JP3846336B2 - 車両用交流発電機の異常検出装置 - Google Patents

車両用交流発電機の異常検出装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用発電機の異常を検出する車両用交流発電機の異常検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現代の自動車は、社会のニーズに応えるために、年々様々な電気装置が開発されて搭載されており、電気使用量は増加の一途をたどっている。これらの電力需要に応えるべく車両用交流発電機も年々小型高出力化を実現しながら進歩している。このような車両用交流発電機が高出力化すればするほど、その異常発生時の影響は大きくなる傾向にある。したがって、車両用交流発電機の異常を早期に検出して運転者にいち早く警報する必要が生じている。
【0003】
一般に、車両用交流発電機は、回転磁束発生源となる界磁鉄心を磁化するための界磁巻線を備えており、この界磁巻線の導通率を制御しながら出力電圧の制御を実施している。このような車両用交流発電機の異常検出は、古くから実施されている。例えば、車載のバッテリ電圧の検出レベルと界磁巻線の導通率との関係等が、本来あるべき適正値から外れていることを検出したときに異常であると判断する従来の異常判定装置が知られている。しかし、このような異常判定装置では、異常検出の信頼性が低く、車両用交流発電機が完全に発電機能不良に至らないと異常検出を行うことができなかった。
【0004】
また、その他の従来技術としては、特開平8−65914号公報に開示された「車両用交流発電機の制御装置」や、米国特許公報第4242674号に開示された「オルタネータ異常警報表示装置」が知られている。特開平8−65914号公報に開示された制御装置では、車両用交流発電機に含まれる電機子巻線に現れる出力波形のデューティ比を検出して異常判定を行っている。また、米国特許公報第4242674号公報に開示された異常警報表示装置では、直流出力電圧のリップルの波高値を検出し、所定値以上のリップルが出現した場合に車両用交流発電機の異常判定を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特開平8−65914号公報に開示された制御装置では、整流ダイオードの破損に起因する異常発生時には、電機子巻線の出力電圧のデューティ比が変化するため、異常検出を行うことが可能であるが、電機子巻線の相内あるいは相間レアなどの異常発生時には、電機子巻線の出力電圧のデューティ比が変化しないため、この種の異常を検出することができなという問題があった。
【0006】
図8は、車両用交流発電機の各部分に異常が発生した場合の電機子巻線の波形を示す図である。図8(a)には正常時の波形が、図8(b)には正極側ダイオードがショートした場合の波形が、図8(c)には負極側ダイオードがショートした場合の波形が、図8(d)には電機子巻線の相間レアが生じた場合の波形が、図8(e)には電機子巻線が断線した場合の波形がそれぞれ示されている。
【0007】
これらの波形からわかるように、ダイオードに異常が発生した場合には、明らかに電機子巻線の出力電圧のデューティ比が変化する(例えば正常時の50%が正極側ダイオードショート時に約67%に、負極側ダイオードショート時約33%にそれぞれ変化する)。これに対し、電機子巻線の故障時には、電機子巻線の出力電圧のデューティ比はほぼ50%を維持するため、特開平8−65914号公報に開示された制御装置では、このような電機子巻線の故障を検出することはできない。
【0008】
また、最近では、低騒音化に対応して、図12に示すような2組の電機子巻線と整流器を備える車両用交流発電機が普及しているが、このような車両用交流発電機の場合には、一方の組の整流ダイオードの破損時のデューティ比の変化は、他方の電機子巻線の出力電圧には現れないことが判明した。例えば、異常検出機能を備え電圧制御装置に電機子巻線の出力を整流する一方の整流器を構成するいずれかのダイオードが故障した場合には、上述した特開平8−65914号公報に開示された技術を用いることにより異常検出を行うことが可能であるが、他方の整流器を構成するダイオードに故障が発生しても電機子巻線の出力電圧には大きな変化が現れない。すなわち、電圧制御装置に接続されない側の整流器の異常検出は不可能である。
【0009】
このため、両方の整流器の異常を検出するためには、両方の電機子巻線の出力電圧を検出する必要があるが、制御回路への入力端子の増加による構造の複雑化や、接続信頼性の低下を招くという弊害がある。
また、このような弊害を引き起こさない工夫がなされた米国特許第4242674号においても、以下の問題があることが明らかになった。
【0010】
すなわち、航空機用の発電機のように駆動回転数がほぼ一定で、電気負荷の変動も少ないような発電機においては米国特許第4242674号の技術は極めて有効であるが、自動車の走行用エンジンにて駆動される発電機は常に回転数が変動しており、リップル成分の振幅も常に変動する。また、信号待ち等で減速、停止する過程において常にブレーキランプが点灯するので電気負荷の変動も極めて激しい。さらに、使用耐用年数の割にメインテナンス期間が比較的長いという特徴を有することも検出精度低下の原因の一つと考えられる。このような使用環境の車両用交流発電機の出力電圧のリップル成分の電圧レベルのみで、異常の検出を行うことは極めて困難であることが発明者等の研究によって明らかになった。
【0011】
このような不都合を回避するために、米国特許第4315204号では、車両用交流発電機のリップル検出手段が用いられている。しかしながら、リップル振幅のみの検出では真の異常を判定することができないため、他の幾つかの検出手段を有しており、極めて複雑で大規模な構成になってしまい、実用化には至っていない。
【0012】
さらに、米国特許第4178546号では、発電機の直流出力電圧のリップルの周波数を検出し、この周波数が所定値でない場合に異常であると判定する技術が開示されている。しかし、発電機の駆動回転数に依存するリップル周波数の検出は、常時回転変動しているエンジンで駆動される発電機においては極めて困難である。例えば、米国特許第4178546号では、トラッキングフィルタが必要になるが、このトラッキングフィルタは、発電機の電圧制御装置内に実装するには規模が大きすぎる。
【0013】
また、発電機の出力電流を直接検波する方法も様々なものが考えられるが、ある程度の反応速度と検出精度を兼ね備えるセンサを装備する必要があるため、コスト面から採用が難しい。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、車両用交流発電機の異常状態を特別な装置やセンサなどを使用することなく、確実かつ高精度に検出することができる車両用交流発電機の異常検出装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機の異常検出装置は、異常判定手段および警報出力手段を備えている。異常判定手段は、車両用交流発電機の整流器の出力電圧に含まれるリップルを検出するとともに、車両用交流発電機の発電動作の基本周期に対応する所定期間内にリップルが所定個数以上検出できない場合に、車両用交流発電機に異常があるものとして異常判定を行う。警報出力手段は、異常判定手段によって異常判定がなされたときに所定の警報信号を出力する。これにより、車両用交流発電機の異常検出を行うために専用センサ等の特別な装置を備える必要がなく、従来の車両用交流発電機の電圧制御装置が検出している信号を波形整形するだけで容易に実現することができ、早期に確実かつ高精度に異常発見を行うとともに、これに伴う早期の警報出力が可能となる。さらに、車両用交流発電機の異常をいち早く運転者に知らせることができるため、車載機器へのダメージが進行する前に何らかの対策を講じることが可能になる。
【0015】
また、上述した異常判定手段は、車両用交流発電機の電機子を構成する多相巻線の少なくとも1相の出力電圧の半周期あるいは1周期の整数倍の期間を所定期間として前記異常判定を行うことが望ましい。これにより、専用のタイマ回路等を用いることなくリップルを検出する期間を設定することができるとともに、回転変動の激しい車両用交流発電機の電圧変動に追随して検出遅れを生じないようにすることが可能になる。
【0016】
また、多相巻線の相数をm、整流器の個数をj、kを1以上の整数としたときに、上述した異常判定手段は、所定期間内に、リップルがkm−jで表される個数以上検出できない場合に異常判定を行うことが望ましい。これにより、異常状態の判定基準の明確化が可能であり、異常状態の検出精度をさらに高めることができる。
【0017】
また、車両用交流発電機の界磁巻線の通電を遮断するスイッチ手段の導通率を検出する導通率検出手段をさらに備えるとともに、多相巻線の相数をm、整流器の個数をj、kを1以上の整数としたときに、上述した警報出力手段は、導通率が(2km−j)/2kmで表される値よりも小さい場合に、警報信号の出力を停止することが望ましい。これにより、比較的発電量が少ない状態では車両用交流発電機や車載機器に対するダメージの進行が少ないため、このような状況での異常警報を禁止することにより頻繁な警報動作を回避し、警報装置の寿命低下を防止することができる。
【0018】
また、異常を検出すべき期間においてスイッチ手段の断続に起因する出力電圧の変動の影響が少なくなるので、簡単なフィルタによりリップル成分を容易に検出することができる。
例えば、図11(a)、(b)は、m=3、j=1、k=1として導通率を変化させた場合の出力波形を示す図であり、それぞれ導通率が約50%と約83%の場合が示されている。図11(a)に示すように、導通率が小さい場合には、点線で示すように、整流作用に起因する電圧変動よりもスイッチ手段の断続に起因する電圧変動の方が大きくなる。スイッチ手段の断続による電圧変動の振幅は、車両用交流発電機の時定数、特に界磁巻線の時定数に深く関係していることが知られており、導通率が50%程度のときに最も大きくなる。これに対し、図11(b)に示すように、導通率が大きい場合には、点線で示すように、スイッチ手段の断続に起因する電圧変動が小さくなる。
【0019】
リップル成分を単なる交流結合フィルタで検出しようとする場合に、このスイッチ手段の断続による電圧変動にリップル成分が埋もれてしまうと正確なリップル検出を行うことができない。ところが、導通率が小さい場合あるいは大きい場合には、スイッチ手段の断続による電圧変動は小さくなり、リップルが交流結合フィルタのみで容易に検出可能となる。
【0020】
今仮に、導通率が小さい場合に車両用交流発電機が故障した場合を想定する。この場合には発電能力が一気に低下するので、車載のバッテリ電圧が低下する。このとき、車両用交流発電機の電圧制御装置は、バッテリ電圧の低下を検出してスイッチ手段の導通率を直ちに増大させて発電量を維持するような制御を行うので、必然的に導通率は高く維持される。したがって、車両用交流発電機の異常検出を、スイッチ手段の導通率が比較的高いときに限って実施するようにすれば、簡単なフィルタのみでリップルを検出することできることが発明者等の研究で明らかになった。また、その導通率は、(2km−j)/2kmで表される値以上に設定すれば十分であることがわかった。
【0021】
図11(c)では、図11(b)に対して、車両用交流発電機の回転数が2倍になった場合、あるいは図11(b)の場合と同じ回転数であってm=6、j=2、k=1とした場合に相当する電圧波形を示している。リップル成分の周波数は、車両用交流発電機の回転数に比例して増大する。また、整流器の数jにも比例して増大する。しかし、スイッチ手段の導通率の周期は、これら回転数や整流器の数に依存しない一定値である。したがって、異常検出の導通率の下限値を、(2km−j)/2kmと設定することで、最もリップル周波数の低いアイドリング状態においても十分に異常検出を行うことが可能であることも明らかになっている。
【0022】
また、逆方向降伏特性を備えるダイオードを少なくとも一つ含んで整流器が構成されている車両用交流発電機について、異常の検出を行うことが望ましい。このような構成を有する車両用交流発電機においてはツェナーダイオードが最も破損に至りやすく、一旦破損すると、車両用交流発電機の他の部分へのダメージの波及が著しいことが知られている。このため、このような構成を有する車両用交流発電機に、本発明の異常検出装置を組み合わせて用いることにより、車両用交流発電機の異常を検出して大きなダメージの進行を有効に防止することが可能となる。
【0023】
また、互いに電気的に接続されていない複数の多相巻線と、これら複数の多相巻線のそれぞれの交流出力を独立して整流する複数の整流器を含んで構成される車両用交流発電機について、異常の検出を行うことが望ましい。このような構成を有する車両用交流発電機に対しても、異常検出装置の数を増やすことなく異常検出を行うことが可能になるため、装置の小型化や実装の容易化を図ることができる。
【0024】
また、上述した異常判定手段は、整流器の出力電圧から高調波成分を除去した後の平均電圧と出力電圧とを比較することにより、異常判定を行うことが望ましい。これにより、出力電圧にうねり成分が存在する場合であっても、リップル成分を高い精度で検出することができる。
【0025】
また、整流器の出力電圧の振幅を検出する振幅検出手段をさらに備えるとともに、振幅検出手段によって検出された出力電圧の振幅が所定値以下の場合に警報出力手段による警報信号の出力を停止することが望ましい。これにより、整流器の出力電圧の振幅が所定値以下の場合には異常警報が行われないため、車両用交流発電機が正常動作しているにもかかわらず、外部の電気機器から侵入するノイズ成分に対応して誤警報することを防止することができる。
【0026】
特に、近年、電磁騒音が大幅に低減された車両用交流発電機においては、整流後のリップルが極端に小さくなっているので、電気負荷量が小さく、回転数が低い場合において、リップルの検出そのものが困難になり、他の機器、例えば点火装置の発生するノイズの方が大きくなるという現象が懸念される。また、車両用交流発電機からバッテリまでの電気的距離、すなわち電力供給線のインダクタンスが小さい場合においてもリップルの振幅が小さくなる。近年の小型車において特にこのような傾向が強い。ところが、本発明の異常検出装置を用いれば、このようなリップルが小さな環境下において他の電気機器が発するノイズに誤反応しても誤警報してしまうことを防止することができる。
【0027】
また、整流器の出力電圧の平均電圧を検出する平均電圧検出手段をさらに備えるとともに、平均電圧検出手段によって検出された平均電圧が所定値以上の場合に警報出力手段による警報信号の出力を停止することが望ましい。異常発生時にはバッテリを十分に充電できずにバッテリ電圧が徐々に低下する。一方で、故障が軽微な場合には、バッテリを充電するだけの余力があるため電圧は下がらず、ダメージが進行しないので故障とは判定しないようにする。このようにすることで、誤警報を防止することが可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明を適用した第1の実施形態の車両用交流発電機の構成を示す図であり、あわせてこの車両用交流発電機とバッテリや警報灯との接続状態が示されている。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、電機子巻線2、整流器3、界磁巻線4および電圧制御装置5を含んで構成されている。電機子巻線2は、多相巻線(例えば三相巻線)からなっており、誘起される交流出力が整流器3に供給される。整流器3は、電機子巻線2の交流出力を直流出力に整流する全波整流回路であり、逆方向降伏特性を有するツェナーダイオードによって構成されている。界磁巻線4は、電機子巻線2に電圧を誘起させるための鎖交磁束を発生させるために、励磁電流を流して界磁を形成する。電圧制御装置5は、この車両用交流発電機1の出力電圧を所定の調整電圧Vreg に制御する。この電圧制御装置5は、車両用交流発電機1に異常が発生したときに、警報灯93を点灯させて運転者に異常発生を知らせる異常検出装置としての機能を有している。
【0030】
車両用交流発電機1は、B端子(出力端子)が電力供給線9を介して車載のバッテリ91に、IG端子がキースイッチ92に、L端子が警報灯93にそれぞれ接続されている。
また、電圧制御装置5は、パワートランジスタ51、還流ダイオード52、主電源回路53、フィルタ装置54、電圧比較器55、リップル検出器56、リップルカウンタ57、異常判定器58、警報灯駆動トランジスタ59を備えている。リップル検出器56、リップルカウンタ57、異常判定器58が異常判定手段に、警報灯駆動トランジスタ59が警報出力手段にそれぞれ対応する。
【0031】
パワートランジスタ51は、界磁巻線4に対して直列に接続されており、この界磁巻線4に流れる励磁電流を断続制御するスイッチ手段である。還流ダイオード52は、界磁巻線4に対して並列に接続されており、パワートランジスタ51が開成時に励磁電流を還流させる。主電源回路53は、キースイッチ92の投入を検出したときに、バッテリ91から印加されるバッテリ電圧に基づいて、電圧制御装置5が動作するために必要な駆動電圧Vccを生成する。フィルタ装置54は、整流器3の出力電圧に重畳する高調波ノイズを吸収する。
【0032】
電圧比較器55は、フィルタ装置54の出力電圧と調整電圧Vreg を比較し、フィルタ装置54の出力電圧の方が調整電圧Vreg よりも低い場合に出力をハイレベルにする。電圧比較器55の出力端子はパワートランジスタ51のゲートに接続されており、フィルタ装置54の出力電圧の方が調整電圧Vreg よりも低くて電圧比較器55の出力がハイレベルになるとパワートランジスタ51が閉成する。
【0033】
リップル検出器56は、整流器3の出力電圧に重畳するリップル成分を検出する。リップルが検出されると、リップル検出器56からは、その都度検出信号が出力される。この検出信号は、信号線L1を介してリップルカウンタ57に送られる。リップルカウンタ57は、リップル検出器56から信号線L1を経由して送られてくる検出信号の数を、信号線L2を介して入力される電機子巻線2の1相の電圧に基づいて設定された所定期間内にカウントする。このカウント結果は、信号線L3を介して異常判定器58に送られる。
【0034】
異常判定器58は、リップルカウンタ57から送られてくるカウント結果に基づいて、車両用交流発電機1に異常があるか否かを判定する。異常ありの場合には、異常判定器58は、信号線L4を介して接続されている警報灯駆動トランジスタ59を閉成して、警報灯93を点灯させる。
【0035】
図2は、リップル検出器56の具体的な構成を示す図である。図2に示すリップル検出器56は、6つの抵抗561〜566、コンデンサ567、ダイオード568、電圧比較器569を含んで構成されている。このリップル検出器56は、車両用交流発電機1の出力信号に重畳するリップル成分を交流結合して抽出した後パルス化する処理を行っている。コンデンサ567、抵抗562、ダイオード568によって高域通過型のフィルタ部が形成されており、このフィルタ部から電圧比較器569のプラス端子に向けて、整流器3の出力信号から直流成分を除去した後のリップル成分のみが入力される。抵抗561、562によって適当なバイアス電圧が生成されており、フィルタ部から出力されるリップル成分のみの信号にこのバイアス電圧が加算された電圧が、抵抗565を介して電圧比較器569のプラス端子に印加される。また、抵抗563、564によって電源電圧Vccが分圧された所定の基準電圧が抵抗566を介して電圧比較器569のマイナス端子に印加されている。この基準電圧はリップルに加算されるバイアス電圧よりも若干高い値に設定されており、電圧比較器569は、リップル成分に対応したパルス信号を生成して出力する。
【0036】
図3は、リップルカウンタ57の具体的な構成を示す図である。図3に示すリップルカウンタ57は、インバータ回路571、2つの分周器572、573、オア(OR)回路574、2つのトランジスタ575、576、抵抗577、コンデンサ578、2つのダイオード591、592、電圧比較器593を含んで構成されている。縦続接続された2つの分周器572、573は、信号線L2を介して入力される電機子巻線2の1相の出力信号VP を分周することにより、リップルパルスの数をカウントする際の所定期間信号を生成する。オア回路574には、前段の分周器572の出力信号と、リップル検出器56から出力されるリップルパルスをインバータ回路571で反転させた信号とが入力されており、これらの信号がともにローレベルのときにトランジスタ575が開成される。2つのトランジスタ575、576は、コンデンサ578、579とダイオード591、592によって構成される電荷移送回路によって結合されている。後段のトランジスタ576の開成時に、前段のトランジスタ575が開成されると主電源回路53から流れ込む電荷が上述した電荷移送回路を介してコンデンサ579に蓄えられ、コンデンサ579の両端電圧が上昇する。一方、前段のトランジスタ575が閉成されると、主電源回路53から流れ込む電荷がこのトランジスタ575を介して接地側に流れるため、コンデンサ579の充電動作は停止される。また、後段のトランジスタ576が閉成されると、コンデンサ579に蓄えられた電荷が放電される。また、電圧比較器593は、プラス端子にコンデンサ579の両端電圧が印加され、マイナス端子に所定の閾値Vthが印加されており、コンデンサ579の両端電圧が閾値Vthを超えたときにハイレベルの信号を出力する。
【0037】
図4は、異常判定器58の具体的な構成を示す図である。図4に示す異常判定器58は、4つの抵抗581〜584、トランジスタ585、コンデンサ586、電圧比較器587、異常検出器588、オア回路589を含んで構成されている。リップルカウンタ57から出力される信号が抵抗581を介してトランジスタ585のベースに入力される。また、コンデンサ586は、一方端が接地されており、他方端が抵抗584を介して主電源回路53に接続されているとともにトランジスタ585のコレクタと抵抗583を介して接続されている。
【0038】
リップルカウンタ57の出力信号がローレベルの場合にはトランジスタ585が開成されるため、主電源回路53から流れ込む電荷によってコンデンサ586が充電され、その両端電圧が上昇する。一方、リップルカウンタ57の出力信号がハイレベルの場合にはトランジスタ585が閉成されるため、コンデンサ586に蓄えられた電荷がトランジスタ585を介して放電される。電圧比較器587は、プラス端子にコンデンサ586の両端電圧が印加され、マイナス端子に所定の閾値Vth2が印加されており、コンデンサ586の両端電圧が閾値Vth2を超えたときにハイレベルの信号を出力する。電圧比較器587の出力信号はオア回路589を介して警報灯駆動トランジスタ59に送られる。なお、異常検出器588は、リップル信号を用いた本発明の手法以外の方法を用いて車両用交流発電機1の異常を検出するためのものであり、励磁回路系統の異常や電力供給線系統の異常等が検出されたときにハイレベルの信号を出力する。
【0039】
本実施形態の車両用交流発電機1に含まれる電圧制御装置5はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。
(1)正常時の動作
図5は、車両用交流発電機1に異常がない場合の正常時における電圧制御装置5の各部の動作を示すタイミング図である。なお、図5〜図8において用いられた符号は、図2等において示した構成図内で用いた符号に対応している。
【0040】
正常時の電機子巻線2の1相の出力信号VP は、正の半周期にリップル成分が重畳したデューティ比が約50%の矩形波形状を有している(図5(a))。また、整流器3の直流出力信号VB には、鋸波状のリップル成分が重畳している(図5(b))。正常時のリップルは、電機子巻線2がm相であってこの出力電圧を全波整流する場合には、電気的な1周期(電機子巻線2の出力電圧の1周期に相当する)中に2m個の波形が現れる。このリップル成分を含む直流信号をリップル検出器56に通すことにより、リップルの数に等しいパルス列(リップルパルス)が生成される(図5(c))。
【0041】
また、リップルカウンタ57内では、図5(a)に示した電機子巻線2の1相の出力信号VP を1/2分周した信号P1が前段の分周器572から出力される(図5(d))。オア回路574は、この信号P1と、リップル検出器56から信号線L1を介して入力されるリップルパルスとが入力されており、これら2つの信号の論理和信号をトランジスタ575のベースに入力する。したがって、分周器572の出力がハイレベルのとき、あるいは、リップル検出器56から入力されるリップルパルスを反転した信号がハイレベルのときに、オア回路574から出力される論理和信号がハイレベルになって、トランジスタ575が閉成される。反対に、分周器572の出力がローレベルであり、かつ、リップルパルスがハイレベルのときに、トランジスタ575が開成される(図5(f))。トランジスタ575の閉成時には、主電源回路53からの電荷は全てトランジスタ575のコレクタ・エミッタ間を通って接地側に流れ込んでしまうが、トランジスタ575の開成時には、この電荷がコンデンサ578、ダイオード591、592によって構成される電荷移送回路を通してコンデンサ579に蓄積される。この蓄積電荷q2は、トランジスタ576が開成している間(図5(e))、リップルパルス発生毎に蓄積され続け、コンデンサ579の両端電圧が徐々に上昇する(図5(g))。そして、リップルパルスが所定個数以上入力(検出)されると、コンデンサ579の両端電圧が所定の閾値Vthを超えるので、電圧比較器593の出力信号がハイレベルに変化する(図5(h))。この電圧比較器593の出力信号は、信号線L3を介して異常判定器58に入力される。
【0042】
異常判定器58では、リップルカウンタ57の出力信号がハイレベルのときにトランジスタ585が閉成され、コンデンサ586に蓄積された電荷が抵抗583を介して放電される。また、トランジスタ585が開成時には、電源電圧Vccが抵抗584を介してコンデンサ586に印加されるためコンデンサ586が充電される。これらの抵抗584、583は、コンデンサ586の充放電の時定数を決定するものであり、充電時定数に対して放電時定数を十分に小さくしておく必要がある。例えば、(抵抗584の抵抗値)/(抵抗583の抵抗値)を100〜1000程度に設定することが望ましい。
【0043】
このように設定することにより、コンデンサ586の両端電圧VC3は、正常時には、閾値Vthに達する前(時刻t2)に、閉成されたトランジスタ585によって放電されるため(図5(i))、電圧比較器587の出力信号(CO4 )はローレベルを維持する(図5(j))。したがって、警報灯駆動トランジスタ59が閉成されることはなく、警報灯93は点灯しない。
【0044】
その後、時刻t3において後段の分周器573の出力信号がローレベルの状態からハイレベルの状態に反転すると、リップルカウンタ57内のトランジスタ576が閉成されるため(図5(e))、コンデンサ579が放電されてリップルカウンタ57の出力がローレベルになり、再び分周器573の出力信号がローレベルの状態に戻るまでリップルカウンタ57の出力がローレベルを維持する。
【0045】
(2)整流器3の正極側ダイオードにショート故障が発生した場合の動作
次に、整流器3の正極側ダイオードがショートした場合に動作を説明する。
図6は、正極側ダイオードがショートした場合の電圧制御装置5の各部の動作を示すタイミング図である。
【0046】
正極側ダイオードがショートした場合の電機子巻線2の1相の出力信号VP は、正電位の期間が長くなってデューティ比が約67%の矩形波形状を有している(図6(a))。そして、整流器3の直流出力信号VB は、正常時とは明らかに異なるリップル成分が重畳した状態となる(図6(b))。この場合のリップル波形は、整流器3の出力信号の電気的な1周期中に検出可能な成分は2回しか現れず、リップル成分を検出することができない期間も存在する(図6(c)の時刻t4〜t5)。このように、リップル検出器56から出力されるリップルパルスの数が少なく、リップルカウンタ57内のコンデンサ579の充電が十分に行われない。したがって、コンデンサ579の両端電圧が閾値Vthに達する前に、分周器573の出力がハイレベルになってトランジスタ576が閉成され、コンデンサ579が放電されてしまう(図6(g))。このため、異常判定器58内のコンデンサ586が放電されることがなく、このコンデンサ586の両端電圧が閾値Vth2を下回ることはない(図6(i))。すなわち、整流器3の正極側ダイオードがショートした場合には、異常判定器58内の電圧比較器587の出力がハイレベルを維持することになり(図6(j))、警報灯駆動トランジスタ59が閉成されて警報灯93が点灯状態を維持する。
【0047】
(3)電機子巻線2の相間レア故障が発生した場合の動作
次に、電機子巻線2に相間レアが発生した場合の動作を説明する。
図7は、電機子巻線の相間レア故障時の電圧制御装置5の各部の動作を示すタイミング図である。
【0048】
電機子巻線2に相間レアが発生した場合の電機子巻線2の1相の出力電圧VP は、正常時と同じようにデューティ比が約50%の矩形波形状を有している(図7(a))。そして、整流器3の直流出力信号VB は、正常時とは明らかに異なるリップル成分が重畳した状態となる(図7(b))。この場合のリップル波形は、整流器3の出力信号の電気的な1周期中に検出可能な成分は2回しか出現しない。具体的には、リップル成分は定期的に発生しており、リップル検出器56からは、等間隔のリップルパルスが出力される(図7(c))。このように、上述したダイオード故障の場合と同様に、リップル検出器56から出力されるリップルパルスの数が少ないため、リップルカウンタ57内のコンデンサ579の充電が十分に行われず、コンデンサ579の両端電圧が閾値Vthに達する前に、分周器573の出力がハイレベルになってトランジスタ576が閉成され、コンデンサ579が放電されてしまう(図7(g))。このため、異常判定器58内のコンデンサ586が放電されることがなく、このコンデンサ586の両端電圧が閾値Vth2を下回ることはない(図7(i))。すなわち、電機子巻線2に相間レア故障が発生した場合には、異常判定器58内の電圧比較器587の出力がハイレベルを維持することになり(図7(j))、警報灯駆動トランジスタ59が閉成されて警報灯93が点灯状態を維持する。
【0049】
このように、本実施形態の電圧制御装置5では、車両用交流発電機1の異常検出を行うために専用センサ等の特別な装置を備える必要がなく、所定の信号を波形整形するだけで異常検出を容易に行うことができ、早期に確実かつ高精度に異常発見を行うとともに、これに伴う早期の警報出力が可能となる。さらに、車両用交流発電機1の異常をいち早く運転者に知らせることができるため、車載機器へのダメージが進行する前に何らかの対策を講じることが可能になる。
【0050】
また、本実施形態では、専用のタイマ回路等を用いることなくリップルを検出する期間を設定することができるとともに、回転変動の激しい車両用交流発電機1の電圧変動に追随して検出遅れを生じないようにすることが可能になる。
また、電機子巻線2を構成する多相巻線の相数をm、整流器3の個数をj、kを1以上の整数としたときに、所定期間内にリップルがkm−jで表される個数以上検出できない場合に異常判定を行うことが望ましい。これにより、異常状態の判定基準の明確化が可能であり、異常状態の検出精度をさらに高めることができる。
【0051】
なお、上述した第1の実施形態の説明では、整流器3の正極側ダイオードが故障した場合と、電機子巻線2の相間レアが発生した場合について異常発生時の動作を説明したが、それ以外の異常についても同様である。
図8は、各種の異常が発生した場合の電機子巻線2の1相の出力信号波形を示す図である。図8(a)には正常時の波形が、図8(b)には整流器3の正極側のダイオードがショートした場合の波形が、図8(c)には整流器3の負極側のダイオードがショートした場合の波形が、図8(d)には電機子巻線2の相間レアが発生した場合の波形が、図8(e)には電機子巻線2が断線した場合の波形がそれぞれ示されている。
【0052】
図8に示すように、各種の異常が発生すると、電機子巻線2の1相の出力信号波形に含まれるリップル成分が少なくなるため、いずれの場合もリップルカウンタ57内のコンデンサ579はその両端電圧が閾値Vthを超える前に放電されてしまい、異常判定器58内のコンデンサ586が常に充電された状態を維持することになるため、異常判定器58の出力がハイレベルを維持して警報灯93が点灯状態になる。
【0053】
また、整流器3のダイオードがオープン故障した場合も同様にしてリップル成分が不定期に発生するので、常時警報灯93を点灯させることができるが、特に、本実施形態の整流器3のように全波整流器をツェナーダイオードで構成した場合には、オープン故障したダイオードと同じアームに接続された反対極性のダイオードが数分以内にショート故障に至ることが実験により確かめられている。したがって、ダイオードの初期故障がオープンモードであっても数分後には図5に示した過程を経て警報灯93が点灯状態に至り、運転者に異常の発生を通知することができる。
【0054】
また、上述した第1の実施形態では、パワートランジスタ51の導通率に関係なく異常発生時に警報灯93の点灯を行うようにしたが、導通率が低い場合に警報灯93の点灯を禁止するようにしてもよい。
図9は、異常判定器の変形例を示す図である。図9に示す異常判定器58Aは、図4に示した異常判定器58に対して、導通率検出手段としての導通率検出器594とアンド(AND)回路589を追加した点が異なっている。導通率検出器594は、界磁巻線4の一方端とパワートランジスタ51とが接続されたF端子の信号波形を観察することによりパワートランジスタ51の導通率を検出し、導通率が所定値を超えた場合にハイレベルの信号を出力する。導通率検出器594、アンド回路589が導通率検出手段に対応する。
【0055】
アンド回路589は、電圧比較器587とオア回路595の間に挿入されており、導通率検出器594の出力信号に応じて、電圧比較器587の出力信号を導通あるいは遮断する。すなわち、パワートランジスタ51の導通率が所定値以上になって導通率検出器594の出力信号がハイレベルのときのみ、電圧比較器587の出力信号がオア回路595を介して警報灯駆動トランジスタ59に伝達される。
【0056】
このように、異常発生時に比較的ダメージの進行が遅い低発電状態での警報を禁止することにより、警報灯駆動トランジスタ59や警報灯93の寿命の低下を防止することができる。
また、上述した第1の実施形態では、リップル検出器56において、動作電圧Vccを抵抗563、564で分圧した固定の基準値を用い、この基準値を超える電圧成分をリップルとして検出したが、この基準値の設定については別の手法を用いてもよい。
【0057】
図10は、リップル検出器の変形例を示す図である。図10に示すリップル検出器56Aは、図2に示したリップル検出器56に対して、抵抗563、564によって構成される分圧回路を、抵抗596とコンデンサ598によって構成される平滑回路に置き換えた構成を有している。整流器3の出力信号に含まれるリップル成分を平均化してリップルを交流結合することにより低周波で変動する直流成分に追従した基準値が生成される。電圧比較器569は、リップル成分が重畳された整流器3の出力信号がこの基準値を超える場合にハイレベルとなるリップルパルスを出力する。
【0058】
図11は、整流器3の出力信号の具体例を示す図である。図11(a)、(b)、(c)のそれぞれには、パワートランジスタ51の導通率等を可変した場合の出力信号の具体的な形状が示されている。図11(a)、(b)、(c)において、横軸が時間tを、縦軸が出力信号の電圧を示している。また、「ON」で示された期間がパワートランジスタ51の閉成状態に対応している。
【0059】
また、図11(a)にはパワートランジスタ51の導通率が約50%の場合の波形が、図11(b)にはパワートランジスタ51の導通率が約83%の場合の波形が示されている。これらの図に示すように、整流器3の実際の出力波形には、リップル成分とは別にパワートランジスタ51の閉成/開成タイミングに対応したうねり成分が存在するが、図10に示したリップル検出器56Aを用いることにより、確実かつ精度よくリップルを検出することができる。
【0060】
〔第2の実施形態〕
上述した第1の実施形態では、電機子巻線2と整流器3を一組だけ備える車両用交流発電機1について説明したが、複数組の電機子巻線と整流器を備えるようにしてもよい。
【0061】
図12は、第2の実施形態の車両用交流発電機の構成を示す図である。図12に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1Aは、電機子巻線2A、2B、整流器3A、3B、界磁巻線4および電圧制御装置5Aを含んで構成されている。一方の電機子巻線2Aと一方の整流器3Aとが組み合わされており、他方の電機子巻線2Bと他方の整流器3Bとが組み合わされている。2つの電機子巻線2A、2Bは、互いに電気的に接続されず、しかも電気角で30°ずれた状態で配置されている。また、2つの整流器3A、3Bのそれそれの出力端子が共通にB端子および電圧制御装置5Aに接続されている。電圧制御装置5Aは、上述した電圧制御装置5と同じ構成(図1〜図4に示した構成)を有している。
【0062】
図13は、車両用交流発電機1Aに異常がない場合における電圧制御装置5Aの各部の動作を示すタイミング図である。図13(b)に示すように、電機子巻線2A、2Bの直流出力信号には、それぞれの電機子巻線2A、2Bにおいて発生するリップル成分が重畳されているため、電気的な1周期中に12個のリップルが現れる。図13に示すように、このリップル数が倍になるだけであり、電圧制御装置5Aは、電圧制御装置5と同じように異常検出を行って警報灯93を点灯させている。
【0063】
〔第3の実施形態〕
図14は、第3の実施形態の車両用交流発電機1Bの構成を示す図である。図13に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1Bは、電機子巻線2、整流器3、界磁巻線4、電圧制御装置5Bを含んで構成されている。電圧制御装置5Bは、図1に示した車両用交流発電機1に含まれる電圧制御装置5に対して、リップル検出器56をリップル検出器156に、リップルカウンタ57をリップルカウンタ157、異常判定部58を異常判定部158にそれぞれ置き換えた点が異なっている。
【0064】
図15は、リップル検出器156の具体的な構成を示す図である。図15に示すリップル検出器156は、図10に示したリップル検出器56Aの構成に対して、基準値にヒステリシス特性を持たせたシュミット回路を追加した構成を有している。このシュミット回路は、電圧比較器602の出力端子とマイナス端子とを抵抗601を介して接続することにより構成されており、所定のヒステリシス量を超えるような変動成分をパルス化する。このシュミット回路が振幅検出手段に対応する。また、シュミット回路から出力されるパルス信号は、信号線L5を介してリップルカウンタ157に送られる。
【0065】
図16は、リップルカウンタ157の具体的な構成を示す図である。図16に示すリップルカウンタ157は、図3に示したリップルカウンタ57の構成に対して、基本的に同じ構成をもう一組追加した構成を有している。この追加した構成によって、信号線L5を介してリップルカウンタ157内のシュミット回路から送られてくるパルス信号に対してパルス数のカウントが行われる。追加された構成を用いて行われるパルス数のカウント動作自体は、図3に示したリップルカウンタ57と全く同じであり、カウントする期間や各種の素子定数のみが変更されている。
【0066】
すなわち、上述したリップル検出器156が振幅の大きな周期変動成分を検出してパルス信号を出力すると、リップルカウンタ157はこれをカウントし、所定期間内に所定個数を超えた場合には、図5(h)に示したようなハイレベルの信号が電圧比較器693から出力される。この信号は、信号線L6を介して異常判定器158に送られる。
【0067】
図17は、異常判定器158の具体的な構成を示す図である。図17に示す異常判定器158は、図4に示した異常判定器58の構成に対して、基本的に同じ構成をもう一組追加した構成を有している。この追加した構成によって、信号線L6を介して送られてくる信号に基づいて異常発生の有無を判定している。但し、この追加された構成に含まれる電圧比較器687は、プラス端子に閾値Vth2が入力されており、マイナス端子に入力されるコンデンサ686の両端電圧と比較するようになっている。
【0068】
整流器3の出力信号に振幅の大きな周期変動成分が含まれる場合には、追加された構成に含まれるトランジスタ685が定期的に閉成されるため、コンデンサ686が定期的に放電される。したがって、コンデンサ686の両端電圧はあまり上昇せず、電圧比較器687の出力は常にハイレベルを維持する。このような状態において、異常発生に伴って整流器3の出力信号に含まれるリップルの数が少なくなると電圧比較器587の出力がハイレベルに反転するため、アンド回路690からはハイレベルの信号が出力される。この信号は、オア回路589を介して警報灯駆動トランジスタ59に送られ、警報灯93が点灯される。また、整流器3の出力信号に含まれるリップルの数が所定個数以上の場合には、電圧比較器587の出力がローレベルを維持するため、警報灯93は点灯されない。
【0069】
一方、整流器3の出力信号に振幅の大きな周期変動成分が含まれない場合には、異常判定器158内のトランジスタ685は開成状態を維持するため、コンデンサ686が十分に充電された状態にあり、電圧比較器687の出力はローレベルを維持し、警報灯93は点灯しない。したがって、整流器3の出力信号に、本来のリップルに近い周波数を有し、リップルよりも振幅が大きな外乱ノイズが含まれている場合に、電圧比較器587から誤ってハイレベルの信号が出力されても、そのまま警報灯93を点灯して誤警報を行ってしまう機会を低減することができる。
【0070】
例えば、リップル検出器156内のシュミット回路のヒステリシス量は、点火装置の発するノイズが車両用交流発電機1BのB端子に現れる大きさよりも大きく設定されている。また、車両用交流発電機1Bの出力系統(電機子巻線2や整流器3等)に異常が発生すると、このようにして設定したシュミット回路のヒステリシス量よりも明らかに大きなリップル成分が発生するため、このリップル成分が検出されて警報が行われる。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した各実施形態では、アナログ回路を用いた事例を示しているが、同等の機能をデジタル回路で実現することも可能である。さらに、上述した各実施形態では、ツェナーダイオードを用いて整流器を構成する場合について説明したが、通常のダイオードを用いて整流器を構成するようにしてもよい。
【0072】
また、上述した各実施形態において、整流器3等の直流出力電圧の平均値を検出し、この値が所定値以上の場合に、警報を行わないようにしてもよい。すなわち、異常発生時にはバッテリを十分に充電できずにバッテリ電圧が徐々に低下するはずであり、このような現象が現れない場合に警報を禁止することで、誤警報を防止することが可能になる。具体的には、異常判定器58等の内部あるいは外部に、整流器3の出力電圧を平均化する平均電圧検出回路(平均電圧検出手段)を設け、出力電圧の平均値が所定値よりも小さい場合にハイレベルの信号を出力するようにする。さらにアンド回路等を設けることにより、平均電圧検出回路の出力がハイレベルの場合に限って、警報用駆動トランジスタ59を駆動すればよい。
【0073】
また、上述した各実施形態では、警報灯93を用いて異常の発生を運転者に通知するようにしたが、代わりにアラームやブザー等の音響装置を用いたり、運転座席に埋設された振動子を振動させる等の方法で異常の発生を運転者に通知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の車両用交流発電機の構成を示す図である。
【図2】リップル検出器の具体的な構成を示す図である。
【図3】リップルカウンタの具体的な構成を示す図である。
【図4】異常判定器の具体的な構成を示す図である。
【図5】車両用交流発電機に異常がない場合の正常時における電圧制御装置の各部の動作を示すタイミング図である。
【図6】正極側ダイオードがショートした場合の電圧制御装置の各部の動作を示すタイミング図である。
【図7】電機子巻線の相間レア故障時の電圧制御装置の各部の動作を示すタイミング図である。
【図8】各種の異常が発生した場合の電機子巻線の1相の出力信号波形を示す図である。
【図9】異常判定器の変形例を示す図である。
【図10】リップル検出器の変形例を示す図である。
【図11】整流器の出力信号の具体例を示す図である。
【図12】第2の実施形態の車両用交流発電機の構成を示す図である。
【図13】図12に示した車両用交流発電機に異常がない場合における電圧制御装置の各部の動作を示すタイミング図である。
【図14】第3の実施形態の車両用交流発電機の構成を示す図である。
【図15】リップル検出器の具体的な構成を示す図である。
【図16】リップルカウンタの具体的な構成を示す図である。
【図17】異常判定器の具体的な構成を示す図である。
【符号の説明】
1 車両用交流発電機
2 電機子巻線
3 整流器
4 界磁巻線
5、5A、5B 電圧制御装置
51 パワートランジスタ
52 還流ダイオード
53 主電源回路
54 フィルタ装置
55 電圧比較器
56 リップル検出器
57 リップルカウンタ
58 異常判定器
59 警報灯駆動トランジスタ
93 警報灯

Claims (9)

  1. 車両用交流発電機の整流器の出力電圧に含まれるリップルを検出するとともに、前記車両用交流発電機の発電動作の基本周期に対応する所定期間内に前記リップルが所定個数以上検出できない場合に、前記車両用交流発電機に異常があるものとして異常判定を行う異常判定手段と、
    前記異常判定手段によって異常判定がなされたときに所定の警報信号を出力する警報出力手段と、
    を備えることを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  2. 請求項1において、
    前記異常判定手段は、前記車両用交流発電機の電機子を構成する多相巻線の少なくとも1相の出力電圧の半周期あるいは1周期の整数倍の期間を前記所定期間として前記異常判定を行うことを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  3. 請求項2において、
    前記多相巻線の相数をm、前記整流器の個数をj、kを1以上の整数としたときに、
    前記異常判定手段は、前記所定期間内に、前記リップルがkm−jで表される個数以上検出できない場合に前記異常判定を行うことを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  4. 請求項2において、
    前記車両用交流発電機の界磁巻線の通電を遮断するスイッチ手段の導通率を検出する導通率検出手段をさらに備え、
    前記多相巻線の相数をm、前記整流器の個数をj、kを1以上の整数としたときに、
    前記警報出力手段は、前記導通率が(2km−j)/2kmで表される値よりも小さい場合に、前記警報信号の出力を停止することを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    逆方向降伏特性を備えるダイオードを少なくとも一つ含んで前記整流器が構成されている前記車両用交流発電機の異常を検出することを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  6. 請求項2〜4のいずれかにおいて、
    互いに電気的に接続されていない複数の前記多相巻線と、これら複数の多相巻線のそれぞれの交流出力を独立して整流する複数の前記整流器を含んで構成される前記車両用交流発電機の異常を検出することを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかにおいて、
    前記異常判定手段は、前記整流器の出力電圧から高調波成分を除去した後の平均電圧と前記出力電圧とを比較することにより、前記異常判定を行うことを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  8. 請求項1〜7のいずれかにおいて、
    前記整流器の出力電圧の振幅を検出する振幅検出手段をさらに備え、
    前記振幅検出手段によって検出された前記出力電圧の振幅が所定値以下の場合に、前記警報出力手段による前記警報信号の出力を停止することを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
  9. 請求項1〜7のいずれかにおいて、
    前記整流器の出力電圧の平均電圧を検出する平均電圧検出手段をさらに備え、
    前記平均電圧検出手段によって検出された前記平均電圧が所定値以上の場合に、前記警報出力手段による前記警報信号の出力を停止することを特徴とする車両用交流発電機の異常検出装置。
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