JP3851891B2 - チャック、リソグラフィ投影装置、チャック製造方法、デバイス製造方法 - Google Patents

チャック、リソグラフィ投影装置、チャック製造方法、デバイス製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電力により支持テーブル上に、
リソグラフィ投影技術を使用してデバイスを製造するさいに加工される基板を保持するか、
リソグラフィ投影装置内のリソグラフィ投影マスクもしくはマスクブランク、マスク取扱い装置、例えばマスクの点検装置もしくは浄化装置等、マスク製造装置のいずれかを保持するために使用するチャック、それも該チャックが第1誘電素子を含む形式のものに関する。
【0002】
本発明は、またリソグラフィ投影装置、それも
放射投影ビームを得るための放射系と、
目標パターンに従って投影ビームにパターン付けするのに役立つパターニング素子を支持するための支持構造物と、
基板を保持するための基板テーブルと、
パターン付けしたビームを基板ターゲット区画に投影するための投影系とを含むリソグラフィ投影装置に関するものである。
本発明は、またリソグラフィ投影装置用の基板、ミラー、マスクテーブル、チャック、フレームのいずれかを製造する方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
ここで使用する「パターニング素子」とは、基板のターゲット区画に形成されるパターンに対応するパターンを、入射放射ビームの横断面に与えるのに使用できる素子を指すものとして、広義に解釈されたい。「ライトバルブ」の用語も、この文脈で使用できる。概して、このパターンは、ターゲット区画に形成されるデバイス、例えば集積回路その他デバイス(後述)内の特定機能層に対応する。このようなパターニング素子の具体例には、マスク、プログラム可能なミラー配列、プログラム可能なLCD配列が含まれる:
【0004】
マスク。マスクの概念は、リソグラフィでは周知であり、種々の型のマスク、例えばバイナリ型、交番位相シフト型、減衰位相シフト型、その他種々のハイブリッド型のマスクを含んでいる。放射ビーム内に、このマスクを配置することにより、マスクに入射する放射ビームが、マスクパターンに従って、選択的に透過(透過性マスクの場合)又は反射(反射性マスクの場合)せしめられる。マスクの場合、支持構造物は、概してマスクテーブルであり、このマスクテーブルによって、マスクは、入射放射ビーム内の目標位置に保持され、かつ所望とあれば、放射ビームに対し移動させることができる。
【0005】
プログラム可能なミラー配列。このデバイスの一例は、粘弾性制御層と反射面とを有する、行列形式で区画認識可能な面である。このデバイスの背後の基本原理は、反射面の(例えば)認識された区画は入射光を回折光として反射するが、認識されない区画は入射光を非回折光として反射するというものである。適当なフィルタを使用して、前記非回折光は反射光から濾外し、回折光のみを残すことができる。このようにして、放射ビームは、行列形式で認識可能な面の認識パターンに従ってパターン形成される。プログラム可能なミラー配列の別の具体例では、行列構成の小ミラーが採用され、小ミラーの各々は、適当な局所的電界の印加により、又は圧電作動装置の使用により、軸線を中心として個別に傾斜させることができる。繰り返すが、ミラーは、行列形式で区画認識可能であり、このため認識されたミラーは、入射光を異なる方向で、認識されないミラーへ反射する。このようにして、反射光は、行列形式で区画認識可能なミラーの認識パターンに従ってパターン形成される。必要な行列形式での区画認識は、適当な電子装置を使用して行われる。以上に説明した状況の双方の場合に、パターニング素子は、1つ以上のプログラム可能なミラー配列を含むことができる。ミラー配列についての、これ以上の情報は、例えば米国特許第5,296,891号及び第5,523,193号、PCT特許出願WO98/38597及びWO98/33096から知ることができ、それらは、ここに引用することで本明細書に取入れるものとする。プログラム可能なミラー配列の場合、前記支持構造物は、必要とあれば固定又は移動可能な例えばフレーム又はテーブルとして具体化される。
【0006】
プログラム可能なLCD配列。この構成物の一具体例は、米国特許第5,229,827号に記載されており、該特許はここに引用することで本明細書に取入れられるものである。前述のように、支持構造物は、この場合、必要とあれば固定又は移動可能な例えばフレーム又はテーブルとして具体化される。
簡単化のため、本明細書の以下の部分は、或る箇所では、特にマスク及びマスクテーブルに関係する具体例について説明するが、それらの具体例で説明される一般原則は、既述のように、パターニング素子のより広い文脈で理解すべきである。
【0007】
リソグラフィ投影装置は、例えば集積回路(ICs)の製造に使用される。その場合、パターニング素子は、集積回路の個別の層に対応する回路パターンを生じさせ、そのパターンが、放射線感受材料(レジスト)層で被覆された基板(シリコンウェーハ)上のターゲット区画(例えば1個以上のダイを含む)に転写される。概して、単一のウェーハは、隣接ターゲット区画の全ネットワークを包含しており、該ターゲット区画は、投影系を介して1度に1つが順次に放射される。マスクテーブル上のマスクによりパターン形成する従来の装置では、2種類の異なる装置が区別できる。一方の種類のリソグラフィ投影装置の場合、各ターゲット区画は、全マスクパターンがターゲット区画に一括転写されるように照射される。この種の装置は、通常、ウェーハステッパと呼ばれる。別の種類の装置−通常、ステップ・アンド・スキャン装置と呼ばれる−の場合は、各ターゲット区画は、投影ビーム下で所定基準方向(「走査」方向)にマスクパターンが漸次走査されることで、照射される一方、同時に、走査方向と平行又は逆平行に基板テーブルが走査される。概して、投影系は、倍率M(概して<1)を有しているので、基板テーブルが走査される速度Vは、マスクテーブルが走査される速度のM倍である。ここに説明したリソグラフィ装置についてのこれ以上の情報は、例えば米国特許第6,046,792号から知ることができる。該特許は、ここに引用することで本明細書に取入れられるものとする。
【0008】
リソグラフィ投影装置を使用する製造過程では、パターン(例えばマスク)が、放射線感受材料(レジスト)層によって少なくとも部分的に被覆された基板上に転写される。この転写段階の前に、基板は、例えばプライミング、レジスト塗布、ソフトベイク等の種々の処理を受ける。露光後、基板は、他の処理、例えば露光後ベイク(PEB)、現像、ハードベイク、転写された形状特徴の測定/点検等を受ける。この一連の処理は、デバイス、例えば集積回路の個別層にパターン形成する基礎とされる。このパターン形成された層は、次いで種々の処理、例えばエッチング、イオン打込み(ドーピング)、金属化、酸化、化学−機械式研磨等を施されるが、これらすべての処理は個別層の仕上げのためである。数層が必要とされる場合には、前記の全処理またはそれらの変化形式が新たに各層毎に反復される。場合により、一連のデバイスが基板(ウェーハ)上に存在する。その場合、これらのデバイスは、ダイシング又はソーイング等の技術により互いに切離され、個々のデバイスは、キャリアに取付けられ、ピンに接続される等々。この処理に関するこれ以上の情報は、例えばピータ・ヴァン・ザント著『マイクロチップの製造:半導体加工の実際』(第3版、マグローヒル出版社、1997年刊、ISBN 0−07−067250−4)から得ることができ、該著書の記載は、ここに引用することにより本明細書に取入れらるものである。
【0009】
簡単化のため投影系は、以下では「レンズ」と呼ぶことにするが、この用語は、例えば屈折光学素子、反射光学素子、反射屈折系を含む種々の投影系を包含するものと広義に解釈されたい。放射系もまた、それらの種類の設計のいずれかに従って放射投影ビームを指向させ、付形し、制御するように操作される構成素子を含み、該構成素子も、また以下では集合的に又は個別に「レンズ」と呼ぶことにする。更に、リソグラフィ投影装置は、2個以上の基板テーブル(及び/又は2個以上のマスクテーブル)を有する種類のものである。この「多ステージ」装置の場合、追加テーブルが並列的に使用されるか、又は準備段階が1つ以上のテーブルで実施される一方、1つ以上の別のテーブルが露光に使用される。2ステージ式リソグラフィ投影装置は、例えばUS 5,969,441及びWO 98/40719に開示されており、これらは、ここに引用することで本明細書に取入れられるものである。
【0010】
リソグラフィ投影装置の場合に重要なことは、基板テーブルが走査運動時に高加速されても、基板位置が精確に分かるように、基板テーブル上に十分に不動に保持されることである。従来の装置では、基板ホールダ又はチャックが壁部に囲まれた小高い表面を含んでいる。基板は、壁部と小高い箇所に載置され、基板は、裏側の空所が真空に引かれることにより、上方の空気圧が、基板を定位置に保持する強力なクランプ力を与える。この種の基板ホールダについてのこれ以上の詳細は、EP−A−0947884に記載されており、該特許はここに引用することで本明細書に取入れられるものである。
前記種類の基板ホールダは、従来のリソグラフィ投影装置に有効であることが分かっている。しかし、縮小寸法の形状特徴を転写するという常に存在する要求を満たすには、投影ビームに使用される放射線の波長を低減する必要がある。したがって、従来の装置が、例えば248nm,193nm,157nmいずれかの波長の紫外線を使用するのに対し、解像度を改善するには、極端紫外線(EUV)(すなわち波長約50nm未満)、x線、電子、イオンのいずれかを使用するリソグラフィ投影装置の開発が必要である。提案されたそれらの種類の放射線の場合、いずれも、放射ビーム経路又は少なくとも主な経路部分を真空中に維持することが要求される。このように、基板上方の空気圧なしには、従来の真空を基礎にした基板ホールダは機能できない。
【0011】
同じような要求は、マスクの書込み、クリーニング、検査の各装置でも満たされねばならず、チャックには、リソグラフィ投影装置と同じ問題が課せられている。
このため、静電式チャックを使用して基板テーブル上に基板を保持するために、静電力を使用することが提案された。これを実施するために、電極により誘電体の前後に電位差が印加される。その種のチャック(又はクランプ)の一例では、電位差が、基板上の電極と基板テーブル内又は基板テーブル上の電極との間に印加される。電位差が印加されると、基板の電極とテーブルの電極とが逆の電荷となり、互いに十分な力で引付け合い、基板を定位置にクランプする。
【0012】
US 2002/0044267に開示されているホールダは、ULE(登録商標)製のプラテンを含み、その上にホールダが配置されている。ホールダは、例えばUS 5,221,403、US 5,835,333、US 5,835,334のいずれかに開示された静電式チャックでもよい。
電極間に印加された電位差が除去されても、引力はまだ存在するため、基板をチャックから除去することは難しいことが判明した。このため、テーブルに対する基板の着脱に時間がかかり、生産性に悪影響が及ぼされる。
これらの問題は、リソグラフィ投影装置、マスクの検査又はクリーニング装置等のマスク取扱い装置、マスク製造装置のいずれか内で、リソグラフィ投影マスク又はマスクブランクを支持テーブル上に保持するために、チャックを使用する場合に生じる。本発明のチャックは、これらの種類の装置のいずれにも組込むことができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電極間の電位差除去後、直ちに基板が容易に取外せ、かつ低熱膨張係数を有するため、熱変動による望ましくない位置変化が防止されたチャックを得ることである。
【課題を解決するための手段】
前記及びその他の目的は、本発明により、冒頭に述べたチャックの場合に、前記第1誘電素子が、少なくとも1016Ωcmの比抵抗と、0.02x10-6-1未満の熱膨張係数とを有することを特徴とすることで解決された。
誘電素子に1016Ωcmに比抵抗を保証することにより、電極間の電位差除去後のチャックの残留クランプ力が、許容可能な時間内に許容可能なレベルに低減される。このことは、チャックのクランプ力が、帯電電極間の純容量性引力とジョンソン−ラーベック効果による力との組合わせであるためと考えられる。
【0014】
ジョンソン−ラーベック効果は、電極間の誘電素子からの電流漏れに依存する。ジョンソン−ラーベック効果により発生する力は、電極間電位差が存在する時間と共に増大する。電極間電位差が除去されると、ジョンソン−ラーベック効果に起因する力は、誘電素子の導電率と、ウェーハ/マスク・インターフェースへの誘電素子の抵抗とにより決定される速度で時間と共に減少する。
比抵抗が少なくとも1016Ωcmの誘電素子の使用により、ジョンソン−ラーベック効果によるクランプ力は、リソグラフィ投影装置内で電極間に電位差が印加される通常の時間の間中、許容可能な限度内に保たれることが判明した。
誘電素子は、極端に平坦な表面になるように研磨可能、かつ低熱膨張率を有する点で、良好な光学的かつ機械的な特性を備えていなければならない。これは、基板Wが第1誘電素子と直接接触するからである。ULE(登録商標)、すなわちガラス(コーニング社製、所在地:ニューヨーク州、コーニング、ワン・リバーフロント・プラザ)が、あらゆる必要な基準を満たすことが判明した。
【0015】
静電式チャックは、種々異なる構成が可能である。それらの構成に含まれる一構成の場合、静電式チャックは、実質的に1個の平らな誘電素子のみであり、第1電極が誘電素子と接触する基板に設けられ、第2電極が基板テーブルに設けられる。しかし、より高度の静電式チャックに属するチャックの場合には、第1と第2の電極が、誘電素子の第1表面とは反対側の第2表面に、間隔をおいて設けられる。このようにすることにより、基板を接地する必要がなくなる。この具体例の場合、静電式チャックを基板テーブルから分離して、容易にクリーニングすることができる。
分離式の静電式チャックは、更に、第1誘電素子の第2の側に取付けられたコアを含む静電式チャックによって達成される。第2誘電素子は、前記コアの、前記第1誘電素子とは反対の側に取付けられ、第3の電極が該コアと第2誘電素子との間に挟着される。この場合、更に別の電極が基板テーブル内又は基板テーブル上に設けられ、第3電極と相互作用して、静電式チャックを基板テーブルに対し保持する。
【0016】
このようなチャックを製造するためには、誘電素子とコアとを取付ける必要がある。静電式チャックのこれら部品の両方に最適な材料は、概して、必要な光学的かつ機械的特性(扁平かつ低熱膨張率)を有するガラス又はガラスセラミックである。既述のように、ULE(登録商標)は、誘電素子の好適な材料の1つである。コアは、低熱膨張率の材料であれば、どのような材料でも製造でき、例えばゼロドゥア(Zerodur)(登録商標)(ショット・ガラス社、所在地:ドイツ,マインツ、ハッテンベルク通り 1055120)で製造できる。これらの材料は、互いに結合することが極端に難しい。2つの材料を接着することは、選択肢に入らない。接着剤の使用は、接着剤のヤング率がガラス又はガラスセラミックのそれと異なるため、誘電素子の第1表面の平坦性にとって有害だからである。ガラス(又はガラスセラミック)が、薄手で、接着剤の厚みが一様でない場合、表面全体にわたる剛度変化が、研磨中に達成可能な平坦性を低下させる。更に、また接着剤の使用は、接着剤の熱膨張係数が高すぎるため、熱膨張現象を発生させる。更に、接着剤の場合、真空内で脱ガスが生じる。接着による結合又は物理的な結合は、第1のガラス(又はガラスセラミック)素子が数十μmのみの厚さの場合には剛度を失うので、それほど強力ではなく、薄層が剥離することがあり得る。物理的な結合も試みられたが、そのような方法では、十分に強力ない結合は得られなかった。ガラス製又はガラスセラミック製の他のリソグラフィ投影装置部品も、同じような問題を抱えている。
【0017】
したがって、本発明の別の目的は、ガラス又はガラスセラミックを互いに結合する方法、特にガラス素子とガラスセラミック素子とを、間に電極を挟着して結合する方法、それも、ガラス素子を歪めることなく、それらを強力に結合する方法を得ることにある。
この目的及びその他の目的は、本発明により基板、ミラー、マスクのテーブルを含む光学的用途の素子、又はリソグラフィ投影装置用のチャックもしくはフレームを製造する方法、それも陽極ボンディングを使用して複数のガラス素子又はガラスセラミック素子を結合する作業を含む方法の場合に、前記素子の少なくとも1つが0.1x10-6-1未満の、好ましくは0.02x10-6-1未満の熱膨張係数を有するようにすることにより達せられた。
【0018】
特に該方法は、チャックの製造に使用でき、少なくとも1016Ωcmの比抵抗を有するガラス素子を、間に電極を挟着してガラスセラミック素子と結合する段階を含み、該結合段階は、次の下位段階を含んでいる:すなわち
前記ガラス素子を金属被覆する段階と、
前記ガラスセラミック素子を前記金属に接触配置する段階と、
前記金属に接触した面とは反対側の前記ガラスセラミック素子面に電極を設ける段階と、
前記金属と前記電極との間に電位差を印加することにより、前記金属と前記電極との間にイオン電流を動作させる段階とである。
【0019】
このようにすることにより、ULE(登録商標)を、多少の導電性を有するどのような絶縁性材料(例えばゼロドゥア(登録商標)又はクリアセラム(登録商標))にも、間に電極を挟着して結合させることができ、この構成は、リソグラフィ投影装置用の静電式チャックには好適な構成である。また、導電性金属層の接着又ははんだ付けに比較して、数百nmの厚さしかないため、チャックの低熱膨張特性には、全体としてあまり影響はない。更に、第1と第2のガラス素子を結合させるのに、著しい脱ガスを伴う材料(例えば接着剤)を必要としない。
この方法をチャックの製造との関連で説明するが、該方法は、例えば基板の製造、又はリソグラフィ投影装置に使用するマスクテーブルやミラーの製造等、別の目的で、異なるガラスセラミック片の取付けるさいにも適用できる。この方法を利用して、種々のガラス部品から複雑なガラス構造物を容易に製造でき、その結果、真空下で脱ガスが生じることもなく、極めて低い熱膨張特性を有する構造物が得られる。
【0020】
本発明の更に別の態様によれば、次の段階を含むデバイス製造方法が得られる。すなわち、
少なくとも部分的に放射線感受性材料層で被覆された基板を得る段階と、
放射系を使用して放射投影ビームを得る段階と、
投影ビーム横断面のパターン付けに、パターニング素子を使用する段階と、
放射線感受性材料層のターゲット区画にパターン付けされた放射ビームを投影する段階と、
前記基板テーブルに前記基板を保持するための、第1誘電素子を含む静電式チャックを得る段階と、
前記基板を前記第1誘電素子の第1面に位置決めする段階と、
第1と第2の電極間に電位差を印加し、それにより前記誘電素子前後に電位差を設けて、前記基板上にクランプ力を発生させる段階とを含む形式のものにおいて、
前記第1誘電素子が、少なくとも1016Ωcmの比抵抗と、0.02×10-6-1未満の熱膨張係数を有することを特徴とする、デバイス製造方法である。
【0021】
本明細書では、本発明による装置を集積回路の製造に使用する場合について説明するが、該装置は、他の用途にも使用可能であることは言うまでもない。例えば、集成光学系、磁区メモリ用パターンの案内及び検出、液晶表示パネル、薄膜磁気ヘッド等の製造に使用できる。当業者は、それらの他の用途との関連では、本明細書での用語「レチクル」、「ウェーハ」、「ダイ」は、各々「マスク」、「基板」、「ターゲット」という、より一般的な用語に置き換え可能であることが理解できよう。
本明細書では、「放射線」及び「ビーム」の用語は、紫外線(例えば波長365,248,193,157,126nm)、極端紫外線(EUV)(例えば波長5〜20nm)、粒子線、例えばイオン線又は電子線を含むあらゆる種類の電磁放射線を包含している。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下で、本発明の実施例を添付略示図面を参照にして説明するが、該実施例は説明目的のものに過ぎない。図面において、対応する部品には対応する符号が付されている。
実施例1
図1は、本発明のリソグラフィ投影装置の一実施例を略示した図である。該装置は、
この場合には放射光源LAをも含む、放射線(例えばEUV)投影ビームPBを供給する放射系Ex,IL、と、
マスクMA(例えばレチクル)を保持するマスクホールダを備え、かつ素子PLに対しマスクを精密位置決めする第1位置決め装置に接続された第1対象テーブル(マスクテーブル)MTと、
基板W(例えばレジスト塗布されたシリコンウェーハ)を保持する基板ホールダを備え、かつ素子PLに対し基板を精密位置決めする第2位置決め装置に接続された第2対象テーブル(基板テーブル)WTと、
マスクMAの照射区画を基板Wのターゲット区画C(例えば1つ以上のダイを含む)に転写するための投影系(「レンズ」)PL(例えばミラー系)とを含んでいる。
ここで説明されるように、この装置は、反射型(すなわち反射性マスクを有するもの)である。しかし、一般に、例えば透過型(透過性マスクを有するもの)であってもよい。あるいはまた、該装置は、他の種類のパターニング素子、例えば、既述の種類のプログラム可能なミラー配列を使用することもできる。
【0023】
光源LA(例えばレーザ発生源又はプラズマ放電源)は、放射ビームを発生させる。この放射ビームは、直接に、又は例えばビームエキスパンダ等の状態調節素子を通過後に、照明系(照明器)ILへ供給される。照明器ILは、ビーム内の強度分布の半径方向内方及び/又は外方の広がり(通常、各々σ−内方、σ−外方と呼ばれる)を設定するための調節素子AMを含んでいる。加えて、照明器は、概して種々の他の構成素子、例えば積分器INや集光レンズCOを含んでいる。このようにして、マスクMAに入射する放射ビームPBは、その横断面が目標一様性と目標強度分布とを得る。
図1に関して注意すべき点は、光源LAはリソグラフィ投影装置のハウジング内に配置されているが(例えば光源LAが水銀ランプの場合が多い)、リソグラフィ投影装置から離れたところに配置して、発生する放射ビームを投影装置内へ案内することもできる(例えば適当な指向性ミラーによって)。後に挙げた方式は、光源がエキシマレーザの場合に、しばしば見られる。これらの方式の両方が本発明及び特許請求の範囲に含まれている。
【0024】
放射ビームPBは、次いで、マスクテーブルMT上に保持されたマスクMAと交差する。マスクMAにより選択的に反射された放射ビームPBは、レンズPLを通過し、レンズPLは、基板Wのターゲット区画Cに放射ビームPBを集束させる。第2位置決め素子(及び干渉測定素子IF)により基板テーブルWTは、例えば放射ビーム経路内の異なるターゲット区画Cを位置決めするため、精密移動できる。同じように、第1位置決め素子は、例えばマスクライブラリからのマスクMAの機械式取出し後又は走査中、放射ビームPBに対するマスクMAの精密位置決めに使用できる。概して、対象テーブルMT,WTの移動は、長行程モジュール(コース位置決め)と、短行程モジュール(精密位置決め)とにより実現される。これらのモジュールは、図1には明示されていない。しかし、ウェーハステッパの場合(ステップ・アンド・スキャン装置と異なり)、マスクテーブルMTは、短行程アクチュエータに接続するだけでよいが、固定してもよい。
【0025】
図示の装置は、2つの異なるモードで使用できる:
1. ステップモードでは、マスクテーブルMTが実質的に固定され、全マスク像がターゲット区画Cに一括投影される(即ち単一「フラッシュ」で)。基板テーブルWTが、次いでx方向及び/又はy方向に変位されることで、異なるターゲット区画CがビームPBにより照射される。
2. スキャンモードでは、実質的に同じ方策が適用されるが、所定ターゲット区画Cが単一「フラッシュ」では露光されない点が異なっている。その代わり、マスクテーブルMTが所定方向(いわゆる「走査方向」、例えばy方向)に速度vで移動可能であり、これによって投影ビームPBはマスク像を走査できる。同時に、基板テーブルWTが、速度V=Mvで等方向又は反対方向に移動せしめられ、この場合、MはレンズPLの倍率である(通常、M=1/4又は1/5)。このようにすることで、比較的大きなターゲット区画Cが露光され、解像力に関し妥協する必要がない。
【0026】
投影ビームの放射が、例えばEUV、X線、電子、イオンなどの場合のように、周囲空気によって著しく吸収又は散乱する場合、ビーム経路、又はその少なくとも臨界的な部分は、真空に維持せねばならない。このことは、装置一式を取囲む単一真空チャンバを備えるか、又は必要な構成素子、例えば放射系、パターニング素子、投影系、基板テーブル等用の相互接続された個別真空チャンバを設けるかすることで達せられる。
図2は、本発明の第1実施例に使用されるチャックを示すものであり、該チャックにより、基板Wが基板テーブルWT上に保持される。チャック10は、誘電体製の素子11を含んでいる。誘電素子11は、平面的であり、特定の用途に応じて、例えば完全平面からの200nm以上の偏差の無いことを必要とする要求平坦度まで、又はそれ以上に高度の仕様まで、両面が研磨される。誘電素子は、ゼロに近い熱膨張係数(即ち相対膨張率/収縮率/単位温度0.02×10-6-1)を有し、この結果、基板がチャック上に保持された場合、装置内での基板の位置は、装置内の温度変動に不感となる。
【0027】
第1実施例は、本発明の容易な理解のために、最も基本的なチャック形式を示している。この実施例では、電極13が、基板テーブルWT上に設けられ、別の電極12が、誘電素子11の第1表面に接触する基板Wの底面に設けられている。基板Wが導体製又は半導体製の場合、電極12は不要である。使用中、チャック10は、基板テーブルWTの適宜に用意された表面上に配置される。基板テーブルWTが不導体製の場合、その表面に、適当な電極13が設けられる。基板Wは、その場合、チャック10の頂面に置かれる。基板Wを定位置に保持するために、電源を使用して、基板Wの電極12と基板テーブルWTの電極13との間に電位差Vを印加する。基板Wの電極12と基板テーブルWTの電極13とは、コンデンサとして動作し、したがって、それらの間に電位差が印加されると、引力が発生しよう。この引力は次式で与えられる:
【数1】
Figure 0003851891
この式において、Aは有効コンデンサの面積、dは電極間の誘電層厚、εrは誘電層の比誘電率、gはエアギャップの厚さであり、該エアギャップは、チャック10の導電面と基板Wと基板テーブルWTとの間に不可避的に存在することになるものである。前記式は、エアギャップと誘電体とを直列コンデンサと見なすことにより導き出すことができる。誘電素子は、厚さが5〜500μm、好ましくは約100μm程度である。
【0028】
誘電素子11の第1表面は一定の表面粗さを有しているので、ウェーハは、全表面には接触せず、表面の原子の一小部分にのみ接触する。表面の小部分にのみ接触するため、インターフェース前後に表面抵抗が生じる。この結果、インターフェース前後で電位降下が起こる。小電流Iが誘電体内を流れ得る場合、この小電位差が、接触のないインターフェース区域に逆の電荷を発生させる。これらの逆の電荷は、互いに引付け合い、ジョンソン・ラーベック効果により更なるクランプ力を生む。このクランプ力は、エアギャップが10μm程度の小間隔であるため、極めて大きなものになる。
【0029】
ジョンソン・ラーベック効果に関係するこの力は、電位差の印加時間と共に増大する。電位差が電極から除去されると、残留力が時間と共に漸減する。このため、ジョンソン・ラーベック効果による力が過大の場合、静電式チャックの即時ターン・オン/オフにより基板Wを着脱することが不可能であり、このことが、リソグラフィ投影装置には往々にして不都合となる。ジョンソン・ラーベック効果による力は、誘電素子11からの電流漏れが過大になったり、長時間にわたり電極間に電位差が印加されることで、過度に増大するが、そのような場合には、リソグラフィ投影装置の生産性に悪影響が及ぼされる恐れがある。基板テーブルWTから基板Wを取外す場合、基板が静電チャックから取外せるレベルまでジョンソン・ラーベック効果による力の減少を待たねばならないからである。
【0030】
誘導体の比抵抗を確実に少なくとも1016Ωcmとすることで、基板Wを保持する通常の長さの時間中には、ジョンソン・ラーベック効果による力が、リソグラフィ投影装置の生産性に悪影響を与えるほど高レベルに達することは確実になくなる。これは、クランプ力が予め決められたレベルに迅速に降下するからである。あいにく、そのような高い比抵抗の材料は、ゼロに近い熱膨張係数(即ち0.02x10-6-1)を有する少数の材料だけである。
比RC時間のJRクランプ力は、推定インターフェース容量及び抵抗に基づいて計算できる。このRC時間は、誘導体の比体積抵抗率に著しく依存する。JR力の発生と除去とは、JRクランプのRC時間によって左右される。したがって、誘導体の抵抗を、極めて短いRC時間(0.1秒)又は極めて長いRC時間(数日)が生じるように選択することが重要である。
第1の場合には、JRクランプは、強い力で発生し、第2の場合には、容量/電量性クランプが生じ、その場合、JR力は発生しないも同然である。1016Ωcmを超える比抵抗値は、10μm厚の誘導体の場合、数時間のRC時間を発生させ、他方、室温でのULE(登録商標)の抵抗は数日のRC時間を生じさせる。
【0031】
誘電素子の比抵抗は、少なくとも107Ωcmであるのが好ましい。誘電素子の材料は、高い平面度に研磨することで、また好ましくは極めて低い熱膨張係数、即ち0.015x10-6-1又は0.01x10-6-1の低い値すら有する良好な光学/機械特性を有するのが好ましい。ULE(登録商標)、即ちコーニング社(所在地:ニューヨーク14831、コーニング、ワン・リバー・フロント・プラザ)製のガラスが、この基準に合致することが分かった。このガラスは、約7質量%のTiO2を含有するSiO2を基材とした材料である。他の低膨張率材料(ガラスや、ガラスとセラミック材料とを組み合わせたガラスセラミックを含む。ガラスセラミックは、ガラスでもセラミックでもない)も、適当である。適当なガラスセラミックは、SiO2と、少なくとも1つのアルカリ金属酸化物、例えばNa2O,Li2O,K2Oのいずれかとを基材とすることができる。
【0032】
ULE(登録商標)では、ジョンソン・ラーベック効果による力を制限する点で、満足のゆく成績が得られるが、比抵抗3.1013Ωcmを有するゼロドゥア(Zerodur)(2.5%のLi及び0.5%のNaを含有するSiO2)や、オハラ社(日本、229−1186神奈川県相模原市小山1−15−30)製の、比抵抗5.1012Ωcmを有するクリアセラム−Zから得られるクリアセラム(Liをドーピングしたもの)では、満足のゆく成績は得られない。
ULE(登録商標)は、比抵抗約1018Ωcm、熱膨張係数0.01x10-6-1未満である。しかし、比抵抗が1016Ωcm未満であれば、他の材料も静電式チャック10の誘電素子11として使用できる。ガラスセラミックは、その点で有望な部類の材料である。
装置内の漂遊電界を最小化することは、帯電粒子線が投影放射ビームとして使用される場合に特に望ましいことだが、最小化するためには、基板Wと基板Wの裏側の電極12とを接地し、基板テーブルWT上の電極13は異なる電位に帯電させればよい。
【0033】
また注意すべき点は、本発明のチャック10は、マスクMAをマスクテーブルMTにクランプするさいにも使用できることである。反射性マスクの場合、チャックは、マスクと同じ形状、例えば方形、長方形、円形を有することができ、他方、透過性マスクの場合は、本発明のチャックは、パターン区域に対応する中央開口を有するフレームを有することができる。
第1実施例のチャック10は、基板テーブルWTに永久取付けできる。実際、第1実施例のチャック10を、基板テーブルWTから取外し可能にしても、特に実用的になるわけではない。これは、電極12,13間の電位差を除去すれば、基板Wをチャック10から取外せるだけでなく、チャック10も基板テーブルWTから取外せることになるからである。つまり、他方をはぶいて一方を解除するような個別の制御は行うことができないからである。
【0034】
別の実施例(図示せず)では、別の電極が誘電素子11内に埋設され、該埋設電極と基板テーブルWT内の電極13との間の電圧差を、基板テーブルWTへの静電式チャックの取付け制御に使用でき、誘電素子11内の埋設電極と基板Wの底部に設けられた電極12との間の電位差は、静電式チャック10と基板Wとの間のクランプ力制御に利用できる。
以下で、更にチャックの3実施例を説明するが、それらの実施例は、第1実施例のチャックにまさる種々の利点を有している。それらの利点は、関連する説明で明らかになろう。
図3に示す本発明の第2実施例によるチャック100は、基板テーブルWTに取付けられた誘電素子111を含んでいる。誘電素子111と基板テーブルWTとの間には、同一平面内に互いに別々に(即ち間隔をおいて)2個の電極112,113がサンドイッチ状に挟着されている。このようにすることで、基板Wには、底部に電極又は電気接点を設ける必要がなくなる。大地又は高圧電源への接続が不要だからである。その代わり、第1電極112と第2電極113との間に電位差をかけることにより、基板Wは、誘電素子111に保持できる。誘電素子111の要求仕様は、この第2実施例の場合も、第1実施例の場合と同じである。
【0035】
図4には、第3実施例のチャック200が示されている。第3実施例の静電素子は、基板テーブルWTから分離されている。チャック200はコア230を含み、コア230の両側に(第1、第2の)誘電素子211,221が付加され、コア230と誘電素子211,221の各々との間には第1又は第2の電極215,216が挟着されている。こうすることにより、コア230と第2誘電素子221との間に挟着された第2電極216と、基板テーブルWT内又は基板テーブルWT上の電極213との間に電位差をかけて、チャック200を基板テーブルWTに保持することができる。チャック200の第1電極215と、基板Wの底部に設けた電極212との間に印加される電位差は、基板Wをチャック200に保持するのに使用できる。この第3実施例では、誘電素子211,221が、第1及び第2実施例の誘電素子と等しい物理特性を必要とする。コア230は、ゼロドゥア(登録商標)(ドイツ、1055120 マインツ、ハッテンベルク通りのショット・ガラス社製)等の、熱膨張係数がほぼゼロの材料製であるのが好ましいが、多少の導電性を有する他のガラスセラミックも使用できる(例えばクリアセラム(登録商標))。
【0036】
図5には、本発明の第4実施例が示されているが、この第4実施例は、第2と第3の実施例を組合わせたものである。第4実施例のチャック300は、第1及び第2の誘電素子311,321と、本発明の第3実施例同様のコア330とから成っている。基板テーブルWT内の電極313と、チャック300の底部の電極316とは、第3実施例のものと等しい。しかし、第1と第2の電極314,315とは、コア330とチャック300の第1(図示の頂部)誘電素子311との間に挟着されている。第1と第2の電極314,315は、同一平面内に設けられているが、互いに別個であり、基板Wに力を作用させる機能は、第2実施例の電極112,113と同じである。第4実施例は、分離可能のチャックの利点(例えばクリーニングのため)を有すると同時に、基板Wの底面を接地させる必要がない利点をも有している。
【0037】
基板Wが載置されるチャックの第1誘電素子11,111,211,311の第1表面(図示の頂面)には、複数の小隆起部(小突起)が設けられている。該小隆起部は、基板Wの全表面区域の小部分であるため、基板W又は静電式チャックに付着する汚染粒子が小隆起部間に入り込む確率が高い。その場合、汚染粒子が、小隆起部により生じる基板Wと静電式チャックとの間のギャップより大きくなければ、基板Wの変形は生じない。汚染粒子が該ギャップより大きい場合でも、その影響は減じられる。
前述のように、静電式チャックの幾つかの実施例では、誘電素子111,211,311,221,321と基板テーブルWT又はコア230,330との間を結合せねばならない。これらの構成素子の各々は、低熱膨張係数の材料製であるのが好ましい。該材料は、ガラス等であることが多く、変形なしに互いに精密結合することは往々にして難しい。
【0038】
本発明のチャックでは、誘電素子111,211,221,311,321と基板テーブルWT又はコア230,330との間に電極を設ける必要がある。高い要求精度を有し、かつ接着剤又ははんだ等の別の材料を使用することのない結合、それも後述するような極めて強力な分子/化学的接着による結合が可能である。
ガラスセラミック製素子とガラス製素子とを結合する方法を、図6を参照して説明する。また、この方法は、ULE(登録商標)とゼロドゥア(登録商標)を、これら2素子間に約300nm厚のアルミニウム層を挟着して結合する場合について説明される。この処理は、異なる厚さ及び金属層材料を有する別の種類のガラス及び/又はガラスセラミックを結合するさいにも、使用できる。
更に、この方法は、図4に示した本発明の第3実施例によるチャックの製造に関連して説明される。注意すべき点は、該方法は、基板の製造、リソグラフィ投影装置用のミラー又はマスクテーブルの製造にも、同様に適用可能である。第3実施例のチャックの場合、種々の層の最終厚は、誘電素子211,221では100μm、2つの電極215,216では300nmであり、該電極は、アルミニウムと、コア230である約2mmのゼロドゥア(登録商標)とで造られている。これらの寸法では、アルミニウム電極215,216は、全チャック200のほぼゼロの熱膨張特性に対し影響を与えるには薄すぎる。
【0039】
第1段階で、ULE(登録商標)211のブロックが、要求表面仕上げ度まで研磨される。該ブロックの実厚は重要ではない。なぜなら、後述するように、誘電素子211のブロックは、最終段階として、正確な厚さに研磨されるからである。誘電素子211が研磨され申し分なく仕上げられると、約300nm厚のアルミニウム被覆410を施される。この被覆は、誘電素子211の全表面を覆うように図示されている(図6)。しかし、言うまでもなく、そのようにする必要はなく、インターフェース面のみを被覆すればよい。ULEにアルミニウムを被覆する一方法は、蒸着だが、他の方法、例えば吹付け又は浸漬も可能である。もちろん、アルミニウム以外の金属も使用できる。例えばより強力な金属被覆にするために、2層以上にすることもできる。
次の段階は、コア230の研磨である。この実施例の場合、コアは、ゼロドゥア製(登録商標)又はクリアセラム(登録商標)製であり、つまり、陽極結合可能な、要求低熱膨張特性を有する材料で造られている。
【0040】
被覆された誘電素子211のブロックは、次いで該素子が取付けられるコア230の表面と接触せしめられる。コア230の、誘電素子211とは反対側の表面には、電極を設けねばならない。これは、ガラスセラミックのゼロドゥアの表面に銀ペイント416を塗布することで容易に実現できる。この集成体は、次いで約300℃まで加熱されるが、この温度は、結合時間をより長く費やせば150℃程度の低い温度でもよく、あるいは又、350℃程度の高い温度でもよい。正確な温度は、材料と材料厚に応じて選択される−以下の記載参照。 集成体が300℃に達すると、誘電素子211の被覆410と、コア230の他方の表面の銀ペイント416との間に電位差が印加される。被覆410は陽極として、また銀ペイント416は陰極として使用される。温度は、少なくとも0.01mA/cm2の電流が材料内を流れ得るように選択される。ゼロドゥア(登録商標)の場合、厚さに応じて275〜300℃である。
【0041】
ゼロドゥア(登録商標)は、約2.5質量%のLi+イオンと、0.5質量%のNa+イオンとを含有するが、これらは両方ともアルカリ金属であり、この方法では、両方がゼロドゥア(登録商標)内のイオン電流に加わる。別の低熱膨張特性を有する材料ULE(登録商標)は、アルカリイオンを有していず、約7質量%のTiO2でドーピングされたSiO2から成っている。したがって、ULE(登録商標)の比抵抗1018Ωcmは、ゼロドゥア(登録商標)の比抵抗1013Ωcm(室温で)と比較すると、約5位数低い。
したがって、ゼロドゥア(登録商標)前後に電位差を印加すると、陽に帯電したLi及びNaのイオンは、コア230の、陰極416に最も近い側へ引付けられる。これは、コア230と誘電素子211の被覆410とのインタフェースから陽アルカリ原子を激減させる効果を有する。O2-イオンの形での陰電荷密度が、コア230と被覆410とのインタフェースに形成される。これにより、Al内に電荷が誘導され、Alは、被覆410内で酸化されAl +となり(Al→Al ++3e-)、極めて強力な静電引力がコア230と被覆410との間に発生する。150ボルトで得られる静電力/圧力は、ギャップ1μmで10バールを超える。実際には、このギャップは、おそらくこの値より小さく、電圧もより大きいので、圧力も10バールより大きいことが予想される。この大きな圧力で、2つの材料がインタフェースのところで押し合わされ、コア230の材料と被覆410の材料との間で分子接触が生じる。
【0042】
アルミニウムがゼロドゥア(登録商標)の陰電荷層と接触することで、Al +に対する駆動力が生じ、Al +をゼロドゥア(登録商標)の方へ移動させ、O2-をAl被覆の方へ移動させ、被覆410の金属とゼロドゥア(登録商標)との間に結合層が生じる。コア230のゼロドゥア(登録商標)の結晶構造内で、アルミニウムが、塗布された銀電極416の方へ泳動したアルカリイオンに置き換えられると考えられる。
電極間の電位差が除去された後、集成体は、低熱膨張係数を維持するために、ゼロドゥア(登録商標)を最大0.1K/minの速度で冷却せねばならない。冷却された後、ULE(登録商標)の誘電素子211とゼロドゥア(登録商標)のコア230とが、機械加工されて正確な寸法にされる。
前述の結合方法は、コア内の電流が少なくとも0.01mA/cm2の場合に、最も成功する。1000秒又は5000秒で0.01mA/cm2の電流は、各々10mC/cm2(最低限の結合)〜50mC/cm2(標準結合)の蓄積電荷を生む。10mC/cm2の電荷は、酸化されてAl +となるAlの約14原子層を生じさせる。
【0043】
表1は、アルミニウム層とゼロドゥア(登録商標)ブロックとの結合が成功した3実験の条件を示したものである。重要な因子は、温度(温度を高めると結合過程が速まる)と、印加電圧(電圧を高めると電流が大となり結合時間が短縮される)と、言うまでもなく電位差の印加時間とであり、電位差により、アルカリ減損量、アルミニウム酸化量、ひいては結合生成が決定される。また、コア230及び被覆410の表面品質も重要であり、線形膨張係数、アルミニウム層厚、金属の種類も重要である。
【表1】
Figure 0003851891
【0044】
3実験すべてにおいて、アルミニウムとゼロドゥア間に十分に強力な結合が生じた。実験3の場合、アルミニウムは、既述のようにULE(登録商標)ブロックに被覆された。試料3は、研磨して厚さを減じたULE(登録商標)層を有している。ULE(登録商標)は、200μmの厚さまで薄くするのに成功した。本発明の別の実施例では、コア230に銀電極416を塗布する代わりに、アルミニウム420で被覆した第2誘電素子221を、コア230の、第1誘電素子312とは反対の側に設けることもできる。こうして、第2誘電素子221の被覆420は、ACが使用される工程で第2電極として使用される。
【0045】
この結合方法(陽極結合)は、ガラス又はガラスセラミックの結合にも使用でき、基板やミラー又はマスクテーブルの製造、リソグラフィ投影装置その他の光学的な用途向けフレーム、例えば、ガラスセラミック(特にゼロドゥア(登録商標)等の材料)の低熱膨張係数特性が特に好都合な宇宙分野の用途向けフレームの製造に、特に適している。特に複合的な形状が、Al層を有する複数ゼロドゥア(TM)製素子で形成できる。このことにより、単一ブロックから機械加工するより軽量かつ剛度のある複合的なフレームの製造が可能になり、このことは、特に宇宙産業や光学的な用途全般に好都合である。
【0046】
チャックの製造や、特に、誘電層をコアに結合するには、他に適した方法も存在する。一つの方法は、単純に接着する方法である。
別の結合方法は、研磨(例えばプラズマクリーニング)後、ゼロドゥア(登録商標)に20〜50nmのCr薄膜を被着させることである。あるいはまた、Cr薄膜上へSiO2層を被着させた後、ULE(登録商標)を表層(Cr又はSiO2)上へ分子力による接合(wringing、オランダ語ではaanspringen)を利用して物理的に結合される。
以上、本発明の特定の実施例について説明したが、本発明は、以上の説明とは別様に実施かのうであることを理解されたい。以上の説明は本発明を制限する意図のものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるリソグラフィ投影装置を示す図。
【図2】本発明の第1実施例の静電式チャックを示す図。
【図3】本発明の第2実施例の静電式チャックを示す図。
【図4】本発明による静電式チャックの第3実施例を示す図。
【図5】本発明による静電式チャックの第4実施例を示す図。
【図6】電極を挟着してガラス製素子をガラスセラミック製素子に結合する本発明の方法を示す図。
【符号の説明】
AM 調節装置
C ターゲット区画
CO 集光レンズ
Ex ビームエキスパンダ
IF 干渉測定器
IL 照明器
IN 積分器
LA 放射線源、光源
MA マスク
MT マスクテーブル
PB 投影ビーム
PL 投影系(レンズ)
W 基板
WT 基板テーブル
X 方向
Y 方向
10、100、200、300 チャック
11、111、211、311 誘導素子
12、13、112、113、212、213、215、216、221、313、314、315、410、416 電極
230、330、430 コア

Claims (11)

  1. 静電力により支持テーブル上に
    リソグラフィ投影技術を使用してデバイスを製造する際に加工される基板、又は、投影マスクもしくはマスクブランクを保持するために使用するためのチャックであって、該チャックが第1誘電素子を含む形式のものにおいて、
    該第1誘電素子が、少なくとも10 6 Ωcmの比抵抗と、0.02x10-6-1未満の熱膨張係数とを有することを特徴とする、チャック。
  2. 第1誘電素子の前記比抵抗が、少なくとも1017Ωcmである、請求項1に記載されたチャック。
  3. 前記第1誘電素子が5〜500μmの厚さを有する、請求項1又は請求項2に記載されたチャック。
  4. 前記第1誘電素子が、10質量%未満の量のTiOを含有するSiOを有する材料製である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたチャック。
  5. 第1電極が、前記第1誘電素子の第1表面に設けられる、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載されたチャック。
  6. 第1電極と第2電極とが、互いに間隔をおいて前記第1誘電素子の第1表面に設けられる、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたチャック。
  7. 前記チャックが、更に前記第1誘電素子の前記第1表面に取付けたコアを含み、第2誘電素子が、前記コアの、前記第1誘電素子とは反対側に取付けられ、第3電極が、前記コアと前記第2誘電素子との間に挟着されている、請求項又は請求項に記載されたチャック。
  8. 前記第1誘電素子と第2誘電素子の少なくとも一方が、前記第1と第3の電極間に電位差を印加することで生じる前記コアと前記第1又は第3電極間のイオン交換により、前記コアに結合される、請求項7に記載されたチャック。
  9. 前記第1誘電素子と前記第2誘電素子の少なくとも一方が、前記コアに結合される前に金属被覆され、該金属が前記第1又は第3の電極を形成する、請求項に記載されたチャック。
  10. 前記第1誘電素子と第2誘電素子の少なくとも一方が、150〜350℃で前記コアに結合される、請求項又は請求項に記載されたチャック。
  11. 前記チャックが、前記第1誘電素子の前後に電位差が印加されるように構成される、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載されたチャック。
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