JP3839694B2 - ドレンカバーおよびそれを用いたポリウレタン系塗膜防水工法 - Google Patents

ドレンカバーおよびそれを用いたポリウレタン系塗膜防水工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マンション等の建築物の屋上、ベランダ、廊下等に用いられる、排水を排水口内に導くためのドレンカバーおよびそれを用いたポリウレタン系塗膜防水工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マンション等の建築物の屋上、バルコニー、廊下等における防水工法として、近年、ポリウレタン系塗膜防水材を用いる塗膜防水工法が多く採用されている。この防水工法は、施工部位にポリウレタン系樹脂を直接塗工するため、塩化ビニル樹脂製等の成型シートを用いるシート防水工法に比べ、施工部位の形状によらず簡便に防水塗膜を形成できる利点があり、特に改修工事に多くの実績がある。
【0003】
ところで、屋上、バルコニー、廊下等の改修工事においては、新築時に排水口に設置されていた金属製等の既存ドレンが老朽化している場合が多い。この場合、既存ドレンを残したまま、直接ポリウレタン系塗膜防水材を施工すると、金属ドレンとポリウレタン系塗膜防水材との熱膨張率の差によって、ドレンと防水材層との接合面で亀裂や剥離が発生する恐れがあり、これによって建築物の躯体内部に水が侵入して漏水が起こる可能性が高い。
【0004】
したがって、既存ドレンを残したまま、直接ポリウレタン系塗膜防水材を施工する場合には、耐亀裂性の向上を目的として接合面にガラスクロス等による補強が必要であり、また、ポリウレタン系塗膜防水材は金属との接着強度が十分ではないために、専用のプライマが必要であった。
【0005】
一方、防水材を施工する際に、この老朽化した既存ドレンを交換することも考えられるが、通常、既存ドレンの本体は躯体内部に埋め込まれているため、これを撤去して再設置する場合は施工が煩雑になり、また、施工コストも高価になる。
【0006】
このため、従来は既存ドレンは撤去せずに、フレキシブルホースの片端に鉛板や塩化ビニル樹脂製シートを接合したドレンカバーを被せる方法などが行われており、このドレンカバーの形状や材質については種々提案されている。
【0007】
例えば、特開平8−93150号公報には、防水層が設けられている建物屋上等の排水用ドレンの改修工事において、既存ドレンを残し、合成樹脂が被覆された合成樹脂被覆鋼板を既存ドレンに機械的に固定した後、合成樹脂被覆鋼板の表面に合成樹脂製の改修用ドレンカバーを熱融着および/または溶剤溶着によって接合し、該改修用ドレンの周囲の端部と改修用の防水シートまたは既存の防水シートとを熱融着および/または溶剤溶着によって接合することを特徴とする防水ドレンの改修工法が開示されている。
【0008】
また、実公昭61−37701号公報には、管首部と管端部との間にベローズ部を設けたドレンカバーの本体を軟質合成樹脂で形成し、管首部の先端外側に立体縁部と水平縁部とを有する接鍔部を同一体に突設し、その接鍔部に通水孔を開穿したストレーナーを溶着、溶接あるいは接着により一体的に取り付け、管首部の開口を被蓋してなる軟質合成樹脂製コーナードレインが開示されている。
【0009】
さらに、特開平7−76908号公報には、機械的および/または熱的な手段により、下地形状に適合するように変形可能な素材で形成されたドレン鍔、および該ドレン鍔に接合されたフレキシブルホースを有する横引きドレンが開示されており、変形可能なドレン鍔の素材として鉛が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術のうち、上記特開平8−93150号公報における、合成樹脂被覆鋼板を用いる方法は、改修ドレンと防水層の接着方法が熱融着および/または溶剤融着が可能なシート防水工法に限られているため、防水層にポリウレタン系塗膜防水材を用いる場合には、改修用ドレンの周囲の端部にプライマ等の塗工が必要であった。
【0011】
また、実公昭61−37701号公報における、軟質合成樹脂で形成したドレンカバーを用いる方法においても、塩化ビニル樹脂製シート防水工法およびエチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂製シート防水工法、加硫ゴムシート防水工法等のシート防水工法における、軟質合成樹脂と防水層との接合方法が例示されているのみであり、基材との密着力に優れるポリウレタン系塗膜防水材との具体的な組合せの例示はみられない。
【0012】
また、特開平7−76908号公報における、機械的および/または熱的な手段により変形可能な鍔を有する横引きドレンを用いる場合は、工事現場においてハンマーや加熱器具などを用いて機械的および/または熱的に下地形状に合わせてドレン鍔を変形させる必要があり、この作業は煩雑で熟練を要するものである。また、機械的手段により変形可能である材料は、鉛等の金属などであり、防水層にポリウレタン系防水材を用いる場合は、前述のようにドレンと防水層の接合面で亀裂が発生する恐れがあるという問題があった。
【0013】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、排水口の周囲の下地形状に適合するように被覆でき、その上からポリウレタン系塗膜防水材を塗工したときに、ドレンカバーと防水材との接着が充分になされ、長期間に渡って防水性能を維持できるドレンカバーおよびそれを用いたポリウレタン系塗膜防水工法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のドレンカバーは、一端が排水口の内部に挿入され、他端が前記排水口の開口部に位置されるフレキシブルホースと、前記フレキシブルホースの前記他端開口縁部にフランジ状に取付けられた軟質ポリウレタン系樹脂製のフランジ状シートとを備え、前記フランジ状シートが前記排水口の周縁部を被覆して、排水を排水口内に導くように配置されることを特徴とする。
【0015】
本発明のドレンカバーによれば、排水口の周縁部を被覆するように配置されるフランジ状シートが軟質ポリウレタン系樹脂製であるので、充分な強度に加えて適度な可撓性を有する。このため、排水口の周囲の下地形状に適合するように被覆でき、フランジ状シートと下地との間の気密性が高まる。
【0016】
また、後にフランジ状シートとフランジ状シート周縁の下地とにかけて、ポリウレタン系塗膜防水材を塗工した際には、フランジ状シートとポリウレタン系塗膜防水材が同種の材料であるので、フランジ状シート部分にあらかじめプライマ等を塗布しなくても、フランジ状シートと塗膜防水材との接着強度が高く、長期間に渡って防水性能を維持できる。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、前記フランジ状シートが、JIS−A6021に規定される引張性能試験において、引張強さが1N/mm2以上であり、かつ破断時の伸び率が100%以上である。
【0018】
この態様によれば、フランジ状シートが上記範囲の引張強さと伸び率を有することにより、ドレン周辺の下地にひび割れ等が生じた場合等においてもフランジ状シートが追随可能となるため、耐亀裂性に優れ、フランジ状シートが破断し難くなるので長期間の使用においても高い防水性能を発揮できる。
【0019】
また、本発明の別の好ましい態様によれば、前記フランジ状シートの厚さが0.2〜10mmである。
【0020】
この態様によれば、フランジ状シートが上記範囲の厚さを有するので、特に強度に加えて可撓性に優れ、フランジ状シートの下地形状への適合がさらに容易になる。
【0021】
一方、本発明のポリウレタン系塗膜防水工法は、上記のドレンカバーを、前記フレキシブルホースの一端が前記排水口内に挿入され、前記フランジ状シートが前記排水口の周縁部を被覆するように配置させた後、前記フランジ状シートと、該フランジ状シート周縁の下地とにかけて、ポリウレタン系塗膜防水材を塗工することを特徴とする。
【0022】
この防水工法によれば、ドレンカバーのフランジ状シートと塗膜防水材が共にポリウレタン系樹脂製であるので、フランジ状シートと塗膜防水材との間で亀裂や剥離を生じる恐れがない。また、改修工事においては、既存ドレンを撤去することなく塗膜防水層と一体化した新規のドレンを設置できるので、施工が簡便であり、施工コストも安価である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態について説明する。
まず図1を用いて、本発明のドレンカバーについて説明する。図1(a)は同ドレンカバーの一実施形態を示す平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A´矢視線に沿った断面図である。
【0024】
図1(b)に示すように、このドレンカバー10は、フレキシブルホース11およびフランジ状シート12より構成されており、フレキシブルホース11の一方の端部の開口縁部11aと、フランジ状シート12の開口縁部12aが接合部13で接合されている。
【0025】
フレキシブルホース11は、設置される部分の排水管の形状に合わせて変形可能な屈曲性や可撓性を有していればよい。したがって、図1(b)に示すような蛇腹形状であってもよく、また、材料自身が可撓性を有していれば直管であってもよい。
【0026】
フレキシブルホース11の材質は特に限定されないが、可撓性を有する必要があることから従来公知の合成樹脂系材料が好ましく、例えばポリウレタン系樹脂や塩化ビニル樹脂等が使用できる。また、フレキシブルホース11の横断面形状も特に限定されないが、変形を容易にするため、円形状であることが好ましい。
【0027】
フランジ状シート12は、図1(a)に示すように、その平面形状が四角形をなし、中央部には円形の開口部12bを有している。なお、フランジ状シート12の平面形状は特に限定されず設置面の形状に合わせて適宜選択可能である。また、開口部12bの形状も、フレキシブルホース11の開口部形状に合わせて適宜選択できる。
【0028】
本発明においてはフランジ状シート12は軟質ポリウレタン系樹脂製である。これにより、設置される下地面の形状に追随して容易に被覆可能であり、さらに、後の工程でフランジ状シート12上に塗工されるポリウレタン系塗膜防水材と同種材料であるため接着性に優れ、フランジ状シート12と防水層が一体化して高い防水性能を得ることができる。
【0029】
ここで、本発明における軟質ポリウレタン系樹脂とは、少なくとも、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られる、ポリウレタン結合を有するエラストマーを意味する。ただし、これにはポリイソシアネートと、ポリアミンまたは水とを反応させたポリウレアを含んでいてもよい。上記フランジ状シートに用いる軟質ポリウレタン系樹脂としては、可塑剤の含有率が5質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。これは、可塑剤の含有率が多い場合は、後から塗工されるポリウタン系塗膜防水材との接着性が悪くなりやすいためである。
【0030】
ポリウレタン系樹脂としては特に限定されず、従来公知のものが使用でき、例えば、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等が使用できる。
【0031】
また、フランジ状シート12上には、耐候性を良くするために、あらかじめ、またはドレンカバー10を設置した後にトップコートを塗工してもよい。トップコートの材質としては、耐候性が良く、フランジ状シート12およびポリウレタン系塗膜防水材との接着性に優れるものであれば特に限定されない。例えば、従来公知のアクリル系塗料、アクリルウレタン系塗料のそれぞれ溶剤型、無溶剤型、水性型が使用できる。
【0032】
本発明においては、フランジ状シート12は十分な耐亀裂性を有するために、JIS−A6021に規定される引張性能試験において、引張強さが1N/mm2以上であり、かつ破断時の伸び率が100%以上であることが好ましい。引張強さが1N/mm2未満または破断時の伸び率が100%未満の場合、下地の亀裂やひび割れ等の挙動に対しての十分な追従性がないために、シートが破断しやすくなるので好ましくない。ここでJIS−A6021に規定される引張性能試験とは、ダンベル状3号形の形状で、500mm/minの引張速度で試験片が破断するまで引っ張った時の引張強さと破断時の伸び率である。
【0033】
また、フランジ状シート12の厚さは任意であるが、防水性能の点から0.2〜10mmが好ましく、より好ましくは0.5〜5mmである。フランジ状シート12の厚さが0.2mm未満では十分な耐亀裂性がなく、フランジ状シート12が破断しやすくなって防水性能が低くなるので好ましくない。10mmを超えると、フランジ状シート12の可撓性が悪くなり、排水口の周囲の下地形状への適合性が低下して、フランジ状シート12と下地との間の気密性が低下するので好ましくなく、また、フランジ状シート12と下地との段差が大きくなる点からも好ましくない。
【0034】
上記のフランジ状シート12とフレキシブルホース11は、フランジ状シート12の開口縁部12aとフレキシブルホース11の開口縁部11aが、接合部13において接合されている。接合方法としては、従来公知の接着剤、熱溶着または溶剤溶着等による接合方法が使用でき、このうち溶剤溶着が好ましい。
【0035】
次に上記のドレンカバー10を用いた本発明の防水工法について説明する。 図2は、改修工事における本発明の防水工法の一実施形態を示す、縦引きドレン周辺部分の施工面の断面図である。なお、以下の実施形態の説明においては、前記の実施形態と実質的に同一部分には同符合を付してその説明を省略する。
【0036】
まず、図示しない、ゴミ取り用の複数のスリットを有するプレート等からなる既存のドレンキャップを撤去し、図2に示すように、排水管50にドレンカバー10のフレキシブルホース11の一端を挿入し、既存ドレン30を被覆するようにフランジ状シート12を設置する。このとき、フランジ状シート12は軟質ポリウレタン系樹脂であるので、充分な強度に加えて適度な可撓性を有する。このため、排水口の周囲の下地60の形状等に適合するように被覆することができ、下地60等との気密性を高めることができる。
【0037】
また、本発明においては、既存ドレン30は、アンカーボルト40によって下地60に固定されている。よって、既存ドレン30を撤去した後にドレンカバー10を設置してもよいが、防錆処理等を行った上で既存ドレン30を撤去せず、そのままドレンカバー10を被せて設置することが好ましい。これにより、施工を簡単にしてコストを低減させることができる。なお、フレキシブルホース11と、既存ドレン30や排水管50との間は、接着剤やシール材等により密着させてもよい。
【0038】
そして、既存ドレン30を被覆するようにフランジ状シート12を設置する際、フランジ状シート12は、下地60および既存ドレン30に対して、直接またはプライマを塗布してから、従来公知の接着剤、熱溶着または溶剤溶着により必要に応じて貼着される。
【0039】
ここで、下地60とは、躯体であるコンクリートやモルタル、またはそれらに施工されている既存の防水層等である。プライマは特に限定されないが、ウレタン系プライマ、エポキシ系プライマ等の公知のものが使用できる。プライマは後に塗布されるポリウレタン系塗膜防水材との接着を良くするために塗布するプライマと同一でもよく、異なる種類のものでもよい。
【0040】
また、ドレンカバー10の設置後に塗布されるポリウレタン系塗膜防水材との接着力をより強固にするために、フランジ状シート12の上面に同様のプライマを塗布してもよい。さらに、フランジ状シート12の貼着部分の防水性能をより高めるために、フランジ状シート12の下面や周囲にシーリング材や防水材等を塗布してもよい。
【0041】
ドレンカバー10を設置後、フランジ状シート12からフランジ状シート12周縁の下地60にかけて、連続被覆層となるようにポリウレタン系塗膜防水材を塗工して、ポリウレタン系塗膜防水層20を形成する。
【0042】
ポリウレタン系塗膜防水材としては、従来から使用されている公知のものが使用できる。特にポリオールと過剰のポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを主成分とする主剤と、ポリオール、ポリアミンおよび水から選ばれる少なくとも一種を主成分とする硬化剤とを混合するポリウレタン系塗膜防水材が好ましい。また、塗膜防水材の種類は、例えば二液硬化型の手塗りポリウレタン系防水材、超速硬化型の吹き付けポリウレタン系防水材等が挙げられる。また、イソシアネート基末端プレポリマーを主成分とする一液型ポリウレタン系防水材等も使用できる。
【0043】
フランジ状シート12の貼着部分は非貼着部分との段差を小さくするために、ポリウレタン系塗膜防水材の塗工に先立って、フランジ状シート12の周辺に、同様の防水材、増粘材を添加した防水材、フランジ状シート12と防水材の双方に接着性のよいシーリング材等を塗工することができる。さらに接合個所の強度をより高くするために、ガラスクロス等の補強布を貼着してもよい。
【0044】
ポリウレタン系塗膜防水層20は1層または2層以上の複数層を施工してもよい。ポリウレタン系塗膜防水層20の厚さは任意であるが、十分な防水性能を得るためには1mm以上が好ましく、厚さが増すほど信頼性が高くなる。
【0045】
さらに、ポリウレタン系塗膜防水層20の表面には、耐候性をよくするためにトップコートを塗工することができる。トップコートとしては従来から使用されている公知のものが使用でき、例えばアクリル系、アクリルウレタン系、フッ素系のそれぞれ溶剤型、無溶剤型、水性型が使用できる。また、このトップコートは、前記のフランジ状シート12に塗工するトップコートと同一の種類であってもよい。
【0046】
なお、ポリウレタン系塗膜防水層20の施工後に、排水管50の内部にゴミ等が入り込まないように、ドレンカバー10の開口部に、図示しない通水性を有するドレンキャップを設置することが好ましい。
【0047】
上記のドレンカバー10およびそれを用いたポリウレタン系塗膜防水工法によれば、既存ドレンの撤去が必要なく簡便に新規ドレンが設置でき、施工コストも低減できる。また、ドレンカバー10のフランジ状シート12が軟質ポリウレタン系樹脂製であるので可撓性を有し、このため排水口の周囲の形状に適合し易く下地60との密着性にも優れる。
【0048】
また、ドレンカバー10を配置後に、ポリウレタン系塗膜防水材を塗工した際には、フランジ状シート12とポリウレタン系塗膜防水層20との接合部分が同種のポリウレタン系の材料であるために接着強度が高く、防水性能を長期間に渡って維持することができる。
【0049】
図3は、新築工事における本発明の防水工法の一実施形態を示す、横引きドレン周辺部分の施工面の断面図である。
【0050】
図3の実施形態は、ドレンカバー10の設置が横向きである点と、既存ドレンがなく、躯体に直接ドレンカバー10を設置している点が図2の実施形態と異なっている。すなわち、この実施形態では、床面の下地60aと、壁面の下地60bからなる躯体のコーナー部分に排水口が設けられており、そこにL字状のエルボ管をなす排水管50aが連結されている。
【0051】
この実施形態においては、まず、図3に示すように、ドレンカバー10のフレキシブルホース11を、排水口から排水管50a内に挿入し、排水管50a内でL字状に屈曲させるように配置し、続いて下地60aおよび60bの露出した表面にフランジ状シート12を貼着する。
【0052】
そして、ポリウレタン系塗膜防水材をフランジ状シート12からフランジ状シート12周縁の下地60aおよび60bの表面とにかけて、連続被覆層となるようにポリウレタン系塗膜防水材を塗工して、ポリウレタン系塗膜防水層20を形成する。
【0053】
この実施形態によれば、既存ドレンのない新築工事においても、ドレンカバー10とポリウレタン系塗膜防水層20によって、長期に渡って防水性能を維持できる新たなドレンを形成できる。また、フランジ状シート12が可撓性を有するので、躯体のコーナー部分のような非平面の下地に対しても、フランジ状シート12を下地60aおよび60bの表面に密着させることができる。
【0054】
【実施例】
本発明について以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下の実施例と比較例は、本発明のドレンカバーにおけるフランジ状シートと同じ材質である軟質ポリウレタン系樹脂製シートと、他の材料を用いたシートとを、ポリウレタン系塗膜防水材との接着性の点から評価したものである。
【0055】
表1に示した基材にそれぞれ2液混合型のポリウレタン樹脂系塗膜防水材を、1m2あたり2kg塗布し、7日間養生して実施例1および比較例1〜3の試験片を得た。なお、各例ともプライマは使用しなかった。
【0056】
上記実施例1および比較例1〜3に使用した2液混合型のポリウレタン樹脂系塗膜防水材は次の主剤と硬化剤を使用した。
【0057】
主剤は2,4−トリレンジイソシアネート(以下2,4TDIという)と2,6−トリレンジイソシアネート(以下2,6TDIという)との混合物(質量比で2,4TDI/2,6TDIが80/20)13.5質量部と、分子量5000のポリプロピレントリオール30.4質量部、分子量3000のポリプロピレントリオール25.5質量部および分子量2000のポリプロピレンジオール30.6質量部を反応させたイソシアネート基末端プレポリマーを使用した(イソシアネート基含有率3.42質量%)。
【0058】
硬化剤は4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)1.5質量部と、分子量5000のポリプロピレントリオール23.2質量部および分子量2000のジプロピレングリコール15.0質量部、充填材として炭酸カルシウム60.3質量部の混合物を使用した.主剤と硬化剤の配合比率は質量比で1:2で、攪拌機により混合した後、コテを用いて下地材に塗り広げた。
【0059】
実施例1に用いたポリウレタン系樹脂製シートは、カルポジイミド変性ジフェニルメタンー4,4’−ジイソシアネート(日本ポリウレタン社製:ミリオネートMTL)12.1質量部と、分子量5000ポリプロピレントリオール20.4質量部、分子量3000のポリプロピレントリオール20.4質量部および分子量2000のポリプロピレンジオール47.1質量部を反応させ、膜厚2mmのシート状に硬化させたものを使用した。
【0060】
比較例1に用いた塩化ビニル樹脂製シートは、筒中シート社製DNシートSを使用した。比較例2に用いた鋼板は厚さ5mmの亜鉛メッキ鋼板を用いた。比較例3に用いた鉛板は厚さ0.8mmの薄鉛板を用いた。
【0061】
<試験例>
実施例1および比較例1〜3の試験片について、JIS−K6854に規定される180度剥離試験を行い、剥離接着強さ(単位:kN/m)を評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0062】
【表1】
Figure 0003839694
【0063】
表1の結果より、本発明のポリウレタン系樹脂製シートを用いた実施例1では、ポリウレタン系塗膜防水材との剥離接着強さが2.8kN/mと実用上充分な接着強度であった。これに対してポリウレタン系樹脂製シート以外を用いた比較例1〜3は、ポリウレタン系塗膜防水材との剥離接着強さが0.2kN/m以下と低く、実用上充分な接着強度が得られないことがわかる。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ドレンカバーの設置が簡便で下地への密着性に優れたドレンカバーを提供でき、また、このドレンカバーとポリウレタン系塗膜防水材とが一体化して信頼性の高い防水層を形成できるので、建築物の屋上、バルコニー、廊下等における改修工事や新築工事等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のドレンカバーの一実施形態を示す、(a)平面図、(b)A−A´断面図である。
【図2】 改修工事における縦引きドレン付近の、本発明の防水工法における一実施形態を示す概略工程図である。
【図3】 新築工事における横引きドレン付近の、本発明の防水工法における一実施形態を示す概略工程図である。
【符号の説明】
10 ドレンカバー
11 フレキシブルホース
11a 開口縁部
12 フランジ状シート
12a 開口縁部
12b 開口部
13 接合部
20 ポリウレタン系塗膜防水層
30 既存ドレン
40 アンカーボルト
50、50a 排水管
60、60a、60b 下地

Claims (4)

  1. 一端が排水口の内部に挿入され、他端が前記排水口の開口部に位置されるフレキシブルホースと、前記フレキシブルホースの前記他端開口縁部にフランジ状に取付けられた軟質ポリウレタン系樹脂製のフランジ状シートとを備え、前記フランジ状シートが前記排水口の周縁部を被覆して、排水を排水口内に導くように配置されることを特徴とするドレンカバー。
  2. 前記フランジ状シートが、JIS−A6021に規定される引張性能試験において、引張強さが1N/mm2以上であり、かつ破断時の伸び率が100%以上である、請求項1に記載のドレンカバー。
  3. 前記フランジ状シートの厚さが0.2〜10mmである、請求項1または2に記載のドレンカバー。
  4. 前記請求項1〜3のいずれか一つに記載のドレンカバーを、前記フレキシブルホースの一端が前記排水口内に挿入され、前記フランジ状シートが前記排水口の周縁部を被覆するように配置させた後、前記フランジ状シートと、該フランジ状シート周縁の下地とにかけて、ポリウレタン系塗膜防水材を塗工することを特徴とするポリウレタン系塗膜防水工法。
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