JP3843577B2 - 荷重検出装置付転がり軸受ユニット - Google Patents

荷重検出装置付転がり軸受ユニット Download PDF

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  • Measurement Of Length, Angles, Or The Like Using Electric Or Magnetic Means (AREA)
  • Transmission And Conversion Of Sensor Element Output (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係る荷重検出装置付転がり軸受ユニットは、例えば工作機械の主軸をハウジングに支持する等、一般産業機械を構成する回転部分を固定部分に対して回転自在に支持すると共に、この回転部分の中心軸の変位を検出し、この回転部分に負荷される荷重を求める為に利用する。或は、トラック等の自動車の車輪を懸架装置に対し回転自在に支持するのに利用して、荷台の荷重等を検出する為にも利用できる。
【0002】
【従来の技術】
例えば、工作機械の主軸は、この工作機械を構成するハウジングの内側に、玉軸受やころ軸受等の転がり軸受により、回転自在に支持している。又、被加工物の加工を適切に行なうべく、上記主軸の回転速度を検出する為に、上述の様な転がり軸受に、上記主軸の回転速度を検出する為の回転速度検出装置を組み込む事も、従来から行なわれている。この様な回転速度検出装置は、上記転がり軸受を構成する回転輪に支持したエンコーダと、同じくこの転がり軸受を構成する固定輪、或は上記ハウジング等の固定部分に支持され、上記エンコーダの一部に対向させたセンサとから成る。上記主軸の回転速度は、この主軸の回転に伴って回転する上記回転輪に支持したエンコーダの回転速度を、上記センサにより検出する事で測定する。
【0003】
従来から知られている回転速度検出装置付転がり軸受ユニットは、主軸或は車輪等の回転部分の回転速度を検出しても、この回転部分に加わるラジアル荷重を検出する事までも意図してはいなかった。一方、工作機械の主軸には、加工時にラジアル荷重(更にはスラスト荷重)が加わる。この様なラジアル荷重或はスラスト荷重が過大になると、所望の加工を精度良く行なう事ができない。従って、上記主軸に加わる荷重或はこの荷重に基づく変位を検出する事は重要であるが、従来はこの荷重或は変位の検出を、回転速度検出装置とは別個に設けた、ロードセル等の荷重センサ、或は変位センサにより行っていた。この為、この荷重センサ或は変位センサの設置スペースを別途設ける必要があり、工作機械の小型化・低廉化の妨げとなる。この為、回転速度検出装置により、上記主軸の回転速度だけでなく、この主軸に加わる荷重或は変位の検出を行なえる構造の実現が望まれる。
又、トラック等の自動車の積載量、搭乗人員が過剰な場合にはこの自動車の走行安定性や制動能力が損なわれて危険である。この為、車両総重量が許容値を越えているか否かを知る事は重要であるが、従来は、自動車自体にこの様な車両総重量を知る為の機構を組み込んではいなかった。これに対して、近年に於けるアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)の普及により、車輪を支持する為の転がり軸受ユニットに、この車輪の回転速度を検出する為の回転速度検出装置を組み込む事が一般的に行われている。車輪を支持する為の転がり軸受ユニットには、上記車両総重量に見合うラジアル荷重が加わる。そこで、この転がり軸受ユニットに、車輪の回転速度の他、このラジアル荷重を検出する機能を付加すれば、上述の様な危険防止を図る装置の実現に寄与できるものと考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の荷重検出装置付転がり軸受ユニットは、上述の回転部分等に負荷される荷重を求める荷重検出装置付転がり軸受ユニットの改良に関する。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
本発明の荷重検出装置付転がり軸受ユニットは、静止側周面に静止側軌道を有し、使用時にも回転しない静止輪と、上記静止側周面と対向する回転側周面に回転側軌道を有し、使用時に回転する回転輪と、上記静止側軌道と上記回転側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを有する転がり軸受と、上記静止輪に支持され、この静止輪と上記回転輪との相対変位を検出する複数個の変位センサと、特性を円周方向に亙り交互に且つ等間隔に変化させた円環状の被検出部を有し、上記回転輪の一部にこの回転輪と同心に固定されたエンコーダとを備える。又、これら複数個の変位センサにより検出した上記相対変位と、上記転がり軸受の剛性とに基づき、この転がり軸受に負荷される荷重を求める。
【0006】
又、請求項2に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、上記静止輪と回転輪との相対変位前の上記各変位センサの出力を初期値とし、この相対変位前後に於けるこれら各変位センサの出力の差から、上記転がり軸受に負荷される荷重を求める。
又、請求項3に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、求めた転がり軸受に負荷される荷重の値を、自動車の制御の為に使用する。
又、請求項4に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニットに於いては、上記各変位センサの出力により、上記転がり軸受に負荷される荷重と共に、上記回転輪の回転速度も求める。
【0007】
【作用】
上述の様に構成する本発明の荷重検出装置付転がり軸受ユニットにより、工作機械の主軸や自動車の車輪等の回転部分を、工作機械のハウジングや自動車の懸架装置等の固定部分に対して回転自在に支持する際の作用は、従来から一般に知られている転がり軸受ユニットの場合と同様である。
【0008】
特に、請求項4に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニットの場合、静止輪に支持した複数個の変位センサが、上記回転部分の回転速度の他、静止輪と回転輪との相対変位(変位方向及び変位量)も検出する。この様な相対変位と、転がり軸受の剛性と、転がり軸受ユニットに加わる負荷(ラジアル荷重及びスラスト荷重)との間には一定の関係がある。又、転がり軸受の剛性は、周知の様に、計算式により求める事ができる。従って、請求項4に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニットにより、上記相対変位を求めれば、この相対変位と転がり軸受との剛性とに基づき、この転がり軸受に負荷される荷重を求める事ができ、その結果、上記回転部分に加わる負荷を求める事ができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。主軸或は車軸等の回転軸1は、固定されて回転しないハウジング2の内側に、ラジアル転がり軸受3により、このハウジング2に対する回転自在に支持している。即ち、上記ラジアル転がり軸受3を構成する、静止輪である外輪4は、上記ハウジング2の内周面に内嵌固定しており、静止側周面である内周面に、静止側軌道である外輪軌道5を有する。又、回転輪である内輪6は、上記回転軸1の中間部に外嵌固定しており、回転側周面である外周面に、回転側軌道である内輪軌道7を有する。そして、この内輪軌道7と上記外輪軌道5との間に複数個の転動体8、8を転動自在に設ける事により、上記回転軸1を上記ハウジング2の内側に回転自在に支持している。
【0010】
尚、上記内輪6は、上記回転軸1の中間部外周面に形成した段部9と、同じくこの回転軸1の中間部で上記内輪6に関して上記段部9と反対側部分に外嵌した固定リング10との間で挟持する事により、軸方向(図1〜2の左右方向)に亙る位置決めを図っている。又、図示の例では、上記外輪4は、上記ハウジング2に圧入により内嵌固定しているが、上記外輪4の外周面にフランジを形成すると共に、このフランジと上記ハウジング2の一部とをボルト等により結合する事で、上記外輪4を上記ハウジング2に支持固定する構造も採用できる。又、図示の例では、上記各転動体8、8として玉を使用しているが、ラジアル方向に亙る大きな荷重を支承する転がり軸受の場合には、各転動体としてころを使用する場合もある。更には、ラジアル、スラスト両方向に亙る大きな荷重を支承する転がり軸受の場合には、各転動体として円すいころを使用する場合もある。
【0011】
又、上記各転動体8、8を設置する部分である、外輪4の内周面と内輪6の外周面との間に存在する空間11の軸方向(図1〜2の左右方向)両端開口部には、それぞれ組み合わせシールリング12、12を設けて、上記空間11内に塵芥等の異物が進入するのを防止すると共に、この空間11内に封入したグリース等の潤滑剤がこの空間11外に漏洩するのを防止している。上記各組み合わせシールリング12、12を構成する、外径側と内径側との1対のシールリングは、それぞれ第一、第二の芯金13、14とシールリップ15a、15bとから成る。このうちの第一の芯金13は、鋼板等の金属板を曲げ形成する事により、断面L字形で全体を円環状に形成したもので、固定円筒部16と内向きフランジ状の固定円輪部18とを有し、このうちの固定円筒部16を上記外輪4の端部に内嵌固定している。又、上記第二の芯金14は、やはり鋼板等の金属板を曲げ形成する事により、断面L字形で全体を円環状に形成したもので、回転円筒部17と外向きフランジ状の回転円輪部19とを有し、このうちの回転円筒部17を上記内輪6の端部に外嵌固定している。又、上記各シールリップ15a、15bは、ゴムその他のエラストマー等の弾性材により、全体を円環状に形成している。この様な各シールリップ15a、15bは、それぞれの基部を上記固定円輪部18及び上記回転円輪部19に添着固定すると共に、それぞれの先端縁を上記第二の芯金14の表面及び上記第一の芯金13の表面に、全周に亙り摺接させている。
【0012】
又、上記1対の組み合わせシールリング12、12のうち、上記空間11の一端側(図1〜2の右端側)の組み合わせシールリング12の内径側シールリングを構成する第二の芯金14の外側面(前記空間11と反対側側面で、図1〜2の右側面)には、エンコーダ20を支持固定している。このエンコーダ20は、鋼板等の磁性金属板により、全体を円輪状に形成している。そして、直径方向中間部に複数の透孔21、21を、円周方向に亙り等間隔に形成する事により、被検出部であるこのエンコーダ20の直径方向中間部の磁気特性を、円周方向に亙り交互に且つ等間隔に変化させている。尚、この様にエンコーダ20の磁気特性を変化させるべく、このエンコーダ20には、上記透孔21に代えて直径方向の一端側に開口する切り欠きを形成する場合もある。この様なエンコーダ20は、上記第二の芯金14を構成する回転円輪部19の外側面(図1〜2の右側面)に、接着、スポット溶接等により添着固定している。
【0013】
又、上記外輪4の一端部(図1〜2の右端部)外周面には、この外周面の他の部分よりも直径方向内方に凹入する段部22を設けている。そして、この段部22に、後述する変位センサ26、26を支持する為の支持環23を外嵌固定し、この支持環23を上記エンコーダ20に対向させている。この支持環23は、鋼板等の金属板を曲げ形成する事により、断面L字形で全体を円環状に形成したもので、円筒部24と内向きフランジ状の円輪部25とを有する。そして、このうちの円筒部24の先端部を上記段部22に外嵌する事により、上記支持環23を上記外輪4の一端部に支持固定している。尚、上記円輪部25の内径は、上記回転軸1の一部で、この円輪部25の内周縁が対向する部分の外径よりも少しだけ大きく形成している。従って、上記支持環23を上記段部22に外嵌固定した状態で、上記円輪部25の内周縁と上記回転軸1の外周面との間には、ラビリンスシールとして機能する、微小隙間が形成される。即ち、上記支持環23は、次述する変位センサ26、26を保持する機能の他、ダストカバーとしての機能を持ち、これら各変位センサ26、26部分への塵芥等の異物の進入を防止する。
【0014】
上記支持環23には、4個の変位センサ26、26(図1〜2には図示省略、図3〜4参照。)を支持している。これら各変位センサ26、26は、合成樹脂33中に包埋した状態で上記支持環23を構成する円筒部24の内径側に、円周方向に亙り等間隔に保持固定している。即ち、上記各変位センサ26、26は、上記支持環23の中心軸(上記外輪4の中心軸)をその中心とする円周上に、円周方向に亙る位相をそれぞれ90度ずつずらせて配置している。そして、この状態で上記各変位センサ26、26の検出部を、被検出部である上記エンコーダ20の外側面(図1〜2の右側面)の直径方向中間部に、軸方向(図1〜2の左右方向)に亙る微小隙間(例えば0.5〜1mm以下)を介して対向させている。尚、上記各変位センサ26、26の検出部と上記エンコーダ20の被検出部の一部との軸方向に亙る間隔は、上記回転軸1に負荷が加わっていない状態で互いに等しくなる様に、上記各変位センサ26、26の設置位置を規制している。
【0015】
尚、上記各変位センサ26、26としては、永久磁石とホールIC或は磁気抵抗素子等の検出素子とにより構成するアクティブセンサ、或は、図3(A)(B)に示す様に、永久磁石34と磁性材製のステータ35とこのステータ35に巻回するコイル36とにより構成するパッシブセンサを選択使用できる。但し、1個の回転速度検出装置付転がり軸受ユニットに組み込む複数の変位センサは、それぞれ同構造のものを使用して、同じ変位に対して同じ出力変化を得られる様にする。尚、上記各変位センサ26、26として上記パッシブセンサを使用する場合には、図3(B)に示す様な、外輪4の軸方向にステータ35を配置する構造ではなく、同図(A)に示す様に、ステータ35を外輪4の円周方向に配置するものが好ましい。この理由は、上記外輪4の軸方向に亙る各変位センサ26、26の寸法を小さくし、これら各変位センサ26、26を支持する支持環23の軸方向(図1〜2の左右方向)の突出量を小さく抑える為である。従って、設置空間に余裕があれば、図3(B)の構造でも差支えない。尚、上記支持環23の外側面(図1〜2の右側面)からは、上記各変位センサ26、26の信号を取り出す為のハーネス27を導出している。
【0016】
上述の様に構成する本荷重検出装置付転がり軸受ユニットの作用は、次の通りである。先ず、回転軸1の回転速度を検出する場合の作用に就いて説明する。上記回転軸1の回転に伴って内輪6に支持したエンコーダ20が回転すると、上記各変位センサ26、26の検出部の近傍を、上記エンコーダ20に設けた透孔21、21と、これら各透孔21、21同士の間部分に存在する各柱部とが交互に通過する。この結果、上記各変位センサ26、26の出力(電圧値、或は抵抗値)が変化する。この出力が変化する周波数は、上記回転軸1の回転速度に比例する。従って、上記各変位センサ26、26のうち少なくとも1個の変位センサ26の出力を上記回転軸1を有する工作機械或は自動車に設けた制御器に送れば、この回転軸1の回転速度を算出できる。尚、上記変位センサ26、26を複数個設けている事を除き、上述の様に回転軸1の回転速度を検出する際の作用は、従来から知られている回転速度検出装置付転がり軸受ユニットの場合と同様である。
【0017】
次に、本の特徴である作用、即ち、ラジアル転がり軸受3を構成する内輪6の中心軸と外輪4の中心軸とが相対変位した場合に、この相対変位を検出する際の作用に就いて、図4を参照しつつ説明する。尚、本の特徴である、この作用は、上記内輪6の中心軸と外輪4の中心軸との相対変位に伴う変位量を、上記各変位センサ26、26を配置する円周の中心軸と、上記エンコーダ20の中心軸との相対変位量として検出するものである。上記図4中、二点鎖線aは、上記回転軸1に負荷が加わっていない中立状態(相対変位以前)に於けるエンコーダ20の状態を、実線bは、上記回転軸1に負荷が加わって相対変位した後のエンコーダ20の状態を、一点鎖線cは、上記各変位センサ26、26の検出部の配置面を、一点鎖線dは、上記各変位センサ26、26を配置した円周の中心軸を、それぞれ示している。
【0018】
例えば、上記回転軸1に加わるラジアル荷重に基づいて、上記内輪6の中心軸と外輪4の中心軸(図1〜2参照)とが相対変位する事に伴い、上記エンコーダ20が二点鎖線aで示す状態から、実線bで示す状態に変位したとする。そして、この時の上記エンコーダ2の軸方向(図4の左右方向)に亙る変位量をδa 、直径方向(図4の上下方向)に亙る変位量をδr 、上記中心軸(一点鎖線)dに直交する仮想平面に対する傾斜角度をθとする。この場合、内輪6の中心軸と外輪4の中心軸との相対変位前と相対変位後とに於ける、上記各変位センサ26、26の検出部S1 〜S4 と、上記エンコーダ20の被検出部との軸方向に亙る距離の変化量δS1〜δS4は、幾何学的関係により下記の(1) 〜(4) 式で表される。
δS1={(r・cosφ−δr )・tanθ}−δa −−−(1)
δS2=[{r・cos(φ+90°)−δr }・tanθ]−δa −−−(2)
δS3=[{r・cos(φ+180°)−δr }・tanθ]−δa −−−(3)
δS4=[{r・cos(φ+240°)−δr }・tanθ]−δa −−−(4)
尚、上記(1) 〜(4) 式中、rは、上記各変位センサ26、26の検出部S1 〜S4 を配置する円周の半径を、φは、上記二点鎖線a及び実線bを含む面と上記中心軸d及び上記各変位センサ26、26のうち1番目の変位センサ26の検出部S1 を含む面との間の角度を、それぞれ示している。
【0019】
一方、上記(1) 〜(4) 式の左辺の値、即ち、相対変位前と相対変位後とに於ける、上記各検出部S1 〜S4 と上記エンコーダ20の被検出部との軸方向に亙る距離の変化量δS1〜δS4は、上記各変位センサ26、26により検出自在である。即ち、前述の様にエンコーダ20が回転した場合に、このエンコーダ20の回転に伴って変化する上記各変位センサ26、26の出力信号の振幅(信号の大きさ)は、上記各検出部S1 〜S4 と上記被検出部との軸方向に亙る距離(パッシブ型センサの場合は、距離及びエンコーダ20の回転速度)により定まる。従って、上記各変位センサ26、26の出力信号の振幅(更にはエンコーダ20の回転速度)の関係から、上記各検出部S1 〜S4 と上記エンコーダ20の被検出部との軸方向に亙る距離が求まる。そこで、前記制御器に相対変位前の出力信号の振幅(更に必要とすれば回転速度)の関係を初期値として記録しておけば、この相対変位の前後に於ける出力信号の振幅の関係の差から、上記各変化量δS1〜δS4を検出できる。
【0020】
従って、上述の様に検出した各変化量δS1〜δS4を上述の(1) 〜(4) 式の左辺に代入し、これら(1) 〜(4) 式を連立方程式として上記制御器に解かせれば、上記各変位センサ26、26を配置する円周の中心軸と上記エンコーダ20の中心軸との相対変位量を決定する4つの値δr 、δa 、θ、φが求まる。ところで、上記各変位センサ26、26を配置する円周の中心軸と上記エンコーダ20の中心軸とは、それぞれ前記外輪4の中心軸と前記内輪6の中心軸とに一致する。従って、上記4つの値δr 、δa 、θ、φは、上記内輪6と上記外輪4との中心軸同士の相対変位量を決定する値となる。
【0021】
上述の様に内輪6の中心軸と外輪4の中心軸との相対変位量が求まったならば、続いて、上記制御器に、この相対変位量に基づいて前記ラジアル転がり軸受3の負荷荷重を計算させる。そして、この負荷荷重に基づいて、前記回転軸1を有する工作機械や自動車の制御を行う。例えば、この回転軸1が工作機械の主軸であり、この主軸の回転速度を一定に保つ必要がある場合には、上記回転軸1を回転駆動する電動モータへの通電量を調節して、この回転軸1に加わる負荷の変動に拘らず、この回転軸の回転速度を一定に保つ。又、上記回転軸1が自動車の車軸であった場合、上記負荷が過大であると判定された場合には、運転席の警告灯を点灯させる等の処置を講ずる。尚、上記ラジアル転がり軸受3の負荷荷重は、上記相対変位量とこのラジアル転がり軸受3の剛性とに基づいて、上記制御器に計算させる。
【0022】
尚、本例の場合、4つの変位センサ26、26は、支持環23の中心軸(上記外輪4の中心軸)をその中心軸とする円周上に、必ずしも等間隔に配置する必要はない。又、工作機械等の運転時に、外輪4の中心軸に対して内輪6の中心軸が傾斜する方向(回転軸1に加わる荷重の方向)が予め分かっている場合、即ち、前記相対変位量を決定する4つの値δr 、δa 、θ、φのうちの角度φが予め分かっている場合には、変位センサ26、26は全部で3個設ければ足りる。但し、この場合には、一番目の変位センサ26の検出部S1 を、φ=0の位置に配置する。又、本発明を構成する変位センサ26、26は、前述の様にパッシブセンサでも良いが、エンコーダ20の回転速度により出力信号の振幅が変化しないアクティブセンサを使用する方が、変位センサ26、26の小型化を図れるだけでなく、信号の処理が容易な為、有利である。
【0023】
次に、図5〜6は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、組み合わせシールリング12aを構成する内径側シールリングの第二の芯金14aに、第一のエンコーダ28と第二のエンコーダ29との2つのエンコーダを支持固定している。即ち、上記第二の芯金14aは、鋼板等の金属板を曲げ形成する事により、断面クランク形で全体を円環状に形成したもので、大径円筒部30と、小径円筒部31と、これら両円筒部30、31の端縁同士を連結する円輪部32とを有する。そして、このうちの小径円筒部31を内輪6の一端部(図5の右端部)に、上記大径円筒部30をこの内輪6の一端面(図5の右端面)から突出させる状態で外嵌固定している。
【0024】
又、上記第一のエンコーダ28は、ゴム中にフェライトの粉末を混入したゴム磁石等の永久磁石により全体を円輪状に形成したもので、軸方向(図5の左右方向)に亙って着磁している。着磁方向は、円周方向に亙り交互に、且つ等間隔で変化させている。従って、第一の被検出部である上記第一のエンコーダ28の片側面(図5の右側面)には、S極とN極とが交互に、且つ等間隔で配置されている。又、上記第二のエンコーダ29は、やはりゴム中にフェライトの粉末を混入したゴム磁石等の永久磁石により全体を円筒状に形成したもので、直径方向に亙って着磁している。着磁方向は、円周方向に亙り交互に、且つ等間隔で変化させている。従って、第二の被検出部である上記第二のエンコーダ29の内周面には、S極とN極とが交互に、且つ等間隔で配置されている。そして、上記第一のエンコーダ28は上記第二の芯金14aを構成する円輪部32の片面(図5の右面)に、上記第二のエンコーダ29は同じく上記大径円筒部30の内周面に、それぞれ焼き付け、接着、自身の磁気吸着力等により添着固定している。
【0025】
一方、複数個の変位センサ26、26a(図5には省略、図6参照。)を包埋支持する為の合成樹脂33aの一部は、上記大径円筒部30の内径側に進入させており、上記各変位センサ26、26aは、この様に大径円筒部30の内径側に進入させた合成樹脂33aの一部に包埋支持している。又、本例の場合、上記変位センサ26、26aを合計6個設けており、それぞれこれら各変位センサ26、26aを支持する支持環23の中心軸(外輪4の中心軸)をその中心軸とする円周上に、等間隔に配置している。即ち、上記各変位センサ26、26aは、円周方向に亙る位相をそれぞれ60度ずつずらせて配置している。又、この状態で、上記6個の変位センサ26、26aのうちの3個の変位センサ26、26は、これら各変位センサ26、26の検出部SA1〜SA3を、上記第一のエンコーダ28の片側面(図5の右側面)の円周方向の一部と、軸方向(図5の左右方向)に亙り微小隙間を介して対向させている。又、上記6個の変位センサ26、26aのうちの残り3個の変位センサ26a、26aは、これら各変位センサ26a、26aの各検出部SR1〜SR3を、上記第二のエンコーダ29の内周面の円周方向の一部と、直径方向に亙り微小隙間を介して対向させている。尚、上記第一のエンコーダ28に対向させる各変位センサ26、26と上記第二のエンコーダ29に対向させる各変位センサ26a、26aとは、これら各変位センサ26、26aを配置する円周方向に亙り交互に配置している。
【0026】
上述の様に構成する本例の荷重検出装置付転がり軸受ユニットの場合には、内輪6の中心軸と外輪4の中心軸との相対変位量を検出を、上述した第1例の場合に比べて、より正確に行なえる。この理由及び本例の荷重検出装置付転がり軸受ユニットにより上記相対変位量を検出する際の作用に就いて、図6を参照しつつ説明する。尚、工作機械等の運転時に於ける通常の荷重条件では、回転軸1に負荷されるラジアル荷重とモーメント荷重との円周方向に関する位相は、互いに一致する。この為、前述した第1例では、エンコーダ20の直径方向の変位量δr と傾斜角度θを含む面との中心軸dを中心とする円周方向に亙る位相は、互いに一致するとして、相対変位量の検出を行なう様にしている。ところが、上記工作機械等の運転時に特殊な荷重条件が与えられた場合、或は自動車の急旋回時等には、上記回転軸1に負荷されるラジアル荷重とモーメント荷重との円周方向に亙る位相が一致しない場合が生じる。そこで、本例の場合には、上記直径方向の変位量δr の位相と傾斜角度θを含む面の位相とを別個に検出自在としている。
【0027】
例えば、上記内輪6の中心軸と外輪4の中心軸とが相対変位する事に伴い、上記第一、第二の両エンコーダ28、29が、図6の二点鎖線aで示す状態から、実線bで示す状態に変位したとする。そして、この時の上記第一、第二の両エンコーダ28、29の軸方向(図5〜6の左右方向)に亙る変位量をδa 、直径方向(図3の上下方向)に亙る変位量をδr 、中心軸(一点鎖線)dに直交する仮想平面に対する傾斜角度をθとする。尚、上述した様に、上記直径方向に亙る変位量δr の方向と傾斜角度θを含む面との円周方向に亙る位相は、一致するとは限らない(但し、図示の例では、便宜上一致させている。)。この場合、内輪6の中心軸と外輪4の中心軸との相対変位前と相対変位後とに於ける、上記各変位センサ26、26の検出部SA1〜SA3と、上記第一のエンコーダ28の第一の被検出部との軸方向に亙る距離の変化量δSA1 〜δSA3 は、幾何学的関係により下記の(5) 〜(7) 式で表される。
δSA1 ={(r・cosφ−δr )・tanθ}−δa −−−(5)
δSA2 =[{r・cos(φ+120°)−δr }・tanθ]−δa −−−(6)
δSA3 =[{r・cos(φ+240°)−δr }・tanθ]−δa −−−(7)
【0028】
尚、上記(5) 〜(7) 式中、rは、上記各変位センサ26、26の検出部SA1〜SA3及び後述する各変位センサ26a、26aの検出部SR1〜SR3を配置する円周の半径を、φは、上記傾斜角度θを含む面と、前記中心軸d及び上記各変位センサ26、26のうち1番目の変位センサ26の検出部SA1を含む面との間の角度を、それぞれ示している。又、上記(5) 〜(7) 式中、それぞれが微小量であるδr と tanθとを掛け合わせた値、即ち、δr ・tanθは高次の微小量となる為、無視する事ができる。従って、上記(5) 〜(7) 式は、下記の(8) 〜(10)式の様に書き換える事ができる。
δSA1 ≒(r・cosφ・tanθ)−δa −−− (8)
δSA2 ≒{r・cos(φ+120°)・tanθ}−δa −−− (9)
δSA3 ≒{r・cos(φ+240°)・tanθ}−δa −−−(10)
【0029】
又、前記各変位センサ26a、26aの検出部SR1〜SR3と、上記第二のエンコーダ29の被検出部との直径方向に亙る距離の変化量δSR1 〜δSR3 は、幾何学的関係により下記の(11)〜(13)式で表される。
δSR1 =δr ・cosα −−−(11)
δSR2 =δr ・cos(α+120°) −−−(12)
δSR3 =δr ・cos(α+240°) −−−(13)
尚、上記(11)〜(13)式中、αは、上記直径方向の変位量δr の上記中心軸dを中心とする円周方向に亙る方向と、上記中心軸d及び上記各変位センサ26a、26aのうち1番目の変位センサ26aの検出部SR1を含む面との間の角度を示している。
【0030】
上記(8) 〜(10)式並びに(11)〜(13)式の左辺の値、即ち、相対変位前と相対変位後とに於ける、上記各検出部SA1〜SA3と上記第一のエンコーダ28の被検出部との軸方向に亙る距離の変化量δSA1 〜δSA3 、並びに上記各検出部SR1〜SR3と上記第二のエンコーダ29の被検出部との直径方向に亙る距離の変化量δSR1 〜δSR3 は、前述した第1例の場合と同様に、上記各変位センサ26、26aにより検出自在である。そこで、本例の場合も、上記(8) 〜(10)式並びに(11)〜(13)式を連立方程式として制御器に解かせる事により、上記各変位センサ26、26を配置する円周の中心軸と上記第一、第二の両エンコーダ28、29の中心軸との相対変位量、即ち、上記内輪6と上記外輪4との中心軸同士の相対変位量を決定する5つの値δr 、δa 、θ、φ、αを検出できる。尚、δr とαとの各値を上記(11)〜(13)式から成る連立方程式から求める場合には、1つだけ式が余分となる。即ち、本例の場合、上記第二のエンコーダ29に対向させる変位センサ26a、26aは、2個設ければ足りる。但し、上記δr とαとの各値の検出精度を高める為には、図示の例の様に、上記各変位センサ26a、26aは3個設ける事が好ましい。その他の構成及び作用は上述した第1例の場合と同様である。
【0031】
尚、本発明の荷重検出装置付転がり軸受ユニットを、上述した1〜2例の場合とは逆に、内輪が静止輪で外輪が回転輪である転がり軸受にも適用できる事は言う迄もない。この場合には、上述した1〜2例に於いて、直径方向に亙る内外を逆に構成する。
【0032】
【発明の効果】
本発明の荷重検出装置付転がり軸受ユニットは、以上に述べた通り構成され作用する為、ラジアル転がり軸受を構成する内輪と外輪との中心軸同士が相対変位した場合に、このラジアル転がり軸受に加わる負荷を算出して、このラジアル転がり軸受を組み込んだ各種機械装置を適正に運転できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】 図1のA部拡大図。
【図3】 パッシブ型センサの構造の2例を示す略斜視図。
【図4】 相対変位の前後に於ける、各変位センサとエンコーダとの位置関係を示す模式図。
【図5】 本発明の実施の形態の第2例を示す、図2と同様の図。
【図6】 同じく、図4と同様の図。
【符号の説明】
1 回転軸
2 ハウジング
3 ラジアル転がり軸受
4 外輪
5 外輪軌道
6 内輪
7 内輪軌道
8 転動体
9 段部
10 固定リング
11 空間
12、12a 組み合わせシールリング
13 第一の芯金
14、14a 第二の芯金
15、15a シールリップ
16 固定円筒部
17 回転円筒部
18 固定円輪部
19 回転円輪部
20 エンコーダ
21 透孔
22 段部
23 支持環
24 円筒部
25 円輪部
26、26a 変位センサ
27 ハーネス
28 第一のエンコーダ
29 第二のエンコーダ
30 大径円筒部
31 小径円筒部
32 円輪部
33、33a 合成樹脂
34 永久磁石
35 ステータ
36 コイル

Claims (4)

  1. 静止側周面に静止側軌道を有し、使用時にも回転しない静止輪と、上記静止側周面と対向する回転側周面に回転側軌道を有し、使用時に回転する回転輪と、上記静止側軌道と上記回転側軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを有する転がり軸受と、上記静止輪に支持され、この静止輪と上記回転輪との相対変位を検出する複数個の変位センサと、特性を円周方向に亙り交互に且つ等間隔に変化させた円環状の被検出部を有し、上記回転輪の一部にこの回転輪と同心に固定されたエンコーダとを備えた荷重検出装置付転がり軸受ユニットであって、このエンコーダの被検出部に上記複数個の変位センサの検出部を対向させ、これら複数個の変位センサにより検出した上記相対変位と、上記転がり軸受の剛性とに基づき、この転がり軸受に負荷される荷重を求める荷重検出装置付転がり軸受ユニット。
  2. 静止輪と回転輪との相対変位前の各変位センサの出力を初期値とし、この相対変位前後に於けるこれら各変位センサの出力の差から、転がり軸受に負荷される荷重を求める、請求項1に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニット。
  3. 求めた転がり軸受に負荷される荷重の値を、自動車の制御の為に使用する、請求項1又は請求項2に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニット。
  4. 各変位センサの出力により、転がり軸受に負荷される荷重と共に、回転輪の回転速度も求める、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した荷重検出装置付転がり軸受ユニット。
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