JP3841470B2 - 窒化ケイ素粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的強度に優れた窒化ケイ素焼結体を製造することのできる窒化ケイ素粉末の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素焼結体は、高温強度、硬度、耐腐食性、耐熱衝撃性に優れた素材であり、各種構造部材として幅広い用途が期待されている。従来より、窒化ケイ素焼結体の高強度化については窒化ケイ素粉末の改良面から種種の提案がある。例えば、α化率の調整(特開平3−177307号公報等)、酸素含有量の調整(特開平1−313308号公報等)などである。このような最適化によって窒化ケイ素焼結体の機械的強度はかなり改善されたが、用途によっては更なる改善の要求がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、充填性を向上させ、通常の焼結法においても十分に緻密化し、高強度焼結体を製造することのできる窒化ケイ素粉末の製造方法を提供することである。本発明は、窒化ケイ素粉末の粒子形状、特に針状・柱状粒子等の異方性を有する粒子の存在比率と窒化ケイ素焼結体の機械的強度の発現という全く新しい観点から課題を解決しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、窒化ケイ素粉末の針状粒子を粉砕し、針状度3以上の粒子の割合が2.82%以下、好ましくは0.85〜2.82%、粒子径2μm以上の粒子の割合が8.1体積%以下、好ましくは7.2〜8.1体積%に調整することを特徴とする窒化ケイ素粉末の製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明でいう「針状度」とは、図1に示すように、窒化ケイ素粒子の最長軸(a)と、この最長軸(a)に平行な接線群(b1 、b2 、b3 ・・・)のうち最長の2接線間の距離(c)との比(a/c)として定義される。すなわち、本発明においては、球形等の等軸状粒子の針状度は1となり、細長い粒子等、粒子形状が異方性を持つほど針状度は高くなる。また、通常の形状を表す指針として用いられるアスペクト比と較べて異方性のある粒子を容易に区別することができる。
【0006】
本発明において、針状度3以上の粒子の割合(以下、「針状粒子比率」という。)は、走査型電子顕微鏡により1視野あたりの粒子数が200〜300個となるように調整した後、画像解析を行い、1視野あたりに含まれる針状度3以上の粒子の占める面積を総計し、それを1視野の全粒子面積で割ることによって測定することができる。また、粒子径2μm以上の粒子の割合は、レーザー回折散乱法(例えば日機装社製商品名「マイクロトラック」)によって窒化ケイ素粉末の粒度分布を測定することによって求めることができる 。
【0007】
本発明のように、針状粒子比率を測定しそれを調整することによって、従来の粒子平均の針状度ないしはアスペクト比を測定しそれを調整するよりも、針状粒子等の異方性粒子が及ぼす焼結体の強度発現の影響をより明確に表すことが可能となる。本発明で製造される窒化ケイ素粉末の針状粒子比率は、2.82%以下、好ましくは0.85〜2.82%である。2.82%よりも大きいと、プレス成形、射出成形、押出成形、鋳込み成形などの成形時に、針状粒子同士のブリッジングを発生して成形体中に欠陥を生成させ、高強度の窒化ケイ素焼結体を得ることが困難となる。
【0008】
また、本発明で製造される窒化ケイ素粉末の粒子径2μm以上の粒子の割合は、8.1体積%以下、好ましくは7.2〜8.1体積%である。8.1体積%をこえると、充填性は高くなるが、十分に緻密化した窒化ケイ素焼結体を得ること困難となる。しかも、このような比較的粗大な粒子は破壊源となり高靱性の窒化ケイ素焼結体を製造することができなくなる。
【0009】
本発明の窒化ケイ素粉末の製造方法は、金属ケイ素直接窒化法、シリカ還元窒化法、気相反応法、イミド熱分解法等で製造された窒化ケイ素粉末を、ボ−ルミル、アトライタ−ミル、ロ−ラ−ミル、高速回転ミル、媒体攪拌ミル等の方法によって針状粒子を粉砕し、針状粒子比率と粒子径2μm以上の粒子の割合を調整する方法である。これによって、従来の金属ケイ素直接窒化法によって製造された針状粒子比率が5%程度、粒子径2μm以上の粒子の割合が20%程度の窒化ケイ素粉末と違ったものが製造され、また従来の気相反応法によって製造された針状粒子比率が8%程度、粒子径2μm以上の粒子の割合が8%程度の窒化ケイ素粉末と違ったものが製造される。
【0010】
本発明で製造される窒化ケイ素粉末のα化率は90%以上が好ましく、また比表面積は10m2/g以上特に12〜15m2/gが好ましい。更に、全酸素量は0.5〜1.5重量%特に0.6〜1.2重量%であることが好ましい。本発明で製造された窒化ケイ素粉末を用いて窒化ケイ素焼結体を製造するには、窒化ケイ素粉末をそのまま又はY2O3 、Al2O3 、MgO等の焼結助剤を混合し、プレス成形、射出成形、押出成形、鋳込み成形等によって成形した後、窒素、アルゴン等の非酸化性雰囲気下、温度1650〜1800℃、4〜12時間程度焼成することによって製造することができる。
【0011】
【実施例】
実施例1
市販の金属ケイ素の直接窒化法により得られた窒化ケイ素粉末(電気化学工業社製「SN−9S」α化率91.5%)を媒体攪拌ミルで30分間粉砕し、針状粒子比率が2.44%で、粒子径2μm以上の粒子の割合が8.1体積%の窒化ケイ素粉末を製造した。
【0012】
実施例2
四塩化ケイ素(純度99%)とアンモニア(純度99%)をアンモニア/四塩化ケイ素のモル比が6となる条件で、常温で反応させて得た窒化ケイ素前駆体を、窒素雰囲気で最高温度1550℃まで加熱し窒化ケイ素粉末を得た。この粉末を更に高速回転ミルで針状粒子を粉砕し、針状粒子比率が1.87%で、粒子径2μm以上の粒子の割合が7.2体積%の窒化ケイ素粉末を製造した。
【0013】
実施例3
針状粒子比率が6.68%で、粒子径2μm以上の粒子の割合が12.2体積%である市販の窒化ケイ素粉末を、ボールミルにより12時間粉砕し、針状粒子比率が2.82%で、粒子径2μm以上の粒子の割合が7.7体積%の窒化ケイ素粉末を製造した。
【0014】
実施例4
比較例1の窒化ケイ素粉末をボ−ルミルにより針状粒子を粉砕し、針状粒子比率が0.85%で、粒子径2μm以上の粒子の割合が8.0体積%の窒化ケイ素粉末を製造した。
【0015】
比較例1
市販の金属ケイ素直接窒化法により得られた窒化ケイ素粉末の粉体特性を測定したところ、α化率91.1%、比表面積10.9m2/g、針状粒子比率5.50%、粒子径2μm以上の粒子の割合が7.9体積%であった。
【0016】
比較例2
実施例1の窒化ケイ素粉末に、マイクロトラックにより測定した平均粒径が5.13μmの窒化ケイ素粉末を内割りで15重量%混合し、針状粒子比率2.41%で、粒子径2μm以上の粒子の割合が16.9体積%の窒化ケイ素粉末を製造した。
【0017】
上記で得られたそれぞれの窒化ケイ素粉末90重量部、Al2O3 粉末3重量部、Y2O3 粉末5重量部及び有機バインダー15重量%を加え、ボールミルで湿式混合した。これをスプレードライヤーで造粒・乾燥し、金型プレス成形後2.5トン/cm2 の圧力でCIP成形してから、温度1750℃で4時間焼結し窒化ケイ素焼結体を製造した。得られた窒化ケイ素焼結体について、アルキメデス法による相対密度及びJIS R1601に準拠して室温における4点曲げ強度を測定した。
【0018】
また、窒化ケイ素粉末の充填性を評価するため、上記で得られたそれぞれの窒化ケイ素粉末を金型プレス成形後1.0トン/cm2 の圧力でCIP成形し、アルキメデス法によりCIP成形体の相対密度を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、充填性と機械的強度発現に優れた窒化ケイ素焼結体を製造することのできる窒化ケイ素粉末を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で定義される窒化ケイ素粒子の針状度を測定するための説明図。
【符号の説明】
a 窒化ケイ素粒子の最長軸
b1 窒化ケイ素粒子の最長軸aに平行な接線
b2 窒化ケイ素粒子の最長軸aに平行な接線
b3 窒化ケイ素粒子の最長軸aに平行な接線
c 最長の2接線間の距離
Claims (2)
- 窒化ケイ素粉末の針状粒子を粉砕し、針状度3以上の粒子の割合が2.82%以下、粒子径2μm以上の粒子の割合が8.1体積%以下に調整することを特徴とする窒化ケイ素粉末の製造方法。
- 針状度3以上の粒子の割合が0.85〜2.82%、粒子径2μm以上の粒子の割合が7.2〜8.1体積%に調整することを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素粉末の製造方法。
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