JP3320645B2 - セラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents

セラミックス焼結体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Y2 SiO5 から
なるセラミックス焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Y2 SiO5 を主体とするセラミックス
焼結体は、融点が2000℃以上であるため耐熱材料と
して注目されている。ところで、Y2 SiO5 セラミッ
クスは従来よりSiO2 およびY23 の原料粉末を金
型内に充填した後、加圧するか、または前記原料粉末を
均一に分散させたスリップを吸水性の型内に流し込み、
水分を除去して成形体を作製し、これを反応焼結するこ
とにより製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来のY2 SiO5 セラミックスの製造方法は反応焼
結過程で15〜25%の収縮を生じる。その結果、焼結
体に亀裂が生じたり、変形して寸法精度が低下したり、
または表面に応力が残留する等の問題があった。本発明
は、反応焼結過程での収縮率を10%以下に抑えること
が可能なY2 SiO5 セラミックスの製造方法を提供し
ようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるセラミッ
クス焼結体の製造方法は、SiおよびY23 を含む混
合粉末からなる成形体を酸化性雰囲気中で反応焼結して
2 SiO5 を得ることを特徴とするものである。
【0005】前記混合粉末は、Si、SiO2 およびY
23 を含み、Si/SiO2 の混合モル比が0.1 〜
20であることが好ましい。本発明に係わる別のセラミ
ックス焼結体の製造方法は、YおよびSiO2 を含む混
合粉末からなる成形体を酸化性雰囲気中で反応焼結して
2 SiO5 を得ることを特徴とするものである。前記
混合粉末は、Y、SiO2 およびY23 を含み、Y/
23 の混合モル比が0.1 〜15であることが好ま
しい。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係わるセラミック
ス焼結体の製造方法を詳細に説明する。まず、ボールミ
ル等の混合器中でSiおよびY23 を混合して混合粉
末を得る。つづいて、この混合粉末を例えばコールドプ
レス等の方法により圧粉することにより成形体を作製す
る。ひきつづき、前記成形体を酸化性雰囲気中で反応焼
結してY2 SiO5 のセラミックス焼結体を製造する。
【0007】前記混合粉末を構成するSiおよびY2
3 は、それぞれ1.0〜50μm および0.1〜5.0
μm の平均粒径を有することが好ましい。前記混合粉末
は、Si、SiO2 およびY23 を含むことが好まし
い。このような混合粉末を構成するSi、SiO2 およ
びY23 は、それぞれ1.0〜50μm 、0.1〜
5.0μm および0.1〜5.0μm の平均粒径を有す
ることが好ましい。このような混合粉末の各成分の粒径
が上限値を超えると、反応が遅くなって、焼結体の強度
が低下する恐れがある。 SiO2 およびY23 の成
分の下限粒径は、製造技術上、一般的なおおきさであ
る。ただし、Siの粒径を前記下限値未満にすると表面
が自然酸化するため、 SiO2 との関係で目的とする
比率に調節することが困難になる。
【0008】前記混合粉末においては、Si/SiO2
の混合モル比が0 .1 〜20であることが好ましい。前
記混合モル比が前記範囲を超えると、焼結過程での収縮
率を10%以下に抑えることが困難になる。より好まし
いSi/SiO2 の混合モル比は2.0〜10である。
【0009】前記焼結工程での酸化性雰囲気としては、
例えば酸素または空気の雰囲気を挙げることができる。
前記焼結工程は、700〜1700℃の温度で行なうこ
とが好ましく、特に700〜1500℃で0.5〜3時
間行なう第1段熱処理と、1100〜1700℃て0.
5〜2時間行なう第2段熱処理を採用することが好まし
い。
【0010】なお、前記混合粉末中にはSi、SiO2
およびY23 の他にアルミナ配合することを許容す
る。以上説明した本発明によれば、SiおよびY23
を含む混合粉末からなる成形体を酸化性雰囲気中で反応
焼結することによって、反応初期において前記成形体中
のSiが酸化されてSiO2 を生成する際に体積膨張を
生じるため、その後のSiO2 とY23 の反応時およ
びY2 SiO5 の焼結時に生じる体積収縮を相殺するこ
とができる。その結果、反応焼結過程での収縮率が10
%以下に抑えられたY2 SiO5 セラミックスを製造す
ることができる。
【0011】特に、Si、SiO2 およびY23 を含
み、Si/SiO2 の混合モル比が0.1 〜20の混合
粉末を用いることによって、金属Siの残留が殆どな
く、反応焼結過程での収縮率が10%よりさらに小さい
値に抑えられたY2 SiO5 セラミックスを製造するこ
とができる。
【0012】次に、本発明に係わる別のセラミックス焼
結体の製造方法を詳細に説明する。まず、ボールミル等
の混合器中でYおよびSiO2 を混合して混合粉末を得
る。つづいて、この混合粉末を例えばコールドプレス等
の方法により圧粉することにより成形体を作製する。ひ
きつづき、前記成形体を酸化性雰囲気中で反応焼結して
2 SiO5 のセラミックス焼結体を製造する。
【0013】前記混合粉末を構成するYおよびSiO2
は、それぞれ1.0〜50μm および0.1〜5.0μ
m の平均粒径を有することが好ましい。前記混合粉末
は、Y、SiO2 およびY23 を含むことが好まし
い。このような混合粉末を構成するY、SiO2 および
23 は、それぞれ1.0〜50μm 、0.1〜5.
0μm および0.1〜5.0μm の平均粒径を有するこ
とが好ましい。このような混合粉末の各成分の粒径が上
限値を超えると、反応が遅くなって、焼結体の強度が低
下する恐れがある。SiO2 およびY23 の成分の下
限粒径は、製造技術上、一般的なおおきさである。ただ
し、Yの粒径を前記下限値未満にすると表面が自然酸化
するため、Y23 との関係で目的とする比率に調節す
ることが困難になる。
【0014】前記混合モル比が前記範囲を超えると、焼
結過程での収縮率を10%以下に抑えることが困難にな
る。より好ましいY/Y23 の混合モル比は0.5〜
10である。
【0015】前記反応焼結工程での酸化性雰囲気として
は、例えば酸素または空気の雰囲気を挙げることができ
る。前記反応焼結工程は、700〜1700℃の温度で
行なうことが好ましく、特に700〜1500℃で0.
5〜3時間行なう第1段熱処理と、1100〜1700
℃て0.5〜2時間行なう第2段熱処理を採用すること
が好ましい。
【0016】なお、前記混合粉末中にはY、SiO2
よびY23 の他にアルミナ配合することを許容する。
以上説明した本発明によれば、 YおよびSiO2 を含
む混合粉末からなる成形体を酸化性雰囲気中で反応焼結
することによって、反応初期において前記成形体中のY
が酸化されてY23 を生成する際に体積膨張を生じる
ため、その後のSiO2 とY23 の反応時およびY2
SiO5 の焼結時に生じる体積収縮を相殺することがで
きる。その結果、反応焼結過程での収縮率が10%以下
に抑えられたY2 SiO5 セラミックスを製造すること
ができる。
【0017】特に、Y、SiO2 およびY23 を含
み、Y/Y23 の混合モル比が0.1 〜15の混合粉
末を用いることによって、金属Yの残留が殆どなく、反
応焼結過程での収縮率が10%よりさらに小さい値に抑
えられたY2 SiO5 セラミックスを製造することがで
きる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の好ましい実施例を説明する。 (実施例1)まず、平均粒径5μm のSi粉末0.9モ
ル%、平均粒径0.8μm のSiO2 粉末0.1モル%
および平均粒径1.3μm のY23 粉末1.0モル%
をアセトンを分散媒とし、ナイロンボールを用いて混合
した後、ロータリーエバポレータで乾燥して混合粉末を
調製した。つづいて、この混合粉末を200MPaの圧
力でコールルドプレス成形して成形体を作製した。この
成形体を環状炉内に設置し、大気中、1000℃で2時
間保持した後、1550℃で1時間保持することにより
2 SiO5 セラミックスを製造した。
【0019】(実施例2)原料粉末として平均粒径5.
0μm のSi粉末0.8モル%、平均粒径0.8μm の
SiO2 粉末0.2モル%および平均粒径1.3μm の
23 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、
実施例1と同様な方法によりY2 SiO5セラミックス
を製造した。
【0020】(実施例3)原料粉末として平均粒径5.
0μm のSi粉末0.7モル%、平均粒径0.8μm の
SiO2 粉末0.3モル%および平均粒径1.3μm の
23 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、
実施例1と同様な方法によりY2 SiO5セラミックス
を製造した。
【0021】(実施例4)原料粉末として平均粒径5.
0μm のSi粉末0.3モル%、平均粒径0.8μm の
SiO2 粉末0.7モル%および平均粒径1.3μm の
23 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、
実施例1と同様な方法によりY2 SiO5セラミックス
を製造した。
【0022】(実施例5)原料粉末として平均粒径5.
0μm のSi粉末0.1モル%、平均粒径0.8μm の
SiO2 粉末0.9モル%および平均粒径1.3μm の
23 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、
実施例1と同様な方法によりY2 SiO5セラミックス
を製造した。
【0023】(比較例1)原料粉末として平均粒径0.
8μm のSiO2 粉末1.0モル%および平均粒径1.
3μm のY23 粉末1.0モル%の組成のものを用い
た以外、実施例1と同様な方法によりY2 SiO5 セラ
ミックスを製造した。
【0024】得られた実施例1〜5および比較例1のセ
ラミックス焼結体について、それらの寸法をマイクロメ
ータにより測定し、成形体に対する寸法変化率を測定し
た。その結果を下記表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】前記表1から明らかなように実施例1〜5
のように混合粉末中にSiO2 源としてSiを配合し、
反応焼結の過程でSiO2 に変換することにより亀裂、
変形が抑制され、かつ成形体に対する寸法変化が10%
以下に抑えられた寸法精度の高いY2 SiO5 セラミッ
クスを得ることができることがわかる。
【0027】(実施例6)まず、平均粒径20μm のY
粉末1.7モル%、平均粒径1.3μm のY23 粉末
0.15モル%および平均粒径0.8μm のSiO2
末1.0モル%をアセトンを分散媒とし、ナイロンボー
ルを用いて混合した後、ロータリーエバポレータで乾燥
して混合粉末を調製した。つづいて、この混合粉末を2
00MPaの圧力でコールルドプレス成形して成形体を
作製した。この成形体を環状炉内に設置し、大気中、7
00℃で2時間保持した後、1550℃で1時間保持す
ることによりY2 SiO5 セラミックスを製造した。
【0028】(実施例7)原料粉末として平均粒径20
μm のY粉末1.4モル%、平均粒径1.3μmのY2
3 粉末0.3モル%および平均粒径0.8μm のSi
2 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、実施
例6と同様な方法によりY2 SiO5 セラミックスを製
造した。
【0029】(実施例8)原料粉末として平均粒径20
μm のY粉末1.0モル%、平均粒径1.3μmのY2
3 粉末0.5モル%および平均粒径0.8μm のSi
2 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、実施
例6と同様な方法によりY2 SiO5 セラミックスを製
造した。
【0030】(実施例9)原料粉末として平均粒径20
μm のY粉末0.4モル%、平均粒径1.3μmのY2
3 粉末0.8モル%および平均粒径0.8μm のSi
2 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、実施
例6と同様な方法によりY2 SiO5 セラミックスを製
造した。
【0031】(実施例10)原料粉末として平均粒径2
0μm のY粉末0.2モル%、平均粒径1.3μmのY2
3 粉末0.9モル%および平均粒径0.8μm のS
iO2 粉末1.0モル%の組成のものを用いた以外、実
施例6と同様な方法によりY2 SiO5 セラミックスを
製造した。
【0032】得られた実施例6〜10のセラミックス焼
結体について、それらの寸法をマイクロメータにより測
定し、成形体に対する寸法変化率を測定した。その結果
を下記表2に示す。なお、下記表2には前述した比較例
1を併記する。
【0033】
【表2】
【0034】前記表2から明らかなように実施例6〜1
0のように混合粉末中にY23 源としてYを配合し、
反応焼結の過程でY23 に変換することにより亀裂、
変形が抑制され、かつ成形体に対する寸法変化が10%
以下に抑えられた寸法精度の高いY2 SiO5 セラミッ
クスを得ることができることがわかる。 (実施例11)まず、平均粒径5μm のSi粉末0.9
モル%、平均粒径0.8μm のSiO2 粉末0.1モル
%および平均粒径1.3μm のY23 粉末1.0モル
%からなる原料に平均粒径1.3μm のCe23 粉末
0.1モル%を添加し、これらをアセトンを分散媒と
し、ナイロンボールを用いて混合した後、ロータリーエ
バポレータで乾燥して混合粉末を調製した。つづいて、
この混合粉末を200MPaの圧力でコールルドプレス
成形して成形体を作製した。この成形体を環状炉内に設
置し、大気中、1000℃で2時間保持した後、155
0℃で1時間保持することにより直径20mm、厚さ
0.2mmの蛍光体(焼結体)を製造した。得られた蛍
光体に電子線を照射したところ、良好な発光特性を示す
ことが確認された。
【0035】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、反
応焼結過程での収縮率を10%以下に抑制でき、ひいて
は亀裂、変形等が少なく、寸法精度の高い耐熱部品とし
て好適なY2 SiO5 セラミックスの製造方法を提供で
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水谷 敏昭 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (56)参考文献 特開 平8−12417(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/16 C04B 35/50 CA(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SiおよびY23 を含む混合粉末から
    なる成形体を酸化性雰囲気中で反応焼結してY2 SiO
    5 を得ることを特徴とするセラミックス焼結体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記混合粉末は、Si、SiO2 および
    23 を含み、Si/SiO2 の混合モル比が0 .1
    〜20であることを特徴とする請求項1記載のセラミッ
    クス焼結体の製造方法。
  3. 【請求項3】 YおよびSiO2 を含む混合粉末からな
    る成形体を酸化性雰囲気中で反応焼結してY2 SiO5
    を得ることを特徴とするセラミックス焼結体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記混合粉末は、Y、SiO2 およびY
    23 を含み、Y/Y23 の混合モル比が0 .1 〜1
    5であることを特徴とする請求項3記載のセラミックス
    焼結体の製造方法。
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