JP3845464B2 - 微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にビニル系単量体の懸濁重合用安定剤として有用な微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
単量体、特にビニル系単量体の重合方法の一つとして懸濁重合方法がよく知られており、懸濁重合方法は、重合速度や、得られる重合体の重合度が大きく、分散剤や凝固剤を使用しないので重合体の純度が高く、また重合熱が媒体の水により除去されるので重合温度の調節が容易であり、さらに粒状で得られる重合体の分離が容易であるなどの特徴を有するために一般的に使用されている。
【0003】
この懸濁重合方法においては、水性媒体中で単量体や重合体を懸濁状態に維持するために、懸濁重合用安定剤が使用される。この懸濁重合用安定剤に要求される性質としては、重合工程中の懸濁安定性がよいこと、重合体中への懸濁重合用安定剤の混入が少ないこと、所望の粒径の重合体ビーズが得られることなどが挙げられる。
【0004】
従来より、優れた懸濁重合用安定剤として、水酸アパタイトの水性スラリーが知られていた。しかし従来の水酸アパタイトの水性スラリーからなる懸濁重合用安定剤は、懸濁安定性や反応槽の壁面などへのスケールの付着などの点で、なおも不満足なものであった。水酸アパタイト系懸濁重合用安定剤が有するこのような問題点を解決する懸濁重合用安定剤として、重量比CaO/P2 O5 が少なくとも1.30のサブミクロン級の小判状した微細なハイドロオキシアパタイトの水性スラリー又はペーストであって、沈降半減期が少なくとも15分であることを特徴とする懸濁重合用安定剤が提案された(特公昭54−44313号公報参照)。しかしながら、この懸濁重合用安定剤も、依然として重合反応中の反応槽の壁面や撹拌機などへのスケールの付着量が多く、必ずしも満足すべきものではなかった。
【0005】
特開平5−222103号公報には、単量体の懸濁重合を所望の程度に安定して行なうことができ、しかも重合反応の過程で反応槽の壁面や撹拌機などへのスケールの付着量が極めて少ない懸濁重合用安定剤として、CaO/P2 O5 の重量比が1.24〜1.37である微細な針状結晶の水酸アパタイトの水性スラリーであり、その沈降半減期が25分以上であることを特徴とする懸濁重合用安定剤が提案されている。この懸濁重合用安定剤は、水酸化カルシウムの水性スラリーに、60℃未満の温度で撹拌下に、リン酸を、水酸化カルシウム1kg当たり1〜40g(P2 O5 )/分の速度で、水酸化カルシウムに対する割合が、CaO/P2 O5 の重量比で表わして1.2〜1.4となるまで添加する方法を利用して製造することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
水酸アパタイト水性スラリーは、上記のような改良の結果、懸濁重合の使用に際してのトラブルが低減し、その有用性が高まった。そこで問題になったのは、水酸アパタイト水性スラリーの固形分濃度である。すなわち、上記のような改良によって、固形分濃度が8重量%未満程度の比較的低い固形分濃度の水酸アパタイト水性スラリーでは、水酸アパタイトの粒子径が非常に小さなものが得られ、高性能の懸濁重合用安定剤として機能することが確認された。しかし、その高性能は固形分濃度が上昇するにつれて低下する傾向にあり、固形分濃度が9重量%以上、特に12重量%以上になると、低固形分濃度の水酸アパタイト水性スラリーに比べて懸濁重合用安定剤としての性能の低下が目立つようになる。固形分濃度の高い水酸アパタイト水性スラリーは、生産性の面で有利であり、また貯蔵や輸送のためのコストの低減のために極めて有用である。
【0007】
上記の高固形分濃度での水酸アパタイト水性スラリーの性能低下の原因は、本発明者の検討によると、スラリー中の水酸アパタイト粒子の凝集による二次粒子の生成にあることが判明した。このため、本発明者は、その凝集物の低減を目指して種々の分散操作を行なったが、一次粒子が非常に微粒子状態にある水酸アパタイトの凝集物(二次粒子)は、その凝集エネルギーが非常に高いためか、通常の分散機器を用いた凝集物の分散操作では、その分散効果は殆ど現われないことが分った。また、その通常の分散操作では、長時間の分散処理を行なっても、その効果は余り現われないことも判明した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水酸化カルシウムの水性スラリーとリン酸水溶液との反応により得られた水酸アパタイト水性スラリーをビーズミルを用いて微粉砕処理を行なうことを特徴とする微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な態様は下記の通りである。
(1)微粉砕処理前の水酸アパタイトを含む水性スラリーの沈降半減期が38分以下であって、微粉砕処理後の微粒子水酸アパタイト水性スラリーの沈降半減期が微粉砕前に比べて5分以上延長されるように処理する微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法。
(2)微粉砕処理の前および後の水酸アパタイトを含む水性スラリーの固形分濃度が9〜20重量%である微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法。
【0010】
(3)微粉砕処理の前の水酸アパタイトを含む水性スラリー中の水酸アパタイトの平均粒子径(マイクロトラック粒度分析計による測定値)が2.3μm以上である。
(4)微粉砕処理の後の水酸アパタイトを含む水性スラリー中の微粒子水酸アパタイトの平均粒子径(マイクロトラック粒度分析計による測定値)が1.8μm以下である。
(5)上記微粒子水酸アパタイト水性スラリーが、CaO/P2 O5 の重量比が1.24〜1.40の範囲にある微細結晶の水酸アパタイトを含む水性スラリーである。
【0011】
上記の沈降半減期は、水酸アパタイトの濃度が1.5g/100mlである均一に懸濁させた水酸アパタイトの水性スラリーを、100mlの沈降管に入れて25℃で静置し、沈降物の体積が50mlに達するまでの時間を意味する。
【0012】
水酸アパタイトは、Ca、PO4 およびOHからなる複雑な化合物であるが、本発明において処理対象とする水酸アパタイト水性スラリー中の水酸アパタイトは、そのCaO/P2 O5 の重量比が1.24〜1.40の範囲にあることが好ましい。
【0013】
本発明の微粒子水酸アパタイト水性スラリーを製造するための処理対象の水酸アパタイト水性スラリーは、その固形分濃度が9〜20重量%(特に12〜20重量%)であって、沈降半減期が38分以下、そして平均粒子径(マイクロトラック粒度分析計による測定値)が2.3μm以上であるようなものであることが望ましい。
上記のような特性を有する処理対象の水酸アパタイト水性スラリーは、水酸化カルシウムの水性スラリーとリン酸水溶液との反応を利用する下記のような方法で調製することができる。
【0014】
一方の原料である水酸化カルシウムの水性スラリー中の水酸化カルシウム濃度は、製造する懸濁重合用安定剤の水酸アパタイトの濃度及び使用するリン酸の濃度などにより変わるが、一般に5〜30重量%、特に8〜28重量%、更に特に10〜25重量%であることが好ましい。水酸化カルシウムの濃度が上記範囲よりも小さいと、得られる水性スラリー中の水酸アパタイトの濃度が小さくなり、場合により濃縮しなくてはならず、また、上記水酸化カルシウムの濃度が上記範囲よりも大きいと、水酸化カルシウムの水性スラリーの粘度が上昇し、作業性が悪くなりやすい。
【0015】
水性スラリー中での水酸化カルシウムとリン酸との反応は、通常は100℃以下で行なわれるが、65℃未満の温度で行なうことが好ましい。そして、水酸化カルシウムとリン酸との反応の初期には、比較的低温で反応を行なうことが好ましい。例えば、水酸化カルシウムの反応率が25%になるまで50℃以下の温度で行なうことが好ましい。
【0016】
水酸化カルシウムとリン酸との割合は、CaO/P2 O5 の重量比が、所望する水酸アパタイトのCaO/P2 O5 の重量比であるか、またはリン酸を若干過剰に使用することが好ましい。リン酸の濃度は特に限定されないが、水酸化カルシウム水性スラリーの固形分濃度、得られる水酸アパタイト水性スラリー中の所望の水酸アパタイトの濃度、反応中の温度などを考慮して決定すればよい。
【0017】
水酸化カルシウムとリン酸とを反応させる際に発熱するので、水酸化カルシウムの水性スラリーへのリン酸の添加は、水酸化カルシウム1kg当たり1〜40g(P2 O5 )/分の速度になるように行なうことが好ましい。水酸化カルシウムの水性スラリーへのリン酸の添加は、水酸化カルシウム1kg当たり2〜30g(P2 O5 )/分、特に3〜20g(P2 O5 )/分の速度になるように行なうことが好ましい。
【0018】
また、水酸化カルシウムとリン酸とを反応させる際に、水酸アパタイトの品質を均一にし反応熱を効率的に除去するために、撹拌を行なうことが好ましい。撹拌速度は特に限定されないが、反応物の局部的な温度上昇をできるだけ少なくするように調節する。また、反応温度の制御は、例えば反応容器に冷却装置を付設し、その冷却装置により実施することもできる。
【0019】
本発明の微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法は、上記のような方法で得られた水酸アパタイト水性スラリーを、ビーズミルを用いて微粉砕処理を行なうことを特徴とする。
【0020】
ビーズミルは、媒体撹拌式粉砕機あるいは撹拌型粉砕機とも呼ばれるものであって、ガラス粒子、セラミックス粒子、金属粒子などの硬質のビーズ、そして撹拌羽根、ディスク、スクリューなどの撹拌器具とを組合せて微粉砕と分散を同時に行なう器具であり、その詳しい説明は、「粉体工学便覧」(日刊工業新聞社、昭和61年2月28日初版発行)や「粉体工学用語辞典」(日刊工業新聞社、昭和56年12月15日初版発行)に述べられている。本発明者の研究によると、これまでにスラリーの分散のために一般的に用いられてきた剪断付与型の分散機(例、コロイドミル、ホモミキサー)を用いて本発明の処理対象の水酸アパタイト水性スラリーを分散処理しても、その水性スラリー中の水酸アパタイトの凝集の低減は殆ど望めないことが見出されている。一方、本発明のビーズミルを用いると、10分以内といった極めて短い時間で、水性スラリー中の水酸アパタイトの凝集の顕著な低減が実現する。なお、ビーズミルによる分散処理条件は、処理対象の水酸アパタイト水性スラリーの量、固形分濃度、凝集度などを考慮して適宜決定することができる。
【0021】
なお、本発明の微粒子水酸アパタイトの水性スラリーの製造方法では、ビーズミルを用いる微粉砕処理によって、微粒子水酸アパタイト水性スラリーの沈降半減期が微粉砕前に比べて5分以上(特に10分間以上)延長されるように処理することが好ましい。そして、微粉砕処理の後の水酸アパタイトを含む水性スラリー中の微粒子水酸アパタイトの平均粒子径(マイクロトラック粒度分析計による測定値)が1.8μm以下となるように処理することが好ましい。
【0022】
本発明で得られる微粒子水酸アパタイトの水性スラリーは、単量体、特にビニル系単量体の懸濁重合に懸濁重合用安定剤として使用すると、粒子径が小さく、かつ粒度分布が狭い、すなわち粒度が揃ったポリマービーズを得ることができる。また、反応槽内の壁面や撹拌機などへのスケールの付着量が極めて少なく、安定して長期間懸濁重合を継続することができる。
【0023】
単量体としては、例えば、スチレン、芳香核及び/または側鎖に置換基を有するスチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル)、塩化ビニル、塩化ビニリデン等を挙げることができる。
【0024】
懸濁重合はこれらの単量体の単独重合、共重合、他の重合性単量体との共重合などの何れであってもよい。更に、懸濁重合の際に、単量体の単独重合体若しくは共重合体、他の重合体などを、上記単量体を含む懸濁液に溶解又は分散させておいてもよい。
【0025】
微粒子水酸アパタイト水性スラリーを懸濁重合用安定剤として用いる場合、その使用量は、懸濁重合の条件により変わるものであって、特に限定されないが、一般的に、重合させる単量体の重量基準で、水酸アパタイト固形分換算で0.1〜1.0重量%であることが好ましい。
【0026】
上記の懸濁重合用安定剤は、単独で使用することができるが、他の懸濁重合用安定剤、例えば、ポリビニルアルコール、CMCなどの水溶性高分子化合物と一緒に使用することもできる。また、界面活性剤、pH調節剤、比重調節剤、粘度調節剤、その他などの、懸濁重合に一般的に使用される他の添加剤と共に使用することもできる。
【0027】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
【0028】
[実施例1、2及び比較例1〜3]
(1)水酸アパタイト水性スラリーの調製
水酸化カルシウム11.85kgと水とを混合して、水酸化カルシウムの濃度が14.5重量%の水性スラリー81.85kgを調製した。別に、85%リン酸を水で希釈して、リン酸濃度が11.3重量%のリン酸水溶液81.86kgを調製した。
約31℃の上記水酸化カルシウムの水性スラリーに、タービン型撹拌機で撹拌(回転速度は約1400r.p.m.)しながら、上記リン酸水溶液を、水酸化カルシウム1kg当たり8.31g(P2 O5 )/分の速度で添加した。68分間を要してリン酸水溶液全量を添加した。水酸化カルシウムに対する添加したリン酸の割合は、CaO/P2 O5 の重量比で表わして1.34であった。リン酸水溶液の添加の間に水性スラリーの温度は徐々に上昇し、リン酸水溶液の添加終了時の水性スラリーの温度は54℃であった。
【0029】
上記のようにして得られた水酸アパタイトの水性スラリーは、固形物の濃度が10.0重量%であり、沈降半減期が35分20秒、そしてマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製、7995−40型)を用いた測定によれば、平均粒子径(スラリー中の粒子、従って大部分は二次粒子)は2.7μmであった。この水酸アパタイトの形状は、透過型電子顕微鏡写真で測定したところ、針状の結晶であることが確認された。
【0030】
(2)水酸アパタイト水性スラリーの微粉砕処理(実施例1、2)
上記の水酸アパタイトの水性スラリーをビーズミル(アシザワ(株)製、RL1V型)を用い、下記の条件による処理を行なった。
【0031】
(3)水酸アパタイト水性スラリーの剪断分散処理(比較例1〜3)
上記の水酸アパタイト300ミリリットルを500ミリリットル容のプラスチック容器に入れ、強力剪断分散機(特殊機化工業(株)製、TKホモデイスパーL型)を用いて回転速度2000rpmで、1.6分間(比較例1)、3.2分間(比較例2)、あるいは10分間(比較例3)の分散処理を行なった。
【0032】
(4)微粉砕処理あるいは剪断分散処理の結果
【0033】
【表1】
なお、表1中の平均粒子径は前述のマイクロトラック粒度分析計による測定値である。
【0034】
上記の結果から明らかなように、本発明に従ってビーズミルで処理した水酸アパタイトの水性スラリーは、短時間の処理によって沈降半減期が顕著に上昇し、また平均粒子径も顕著に小さくなる。これに対して、剪断分散を利用した処理では、沈降半減期についても、また平均粒子径についても短時間の処理では殆ど変化せず、また長時間の処理によっても平均粒子径と沈降半減期のいずれについても殆ど向上は認められない。
【0035】
[実施例3、4]
(1)水酸アパタイト水性スラリーの調製
水酸化カルシウム17.66kgと水とを混合して、水酸化カルシウムの濃度が21.4重量%の水性スラリー82.66kgを調製した。別に、85%リン酸を水で希釈して、リン酸濃度が16.8重量%のリン酸水溶液80.06kgを調製した。
約32℃の上記水酸化カルシウムの水性スラリーに、タービン型撹拌機で撹拌(回転速度は約1400r.p.m.)しながら、上記リン酸水溶液を、水酸化カルシウム1kg当たり8.50g(P2 O5 )/分の速度で添加した。65分間を要してリン酸水溶液全量を添加した。水酸化カルシウムに対する添加したリン酸の割合は、CaO/P2 O5 の重量比で表わして1.37であった。リン酸水溶液の添加の間に水性スラリーの温度は徐々に上昇し、リン酸水溶液の添加終了時の水性スラリーの温度は64℃であった。
【0036】
上記のようにして得られた水酸アパタイトの水性スラリーは、固形物の濃度が15.2重量%であり、沈降半減期が22分50秒、そしてマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製、7995−40型)を用いた測定によれば、平均粒子径(スラリー中の粒子、従って大部分は二次粒子)は3.6μmであった。この水酸アパタイトの形状は、透過型電子顕微鏡写真で測定したところ、針状の結晶であることが確認された。
【0037】
(2)水酸アパタイト水性スラリーの微粉砕処理
上記の水酸アパタイトの水性スラリーをビーズミル(アシザワ(株)製、RL1V型)を用い、実施例1、2と同じ条件による処理を実施例3(処理時間1.6分)と実施例4(3.2分)とについて行なった。
【0038】
(3)微粉砕処理の結果
【0039】
【表2】
平均粒子径は前述のマイクロトラック粒度分析計による測定値である。
【0040】
上記の結果から明らかなように、被処理スラリーが高い固形分濃度のものであっても、本発明に従って、ビーズミルで処理することによって、水酸アパタイト水性スラリーは短時間の処理でも沈降半減期が顕著に上昇し、また平均粒子径も顕著に小さくなる。
【0041】
[評価:重合試験]
実施例1と4でビーズミル処理を施して得た微粒子水酸アパタイト水性スラリーそして、比較用(コントロール)の微粒子水酸アパタイト水性スラリー(固形分濃度6.8重量%、沈降半減期56分10秒、平均粒子径2.2μm)をそれぞれ懸濁重合用安定剤として用いて、スチレンとアクリロニトリルとの共重合を行なった。
【0042】
容量100リットルのタービン型撹拌機付きステンレス製オートクレーブに、スチレンモノマー75重量部、アクリロニトリルモノマー25重量部、水100重量部、上記懸濁重合用安定剤0.465重量部(固形物換算値)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.004重量部及び過酸化ベンゾイル0.3重量部を入れ、280r.p.m.の回転速度で撹拌機を回転させて撹拌しながら、90℃にて10時間の懸濁共重合反応を行なった。懸濁共重合反応はいずれの場合も円滑に行なわれた。
反応終了後、オートクレーブから内容物を取り出し、ポリマービーズを遠心分離機を利用して分離取得し、塩酸で洗浄し、次いで水で洗浄した後乾燥して、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(ASポリマー)ビーズを得た。いずれの場合も、オートクレーブの内壁へのスケールの付着は少なかった。
得られたASポリマービーズの粒子径を測定した結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
凝集ビーズ量は、10メッシュを越える凝集物の量を意味する。
【0044】
上記の結果から明らかなように、本発明に従ってビーズミルで処理した水酸アパタイト水性スラリーを懸濁重合用安定剤として用いることにより、その固形分濃度が比較的高いものであっても、平均粒子径が小さく、かつ粒度分布の狭いポリマービーズを得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明に従ってビーズミル処理を施して得た微粒子水酸アパタイト水性スラリーは、比較的凝集物が少なく、また沈降半減期が延長される。そして、そのように処理した微粒子水酸アパタイト水性スラリーを懸濁重合用安定剤として用いると、平均粒子径が小さく、かつ粒度分布の狭いポリマービーズを得ることができる。従って、本発明のビーズミルは、特に凝集が激しくなりやすい高い固形分濃度の水酸アパタイト水性スラリーの処理に有用である。
Claims (4)
- 水酸化カルシウムの水性スラリーとリン酸水溶液との反応により得られた水酸アパタイト水性スラリーをビーズミルを用いて微粉砕処理を行なうことを特徴とする微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法。
- 上記の微粉砕処理を分散安定剤が存在しない条件にて行なう請求項1に記載の微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法。
- 微粉砕処理前の水酸アパタイト水性スラリーの沈降半減期が38分以下であって、微粉砕処理後の微粒子水酸アパタイト水性スラリーの沈降半減期が微粉砕前に比べて5分以上延長されるように処理する請求項1もしくは2に記載の微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法。
- 微粉砕処理の前後の水酸アパタイト水性スラリーの固形分濃度が9〜20重量%である請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の微粒子水酸アパタイト水性スラリーの製造方法。
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