JP3851411B2 - 植栽容器およびこの植栽容器を用いた法面緑化工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、山腹や河川の堤防の法面や、道路建設や土地造成等に伴って形成される法面に定型のビニールポット等で育苗されている苗を植栽して法面を緑化するための植栽容器およびこの植栽容器を用いた法面緑化工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、法面に適宜の間隔をおいて穴を掘り、この穴に、法面の傾斜に合わせて斜めに切り落とされた下方開口を有する植栽容器としての竹ポットを前記下方開口が穴の周辺の法面に臨むようセットし、定型のビニールポット等において育苗された例えば樹木の苗を根に土を付けた状態で竹ポットの上方開口を通して穴に挿入し、この挿入配置された樹木苗と竹ポットおよび穴との隙間に植生基材を入れ、適宜埋め戻しを行って樹木苗を植栽する法面緑化工法がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、自然の竹から切り取られた竹ポットを法面に固定し、この竹ポット内に例えば樹高が30〜50cmで、ポット径が10.5cmの小型の樹木の苗を挿入配置できるけれども、竹ポットの内径は最大でも12〜13cmが限界で、この内径よりも大きなポット径を有する中型の樹木の苗、すなわち、樹高が100〜150cmで、ポット径が15〜18cmの樹木の苗を植栽するのは難しい。
【0004】
この発明は以上のような問題に鑑みてなしたもので、その目的は、小型の樹木の苗のみならず中型の樹木の苗も植栽できる植栽容器およびこの植栽容器を用いた法面緑化工法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の植栽容器は、平面視略円弧状の複数本の横枠、平面視略円弧状で側面視においては法面に沿うよう傾斜させた下端枠、これら横枠、下端枠に連設された複数本の縦枠よりなる保持枠体と、この保持枠体の内側に当接させた状態で配置され、平面視略円弧状で、かつ前記下端枠に沿う形状の下縁を有するシート状体とから構成されており、前記縦枠のうち少なくとも一本は前記下端枠よりも下方に突出させて アンカー部としてある
【0006】
また、この発明の法面緑化工法は、前述したような植栽容器で、法面の穴の下手側を囲む状態とし、前記穴内に苗および植栽土を挿入する。
【0007】
更に、この発明の法面緑化工法は、前述したような植栽容器を法面に設置し、前記植栽容器の内側に前記植栽容器と植栽土とによって苗の根元を固定して苗を植栽する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜図3において、1は保持枠体で、複数本の横枠2,3と、下端枠4と、複数本の縦枠5,5,6よりなる。そして、横枠2,3は平面視略半円弧状で、上下に配置され、下端枠4は平面視略円弧状で側面視においては法面Nに沿うよう傾斜させてある。また、縦枠5,5は、横枠2,3の端部、下端枠4の端部に連設されており、縦枠6は、横枠2,3の中央と下端枠4の中央に跨がって設けられている。
【0009】
この実施形態では、第1の鉄線材(6mm径)を用いて上段の横枠2と縦枠5,5が構成され、第2の鉄線材(6mm径)および第3の鉄線材(6mm径)を用いて、それぞれ下段の横枠3および下端枠4が構成され、更に、第4の鉄線材(6mm径)を用いて縦枠6が構成されている。
また、横枠2,3は、ポット径が15〜18cmの樹木の苗9を植栽するのが可能なように、15〜18cm程度の直径Rを有する円の半円弧に構成するのが好ましい。
【0010】
そして、縦枠5,5の下端、横枠3の両端および下端枠4の両端を、保持枠体1の高さ方向中間位置において左右一箇所で溶接により接合するとともに、この溶接部Aにリング状のアンカー挿入部8を溶接により接合してある。なお、A,Aは溶接部である。
【0011】
また、縦枠6は、縦枠部分6aとアンカー部分6bからなり、このアンカー部分6bは下端枠4よりも下方に突設して構成されており、この実施形態では、4〜5cmの長さLを有する状態でアンカー部6bが構成されている。そして、縦枠6は横枠2,3と下端枠4の中央で溶接により接合されている。なお、鉄線材以外の金属線材や樹脂製線材で保持枠体を構成してもよい。また、樹脂製線材で保持枠体を構成する場合は例えば接着等の接合手段を用いることができる。更に、樹脂製線材で保持枠体を構成する場合は接合手段を用いることなく、保持枠体を一体成形できる。
【0012】
10は、前記保持枠体1の内側に当接させた状態で配置される平面視略円弧状のシート状体である。このシート状体10は、ダンボールのような所定の厚みDを有する厚紙をカットして二点鎖線で示すように成形したものPの両端を矢印a,bの方向に湾曲させ、かつ保持枠体1の内側に当てがうために保持枠体1と同様に15〜18cm程度の直径を有する円の半円弧に構成するのが好ましい。なお、この実施形態では、ダンボールにロウビキを施して強度アップしたシート状体10を用いている。
【0013】
このシート状体10の素材に前記ダンボールを用いたのは、植栽した樹木の苗9が活着するまでの期間(植栽した樹木の苗9がある程度生育して根が張るまでに必要な期間で、例えば3〜5年間)は型崩れしないである程度の強度を維持でき、これにより、保持枠体1とで植栽土Eの流失や崩れを防止する土留め部の役目を果たすことができるからである。また、植栽土Eに供給される水をできるだけ保持できるという非通水性の機能を有するのが樹木の苗9の生育においては好ましいからである。更に、加工し易い材料が好ましいからである。
【0014】
要するに、シート状体10は、非通水性で、かつ、植栽木が活着するまでの期間はある程度の強度を保持する材料で構成するのが好ましく、更に、加工し易いものがより好ましく、ダンボールのような腐食性素材を用いてシート状体を構成する場合、ダンボールの他に、不織布、布地、フェルト等の腐食性素材を用いてもよく、さらには一枚もので型崩れするものは重ね合わせたりしてある程度の厚みを有するものに成形したり、これらにロウビキを施したりして植栽した樹木の苗9が十分活着する例えば3〜5年間はある程度強度を失わないものを用いるのが好ましい。この実施形態では、上述したように、ロウビキを施して強度アップされたダンボールをシート状体10として用いている。しかも腐食性素材を用いる場合は、植栽木が活着するまでの期間はある程度の強度を維持でき、前記期間後には分解され、土と同質化するという利点を有する。
【0015】
また、シート状体10を、プラスチック等の長期間にわたり強度を失わない耐腐食性素材からなるシートで構成してもよく、強度を持たせるためにロウビキを施すことなく一枚ものでも長期間にわたり型崩れすることはない。この場合、生分解性のプラスチックのように、植栽木が活着するまでの期間はある程度の強度を維持できる上に、前記期間後には分解され、土と同質化する性質を有する材料のものを用いるのがより好ましい。
【0016】
また、シート状体10は、前記保持枠体1の下端枠4に沿う形状の下縁11を有するとともに、上縁部に、植栽土Eの表面を被覆して植栽土表面からの蒸散を防止する複数の折り曲げ蓋12を有する。なお、13は折り曲げ蓋12,12間に形成されているV型の切欠きである。すなわち、横長長方形のダンボールの上端側において、折り曲げ線Mを設けるとともに、この実施形態では、カットによりV型切欠13を設けて複数の折り曲げ蓋12を形成して植栽土Eの表面を被覆できるように構成する一方、下端側において、保持枠体1の内側に当てがったときに保持枠体1の下端枠4に沿うような形状にカットして下縁11を形成してある。なお、シート状体10の上縁部にV型切欠13を設ける代わりに、V型切欠13の形成位置に複数の単なる切れ目を設けてもよく、この切れ目によって形成された相互に隣接する折り曲げ蓋同士を一部重ね合わせて植栽土Eの表面を被覆できるように構成してもよい。
【0017】
そして、前記保持枠体1とシート状体10で植栽容器Sを構成したので、小型のみならず、中型の樹木の苗9が植栽できる形状に容易に加工できる。また、この植栽容器Sを法面Nの植栽用の穴14の下手側を囲むようにセットする(図3参照)だけで、この植栽容器Sが植栽土Eの落下を防止する足場となり、植栽容器Sと植栽土Eとによって中型の樹木の苗9の根元を固定でき、樹木の苗9を安定に生育させることができる。
【0018】
なお、用いる苗9は、例えば、カシ類、シャリンバイ、ヤマザクラ、ヤマモミジ、ヤマモモ、クスノキ、ウバメガシ、コナラ等のポット径が15〜18cmの中型の樹木の苗である。
【0019】
以下、樹木の苗9の植栽方法について説明する。
まず、図4(A)に示すように、保持枠体1のアンカー部分6bを法面Nに差し込むとともに、アンカー7をアンカー挿入部8に挿入して打ち込むことで保持枠体1を法面Nに固定し、その後、シート状体10を保持枠体1の内側に当てがうようセットする。この場合、保持枠体1の下端枠4は、アンカー7およびアンカー部分6bの保持枠体1に対する押圧力によって法面Nに強く押しつけられ、これにより法面Nにおいて保持枠体1を安定化できる。また、シート状体10の下縁11は法面Nに当接した状態にあるが、シート状体10は加工し易いので、凹凸を有する法面Nに設置する場合には、その都度、凹凸形状にあった形に現場でシート状体10の下縁部分をカットすればよい。また、シート状体10の下縁部分を適宜現場で内側に折り曲げることもできる。
【0020】
続いて、保持枠体1の内側の法面N位置に植栽用の穴14を掘る〔図4(B)参照〕。
【0021】
所定の大きさの穴14を掘り終えた後、定型のビニールポット等において育苗された樹木の苗9を、根に土壌Tを付けた状態〔図4(C)参照〕で穴14に挿入し、横枠2の高さまで掘り起こした土を戻したり、植生基材を入れたりして適宜穴14の埋め戻しを行って樹木苗9を固定する〔図4(D)参照〕。この場合、植栽容器Sは植栽土Eの流失や崩れを防止する土留め部の機能を果たす。更に、複数の折り曲げ蓋12で植栽土Eの表面を被覆して植栽土表面からの蒸散を防止でき、根付きが良好である。よって、急傾斜においても安定して樹木を育てることができる。
【0022】
このようにして、植栽した中型の樹木苗9は、植栽容器Sによって保護されて生育する。
【0023】
なお、この実施形態では、シート状体10を現場に設置する前にシート状体10の下縁11を法面Nに合う形状に予め形成したり、複数の折り曲げ蓋12を予め形成したものを採用したが、シート状体10は、上述のように、簡単に加工できるので、現場でのセット時に所定形状にカットしたり折り曲げたりして成形しても作業性において問題はない。
【0024】
また、植栽容器の周辺に張芝体を敷設したり、植栽容器の周辺に厚層客土吹き付け法によって植生材料を吹き付けて植物生育基盤を形成したり、更には、張芝体の敷設と厚層客土吹き付けとを併用したりすることにより、法面の全面緑化が可能である。
【0025】
更に、この実施形態では、植栽容器Sを法面Nに設置・固定してから植栽容器Sの内側の法面N位置に植栽用の穴14を掘るようにしたが、法面Nに植栽用の穴14を掘った後植栽容器Sで穴14の下手側を囲む状態にしてもよい。
【0026】
また、この発明では、植栽容器によって植栽土の流失や崩れを防止する土留め部の機能が果たせるので、法面に必ずしも植栽用の穴を掘らない法面緑化工法も可能である。この場合、植栽容器の内側に前記植栽容器と植栽土とによって苗の根元を固定して苗を植栽することができ、植栽用の穴に樹木の苗を挿入する場合と同様、根付きを良好にでき、急傾斜においても安定して樹木を育てることができる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明は、保持枠体とシート状体で植栽容器を構成したので、小型のみならず、中型の樹木の苗が植栽できる形状に容易に加工できる。また、この植栽容器で、法面の穴の下手側を囲む状態とし、前記穴内に苗および植栽土を挿入するようにしたので、植栽容器によって植栽土の流失や崩れを防止する土留め部の機能を果たせることができ、更に、植栽容器と植栽土とによって樹木の苗の根元を固定でき、樹木の苗を安定に生育させることができる。
【0028】
更に、植栽容器によって植栽土の流失や崩れを防止する土留め部の機能が果たせるので、法面に必ずしも植栽用の穴を掘らない法面緑化工法を採用しても、根付きを良好にでき、急傾斜においても安定して樹木を育てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態における保持枠体およびシート状体を示す構成説明図である。
【図2】 上記実施形態における植栽容器の使用状態を示す斜視図である。
【図3】 上記実施形態における植栽の状態を示す図である。
【図4】 上記実施形態における植栽容器を用いた法面緑化工法を説明するための図である。
【符号の説明】
1…保持枠体、2,3…横枠、4…下端枠、5,6…縦枠、9…樹木の苗、10…シート状体、11…下縁、14…穴、E…植栽土、N…法面。

Claims (5)

  1. 平面視略円弧状の複数本の横枠、平面視略円弧状で側面視においては法面に沿うよう傾斜させた下端枠、これら横枠、下端枠に連設された複数本の縦枠よりなる保持枠体と、この保持枠体の内側に当接させた状態で配置され、平面視略円弧状で、かつ前記下端枠に沿う形状の下縁を有するシート状体とから構成されており、前記縦枠のうち少なくとも一本は前記下端枠よりも下方に突出させてアンカー部としてあることを特徴とする植栽容器。
  2. 前記保持枠体の両側部で、かつ高さ方向中間位置において、アンカー挿入部を設けた請求項1に記載の植栽容器。
  3. 前記シート状体は、上縁部に、植栽土の表面を被覆して植栽土表面からの蒸散を防止する複数の折り曲げ蓋を有する請求項1または2に記載の植栽容器。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の植栽容器で、法面の穴の下手側を囲む状態とし、前記穴内に苗および植栽土を挿入することを特徴とする法面緑化工法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の植栽容器を法面に設置し、前記植栽容器の内側に前記植栽容器と植栽土とによって苗の根元を固定して苗を植栽することを特徴とする法面緑化工法。
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