JP3847145B2 - 蒸着生分解性フィルム材料及びその製造方法 - Google Patents

蒸着生分解性フィルム材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再生リサイクル性並びに環境汚染を生ずることがないフィルム材料であって、ガスバリア性に優れており、金属光沢を有して各種包装材料等に用いることができる蒸着生分解性フィルム材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般廃棄物や産業廃棄物による環境汚染の問題は益々厳しい状況であり、早急な対応を迫られている。特に印刷物については再生リサイクルが可能であるか、埋立処分、焼却処分等での環境汚染を生じないことが使用にあたっての必須条件である。また、印刷物には、各種用途に応じた実用的な性能(表面の美匠性、耐摩耗性、耐ブロッキング性、耐光性等)に優れていることが求められ、さらに機能性(抗菌性、撥水性、導電性、帯電防止性等)を付与するために表面加工を施す場合も多い。この表面加工としてフィルムを用いたラミネート加工を施した場合にも、上述と同様に再生リサイクルが可能であるか、埋立処分や焼却処分時に環境汚染を生じないことが求められている。
従来ではラミネート加工用のフィルムとしては、OPP、PET、PVC等のフィルムが用いられ、耐久性の大幅な向上が得られていたが、これらのフィルムでは再生リサイクルが困難で、埋立処分も不可能であった。そのため、ラミネート加工用のフィルムとして生分解性樹脂フィルムを用いる提案がなされている。即ち生分解性樹脂フィルムを用いてラミネート加工を行うことができれば、コンポスト処理や埋立処分での対応が可能になり、廃棄物の処分時に不具合が発生しないことになる。
一方、フィルムにガスバリア性を付与するための手段として、蒸着を施すことはよく知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記生分解性樹脂フィルムにガスバリア性を付与するために蒸着を施した蒸着フィルムでは、密着強度が15mm巾で10g程度であるため、ラミネート加工などに際して剥離が生じ易く、剥離が生ずるとガスバリア性も損なわれるものであった。そのため、食品包装材料として信頼性が低く、実用に供することができなかった。
そこで、本発明は上述の問題点、即ち蒸着層の密着強度が高く、高いガスバリア性を維持して食品包装材料等にも供することができる蒸着生分解性フィルム材料を提案することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記に鑑み鋭意検討の末に見出されたもので、ポリ乳酸系又はポリエステル系の生分解性樹脂フィルムに、0.1〜1.0μmの厚みで生分解性を阻害しないスチレン−マレイン酸系水性樹脂、セルロース−ウレタン樹脂、澱粉系樹脂からなるアンカー層を形成し、その上に100〜1000Åの膜厚の金属蒸着層を形成してなることを特徴とする蒸着生分解性フィルム材料、及びその製造方法に関するものである。
【0005】
【作用】
本発明の蒸着生分解性フィルム材料は、生分解性を維持し、再生リサイクル性に優れ、埋立処分しても環境汚染を生ずることもなく、さらに蒸着層のフィルムに対する密着強度が15mm巾で400g以上と高く、ガスバリア性についても酸素透過率が50cc/m2・24hrs・atm以下で、水蒸気透過度が30g/m2・24hrs・atm以下である。したがって、紙や他のフィルムとのラミネート加工や蒸着層表面へのコーティング加工などに際しても剥離等を生ずることがなく、各種の用途へ利用できる。特に高いガスバリア性を生かして食品包装材料に好適に利用できる。また、蒸着層は金属光沢を有するので意匠性にも貢献する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる生分解性樹脂フィルムは、ポリ乳酸系又はポリエステル系であって、詳しくはポリ乳酸系又はポリエステル系の何れか一方の生分解性樹脂を単独或いは共重合、ブレンド等による複合体よりなる。その厚みは用途等に応じて5〜800μmのものが選定され、またロール巻きされた長尺材でも適宜サイズのシート材でも良い。
【0007】
本発明におけるアンカー層を形成するためのアンカー剤としては、生分解性を阻害しないもの、具体的にはスチレン−マレイン酸系水性樹脂、セルロース−ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、澱粉系樹脂、硝化綿含有樹脂等から選ばれる一種以上を用いる。このようなアンカー層を0.1〜1.0μmの厚みに形成することにより、金属蒸着層の密着強度を飛躍的に向上させることができる。このアンカー層の厚みが0.1μmより薄い場合には金属蒸着層の密着強度を向上する効果が得られず、厚みが1.0μmより厚い場合にはそれ以上の密着強度の向上は見られず、アンカー層の割れやブロッキングを生じ、生分解性も阻害され、コストアップにもなる。
公知のアンカー剤としては、例えばアクリル樹脂系やエポキシ樹脂系のものがよく知られているが、これらでは生分解性が阻害されるため使用できない。したがって、本発明のアンカー層は前述のように生分解性を阻害しない樹脂から選択されるが、生分解性及び密着性を阻害しない程度であれば、染料や顔料にて着色しても良いし、滑り剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、安定剤等の各種添加剤を配合しても良い。
【0008】
本発明における金属蒸着層は、アルミニウム、銀、インジウム、銅、クロム、ニッケル、チタン、酸化アルミニウム、硫化亜鉛、酸化ケイ素、及びそれらの合金からなる100〜1000Åの膜厚で金属蒸着を行って得られるものであり、前記生分解性樹脂フィルムにガスバリア性及び金属光沢を付与する。この金属蒸着層の膜厚が100Åより薄い場合にはガスバリア性が不十分であり、隠蔽性がなく(透明性がでてしまう)、金属光沢がなくなり、1000Åよりも厚い場合にはそれ以上のガスバリア性の向上が見られず、フィルムの柔軟性の低下、剥離が生じ、生分解性も阻害され、コストアップにもなる。
【0009】
これらの各構成材料を公知の手法を用いて適宜に本発明の蒸着生分解性フィルム材料を製造することができる。
即ち前記アンカー層、金属蒸着層を形成するための手段はそれぞれ特に限定するものではなく、公知の手法を採用することできる。例えばアンカー層の形成には、リバースロールコーター、グラビアコータ、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター等の一般的な塗工機を用いてコーティングを行うことができる。
【0010】
こうして得られた本発明の蒸着生分解性フィルム材料は、ラミネート加工用のフィルムとして紙と貼り合わせ、必要に応じてオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などにより印刷を施され、さらに表面加工として紫外線硬化塗料、電子線硬化塗料によるコーティング加工を施して利用することができる。その際、金属光沢を意匠性(デザイン)に生かすように印刷を施すようにしても良い。この場合もラミネート加工に際し、印刷に際し、さらにはコーティング加工に際し、金属蒸着層の密着強度が高いため、金属蒸着層が剥離することなく加工を行うことができる。この場合も、印刷材料及び表面コーティング材料として生分解性を阻害しないものを用いれば製品として再生リサイクル性並びに環境汚染を生ずることがないという利点は維持される。
また、本発明の蒸着生分解性フィルム材料を、ポリ乳酸系、ポリエステル系から選ばれた生分解性フィルムと貼り合わせ、ガスバリア性が高い食品包装材料として利用することもできる。この場合も、製品として再生リサイクル性並びに環境汚染を生ずることがないという利点は維持される。
【0011】
【実施例】
〔実施例1〕
ポリ乳酸系の生分解性樹脂フィルムとして三菱樹脂社製の「エコロージュSEP」の厚み15μm品を用い、アンカー剤としてスチレン−マレイン酸系水溶液である大日本インキ化学工業社製の「MET−W−164N」を粘度調整を行った上でウエブ用のコーターを用いて0.5μmの厚みでコーティングを行い、アンカー層を形成した。続いて抵抗加熱方式の蒸発源を備えた連続巻取り式真空蒸着機により真空度6.0×10-2Pa、基板温度(被蒸着体の温度)−5℃にて蒸着膜厚が450Åになるようにアルミ蒸着を行った。アルミ蒸着膜は金属光沢を有し、アンカー層を設けた生分解性樹脂フィルムからのアウトガスによるアルミ蒸着膜の変色、光沢低下は観察されなかった。
得られた蒸着生分解性フィルム材料自体の酸素透過率は5cc/m2・24hrs・atm、水蒸気透過度は4.5g/m2・24hrs・atmと何れも低く、ガスバリア性に優れており、アルミ蒸着層のセロテープ(R)密着強度は500g/15mm巾と高く、紙や他のフィルムとのラミネート適性に優れたものであった。ラミネート後の光沢も良好であった。
【0012】
〔実施例2〕
ポリ乳酸系の生分解性樹脂フィルムとして三菱樹脂社製の「エコロージュSEP」の厚み15μm品を用い、アンカー剤としてセルロース−ウレタン系樹脂である大日本インキ化学工業社製の「SFプライマー」を粘度調整を行った上でウエブ用のコーターを用いて0.4μmの厚みでコーティングを行い、アンカー層を形成した。続いて前記実施例1と同等の真空蒸着機を用い、蒸着膜厚が500Åになるようにアルミ蒸着を行った。アルミ蒸着膜は金属光沢を有し、アンカー層を設けた生分解性樹脂フィルムからのアウトガスによるアルミ蒸着膜の変色、光沢低下は観察されなかった。
得られた蒸着生分解性フィルム材料自体の酸素透過率は4.5cc/m2・24hrs・atm、水蒸気透過度は4g/m2・24hrs・atmと何れも低く、ガスバリア性に優れており、アルミ蒸着層のセロテープ(R)密着強度は700g/15mm巾と高く、紙や他のフィルムとのラミネート適性に優れたものであった。ラミネート後の光沢も良好であった。
【0013】
〔実施例3〕
ポリ乳酸系の生分解性樹脂フィルムとして三菱樹脂社製の「エコロージュSEP」の厚み15μm品を用い、アンカー剤として澱粉系樹脂であるミヨシ油脂社製の「ランディーEA100」を粘度調整を行った上でウエブ用のコーターを用いて0.6μmの厚みでコーティングを行い、アンカー層を形成した。続いて前記実施例1と同じ真空蒸着機を用い、蒸着膜厚が450Åになるようにアルミ蒸着を行った。アルミ蒸着膜は金属光沢を有し、変色、光沢低下は観察されなかった。
得られた蒸着生分解性フィルム材料自体の酸素透過率は5cc/m2・24hrs・atm、水蒸気透過度は4g/m2・24hrs・atmと何れも低く、ガスバリア性に優れており、アルミ蒸着層のセロテープ(R)密着強度は500g/15mm巾と高く、紙や他のフィルムとのラミネート適性に優れたものであった。ラミネート後の光沢も良好であった。
【0014】
〔実施例4〕
ポリ乳酸系の生分解性樹脂フィルムとしてオフィスメディア社製の厚み20μm品を用い、アンカー剤としてスチレン−マレイン酸系水溶液である大日本インキ化学工業社製の「MET−W−164N」を粘度調整を行った上でウエブ用のコーターを用いて0.5μmの厚みでコーティングを行い、アンカー層を形成した。続いて前記実施例1と同じ真空蒸着機を用い、蒸着膜厚が450Åになるようにアルミ蒸着を行った。
得られた蒸着生分解性フィルム材料自体の酸素透過率は4cc/m2・24hrs・atm、水蒸気透過度は4.5g/m2・24hrs・atmと何れも低く、ガスバリア性に優れており、アルミ蒸着層のセロテープ(R)密着強度は600g/15mm巾と高く、紙や他のフィルムとのラミネート適性に優れたものであった。ラミネート後の光沢も良好であった。
【0015】
〔実施例5〕
アルミ蒸着層の膜厚を200Åにする以外は前記実施例1と全く同条件にて製造した。
得られた蒸着生分解性フィルム材料は、生分解性樹脂フィルムからのアウトガスによるアルミ蒸着膜の変色、光沢低下は観察されなかった。また、それ自体の酸素透過率は30cc/m2・24hrs・atm、水蒸気透過度は20g/m2・24hrs・atmと何れも低く、ガスバリア性に優れており、アルミ蒸着層のセロテープ(R)密着強度は500g/15mm巾と高く、紙や他のフィルムとのラミネート適性に優れたものであった。ラミネート後の光沢も良好であった。
【0016】
〔実施例6〕
アルミ蒸着層の膜厚を700Åにする以外は前記実施例1と全く同条件にて製造した。
得られた蒸着生分解性フィルム材料は、生分解性樹脂フィルムからのアウトガスによるアルミ蒸着膜の変色、光沢低下は観察されなかった。また、それ自体の酸素透過率は4cc/m2・24hrs・atm、水蒸気透過度は3g/m2・24hrs・atmと何れも低く、ガスバリア性に優れており、アルミ蒸着層のセロテープ(R)密着強度は450g/15mm巾と高く、紙や他のフィルムとのラミネート適性に優れたものであった。ラミネート後の光沢も良好であった。
【0017】
〔比較例1〕
ポリ乳酸系の生分解性樹脂フィルムとして三菱樹脂社製の「エコロージュSEP」の厚み15μm品を用い、アンカー剤を用いないで前記実施例1と同じ真空蒸着機を用い、蒸着膜厚が450Åになるようにアルミ蒸着を行った。
得られた蒸着フィルムの外観は良好であり、蒸着フィルム自体の酸素透過率は3cc/m2・24hrs・atm、水蒸気透過度は4g/m2・24hrs・atmと何れも低く、ガスバリア性が優れていたが、アルミ蒸着層のセロテープ(R)密着強度は10g/15mm巾と低く、紙や他のフィルムとのラミネート加工後、蒸着層から剥離が起こり、実用に供することができなかった。
【0018】
以上本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の蒸着生分解性フィルム材料及びその製造方法は、生分解性を阻害する材料を用いていないため、再生リサイクル性に優れ、埋立処分しても環境汚染を生ずることもない。また、金属蒸着層のフィルムに対する密着強度が高いため、蒸着層が紙や他のフィルムとのラミネート加工や金属蒸着層表面へのコーティング加工などに際しても剥離等を生ずることがなく、高いガスバリア性を継続的に維持できる。したがって、各種の用途、特に高いガスバリア性を生かして食品包装材料に好適に利用でき、金属蒸着層は金属光沢を有するので意匠性にも貢献する。

Claims (3)

  1. ポリ乳酸系又はポリエステル系の生分解性樹脂フィルムに、0.1〜1.0μmの厚みで生分解性を阻害しないスチレン−マレイン酸系水性樹脂、セルロース−ウレタン樹脂、澱粉系樹脂からなるアンカー層を形成し、その上に100〜1000Åの膜厚の金属蒸着層を形成してなることを特徴とする蒸着生分解性フィルム材料。
  2. ポリ乳酸系又はポリエステル系の生分解性樹脂フィルムが5〜800μmであり、ポリ乳酸系又はポリエステル系の何れか一方の単独或いは共重合、ブレンドによる複合体よりなるものであることを特徴とする請求項1に記載の蒸着生分解性フィルム材料。
  3. ポリ乳酸系又はポリエステル系の生分解性樹脂フィルムに、アンカー層として0.1〜1.0μmの厚みで生分解性を阻害しないスチレン−マレイン酸系水性樹脂、セルロース−ウレタン樹脂、澱粉系樹脂からなるコーティングを施し、その上に100〜1000Åの膜厚の金属蒸着を行うことを特徴とする蒸着生分解性フィルム材料の製造方法。
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