JP3845550B2 - アミノニトリル及びジアミンの製造方法 - Google Patents

アミノニトリル及びジアミンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、ジニトリルの接触水素化によるアミノニトリル及びジアミンの製造方法に関する。
更に詳しくは、本発明は、アジポニトリルの接触水素化による6−アミノカプロニトリル及びヘキサメチレンジアミンの製造に関する。
【0002】
脂肪族ジニトリル、特にアジポニトリルのアミノニトリル及びジアミン、特に6−アミノカプロニトリル及びヘキサメチレンジアミンへの接触水素化は、例えば、特許WO−A−96/18603の教示に従って、1種以上の促進剤元素を含み得るラネーニッケル又はラネーコバルトをベースとする触媒の存在下及び強無機塩基の存在下に実施することができ、この水素化はジニトリルに加えて、水、ジアミン及び(又は)アミノニトリルを含む媒体中で実施される。
【0003】
また、1種以上の促進剤元素を化学的にドープしたラネーニッケル又はコバルトの存在下に及び強塩基の存在下での脂肪族ジニトリル、特にアジポニトリルの水素化を開示する特許EP−A−0,737,100を参照されたい。この水素化は、少なくとも水及び要すればアルコール又はアミドのような有機溶媒を含む媒体中で実施される。
【0004】
特許WO97/10052は、少なくとも部分的に還元された状態にあるニッケル又はコバルトをベースにし、1種以上のドープ金属を酸化物の形で含む相によって組織化されている触媒の存在下及び強塩基の存在下でのニトリル、特にアジポニトリルの水素化を開示しており、この水素化は少なくとも水及び要すればアルコール又はアミドのような有機溶媒を含む媒体中で実施される。
【0005】
これらの従来技術の方法では、最終反応混合物が定量的に分析され、可能な不純物の含有量が決定される。この不純物の含有量は、一般に低く、事実ゼロでさえある。
【0006】
しかし、反応混合物の成分、特に、水、随意の溶媒、存在し得るその他の軽質化合物、形成されたジアミン及びアミノニトリル並びに未転化のジニトリルの分離を実施することが明らかに必要である。
【0007】
本出願人は、触媒をろ過、沈降、遠心分離又はその他の手段によって分離した後に、反応混合物の蒸留中に、重大な且つ禁止的な量の副生物が形成され、これらの副生物が特にジニトリル、特にアジポニトリルの分解から生じることを観察した。限するわけではないが、使用するジニトリルがアジポニトリルであるときは、これらの副生物の主要な一つはイミノシアノシクロペンタン(ICCP)で、他はこれよりも重質の副生物である。
【0008】
副生物の形成は多くの不利益を示し、従って可能な限りこれを防止することが必要である。まず第一に、これらの副生物は、本質的にジニトリル、特にアジポニトリルの転化から生じるものであり、工業的な方法において無視することができない損失を生じさせる。更に、それらは着色を生じさせ及び(又は)それらは、例えば、ポリアミド−6,6の製造のためにヘキサメチレンジアミンによって及びポリアミド−6の基礎原料であるカプロラクタムを生じさせる6−アミノカプロニトリルによって共に満たされなければならない規格のレベルに重大で有害な影響を及ぼす。
更に、これらの副生物は除去するのが困難であって、これは複雑で高価な精製方法を必要とする。
【0009】
本発明の目的は、ジニトリル、とくに脂肪族ジニトリルの接触水素化から生じる反応混合物の成分の蒸留中に上記のような副生物の形成を可能な限り削減させることによって上記のような重大な欠点を克服することである。
【0010】
本発明は、3〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジニトリルを要すれば溶媒の存在下に接触水素化することによってアミノニトリル及びジアミンを製造するにあたり、触媒を予め分離しておいた最終反応混合物を、反応生成物及び未転化のジニトリルを蒸留操作に付する前に、十分な量の無機又は有機酸を添加することによって酸性化することを特徴とするアミノニトリル及びジアミンの製造方法よりなる。
【0011】
ジニトリルとしては、アジポニトリル、メチルグルタロニトリル、エチルスクシノニトリル、ジメチルスクシノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル又はドデカンジニトリルが特に挙げられる。いくつかのジニトリルの混合物、特に、ブタジエンからのアジポニトリルの合成から生じるアジポニトリル、メチルグルタロニトリル及びエチルスクシノニトリルを含む混合物も使用することができる。
【0012】
便宜のために、本発明の方法は、以下では、一般的に、アジポニトリル及びそれの水素化生成物の6−アミノカプロニトリル及びヘキサメチレンジアミンに関して説明するが、それはその他のジニトリルにも適用される。
【0013】
本発明の方法は、特に、ケミカルラバー社によおり“Handobook of Chemistry and Physics 51版(1970−1971)”に発表されたような元素の周期律表の第VIII族の金属からの少なくとも1種の金属によって接触されるジニトリルの水素化から生じる混合物に適用される。
【0014】
詳しくは、アジポニトリルの水素化は既知の方法で実施される。使用される触媒は、一般的に、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム又はルテニウムから選択される少なくとも1種の金属を含む。これらの金属は、1種以上の促進剤元素と組合わせて使用することができる。促進剤元素としては、例えば、モリブデン、タングステン、チタン、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、鉛、錫、パラジウム、白金、オスミウム、レニウム、イリジウム、アンチモン、ビスマス又は希土類金属が挙げられる。
触媒は、担体に担持しても又は担持しなくてもよい。担体としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム又は活性炭を使用することができる。
【0015】
担持してない触媒のうちでは、1種以上の促進剤元素も含み得るラネーニッケル及びラネーコバルトが好ましい。ラネーニッケル又はラネーコバルトに特に好適な促進剤としては、チタン、モリブデン、タングステン、クロム、鉄、亜鉛、銅、銀又は金が挙げられる。
【0016】
また、特許WO−A−97/10052に開示されているような、少なくとも部分的に還元された状態にあるニッケル又はコバルトをベースとする触媒であって該金属が1種以上のドープ用金属(促進剤)を酸化物の形で含む相によって組織化されているものを使用することができる。
【0017】
ラネーニッケル又はラネーコバルトの存在下でのアジポニトリルの水素化については、例えば、特許WO−A−96/18603、EP−A−0,737,100、EP−A−0,737,101又はEP−A−0,737,181を参照されたい。
【0018】
アジポニトリルの水素化は、特にこれをラネーニッケル、ラネーコバルト、ロジウム又はレニウムの存在下に実施するときは、好ましくは、水酸化アルカリ金属又はアルカリ土類金属のような塩基性化合物の存在下に実施される。
【0019】
水素化反応は、一般的に、水のような溶液の存在下に実施される。更に、反応は、アルコール若しくはアミドのような有機溶媒又は液体アンモニウムのような無機溶媒の存在下に実施することができる。また、反応混合物は、反応の開始時から、溶媒として作用するこの反応の生成物を可変量で含むことができる。
【0020】
溶媒は、特に塩基が無機塩基であるときは、好ましくは反応混合物中に存在する塩基を中和した後に、反応混合物から分離される。
【0021】
触媒の分離後に反応混合物に添加される酸は、無機酸、例えば硫酸、燐酸、亜燐酸、塩酸又は硝酸、或いは任意の有機酸、例えば脂肪族、シクロ脂肪族若しくは芳香族カルボン酸(一官能性若しくは多官能性であってよい)又は脂肪族、シクロ脂肪族若しくは芳香族スルホン酸のような有機酸であることができる。有機酸としては、限るわけではないが、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、ヘキサン酸、アジピン酸、テレフタル酸、グルタル酸、こはく酸、メチルグルタル酸、エチルこはく酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又はフルオルメタンスルホン酸が挙げられる。また、酸性の樹脂、特にスルホ基を含む樹脂も使用することができる。
【0022】
酸の使用量は、一般的に、ジニトリル、特にアジポニトリルの水素化から生じる反応混合物中に存在する塩基性無機化合物に関して少なくとも化学量論的量に相当するような量でなければならない。添加は、反応混合物の重量に関して0.0005重量%〜2重量%、好ましくは0.001重量%〜1重量%(重量/重量)の酸を使用して実施される。
使用する酸が酸性の樹脂であるときは、この重量比は殆ど意味を有しない。処理しようとする反応混合物は該樹脂上に通すか、又は適当ならば樹脂を反応混合物にその蒸留前に導入することができる。
【0023】
酸の添加後、反応混合物は、溶媒及び含み得るその他の軽質化合物、形成されたヘキサメチレンジアミン及び6−アミノカプロニトリル、並びに含まれ且つ新しい水素化に再循環できる未転化のアジポニトリルを分離するために蒸留される。ヘキサメチレンジアミン及び6−アミノカプロニトリルは、2基の塔で逐次蒸留することができ、或いは第一工程において短時間で未転化のアジポニトリルを加熱するために一緒に蒸留することができる。第二の別法では、ヘキサメチレンジアミン及び6−アミノカプロニトリルは、蒸留により互いに続けて分離される。アジポニトリルは、水素化操作に直接再循環し、或いは、それが含み得る重質の生成物、特に添加した酸によって形成された塩を除去するために予め蒸留することができる。6−アミノカプロニトリルは、カプロラクタムを生じさせるために液相か又は気相で加水分解することができる。この加水分解はあ、既知の技術に従って、触媒の存在下又は不存在下に、要すれば6−アミノカプロニトリルの更なる精製の後に、実施することができる。カプロラクタムは重合によってポリアミド−6を生じる。ヘキサメチレンジアミンは、特にアジピン酸との反応によりポリアミド−6,6を製造するのに使用することができる。
【0024】
軽質の化合物が分離されたときは、蒸留は一般的に大気圧よりも低い圧力下に実施される。
【0025】
本発明によれば、蒸留中に形成される副生物の量は、酸を予め添加することなく実施された蒸留と比較して又は6−アミノカプロニトリル及びヘキサメチレンジアミンの分離後に実施された酸の添加と比較して、大いに削減される。
【0026】
以下の実施例は本発明を例示するものである。
【0027】
例1
アジポニトリルを50℃で20バールの水素圧下に反応混合物に関して15重量%のラネーニッケル(Niに関して1.8重量%のCrを含む)及び反応混合物に関してほぼ0.42重量%の比の水酸化カリウムの存在下に連続的に水素化する。
反応混合物は重量で次の組成を有する。27%のヘキサメチレンジアミン(HMD)、38%の6−アミノカプロニトリル(ACN)、25%のアジポニトリル(AdN)及び9%の水。これは更に0.0080%の水酸化カリウムを含む。
イミノシアノシクロペンタン(ICCP)はガスクロマトグラフィーによる定量分析により定量されない。
この混合物の450gに63mgのオルト燐酸を添加する(水酸化カリウム1モル当たりほぼ1モル)。
次に、水を大気圧で1時間にわたり蒸留除去する。
続いて、一緒にしたHMD/ACNを減圧下に2時間にわたり185℃のボイラー内温度に達するまで蒸留する。
次いで、ICCPを蒸留残液(AdN)の試料について定量分析する。0.003%のICCPが見出された。
また、蒸留残液がもっと長い滞留時間を有する連続操作を模擬実験するために、該蒸留残液を185℃で更に2時間保持する。
このように処理した蒸留残液についてICCPの定量分析を実施する。0.010%のICCPが見出された。
【0028】
比較試験1
この比較試験は、例1の最初の部においてAdNの水素化により調製された450gの混合物について実施する。
続けて、水を大気圧で1時間蒸留除去する。
次ぎに、一緒にしたHMD/ACNを減圧下に2時間にわたり185℃のボイラー内温度に達するまで蒸留する。
次いで、ICCPを蒸留残液(AdN)の試料について定量分析する。12%のICCPが見出された。また、出発混合物中に存在するAdNの23%が消失し、一方ではICCPに、他方ではより重質の生成物(AdNの沸点よりも高い沸点)に転化されたことが見出された。
反応混合物の成分の蒸留前の酸による処理なしでは、本発明の場合と比較してはるかに多いICCPの形成が観察され、更に出発混合物中に存在するAdNを犠牲にして、経済的価値を有しない非常に多量の重質生成物の出現があった。
前記の蒸留残液に63mgのオルト燐酸(例1と同じ量)を添加する。
次いで、AdNを減圧下に1時間蒸留除去する。
ボイラー内に残留するICCP及び重質化合物の量は、燐酸の添加前に定量分析された量と実質的に同じであった。

Claims (14)

  1. 3〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジニトリルを接触水素化することによってアミノニトリル及びジアミンを製造するにあたり、触媒を予め分離しておいた最終反応混合物を、反応生成物及び未転化のジニトリルを蒸留によって抽出する前に、十分な量の無機又は有機酸の添加によって酸性化することを特徴とするアミノニトリル及びジアミンの製造方法。
  2. 水素化が溶媒の存在下に行なわれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 元素の周期律表の第VIII族の金属からの少なくとも1種の金属によって接触されるジニトリルの水素化から生じる混合物に適用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. アジポニトリルの接触水素化による6−アミノカプロニトリル及びヘキサメチレンジアミンの製造から生じる反応混合物に適用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 水素化が、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム又はルテニウムから選択される少なくとも1種の金属を含む触媒の存在下に実施されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  6. 該触媒が1種以上の促進剤元素と組合わせて使用される請求項5に記載の方法。
  7. 促進剤元素がモリブデン、タングステン、チタン、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、鉛、錫、パラジウム、白金、オスミウム、レニウム、イリジウム、アンチモン、ビスマス又は希土類金属から選択されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
  8. 触媒がアルミナ、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム又は活性炭から選択される担体に担持されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  9. 触媒が、チタン、モリブデン、クロム、鉄、タングステン、亜鉛、銅、銀又は金のような1種以上の促進剤元素も含み得るラネーニッケル及びラネーコバルトから選択されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  10. 触媒が、少なくとも部分的に還元された状態にあるニッケル又はコバルトをベースとする触媒であって該金属が1種以上の促進剤金属を酸化物の形で含む相によって組織化されているものから選択されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  11. 触媒の分離後に反応混合物に添加される酸が、硫酸、燐酸、亜燐酸、塩酸又は硝酸のような無機酸、或いは脂肪族、シクロ脂肪族若しくは芳香族カルボン酸(一官能性若しくは多官能性であってよい)又は脂肪族、シクロ脂肪族若しくは芳香族スルホン酸のような有機酸、或いはスルホ基を含む酸性樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 酸の使用量が、ジニトリルの水素化から生じる反応混合物中に存在する塩基性無機化合物に関して少なくとも化学量論的量に相当するような量であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 酸の使用量が、反応混合物の重量に関して0.0005重量%〜2重量%酸を表わすことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 溶媒が酸の添加前に又は添加後に反応混合物から分離できることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
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