JP3839944B2 - 木質化粧板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅における建築用床材や階段踏板、幅木等の建築内装材料やテーブル、カウンタートップなどの家具用材料、特に、床材として使用するのに好適な長さ方向に凹反りが生じていない木質化粧板とこの化粧板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、合板などの木質材からなる基板の表面に突板や合成樹脂製の化粧シート又は印刷紙等の化粧シートを貼着したり、或いは塗装等を行って、表面化粧層を施してなる化粧板が、住宅等の建築物の床材や造作材或いは家具用材料として広く使用されている。しかしながら、例えば合板の表面に突板を貼着したのち塗装仕上げしてなる一般的な化粧板を床材として使用した場合、木質基板に存在する小さな穴や抜け節、ジョイント部等の欠陥部が突板表面に現出したり、さらには湿気の吸収、放散に伴う合板の膨張、収縮によって表面の突板に細かい亀裂(干割れ)が生じたりして化粧性を著しく損なうことになり、その上、床材として使用した場合には、表面に重量の大きい家具の脚や落下物などによる局部的な荷重が加わると凹みが生じたりキャスター付きワゴンによる摺動的な負荷によって化粧板の表面が傷を受ける等の問題点がある。
【0003】
このため、合板の表面に比較的薄手の中比重木質繊維板などの木質繊維板を接着して複合板を形成し、この複合板の木質繊維板の表面に突板や合成樹脂製化粧シート又は印刷紙等の化粧シートを貼着したり、塗装等によって表面化粧層を形成してなる化粧板を床材に使用し、木質繊維板によって硬さ不足を補ったり、合板の上記伸縮に伴う亀裂を防止したりすることが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、合板の表面に木質繊維板を貼着して複合板を形成した場合、合板と木質繊維板との収縮率の差や方向性の相違によって化粧板に長手方向に凹状の反りが発生しやすくなる。このような凹反りの発生は、化粧板に形成した時にも残存し、この化粧板を床材などに適用するに際しては、その長手方向の中央部に対して両端側が上方に浮き上がった状態となり、両端部分に対する釘や接着剤による固定作業に困難を伴うばかりでなく、隣接する床材の突き合わせ端部に段差や固着不良などが生じるという問題点があった。
【0005】
又、近年においては接着技術の進歩により、木材をスライスして得られる突板を強制的に乾燥しないでそのまゝ化粧板に利用することが行われているが、この場合には、突板に含有している水分の放出による収縮現象の影響も伴って、化粧板の製造時には上述したような長手方向の凹反りの発生が一層大きくなり、製造された化粧板においても凹反りが生じ易くなるという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは優れた化粧性を有すると共に木質繊維板を用いているにもかかわらず、長手方向の凹状の反りや層間剥離の発生を抑制して良好な寸法安定性を発揮し、且つ強度的にも優れた木質化粧板と、この木質化粧板を能率よく製造し得る製造方法を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1に係る木質化粧板は、繊維方向を長手方向に向けた木質単板と繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた木質単板とを交互に積層接着した複数枚の木質単板からなる合板基板であって、最下層に裏面側木質単板として長手方向に平行な繊維方向をもつ木質単板が配され、最上層に表面側木質単板として長手方向に平行な繊維方向をもち且つ上記裏面側の木質単板の厚みの2.5 〜4倍の厚みを有する木質単板が配されて積層一体化してなり、この合板基板における表面側の木質単板の表面に、比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の木質繊維製板材が接着されていると共に該木質繊維製板材の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の突板を接着して化粧層が形成され、この化粧層の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装が施された構造を有している。
【0008】
このように構成した化粧板において、請求項2に係る発明は上記木質繊維製板材として、比重が0.6 〜1.0 の木質繊維板をその厚さ方向の中央部から2分割して形成されたものであることを特徴としており、請求項3に係る発明は上記木質繊維製板材の表面に樹脂強化シーラー層を設けていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4に係る発明は上記木質化粧板の製造方法であって、繊維方向を長手方向に向けた木質単板と繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた木質単板とを交互に積層接着して合板基板を構成する際に、長手方向に平行な繊維方向をもつ木質単板を合板基板の最下層である裏面側に配すると共に該裏面側の木質単板の繊維方向と同一繊維方向をもち且つこの裏面側の木質単板の2.5 〜4倍の厚みを有する木質単板合板基板の最上層である表面側の木質単板となるように接着剤を介して順次積層したのち、加圧又は加熱加圧して合板基板を形成し、次いで、この合板基板の上記表面側の木質単板上に比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の木質繊維製板材を接着剤を介して積層一体化して木質複合板を形成したのち、該木質複合板の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の未乾燥状態の突板を接着剤を介して加圧又は加熱加圧して一体化し、しかるのち、この突板の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装を施すことを特徴としている。
【0010】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の化粧板の製造方法において、合板基板を作製する際に該合板基板の表面側の木質単板上に比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の上記木質繊維製板材を接着剤を介して積層しておき、この積層材を加圧又は加熱加圧することにより木質複合板を形成し、しかるのち、該木質複合板の表面に、請求項4に記載の方法と同じく、長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の未乾燥状態の突板を接着剤を介して加圧又は加熱加圧して一体化し、しかるのち、該突板の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装を施すことを特徴とするものである。
【0011】
上記請求項4及び請求項5に記載の化粧板の製造方法において、請求項6に係る発明は、上記木質繊維製板材として比重が0.6 〜1.0 の木質繊維板をその厚さ方向の中央部から2分割して形成されたものであることを特徴としている。
【0012】
【作用】
複数枚の木質単板を積層接着してなる合板基板において、長手方向に平行な繊維方向をもつ表層の木質単板の厚みを裏層の木質単板の厚みの2〜6倍としているので、合板基板を形成後、放置しておくと、湿気を吸収した時に表層の木質単板が裏層の木質単板よりも伸び力が大きくなるため合板基板の表面側が裏面側よりも長さ方向に大きく伸長し、そのため、合板基板はその長さ方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲する所謂、凸反りとなる。
【0013】
一方、この合板基板の表面に貼着した木質繊維製板材や該木質繊維製板材表面に貼着した突板、さらには突板表面に塗布した塗料層によって合板基板の表面側が長さ方向に収縮して合板基板を凹反りさせようとするが、この収縮作用を上記合板基板の凸反りによって相殺して木質化粧板は全長に亘って平坦ないしはやゝ凸反り傾向の形状を保持し、優れた施工性を発揮すると共に段差などが生じていない施工外観を呈した床構造を形成することができる。
【0014】
また、木質繊維製板材は比重が0.6 〜0.1 の比較的高比重に形成されているので、ワゴンのキャスターによる摺動的な負荷やピアノの脚等からの局部荷重を受けても表面化粧層に凹みや傷が生じ難く且つ木質繊維製板材自体も層間剥離が生じ難いと共にこの木質繊維製板材の厚さが0.5 〜3.0mm であるので、薄くて木質化粧板に上述したような凹反りを生じさせようとする収縮作用が減少し、凹反りの生じていない安定した形態の木質化粧板を提供することができる。
【0015】
さらに、上記高比重の木質繊維製板材の表面に貼着した突板の表面に施している透明ないしは半透明の合成樹脂塗料によって表面硬度が一層増大して局部的荷重やワゴン等の摺動荷重に対して充分に耐えることができると共に美麗な外観を呈するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を床材の例を示す図面に基づいて詳述すると、図1において、木質化粧板Aは所望厚みを有する合板からなる基板1と、この合板基板1の表面に積層接着している厚さが0.5 〜3mmで比重が0.6 〜1.0 の木質繊維製板材2と、この木質繊維製板材2の表面に接着している繊維方向が長手方向に平行に設けられ且つ厚さが0.2 〜0.7mm の突板からなる化粧層3と、この化粧層3の表面に塗装している透明ないしは半透明の合成樹脂塗布層4とから構成されている。さらに、上記合板基板1を構成している複数枚(図においては5プライ)の木質単板において、最上層に配設された表面側の木質単板1aと最下層に配設された裏面側の木質単板1bとはその繊維方向を長手方向に平行に向けていると共に表面側の木質単板1aの厚みを裏面側の木質単板1bの厚みの2〜6倍の厚みに形成している。
【0017】
市場において広く用いられている表面側と裏面側との木質単板の厚みが略等しく且つ該表裏木質繊維板の繊維方向が長手方向に平行な通常の合板の場合、合板の形成後、放置しても伸縮率が略等しいので長手方向に対して凸反りや凹反りも生じないが、この合板の表面に厚さが2.5 〜4mmの通常の中比重木質繊維板を積層接着すると、接着剤の硬化や該中比重木質繊維板の収縮によって中央部から長手方向の両端部に向かって上反りする所謂凹反りが生じる。この凹反りは上記のように厚さが0.5 〜3mmと薄い木質繊維製板材2を積層接着しても軽減されるものゝ発生する。
【0018】
そのため、本発明においては上記のように合板基板1を構成している複数枚の木質単板において、表裏の木質単板1a、1bの繊維方向を長手方向に向け且つ表面側の木質単板1aの厚みを裏面側の木質単板1bの厚みの2〜6倍、好ましくは2.5 〜4倍程度に形成して表面に積層接着した木質繊維製板材2の収縮等による長手方向の凹反りを抑止しているものである。即ち、上記合板基板1の形成後、この合板基板1を放置しておくと、厚みの大なる表面側(以下、表層という)の木質単板1aが裏面側(以下、裏層という)の木質単板1bよりも長さ方向に大きく伸長し、合板基板1がその長さ方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲して凸反り状態となるものである。そして、この凸反りによって、合板基板1の表面に上記木質繊維製板材2や化粧層3を形成する突板を積層接着したり該化粧層3に塗料を塗布した時の凹反りの発生を押さえ込み、木質化粧板Aを長さ方向に全長に亘って平坦ないしはやゝ凸反り傾向の形状に保持するものである。
【0019】
上記表層の木質単板1aの厚みとしては、1mm未満であると凸反り傾向の合板基板1を作製することが困難であり、また、3mmを越えると該表層木質単板1aの影響が出過ぎるので1.5 〜3mm程度が好ましい。
【0020】
なお、合板基板1の表面に積層接着してなる上記木質繊維製板材2の比重は0.6 未満であると、木質化粧板Aの硬度や剛性等の強度が低下し且つ該木質繊維製板材2に層間剥離が生じ易くなる一方、1.0 を超えると、切断等の加工性が悪くなるので、上述したように比重が0.6 〜1.0 、好ましくは0.7 〜0.9 程度の範囲の木質繊維製板材2を用いる。また、この木質繊維製板材2の厚さが0.5mm 未満になると、薄くなりすぎて木質化粧板Aの表面から木質基板1の節や小穴等の欠点部が透視可能な状態、即ち、該欠点部が化粧板Aの表面に現出するのを抑制することができず、その上、硬度等の物性が低下して表面に貼着している化粧層3が傷付き易くなり、厚さが3mm以上になると木質基板1との収縮率の差が大きくなって木質化粧板Aに反りが生じ易くなるので、その厚みが0.5 〜3.0mm のものを使用している。
【0021】
上述したように、木質繊維製板材2が厚くなると木質化粧板Aが凹反りし易くなるが、実用上、厚さが2.5mm 未満の木質繊維製板材の入手が困難であるため、このような薄い木質繊維製板材を得るには、通常の木質繊維板をサンディングすることが考えられるが、これでは材料ロスが大きくなるばかりでなく、手間がかかって歩留まりや生産性が悪くなる。そのため、上記木質繊維製板材2として、比重が0.6 〜1.0 の通常の木質繊維板をその厚さ方向の中央部から2分割することにより形成されたものを使用している。この場合、2分割した木質繊維板を必要に応じて更にサンディングすることにより厚さが0.5mm 程度まで薄くすることができ、生産性並びに材料の歩留まりが良くなると共にこのサンディング処理も2分割したのち行うものであるから加工性も良好であり、この薄い木質繊維製板材2を上記合板基板1上に積層接着することによって凸反り傾向を有する木質化粧板Aを能率よく形成し得るものである。なお、サンディングにより木質繊維製板材2の厚み調整は、上記合板基板1上に積層接着した後に行うことができる。
【0022】
なお、この木質繊維製板材2の表面にウレタンシーラー等の樹脂強化シーラー層を設けておくことが好ましく、このように樹脂強化シーラー層を設けることによって木質化粧板Aの硬度や耐キャスター性能、耐層間剥離性を一層向上させることができる。
【0023】
一方、化粧層として用いる突板は、従来から蒸煮などによって軟質化した木材をスライスして薄単板とし、この薄単板を乾燥した後に合板等の基板に貼着しているが、近年、上記スライスした単板を乾燥することなくそのまゝ合板等の基板に貼着することにより、乾燥工程を省略して化粧板を能率よく製造することが行われるようになってきている。しかしながら、このような未乾燥の突板は乾燥した突板に比べて約3倍から10倍程度の水分を含有しているため、上記合板基板1に積層接着している木質繊維製板材2の表面に貼着すると、水分の乾燥によって木質化粧板Aに上記凹反りが生じ易くなる。
【0024】
その上、このような未乾燥の突板を接着する場合には、接着剤として尿素−メラミン系樹脂等の縮合系の接着剤を用いて熱圧することにより接着されることが多いため、上記のような凹反りが一層生じ易くなるが、本発明においては上記木質化粧板Aの製造時において、その製造を能率よく行うためにこの未乾燥状態の突板を用いているにもかかわらず、上述したように合板基板1に生じる上記凸反りによって該未乾燥状態の突板や接着剤による凹反りを吸収させ、長手方向に平坦な平板状ないしはやゝ凸反りが生じている木質化粧板を得るものである。
【0025】
この突板によって上記化粧層3を形成しているが、該突板の厚みが0.2mm 以下になると、薄すぎて下地である木質繊維製板材2が透けて見えるので化粧上好ましくなく、また、厚みが0.7mm 以上になると、特に未乾燥状態の突板を用いる場合には、上述したようにその厚みと共に含有する水分による収縮力が大きくなって突板に割れが発生したり凹凸状の波打ち現象が発生して化粧性を損ない、その上、歩留まりが悪くなるので、厚さが0.2 〜0.7mm の突板を用いている。なお、突板としてよく使用される単板は、ナラ、タモ、サクラ等の広葉樹単板であるがこれに限らず針葉樹の単板であってもよい。また、突板の表面に着色液を塗布した後、掻き取り処理を行って突板の導管模様等の木目を濃色に強調しておいてもよい。また、木質繊維製板材2の表面に未乾燥状態の突板を接着する接着剤としては、尿素樹脂、尿素−メラミン樹脂、変性酢酸ビニル樹脂、水性ビニルウレタン樹脂など、汎用の接着剤を使用する。
【0026】
上記木質化粧板Aを製造する方法としては、まず、長手方向に平行な繊維方向をもつ上記裏層の木質単板1b上に、通常の合板の中間単板として使用する複数枚の木質単板1c、1d、1eを介して裏層の木質単板1bと同一繊維方向で且つ該木質単板1bの2〜6倍の厚みを有する表層の木質単板1aを接着剤を介して積層する。この際、中間単板として使用した木質単板1c〜1eの繊維方向は上記表裏層の木質単板1a、1bに対して交互に直交した方向に向けて積層する。この積層木質単板1a〜1eを加圧又は加圧加熱することにより一体に接着して上記合板基板1を作製したのち、必要に応じて該合板基板1の表裏面をサンディング処理し、しかるのち、この合板基板1の表層の木質単板1a上に比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の上記木質繊維板製材2を接着剤を介して積層し、加圧又はより生産性の良い加圧加熱することによって合板基板1上に木質繊維板材2を一体に積層接着してなる木質複合板A1を作製する。
【0027】
なお、この木質複合板A1は、合板基板1を作製したのち木質繊維板製材2を積層接着することなく、裏層板である上記木質単板1b上に上記複数枚の木質単板1c〜1eと表層板である上記木質単板1aとを接着剤を介して順次積層すると共にこの木質単板1a上に接着剤を介して上記木質繊維都政板材2を積層したのち、この積層板を加圧又は加熱加圧することにより木質複合板A1を形成してもよい。
【0028】
次いで、この木質複合板A1の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の上記未乾燥状態の突板を接着剤を介して加圧又は加熱加圧して一体化することにより化粧層3を形成し、しかるのち、この化粧層3の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装を施すことにより木質化粧板Aを得るものである。透明ないしは半透明の合成樹脂塗装としては、クリア塗装、着色クリア塗装が使用され、塗料の主成分である合成樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、アミノアルキッド系、紫外線硬化タイプの樹脂等、特に限定されない。このような合成樹脂液に必要に応じて着色剤、体質顔料、減摩剤等を添加してもよい。塗装手段としてはフローコータ、スプレーコータ、ロールコータ等を用い、2回以上の塗り重ねを行ってもよい。次に、本発明の具体的な実施例を示す。
【0029】
〔実施例1〕
図2(イ)に示すように、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが0.6mm の木質単板1bを裏層板とし、この木質単板1b上に繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.3mm の木質単板1cと、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが2.0mm の木質単板1dと、繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.3mm の木質単板1cと、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが1.8mm の木質単板1a(表層板)とを順次尿素−メラミン樹脂接着剤を介して順次積層し、ホットプレスによって120 ℃で8分間、加熱加圧して合板基板1を製造した。なお、上記全ての木質単板は幅950mm 、長さ1850mmに形成されている。
【0030】
この合板基板1は長手方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲した凸反り形状を呈していた。次に、この合板基板1を気乾状態で3日間、放置して養生したのち、表裏層側の木質単板1a、1bを0.2mm 程度、サンディングした。しかるのち、合板基板1の表面に尿素−メラミン樹脂接着剤を塗布し、図2(ロ)に示すようにこの接着剤を介して気乾比重が0.74で厚さが2.7mm の木質繊維板からなる木質繊維製板材2を載置し、ホットプレスで120 ℃で5分間、加熱加圧して合板基板1上に木質繊維製板材2が積層接着してなる複合板A1を得た。この複合板A1をさらに3日間養生したが長手方向の中央部において20mm以下の矢高となる凸反り形状を保持していた。
【0031】
次に、この複合板A1の表面に尿素−メラミン樹脂接着剤を塗布した後、0.3mm 厚さの未乾燥突板3を載置し、ホットプレスで130 ℃、1分間、加圧加熱して複合板A2上に突板3を接着したのち、2日間放置、養生した。最後に上記突板3の表面にウレタン樹脂系塗料を塗布4することによって図2(ハ)に示すように木質化粧板Aを作製した。こうして得られた木質化粧板Aは、上述したサンディング処理や、ホットプレスによる圧締減りによって厚さが12mmになっており、上記と同一条件で10枚の木質化粧板を作製したが、いずれも長手方向に生じる凸反りは、約0mmから15mmの範囲に収まっていた。
【0032】
〔実施例2〕
図3(イ)に示すように、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが0.8mm の木質単板1bを裏層板とし、この木質単板1b上に繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.5mm の木質単板1cと、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが2.1mm の木質単板1dと、繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.5mm の木質単板1cと、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが1.9mm の木質単板1aと、気乾比重が0.74で厚さが2.7mm の木質繊維板からなる木質繊維製板材2とを順次、尿素−メラミン樹脂接着剤を介して積層し、ホットプレスによって120 ℃で7分間、加熱加圧して合板基板1と木質繊維製板材2が積層接着してなる複合板A1を得た。この複合板A1の裏層の木質単板1bを約0.2mm サンディングし、3日間自然養生したが、長手方向の中央部においてから両端に向かって下向きに緩やかに湾曲した凸反り状態を維持していた。なお、上記全ての木質単板及び木質繊維製板材は幅950mm 、長さ1850mmに形成されている。
【0033】
この複合板A1の木質繊維製板材2の表面にウレタンシーラーを平方尺当たり、固形分で5g、スポンジロールコータで塗布し、尿素−メラミン樹脂接着剤を塗布した後、0.3mm 厚さの未乾燥のナラ材突板3を載置してホットプレスで130 ℃、1分間、加熱加圧することにより木質繊維製板材2の表面に突板3を接着し、3日間放置、養生した。次いで、該複合板A1の四方端面に常法により雌雄の実加工を施すと共に上記突板3の表面に着色液材を擦り込むようにして塗布し、紫外線硬化型塗料によって下塗り、上塗りの2回のクリアー塗装4を施したのち硬化させることにより図3(ロ)に示すように木質化粧板Aを得た。この木質化粧板Aは、その長手方向の中央部における矢高が略フラットないしは15mm程度の良好な凸反り形状を有していた。
【0034】
〔実施例3〕
繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが0.9mm の木質単板を裏層板とし、この木質単板上に繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.9mm の木質単板と、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが2.3mm の木質単板と、繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.9mm の木質単板と、繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが2.3mm の木質単板(表層板)とを順次尿素−メラミン樹脂接着剤を介して順次積層し、ホットプレスによって120 ℃で8分間、加熱加圧して合板基板を製造した。なお、上記全ての木質単板は幅950mm 、長さ1850mmに形成されている。この合板基板は長手方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲した凸反り形状を呈していた。
【0035】
次に、この合板基板を気乾状態で3日間、放置して養生したのち、表裏層側の木質単板を0.2mm 程度、サンディングした。一方、気乾比重が0.74で厚さが2.7mm の木質繊維板をその厚さ方向と直交する方向に2分割して厚さが略1.35mmの木質繊維製板材を得た。この木質繊維製板材をその分割面を下向きにして上記合板基板の表面に塗布した尿素−メラミン樹脂接着剤を介して該合板基板上に載置し、ホットプレスで120 ℃で4分間、加熱加圧して合板基板上に木質繊維製板材が積層接着してなる複合板を得た。この複合板をさらに3日間養生したが長手方向の中央部において20mm以下の矢高となる凸反り形状を保持していた。
【0036】
さらに、この複合板の表面に尿素−メラミン樹脂接着剤を塗布した後、0.3mm 厚さの未乾燥突板を載置し、ホットプレスで130 ℃、1分間、加圧加熱して複合板上に突板を接着したのち、2日間放置、養生した。最後に上記突板の表面にウレタン樹脂系塗料を塗布することによって木質化粧板Aを作製した。こうして得られた木質化粧板は、上述したサンディング処理や、ホットプレスによる圧締減りによって厚さが11.8mmになっており、上記と同一条件で10枚の木質化粧板を作製したが、いずれも長手方向に生じる凸反りは、約0mmから15mmの範囲に収まっていた。
【0037】
〔実施例4〕
繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが0.7mm の木質単板を裏層板とし、この木質単板上に繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた厚さが2.1mm の木質単板と繊維方向を長手方向に平行に向けた厚さが2.1mm の木質単板とを交互に尿素−メラミン樹脂接着剤を介して順次積層したのち、ホットプレスによって120 ℃で8分間、加熱加圧して7プライの木質単板からなる合板基板を製造した。なお、上記全ての木質単板は幅950mm 、長さ1850mmに形成されている。
【0038】
この合板基板を気乾状態で3日間、放置して養生したのち、表裏層側の木質単板を0.2mm 程度、サンディングした。しかるのち、合板基板の表面に尿素−メラミン樹脂接着剤を塗布し、この接着剤を介して気乾比重が0.76で厚さが2.5mm の木質繊維板からなる木質繊維製板材を載置し、ホットプレスで120 ℃で5分間、加熱加圧して合板基板上に木質繊維製板材が積層接着してなる複合板を得た。この複合板をさらに3日間養生したが長手方向の中央部において20mm以下の矢高となる凸反り形状を保持していた。
【0039】
次に、この複合板の表面に尿素−メラミン樹脂接着剤を塗布した後、0.3mm 厚さの未乾燥突板を載置し、ホットプレスで130 ℃、1分間、加圧加熱して複合板上に突板を接着したのち、2日間放置、養生した。最後に上記突板の表面にウレタン樹脂系塗料を塗布することによって木質化粧板を作製した。こうして得られた木質化粧板は、上述したサンディング処理や、ホットプレスによる圧締減りによって厚さが16.8mmになっており、上記と同一条件で10枚の木質化粧板を作製したが、いずれも長手方向には凹反りが生じておらず、若干の凸反りを有する良好な形状を有していた。
【0040】
〔比較例〕
上記実施例1乃至実施例4において、合板基板における表層の木質単板と裏層の木質単板とを略同じ厚さに形成したものを用い、その他の構成及び製造方法を上記実施例と同一条件にして木質化粧板を作製したところ、いずれの木質化粧板においても長手方向の中央部から両端に向かって湾曲する凹反りが生じた。
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明の請求項1に係る木質化粧板によれば、繊維方向を長手方向に向けた木質単板と繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた木質単板とを交互に積層接着した複数枚の木質単板からなる合板基板において、長手方向に平行な繊維方向をもつ表層の木質単板の厚みを裏層の木質単板の厚みの2.5 〜4倍としているので、長さ方向の中央部から両端に向かって下向きに湾曲した所謂、凸反り形状の合板基板に形成することができ、この合板基板の表面に貼着した木質繊維製板材や該木質繊維製板材表面に貼着した突板、さらには突板表面に塗布した塗料層によって合板基板の表面側が長さ方向に収縮して合板基板を凹反りさせようとするが、この収縮作用を上記合板基板の凸反りによって相殺して木質化粧板を全長に亘って平坦ないしはやゝ凸反り傾向の形状を保持させることができ、従って、釘着等による施工性が容易に且つ正確に行えると共に段差などが生じていない優れた外観を呈する床構造を形成することができる。
【0042】
また、合板基板の表面に積層接着している木質繊維製板材は比重が0.6 〜0.1 の比較的高比重に形成されているので、ワゴンのキャスターによる摺動的な負荷やピアノの脚等からの局部荷重を受けても表面化粧層に凹みや傷が生じ難く且つ木質繊維製板材自体も層間剥離が生じ難いと共にこの木質繊維製板材の厚さが0.5 〜3.0mm であるので、薄くて木質化粧板に上述したような凹反りを生じさせようとする収縮作用が減少し、凹反りの生じていない安定した形態の木質化粧板を提供することができる。
【0043】
さらに、上記高比重の木質繊維製板材と共にこの表面に貼着した突板によって木質化粧板が優れた強度を発揮し、その上、この突板の表面に施している透明ないしは半透明の合成樹脂塗料によって表面硬度が一層増大して局部的荷重やワゴン等の摺動荷重に対して充分に耐えることができると共に美麗な外観を呈するものである。
【0044】
請求項2に係る発明によれば、木質繊維製板材は、比重が0.6 〜1.0 の木質繊維板をその厚さ方向の中央部から2分割して形成されたものであるから、上記木質化粧板の凹反りを生じさせない薄い木質繊維製板材を歩留まりよく且つ容易に作製することができる。
【0045】
請求項3に係る発明によれば、上記木質繊維製板材の表面に樹脂強化シーラー層を設けているので、木質化粧板の表面硬度が増大し、ワゴンのキャスターによる摺動的な負荷等に充分に耐えることができる性能を発揮する。
【0046】
請求項4に係る発明は上記木質化粧板の製造方法であって、表面側に裏面側の木質単板の厚みの2.5 〜4倍の厚みを有する木質単板を配した状態で複数枚の木質単板を積層接着することにより上記合板基板を形成し、この合板基板の表面に比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の木質繊維製板材を接着剤を介して積層一体化して木質複合板を形成したのち、該木質複合板の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の未乾燥状態の突板を接着剤を介して加圧又は加熱加圧して一体化し、しかるのち、この突板の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装を施すものであるから、木質化粧板を能率よく製造することができると共に、未乾燥状態の突板を用いているにもかかわらず、上述したように合板基板に生じる上記凸反りによって該未乾燥状態の突板や接着剤による凹反りを吸収させ、長手方向に平坦な平板状ないしはやゝ凸反りが生じている木質化粧板を得ることができるものである。
【0047】
請求項5に係る発明によれば、上記請求項4に記載の木質化粧板の製造方法において、合板基板の形成工程と、該合板基板の表面に木質繊維製板材を積層接着する工程とを同時に行うものであるから、上記木質化粧板を一層能率よく作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】木質化粧板の簡略縦断側面図、
【図2】本発明の木質化粧板の製造方法を説明するための簡略工程図、
【図3】本発明の木質化粧板の別な製造方法を説明するための簡略工程図。
【符号の説明】
1a 表面側の木質単板
1b 裏面側の木質単板
2 木質繊維製板材
3 突板からなる化粧層
4 合成樹脂塗装
A 合板基板
A1 木質複合板

Claims (6)

  1. 繊維方向を長手方向に向けた木質単板と繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた木質単板とを交互に積層接着した複数枚の木質単板からなる合板基板であって、最下層に裏面側木質単板として長手方向に平行な繊維方向をもつ木質単板が配され、最上層に表面側木質単板として長手方向に平行な繊維方向をもち且つ上記裏面側の木質単板の厚みの2.5 〜4倍の厚みを有する木質単板が配されて積層一体化してなり、この合板基板における表面側の木質単板の表面に、比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の木質繊維製板材が接着されていると共に該木質繊維製板材の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の突板を接着して化粧層が形成され、この化粧層の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装が施されてなる木質化粧板。
  2. 上記木質繊維製板材は、比重が0.6 〜1.0 の木質繊維板をその厚さ方向の中央部から2分割して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板。
  3. 上記木質繊維製板材の表面に樹脂強化シーラー層を設けていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木質化粧板。
  4. 繊維方向を長手方向に向けた木質単板と繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた木質単板とを交互に積層接着して合板基板を構成する際に、長手方向に平行な繊維方向をもつ木質単板を合板基板の最下層である裏面側に配すると共に該裏面側の木質単板の繊維方向と同一繊維方向をもち且つこの裏面側の木質単板の2.5 〜4倍の厚みを有する木質単板合板基板の最上層である表面側の木質単板となるように接着剤を介して順次積層したのち、加圧又は加熱加圧して合板基板を形成し、次いで、この合板基板の上記表面側の木質単板上に比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の木質繊維製板材を接着剤を介して積層一体化して木質複合板を形成したのち、該木質複合板の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の未乾燥状態の突板を接着剤を介して加圧又は加熱加圧して一体化し、しかるのち、この突板の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装を施すことを特徴とする木質化粧板の製造方法。
  5. 繊維方向を長手方向に向けた木質単板と繊維方向を長手方向に直交する方向に向けた木質単板とを交互に積層接着して合板基板を構成する際に、長手方向に平行な繊維方向をもつ木質単板を合板基板の最下層である裏面側に配すると共に該裏面側の木質単板の繊維方向と同一繊維方向をもち且つこの裏面側の木質単板の2.5 〜4倍の厚みを有する木質単板合板基板の最上層である表面側の木質単板となるように接着剤を介して順次積層すると共にこの表面側の木質単板上に比重が0.6 〜1.0 で厚さが0.5 〜3.0mm の木質繊維製板材を接着剤を介して積層したのち、加圧又は加熱加圧して木質複合板を形成し、次いで、この木質複合板の表面に長手方向に平行な繊維方向をもつ厚さが0.2 〜0.7mm の未乾燥状態の突板を接着剤を介して加圧又は加熱加圧して一体化し、しかるのち、該突板の表面に透明ないしは半透明の合成樹脂塗装を施すことを特徴とする木質化粧板の製造方法。
  6. 上記木質繊維製板材は、比重が0.6 〜1.0 の木質繊維板をその厚さ方向の中央部から2分割して形成されたものであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の木質化粧板の製造方法
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