JP3857142B2 - 液晶用マトリクス基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示装置に用いられる液晶用マトリクス基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の様に、液晶表示装置としては、TFTと略称される薄膜トランジスタをスイッチング素子として用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置がある。このアクティブマトリクス型液晶表示装置では、多数のTFTを透明なガラス基板上に形成した液晶マトリクス基板を用いる。この液晶マトリクス基板は、フォトリソグラフィのプロセスによる微細なパターニングを繰り返すことにより製造されるため、その製造工程に多数枚のフォトマスクを必要とする。その一方では、液晶表示装置の生産性及び製造歩留まりの向上、あるいはコストの低減を図るために、フォトマスクの枚数の低減、つまりはフォトリソグラフィのプロセスの簡略化が望まれている。
【0003】
ところで、アクティブマトリクス型液晶表示装置の低消費電力化及び高輝度化を図るには、液晶セルの光透過率を改善せねばならず、液晶マトリクス基板の開口率を向上させることが必要である。この開口率を向上させる方法としては、液晶セルに電界を与える画素電極を平坦な保護膜上に形成すると共に、走査用のゲート電極もしくは薄膜トランジスタを画素電極に立体的にオーバラップさせるという方法が知られており、この方法により80%を超える高開口率を実現することができる。
【0004】
この様な高開口率の液晶マトリクス基板は、走査用のゲート電極と画像データ転送用のソース電極とが交差するG−S交差領域、薄膜トランジスタ領域、画素電極領域、及び周辺回路の端子領域等を含んでおり、図9乃至図14に示す様な製造工程により製造される。
【0005】
まず、図9(a)に示す様に、ガラス基板21上にゲート電極膜22を成膜する。ゲート電極膜22は、スパッタリング法等によって生成されるものであって、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)等の金属膜である。このゲート電極膜22上に、フォトレジストを均一に塗布し、1枚目のフォトマスクを用いて、図9(b)に示す様なレジストパターン23を形成する。そして、このレジストパターン23をマスクとして用いてエッチングを行い、図9(c)に示す様にゲート電極膜22をパターニングする。
【0006】
次に、図10(d)に示す様にゲート絶縁膜24、第1半導体層25、及び第2半導体層26の3層をプラズマCVD法やスパッタリング法により連続的に積層して成膜する。ゲート絶縁膜24は、例えば窒化シリコン(SiNx)膜である。第1半導体層25は、アモルファス−シリコン(a−Si)膜である。第2半導体層26は、n型不純物を高濃度にドープしたシリコン(n+ −Si)膜である。
【0007】
次に、フォトレジストを全体に塗布し、2枚目のフォトマスクを用いて、図10(e)に示す様なレジストパターン27を形成する。このレジストパターン27は、薄膜トランジスタ領域のみに形成され、G−S交差領域及び端子領域には形成されない。このレジストパターン27をマスクとして用いてエッチングを行い、図10(f)に示す様に第1半導体層25及び第2半導体層26を島状にパターニングする。
【0008】
次に、レジストパターン27を除去し、図11(g)に示す様にソースドレイン電極膜28を成膜する。ソースドレイン電極膜28は、スパッタリング法等によって生成されるものであって、クロム、アルミニウム、タンタル等の金属膜である。この後、ソースドレイン電極膜28上に、フォトレジストを均一に塗布し、3枚目のフォトマスクを用いて、図11(h)に示す様なレジストパターン29を形成する。このレジストパターン29は、チャネル領域を除く薄膜トランジスタ領域、及びG−S交差領域に形成される。このレジストパターン29をマスクとして用いてエッチングを行い、図11(i)に示す様に薄膜トランジスタ領域内のチャネル領域でソースドレイン電極膜28及び第2半導体層26を除去し、ソース電極とドレイン電極を分離する。更に、チャネル領域で第1半導体層25を半ばエッチングして、チャネル領域の厚みを調整する。
【0009】
次に、図12(j)に示す様にレジストパターン29を除去する。そして、図12(k)に示す様にパッシベーション膜30をCVD法及びスパッタリング法等により全面に形成する。パッシベーション膜30は、例えば窒化シリコン(SiNx)等の保護膜である。更に、図12(l)に示す様に感光性アクリル系樹脂膜31を塗布して、その表面を平坦化する。
【0010】
次に、4枚目のフォトマスクを用いて、図13(m)に示す様に感光性アクリル系樹脂膜31をパターニングする。このパターニングにより、感光性アクリル系樹脂膜31にパッシベーション膜30に達する各貫通孔を形成する。この感光性アクリル系樹脂膜31をマスクとして用いてエッチングを行い、図13(n)に示す様に感光性アクリル系樹脂膜31の表面から薄膜トランジスタのドレイン電極に達するコンタクトホール31aを形成すると共に、感光性アクリル系樹脂膜31の表面から端子領域のゲート電極22に達するコンタクトホール31bを形成する。尚、ここでは図示されていないものの、感光性アクリル系樹脂膜31の表面から薄膜トランジスタのソース電極に達するコンタクトホール(図示せず)も同時に形成する。
【0011】
次に、図13(o)に示す様に透明導電膜32をスパッタリング法等によって全面に形成する。透明導電膜32は、酸化インジウム錫(ITO)や酸化錫(SnO2 )等である。5枚目のフォトマスクを用いて、透明導電膜32をパターニングし、図14(p)に示す様な画素電極33を形成する。この画素電極33は、感光性アクリル樹脂膜31を介してゲート電極膜22もしくは薄膜トランジスタ領域と立体的にオーバラップしているので、この液晶マトリクス基板34の開口率を高くすることができる。
【0012】
尚、レジストパターン27により第1半導体層25及び第2半導体層26を島状にパターニングするに際し、レジストパターン27を薄膜トランジスタ領域だけではなく、G−S交差領域にも形成し、第1半導体層25及び第2半導体層26がG−S交差領域に残存する構造にしても、同様の特性を有する液晶マトリクス基板を得ることができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の製造工程においては、図9(b)、図10(e)、図11(h)、図13(m)、及び図14(p)の各工程でそれぞれのフォトマスクを用いており、合計で5枚のフォトマスクを必要とし、このフォトマスクの枚数の多さがプロセス時間の長期化や製造歩留まりの低下の原因になっていた。
【0014】
このため、例えば特開平5−303111号公報に記載の技術では、ゲート電極の下地層及び画素電極となるITO透明電極を基板上に形成し、下地層に電界メッキを施してゲート電極を形成し、これによりフォトプロセスを用いることなくゲート電極のパターニングを行ない、フォトマスクの枚数を低減している。しかしながら、それでも、5枚のフォトマスクを必要とし、プロセス時間や製造歩留まりを改善することができなかった。また、ゲート電極と画素電極が同一の層に形成されるため、これらを立体的にオーバラップさせることができず、開口率の向上を望めなかった。更に、ゲート電極を電界メッキにより作成する場合は、電位降下により膜厚が不均一になり易く、特に大型の基板では膜厚の均一性、つまりゲート電極の厚みの均一性を保つことができなかった。
【0015】
また、特開平2000−206571号公報に記載の技術では、1枚のフォトマスクを用いて、厚みが不均一なレジストパターンを形成し、図10(e)〜図11(i)に相当する各工程を該1枚のフォトマスクにより行うことを可能にしている。この厚みが不均一なレジストパターンは、例えば特開昭61−181130号公報等に開示されている様に、該レジストパターンに対する露光量を不均一にすることにより形成することができる。
【0016】
あるいは、特開2000−206571号公報に記載の技術では、1枚のフォトマスクを用いて、厚みが不均一なレジストパターンを形成し、その上で、2段階のエッチングを行っており、フォトマスクの使用枚数を1枚だけ減少させている。同様の技術は、C.W.Kim et al.によるSid2000Digest 第1006〜1009頁の「A Novel Four-Mask-Count Process Architecture for TFT-LCD」や、月刊FPDintelligence の1995年5 月項の第31頁〜第35頁に記載の「三国電子 IPS TFT-LCDを2PEPで製造するプロセスを考案−TFT チャネル部分をハーフトーン露光」に報告されている。
【0017】
しかしながら、これらの技術においては、フォトマスクの使用枚数を1枚だけ減少させるに過ぎない。また、IPS(In Plane Switching)モードのアクティブマトリクス型液晶表示装置の製造工程への適用を主に説明しているだけであって、ゲート電極もしくは薄膜トランジスタと画素電極を立体的にオーバラップさせ、開口率を高めた液晶マトリクス基板の製造工程への適用の可能性については言及していない。
【0018】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ゲート電極もしくは薄膜トランジスタと画素電極を立体的にオーバラップさせた液晶マトリクス基板の製造工程への適用が可能であって、フォトマスクの使用枚数をより減少させることが可能な液晶用マトリクス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の液晶セルを駆動するためのマトリクス回路を電気絶縁性基板上に形成する液晶マトリクス基板の製造方法において、電気絶縁性基板上のマトリクス回路に溌水性透明樹脂層を積層する透明樹脂層積層工程と、溌水性透明樹脂層に電気絶縁膜を積層する電気絶縁膜形成工程と、電気絶縁膜にレジストを塗布し、この後に露光量を調整したハーフトーン露光により、各液晶セルの画素電極領域のレジストを該画素電極領域内のコンタクトホール領域を除く範囲で硬化させ、各液晶セルの画素電極領域を区画する区画領域のレジストを半ば硬化させ、各コンタクトホール領域のレジストを未硬化にするレジスト形成工程と、レジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層のパターニングにより、各コンタクトホール領域でレジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層を消失させて、マトリクス回路に達する各コンタクトホールを電気絶縁膜に形成し、各液晶セルの画素電極領域を区画する区画領域でレジスト及び電気絶縁膜を消失させて、該区画領域で溌水性透明樹脂層を露出させるパターニング工程と、残存したレジストを除去し、パターニングされた電気絶縁膜に導電剤を塗布して、画素電極領域に画素電極を形成する画素電極形成工程とを含んでいる。
【0020】
この様な本発明の製造方法によれば、ハーフトーン露光をレジストに施してから、レジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層をパターニングしている。これにより、各コンタクトホール領域でレジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層が消失して、マトリクス回路に達する各コンタクトホールが電気絶縁膜及び溌水性透明樹脂層に形成され、各液晶セルの画素電極領域を区画する区画領域でレジスト及び電気絶縁膜が消失して、溌水性透明樹脂層が露出する。そして、レジストを除去した上で、電気絶縁膜に導電剤を塗布している。このとき、区画領域の溌水性透明樹脂層表面で導電剤が撥ね返されて、ここに塗布されず、導電剤が画素電極領域に塗布されて画素電極となり、かつ導電剤がコンタクトホール領域に充填される。これにより、画素電極が形成され、コンタクトホールが充填される。従って、1枚のフォトマスクを用いるだけで、画素電極の形成、コンタクトホールの形成、コンタクトホールの充填を行うことができる。
【0021】
また、本発明においては、マトリクス回路は、複数の薄膜トランジスタを含むTFTアクティブマトリクス回路であり、TFTアクティブマトリクス回路の製造工程は、電気絶縁性基板上にゲート電極膜を成膜してパターニングするゲート電極膜パターニング工程と、ゲート絶縁膜、各薄膜トランジスタのチャネル領域となる第1半導体層、オーミックコンタクト層となる第2半導体層、ソースドレイン電極となる金属層を順次積層する積層工程と、露光量を調整したハーフトーン露光及びパターニングにより、第1及び第2半導体層を島状に形成し、ソースドレイン電極を形成し、チャネル領域を形成する分離パターニング工程と、パッシベーション膜を成膜するパッシベーション工程とを含んでいる。
【0022】
この様なTFTアクティブマトリクス回路の製造工程においては、ゲート電極膜のパターニングのために1枚のフォトマスクを用い、第1及び第2半導体層、ソースドレイン電極、チャネル領域の形成のために1枚のフォトマスクを用いている。更に、先に述べた様に画素電極の形成、コンタクトホールの形成、コンタクトホールの充填のために1枚のフォトマスクを用いている。従って、このTFTアクティブマトリクス回路を含む液晶マトリクス基板を製造するには、合計で3枚のフォトマスクを用いるだけで済む。
【0023】
更に、本発明においては、溌水性透明樹脂層を溌水性フッ素系樹脂により形成し、電気絶縁膜をアクリル系樹脂により形成し、画素電極となる導電剤を塗布型透明導電材料としている。
【0024】
この様な材料の設定により、区画領域の溌水性透明樹脂層表面で導電剤が撥ね返されて、ここに塗布されず、導電剤が画素電極領域のアクリル系樹脂に塗布されて画素電極となり、かつ導電剤がコンタクトホール領域に充填される。これにより、フォトマスクが節減され、画素電極及びコンタクトホールを高精度で形成することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1乃至図6は、本発明の液晶用マトリクス基板の製造方法の一実施形態を示している。尚、ここに示す液晶用マトリクス基板は、走査用のゲート電極と画像データ転送用のソース電極とが交差するG−S交差領域、薄膜トランジスタ領域、液晶セルに電界を与える画素電極の領域、及び周辺回路の端子領域等を含んでいる。
【0027】
まず、図1(a)に示す様に、ガラス基板1上にゲート電極膜2を成膜する。ゲート電極膜2は、スパッタリング法等によって生成されるものであって、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)等の金属膜である。このゲート電極膜2上に、フォトレジストを均一に塗布し、1枚目のフォトマスクを用いて、図1(b)に示す様なレジストパターン3を形成する。そして、このレジストパターン3を用いてエッチングを行い、図1(c)に示す様にゲート電極膜2をパターニングする。
【0028】
次に、図2(d)に示す様にゲート絶縁膜4、第1半導体層5、及び第2半導体層6の3層をプラズマCVD法やスパッタリング法により連続的に積層して成膜し、更にソースドレイン電極膜7をプラズマCVD法やスパッタリング法により積層して成膜する。ゲート絶縁膜4は、例えば窒化シリコン(SiNx)膜である。第1半導体層5は、アモルファス−シリコン(a−Si)膜である。第2半導体層6は、n型不純物を高濃度にドープしたシリコン(n+ −Si)膜である。ソースドレイン電極膜7は、クロム、アルミニウム、タンタル等の金属膜である。
【0029】
次に、フォトレジストを全体に1回塗布し、2枚目のフォトマスクとして、スリット等により露光量を調整したマスクを用いて、ハーフトーン露光を行い、更に現像を行うことにより、図2(e)に示す様な不均一な厚みを有するレジストパターン8を形成する。レジストパターン8は、端子領域に形成されず、G−S交差領域及び薄膜トランジスタ領域に形成されており、薄膜トランジスタ領域内のチャネル領域5aでのみ薄くされて、薄肉部8aとなっている。そして、このレジストパターン8を用いてエッチングを行い、図2(f)に示す様にレジストパターン8に覆われていない領域で、ゲート絶縁膜4、第1及び第2半導体層5,6という3つの層と、該領域のソースドレイン電極膜7を除去する。
【0030】
次に、図3(g)に示す様にレジストパターン8全体の厚みをアッシングにより減少させて、図2(f)に示すレジストパターン8の薄肉部8aを除去し、薄膜トランジスタ領域内のチャネル領域5aでソースドレイン電極膜7を露出させる。そして、このレジストパターン8をマスクとして用いてエッチングを行い、図3(h)に示す様に薄膜トランジスタ領域内のチャネル領域でソースドレイン電極膜7及び第2半導体層6を除去し、ソース電極とドレイン電極を分離する。更に、チャネル領域で第1半導体層5を半ばエッチングして、チャネル領域の厚みを調整する。
【0031】
次に、図3(i)に示す様にレジストパターン8を除去し、図4(j)に示す様にパッシベーション膜9をCVD法及びスパッタリング法等により全面に形成する。パッシベーション膜9は、例えば窒化シリコン(SiNx)等の保護膜である。更に、図4(k)に示す様に溌水性を有する樹脂材料、例えばフッ素系溌水性樹脂材料を塗布して溌水性透明樹脂層10を形成し、その上に感光性を有する電気絶縁性樹脂材料、例えば感光性アクリル系樹脂を塗布して、感光性アクリル系樹脂膜11を形成し、その表面を平坦化して、この感光性アクリル系樹脂膜11を80〜100℃でプリベークしてから、図4(l)に示す様にレジスト層12を塗布する。
【0032】
次に、3枚目のフォトマスクとして、スリット等により露光量を調整したマスクを用いて、ハーフトーン露光を行い、更に現像を行うことにより、図5(m)に示す様にレジスト層12をパターニングして、不均一な厚みのレジストパターン12Pを形成する。このハーフトーン露光により、各コンタクトホール領域でレジスト層12が硬化せず、コンタクトホール領域を除く画素電極領域でレジスト層12が硬化し、画素電極領域を区画する区画領域でレジスト層12が半ば硬化する。そして、現像により、各コンタクトホール領域で消失し、コンタクトホール領域を除く画素電極領域で十分な厚みとなり、画素電極領域を区画する区画領域で薄肉となるレジストパターン12Pが形成される。
【0033】
次に、レジストパターン12Pをマスクとしてドライエッチングを行う。これにより、図5(n)に示す様に画素電極領域内の一方のコンタクトホール領域では、感光性アクリル系樹脂膜11、溌水性透明樹脂層10、及びパッシベーション膜9が除去されて、薄膜トランジスタのドレイン電極に達するコンタクトホール12cが形成され、また他方のコンタクトホール領域では、感光性アクリル系樹脂膜11、溌水性透明樹脂層10、パッシベーション膜9、及びゲート絶縁膜4が除去されてゲート電極膜2に達するコンタクトホール12dが形成される。尚、ここでは図示されていないものの、感光性アクリル系樹脂膜11、溌水性透明樹脂層10、及びパッシベーション膜9を貫通して薄膜トランジスタのソース電極に達するコンタクトホール(図示せず)も同時に形成される。
【0034】
同時に、画素電極領域を区画する区画領域では、薄肉のレジストパターン12P及び感光性アクリル系樹脂膜11が除去されて、孔12eが形成され、溌水性透明樹脂層10の表面が露出する。画素電極領域では、レジストパターン12Pが残存し、このレジストパターン12Pにより感光性アクリル系樹脂膜11の表面が覆われる。
【0035】
次に、図6(o)に示す様にレジストパターン12Pを全て除去する。最後に、図6(p)に示す様に酸化インジウム錫(ITO)等の塗布型透明導電材13をスピンコート等により塗布する。このとき、塗布型透明導電材13は、区画領域の溌水性透明樹脂層10表面で撥ね返されるので、区画領域を除く他の部位に付着して塗布される。従って、塗布型透明導電材13は、画素電極領域の感光性アクリル系樹脂膜11表面に付着し、各コンタクトホール12c,12dに充填される。更に、塗布型透明導電材13を200〜250℃で焼成すると、画素電極領域に付着した塗布型透明導電材13が画素電極となり、各コンタクトホール12c,12dに充填された塗布型透明導電材13が導電パターンとなる。
【0036】
こうして製造された図6(p)に示す液晶用マトリクス基板14は、ゲート電極膜もしくは薄膜トランジスタと画素電極が立体的にオーバラップしており、開口率が高いものとなる。
【0037】
また、本実施形態の製造工程においては、図1(b)、図2(e)、及び図5(m)の3つの工程でそれぞれのフォトマスクを使用しているので、合計3枚のフォトマスクを用いて、液晶用マトリクス基板を製造することができる。図7は、本実施形態の製造工程における3枚のフォトマスクの役目と、従来の製造工程における5枚のフォトマスクの役目とを対比して示す図表である。図7の図表から明らかな様に本実施形態の製造工程においては、ハーフトーン露光を行う2枚目と3枚目のフォトマスクを適用したことにより、フォトマスクの枚数を減少させている。
【0038】
従って、本実施形態によれば、ゲート電極膜もしくは薄膜トランジスタと画素電極を立体的にオーバラップさせて、開口率を高くした液晶マトリクス基板を製造することができ、かつフォトマスクの枚数をより少なくすることができる。
【0039】
また、画素電極を酸化インジウム錫(ITO)等の塗布型透明導電材を塗布して形成するので、画素電極をプラズマCVD法やスパッタリング法等の真空成膜法により形成するよりも、製造コストを低く抑えることができる。
【0040】
図8は、本実施形態におけるハーフトーン露光を行うフォトマスクの構造、このフォトマスク透過光量、このフォトマスクにより形成されるレジストの厚みを例示している。このフォトマスク15は、光を100%透過する透過部15A、光を遮断する遮光部15B、及び光の透過率を適宜に設定されて、光を半ば透過するメッシュ部15Cを有している。
【0041】
一般のフォトマスクは、透過部15A及び遮光部15Bのみを有している。これに対して、フォトマスク15は、更にメッシュ部15Cを有している。このメッシュ部15Cは、例えば使用される光の分解能よりも小さな間隔のメッシュパターンやスリットパターンからなる。例えば、フォトマスク15をポジ型のレジストに用いた場合は、透過部15Aに対応するレジスト部分の厚みが零となり、つまり該レジスト部分が消失し、遮光部15Bに対応するレジスト部分の厚みが最大となり、メッシュ部15Cに対応するレジスト部分の厚みが該メッシュ部15Cの透過光量に比例することになる。
【0042】
また、撥水性の樹脂を用いるという方法は、例えばカラーフィルターの製造に関連して、特開平8−179113号公報や特開平8−292313号公報に開示されている。
【0043】
本実施形態では、溌水性透明樹脂層とハーフトーン露光を行うマスクを組み合わせて、画素電極を生成している。この様な画素電極の形成は、単純マトリクス型液晶表示装置のマトリクス基板にも適用することができる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明した様に本発明によれば、ハーフトーン露光をレジストに施してから、レジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層をパターニングしている。これにより、各コンタクトホール領域でレジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層が消失して、マトリクス回路に達する各コンタクトホールが電気絶縁膜及び溌水性透明樹脂層に形成され、各液晶セルの画素電極領域を区画する区画領域でレジスト及び電気絶縁膜が消失して、溌水性透明樹脂層が露出する。そして、レジストを除去した上で、電気絶縁膜に導電剤を塗布している。このとき、区画領域の溌水性透明樹脂層表面で導電剤が撥ね返されて、ここに塗布されず、導電剤が画素電極領域に塗布されて画素電極となり、かつ導電剤がコンタクトホール領域に充填される。これにより、画素電極が形成され、コンタクトホールが充填される。従って、1枚のフォトマスクを用いるだけで、画素電極の形成、コンタクトホールの形成、コンタクトホールの充填を行うことができる。
【0045】
また、本発明によれば、ゲート電極膜のパターニングのために1枚のフォトマスクを用い、第1及び第2半導体層、ソースドレイン電極、チャネル領域の形成のために1枚のフォトマスクを用いている。更に、先に述べた様に画素電極の形成、コンタクトホールの形成、コンタクトホールの充填のために1枚のフォトマスクを用いている。従って、このTFTアクティブマトリクス回路を含む液晶マトリクス基板を製造するには、合計で3枚のフォトマスクを用いるだけで済む。
【0046】
更に、本発明によれば、溌水性透明樹脂層を溌水性フッ素系樹脂により形成し、電気絶縁膜をアクリル系樹脂により形成し、画素電極となる導電剤を塗布型透明導電材料としている。この様な材料の設定により、区画領域の溌水性透明樹脂層表面で導電剤が撥ね返されて、ここに塗布されず、導電剤が画素電極領域のアクリル系樹脂に塗布されて画素電極となり、かつ導電剤がコンタクトホール領域に充填される。これにより、フォトマスクが節減され、画素電極及びコンタクトホールを高精度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の液晶用マトリクス基板の製造方法の一実施形態における各工程を示す図である。
【図2】(d)〜(f)は、図1に引き続く各工程を示す図である。
【図3】(g)〜(i)は、図2に引き続く各工程を示す図である。
【図4】(j)〜(l)は、図3に引き続く各工程を示す図である。
【図5】(m)及び(n)は、図4に引き続く各工程を示す図である。
【図6】(o)及び(p)は、図5に引き続く各工程を示す図である。
【図7】本実施形態の製造工程における3枚のフォトマスクの役目と、従来の製造工程における5枚のフォトマスクの役目とを対比して示す図表である。
【図8】本実施形態におけるハーフトーン露光を行うフォトマスクの構造、フォトマスクの透過光量、フォトマスクにより形成されるレジストの厚みを例示する図である。
【図9】(a)〜(c)は、液晶用マトリクス基板の従来の製造方法における各工程を示す図である。
【図10】(d)〜(f)は、図9に引き続く各工程を示す図である。
【図11】(g)〜(i)は、図10に引き続く各工程を示す図である。
【図12】(j)〜(l)は、図11に引き続く各工程を示す図である。
【図13】(m)〜(o)は、図12に引き続く各工程を示す図である。
【図14】(p)は、図13に引き続く工程を示す図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 ゲート電極膜
3,8 レジストパターン
4 ゲート絶縁膜
5 第1半導体層
6 第2半導体層
7 ソースドレイン電極膜
9 パッシベーション膜
10 溌水性透明樹脂層
11 感光性アクリル系樹脂膜
12 レジスト層
13 塗布型透明導電材
14 液晶用マトリクス基板
Claims (3)
- 複数の液晶セルを駆動するためのマトリクス回路を電気絶縁性基板上に形成する液晶マトリクス基板の製造方法において、
電気絶縁性基板上のマトリクス回路に溌水性透明樹脂層を積層する透明樹脂層積層工程と、
溌水性透明樹脂層に電気絶縁膜を積層する電気絶縁膜形成工程と、
電気絶縁膜にレジストを塗布し、この後に露光量を調整したハーフトーン露光により、各液晶セルの画素電極領域のレジストを該画素電極領域内のコンタクトホール領域を除く範囲で硬化させ、各液晶セルの画素電極領域を区画する区画領域のレジストを半ば硬化させ、各コンタクトホール領域のレジストを未硬化にするレジスト形成工程と、
レジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層のパターニングにより、各コンタクトホール領域でレジスト、電気絶縁膜、及び溌水性透明樹脂層を消失させて、マトリクス回路に達する各コンタクトホールを電気絶縁膜に形成し、各液晶セルの画素電極領域を区画する区画領域でレジスト及び電気絶縁膜を消失させて、該区画領域で溌水性透明樹脂層を露出させるパターニング工程と、
残存したレジストを除去し、パターニングされた電気絶縁膜に導電剤を塗布して、画素電極領域に画素電極を形成する画素電極形成工程と
を含むことを特徴とする液晶用マトリクス基板の製造方法。 - マトリクス回路は、複数の薄膜トランジスタを含むTFTアクティブマトリクス回路であり、
TFTアクティブマトリクス回路の製造工程は、
電気絶縁性基板上にゲート電極膜を成膜してパターニングするゲート電極膜パターニング工程と、
ゲート絶縁膜、各薄膜トランジスタのチャネル領域となる第1半導体層、オーミックコンタクト層となる第2半導体層、ソースドレイン電極となる金属層を順次積層する積層工程と、
露光量を調整したハーフトーン露光及びパターニングにより、第1及び第2半導体層を島状に形成し、ソースドレイン電極を形成し、チャネル領域を形成する分離パターニング工程と、
パッシベーション膜を成膜するパッシベーション工程と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶用マトリクス基板の製造方法。 - 溌水性透明樹脂層を溌水性フッ素系樹脂により形成し、電気絶縁膜をアクリル系樹脂により形成し、画素電極となる導電剤を塗布型透明導電材料としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶用マトリクス基板の製造方法。
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