2 )ガス及
    び酸素(O 2 )ガスから選ばれた少なくとも1種のガス
    のプラズマに曝す請求項4記載の画像形成装置回転部品
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記ダイアモンド状炭素膜をプラズマC
    VD法により形成する請求項4又は5記載の画像形成装
    置回転部品の製造方法。
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