JP3637915B2 - 自動車用バルブ部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用部品、特に自動車用バルブ部品の製造方法に関する。
自動車用バルブ部品の材質として、比較的耐熱性が優れるポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の樹脂が提案されている。
しかしながら、樹脂からなる自動車用バルブ部品は、弁体と弁座が相互に接触することにより摩耗、劣化したり、摺動性が低下したりする。
そこで本発明は、他物品との摺動性が良好で、耐摩耗性に優れ、劣化し難い自動車用バルブ部品の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために本発明は、自動車用バルブ部品の基体の有機材料からなる膜形成すべき面を、前処理として、フッ素(F)含有ガス又は水素(H2 )ガスのプラズマに曝して該膜形成すべき面をフッ素終端処理又は水素終端処理する前処理工程と、前記前処理工程後に、該膜形成すべき面に耐摩耗性、潤滑性のあるDLC膜をプラズマCVD法により形成する工程とを含む自動車用バルブ部品の製造方法を提供する。
本発明に係る自動車用バルブ部品の製造方法により得られる自動車用バルブ部品は、その基体の表面の一部又は全部に耐摩耗性、潤滑性を有する炭素膜が形成されているため、その部分は他物品との滑りが良く、またその部分は他物品との摩擦により摩耗や劣化が生じ難い。さらに、該炭素膜が摩耗し難いことから良好な潤滑性が長期にわたり維持される。
自動車用バルブ部品基体の表面の一部又は全部としては、例えば他物品との接触面等が考えられる。この接触面は例えば弁体基体では弁座との接触面であり、弁座基体では弁体との接触面である。
自動車用バルブ部品の基体の有機材料からなる膜形成すべき面の材質としては、例えば、比較的耐熱性が高い、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の樹脂を挙げることができる。
自動車用バルブ部品基体に形成するDLC(Diamond Like Carbon) (ダイヤモンド状炭素)膜は、潤滑性良好であり、また、他物品との摩擦により摩耗し難く、且つ、その厚さを調整することにより、基体が柔軟性を有するものである場合にも該基体本来の柔軟性を損なわない程度にすることができる、適度な硬度を有する炭素膜である。また、ガスバリア性、撥水性が良好であるとともに、電気絶縁性が良好である。また、その厚さを調整することにより、光を透過できる。さらに、比較的低温で形成できる等、成膜を容易に行うことができる。
また、いずれにしても炭素膜の膜厚は、基体上に密着性良好に形成でき、さらに基体の保護膜として十分機能できるとともに、基体が柔軟性を有するものである場合にも該基体本来の柔軟性を損なわない範囲内であればよい。
また、本発明に係る自動車用バルブ部品の製造方法においては、DLC膜形成に先立ち、前処理として、バルブ部品基体の膜形成すべき面を、フッ素(F)含有ガス又は水素(H2 )ガスのプラズマに曝す。これにより、自動車用バルブ部品基体は、このような前処理を施されたものとなる。
前記フッ素含有ガスとしては、フッ素(F2 )ガス、3フッ化窒素(NF3 )ガス、6フッ化硫黄(SF6 )ガス、4フッ化炭素(CF4 )ガス、4フッ化ケイ素(SiF4 )ガス、6フッ化2ケイ素(Si2 6 )ガス、3フッ化塩素(ClF3 )ガス、フッ化水素(HF)ガス等を挙げることができる。
自動車用バルブ部品基体の膜形成面が樹脂等の有機材料からなる場合、フッ素含有ガスプラズマを採用するときは、これによって基体表面がフッ素終端され、水素ガスプラズマを採用するときは、これによって基体表面が水素終端される。フッ素−炭素結合及び水素−炭素結合は安定であるため、このように終端処理することで膜中の炭素原子が基体表面部分のフッ素原子又は水素原子と安定に結合を形成する。これにより、炭素膜とシール材基体との密着性を向上させることができる。
また、前処理用ガスとして酸素(O2 )ガスを採用することもでき、基体の膜形成すべき面を酸素ガスプラズマに曝すことで、基体表面に付着した有機物等の汚れを効率良く除去でき、これにより、その後形成する炭素膜と基体との密着性を向上させることができる。
自動車用バルブ部品基体の有機材料からなる膜形成すべき面を酸素ガスプラズマで前処理する場合、該基体を酸素ガスプラズマに曝した後、フッ素含有ガスプラズマ又は水素ガスプラズマに曝し、その上に炭素膜を形成するときには、基体表面がクリーニングされた後、該面がフッ素終端又は水素終端されて、その後形成する炭素膜と該基体表面との密着性は非常に良好なものとなる。
また、本発明における炭素膜形成方法としては、自動車用バルブ部品基体に熱的損傷を与えない温度範囲で膜形成できる方法として、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、特にプラズマCVD法を用いる場合は、被成膜基体のプラズマによる前処理と炭素膜形成とを同一の装置で行うことができる。
プラズマCVD法により炭素膜を形成する場合のプラズマ原料ガスとしては、炭素膜形成に一般に用いられるメタン(CH4 )、エタン(C2 6 )、プロパン(C3 8 )、ブタン(C4 10)、アセチレン(C2 2 )、ベンゼン(C6 6 )、4フッ化炭素(CF4 )、6フッ化2炭素(C2 6 )等の炭素化合物ガス、及び必要に応じて、これらの炭素化合物ガスにキャリアガスとして水素ガス、不活性ガス等を混合したものを用いることができる。
以上発明したように、本発明によると、他物品との摺動性が良好で、耐摩耗性に優れ、劣化し難い自動車用バルブ部品の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る自動車用バルブ部品の製造に用いることができる成膜装置の1例の概略構成を示す図である。また、図3(A)は本発明方法により製造される自動車用バルブ部品の1例(自動車の吸排気弁に採用される弁体)の一部の断面図である。なお、図3(B)は炭素膜を形成した自動車用防振部材例の断面図を参考的に示している。
この装置は、排気装置11が付設された真空チャンバ1を有し、チャンバ1内には電極2及びこれに対向する位置に電極3が設置されている。電極3は接地され、電極2にはマッチングボックス22を介して高周波電源23が接続されている。また、電極2にはその上に支持される被成膜基体を成膜温度に加熱するためのヒータ21が付設されている。また、チャンバ1にはガス供給部4が付設されて、内部にプラズマ原料ガスを導入できるようになっている。ガス供給部4には、マスフローコントローラ411、412・・・及び弁421、422・・・を介して接続された1又は2以上のプラズマ原料ガスのガス源431、432・・・が含まれる。
この装置を用いて、例えば、図3(B)に示す自動車用防振部材を製造するにあたっては、自動車用防振部材基体S1を他物品との接触面S1´を対向する電極3の方に向けて電極2上に配置し、排気装置11の運転にてチャンバ1内部を所定の真空度にする。次いで、ガス供給部4からチャンバ1内にフッ素含有ガス、水素ガス及び酸素ガスのうち1種以上のガスを前処理用ガスとして導入するとともに高周波電源23からマッチングボックス22を介して電極2に高周波電力を供給し、これにより前記導入した前処理用ガスをプラズマ化し、該プラズマの下で基体S1の表面処理を行う。
次いで、必要に応じてチャンバ1内を再び真空引きした後、ガス供給部4からチャンバ1内に成膜用原料ガスとして炭素化合物ガスを導入するとともに高周波電源23から電極2に高周波電力を供給し、これにより前記導入した炭素化合物ガスをプラズマ化し、該プラズマの下で基体S1の他物品との接触面S1´に炭素膜を形成する。
このようにして、図3(B)に示すように、自動車用防振部材基体S1の他物品との接触面S1′に炭素膜Fが形成された炭素膜被覆自動車用防振部材が得られる。
また、この装置を用いて、本発明に係る自動車用バルブ部品を製造するにあたっても、自動車用防振部材の製造と同様にして、自動車用バルブ部品基体S5の他物品との接触面S5´(図3(A)参照、図示例では弁座への当接面)に前記表面処理及び炭素膜形成を行う。
このようにして、図3(A)にその一部を示すように、自動車用バルブ部品基体S5の他物品との接触面S5´にほぼ均一に炭素膜Fが形成された炭素膜被覆自動車用バルブ部品が得られる。
また、本発明方法を実施するにあたり、図1の装置に代えて図2に示す成膜装置を用いることもでき、この場合、基体が立体構造物であるときにも該基体の表面に効率良く膜形成することができる。
図2の装置は、誘導結合型のプラズマCVD装置であり、真空容器1´を有しており、容器1´の外周には誘導コイル電極5が巻回して設けられ、該電極5両端にはマッチングボックス51及び高周波電源52が接続されている。また、真空容器1´の外側には、被成膜基体を成膜温度に加熱するためのヒータ21´が設けられている。
また、真空容器1´には排気装置11´を配管接続してあるとともに、成膜用原料ガスのガス供給部4´を配管接続してある。ガス供給部4´には、マスフローコントローラ411´、412´・・・・及び弁421´、422´・・・・を介して接続された1又は2以上の成膜用原料ガスを供給するガス源431´、432´・・・・が含まれている。
図2は自動車用防振部材基体S1に炭素膜を形成する様子を示しているが、基体S1に代えて自動車用バルブ部品基体S5を配置し、該基体に炭素膜を形成できる。この装置を用いて基体に炭素膜を形成するにあたっては、図1の装置を用いた基体への表面処理及び炭素膜形成と同様にし、但し、原料ガスのプラズマ化を誘導コイル電極5への高周波電力印加により行う。この場合も、表面処理(前処理)を行えばよい。
次に、図1の装置を用いて、エチレン−プロピレン−ジエン系モノマーの三元共重合体ゴム(EPDM)からなる試験片の表面にDLC膜を形成した実験例を説明する。
実験例1
前述した、図1の装置を用いた炭素膜形成において、前処理用ガスプラズマによる試験片の前処理を行わず、該試験片の外表面に直接DLC膜を形成した。
試験片材質 EPDM
サイズ 20cm×20cm×厚さ1cm
高周波電極2サイズ 40cm×40cm
成膜条件
成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
成膜真空度 0.1Torr
成膜速度 500Å/min
成膜時間 20min
実験例2
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で水素ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
実験例3
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件でフッ素化合物ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
実験例4
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらに水素ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
実験例5
前記実験例1において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらにフッ素化合物ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例1と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
次に、図1の装置を用いて、自動車用バルブ部品等の材料として用いられることがあるポリイミドからなる試験片の表面にDLC膜を形成した実験例を説明する。
実験例6
前述した、図1の装置を用いた炭素膜形成において、前処理用ガスプラズマによる試験片の前処理を行わず、該試験片の外表面に直接DLC膜を形成した。
試験片材質 ポリイミド
サイズ 20cm×20cm×厚さ1cm
高周波電極2サイズ 40cm×40cm
成膜条件
成膜用原料ガス メタン(CH4 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
成膜真空度 0.1Torr
成膜速度 500Å/min
成膜時間 20min
実験例7
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で水素ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
実験例8
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件でフッ素化合物ガスプラズマによる前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
実験例9
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらに水素ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 水素(H2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
実験例10
前記実験例6において、成膜に先立ち、同試験片に次の条件で酸素ガスプラズマによる第1の前処理を施し、さらにフッ素化合物ガスプラズマによる第2の前処理を施した。成膜条件は前記実験例6と同様とした。
第1前処理条件
前処理用ガス 酸素(O2 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
第2前処理条件
前処理用ガス 6フッ化硫黄(SF6 ) 100sccm
高周波電力 周波数13.56MHz、300W
処理真空度 0.1Torr
処理時間 5min
次に、前記実験例1〜5により得られたDLC膜被覆試験片及びDLC膜を形成していない未処理の同様の試験片(比較実験例1)について、並びに前記実験例6〜10により得られたDLC膜被覆試験片及びDLC膜を形成していない未処理の同様の試験片(比較実験例2)について、アルミニウム材との摩擦係数及びダイアモンド材との摩耗特性、さらに撥水性をそれぞれ評価した。また、実験例1〜10により得られた各DLC膜被覆試験片についてDLC膜と試験片との密着性を評価した。
摩擦係数は、試験片表面にアルミニウムからなるピン状物品の先端部を当接させ、且つ、該ピン状物品に10gの荷重をかけた状態でこのピンを20mm/secの速度で移動させたときの値を測定し、摩耗特性は、試験片表面にダイアモンドからなるピン状物品の先端部を当接させ、且つ、それに100gの荷重をかけた状態で20mm/secの速度で移動させ、1時間あたりに摩耗した深さを測定することで評価した。膜密着性は、円柱状部材を接着剤を用いて膜表面に接合させ、該円柱状部材を膜に対して垂直方向に引っ張って該膜を試験片本体から剥離させ、剥離に要した力を測定する引っ張り法により評価した。撥水性は、試験片上に水滴をおき、その接触角を測定することで評価した。
なお、接触角は、空気中にある固体面上に液体があるとき、固体、液体、気体の3相の接触点で液体に引いた切線と固体面のなす角のうち、液体を含む方の角をいい、大きいほど撥水性がよいことを示す。
結果を次表に示す。
摩擦係数 摩耗特性 膜密着強度 接触角
(μm/h) (kg/mm2) ( ° )
実験例1 1 0.9 2 100
実験例2 1 0.7 4 100
実験例3 1 0.7 4 100
実験例4 1 0.5 5 100
実験例5 1 0.5 5 100
実験例6 1 0.7 2 110
実験例7 1 0.6 4 110
実験例8 1 0.6 4 110
実験例9 1 0.5 5 110
実験例10 1 0.5 5 110
比較実験例1 3 2.5 ─ 80
比較実験例2 3 1.8 ─ 85
このように、DLC膜を被覆した実験例1〜5及び実験例6〜10の各試験片では、アルミニウム材との間の摩擦係数はDLC膜を被覆していない比較実験例1及び比較実験例2の試験片よりそれぞれ小さく、潤滑性(摺動性)がよいことが分かる。また、ダイアモンド材との間の摩耗特性値もDLC膜を被覆していない比較実験例1及び比較実験例2の試験片より小さかった。
また、前記実験例1〜10の各DLC膜の試験片本体への密着強度は、DLC膜形成に先立ち試験片本体表面に対しプラズマによる前処理を施した実験例2〜5の試験片の方が、前処理を施さない実験例1の試験片より、また実験例7〜10の試験片の方が、前処理を施さない実験例6の試験片より、それぞれ大きかった。
また、DLC膜を被覆した実験例1〜5及び実験例6〜10の各試験片では、水の接触角はDLC膜を被覆していない比較実験例1及び比較実験例2の試験片よりそれぞれ大きく、撥水性がよいことが分かる。
次に、前記実験例1と同様にして、ポリ塩化ビニリデンからなるフィルム(柔軟剤として脂肪酸誘導体を、安定剤としてエポキシ化植物油を添加したもの)の一方の表面上にDLC膜を形成したフィルム状の試験片(実験例11)及びDLC膜を形成していない未処理の同様のフィルム状の試験片(比較実験例3)について、透湿度(水蒸気透過率)及び酸素透過率をそれぞれ測定した。
透湿度は、Mocon社製ガス透過率測定装置を用い、25℃の温度下で、フィルムの一方の空間の相対湿度を100%とし、フィルムの他方の空間の相対湿度をほぼ0%として、水蒸気の透過速度を測定することで評価した。また、酸素透過率は、同様にMocon社製ガス透過率測定装置を用い、25℃の温度下で、フィルムの一方の空間の酸素濃度を100%とし、フィルムの他方の空間の酸素濃度を0%として、酸素の透過速度を測定することで評価した。
結果を次表に示す。
透 湿 度 酸素透過率
(cc/m2/day) (cc/m2/day)
実験例11 0.9 1.2
比較実験例3 12.5 14.0
このように、DLC膜を被覆した実験例11の試験片ではDLC膜を被覆していない比較実験例3の試験片より、水蒸気及び酸素のいずれの透過も抑制されていることが分かる。
以上のことから、表面の一部又は全部に炭素膜(特にDLC膜)を形成した自動車用バルブ部品は、その部分の潤滑性、耐摩耗性に優れることが分かる。なお、炭素膜とこれと接触する他物品(通常金属からなる物品)との摺動性は、炭素膜とアルミニウム材との摺動性とほぼ同様であるため、本発明の自動車用バルブ部品は他物品との摺動性が優れると言える。
また、前処理を施した後形成した炭素膜は密着性が優れることが分かる。
本発明は自動車用バルブ部品の製造に利用することができる。
本発明に係る自動車用バルブ部品の製造に用いることができる成膜装置の1例の概略構成を示す図である。 本発明に係る自動車用バルブ部品の製造に用いることができる成膜装置の他の例の概略構成を示す図である。 図(A)は本発明に係る自動車用バルブ部品の製造方法により得られる自動車用バルブ部品の1例の一部の断面図であり、図(B)は自動車用防振部材の1例の断面図を参考的に示すものである。
符号の説明
1、1´ 真空チャンバ
11、11´ 排気装置
2 高周波電極
21、21´ ヒータ
22、51 マッチングボックス
23、52 高周波電源
3 接地電極
4、4´ プラズマ原料ガス供給部
5 誘導コイル電極
S1 自動車用防振部材基体
S1′ 基体S1の他物品との接触面
S5 自動車用バルブ部品基体
S5′ 基体S5の他物品との接触面
F 炭素膜

Claims (3)

  1. 自動車用バルブ部品の基体の有機材料からなる膜形成すべき面を、前処理として、フッ素(F)含有ガス又は水素(H2 )ガスのプラズマに曝して該膜形成すべき面をフッ素終端処理又は水素終端処理する前処理工程と、
    前記前処理工程後に、該膜形成すべき面に耐摩耗性、潤滑性のあるDLC膜をプラズマCVD法により形成する工程と
    を含むことを特徴とする自動車用バルブ部品の製造方法。
  2. 前記前処理工程では、前記基体の膜形成すべき面を酸素(O2 )ガスのプラズマに曝した後、前記フッ素(F)含有ガス又は水素(H2 )ガスのプラズマに曝す請求項1記載の自動車用バルブ部品の製造方法。
  3. 前記有機材料はゴム又は樹脂である請求項1又は2記載の自動車用バルブ部品の製造方法。
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