JP3854334B2 - 放電バルブを有する車両用灯具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の前照灯に用いて好適な車両用灯具に関し、特に放電バルブを光源とする灯具による電磁波の影響を防止した車両用灯具に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における自動車の前照灯として、発光効率及び演色性が良好で寿命の長い放電バルブを光源とする灯具の適用が検討されている。しかしながら、この種の灯具では、放電バルブでの放電を発生させるための高電圧が必要とされるため、車載バッテリ電圧を必要とされる高電圧まで昇圧させる点灯回路を灯具に付属させる必要がある。そして、この点灯回路ではその二次側において高電圧が発生され、この高電圧に伴う電磁波が外部に放射されて自動車の各種電子装置にノイズとして影響を与え、これら電子装置の正常動作を妨げることになる。例えば、ラジオに雑音を生じさせたり、或いは自動車に搭載の各種制御用のマイクロコンピュータの信号系にノイズを混入させることになり、いわゆるEMI障害を発生させる。
【0003】
また、このような電磁波は前記した高電圧が印加される放電バルブにおいても発生し、この放電バルブからの電磁波により前記したEMI障害が発生されている。このため、放電バルブの周囲に導電性材料からなるシールド板やシェード等を配設して放電バルブからの電磁波の放射を抑制する対策がなされている。しかしながら、この対策では、灯具内にこれらの部品を配設する必要があるために、部品点数の増大やその組み付け作業の増大をまねき、しかもこれらの部品の隙間からの電磁波の放射を有効に防止することが難しいという問題がある。このようなことから、放電バルブを内装するランプボディの表面に耐久性に優れた金属メッキ層を形成し、この金属メッキ層を電磁波遮蔽層として放電バルブから外部への電磁波の放射を抑制する技術が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術は、金属メッキをランプボディの表面、すなわち、外面に形成しているため、灯具を車体に取り付ける際における灯具と車体との物理的な接触や、取付後における耐候性により、金属メッキ層に剥がれが生じ、この剥がれ部分からの電磁波の漏れが生じるという問題がある。したがって、従来では前記したような耐久性に優れた金属メッキ層を得るためには、電解メッキ法によるメッキや、メッキ層の膜厚を厚くする等の対策が必要であり、メッキ作業が面倒になり、あるいはメッキ材料の増加に伴うコスト高が生じるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、このような放電バルブを光源とする車両用灯具における、電磁波のシールド性能を高めた車両用灯具を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、灯具ボディ内にリフレクタが配設され、かつこのリフレクタ内に光源としての放電バルブが設けられた車両用灯具において、リフレクタの外面または灯具ボディの内面の少なくとも一方に無電解メッキ層を有することを特徴とする。この無電解メッキ層は、表面抵抗値が15mΩ/□以下、膜厚は0.85〜2μmの範囲である。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車の4灯式前照灯に適用した実施形態の一部を破断した正面図、図2および図3はそれぞれ図1のAA線、BB線に沿う水平、垂直の各断面図である。これらの図において、灯具ボディ1の内部には2つの回転放物面形状のリクレクタ3,4が連設された一体型リフレクタ2が内装されており、自動車に装備したときに車体の外側に位置されるすれ違いビームランプLL側のリフレクタ3には放電バルブ5が、また、自動車車体の内側に位置される走行ビームランプHL側のリフレクタ4にはハロゲンバルブ6が、それぞれ着脱可能に取着されている。これらのバルブ5,6はいずれも前記リフレクタ3,4の背面側に開口されたバルブ取付穴3a,4aを利用して取着されている。
【0008】
また、これらバルブ5,6に対向する灯具ボディ1の背面にはそれぞれバルブ挿通用の開口部1a,1bが設けられ、この開口部1a,1bを通して前記各バルブ5,6の着脱が可能とされている。そして、放電バルブ5のすれ違いビームランプLL側の開口部1aには着脱可能なバックカバー7がシールリング8を介して装着され、また、走行ビームランプHL側の開口部1bにはゴムカバー9が装着され、これらにより各開口部1a,1bが防水状態で封止されている。なお、すれ違いビームランプLLの放電バルブ5のソケット5aには詳細を後述する高電圧コードに接続されたコネクタ18が装着され、走行ビームランプHLのハロゲンランプ6のソケットコネクタ6aは前記ゴムカバー9の外側に突出され、これに図外のコネクタが接続される。前記灯具ボディ1の前面開口にはレンズ10が取着され、灯室を構成している。
【0009】
図4(a)に一部を拡大図示するように、前記一体型リフレクタ2、すなわちリフレクタ3,4は、それぞれの内面にはアルミニウム膜12が塗布または蒸着されて反射面が形成されている。また、その一方で、リフレクタ3の外面には無電解メッキが施され、シールドメッキ層13が形成されている。このシールドメッキ層13は、後述するように所要の表面抵抗値となるようにその膜厚やメッキ層構造が設定されており、これによりシールドメッキ層13で前記放電バルブ5の少なくとも周囲を包囲するように構成される。また、前記リフレクタ3に設けられたバルブ取付穴3aには金属製のソケットフィクチャ11が固定され、前記放電バルブ5はこのソケットフィクチャ11に係止されるリテーナスプリング14によりバルブ取付穴3aの内縁部に弾圧支持されている。
【0010】
そして、前記放電バルブ5のソケット5aにはコネクタ18が嵌合される。このコネクタ18は灯具ボディ1の底面に取着された点灯回路ケース23に内蔵される点灯回路20から延長された高電圧コード19が接続されている。この高電圧コード19は、可撓性のある筒状の金属網シールド筒21内に挿通されており、この金属網シールド筒20は点灯回路20側において接地されていることで、高電圧コード19からの電磁波の放射を防止するように構成される。また、コネクタ18の外側には放電バルブ5の背後を覆うようにカバー体22が被せられ、前記ソケットフィクチャ11によりその開口縁部が支持されてリフレクタ3の背面に支持される。このカバー体22はその外面に金属メッキ層24が形成され、その一部において前記金属網シールド筒21に接触されてこれと電気接続されることで接地状態とされる。さらに、このカバー体22がリフレクタ3に支持された状態では、その外面の金属メッキ層24がソケットフィクチャ11を介してリフレクタ3のシールドメッキ層13に接触され、このシールドメッキ層13を接地状態としている。
【0011】
さらに、前記放電バルブ5の前側には、所要の配光特性を得るための金属製のシェード17が配設されており、このシェード17の遮蔽部171から後方に向けて突出された一対の脚部172は前記リフレクタ3のバルブ取付穴3aにおいて前記ソケットフィクチャ11によりリフレタク3に固定されている。そして、この固定された状態では前記リフレクタ3の外面に形成されたシールドメッキ層13に接触され、このシールドメッキ層13を介して接地状態とされている。
【0012】
ここで、前記したシールドメッキ層13および金属メッキ層24には、無電解メッキ法により形成したメッキ層を採用する。無電解メッキ法は、周知のように樹脂等の非導電材の表面にメッキを行う場合に有効であり、種々の膜構成のものが提案されている。ここでは、図4(a)のCの部分、すなわちリフレクタ3の一部の断面構造を図4(b)に示すように、樹脂からなるリフレクタ3の表面にメッキ付着性塗料層13aを形成し、この塗料層13aの表面に無電解銅層13bと、無電解ニッケル層13cを順次無電解メッキ法により形成した構成を採用している。
【0013】
したがって、以上説明した構成の本実施形態の前照灯では、リフレクタ3の外面のシールドメッキ層13、カバー体22の外面の金属メッキ層24、金属製シェード17により放電バルブ5の周囲ないし背面領域、および前側の一部領域が覆われることになる。そして、前記金属メッキ層24は高電圧コード19を被覆する金属網シールド筒21を介して接地状態とされ、シールドメッキ層13はこの金属メッキ層24ないしソケットフィクチャ11を介して接地状態とされ、さらに金属製シェード17はこのシールドメッキ層13を介して接地状態とされるため、放電バルブ5はこれら接地電位に保持された導電層からなるシールド層によって包囲され、これにより放電バルブ5ないしそのソケット5aからの電磁波が周囲に放射されることが抑制される。
【0014】
そして、この場合、電磁波をシールドするための前記シールドメッキ層13、金属メッキ層24はいずれも灯具ボディ1の内部に存在する部材の表面に形成されているため、これらのメッキ層13,24が灯具の外部に露呈されることはない。したがって、灯具を車体に取着する際、或いは車体に取着した後においてもこれらのメッキ層が車体やその他の物体と干渉して剥がれが生じることは殆どなく、電磁波の漏れが防止され、信頼性の高い電磁波のシールド効果を得ることができる。
【0015】
ここで、前記シールドメッキ層13、および金属メッキ層24について説明する。本発明者の実験によれば、自動車用灯具における前記した電磁波障害を回避するためには、これらのメッキ層からなるシールド層における電磁波のシールド効果としては、約−70dB程度が必要であることが確認されている。しかしながら、このシールド効果の値に基づいて前記したシールド層、すなわちメッキ層を作製しようとすると、シールド効果の測定が困難であるために熟練を有し、かつ測定値に個人差が生じることから安定したシールド効果が得られるメッキ層を得ることは難しい。そこで、本発明者は図5(a)に示すような、シールド効果とメッキ層の表面抵抗値との関係を求めた。この図から判るように、前記したシールド効果−70dBを得るためには、メッキ層の表面抵抗値は13.4mΩ/□以下であればよく、多少の誤差を見込んでも、約15mΩ/□以下であればよいことが判る。したがって、メッキ層の表面抵抗値に基づいてメッキ層を作製することとすれば、安定なシールド効果を得ることが可能となる。
【0016】
なお、前記した表面抵抗値に対応するメッキ層の膜厚についての測定を行ったところ、図5(b)の結果が得られた。この結果から、前記した表面抵抗値13.4mΩ/□以下を確保するためには、メッキ層の膜厚を0.85μm以上にすればよいことが判る。この膜厚は厚くすればそれだけ表面抵抗値が低下されてシールド効果が高められるが、本発明者の実験によれば、2μm以上の膜厚にしてもシールド効果に顕著な効果の改善はみられず、かえってメッキ材料の消費が増大され、かつメッキ時間が長くなり、コスト高をまねくことになる。逆に膜厚が前記範囲よりも薄いと、所望の表面抵抗値が得られず、シールド効果に満足するものが得られない。したがって、メッキ層の膜厚を0.85〜2μmの範囲に管理することが好ましい。
【0017】
ここで、前記したメッキ層を管理するに際しては、メッキ層の表面抵抗値を管理することが好ましい。すなわち、表面抵抗値は、例えば、「ロレスタAP」等のような表面抵抗計を用いることで容易に測定可能である。これに対し、メッキ層を膜厚等に基づいて管理する場合は、同じロットで製造された製品の少なくとも1つを破壊してその膜厚を測定する必要があり、その分製造の歩留りが低下されることになる。したがって、表面抵抗値に基づいてメッキ層を管理する方が、製造歩留りが低下されることがない点で有利となる。
【0018】
なお、前記実施形態では、放電バルブを取着しているリフレクタ3の外面にシールドメッキ層13を形成した例を示しているが、灯具ボディ1の内面にシールドメッキ層を形成してもよい。ただし、この場合には、シールドメッキ層を接地するためにシールドメッキ層の一部にシールド配線を接続することが必要となる。このように構成しても、シールドメッキ層は放電バルブの周囲を包囲することになるため、放電バルブからの電磁波が灯具の外部に放射されることを防止することができる。また、シールドメッキ層が灯具ボディの外面に露呈されることがないため、灯具を車体に取着する際、あるいは取着後におけるシールドメッキ層の剥がれが防止でき、信頼性の高いシールド効果を得ることがてきる。また、このシールドメッキ層として、前記した無電解メッキ層を採用し、かつその際に無電解メッキ層の膜厚を管理することで、その表面抵抗値を所要の範囲内に管理でき、所望のシールド効果を容易に得ることができることは言うまでもない。
【0019】
また、リフレクタ3の外面と、灯具ボディ1の内面のそれぞれにシールドメッキ層を形成すれば、放電バルブ5に対して二重のシールドが形成されることになり、電磁波の放射をさらに有効に防止することも可能となる。
【0020】
さらに、本発明は、図6に示すように、光源として放電バルブ5を用いたプロジェクション型のランプ15を灯具ボディ1に内装させた灯具においても同様に適用できる。このプロジェクション型のランプ15はリフレクタ151,レンズホルダ152,レンズ153で構成されているが、樹脂で形成されているリフレクタ151の外面にシールドメッキ層13を形成することで放電バルブ5からの電磁波が周囲に放射されることを防止することができる。また、このシールドメッキ層13は前記実施形態と同様に灯具ボディ1の外部に露呈されることがないため、灯具の取付時や取付後におけるシールドメッキ層13の剥がれが防止でき、電磁波のシールド効果の信頼性を高めることができる。
【0021】
また、この実施形態の場合には、コネクタ18を覆うカバー体が設けられていないため、灯具ボディ1の開口1aに取着されるバックカバー7の内面に金属メッキ層16を形成している。そして、この金属メッキ層16、前記シールドメッキ層13はそれぞれコード25,26で相互に電気接続し、図には示されないシールド筒等により接地状態とする。さらに、この実施形態では、プロジェクションランプ15と灯具ボディ1との間に配設されるエクステンション27の内面にも金属メッキ層28を形成し、コード29によりシールドメッキ層13に電気接続して接地状態としている。したがって、これらのシールドメッキ層13、金属メッキ層16,28により放電バルブ5の周囲ないし背後に向けての電磁波の放射を効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、灯具ボディの内面または灯具ボディ内に内装されたリフレクタの外面にシールドメッキ層として表面抵抗値が15mΩ/□以下、膜厚が0.85〜2μmの範囲の無電解メッキ層を形成しているので、放電バルブで発生される電磁波をこの無電解メッキ層で遮蔽して外部に放射されることが防止でき、電子装置に対するEMI障害を有効に防止することができる。また、この無電解メッキ層が灯具ボディの外部に露呈されることがないため、灯具を車体に取着する際、或いは車体に取着後においてもこれらのメッキ層に剥がれが生じることは殆どなく、電磁波の漏れが防止され、信頼性の高い電磁波のシールド効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の灯具の一実施形態の正面図である。
【図2】図1のAA線に沿う水平断面図である。
【図3】図1のBB線に沿う垂直断面図である。
【図4】要部の拡大断面図とそのC部の拡大断面図である。
【図5】電磁波シールド効果と金属メッキ層の表面抵抗率との関係と、金属メッキ層の表面抵抗率とメッキ膜厚の関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態の垂直断面図である。
【符号の説明】
1 灯具ボディ
3,4 リフレクタ
5 放電バルブ
7 バックカバー
11 ソケットフィクチャ
12 アルミニウム膜
13 シールドメッキ層
15 プロジェクションランプ
17 金属シェード
18 コネクタ
19 高電圧コード
20 点灯回路
21 シールド筒
22 カバー体
24 金属メッキ層
27 エクステンション
28 金属メッキ層
Claims (1)
- 灯具ボディ内にリフレクタが配設され、かつこのリフレクタ内に光源としての放電バルブが設けられた車両用灯具において、前記リフレクタの外面または灯具ボディの内面の少なくとも一方に無電解メッキ層を有し、前記金属メッキ層は表面抵抗値が15mΩ/□以下、膜厚が0.85〜2μmの範囲であることを特徴とする放電バルブを有する車両用灯具。
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- 1996-05-28 JP JP13291896A patent/JP3854334B2/ja not_active Expired - Fee Related
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