JP3854192B2 - コンバインにおける運転操作部構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機体の走行中、植生した穀稈を刈り取りながら脱穀し、その穀粒を収穫するものとしたコンバインにおける運転操作部構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
機台前部の左右一側に形成された空間部の後部へ運転座席を有し、この運転座席の前方に左右巾を運転座席の全巾に概ね合致された床面を形成され、この床面の前寄り箇所の概ね巾中央部にステアリングコラムを起立状に固設されると共に前記運転座席に座した運転者により回転操作される操向ハンドルをこのステアリングコラムに装設され、この操向ハンドルから前記運転座席までの前記床面の機体内方側にサイドコラムを形成され、このサイドコラムの上部とステアリングコラムの上寄り箇所とを略90度曲がりの結合棒部材で結合するほか、前記床面の最前部に下端縁部の左右巾をこの床面の略全巾に及ぶ寸法となされ且つ上縁部高さを前記運転座席の座面と略同一か若しくはそれよりも高くなされたフロントマスクを装着されたものとなされたコンバインは本出願人特願平2001−238832により既に提案されているものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記コンバインにおいては、運転者が地上から運転操作部上に乗車するとき、操向ハンドルが回転変位自在であるため身体支持用のアシストバーとして有効に機能せず、しかも操向ハンドルの機体外方側近傍には身体を支える上で寄与するアシストバーが不足しているため、運転者自身の身体を十分に支えることができず、運転操作部への乗車が円滑に行えないのであり、また操向ハンドルを操作して自走走行時に畦の乗越し等で機体が大きく揺れることがあるが、このようなときに身体を迅速且つ安定的に支えることが難しいのが実情である。
本発明は、これらの問題点を解消させることのできるコンバインにおける運転操作部構造を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第一の発明では、脱穀装置と刈取装置とを機体に設け、機体の前部に前進方向に向かってステアリングコラムとサイドコラムとを配置し、後側に運転座席を設けて右側から乗降できるように右側のみ開放した空間を備えた運転操作部を構成したコンバインにおいて、前記運転座席の前方に、回転操作される操向ハンドルと前記ステアリングコラムを装設すると共に、操向ハンドルの横部から運転座席の側方にわたって脱穀部前部まで機体内方側に前記サイドコラムを形成して、サイドコラムの上部とステアリングコラムの上寄り箇所とを略90度曲がりの結合棒部材で結合するほか、前記運転座席の前方に床面を形成し,該床面の最前部に、下端縁部の左右巾が床面の略全巾に及ぶ寸法となされ,且つ、上縁部高さが前記運転座席の座面と略同一か若しくはそれよりも高くなされたフロントマスクを装着し、該フロントマスク(39)の上部の略全巾箇所に横長の透孔を設け、透孔の上側である上部フロントマスク部分を横向きの棒状となし、フロントマスクの下端部の左右箇所は、前記床面の左右箇所からこれと同体状に起立させた固定片に締結部材で固定すると共に、前記透孔の下側近傍のフロントマスク部分でステアリングコラムを挟む左右箇所を、前記結合棒部材の左右向き部分に固定され前記フロントマスクの左右長さと略同一長さとなされた左右向き支持部材の両端部に締結部材で固定した構成となす。
【0005】
これによれば、前記上部フロントマスク部分が前方から前記フロントマスクの前面へ向かう穀稈などを受け止め後方へ案内するように作用すると共に、作業者の作業に便利に握れるアシストバーとして機能するものとな、アシストバーとして使用される前記上部フロントマスク部分は機体が大きく揺れたときの前記運転操作部上の運転者の身体の支持に有効に作用するのであり、また、運転者が前記運転操作部の外側方の地上からこの運転操作部の床面に乗車するときに前記上部フロントマスク部分を握ることにより、前記上部フロントマスク部分はその運転者の身体の支持に有効に作用なす。
また、前記ステアリングコラムと前記サイドコラムとで強固に位置保持された前記結合棒部材が前記左右向き支持部材を介して前記透孔の下側近傍のフロントマスク部分の左右端部を支持し、また前記床面の左右箇所からこれと同体状に起立させた前記固定片が前記フロントマスクの下端部の左右箇所を支持するため、前記フロントマスクは前記機台に強固に固定されて、前記上部フロントマスク部分は支持剛性の大きいアシストバーとして有効に機能するものとなる
【0006】
また、上記請求項1記載の発明は次のように具体化するのがよいのであって、即ち、請求2に記載したように、前記フロントマスクの本体部の機体内方側の側縁の略下半分範囲をさらに横方へ延長された左右向き起立面部と、上縁を後方へ延長された水平縁部とを具備した張出マスク部を形成し、前記本体部及び左右向き起立面部は前記本体部と前記サイドコラムとの間の下寄り箇所に存在した空間、及び,前記結合棒部材をこれらの前側から覆っており、また前記水平縁部は前記結合棒部材の左右向き部分の上方を覆っている構成となす。
これによれば、前記フロントマスクを運転操作部に装着することで、前記下寄り箇所に存在した空間と、前記結合棒部材との前側が覆われ、運転操作部の組立が容易となる。
また前記水平縁部の上面は前記結合棒部材の上面を覆ってこれに雨水が直接にかかるのを阻止すると共に、運転操作部上の運転者が手を添える上で寄与してその運転者の身体を安定的に支持するものとなる
【0007】
さらに、上記請求項1〜2の何れかに記載の発明は次のように具体化するのがよい。
即ち、請求項3に記載したように、前記透孔の下側周縁は、これの左右方向中央箇所の高さを最低となすような弧状に形成する構成となす。
これによれば、上部フロントマスク部分の左右端部の強度が保持された上で、前記透孔を通じることによる運転者の視界が広く確保されるものとなる
【0008】
また請求項4に記載したように、前記上部フロントマスク部分の前面は、これの左右方向中央箇所を最前方に位置させるような弧状に形成する構成となす。
これによれば、前記上部フロントマスク部分の前面がこれに当接した穀稈を円滑に後方へ案内するものとなり、また,前記上部フロントマスク部分の左右端部が前後向きに近づいて機体の側外方から把握し易くなる
【0009】
また請求項4に記載したように、前記透孔の下側周囲の近傍に位置した透孔下部フロントマスク部分の前面を上方へ向かうに伴って前記フロントマスクの本体部前面下部よりも漸次に大きく後側へ位置させるべく傾斜させると共に、前記透孔下部フロントマスク部分の前面から後面までの前後方向寸法を上方へ向かうに伴って漸次に小さくなした構成となす。
これによれば、前記透孔下部フロントマスク部分の前面が上方へ向かうに伴って前記フロントマスクの本体部前面下部よりも後側へ漸次に大きく変位されることにより、前記透孔を通じることによる運転者の前斜め下方の視界が一層広く確保されるものとなり、また,前記透孔下部フロントマスク部分の後面が後方へ変位するのを阻止できて、前記透孔下部フロントマスク部分の後面側の空間の狭隘化が防止されるものとなる
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図13は本発明に係るコンバインに関するもので、図1は右側面図、図2は正面図、図3は運転操作部を右後方から見た図、図4は運転操作部を後上方から見た図、図5は運転操作部の左側面図、図6は運転操作部の平面図、図7は運転操作部を左前方から見た図、図8は運転操作部の正面図、図9はフロントカバーを示す斜視図、図10はフロントマスクを示しAは正面図でBは平面図、図11はフロントマスクを示しAは後面図でBは中央縦断面図、図12はフロントマスクを示しAは後面図でBは中央縦断面図、図13はフロントマスクを装着する前の運転操作部の正面図である。
【0011】
図1及び図2において、1は左右一対のクローラ走行装置1a、1bからなる走行部、2は走行部1に支持された機台、そして、3は機台2の前方に設けた刈取部である。そして機台2上の前部右側で刈取部3のやや後寄り横方に運転操作部4を設け、刈取部3の後側に脱穀部5及び排藁処理部6を設け、運転操作部4の後側に穀粒タンク7を設けている。なお、5cは脱穀部5内に設けられた扱胴である
【0012】
刈取部3は分草板9、穀稈引起こし装置10、掻込み装置11、刈刃装置12及び後向き搬送部13を備えており、これら全体が機台2に支持された刈取主フレーム14を介して横向き支点軸15回りへ上下揺動可能となされている。
【0013】
この際、穀稈引起こし装置10は左右方向上の3カ所に配置された3つの引起こし部10a、10b、10cからなり、各引起こし部10a、10b、10cは圃場に植立した各穀稈条列に対して斜め後上り方向へ単列状に配列されたタインt群で穀稈を引き起こすものとなされる。掻込み装置11は刈刃装置12で刈り取られた穀稈を刈刃装置12の左右巾中央へ掻き集めて後向き搬送部13へ送り込むもので、上下配置された2つのベルト掻込み部11a、11aの複数対と、スターホイール掻込み部11cの複数からなる。後向き搬送部13は刈刃装置12で刈り取られた刈取穀稈の株元部を脱穀部5の扱室入り口へ向けて挟持搬送する株元側挟持搬送部13aと、その刈取穀稈の穂先部をフィードチェーン5aへ向けて係止搬送する穂先側係止搬送部13bとを具備したものとなされる。
【0014】
上記コンバインは、走行部1の作動により走行し、機体の前進中に分草板9が植立穀稈の条列間を移動して隣接した条列穀稈の絡みを解し、次に穀稈引起こし装置10が、上方へ移動されるタインtによりその対応した条列穀稈を引き起こし、次に刈刃装置12がこのように引き起こされた穀稈の株元を切断し、次に後向き搬送部13がこうして刈り取られた刈取穀稈を後向き斜め上方へ搬送して脱穀部5に送り込み、次に脱穀部5がこの送り込まれた刈取穀稈を脱穀すると共に脱穀により得られた穀粒や藁片などの混合物を選別して精粒を選り出し、この選り出した精粒を穀粒タンク7へ向けて送り出し、一方では排藁処理部6が前記脱穀により生成された排藁を送り込まれてこれを寸断する等の処理を行うように作動する。
【0015】
次に上記運転操作部4について詳細に説明する。
17は箱形のシートコラム18を介して機台2上の適当高さ位置に固定された運転座席で脱穀部5の前方右側に位置させてある。この際、シートコラム18はコンバインの各部に動力を供給するための図示しないエンジンを包囲するものとなされると共に右端部にエンジン用空気の取入通路をなすダクト部18aを有するものとなされている。ダクト部18aの上面で運転座席17の外側には図3に示すように縦面に沿って配置され肘掛け部としても機能する外側部アシストバー100が固設されている。運転座席17は左右一対のクローラ走行装置1a、1bの接地部mの前後方向長さの前端部の上方に配置するのであり、このように配置することにより、走行面の凹凸に対して運転座席17が上下揺動し難くなったり上下揺動の際の衝撃を受け難くなる。19は運転座席17の前側に形成された床面であり、この床面19の表面には図1などに示すように滑り止め溝の形成されたゴムマット21が敷かれている。20はステアリングコラムであり、図4に示すようにステアリングコラム20の左右側の床面部分19aは緩やかな傾斜状となされている。そして、ステアリングコラム20前側の床面部分19cは運転者の操縦時の視界に支障の生じない範囲で前方へ向け例えば凡そ100mm程度延長させるのであり、この延長部分は物品の仮置き場などとなされる。この際、延長の程度は運転座席17に座した運転者が刈取部3の前端部を運転操作部4の前端部で遮断されることなく目視できる範囲内となす。
【0016】
上記ステアリングコラム20は床面19の前寄り略巾中央位置に位置され、しかも運転座席17に座した運転者の左右の脚部間に納まる程度の左右巾となされ、さらに前後方向位置を運転座席17に座した運転者の膝部よりも少し前側となるように決定されている。このステアリングコラム20の上部からはハンドル軸22が立設されており、ハンドル軸22の上端には丸形の操向ハンドル22aが固定されている。この操向ハンドル22aは回転操作されることにより左右のクローラ走行装置1a、1bに回転速度差を発生させて機体の進路を変化させるように作用するものである。
【0017】
上記ステアリングコラム20の左右巾は実際には床面19巾の凡そ1/3程度(例えば150mm程度)となされており、またステアリングコラム20と運転座席17との間隔はこの間隔箇所に存在した床面19部分に運転者が立つことができ、しかも操向ハンドル22aを運転座席17に座した運転者が楽に回転操作できる程度の距離(例えば300mm程度)となされている。
【0018】
23はサイドコラムであって、床面17の左横側に配設され且つその高さを運転座席17の概ね座面高さ程度となされ且つ運転座席17の横方箇所から床面19の前端近傍に及ぶものとなされている。さらに具体的には、前記床面19と同体状に固定された枠状からなる図5に示すサイドコラム骨組み構造体24の上面側に、図6に示すようにレバー挿通用案内透孔a、b、c、d及び図3に示す電子表示装置fなどの設けられたサイドコラム上面板23aを固定され、またその骨組み構造体24の運転席17側となる箇所に前後方向のサイドコラム側面壁をなす縦向き側面板23bを固定され、またサイドコラム骨組み構造体24の前面及び左側面を被うものとなされた図7に示すサイドコラム側面被覆用ゴム板23dを、これの上縁部をサイドコラム上面板23aの下端部周囲に固定されることにより垂れ下がり状に装着され、さらにサイドコラム上面板23aの上面にはその前後方向部分の略全範囲に及ぶ前後向きの内側アシストバー101を配設されている。
【0019】
上記サイドコラム骨組み構造体24は次のようなものとなされるのであって、即ち、図5、図6及び図8に示すように、比較的長い前後向きの四角断面棒部材24aを備えており、この棒部材24aの前部を、機台2に固定された走行用ミッション25の上面部から起立させた前側支柱部材24bの上端部に支持させ、また前記棒部材24bの後端から左右傾斜状の結合棒24cを延出させてその上端部を脱穀部5の上部フレーム5bに支持させ、また前記棒部材24aの後寄り部を前方視門形となされた後側支柱部材24dで支持させた構造となされている。この際、後側支柱部材24dの一端は前記横向き支点軸15の軸受部材15aに固定し、他端は床面19近傍の機台2部材に固定しており、また前記棒部材24aの前端部とステアリングコラム20の前面部20aの上部とを上方視略90度の一曲がり状に屈曲された水平状の結合棒部材24eで結合すると共に、前記棒部材24aの前部、中央部及び後部に左右向きの結合片e1、e2、e3を固着し、これら結合片e1、e2、e3を介して比較的長い縦向き板部材24fを前後方向に固定した構造となしてある。
【0020】
上記レバー挿通用案内透孔a、b、c、dのそれぞれには、走行部1を駆動するための図示しない油圧駆動系の作動速度を変化させるための主変速操作レバー26、前記走行用ミッション25内の歯車の噛み合い状態を変化させて走行部1の作動速度を変化させるための副変速操作レバー27、脱穀部5への動力供給を断続させるための脱穀クラッチ操作レバー28、刈取部3への動力供給を断続させるための刈取クラッチ操作レバー29が挿通される。
【0021】
サイドコラム23の縦向き側面板23bは次のようになされているのであって、即ち、図6に示すように、前後向き垂直面部g1と、機体右側へ傾斜された前後向き傾斜面部g2とで形成されており、前後向き傾斜面部g2はこれの上縁を前後向き垂直面部g1の下端縁に結合されると共に、前後向きの下端縁を床面19の前後方向左端縁19bに結合された状態となされている。
【0022】
30はフートペダル式の駐車ブレーキ操作部材で、これの揺動支点軸31は床面19の近傍上方箇所に位置し、縦向き側面板23bの透孔に挿通され、機台2と同体状に固定された軸受部材32を介して揺動自在に支持されている。この駐車ブレーキ操作部材30の足踏み部30aはステアリングコラム20と前記側面板23bとの間に位置され、またそのアーム部30bは成る可く前記側面板23bの近傍に位置される。
【0023】
33は床面19の機台2部分の右側端の最前部に設けたハンドレバー式の駐車ブレーキ操作部材で横向き支点軸34回りへ揺動させることにより、走行部1への動力供給を断って操行部1の回転を規制するものである。
【0024】
35は床面19を支持した機台2部分の前端面に被着したフロントカバーであり、機台2部分にボルト固定され、図示例では上縁部35aを前記床面19高さより幾分高くなされている。このフロントカバー35は合成樹脂材で一体成形されたものであり、その詳細は図9に示すとおりであり、即ち、前面部の左右各側部を後側へ屈曲されると共に前面部の上部右側に四角状透孔35bを形成されており、適当箇所に機台2にボルト固定するための取付部を有するほか、他部品との干渉を避けるための切欠部35cを形成されたものとなされている。
【0025】
36はフロントカバー35の四角状透孔35bの後側に設けられた前照灯である。フロントカバー35の下側の機台2部材には保護パイプ37aや保護枠37bが固定されており、これら保護パイプ37aや保護枠37bは、床面19の下側構造部が機体の進行中に他物と直接に衝突するのを阻止するものとなされている。38はハンドル軸22と主変速操作レバー26とを関連させて動作させるための連係機構である。
【0026】
次に本発明に係る特徴的構成について図5、図6、図8、図10〜図13を参照して説明する。
前記運転操作部4の床面19の最前部に図10〜図12に示すようなフロントマスク39が設けてある。このフロントマスク39は、床面19高さ近傍に位置される下端縁39aの左右巾がこの床面19の略全巾に及ぶ寸法となされ且つ上縁部39b高さが運転座席17の座面と略同一なされた本体部39Aと、この本体部39Aの機体内方側の側縁39cの略下半分範囲をさらに横方へ延長した張出マスク部39Bとを備えている。この際、本体部39Aは床面19の正面に位置されると共にフロントカバー35の上縁部35aをさらに上方へ延長するように配置されており、また本体部39Aの高さは運転座席17の座面より高くなすことも差し支えない。
【0027】
フロントマスク39の全体は固定用の金具を除いた部分を合成樹脂材で一体成形されており、図10Aに示すように、本体部39A上部の略全巾箇所に横長の透孔jを形成されており、この透孔jの上側である上部フロントマスク部分39dはアシストバーとして使用される横向きの棒状となされている。
【0028】
透孔jは下側周縁の左右方向中央箇所k1の高さを最低となすような弧状に形成されており、上部フロントマスク部分39dの前面は図10Bに示すように左右方向中央箇所k2を最前方に位置させるような弧状に形成されている。
そして透孔jの下側周囲の近傍をなす透孔下部フロントマスク部分39eの前面は図12Bに示すように、上方へ向かうに伴って本体部39Aの前面下部39fよりも漸次に大きく後側へ変位させるべく傾斜させ、また透孔下部フロントマスク部分39dの前面から後面までの前後方向寸法k3は上方へ向かうに伴って漸減させている。
【0029】
一方、張出マスク部39Bは図10に示すように本体部39Aの機体内方側の側縁39cの略下半分範囲をさらに横方へ延長された左右向き起立面部39hと、上縁を後方へ延長された水平縁部39iとを具備したものとなされている。
【0030】
また図12に示すように、本体部39Aの下部後面特定箇所k4の左右端部箇所と、透孔jの下側近傍特定箇所k5の本体部39A後面の左右端部箇所とにナット40が埋設されており、これらナット40を介することにより、本体部39A下端部の左右箇所を、床面19の左右箇所からこれと同体状に起立させた図13に示す2つの固定片41、41にボルト固定すると共に、透孔jの下側近傍の本体部39A箇所でステアリングコラム20を挟む左右箇所を、結合棒部材24eの左右向き部分に固着され且つ本体部39Aの左右巾と略同一長さとなされた図13に示す左右向き支持部材42の両端部にボルト固定されている。
【0031】
本体部39Aは上方へ向かうに伴って後方へ変位するように傾斜させてあって、刈取部3の最前部に装着された分草板9の先端p1(図1参照)及びその周辺が、運転座席17に座して少し前屈み姿勢となった運転者によりフロントマスク39の上縁上及び透孔jを通じて目視される配置となされている。なお図1中、h1はフロントマスク39の上縁上を経た運転者の視線であり、h2は透孔jを通じ運転者の視線である。
【0032】
また図10に示すように本体部39Aの左右側縁39c、39jは平面視において後方へ向けて屈曲され、フロントマスク39を真横から見たときに、図5に示すように、運転座席17の座面高さに概ね合致した高さとなされたステアリングコラム20の前面部20aの上下方向全範囲においてこの前面部20aよりも後側に位置されている。
【0033】
また本体部39Aの正面視形状は、運転座席17に座した運転者が左右の足を床面19上に置いた状態の下で、第三者が本体部39Aをその正面から見たとき、本体部39Aが運転者の左右の膝を覆った状態となるように決定されている。
【0034】
さらに張出マスク部39Bは本体部39Aとサイドコラム23との間の下寄り箇所に存在した空間と、結合棒部材24eとを起立面部39hによりこれらの前側から覆うものとなし、また結合棒部材24eの左右向き部分の上方を水平縁部39iにより覆うものとなしている。
なお、床面19の前後方向左側縁19bと、サイドコラム23の右側面下部と、張出マスク部39Bの下部とで囲まれた空間は縦向き側面板23bの傾斜面部g2や図示しない付加板により地上側から遮断されるように覆われている。
【0035】
次に上記した実施例に係るコンバインの使用例や各部の作用などを説明する。
運転者は通常の運転走行中には運転座席17に座して、例えば、右足の膝部を少し曲げてその足をステアリングコラム20の右側の傾斜状となされた床面19a上に支持させ、一方では左足の膝部を90度程度に折り曲げてその足をフートペダル式の駐車ブレーキ操作部材30の足踏み部30aと運転座席17との間の床面19部分上に支持させる。このとき、ステアリングコラム20は両足間に位置するものとなる。
【0036】
そして、両手で操向ハンドル22aを持ち、必要に応じて左手又は右手で各種の操作レバー26、27、28、29などを操作し、また必要に応じて左足でフートペダル式の駐車ブレーキ操作部材30を踏み込むようにする。
【0037】
このような運転操作状態で、機体は進行されるが、この進行中、運転者は最右側の分草板9の先端p1などを目視し、例えばこの先端p1が左右で隣接した収穫作物の条間中央に位置するように、操向ハンドル22aの回転操作により機体の進路を制御する。この際、運転者は分草板9の先端p1などを運転座席17に座した状態の下で図1に示すようなフロントマスクの上縁上の視線h1或いは透孔jを通じた視線h2で目視できるため、フロントマスク39は運転者の視線を過度に遮ることはないのであり、機体の進路調整は運転者により支障なく適正に行われる。
【0038】
この際、透孔jの下側周縁を、これの左右方向中央箇所k1の高さを最低となすような弧状に形成したこと、及び、透孔jの下側周囲の近傍に位置した透孔下部フロントマスク部分39eの前面を上方へ向かうに伴ってフロントマスク39の本体部39A前面下部よりも漸次に後側へ大きく変位させるように傾斜させたことは、透孔jを通じての運転者の視界を広げる上で寄与する。また張出マスク部39Bが本体部39Aの機体内方側の側縁39cの略下半分範囲をさらに横方へ延長した態様であるため、その水平縁部39iの高さが本体部39Aやサイドコラム23よりも低くなり、水平縁部39i上を通じての運転者の分草板9周辺の視界を広げる上で寄与する。
【0039】
刈取部3が収穫作物の穀稈を刈り取る際は、刈取部3周辺には穀稈や土の粉塵や藁くずが舞い上がるのであり、このように舞い上がった粉塵などは風向きによって運転操作部4の側へ向けて流れようとする。
しかし、このような粉塵などの流れはフロントマスク39、サイドコラム23及び、サイドコラム23の縦向き側面板23bで確実に遮断され、従って運転者の足元に粉塵などがかかる事態は確実に阻止され、運転者の良好な操作性が維持されるのである。この際、張出マスク部39Bは、刈取部3で発生した塵埃がフロントマスク39の本体部39Aとサイドコラム23との間の空間を通じて床面19上に進入するのを阻止する。
【0040】
またコンバインの運転中で畦を越えるときなどには機体が大きく揺動することがあるが、このような場合には運転者は操向ハンドル22aを持った手を離して上部フロントマスク部分39dをアシストバーとして把握する動作を迅速に行うのであり、これにより上部フロントマスク部分39dは運転者の身体の前後移動を効果的に阻止するものとなる。
【0041】
また機体が左右へ大きく揺動したり、或いは運転操作部4の左右何れかへ身を乗り出すときなどには上部フロントマスク部分39dに代えて、外側部アシストバー100或いは内側アシストバー101を把握するのがよいのであり、これによりこれらアシストバー100、101は運転者の身体の左右移動を効果的に阻止するものとなる。
なお必要であれば、運転者は張出マスク部39Bの水平縁部39iの上面に手を添えて身体の安定を得ることも可能である。
【0042】
また運転操作部4の機体外側方の地上から運転操作部4の床面19上に乗り上がる際は、上部フロントマスク部分39dの棒状箇所の右端部を把握するのであり、これにより上部フロントマスク部分39dは乗り上がろうとする者の身体を安定的に支持するものとなる。
この場合、一方の手で上部フロントマスク部分39dを把握し、他方の手で外側部アシストバー100を把握することもできるのであり、これにより上部フロントマスク部分39d及び外側部アシストバー100は乗り上がろうとする者の身体の支持を一層安定的となすものとなる。
【0043】
【発明の効果】
上述した本発明によれば、次のような効果が得られる。
即ち、請求項1に記載したものによれば、上部フロントマスク部分39dにこれの前方から到来する穀稈などを床面19上に進入させないように案内させることができる上に、上部フロントマスク部分39dをアシストバーとして機能させることにより運転操作部4上の前部に左右向きのアシストバーが簡便に得られるのであり、従って回転自在な操向ハンドル22aを備えたコンバインであっても、機体が大きく揺動したときに運転操作部4上の運転者は上部フロントマスク部分39dを把握することにより身体を安定的に保持でき、また前記運転操作部4の側外方の地上からこの運転操作部4の床面19上に乗り上がろうとするときにも上部フロントマスク部分39dを把握することにより乗り上がり者は身体の安定性を確保され、迅速容易に乗り上がることができる。さらに透孔jの存在により分草板9周辺の作動状況の目視を行い易くなすことができる。そして、ステアリングコラム20とサイドコラム23とで強固に位置保持された結合棒部材24e、及び左右向き支持部材42とで透孔jの下側近傍特定箇所k5の左右端部を支持し、且つ床面19の左右箇所からこれと同体状に起立させた固定片41でフロントマスク39の下端部の左右箇所を支持するため、フロントマスク39を機台2に強固に固定させることができ、これにより上部フロントマスク部分39dを位置保持剛性の大きいアシストバーとして機能させることができる
【0044】
請求項2に記載したものによれば、第一の発明の場合と同様な作用が得られるほか、フロントマスク39を運転操作部4に装着することで、本体部39Aとサイドコラム23との間の下寄り箇所に存在した空間と、結合棒部材24eとの前側を覆うことができて、運転操作部4の組立容易化を図ることができると共に、雨水が結合棒部材24eに直接にかかるのを水平縁部39iで阻止することができ、さらに運転操作部4上の運転者が水平縁部39iに手を添えることでその身体の安定化を図ることができるようになる
【0045】
請求項3に記載したものによれば、上部フロントマスク部分39dの左右端部の左右向き軸回りの曲げに対する強度を大きく保持させた上で、透孔jを通じることによる運転者の視界を広く確保することができる
【0046】
請求項4に記載したものによれば、上部フロントマスク部分39dの前面にこれに当接した穀稈を後方へ円滑に案内させることができ、また上部フロントマスク部分39dの左右端部を前後向きに近づけさせて機体の側外方からこれを把握し易くなすことができる
【0047】
請求項5に記載したものによれば、透孔下部フロントマスク部分39eの前面が上方へ向かうに伴ってフロントマスク39の本体部39A前面下部よりも後側へ漸次に大きく変位されることにより、透孔jを通じることによる運転者の前斜め下方の視界を一層広く確保することができ、また透孔下部フロントマスク部分39eの後面が後方へ変位するのを阻止されることにより、透孔下部フロントマスク部分39eの後面側の空間の狭隘化を防止することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るコンバインの右側面図である。
【図2】 上記コンバインの正面図である。
【図3】 上記運転操作部を右後方から見た図である。
【図4】 上記運転操作部を後上方から見た図である。
【図5】 上記コンバインの運転操作部の左側面図である。
【図6】 上記運転操作部の平面図である。
【図7】 上記運転操作部を左前方から見た図である。
【図8】 上記運転操作部の正面図である。
【図9】 上記コンバインに使用されるフロントカバーを示す斜視図である。
【図10】 上記コンバインに使用されるフロントマスクで、Aは正面図でBは平面図である。
【図11】 上記コンバインに使用されるフロントマスクで、Aは右側面図でBは左側面図である。
【図12】 上記コンバインに使用されるフロントマスクで、Aは後面図でBは中央縦断面図である。
【図13】 上記運転操作部の正面図で、フロントマスクを装着する前の状態を示す図である。
【符号の説明】
2 機台
4 運転操作部
17 運転座席
19 床面
20 ステアリングコラム
22a 操向ハンドル
23 サイドコラム
24e 結合棒部材
39 フロントマスク
39A 本体部
39B 張出マスク部
39a 下端縁部
39b 上縁部
39c 機体内方側の側縁
39d 上部フロントマスク部分
39h 左右向き起立面部
39i 水平縁部
41 固定片
42 左右向き支持部材
100 外側部アシストバー
101 内側アシストバー
j 透孔
k1 透孔の下側周縁の左右方向中央箇所
k2 上部フロントマスク部分の前面の左右方向中央箇所
k3 前後方向寸法

Claims (5)

  1. 脱穀装置と刈取装置とを機体に設け、機体の前部に前進方向に向かってステアリングコラム(20)とサイドコラム(23)とを配置し、後側に運転座席(17)を設けて右側から乗降できるように右側のみ開放した空間を備えた運転操作部(4)を構成したコンバインにおいて、前記運転座席(17)の前方に回転操作される操向ハンドル(22a)と前記ステアリングコラム(20)を装設すると共に、操向ハンドル(22a)の横部から運転座席(17)の側方にわたって脱穀部前部まで機体内方側に前記サイドコラム(23)を形成して、サイドコラム(23)の上部とステアリングコラム(20)の上寄り箇所とを略90度曲がりの結合棒部材(24e)で結合するほか、前記運転座席(17)の前方に床面(19)を形成し,床面(19)の最前部に、下端縁部の左右巾床面(19)の略全巾に及ぶ寸法となされ,且つ、上縁部高さ前記運転座席(17)の座面と略同一か若しくはそれよりも高くなされたフロントマスク(39)を装着し、フロントマスク(39)の上部の略全巾箇所に横長の透孔(j)を設け、透孔(j)の上側である上部フロントマスク部分(39d)を横向きの棒状となし、フロントマスク(39)の下端部の左右箇所、前記床面(19)の左右箇所からこれと同体状に起立させた固定片(41)に締結部材で固定すると共に、前記透孔(j)の下側近傍のフロントマスク部分でステアリングコラムを挟む左右箇所を、前記結合棒部材(24e)の左右向き部分に固定され前記フロントマスク(39)の左右長さと略同一長さとなされた左右向き支持部材( 42)の両端部に締結部材で固定したことを特徴とするコンバインにおける運転操作部構造。
  2. 前記フロントマスク(39)の本体部の機体内方側の側縁の略下半分範囲をさらに横方へ延長された左右向き起立面部(39h)と、上縁を後方へ延長された水平縁部(39i)とを具備した張出マスク部(39B)を形成し、前記本体部及び左右向き起立面部(39h)は前記本体部と前記サイドコラム(23)との間の下寄り箇所に存在した空間、及び前記結合棒部材(24e)をこれらの前側から覆っており、また前記水平縁部(39i)は前記結合棒部材(24e)の左右向き部分の上方を覆っていることを特徴とする請求項1記載のコンバインにおける運転操作部構造。
  3. 前記透孔(j)の下側周縁が、左右方向中央箇所の高さを最低となすような弧状に形成されていることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載のコンバインにおける運転操作部構造。
  4. 前記上部フロントマスク部分の前面が、平面視において,左右方向中央箇所を最前方に位置させるような弧状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のコンバインにおける運転操作部構造。
  5. 前記透孔(j)の下側周縁の近傍に位置した透孔下部フロントマスク部分の前面を上方へ向かうに伴って当該透孔下部フロントマスク部分の最下部よりも漸次に大きく後側へ位置させるべく傾斜させると共に、前記透孔下部フロントマスク部分の前面から後面までの前後方向寸法を上方へ向かうに伴って漸次小さくなしたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のコンバインにおける運転操作部構造。
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