JP3857901B2 - 圧延機の制御装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 - Google Patents

圧延機の制御装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のスタンドを具備するタンデム圧延機により鋼板等の圧延を実施する際に、圧下による張力制御を行うものに用いて好適な圧延機の制御装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼材の熱間圧延や冷間圧延における製品の評価基準の1つに板厚があり、圧延機における自動板厚制御(Auto Gauge Control:AGC)が行われている。本願出願人は、上記AGCに関して、特開平4−361809号公報、特開平5−261418号公報、特開2000−33410号公報等に、圧下による張力制御について開示している。
【0003】
圧下による張力制御の基本的な原理について説明する。熱間圧延プロセスにおいて出側板厚偏差を生じさせる外乱としては、スキッドマーク外乱、ロール偏芯外乱といったものがある。スキッドマーク外乱とは、被圧延材を載せるスキッドに起因して当該被圧延材の長手方向の温度ムラにより生ずる外乱であり、被圧延材に板厚偏差がない場合でも、温度の高低により変形抵抗が変動して出側板厚偏差の要因となる。また、ロール偏芯外乱とは、ワークロールに接するバックアップロールの幾何学中心と質量中心とのずれに起因してロールが上下運動し、ロールギャップ(圧下位置)が変動することによって生じる外乱である。
【0004】
圧下による張力制御では、上記スキッドマーク外乱やロール偏芯外乱の出側板厚への影響を検出する物理量として、スタンド間(iスタンド及びi+1スタンドの間)の被圧延材の単位張力に着目し、圧下による張力制御を行うことにより、スキッドマーク外乱及びロール偏芯外乱に起因して発生する出側板厚偏差を抑制するようにしている。
【0005】
いま、i+1スタンドにおいて、入側板厚H(i+1)と出側速度v(i+1)が一定のときに、スキッドマーク外乱或いはロール偏芯外乱の影響で出側板厚h(i+1)に目標値h0(i+1)からの出側板厚偏差Δh(i+1)を生じたとする。
【0006】
いかなる場合にも、i+1スタンドに単位時間に入り込む体積と出ていく体積とは同じであるから、下式(1)が成立する。
h(i+1)・v(i+1)・b(i+1)=H(i+1)・V(i+1)・B(i+1) ・・・(1)
ただし、h(i+1):i+1スタンド出側板厚[mm]
v(i+1):i+1スタンド出側速度[mm/s]
b(i+1):i+1スタンド出側板幅[mm]
H(i+1):i+1スタンド入側板厚[mm]
V(i+1):i+1スタンド入側速度[mm/s]
B(i+1):i+1スタンド入側板幅[mm]
【0007】
また、板幅変動が生じない場合は、B(i+1)=b(i+1)が成立するので、下式(2)が導かれ、出側板厚偏差Δh(i+1)は、i+1スタンド入側速度V(i+1)に対応する。
h(i+1)・v(i+1)=H(i+1)・V(i+1) ・・・(2)
【0008】
さらに、スタンド間の被圧延材の単位張力T(i)は、i+1スタンド入側速度V(i+1)とiスタンド出側速度v(i)を用いて、下式(3)に示すように、その差の積分(スタンド間を被圧延材が通過する時間内の総和)よって決まる量である。したがって、i+1スタンド入側速度V(i+1)が変動すると、スタンド間の被圧延材の単位張力T(i)が変化する。
T(i)=(E/L)∫{V(i+1)−v(i)}dt ・・・(3)
ただし、E:ヤング率
L:スタンド間距離
【0009】
以上のことより、スタンド間のルーパによる影響を考えないとすると、スキッドマーク外乱或いはロール偏芯外乱の影響による出側板厚偏差Δh(i+1)とスタンド間の被圧延材の単位張力偏差ΔT(i)とは一対一に対応する。すなわち、張力を一定にすべく圧下位置を操作することは、板圧偏差Δh(i+1)を除去することになる。また、i+1スタンドの油膜厚変動やロール膨張率の影響により、ロールバイト直下で出側板厚偏差Δh(i+1)が生じようとしても、同様の原理で完全に除去される。
【0010】
具体的な制御としては、iスタンドとi+1スタンドとの間の被圧延材の単位張力実績値T(i)を計測して、目標値Taimに対する単位張力偏差ΔT(i)を制御部に対する入力とし、この単位張力偏差ΔT(i)を抑える(実質的に零とする)ためのi+1スタンド3の圧下指令値ΔSRef(i+1)を、所定の伝達関数F(s)を用いて下式(4)により求める。
ΔSRef(i+1)=F(ΔT(i)) ・・・(4)
【0011】
そして、上記算出された圧下指令値ΔSRef(i+1)に基づいて、i+1スタンドの圧下装置を制御して圧下位置を修正する。その結果、スタンド間の被圧延材の張力を一定にすべく圧下位置が操作されるので、板圧偏差Δh(i+1)を除去することができる。
【0012】
図10には、以上説明した圧下による張力制御系を表現したブロック線図を示す。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、上記圧下による張力制御を行う場合に、スタンド間の被圧延材の張力には、圧延機の制御においては比較的高周波である30〜50[rad/s]あたりの周波数帯域にノイズ(図10に示すTnoise(i))(以下、「張力ノイズ」と称する)が含まれる場合があることが判明した。
【0014】
図11には、図10に示したブロック線図で表される張力制御系での周波数特性をシステム同定により確認した結果を示す。ここでは、同図に示すように、42[rad/s]あたりの周波数帯域に張力ノイズが生じていることが分かる。また、少なくとも8[rad/s]程度の応答が得られていることが確認される。
【0015】
ところで、制御においては、応答性等の特性を調整する場合に、ゲイン調整が比較的容易に行える理由から一般的によく用いられる。
【0016】
上記圧力による張力制御においても、スキッドマーク外乱やロール偏芯外乱の影響を十分に打ち消すには、応答性を向上させることが要求される。
【0017】
しかしながら、上記圧下による張力制御のように張力ノイズが含まれている場合に、応答性を向上させるためにゲイン調整を行う(ゲインを大きくする)だけでは、当該張力ノイズが助長されてしまう。その結果、スキッドマーク外乱或いはロール偏芯外乱の影響を十分に打ち消すことができても、助長された張力ノイズにより板厚精度を劣化させることになり、応答性の向上にあたり大きな障害となっていた。
【0018】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、高周波数帯域に存在するノイズを助長することなく、応答性を向上させるとともに、安定性を確保することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明の圧延機の制御装置は、タンデム圧延機のiスタンドとi+1スタンドとの間の被圧延材の単位張力偏差を実質上零とするための上記i+1スタンドに対する圧下指令値を求める圧延機の制御装置であって、上記圧下指令値を求めるときに位相遅れ補償を行う位相遅れ補償手段と、上記位相遅れ補償手段による位相遅れ補償の後に位相進み補償を行う位相進み補償手段とを備えた点に特徴を有する。
【0020】
本発明の圧延機の制御方法は、タンデム圧延機のiスタンドとi+1スタンドとの間の被圧延材の単位張力偏差を実質上零とするための上記i+1スタンドに対する圧下指令値を求める圧延機の制御方法であって、上記圧下指令値を求めるときに位相遅れ補償を行う手順と、上記位相遅れ補償の後に位相進み補償を行う手順とを有する点に特徴を有する。
【0021】
本発明のコンピュータプログラムは、タンデム圧延機のiスタンドとi+1スタンドとの間の被圧延材の単位張力偏差を実質上零とするための上記i+1スタンドに対する圧下指令値を求める処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、上記圧下指令値を求めるときに位相遅れ補償を行う処理と、上記位相遅れ補償の後に位相進み補償を行う処理とを実行させる点に特徴を有する。
【0022】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、上記コンピュータプログラムを格納した点に特徴を有する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の圧延機の制御装置、方法、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の形態について説明する。
【0024】
図1には、本実施の形態における圧延機の制御のための構成を示す。ここでは、熱間圧延プロセスにおけるタンデム圧延機について説明する。通常、タンデム圧延機は6〜7個のスタンドを有するが、同図にはiスタンドとi+1スタンドとのみを示す(i=1〜n)。
【0025】
図1において、1は被圧延材である鋼板である。2はiスタンド、3はi+1スタンドであり、これらスタンド2、3は、バックアップロール及びワークロールからなる圧延ロール5と、所定の板厚を得るために必要な圧延圧力を圧延ロール5に与える圧下装置6とを備える。
【0026】
4はスタンド2、3間のマスフローをコントロールするためのルーパである。7はスタンド2、3間の鋼板1の単位張力T(i)を測定する張力測定装置である。
【0027】
8は制御装置であり、上記張力測定装置7により測定されたスタンド2、3間の鋼板1の単位張力T(i)に基づいて、圧下装置6を介してi+1スタンド3のロールの圧下位置を制御することにより、スタンド2、3間の鋼板1の張力を制御する。
【0028】
制御装置8について詳細に説明すると、制御装置8のPI制御部8aでは、張力測定装置7により測定されたスタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)の目標値Taimに対する単位張力偏差ΔT(i)を入力とし、この単位張力偏差ΔT(i)を抑える(実質的に零とする)ためのi+1スタンド3の圧下指令値ΔSRef(i+1)を上式(4)により求める。かかるPI制御部8aにおける制御にはPI動作(比例積分動作)が用いられる。すなわち、制御偏差たる単位張力偏差ΔT(i)を累積し、操作量たる圧下指令値ΔSRef(i+1)を出力するもので、これによりP動作で生じる定常偏差を解消することができる。
【0029】
また、制御装置8の位相遅れ補償部8bでは、位相遅れ補償を行う。位相遅れ補償は、一般的な古典制御理論の文献においては、「高周波数域でのゲインを低下させることのできる要素であり、低周波数域ではゲインにほとんど影響を与えない。その結果、低周波数での一巡伝達関数のゲインを大きくとることができるので、定常偏差を小さくすることができる。」と記載されているが、これは、駆動系のように、制御系の一巡伝達関数が0[dB]と交差するいわゆる交差周波数が50〜100[rad/s]程度の高い周波数にある場合において表面上得られる特性である。しかし、実際には、位相遅れ補償は、高周波数域でのゲインを低下させるというよりは、低周波数でのゲインを上げる利点と、当該低周波数での位相を遅らせる機能を有する補償器と考えるのが自然法則を客観的に理解した記述である。したがって、位相遅れ補償を用いると、低周波数域のゲインが上がり、結果として閉ループを構成した場合に、定常偏差を少なくすることができるのである。
【0030】
本発明は、対象となる交差周波数が10[rad/s]程度と低い周波数域にある点と、位相遅れ補償が低周波数域のゲインを上げるため、30〜50[rad/s]に存在する張力ノイズを抑制する点に着目し、まず位相遅れ補償により低周波数域のゲインを上げ、結果として、補償以前には5〜6[rad/s]程度であった交差周波数を10[rad/s]程度に向上させる。
【0031】
また、制御装置8の位相進み補償部8cでは、上記位相遅れ補償部8bでの位相遅れ補償の後に位相進み補償を行う。一般的な古典制御理論の文献においては、「位相進み補償は、低周波数域でゲインが低下するものの、高い周波数での位相を進める作用があり、応答を速める性質を持っている。」と記載されているが、位相進み補償は、客観的には、高周波数域にゲインを上げ、かつ、高周波数域の位相を進ませる機能を有する補償器である。
【0032】
本発明は、上記の位相遅れ補償により交差周波数は向上したものの、位相が遅れた系に対して、当該交差周波数において位相を進めることで、安定性を確保しようとする技術的思想に根ざして構成されたものである。この場合に、既に位相遅れ補償において張力ノイズを抑制しているので、位相進み補償を用いることで張力ノイズの周波数域のゲインが上がっても、問題が生じにくくなっているのが重要な特徴である。
【0033】
図2には、位相遅れ補償、位相進み補償を行う場合のゲイン[dB]の変化の一例を示す。また、図3は、位相遅れ補償、位相進み補償を行う場合の位相[deg]の変化の一例を示す。なお、図中「+」は加え合わせを、矢印はその結果を示す。
【0034】
位相遅れ補償を加えると、図2に示すように、低周波数域でのゲインが上がり、補償以前には5〜6[rad/s]程度であった交差周波数が10[rad/s]程度に向上していることがわかる。また、図3に示すように、低周波数域での位相が遅れていることがわかる。
【0035】
さらに位相進み補償を加えると、図2に示すように、高周波数域でのゲインが上がっていることがわかる。また、図3に示すように、低周波数域での位相が進み、交差周波数の位相を進めることで、位相余裕が確保され、安定性が確保されていることがわかる。
【0036】
なお、回復すべき位相に応じて、位相進み補償は1回だけ行ってもよいし、適宜複数回繰り返して行ってもよい。
【0037】
また、図3に示すように、位相進み補償により位相を進めることで、ロール偏芯外乱のような10[rad/s]以上の周波数外乱があった場合にも、当該周波数域にて、位相進み補償の効果により、当該外乱の周波数域での一巡伝達関数の位相遅れが少なければ少ないほど、当該外乱の影響を助長することなく制御を実施することができると考えるのも本発明の技術的思想の一つである。なぜなら、位相遅れが−180[deg]を超えれば超えただけ逆方向に制御系が動作し、かえって悪化させるからである。
【0038】
また、本発明は、PI制御の後段に位相遅れ補償、さらに後段に位相進み補償を直列に配置するところに特徴があり、微分要素Dをも含むPID制御は行わない。なぜなら、微分動作により張力ノイズ成分が助長されることになる場合が多いからである。
【0039】
次に、圧下による張力制御を行う場合の動作を説明する。図1に示すように、鋼板1は、iスタンド2、i+1スタンド3にて順に圧延される。
【0040】
制御装置8においては、例えば、圧延実施開始後に測定されたスタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値の代表値(或いは移動平均値)を、スタンド2、3間の単位張力目標値Taimとする。
【0041】
その後、制御装置8において、スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)の目標値Taimに対する単位張力偏差ΔT(i)を入力とし、この単位張力偏差ΔT(i)を抑える(実質的に零とする)ためのi+1スタンド3の圧下指令値ΔSRef(i+1)を上式(4)により求める。
【0042】
このとき、上述したように、位相遅れ補償部8bにおいて位相遅れ補償を行い、その後に位相進み補償部8cにおいて位相進み補償を行う。
【0043】
そして、算出された圧下指令値ΔSRef(i+1)に基づいて、i+1スタンド3の圧下装置6を制御する。既述したように、スタンド2、3間のルーパ4による影響を考えないとすると、スキッドマーク外乱或いはロール偏芯外乱の影響による出側板厚偏差Δh(i+1)とスタンド2、3間の鋼板1の単位張力偏差ΔT(i)とは一対一に対応するので、単位張力偏差ΔT(i)を実質的に零とするためのi+1スタンド3の圧下指令値ΔSRef(i+1)を算出し、その圧下指令値ΔSRef(i+1)に基づいてi+1スタンド3の圧下装置6を制御することにより、出側板圧偏差Δh(i+1)を除去することが可能となる。
【0044】
以上述べた実施の形態では、位相遅れ補償部8bにおける位相遅れ補償により低周波数域でのゲインを上げて、上述したように定常偏差を小さくすることができるだけでなく、交差周波数を向上させることができる。したがって、応答性を向上させることができる。
【0045】
そして、その後に、位相進み補償部8cにおける位相進み補償を加えることにより、上記位相遅れ補償により位相が遅れた系に対して交差周波数において位相を進めることで、安定性を確保することができる。この場合に、既に位相遅れ補償において張力ノイズを抑制しているので、位相進み補償を用いることで張力ノイズの周波数域のゲインが上がっても、問題が生じにくくなっている。
【0046】
したがって、張力ノイズを助長することなく、応答性を向上させるとともに、安定性を確保することができる。
【0047】
ここで、図4〜6には、PI動作のみを行った場合のボード線図を示す。図4は、一巡伝達関数の周波数特性を表現したボード線図(同図(A)はゲイン線図で、(B)は位相線図)であり、交差周波数は5〜6[rad/s]と低いが、ゲイン余裕Gm13.6[dB]、位相余裕Pm70.5[deg]を有しているので、安定な系となっている。
【0048】
また、図5は、圧下指令値ΔSRef(i+1)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図(同図(A)はゲイン線図で、(B)は位相線図)である。0[dB]を切る周波数が1.8[rad/s]であるから、圧下にロール偏芯外乱が混入した場合、1.8[rad/s]以上の周波数の外乱により影響を受けることを示している。
【0049】
また、図6は、張力ノイズTnoise(i)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図(同図(A)はゲイン線図で、(B)は位相線図)である。同図に示すように、圧延機の制御においては比較的高周波である30〜50[rad/s]あたりの周波数帯域に張力ノイズTnoise(i)による影響が確認される。張力ノイズの周波数域(42[rad/s]近傍)が4[dB]であり、当該張力ノイズを助長することを示している。
【0050】
次に、図7〜9には、PI動作に加えて、位相進み補償その後に位相遅れ補償を行った場合のボード線図を示す。図7は、一巡伝達関数の周波数特性を表現したボード線図(同図(A)はゲイン線図で、(B)は位相線図)であり、交差周波数が10[rad/s]程度に上がり、ゲイン余裕Gm9.9[dB]、位相余裕Pm36.8[deg]を確保している。さらに、張力ノイズ42[rad/s]近傍では−250[deg]程度に抑えられている。
【0051】
図8は、圧下指令値ΔSRef(i+1)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図(同図(A)はゲイン線図で、(B)は位相線図)である。当該図8と上記図5とを比較しても分かるように、位相進み補償により、高い周波数での位相が進んでいることが理解される。0[dB]を切る周波数が13.6[rad/s]であるから、圧下にロール偏芯外乱が混入した場合、13.6[rad/s]以上の周波数の外乱により影響を受けることを示している。したがって、ロール偏芯外乱除去性能が単にPI制御を実施した場合よりも向上している。
【0052】
ところが、位相進み補償を行うと、高い周波数での位相が進む結果、高周波帯域でのゲインが上がってしまう。そのため、圧延機の制御においては比較的高周波である30〜50[rad/s]あたりの周波数帯域に張力ノイズが助長されることになる。そして、位相進み補償を行った後に位相遅れ補償を行ったとしても、高周波帯域に存在する張力ノイズを除去することはできない。図9は、張力ノイズTnoise(i)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図(同図(A)はゲイン線図で、(B)は位相線図)であるが、同図に示すように、圧延機の制御においては比較的高周波である30〜50[rad/s]あたりの周波数帯域に張力ノイズTnoise(i)による影響が残ったままである。張力ノイズ42[rad/s]の近傍では1[dB]程度に抑えられているため、PI制御単体による制御に比べて、張力ノイズの影響を受けにくくなっている。
【0053】
それに対して、本実施の形態では、まず位相遅れ補償を行うことにより、定常偏差を小さくすることができるだけでなく、交差周波数を向上させることができ、応答性を向上させることができる。そして、その後に位相進み補償を加えることにより、上記位相遅れ補償により位相が遅れた系に対して交差周波数において位相を進めることで、安定性を確保することができる。この場合に、既に位相遅れ補償において張力ノイズを抑制しているので、位相進み補償を用いることで張力ノイズの周波数域のゲインが上がっても、問題が生じにくくなっている。
【0054】
(他の実施の形態)
上述した実施の形態の制御装置8の機能を実現するべく各種のデバイスを動作させるように、該各種デバイスと接続された装置或いはシステム内のコンピュータに対し、上記実施の形態の機能を実現するためのコンピュータプログラムを供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU或いはMPU)に格納されたプログラムに従って上記各種デバイスを動作させることによって実施したものも、本発明の範疇に含まれる。
【0055】
また、この場合、上記コンピュータプログラム自体が上述した実施の形態の機能を実現することになり、本発明を構成する。そのコンピュータプログラムの伝送媒体としては,プログラム情報を搬送波として伝搬させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN、インターネット等のWAN、無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体(光ファイバ等の有線回線や無線回線等)を用いることができる。
【0056】
さらに、上記コンピュータプログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体は本発明を構成する。かかる記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0057】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、張力ノイズを助長することなく、応答性を向上させるとともに、安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における圧延機の制御のための構成を示す模式図である。
【図2】位相遅れ補償、位相進み補償を行う場合のゲインの変化の一例を示す図である。
【図3】位相遅れ補償、位相進み補償を行う場合の位相の変化の一例を示す図である。
【図4】PI動作のみを行った場合における一巡伝達関数の周波数特性を表現したボード線図である。
【図5】PI動作のみを行った場合における圧下指令値ΔSRef(i+1)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図である。
【図6】PI動作のみを行った場合における張力ノイズTnoise(i)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図である。
【図7】PI動作に加えて、位相進み補償その後に位相遅れ補償を行った場合における一巡伝達関数の周波数特性を表現したボード線図である。
【図8】PI動作に加えて、位相進み補償その後に位相遅れ補償を行った場合における圧下指令値ΔSRef(i+1)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図である。
【図9】PI動作に加えて、位相進み補償その後に位相遅れ補償を行った場合における張力ノイズTnoise(i)→スタンド2、3間の鋼板1の単位張力実績値T(i)という閉ループにおける周波数特性を表現したボード線図である。
【図10】圧下による張力制御系を表現したブロック線図である。
【図11】張力制御系での周波数特性をシステム同定により確認した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2 iスタンド
3 i+1スタンド
4 ルーパ
5 圧延ロール
6 圧下装置
7 張力測定装置
8 制御装置
8a PI制御部
8b 位相遅れ補償部
8c 位相進み補償部

Claims (7)

  1. タンデム圧延機のiスタンドとi+1スタンドとの間の被圧延材の単位張力偏差を実質上零とするための上記i+1スタンドに対する圧下指令値を求める圧延機の制御装置であって、
    上記圧下指令値を求めるときに位相遅れ補償を行う位相遅れ補償手段と、
    上記位相遅れ補償手段による位相遅れ補償の後に位相進み補償を行う位相進み補償手段とを備えたことを特徴とする圧延機の制御装置。
  2. 上記圧下指令値を求めるために比例積分動作を行う比例積分手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧延機の制御装置。
  3. タンデム圧延機のiスタンドとi+1スタンドとの間の被圧延材の単位張力偏差を実質上零とするための上記i+1スタンドに対する圧下指令値を求める圧延機の制御方法であって、
    上記圧下指令値を求めるときに位相遅れ補償を行う手順と、
    上記位相遅れ補償の後に位相進み補償を行う手順とを有することを特徴とする圧延機の制御方法。
  4. 上記圧下指令値を求めるために比例積分動作を行うことを特徴とする請求項3に記載の圧延機の制御方法。
  5. タンデム圧延機のiスタンドとi+1スタンドとの間の被圧延材の単位張力偏差を実質上零とするための上記i+1スタンドに対する圧下指令値を求める処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
    上記圧下指令値を求めるときに位相遅れ補償を行う処理と、
    上記位相遅れ補償の後に位相進み補償を行う処理とを実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
  6. 上記圧下指令値を求めるために比例積分動作を行うことを特徴とする請求項5に記載のコンピュータプログラム。
  7. 請求項5又は6に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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