JP3355950B2 - 機械部品及びその製造方法 - Google Patents

機械部品及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯車、ガイド部
材、ガイドローラ、ベアリング、シール材等の機械部品
(自動車部品及び画像形成装置部品を除く)及びその
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、樹脂は様々な物品の材料として多
用されている。例えば、各種歯車、複写機、プリンタ等
の紙ガイドやミシンの糸ガイド等のガイド部材、ガイド
ローラ、ベアリング、シール材、緩衝材等の機械部品、
電気絶縁体や端子等の電機部品、燃料タンク等のタン
ク、レンズやプリズム等の光学部品、水道配管、電線配
管や自動車用その他のホース等を含むパイプ、床材、壁
材その他の建材等の建設用又は土木用材、テントシート
等の各種シート、玩具及びその部品、装飾品、文房具、
各種ケース類、網、各種フィルム類、スポーツ用品、食
器、ボタン、台所用品等の家庭用品、レコード等の材料
又は表面材料として広く用いられている。
【0003】これらのうち、機械部品、建設土木用材、
パイプ、玩具又はその部品等では、他物品や他部品との
摺動性を向上させ、これらとの接触による摩耗、劣化を
防止するために、表面にオイルを塗布したり、オイルを
浸透させたり、基材にオイルを添加して成形したり等す
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、機械部
品等の表面にオイルを塗布する方法では、使用開始時に
は比較的良好な所望特性が得られても、時間とともに表
面のオイルが他部分へ分散したり、吸収されたり、脱落
したりして少なくなり、摺動性が低下し、表面の摩耗、
劣化が生じやすくなる。また、オイルを浸透させたり、
基材にオイルを添加して成形したりする方法では、使用
開始時には比較的良好な所望特性が得られても、時間と
ともに表面部分に含まれるオイルが相手方物品に吸収さ
れる等して表面に浸出してくるオイルが少なくなり、摺
動性が低下し、表面の摩耗、劣化が生じやすくなる。
【0006】また、機械部品は金属からなる物品と接触
して用いられることが多く、前記のような方法では、金
属製物品との摩擦による表面の摩耗や劣化を十分に防止
することができない。
【0008】そこで本発明は、他物品との摺動性が良好
で、耐摩耗性に優れ、劣化し難い機械部品(自動車部品
及び画像形成装置部品を除く)及びその製造方法を提供
することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明は、機械部品(自動車部品及び画像形成装置部
品を除く)であり、該機械部品基体の表面の一部又は全
部に耐摩耗性、潤滑性のあるダイアモンド状炭素膜が形
成されており、該機械部品基体は、該ダイアモンド状炭
素膜の形成面が樹脂及びゴムから選ばれた少なくとも1
種の材料からなり、柔軟性を有し、該ダイアモンド状炭
素膜は前記基体の膜形成面の柔軟性を損なわない範囲の
厚さに形成されていることを特徴とする機械部品を提供
する。また本発明は、機械部品(自動車部品及び画像形
成装置部品を除く)の製造方法であり、該機械部品基体
表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性のあるダイア
モンド状炭素膜を形成する工程を含み、該機械部品基体
は該ダイアモンド状炭素膜の形成面が樹脂及びゴムから
選ばれた少なくとも1種の材料からなり、柔軟性を有
し、前記工程においては該ダイアモンド状炭素膜を前記
基体の膜形成面の柔軟性を損なわない範囲の厚さに形成
することを特徴とする機械部品の製造方法を提供する。
【0012】なお、前記機械部品におけるダイアモンド
炭素膜を形成する表面の一部又は全部としては、特に
他物品との接触面や外表面を挙げることができる。な
お、前記の他物品には、通常の物品の他、地面等の面、
人等が含まれる。本発明に係る機械部品は、表面の一部
又は全部に耐摩耗性、潤滑性を有するダイアモンド状
素膜が形成されているため、その部分での他物品との滑
りが良く、またその部分は他物品との摩擦により摩耗、
劣化し難い。さらに、該炭素膜が摩耗し難いことから良
好な潤滑性が長期にわたり維持される。
【0015】本発明に係る機械部品(自動車部品及び画
像形成装置部品を除く)としては、歯車、ガイド部材、
ガイドローラ、ベアリング、シール材等を例示できる。
【0017】本発明における機械部品基体は、少なくと
も膜形成面が樹脂(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及び
ゴムから選ばれた少なくとも1種の材料からなるもので
る。熱硬化性樹脂としては、フェノール・ホルムアル
デヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹
脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和
ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、ジアリルフタレート
樹脂等を例示できる。
【0018】また、熱可塑性樹脂としては、ビニル系樹
脂(ポリ塩化ビニル、ポリ2塩化ビニル、ポリビニルブ
チラート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポ
リビニルホルマール等)、ポリ塩化ビニリデン、塩素化
ポリエーテル、ポリエステル系樹脂(ポリスチレン、ス
チレン・アクリロニトリル共重合体等)、ABS、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、アクリル
系樹脂(ポリメチルメタクリレート、変性アクリル
等)、ポリアミド系樹脂(ナイロン6、66、610、
11等)、セルロース系樹脂(エチルセルロース、酢酸
セルロース、プロピルセルロース、酢酸・酪酸セルロー
ス、硝酸セルロース等)、ポリカーボネート、フェノキ
シ系樹脂、フッ素系樹脂(3フッ化塩化エチレン、4フ
ッ化エチレン、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレ
ン、フッ化ビニリデン等)、ポリウレタン等を例示でき
る。
【0019】また、ゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴ
ム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、塩素
化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリ
ルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、
フッ素ゴム等を例示できる。また、本発明におけるダイ
アモンド状炭素膜DLC(Diamond Like Carbon)膜)
は、潤滑性良好であり、また、他物品との摩擦により摩
耗し難く、且つ、その厚さを調整することにより、該膜
で被覆された基体が柔軟性を有するものである場合にも
該基体本来の柔軟性を損なわないようにすることができ
る程度の適度な硬度を有するものにできる。また、撥水
性、ガスバリア性及び電気絶縁性が良好である。さら
に、比較的低温で形成できる等、成膜を容易に行うこと
ができる。
【0020】本発明においては、前記ダイアモンド状
素膜の膜厚は、基体上に密着性良好に形成でき、さらに
基体の保護膜として十分機能できるとともに、柔軟性を
有する基膜形成面本来の柔軟性を損なわない範囲内
ある。また、本発明方法において、前記ダイアモンド状
炭素膜形成に先立ち、前処理として、前記基体の膜形成
面を前処理用ガス、例えばフッ素(F)含有ガス、水素
(H2 )ガス及び酸素(O2 )ガスから選ばれた少なく
とも1種の前処理用ガスのプラズマに曝すことが考えら
れる。この場合、本発明の機械部品において、前記基
は、このような前処理を施されたものとなる。
【0021】前記フッ素含有ガスとしては、フッ素(F
2 )ガス、3フッ化窒素(NF3 )ガス、6フッ化硫黄
(SF6 )ガス、4フッ化炭素(CF4 )ガス、4フッ
化ケイ素(SiF4 )ガス、6フッ化2ケイ素(Si2
6 )ガス、3フッ化塩素(ClF3 )ガス、フッ化水
素(HF)ガス等を挙げることができる。前記基体を、
前記前処理用ガスのプラズマに曝すことにより、基体表
面が清浄化され、又はさらに基体表面粗度が向上する。
これらは、炭素膜の密着性向上に寄与し、高密着性炭素
膜を得ることができる。
【0022】また、本発明に係る機械部品はその基体の
ダイアモンド状炭素膜の形成面が樹脂及びゴムから選ば
れた少なくとも1種の有機材料からなっているが、前処
理にフッ素含有ガスプラズマを採用するときは、これに
よって基体表面がフッ素終端され、水素ガスプラズマを
採用するときはこれによって基体表面が水素終端され
る。フッ素−炭素結合及び水素−炭素結合は安定である
ため、前記のように終端処理することで膜中の炭素原子
が基体表面部分のフッ素原子又は水素原子と安定に結合
を形成する。そしてこれらのことから、その後形成する
炭素膜と前記基体との密着性を向上させることができ
る。
【0023】また、酸素ガスプラズマを採用するとき
は、基体表面に付着した有機物等の汚れを特に効率良く
除去でき、これらのことからその後形成する炭素膜と前
記基体との密着性を向上させることができる。本発明に
おいて、炭素膜形成に先立って行うプラズマによる基体
の前処理は、同種類のプラズマを用いて或いは異なる種
類のプラズマを用いて複数回行っても構わない。例え
ば、該基体を酸素ガスプラズマに曝した後、フッ素含有
ガスプラズマ又は水素ガスプラズマに曝し、その上に炭
素膜を形成するときには、基体表面がクリーニングされ
た後、該面がフッ素終端又は水素終端されて、その後形
成する炭素膜と該基体表面との密着性は非常に良好なも
のとなる。
【0024】また、本発明におけるダイアモンド状炭素
膜形成方法としては、樹脂、ゴムのように比較的耐熱性
に劣る材料を用いた基体に熱的損傷を与えない温度範囲
で膜形成できる方法として、プラズマCVD法、スパッ
タリング法、イオンプレーティング法等を挙げることが
できるが、特にプラズマCVD法を用いる場合は、被成
膜基体のプラズマによる前処理と炭素膜形成とを同一の
装置で行うことができる。
【0025】プラズマCVD法により炭素膜を形成する
場合のプラズマ原料ガスとしては、炭素膜形成に一般に
用いられるメタン(CH4 )、エタン(C2 6 )、プ
ロパン(C3 8 )、ブタン(C4 10)、アセチレン
(C2 2 )、ベンゼン(C6 6 )、4フッ化炭素
(CF4 )、6フッ化2炭素(C2 6 )等の炭素化合
物ガス、及び必要に応じて、これらの炭素化合物ガスに
キャリアガスとして水素ガス、不活性ガス等を混合した
ものを用いることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。図1は本発明に係る機械部品の製
用いることができる成膜装置の1例の概略構成を示
す図である。また、図3は本発明に係る機械部品の1例
(ガイドローラ)の断面図である
【0027】図1に示す装置は、排気装置11が付設さ
れた真空チャンバ1を有し、チャンバ1内には電極2及
びこれに対向する位置に電極3が設置されている。電極
3は接地され、電極2にはマッチングボックス22を介
して高周波電源23が接続されている。また、電極2に
はその上に支持される被成膜基体を成膜温度に加熱する
ためのヒータ21が付設されている。また、チャンバ1
にはガス供給部4が付設されて、内部にプラズマ原料ガ
スを導入できるようになっている。ガス供給部4には、
マスフローコントローラ411、412・・・及び弁4
21、422・・・を介して接続された1又は2以上の
プラズマ原料ガスのガス源431、432・・・が含ま
れる。
【0028】この装置を用いて本発明に係る機械部品を
製造するにあたっては、機械部品基体S1を他物品との
接触面S1´を対向する電極3の方に向けて電極2上に
配置し、排気装置11の運転にてチャンバ1内部を所定
の真空度にする。次いで、ガス供給部4からチャンバ1
内にフッ素含有ガス、水素ガス及び酸素ガスのうち1種
以上のガスを前処理用ガスとして導入するとともに高周
波電源23からマッチングボックス22を介して電極2
に高周波電力を供給し、これにより前記導入した前処理
用ガスをプラズマ化し、該プラズマの下で基体S1の表
面処理を行う。なお、この表面処理(前処理)は行うこ
とが望ましいが、必ずしも要しない。
【0029】次いで、必要に応じてチャンバ1内を再び
真空引きした後、ガス供給部4からチャンバ1内に成膜
用原料ガスとして炭素化合物ガスを導入するとともに高
周波電源23から電極2に高周波電力を供給し、これに
より前記導入した炭素化合物ガスをプラズマ化し、該プ
ラズマの下で基体S1表面に炭素膜を形成する。機械部
品基体S1の前記表面処理及び成膜を行う間、該基体が
例えばガイドローラのような立体構造物である場合、例
えば基体S1の一部を電極2に接触させて、図示しない
回転駆動手段にて基体S1を回転させ、基体S1の外表
面(他物品との接触面)にほぼ均一に表面処理及び成膜
が行われるようにする。
【0030】このようにして、図3に示すように、機械
部品基体S1(図示の例ではガイドローラ)の他物品と
の接触面(外表面)S1´にほぼ均一に炭素膜Fが形成
された炭素膜被覆機械部品が得られる。
【0032】また、本発明方法を実施するにあたり、図
1の装置に代えて図2に示す成膜装置を用いることがで
き、この場合、基体が立体構造物であるときにも該基体
の表面に効率よく膜形成することができる。
【0033】図2の装置は、誘導結合型のプラズマCV
D装置であり、真空容器1´を有しており、容器1´の
外周には誘導コイル電極5が巻回して設けられ、該電極
5両端にはマッチングボックス51及び高周波電源52
が接続されている。また、真空容器1´の外側には、被
成膜基体S1を成膜温度に加熱するためのヒータ21´
が設けられている。
【0034】また、真空容器1´には排気装置11´を
配管接続してあるとともに、成膜用原料ガスのガス供給
部4´を配管接続してある。ガス供給部4´には、マス
フローコントローラ411´、412´・・・・及び弁
421´、422´・・・・を介して接続された1又は
2以上の成膜用原料ガスを供給するガス源431´、4
32´・・・・が含まれている。
【0035】この装置を用いて本発明に係る機械部品
製造するにあたっては、図1の装置を用いた機械部品
体S1の表面処理及び炭素膜形成と同様にし、但し、原
料ガスのプラズマ化を誘導コイル電極5への高周波電力
印加により行う。この場合も、表面処理(前処理)は行
うことが望ましいが、必ずしも要しない。次に、図1の
装置を用いて、機械部品の材料として用いられる、フェ
ノールホルムアルデヒド樹脂からなる試験片の表面にD
LC膜を形成した実験例1、ポリアセタールからなる試
験片の表面にDLC膜を形成した実験例2、ポリカーボ
ネイトからなる試験片の表面にDLC膜を形成した実験
例3を説明する。 実験例1 試験片材質 フェノールホルムアルデヒド樹脂 サイズ 100mm×100mm×厚さ5mm 高周波電極2サイズ 直径280mm 成膜条件 成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 50sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、150W 自己バイアス電圧 −80V 成膜真空度 0.1Torr 成膜温度 25°C 成膜時間 60min 実験例2 試験片材質 ポリアセタール サイズ 100mm×100mm×厚さ5mm 高周波電極2サイズ 直径280mm 成膜条件 成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 50sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、150W 自己バイアス電圧 −80V 成膜真空度 0.1Torr 成膜温度 25°C 成膜時間 60min 実験例3 試験片材質 ポリカーボネイト サイズ 100mm×100mm×厚さ5mm 高周波電極2サイズ 直径280mm 成膜条件 成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 50sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、150W 自己バイアス電圧 −80V 成膜真空度 0.1Torr 成膜温度 25°C 成膜時間 60min 次に、前記実験例1、2、3により得られたDLC膜被
覆試験片、及び各実験例で用いたDLC膜を形成してい
ない未処理の同様の試験片にシリコンオイルを塗布した
もの(比較実験例1、2、3)について、アルミニウム
材との摩擦係数をそれぞれ評価した。摩擦係数は、試験
片表面に先端曲率R18のアルミニウムからなるピン状
物品の先端部を当接させ、且つ、該ピン状物品に10g
の荷重をかけた状態でこのピンを20mm/secの速
度で移動させたときの値を測定した。
【0036】結果を次表に示す。 摩擦係数 1回摩擦後 1000回摩擦後 実験例1 2.64 2.66 比較実験例1 2.56 10.4 実験例2 1.22 1.35 比較実験例2 1.54 6.8 実験例3 2.29 2.33 比較実験例3 2.44 5.04 このように、比較実験例1、2、3では摩擦開始直後は
前記実験例と同様に摩擦係数が小さく良好な潤滑性(摺
動性)を示したが、1000回摩擦後には摩擦係数が増
大した。一方、実験例1、2、3では、1000回摩擦
後にも摩擦係数の増大は見られず、良好な潤滑性(摺動
性)が維持された。
【0037】次に、前記実験例1、2、3により得られ
たDLC膜被覆試験片、及び各実験例で用いたDLC膜
を形成していない未処理の同様の試験片(比較実験例
4、5、6)について、それぞれ硬度を測定した。前記
実験例の試験片は2gヌープ硬度を測定し、各比較実験
例の試験片は0.5gヌープ硬度を測定した。結果を次
表に示す。 ヌープ硬度 実験例1 222 比較実験例4 18.4 実験例2 40.2 比較実験例5 12.1 実験例3 40.2 比較実験例6 10.8 このように、DLC膜を被覆した実験例1、2、3の試
験片は、DLC膜を被覆していない比較実験例4、5、
6の試験片より硬度が高いことが分かる。
【0038】次に、前記実験例1、2、3の試験片と同
様の材質でそれぞれ作成したM100サイズの歯車(比
較実験例A、B、C)、及び、さらにこれらの歯車の外
表面に引き続き実験例1、2、3と同様の方法でDLC
膜を形成した歯車(実験例A、B、C)について、黄銅
からなる同サイズの歯車とかみ合わせて、20rpmの
回転速度で1000回回転させた後の摩耗深さを測定し
た。
【0039】結果を次表に示す。 摩耗深さ(μm) 実験例A 0.5 比較実験例A 5.5 実験例B 0.8 比較実験例B 3.6 実験例C 0.9 比較実験例C 3.7 このように、DLC膜を被覆した実験例A、B、Cの歯
車は耐摩耗性が優れることが分かる。
【0040】次に、実験例1のDLC膜被覆試験片、及
び実験例1において成膜に先立ち次の各条件でプラズマ
による前処理を施したDLC膜被覆試験片(実験例1−
1、1−2、1−3、1−4、1−5)について、それ
ぞれ膜密着性を評価した。膜密着性は、ステンレススチ
ール(SUS304)からなる直径5mmの円柱状部材
を接着剤を用いてDLC膜に接合させ、該円柱状部材を
膜に対して垂直方向に引っ張って該膜を試験片本体から
剥離させ、剥離に要した力を測定する引っ張りジグ法に
より評価した。 前処理条件 実験例1−1 前処理用ガス 水素(H2 ) 50sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、150W 自己バイアス電圧 −80V 処理真空度 0.1Torr 処理温度 25°C 処理時間 60min 実験例1−2 前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 50sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、150W 自己バイアス電圧 −80V 処理真空度 0.1Torr 処理温度 25°C 処理時間 60min 実験例1−3 前処理用ガス 酸素(O2 ) 50sccm 高周波電力 周波数13.56MHz、150W 自己バイアス電圧 −80V 処理真空度 0.1Torr 処理温度 25°C 処理時間 60min 実験例1−4 実験例1−3のO2 ガスプラズマによる前処理の後、実
験例1−1のH2 ガスプラズマによる前処理を行った。
【0041】実験例1−5 実験例1−3のO2 ガスプラズマによる前処理の後、実
験例1−2のSF6 ガスプラズマによる前処理を行っ
た。結果を次表に示す。 膜密着強度(N) 実験例1 3 実験例1−1 5 実験例1−2 5 実験例1−3 6 実験例1−4 7 実験例1−5 8 次に、実験例1、2、3により得られたDLC膜被覆試
験片、各実験例で用いたDLC膜を形成していない未処
理の同様の試験片(比較実験例4、5、6)について、
それぞれ撥水性を測定した。撥水性は、試験片上に水滴
をおき、その接触角を測定することで評価した。
【0042】なお、接触角は、空気中にある固体面上に
液体があるとき、固体、液体、気体の3相の接触点で液
体に引いた切線と固体面のなす角のうち、液体を含む方
の角をいい、大きいほど撥水性が良いことを示す。結果
を次表に示す 接触角(°) 実験例1 100 比較実験例1 90 実験例2 97 比較実験例2 85 実験例3 92 比較実験例3 80 このように、DLC膜を被覆した実験例1、2、3の各
試験片では、DLC膜を被覆していない比較実験例1、
2、3の試験片より水の接触角がそれぞれ大きく、撥水
性が良いことが分かる。
【0043】次に、前記実験例1と同様にして、ポリ塩
化ビニリデンからなるフィルム(柔軟剤として脂肪酸誘
導体を、安定剤としてエポキシ化植物油を添加したも
の)の一方の表面上にDLC膜を形成したフィルム状の
試験片(実験例1−6)及びDLC膜を形成していない
未処理の同様のフィルム状の試験片(比較実験例7)に
ついて、透湿度(水蒸気透過率)及び酸素透過率をそれ
ぞれ測定した。
【0044】透湿度は、Mocon社製ガス透過率測定
装置を用い、25℃の温度下で、フィルムの一方の空間
の相対湿度を100%とし、フィルムの他方の空間の相
対湿度をほぼ0%として、水蒸気の透過速度を測定する
ことで評価した。また、酸素透過率は、同様にMoco
n社製ガス透過率測定装置を用い、25℃の温度下で、
フィルムの一方の空間の酸素濃度を100%とし、フィ
ルムの他方の空間の酸素濃度を0%として、酸素の透過
速度を測定することで評価した。
【0045】結果を次表に示す。 透 湿 度 酸素透過率 (cc/m2/day) (cc/m2/day) 実験例1−6 0.9 1.2 比較実験例7 12.5 14.0 このように、DLC膜を被覆した実験例1─6の試験片
ではDLC膜を被覆していない比較実験例7の試験片よ
り、水蒸気及び酸素のいずれの透過も抑制されているこ
とが分かる。
【0046】以上のことから、機械部品基体の表面の一
部又は全部にダイアモンド状炭素膜(DLC膜)を形成
た機械部品は潤滑性、耐摩耗性、撥水性、ガスバリア
性に優れることが分かる。なお、炭素膜とこれと接触す
る他物品との摺動性は、炭素膜とアルミニウム材との摺
動性とほぼ同様であるため、本発明の機械部品は他の物
品との摺動性が優れると考えられる。
【0047】また、前処理を施した後形成した炭素膜は
密着性が優れることが分かる。
【0048】
【発明の効果】以上のように本発明によると、他物品と
の摺動性が良好で、耐摩耗性に優れ、劣化し難い機械部
品(自動車部品及び画像形成装置部品を除く)及びその
製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る機械部品の製造に用いることがで
きる成膜装置の1例の概略構成を示す図である。
【図2】本発明に係る機械部品の製造に用いることがで
きる成膜装置の他の例の概略構成を示す図である。
【図3】本発明に係る機械部品の1例の断面図である
【符号の説明】
1、1´ 真空チャンバ 11、11´ 排気装置 2 高周波電極 21、21´ ヒータ 22、51 マッチングボックス 23、52 高周波電源 3 接地電極 4、4´ プラズマ原料ガス供給部 5 誘導コイル電極 S1 被成膜機械部品 S1´ 基体S1の他物品との接触面 F 炭素膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/27 C23C 14/06 C30B 29/04 F16H 55/06 A63H 9/00 JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 機械部品(自動車部品及び画像形成装置
    部品を除く)であり、該機械部品基体の表面の一部又は
    全部に耐摩耗性、潤滑性のあるダイアモンド状炭素膜が
    形成されており、該機械部品基体は、該ダイアモンド状
    炭素膜の形成面が樹脂及びゴムから選ばれた少なくとも
    1種の材料からなり、柔軟性を有し、該ダイアモンド状
    炭素膜は前記基体の膜形成面の柔軟性を損なわない範囲
    の厚さに形成されていることを特徴とする機械部品。
  2. 【請求項2】 前記機械部品はシール材である請求項1
    記載の機械部品
  3. 【請求項3】 機械部品(自動車部品及び画像形成装置
    部品を除く)の製造方法であり、該機械部品基体の表面
    の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性のあるダイアモンド
    状炭素膜を形成する工程を含み、該機械部品基体は該ダ
    イアモンド状炭素膜の形成面が樹脂及びゴムから選ばれ
    た少なくとも1種の材料からなり、柔軟性を有し、前記
    工程においては該ダイアモンド状炭素膜を前記基体の膜
    形成面の柔軟性を損なわない範囲の厚さに形成すること
    を特徴とする機械部品の製造方法
  4. 【請求項4】 前記ダイアモンド状炭素膜の形成に先立
    ち、前処理として、前記機械部品基体の膜形成面をフッ
    素(F)含有ガス、水素(H 2 )ガス及び酸素(O 2
    ガスから選ばれた少なくとも1種のガスのプラズマに曝
    す請求項3記載の機械部品の製造方法
  5. 【請求項5】 前記ダイアモンド状炭素膜をプラズマC
    VD法により形成する請求項3又は4記載の機械部品の
    製造方法
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