JP3838325B2 - 電気システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電気システムに関するものであり、特に、電源からの電流の供給に基づいて作動する装置の診断に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気システムの一例としての車両用電気システムの一つに、電動モータにより駆動される電動ブレーキ,電動モータを制御するモータ制御装置およびバッテリを含む電動ブレーキシステムがある。このシステムにおいては、イグニッションスイッチのON操作に応じて電動モータおよびモータ制御装置がバッテリに接続され、ブレーキペダルの踏込みに応じて直ちに作動し得る待機状態とされる。しかし、イグニッションスイッチがON操作されなければバッテリに接続されず、ブレーキペダルが踏み込まれても車輪の回転を抑制することができない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
そこで、イグニッションスイッチのON操作のみならず、ブレーキペダルの踏込に応じても電動ブレーキおよびモータ制御装置とバッテリとが接続されるようにすることが考えられる。このようにすれば、イグニッションスイッチがOFF状態にあっても、ブレーキペダルを踏み込めば電動ブレーキを作動させることができる。そして、電動ブレーキおよびモータ制御装置について、バッテリへの接続に伴ってイニシャルチェックを行えば、軽微な故障が生じている状態で電動ブレーキ等が作動させられることにより、大きな故障が発生するという事態が回避される。
【0004】
電動ブレーキおよびモータ制御装置がイグニッションスイッチのON操作に応じてバッテリに接続された場合は、ブレーキペダルが踏み込まれるまでにイニシャルチェックが完了していれば、故障が生じた状態で電動ブレーキ等が作動させられることはないが、必ず完了しているという保証はない。また、電動ブレーキおよびモータ制御装置がブレーキペダルの踏込みによってバッテリに接続された場合には、イニシャルチェックを省略してブレーキを作動させるか、あるいはイニシャルチェックを行った後にブレーキを作動させることが考えられる。制動力確保の観点からすれば、ブレーキペダルが踏み込まれれば、直ちに電動ブレーキを作動させることが望ましいが、故障があった場合に故障箇所が増えたり、故障の度合いが進む可能性があり、電動ブレーキおよびモータ制御装置の故障回避の観点からすれば、イニシャルチェックの完了後に電動ブレーキを作動させることが望ましい。この問題は、例えば、イニシャルチェックが完了するまでは車両の走行を禁止することにより回避することができるが、車両を直ちに発進させることができず、使い勝手が悪くなる。イグニッションスイッチのON操作に応じて電動モータおよびモータ制御装置がバッテリに接続されたが、イニシャルチェックが完了する前にブレーキペダルが踏み込まれた場合にも同様の問題が生ずる。電動ブレーキおよびモータ制御装置のバッテリへの接続がイグニッションスイッチのON操作に応じて為された場合にも、ブレーキペダルの踏込みに応じて為された場合にも、電動ブレーキが作動させられるまでにイニシャルチェックが完了していることが望ましいのである。
【0005】
それに対し、特開平6−127317号公報に記載の電気システムにおいては、コンピュータが常時バッテリに接続され、電流が供給されるようにされている。この電気システムは車両に設けられるアンチロック制御装置であり、液圧ブレーキのブレーキシリンダ液圧を制御する電磁弁装置,その電磁弁装置を制御するコンピュータおよびバッテリを含み、電磁弁装置は、イグニッションスイッチのON操作またはブレーキペダルの踏込みによりバッテリに接続されて通電が可能な状態とされるのであるが、コンピュータは、イグニッションスイッチのON,OFF操作およびブレーキペダルの踏込みに関係なく、常時、バッテリに接続されているため、いつでもイニシャルチェック完了状態にあるようにすることができる。したがって、例えば、車両が下り坂でイグニッションスイッチがON操作されない状態のまま走り出し、運転者のブレーキペダルの踏込みに応じてブレーキが作動し、アンチロック制御が必要になった場合でも、直ちに電磁弁装置を作動させることができる。このシステムにおいては、ブレーキペダルの踏込みによりマスタシリンダに発生させられた液圧によって液圧ブレーキが作動するため、ブレーキペダルの踏込み時にコンピュータをバッテリに接続し、イニシャルチェックの完了後、電磁弁装置を作動させてもよいのであるが、その間、アンチロック制御の開始が遅れる。それに対しコンピュータが常時バッテリに接続されていれば、必要に応じて直ちにアンチロック制御が開始され、十分な制動性能が発揮されるのである。しかし、コンピュータを常時バッテリに接続し、電流が供給されるようにすれば、バッテリの電気エネルギが無駄に消費される。
【0006】
イグニッションスイッチのON操作と、ブレーキペダルの踏込みとの一方に基づいて電動モータおよびモータ制御装置をバッテリに接続する構成は、車両用電気ブレーキシステム以外の電気システムであって、イグニッションスイッチに相当する主スイッチ,電動モータを有する電動ブレーキに相当する作動装置および電源を含む電気システムにおいても採用することができる。そして、その場合に、作動装置の作動開始時におけるイニシャルチェックの未完了の問題および電流の無駄な消費の問題が同様に発生する。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景とし、主スイッチの操作と、作動装置を作動させるための操作部材とのいずれかにより、作動装置および制御装置と電源とが接続される電気システムであって、電流を無駄に消費することなく、かつ作動装置の作動開始時には、イニシャルチェックができる限り完了している電気システムを提供することを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の電気システムが得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
(1)電源と、
その電源から供給される電流により作動する作動装置と、
その作動装置を作動させるための操作部材である第一操作部材と、
前記電源から供給される電流により作動し、前記作動装置を制御する制御装置と、
その制御装置および前記作動装置と、前記電源との間に設けられ、制御装置および作動装置と電源とを接続する状態と、その接続を遮断する状態とに操作される主スイッチと、
前記第一操作部材の操作に基づいて、前記制御装置および前記作動装置と前記電源とが接続される状態と、その接続が遮断される状態とを生じさせる手段と、
前記第一操作部材の操作よりも先行して、予め定められた第二操作部材の操作が行われた場合に、前記電源と前記制御装置、あるいは前記電源と前記制御装置および前記作動装置とを接続するとともに、それら電源と接続された装置の少なくとも一部の診断を行う先行診断装置とを含む電気システム。
本電気システムの一例は、車両に搭載される車両用電気システムであるが、それに限定されるわけではない。
上記「作動装置および制御装置と電源とが接続される」なる表現は、作動装置と電源、制御装置と電源の間にそれぞれスイッチ(有接点,無接点いずれでも可)があり、それらスイッチがON状態とされることにより接続される場合も、電源と制御装置との間にスイッチがあり、そのスイッチがON状態にされれば制御装置は直接、作動装置は制御装置を介して間接に電源装置に接続される場合の両方を含む。後者の場合には、制御装置が電源に接続されれば作動装置も必然的に電源に接続されることとなる。ただし、いずれの場合でも、作動装置の電流は制御装置により制御されるため、制御装置により作動装置が作動させられない限り、実際に作動装置に電流が流れることはない。それに対し、制御装置には、電源装置と制御装置との間のスイッチがON状態とされれば、電流の大きさは制御装置の作動状態によって変わるにしても、最小限の電流は常時流れる。診断されるのが制御装置のみである場合には制御装置が電源に接続されればよく、制御装置と作動装置との両方である場合には両方が電源に接続されることが必要である。
作動装置は、電源からの電流供給に基づいて作動する装置であればよく、例えは、電気システムが車両用電気システムであれば、液圧ブレーキのブレーキシリンダ液圧を制御する液圧制御弁装置、液圧ポンプおよび蓄圧装置を有して液圧ブレーキに液圧を供給する動力液圧源装置、電動アクチュエータにより駆動される電動ブレーキ、電動モータを駆動源とするパワーステアリング装置、電気制御エンジンシステムの構成装置の一例である電動モータによりスロットルバルブを駆動するスロットルバルブ装置、電動モータにより車両を駆動する電気式駆動装置等がある。
先行診断装置は、電源と接続された装置が一つであれば、そのうちの少なくとも一部について診断を行い、複数であれば、少なくとも一つの装置について少なくとも一部の診断を行う。
いずれにしても、第一操作部材の操作よりも先行する第二操作部材の操作に基づいて診断が行われるため、第一操作部材が操作され、作動装置が作動させられるときには、行われるべき診断の少なくとも一部が済んでいる。そのため、第一操作部材の操作に応じて直ちに作動装置が作動させられる場合でも、診断が未完了のままで作動させられる可能性が少なくて済む。また、第一操作部材が操作されたとき、診断の完了を待って作動装置が作動させられる場合には、待ち時間が0あるいはあっても短くて済み、作動遅れを低減することができる。第一操作部材の操作に先行する第二操作部材の操作に基づいて、作動装置が短時間後に作動させられる可能性が高いと推定し、その作動に備えて診断を行うのであり、制御装置が常時電源に接続されている場合のように電気エネルギが無駄に消費されることを回避しつつ、診断が完了した状態で作動装置を作動させ得る可能性を高めることができ、診断が未完了のまま作動装置が作動させられることによる故障の増大や診断の完了を待つことによる作動遅れを低減させることができる。
なお、本項は特許請求の範囲の補正により、本願発明ではなくなった。
(2)前記電気システムが車両用電気システムであり、前記第二操作部材が、車両のドアロックを解除するための解錠操作部材,ドアノブおよびドアの少なくとも一つを含む (1)項に記載の電気システム(請求項7)。
解錠操作部材は、ドアキーや、遠隔操作装置の操作スイッチを含む。
停止している車両を走行させる場合、各種作動装置を作動させるべく、第一操作部材が操作されるのに先行して、解錠操作,ドアノブの操作,ドアの開閉が行われるのが普通であり、本態様によれば、第一操作部材の操作に先行して診断を行い得る可能性が高い。
(3)前記先行診断の実施後所定時間内に前記主スイッチと前記第一操作部材とのうち、予め定められたものの操作が行われない場合に、前記電源と前記制御装置、あるいは前記電源と前記制御装置および前記作動装置との接続を遮断する接続遮断手段を含む (1)項または (2)項に記載の電気システム(請求項1)。
「先行診断の実施後」とは、先行診断の実施開始後でもよく、あるいは診断完了後でもよい。
主スイッチと第一操作部材とのうち、予め定められたものは、例えば、主スイッチであり、あるいは第一操作部材であり、あるいは両方である。
先行診断は、作動装置の作動に備えて行われるが、先行診断の実施後所定時間内に主スイッチと第一操作部材とのうち、予め定められものの操作が行われない場合には、作動装置は作動させられないものとみなし、電流の供給を遮断してもよく、電流が無駄に消費されることが回避される。
(4)前記先行診断装置が、少なくとも、前記第二操作部材の操作が前記先行診断の前回の実施後設定時間以内に行われ、かつ、前回の先行診断の結果が正常であった場合には前記先行診断を実施しないものである (1)項ないし (3)項のいずれか一つに記載の電気システム(請求項2,4)。
診断対象装置の状態が短時間のうちに変化する可能性は低い。前回の先行診断から設定時間が経過していない時点では、装置の状態は、前回の先行診断の実行時と変わっていない可能性が高く、前回の診断結果を用いて作動装置を作動させても支障がないことが多いのである。そのため、前回の先行診断の結果が正常であった場合、前回の先行診断から設定時間が経過するまで診断を行わなくても、作動装置の作動に支障が生ずる可能性は少なく、先行診断が無駄に行われず、電流が無駄に消費されることが回避される。そして、前回の先行診断の結果が正常であった場合には、設定時間の経過により診断が行われ、故障を検出することができる。前回の先行診断の結果が正常でない場合、正常時と同様に設定時間以内は先行診断を実施せず、設定時間が経過すれば診断を行うようにしてもよく、あるいは第二操作部材の操作が行われる毎に診断を行ってもよく、あるいは故障が解消されるまで診断が行われないようにしてもよい。故障が生じた場合でも診断を行うようにすれば、例えば、状況の変化に対応することができる。例えば、前回の故障診断において故障が誤って検出されたのであれば、実際には、正常であることがわかり、あるいは故障箇所が変わったり、増えたりしても検出することができる。
また、本態様によれば、作動装置が、第一操作部材が操作されたとき、診断が完了していなければ、その完了を待って作動させられる装置である場合、第二操作部材が操作されても、正常であれば、前回の先行診断から設定時間が経過していない限り先行診断は行われないため、第二操作部材の操作に応じて制御装置、あるいは制御装置および作動装置が電源に接続された状態において第一操作部材が操作され、作動装置が直ちに作動を開始することができないという事態が発生する機会を減少させ得る効果が得られる。
(5)当該電気システムが前記作動装置を複数含み、前記先行診断装置が、それら複数の作動装置の一部のものについて前記先行診断を実施し、他のものについては実施しないものである (1)項ないし (4)項のいずれか一つに記載の電気システム(請求項3,5)。
複数の作動装置の一部のものについて先行診断を実施すれば、全部について先行診断を行う場合に比較して、診断に要する時間,電流が少なくて済む。
(6)前記複数の作動装置が、車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキとにそれぞれ関連する複数のブレーキ関連作動装置を含み、前記第一操作部材が前記複数のブレーキ関連作動装置に共通の一つのブレーキ操作部材を含み、かつ、前記複数の作動装置の前記一部のものが、前記前輪ブレーキに関連する前輪ブレーキ関連作動装置を含み、前記他のものが前記後輪ブレーキに関連する後輪ブレーキ関連作動装置を含む (5)項に記載の電気システム(請求項6)。
ブレーキ関連作動装置は、例えば、ブレーキが電動ブレーキであれば、電動アクチュエータおよび駆動回路を含んで構成される。駆動回路は、制御装置の一部であると考えることもできる。第二操作部材の操作に基づいて先行診断が行われることにより、ブレーキが電動ブレーキであれば、制動力を確保すべく、ブレーキ操作部材の操作によって直ちに作動させられても、診断が未完了のままで作動させられることが少なくて済み、ブレーキが液圧ブレーキであれば、例えば、電磁弁装置等の作動装置が、診断の完了を待って作動させられるのであっても、作動遅れが少なくて済む。
車両においては、一般に、前輪ブレーキの方が後輪ブレーキより制動能力が高く、その重要な側について診断を行えば、先行診断による電流消費を小さく抑えつつ、所要制動力を確保することができる。
(7)当該電気システムが、前記作動装置として、車両の複数の前輪ブレーキに関連する複数の前輪ブレーキ関連作動装置と、複数の後輪ブレーキに関連する複数の後輪ブレーキ関連作動装置とを含み、それら複数ずつの前輪ブレーキ関連作動装置および後輪ブレーキ関連作動装置が2系統に分けられており、前記先行診断装置が、それら2系統の少なくとも一方について先行診断を実施するものである (1)項ないし (4)項のいずれか一つに記載の電気システム。
複数のブレーキ関連作動装置の全部について診断を行ってもよいが、2系統の一方のみについて行えば、電流消費を小さく抑えつつ少なくとも法定制動力を確保することができる。法定制動力は、車両の安全性の確保を考慮して決められているものであるから、本態様によれば車両の安全性を確保することができることになる。
(8)前記先行診断装置が、前記2系統のうち、先に診断を行った系統に含まれる複数のブレーキ関連作動装置の少なくとも一つに故障があれば、他方の系統についても診断を行う (7)項に記載の電気システム。
2系統の一方に故障がある場合には、それ以外の場合に比較して、他方にも故障がある可能性が高い。また、2系統の一方に故障がある場合に、万一他方にも故障があれば、安全性確保の観点から車両を走行させない方がよい場合が多い。たとえ走行させてもよい場合でも、運転者にいち早くブレーキシステム全体の故障状況を知らせることが望ましい。したがって、2系統の一方に何らかの故障がある場合には、他方についても先行診断が行われるようにすることが望ましい。
(9)前記2系統のうちの一つが、複数の前輪ブレーキ関連作動装置を含み、別の一つが複数の後輪ブレーキ関連作動装置を含む (7)項または (8)項に記載の電気システム。
(10)前記2系統がそれぞれ、車両の対角位置にある前輪ブレーキ関連作動装置と後輪ブレーキ関連作動装置とを含む (7)項または (8)項に記載の電気システム。
なお、上記 (7)項ないし(10)項に記載の各特徴は、主スイッチの操作に基づいて、車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキとにそれぞれ関連する前輪ブレーキ関連作動装置および後輪ブレーキ関連作動装置が電源に接続される車両ブレーキシステムであって、主スイッチとは異なる操作部材の操作に基づいてブレーキ関連作動装置の診断が行われるシステム、主スイッチとは異なる操作部材がブレーキ操作部材である車両用ブレーキシステムにおいて採用可能である。
(11)主スイッチの操作に基づいて、作動装置およびそれを制御する制御装置が電源に接続され、かつ、前記主スイッチとは異なる操作部材の操作に基づいて、作動装置と制御装置との少なくとも一方が電源に接続される電気システムにおいて、
前記操作部材の操作が行われた場合に、前記少なくとも一方を前記電源に接続するとともに、その少なくとも一方の診断を行う診断装置を設け、かつ、その診断装置を、少なくとも、前記操作部材の操作が前記診断の実施後設定時間以内に行われ、かつ、前回の診断の結果が正常であった場合には前記診断を行わないものとした電気システム。
診断は、作動装置と制御装置とのうち電源に接続された装置の全部について行ってもよく、一部についても行ってもよい。電源に接続された装置の少なくとも一部の診断を行うのである。
作動装置は、例えば、主スイッチの操作に基づいて直ちに作動させられるものでもよく、あるいは、主スイッチの操作に基づいて電源に接続されて作動に備えた状態とされ、作動装置を作動させる作動操作部材の操作により作動させられるものとしてもよい。
主スイッチとは異なる操作部材には、作動装置を作動させるために操作される作動操作部材や、主スイッチおよび作動操作部材の操作に先行して操作される先行操作部材等が含まれる。先行操作部材には、診断が行われる作動装置を作動させる作動操作部材以外の作動操作部材および作動操作部材以外の操作部材であって、作動操作部材の操作に先行して操作されるのが普通である作動先行操作部材が含まれる。
主スイッチとは異なる操作部材の操作は、主スイッチの操作に先行して行われてもよく、後に行われてもよい。前者であれば、診断装置は先行診断装置であり、先行診断が行われることによる効果が得られる。先行操作部材の操作によって先行診断が行われる場合、その診断は、主スイッチの操作と、診断が行われる作動装置を作動させる作動操作部材の操作との両方に先行して行われる診断であり、また、診断が行われる作動装置を作動させる作動操作部材が主スイッチの操作に先立って操作されて診断が行われる場合、この診断は、主スイッチの操作に先行する先行診断である。主スイッチとは異なる操作部材の操作が主スイッチの操作より後に行われる場合には、制御装置と作動装置との少なくとも一方の故障を診断する機会が増加する効果が得られる。さらに、本態様によれば、例えば、 (4)項に記載の作用および効果が得られる。
(12)主スイッチの操作に基づいて、車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキとにそれぞれ関連する前輪ブレーキ関連装置および後輪ブレーキ関連装置が電源に接続される車両用ブレーキシステムにおいて、
前記主スイッチとは異なる操作部材の操作に基づいて、前記前輪ブレーキ関連装置を前記電源に接続してその前輪ブレーキ関連装置の診断を行う一方、前記後輪ブレーキ関連装置については少なくとも前記診断を行わない診断装置を設けた車両用ブレーキシステム。
前輪,後輪ブレーキ関連装置には、作動装置とそれを制御する制御装置との少なくとも一方が含まれる。制御装置の診断の種類や、作動装置の診断の種類によっては、他方の状態とは無関係に実施できる場合がある。
後輪ブレーキ関連装置については、診断は行われないが、例えば、電源との接続は行ってもよい。
主スイッチとは異なる操作部材は、例えば、ブレーキ操作部材,アクセル操作部材等、車両の作動装置を作動させるために操作される作動操作部材や、解錠操作部材,ドアノブ,ドア等、主スイッチおよび作動操作部材の操作に先行して操作される作動先行操作部材でもよい。主スイッチとは異なる操作部材は、主スイッチの操作に先行して操作されてもよく、後に操作されてもよい。
車両において前輪ブレーキは、前述のように、後輪ブレーキより制動能力が高くされていることが多く、本態様によれば、診断による電流消費を小さく抑えつつ、制動力を確保することができる。
(13)主スイッチとブレーキ操作部材とのいずれが操作された場合も車両の前輪ブレーキに関連する前輪ブレーキ関連装置が電源に接続される車両用ブレーキシステムにおいて、
前記主スイッチおよび前記ブレーキ操作部材の操作よりも先行して操作される先行操作部材の操作が行われた場合に、前記電源と前記前輪ブレーキ関連装置とを接続するとともに、その前輪ブレーキ関連装置の診断を行う先行診断装置を設けた車両用ブレーキシステム。
ブレーキ操作部材には、例えば、運転者が足により操作するブレーキペダル、手によって操作するブレーキレバー等がある。
後輪ブレーキ関連装置については、先行診断を行ってもよく、行わなくてもよい。
先行操作部材は、主スイッチおよびブレーキ操作部材の操作よりも先行して操作される部材であればよく、例えば、前記作動先行操作部材、ブレーキ以外の作動装置を作動させる作動操作部材がある。
本態様によれば、電流消費の抑制,故障の増大および作動遅れの低減等、先行診断を行うことにより効果が得られるとともに、車両の制動力を確保することができる。
(14)車両に搭載された作動装置と、その作動装置を制御する制御装置と、車両の主スイッチのON操作に応じて前記作動装置および制御装置を電源に接続するとともにそれら作動装置および制御装置の診断を行う診断装置とを含む車両用電気システムにおいて、
前記診断装置に、前記主スイッチとは別の操作部材の操作に応じて前記制御装置による制御のうちで、電力消費と作動音との少なくとも一方が小さい制御の診断は行うがそれ以外の制御の診断は行わない一部診断部を設けた車両用電気システム。
「制御装置による制御」には、制御装置は作動するが、作動装置は作動させない制御も、制御装置自身が作動するとともに作動装置を作動させる制御も含まれる。
主スイッチとは別の操作部材は、例えば、(12)項に記載の主スイッチとは異なる操作部材と同様に、作動操作部材でもよく、作動先行操作部材でもよく、主スイッチのON操作に先行して操作されてもよく、後に操作されてもよい。
別の操作部材が、主スイッチのON操作に先行して操作されるものである場合、その後、主スイッチがON操作されるか否かわからないため、電力消費と作動音との少なくとも一方が小さい制御の診断のみに留めるのがよい。そのようにすれば、電力消費の無駄や騒音の発生を回避しつつ、先行診断を行うことによる効果の一部を享受することができる。
別の操作部材が、主スイッチのON操作後に操作されるものである場合には、制御装置と作動装置との少なくとも一方の故障を診断する機会が増加する効果が得られる。
(15)前記一部診断部が、前記主スイッチのOFF状態において、運転者が、車両への乗込みに伴う操作部材の操作を行った場合に一部診断を行う先行診断部を含む(14)項に記載の車両用電気システム。
(16)前記作動装置が複数であり、前記一部診断部が、それら複数の作動装置のうち一部のものについては、(14)項に記載の形態の診断を行うが、別の一部については前記少なくとも一方が大きい制御の診断をも行う(14)項または(15)項に記載の車両用電気システム。
上記「複数の作動装置のうち別の一部のもの」として、ブレーキ装置の構成要素等、車両の安全性に関連の大きい作動装置を選定すれば、診断の実行に伴う電力消費や作動音の発生をできる限り小さく抑えつつ、車両の安全性を確保することができる。
複数の作動装置の全部がブレーキ関連作動装置であれば、「複数の作動装置のうち一部のもの」は、ブレーキ関連作動装置の一部により構成され、「別の一部」は、ブレーキ関連作動装置の残りの一部により構成される。複数の作動装置が、ブレーキ関連作動装置以外の作動装置を含んで構成される場合、「複数の作動装置のうち一部のもの」は、例えば、ブレーキ関連作動装置以外の作動装置により構成され、「別の一部」は、ブレーキ関連作動装置により構成される。「複数の作動装置のうち一部のもの」および「別の一部」にそれぞれ、ブレーキ関連作動装置の一部と、ブレーキ関連作動装置以外の装置の一部とが含まれていてもよい。
(17)前記複数の作動装置が、車両の複数の車輪の回転をそれぞれ抑制するブレーキの各々に関連する複数のブレーキ関連作動装置を含み、前記先行診断部が、それら複数のブレーキ関連作動装置の一部のものを、前記複数の作動装置のうちの前記別の一部とするものである(16)項に記載の車両用電気システム。
(18)前記一部診断部が、前記主スイッチのOFF状態において、運転者が、車両への乗込みに伴う操作部材の操作を行った場合に一部診断を行う先行診断部を含み、その先行診断部が、前記複数の作動装置のうちの前記別の一部とするブレーキ関連作動装置を、前記車両への乗込みに伴う操作が行われる毎に変更する先行診断対象変更部を含む(17)項に記載の車両用電気システム。
本態様によれば、複数のブレーキ関連作動装置のうち、電力消費と作動音との少なくとも一方が大きい制御の診断が行われるものが、車両への乗込みに伴う操作部材の操作が行われる毎に自動的に変更され、その制御に関する故障が、全部のブレーキ関連作動装置について平等に診断される。
(19)前記先行診断対象変更部が、前記先行診断対象を変更するに際して、前輪の回転を抑制する前輪ブレーキの少なくとも一つに関連する前輪ブレーキ関連作動装置は必ず診断対象に含まれるようにするものである(18)項に記載の車両用電気システム。
本態様によれば、少なくとも一つの前輪ブレーキ関連作動装置について必ず診断が行われ、車両の制動力が確保される。
(20)車両に搭載された作動装置と、運転者により操作される第一操作部材と、その第一操作部材の操作に基づいて前記作動装置の作動を制御する制御装置と、それら作動装置および制御装置の診断を行う診断装置とを含む車両用電気システムにおいて、
前記診断装置を、
前記第一操作部材の操作に応じた前記制御装置および前記作動装置の作動に伴って第一の診断を行う第一診断部と、
前記第一操作部材とは別の操作部材である第二操作部材の操作に応じて、前記第一診断部により行われる診断のうち電力消費と作動音との少なくとも一方が小さい診断は行うが、それ以外の診断は行わない第二診断部と
を含むものとした車両用電気システム。
第一操作部材は、作動装置を作動させるために操作される操作部材であり、第二操作部材は第一操作部材とは別の操作部材であれば何でもよい。例えば、主スイッチでもよく、ドア,ドアノブ,解錠操作部材等、第一操作部材の操作に先行して操作される作動先行操作部材でもよく、あるいは第一操作部材の操作に基づいて作動する装置以外の作動装置を操作させる作動操作部材でもよい。
第二操作部材の操作が第一作動部材の操作に先行して行われる場合には、電力消費の無駄を回避しつつ、作動装置の作動遅れが低減され、あるいは診断が完了していない状態で作動装置が作動させられる可能性が少なくなる効果が得られ、後に行われれば、制御装置と作動装置との少なくとも一方の故障を診断する機会が増加する効果が得られる。
(15)項ないし(19)項に記載の特徴は本項の車両用電気システムにも適用可能である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態である車両用電気システムを図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の車両用電気システムは、図1および図2に示すように、電気制御ブレーキシステム10,電気制御エンジンシステム12を含んで構成されている。電気制御ブレーキシステム10は、図1に示すように、左,右の前輪20,22および左,右の後輪24,26にそれぞれ設けられた電動ブレーキ28,30,32,34と、これら電動ブレーキ28〜34の作動状態を制御するブレーキ制御装置36とを備えている。
【0009】
前輪側に設けられた電動ブレーキ28,30はディスクブレーキであり、左,右前輪20,22と共に回転する回転体たるブレーキディスクに、摩擦材たる摩擦パッドが電動モータ38,40の駆動によって押し付けられることにより、回転が抑制される。後輪側に設けられた電動ブレーキ32,34はトラムブレーキであり、左,右後輪24,26と共に回転する回転体たるドラムにブレーキシューに設けられた摩擦材たるブレーキライニングが電動モータ42,44の駆動によって押し付けられることにより回転が抑制される。電動モータ38〜44により加圧部材が前進,後退させられ、摩擦材を回転体に押し付け、あるいは離間を許容するのである。左,右後輪24,26には、パーキングブレーキ46,48が設けられている。パーキングブレーキ46,48は、本実施形態においては、パーキングブレーキ操作部材たるパーキングブレーキレバー50を引くことによりワイヤ52が引っ張られ、作動させられる。
【0010】
上記電動モータ38〜44は、前記ブレーキ制御装置36によって制御される。ブレーキ制御装置36は、電気制御ブレーキシステム全体を制御する主制御装置60と、電動モータ38〜44をそれぞれ制御する電動モータ制御装置62,64,66,68とを含み、電源としてのバッテリ70から供給される電気エネルギによって作動し、駆動回路72,74,76,78に駆動指令信号を出力する。駆動回路72,74,76,78は、バッテリ70から供給される電流を、電動モータ制御装置62,64,66,68からの駆動指令信号に基づいて制御し、電動モータ38〜44を駆動する。
【0011】
主制御装置60は、CPU,ROM,RAMおよび入・出力部を有するコンピュータを主体として構成されており、前記パーキングブレーキレバー50の操作を検出するパーキングブレーキスイッチ80,ブレーキ操作部材たるブレーキペダル82の踏込みを検出するブレーキスイッチ84,ブレーキペダル82の踏力を検出する踏力センサ86,ブレーキペダル82の踏込ストロークを検出するストロークセンサ88,図示は省略するが、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ,Gセンサ,ヨーレイトセンサ等、通常制動制御,アンチロック制御,トラクション制御,ビークルスタビリティ制御,アダプティブクルーズコントロール等を行うための各種検出器が接続されている。アダテプティブクルーズコントロールは、前方を走行する車両との車間距離が設定距離以下になったとき、ブレーキを作動させ、車間距離を調節する制御である。
【0012】
踏力センサ86,ストロークセンサ88はそれぞれ、操作量センサの一種である操作力センサ,操作ストロークセンサであり、ブレーキ操作部材の操作量たる踏力,踏込ストロークを検出し、本実施形態においては、ストロークシミュレータ90に設けられている。ストロークシミュレータ90はブレーキペダル82に設けられ、操作力に応じた操作ストロークが得られるように構成されており、運転者は現実に近い操作感覚を得ることができる。主制御装置60のコンピュータは、通常制動制御等、各種制御時に、踏力センサ86,ストロークセンサ88等の検出信号等に基づいて、制御目標値、本実施形態では、電動ブレーキ28〜34の駆動により、加圧部材が摩擦パッド,ブレーキライニングをディスクロータ,ドラムに押し付ける加圧力を演算する。
【0013】
電動モータ制御装置62〜68はそれぞれ、CPU,ROM,RAMおよび入・出力部を有するコンピュータを主体として構成されており、入・出力部には、電動モータ38〜44のステータに対するロータの相対位置を検出するエンコーダ94,ステータのコイルに流れる電流を検出する電流センサ96,電動モータ38〜44の駆動に伴って摩擦パッド,ブレーキライニングに加えられる加圧力を検出する加圧力センサ98等が接続されている。加圧力センサ98は、電動モータ38〜44によって前進,後退させられる加圧部材に加えられる加圧力(摩擦パッド,ブレーキライニングに加えられる加圧力)を検出するものである。
【0014】
上記主制御装置60,電動モータ制御装置62〜68の間においては、CAN(Car Area Network)によって通信が行われ、電動モータ制御装置62〜68は、主制御装置60から供給される加圧力の目標値(制御目標値),センサ94,96,98等の検出値等に基づいて駆動回路72〜78に駆動指令信号を出力し、その駆動指令信号に基づいて駆動回路72〜78が電動モータ38〜44を駆動する。
【0015】
電気制御ブレーキシステム10とバッテリ70とは、電源スイッチ装置たるバッテリスイッチ110により接続され、遮断される。バッテリスイッチ装置110は、互いに並列に設けられた2つのリレー112,114を含む。リレー112は、イグニッションスイッチ116がON操作されると励磁されるコイル118と、コイル118の励磁によりOFF状態からON状態に切り換えられる断接部120とを含むものである。リレー114は、ブレーキペダル82が踏み込まれ、ブレーキスイッチ84がON状態に切り換えられると励磁されるコイル122と、コイル122の励磁によりOFF状態からON状態に切り換えられる断接部124とを含む。したがって、イグニッションスイッチ116がON操作され、あるいはブレーキペダル82が踏み込まれれば、主制御装置60,電動モータ制御装置62〜68,駆動回路72〜78がバッテリ70に接続され、イグニッションスイッチ116がOFF操作され、ブレーキペダル82の踏込みが解除されれば、バッテリ70との接続が遮断される。イグニッションスイッチ116がON操作されなくても、ブレーキペダル82が踏み込まれれば、主制御装置60等はバッテリ70に接続されるのであり、主制御装置60,電動モータ制御装置62〜68および駆動回路72〜78は、バッテリ70との接続,遮断を行うスイッチ装置を共用していると考えることができる。主制御装置60等がバッテリ70と接続されることをバッテリ接続と称する。なお、ブレーキスイッチ84,イグニッションスイッチ116は、それらがそれぞれON状態になることによりコイル118,122に通電させるとともに、主制御装置60,後述するエンジン制御装置へON信号を出力する。
【0016】
電気制御ブレーキシステム10において、当該システムを作動させるために操作される操作部材はブレーキペダル82であり、主制御装置60のコンピュータは、ブレーキペダル82の踏込みあるいはイグニッションスイッチ116のON操作の他に、車両を走行,停止させる際に行われる操作、例えば、本実施形態においては、パーキングブレーキレバー50のパーキングブレーキ46,48を作動させる操作,アクセルペダル130(図2参照)の踏込み,クラッチペダル132の踏込み,ステアリングホイール134の操作,シートベルト136の着用によってバッテリ70に接続されるとともに、運転者の車両への乗込み操作、例えば、本実施形態においては、車両のドア138の開操作,ドアキー140によるドア138のロック解除操作によってもバッテリ70に接続される。これらの操作が行われたことはそれぞれ、パーキングブレーキスイッチ80,アクセルスイッチ146,クラッチスイッチ148,ステアリングスイッチ150,シートベルト着用スイッチ152,ドア開閉スイッチ154,ドアロックスイッチ156が閉じられ、ON信号を出力することによって検出され、その検出信号に基づいて主制御装置60に設けられたハード回路が主制御装置60のコンピュータとバッテリ70とを接続する状態となる。このハード回路は、主制御装置60のコンピュータからの指令信号に基づいて遮断状態とされる。
【0017】
主制御装置60はまた、電動モータ制御装置62〜68,駆動回路72〜78とバッテリ70とを接続し、遮断するハード回路を備えており、運転者の車両への乗込み操作によって主制御装置60のコンピュータがバッテリ70に接続され、電流が供給されれば、そのコンピュータは、電動モータ制御装置62〜68,駆動回路72〜78とバッテリ70とを接続,遮断するハード回路を接続状態とする。コンピュータはまた、このハード回路に指令信号を出力して電動モータ制御装置62〜68および駆動回路72〜78とバッテリ70との接続を遮断する。
【0018】
駆動回路72〜78にはそれぞれ、図示は省略するが、バッテリ70からモータ38〜44への電流の供給を許容,遮断するスイッチが設けられており、このスイッチは、電動モータ制御装置62〜68からの制御信号に基づいて断,接される。駆動回路72〜78は、本実施形態においては、電動モータ制御装置62〜68からの駆動指令信号に基づいて電圧のパルス幅変調制御を行い、モータ38〜44に印加される電圧を制御する。制御装置60〜68,駆動回路72〜78がバッテリ70に接続されれば、電動モータ38〜44は、駆動回路72〜78を介して間接にバッテリ70に接続され、電動モータ制御装置62〜68および駆動回路72〜78の制御により実際に電流が供給され、作動させられる。
【0019】
なお、本実施形態においてドアロック装置は、電動モータを駆動源とし、電動モータの作動によりドア138をロックし、あるいはロックを解除するように構成されるとともに、ドアキー140は遠隔操作機能を備えており、人間がドアキー140をキー穴に差し込んで操作することによってドア138がロックされ、あるいはロックが解除されるとともに、ドアキー140をキー穴に差し込んで操作しなくても、遠隔操作によって電動モータを作動させ、ドア138をロックし、あるいはロックを解除し得るようにされている。
【0020】
電気制御エンジンシステム12は、図2に示すように、エンジン制御装置170,エンジン制御装置170により制御される種々の装置、例えば、スロットルバルブ装置172,燃料噴射装置174,点火装置176等を含んで構成されている。エンジン制御装置170は、CPU,ROM,RAMおよび入・出力部を有するコンピュータを主体とするものであり、変速機の変速操作を行うためのシフトレバー178の他、アクセルスイッチ146を始めとし、図示は省略するが、スロットルポジションセンサ,アクセル開度センサ,吸気温センサ,点火装置176のカムポジションセンサ等、各種検出器が接続されており、これら検出器の検出信号に基づいてスロットルバルブ装置172等に制御信号を出力する。スロットルバルブ装置172等はそれぞれ、図示は省略するが、駆動回路と、駆動回路によって駆動される被駆動部とを含む。例えば、スロットルバルブ装置172は、電動モータによって駆動されるスロットルバルブを含み、駆動回路は電動モータへの電流供給を制御し、スロットルバルブを作動させる。
【0021】
電気制御エンジンシステム12とバッテリ70とは、電源スイッチ装置たるバッテリスイッチ装置180によって接続され、遮断される。バッテリスイッチ装置180は、前記バッテリスイッチ装置110と同様に、イグニッションスイッチ116がON操作されると励磁されるコイル118と、コイル118の励磁によりOFF状態からON状態に切り換えられる断接部120とを含むリレー112と、アクセルペダル130が踏み込まれ、アクセルスイッチ146がON状態に切り換えられると励磁されるコイル182およびコイル182の励磁によりOFF状態からON状態に切り換えられる断接部184を含むリレー186とを有する。したがって、イグニッションスイッチ116のON操作と、アクセルペダル130の踏込みとのいずれか一方によって電気制御エンジンシステム12、すなわちエンジン制御装置170,スロットルバルブ装置172等の各駆動回路がバッテリ70に接続され、イグニッションスイッチ116のOFF操作およびアクセルペダル130の踏込み解除によって接続が遮断される。スロットルバルブ装置172等の各被駆動部は、駆動回路を介して間接にバッテリ70と接続される。エンジン制御装置170およびスロットルバルブ装置172等の各駆動回路は、バッテリ70との接続,遮断を行うスイッチ装置を共用していると考えることができる。アクセルスイッチ146は、それがON状態になることによりコイル182に通電させるとともに、主制御装置60,エンジン制御装置170へON信号を出力する。
【0022】
エンジン制御装置170のコンピュータは、アクセルペダル130の踏込みあるいはイグニッションスイッチ116のON操作の他に、前記電気制御ブレーキシステム10のコンピュータと同様に、車両を走行,停止させる際に行われる操作あるいは運転者の車両への乗込み操作に基づいてハード回路が接続状態となり、バッテリ70に接続される。このハード回路は、コンピュータからの指令信号に基づいて遮断状態とされる。電気制御エンジンシステム12においては、当該システムを作動させるために操作される操作部材がアクセルペダル130であり、アクセルペダル130の踏込みおよびイグニッションスイッチ116のON操作の他に、車両を走行,停止させる際に行われる操作は、アクセルペダル130の踏込みに代えてブレーキペダル82の踏込みを含むことを除いて、電気制御ブレーキシステム10におけると同じである。
【0023】
エンジン制御装置170はまた、スロットルバルブ装置172,燃料噴射装置174,点火装置176等の各駆動回路とバッテリ70とを接続するハード回路を備えており、エンジン制御装置170のコンピュータがバッテリ70に接続され、電源が投入されれば、コンピュータは、上記ハード回路を、スロットルバルブ装置172等の各駆動回路とバッテリ70とを接続する状態とする。コンピュータはまた、ハード回路に指令信号を出力してスロットルバルブ装置172等の各駆動回路とバッテリ70との接続を遮断する。
【0024】
電気制御ブレーキシステム10の主制御装置60のコンピュータのROMには、図3,図4にフローチャートで表すブレーキ制御ルーチンを始めとする種々のルーチンが記憶され、RAMには、図6に示すように、車両乗込・走行・停止操作実行フラグ等がワーキングメモリと共に設けられている。電気制御エンジンシステム12のエンジン制御装置170のコンピュータのROMには、図5にフローチャートで表すエンジン制御ルーチンを始めとする種々のルーチンが記憶され、RAMには、図7に示すように、車両走行・停止操作実行フラグ等がワーキングメモリと共に設けられている。
【0025】
まず、ブレーキ制御ルーチンを説明する。
このルーチンは、主制御装置60のコンピュータがバッテリ70に接続され、電流が供給されることにより開始される。主制御装置60のコンピュータのバッテリ70への接続時には、電動モータ制御装置62〜68および駆動回路72〜78もバッテリ70に接続される。バッテリ70は、本実施形態においては、 (a)イグニッションスイッチ116のON操作, (b)ブレーキペダル82の踏込み操作, (c)(a),(b) 以外の操作であって、車両を走行,停止させる際に行われる操作, (d)運転者の車両への乗込み操作のいずれかが行われた場合に接続される。
【0026】
バッテリ接続が、 (c)あるいは (d)の操作によって為された場合には、電動モータ38〜44について断線・短絡確認が行われるとともに、電動ブレーキ28〜34の作動確認が行われる。断線・短絡確認は、電力消費および作動音が小さい確認処理であり、作動確認は、電力消費および作動音が大きい確認処理であり、電気制御ブレーキシステム10においては、イグニッションスイッチ116がON操作されておらず、ブレーキペダル82が踏み込まれていない状態において主制御装置60等がバッテリ70に接続されれば、電力消費および作動音が少ない確認処理も、大きい確認処理も両方とも行われるのである。
【0027】
(c)あるいは (d)の操作によってバッテリ接続が為された場合における電動ブレーキ28〜34の作動確認時には、電動モータ38〜44は、電動ブレーキ28〜34が作動することを確認し得る程度の小さいブレーキ作動力(加圧部材が摩擦材を回転体に押し付ける力)が生ずる程度に作動させられる。また、作動確認は、電動ブレーキ28〜34を2系統に分けて行われる。本実施形態において一方の系統は、左前輪20,右後輪26にそれぞれ設けられた電動ブレーキ28,34を含み、他方の系統は、右前輪22,左後輪24にそれぞれ設けられた電動ブレーキ30,32を含み、2系統の一方について作動確認が行われ、故障があれば、他方の系統についても作動確認が行われる。車両の対角線上に位置する車輪に設けられた電動ブレーキを対として作動確認が行われるのである。また、2系統のうち、少なくとも、前回の作動確認実行時、すなわち前回のバッテリ接続時に初めに作動確認が行われた系統とは別の系統について作動確認が行われる。
【0028】
バッテリ接続が、 (b)、すなわちブレーキペダル82の踏込みによって為されたのであれば、電動モータ38〜44の断線・短絡確認および電動ブレーキ28〜34の作動確認が行われず、ブレーキペダル82の踏込みに基づいて電動ブレーキ28〜34が作動させられるとともに、常時、故障診断が行われる。
バッテリ接続が、 (a)、すなわちイグニッションスイッチ116のON操作によって為されたのであれば、電動モータ38〜44の断線・短絡確認および電動ブレーキ28〜34の作動確認が行われる。
【0029】
フローチャートに基づいて説明する。車両が停止し、運転者が降りた状態から車両が走行させられる場合、まず、運転者が車両に乗り込み、それによって電気制御ブレーキシステム10,電気制御エンジンシステム12等がバッテリ70に接続されるのが普通であり、運転者の車両への乗込み操作によってバッテリ70に接続された場合を、まず、説明する。ブレーキ制御ルーチンのステップ1(以下、S1と記載する。他のステップについても同じ。)においてブレーキ操作があったか否か、すなわちブレーキペダル82が踏み込まれたか否かの判定が行われる。この判定は、ブレーキスイッチ84の検出信号に基づいて行われるが、ここではブレーキペダル82が踏み込まれていないため、S1の判定はNOになってS2が実行され、イグニッションスイッチ116がON操作されているか否かの判定が行われる。この判定もNOであり、S3が実行され、主制御装置60等がブレーキペダル82の踏込みおよびイグニッションスイッチ116のON操作以外の操作に基づいてバッテリ70と接続されてから所定時間が経過したか否かの判定が行われる。この判定は所定時間が経過するまでNOであり、S4が実行される。
【0030】
S4においては、イグニッションスイッチ116のON操作およびブレーキペダル82の踏込み以外の操作であって、運転者の車両への乗込み操作あるいは車両を走行,停止させる際の操作が行われたか否かの判定が行われる。運転者の車両への乗込み操作の有無は、ドア開閉スイッチ154およびドアロックスイッチ156の検出信号に基づいて、ドアロックの解除とドア138の開操作との少なくとも一方が行われたか否かにより判定される。ここでは、簡単のために、ドアロックの解除とドア138の開操作との少なくとも一方の実行により、運転者の車両への乗込み操作があったとするが、ドアロックの解除およびドア138の開操作は、運転者が車両に乗り込む場合のみならず、降りる場合にも為されるため、より確実に運転者の車両への乗込みを検出するために、別の条件を加え、その条件が満たされた場合に運転者の車両への乗込み操作が行われたとすることが望ましい。例えば、運転席に人間がいるか否かを乗込み条件とする。運転者が車両から降りるのであれば、運転席に人間はいなくなり、乗るのであれば運転席におり、それにより生ずる違いを検出するのであり、例えば、運転席に加えられる荷重に基づいて判定する。運転者が車両から降りるのであれば、座席から立つため荷重は小さく、あるいは0になり、車両に乗り込むのであれば、座席に座るため荷重が大きくなり、荷重センサを設けて運転席に加えられる荷重を検出し、その検出結果を、ドアロックの解除等と併せて運転者の車両への乗込みを判定する。
【0031】
車両を走行,停止させる際の操作が行われたか否かは、本実施形態では、パーキングブレーキレバー50の操作,アクセルペダル130の踏込み,クラッチペダル132の踏込み,ステアリングホイール134の操作,シートベルト136の着用のうちのいずれか一つが行われたか否かにより判定され、パーキングブレーキスイッチ80等の検出信号に基づいて判定が行われる。
【0032】
運転者の車両への乗込み操作が行われていれば、S4の判定はYESになり、S5〜S22またはS5〜S12,S23〜S32が実行され、電動モータ38〜44の断線,短絡の確認および電動ブレーキ28〜34の作動確認が行われる。ブレーキペダル82の踏込みおよびイグニッションスイッチ116のON操作に先行して電動ブレーキ28〜34および電動モータ38〜44の故障診断が行われるのである。なお、S4の判定が最初にYESになるとき、コンピュータのRAMに設けられた車両乗込・走行・停止操作実行フラグがセットされ、運転者の車両への乗込み操作があったことが記憶される。車両を走行,停止させる際の操作が行われた場合も同じである。
【0033】
断線・短絡の確認処理および作動確認処理に要する時間はそれぞれ、当該ブレーキ制御ルーチンの1回の実行サイルタイムより長く、確認処理は、この実行サイクルタイムにより決まる一定時間分ずつ分割して行われる。確認処理が一定量ずつ行われては中断されて次のステップが実行され、次に確認処理が実行されるとき、前回のステップ実行時に行われた処理の続きが行われるのである。そのため、断線・短絡確認処理あるいは作動確認処理中にイグニッションスイッチ116がONにされたか否か、あるいはブレーキペダル82が踏み込まれたか否かの判定を行うことができ、それらの実行が検出されれば、それぞれに応じた処理を行うことができる。
【0034】
まず、S5において、断線・短絡の確認が完了したか否かの判定が行われる。断線,短絡の確認が完了すれば、コンピュータのRAMに設けられた断線・短絡確認完了フラグがONにセットされるようにされており、S5の判定は、断線・短絡確認完了フラグがセットされているか否かにより行われる。断線・短絡の確認が完了していなければ、S5の判定はNOになってS6が実行され、断線・短絡の確認処理が行われる。断線および短絡の確認は、本実施形態では、回路に微小な電流あるいは電圧を印加し、それにより得られる電流を電流計により検出し、検出された電流が上限値より大きければ短絡しており、下限値より小さければ断線しており、下限値以上であり、上限以下であれば短絡も断線も生じていないとされる。
【0035】
断線・短絡確認処理が一定時間行われたならば、確認処理は中断され、S7が実行されて電動ブレーキ28〜34の断線・短絡の確認が完了したか否かの判定が行われる。S6において実行が予定されている確認処理の全部が行われていなければ、S7の判定はNOになってルーチンの実行は終了する。まず、断線・短絡確認処理が行われ、それが完了したならば、作動確認処理が行われるようにされているのである。
【0036】
S4の判定が最初にYESになるとき、車両乗込・走行・停止操作実行フラグがセットされ、運転者の車両への乗込みが記憶されるため、乗込み操作が終了してもS4の判定はYESになって断線・短絡確認処理が行われる。車両を走行,停止させる際の操作が行われた場合も同じである。そして、断線・短絡確認が完了すれば、S7の判定はYESになってS8が実行され、断線・短絡確認完了フラグがセットされるとともに、診断結果が断線・短絡確認結果メモリに記憶される。断線,短絡がなければ、そのことが記憶され、あれば、断線,短絡箇所等のデータが記憶される。
【0037】
断線・短絡の確認結果は、例えば、車両駆動時や制動時に用いられる。例えば、3つの以上の電動モータに断線,短絡が生じていて、3輪以上について電動ブレーキを正常に作動させることができないのであれば、車両が走行させられず、1輪または2輪について電動ブレーキを作動させることができないのであれば、車両の走行速度の上限が制限される。これらの処理は、アクセルペダル130の踏込みに基づいて車両が駆動されるとき、断線・短絡確認結果メモリに記憶された確認結果に基づいて行われる。診断結果の制動時における利用は、後に説明する。
【0038】
次いでS9が実行され、作動確認が完了したか否かの判定が行われる。この判定は、作動確認完了フラグがONにセットされているか否かにより行われ、作動確認完了フラグがセットされていなければ、S9の判定はNOになってS10が実行され、右前輪22,左後輪24(図3および図4にはFR,RLで表されている)にそれぞれ設けられた電動ブレーキ30,32の少なくとも一方について故障があるか否かの判定が行われる。この判定は、右前輪ブレーキ故障フラグ,左後輪ブレーキ故障フラグの少なくとも一方がセットされているか否かにより行われる。電動ブレーキ30,32のいずれにも故障がなければ、S10の判定はNOになってS11が実行され、左前輪20,右後輪26(図3および図4にはFL,RRで表されている)にそれぞれ設けられた電動ブレーキ28,34の少なくとも一方について故障があるか否かの判定が行われる。この判定は、左前輪ブレーキ故障フラグ,右後輪ブレーキ故障フラグがセットされているか否かにより行われる。
【0039】
電動ブレーキ28,34のいずれにも故障がなければ、左前輪,右後輪の各ブレーキ故障フラグはOFFにリセットされており、S11の判定はNOになってS12が実行され、前回の制御装置60等のバッテリ接続時における作動確認が右前輪22に設けられた電動ブレーキ30について行われたか否かの判定が行われる。いずれの電動ブレーキについて作動確認が為されたかは、作動確認実行完了時にコンピュータのRAMに設けられた作動確認実行ブレーキメモリに記憶される。このメモリの内容は、コンピュータとバッテリ70との接続が遮断されてもバックアップ電源により維持されるとともに、初期設定においてクリアされることがないようにされ、S12の判定に用いられる。
【0040】
前回、電動ブレーキ30について作動確認が行われていなければ、S12の判定はNOになってS13が実行され、右前輪22,左後輪24にそれぞれ設けられた電動ブレーキ30,32について作動確認が実行される。S13の作動確認が実行されるのは、イグニッションスイッチ116がOFFであって、ブレーキペダル82が踏み込まれていない場合であり、作動確認は、電動ブレーキ30,32を、作動するか否かを確認し得る程度に作動させることにより行われる。例えば、電動モータ40,42に、予め定められた大きさの電流であって、電動ブレーキ30,32に小さいブレーキ作動力を生じさせる程度の電流を供給し、供給電流に対応する大きさの加圧力が得られるか否かにより行われる。供給電流開始から設定時間が経過した状態において、加圧力センサ98により検出される加圧力を、供給電流に基づいて設定された設定加圧力と比較し、設定加圧力とほぼ等しい加圧力が得られれば、電動ブレーキ30,32に故障はなく、設定加圧力より小さければ、故障があると判定される。
【0041】
作動確認は、電動モータ40,42の回転速度,回転数の増加勾配に基づいて行ってもよい。例えば、電動モータ40,42に一定の電流を供給する状態において、エンコーダ94の検出信号に基づいて電動モータ40,42の単位時間あたりの回転数を検出し、その回転数を、供給電流に基づいて設定された設定回転数と比較することにより行うのである。摩擦材が回転体に当接する前の状態においては、電動モータ40,42の回転数は供給電流に対応するため、回転数を設定回転数と比較し、設定回転数とほぼ等しい回転数が得られれば、電動ブレーキ30,32に故障はないと判定される。あるいは、電動モータ40,42の回転速度に基づいて確認を行ってもよい。摩擦材が回転体に当接すれば、電動モータ40,42の回転速度は減少し、加圧力が増大するほど小さくなる。そのため、電動モータ40,42に一定の電流を供給しつつ設定時間毎に回転速度を取得し、相前後して取得される2つの回転速度のうち、後に取得された回転速度の、前に取得された回転速度に対する変化率が設定値を超えて小さくなったならば、摩擦材が回転体に当接したとし、その状態から更に、電動モータ40,42が一定角度回転した状態における回転速度が設定値より小さければ、電動ブレーキ30,32に故障はなく、摩擦材が回転体に当接して制動トルクが生じていると判定される。
【0042】
作動確認が一定時間行われたならば中断されてS14が実行され、電動ブレーキ30,32の少なくとも一方に故障があるか否かの判定が行われる。電動ブレーキ30,32の作動確認が完了していない状態では、電動ブレーキ30あるいは32に故障があるか否かはわからず、故障がないとされてS14の判定はNOになり、S15において作動確認が完了したか否かの判定が行われる。S13において行われる作動確認処理の全部が行われていなければ、S15の判定はNOになってルーチンの実行は終了する。
【0043】
断線・短絡確認が完了しているため、次にS5が実行されるとき、その判定はYESになり、電動ブレーキ30,32の作動確認が完了するまで、S1〜S5,S9〜S15が繰返し実行される。そして、電動ブレーキ30,32について作動確認が完了し、電動ブレーキ30,32のいずれにも故障がなければ、S14の判定はNOになる。そして、作動確認が完了したため、S15の判定がYESになってS16が実行され、作動確認完了フラグがセットされるとともに、作動確認の行われた電動ブレーキ(ここでは電動ブレーキ30,32)が作動確認実行ブレーキメモリに記憶される。この際、先に記憶されていたデータは消去されて新たにデータが記憶される。作動確認実行ブレーキメモリの内容は、作動確認が完了するまで、前回の作動確認実行時に作動を確認された電動ブレーキを記憶する内容のままとされているのであり、それにより、電動ブレーキ30,32について作動確認が行われている間、S12の判定がNOになる。作動確認完了フラグのセットにより、次にS9が実行されるとき、その判定がYESになり、以後、S1〜S5,S9が繰返し実行される。
【0044】
2系統の電動ブレーキのうち、一方の系統について故障がなければ、他方の系統については作動確認が行われないのであるが、少なくとも2つの電動ブレーキであって、車両の対角位置にある電動ブレーキが正常に作動すれば、最大、車両全体に予定された制動力の半分が得られるとともに、車両の走行安定性をそれほど損なうことなく、車両を制動することが可能であるため、1系統の作動確認に止めるのであり、それにより、作動確認に消費される電流が少なくて済むとともに、確認時の作動音が少なくて済む。
【0045】
それに対し、電動ブレーキ30,32の少なくとも一方に故障があれば、S14の判定がYESになってS17が実行され、右前輪22,左後輪24の各ブレーキ故障フラグの少なくとも一方がセットされた後、S18が実行され、左前輪20,右後輪26にそれぞれ設けられた電動ブレーキ28,34について作動確認が行われる。この作動確認は、電動ブレーキ30,32の場合と同様に行われ、S19において電動ブレーキ28,34の少なくとも一方に故障があるか否かが判定される。作動確認が完了していない時点では、S19の判定はNOになり、S20において電動ブレーキ28,34について作動確認が完了したか否かの判定が行われる。この判定は、作動確認が完了するまでNOであり、ルーチンの実行は終了する。
【0046】
右前輪22,左後輪24の各ブレーキ故障フラグの少なくとも一方がセットされているため、次にS10が実行されるとき、その判定はYESになってS18が実行される。そして、電動ブレーキ28,34について作動確認が完了し、いずれにも故障がなければ、S19の判定はNOになり、S20の判定はYESになってS16が実行され、作動確認完了フラグのセット等が行われる。また、電動ブレーキ28,34の少なくとも一方に故障があれば、S19の判定がYESになってS21が実行され、左前輪ブレーキ故障フラグと右前輪ブレーキ故障フラグとの少なくとも一方がセットされた後、S22が実行され、作動確認完了フラグがセットされ、作動確認実行ブレーキメモリに、初めに作動確認が行われた系統の電動ブレーキ(ここでは電動ブレーキ30,32)が記憶されるとともに、車両の走行が禁止される。2系統の電動ブレーキに共に故障があれば、車両の走行が禁止されるのであり、例えば、コンピュータのRAMに設けられた走行禁止フラグがセットされて、2系統の電動ブレーキの故障ないし車両の走行禁止が記憶される。
【0047】
S12が実行されるとき、作動確認実行ブレーキメモリに右前輪22に設けられた電動ブレーキ30が記憶されていなければ、S12の判定がYESになり、S23〜S32がS13〜S22と同様に実行され、まず、左前輪20,右後輪26に設けられた電動ブレーキ28,34について作動確認が行われる。電動ブレーキ28〜34のうち、電力消費および作動音の大きい作動確認が行われるものが、運転者の車両への乗込み操作あるいは車両を走行,停止させる際の操作によるバッテリ接続が為される毎に自動的に変更されるのである。そして、電動ブレーキ28,34のいずれについても故障がなければ、S26が実行され、作動確認完了フラグがセットされるとともに、作動確認実行ブレーキメモリに作動確認が行われた電動ブレーキ、ここでは電動ブレーキ28,34が記憶される。電動ブレーキ28,34の少なくとも一方に故障があれば、右前輪22,左後輪24に設けられた電動ブレーキ30,32について作動確認が行われる。これらについても故障があれば、故障した電動ブレーキについてブレーキ故障フラグがセットされるとともに、車両の走行が禁止される。また、作動確認実行ブレーキメモリに、初めに作動確認が行われた電動ブレーキである電動ブレーキ28,34が記憶される。そのため、次に、運転者の車両への乗込み等によって主制御装置60等がバッテリ70に接続され、作動確認が行われるとき、S12の判定がNOになって右前輪22,左後輪24の電動ブレーキ30,32について作動確認が行われる。
【0048】
なお、1系統に故障があって2系統について作動確認が行われた場合、作動確認実行ブレーキメモリには、最初に作動確認が行われた系統の電動ブレーキのみならず、全部の電動ブレーキを記憶するようにしてもよい。あるいは、S12の判定が行われる電動ブレーキ、すなわち運転者の車両への乗込み操作あるいは車両を走行,停止させる際の操作によるバッテリ接続が為される毎に、作動確認を行う診断対象装置たる診断対象ブレーキを変更するための電動ブレーキについて、作動確認が行われた場合にはフラグをONにセットし、行われない場合にはOFFにリセットすることにより、作動確認が行われたか否かを記憶してS12の判定が行われ、診断対象ブレーキが変更されるようにしてもよい。例えば、S16あるいはS22において右前輪22の電動ブレーキ30について設けられた右前輪電動ブレーキ作動確認フラグをONにセットし、S26あるいはS32においてリセットするようにするのである。
【0049】
以上、運転者の車両への乗込み操作によって主制御装置60等がバッテリ70に接続された場合を説明したが、バッテリ接続が、イグニッションスイッチ116のON操作およびブレーキペダル82の踏込み操作以外に、車両を走行,停止させる際に行われる操作によって為された場合にも、S4の判定がYESになる。この場合にも、運転者の車両への乗込み操作によってバッテリ70と接続された場合と同様に、電動モータ38〜44の断線・短絡確認処理および電動ブレーキ28〜34の作動確認処理が行われる。運転者の車両への乗込み操作あるいは車両を走行,停止させる際に行われる操作がいずれも行われないにもかかわらず、コンピュータ等がバッテリ70と接続されてブレーキ制御ルーチンが開始された異常な場合には、S4の判定はNOになってルーチンの実行が終了し、異常なバッテリ接続によって断線・短絡確認等が行われることが回避される。
【0050】
イグニッションスイッチ116がON操作されることなく、バッテリ接続から所定時間が経過すれば、S3の判定がYESになってS42が実行され、バッテリ遮断指令信号が出力される。所定時間は、断線・短絡確認処理および作動確認処理に要する時間よりも長く設定されている。運転者の車両への乗込み操作あるいは車両を走行,停止させる際に行われる操作により、主制御装置60等がバッテリ70と接続されれば、断線・短絡確認および作動確認が行われるため、本実施形態においては、それら確認、すなわち先行診断が実施が開始されてから所定時間内にイグニッションスイッチ116の操作が行われない場合に、主制御装置60等とバッテリ70との接続が遮断されるのであり、イグニッションスイッチ116が予め定められたものである。バッテリ遮断指令信号の出力により、主制御装置60のコンピュータとバッテリ70とのハード回路による接続が遮断されるとともに、電動モータ制御装置62〜70,駆動回路72〜80とバッテリ70とのハード回路による接続が遮断される。S42においてはまた、各種フラグをOFFにリセットする等の終了処理が行われる。
【0051】
運転者の車両への乗込み操作あるいは車両を走行,停止させる際に行われる操作によるバッテリ接続後、所定時間が経過する前にイグニッションスイッチ116がON操作されれば、S2の判定がYESになってS33が実行され、断線・短絡確認処理が完了しているか否かの判定が行われる。この判定は、断線・短絡確認完了フラグがセットされているか否かにより行われ、運転者の車両への乗込み操作等により行われる断線・短絡確認が完了していれば、S33の判定はYESになってS37が実行され、作動確認が完了しているか否かの判定が行われる。この判定は、作動確認完了フラグがセットされているか否かにより行われ、運転者の車両への乗込み操作等により行われる作動確認が完了していれば、S37の判定はYESになってS41のブレーキ制御が実行される。ここでは、ブレーキペダル82が踏み込まれていないため、電動ブレーキ28〜34は作動させられない。
【0052】
断線・短絡確認処理が完了していなければ、S33の判定がNOになり、S34において断線・短絡確認処理がS6におけると同様に行われる。そして、S35において、S34において予定されている断線・短絡確認処理の全部が行われたか否かが判定され、全部が行われていなければ、S35の判定はNOになってルーチンの実行は終了する。なお、イグニッションスイッチ116のON操作が、S6の断線・短絡確認処理の実行中に行われたのであれば、S34の確認処理は、S6の続きから行われる。断線・短絡確認処理は最初から行ってもよい。
【0053】
断線・短絡確認が完了するまで、S1,S2,S33〜S35が繰り返し実行される。断線・短絡確認が完了すれば、S35の判定はYESになってS36が実行され、断線・短絡確認完了フラグがセットされる。次いでS37が実行され、作動確認が完了したか否かの判定が行われる。作動確認が完了していなければ、S37の判定はNOになってS38が実行され、作動確認処理が行われる。S38の作動確認処理は、S10〜S32と同様に行われる。イグニッションスイッチ116のON操作が、S10〜S32の実行途中に行われたのであれば、S38の作動確認処理は、S10〜S32の続きから行われる。作動確認処理は最初から行ってもよい。そして、S39において、S38において予定されている全部の確認処理が行われたか否かが判定され、行われていなければ、S39の判定はNOになってルーチンの実行は終了する。
【0054】
作動確認が完了するまで、S1,S2,S33,S37〜S39が繰り返し実行される。作動確認が完了すれば、S39の判定がYESになってS40が実行され、作動確認完了フラグがセットされた後、S41のブレーキ制御が行われる。ここでは、ブレーキペダル82が踏み込まれていないため、S41が実行されても、電動ブレーキ28〜34は作動させられない。
【0055】
イグニッションスイッチ116がON操作されている状態において断線・短絡確認および作動確認が完了し、その状態においてブレーキペダル82が踏み込まれたならば、S1の判定がYESになり、S41においてブレーキペダル82の踏込みに基づいて電動ブレーキ28〜34が作動させられる。ブレーキ制御は、ブレーキペダル82の踏力,ストロークに基づいて得られる目標加圧力を生じさせるべく、電動モータ38〜44を作動させるように行われる。この間、電動モータ38〜44の作動中に、モータ回転角,モータ電流,加圧部材が摩擦パッド,ブレーキライニングをディスクロータ,ドラムに押し付ける加圧力等に基づいて電動モータ38〜44の故障診断が常時行われ、故障が検出されれば、運転者に警告が出されるとともに、故障発生時の所定の処理が行われる。S41のブレーキ制御も一定時間分ずつ行われる。
【0056】
本実施形態では、電動ブレーキ28〜34の故障診断が2系統に分けて行われ、1系統が正常であれば走行は禁止されず、少なくとも法定制動力が確保された状態で車両が走行するようにされており、断線・短絡確認および作動確認の結果、車両の走行が禁止されたり、車両の走行速度の上限が抑えられたりするようにされているが、イグニッションスイッチ116がON操作され、S33,S37の判定がYESになってS41のブレーキ制御が行われるときには、断線・短絡確認および作動確認は完了しており、電動ブレーキ28〜34の作動確認結果はブレーキ制御に用いてもよく、それにより、よりきめ細かに制動を行うことが可能である。例えば、4輪のうちのいずれの車輪が故障しているかにより、その車輪の制動力配分を、正常時に予定されているよりも大きくしたり、小さくしたりするのである。また、断線・短絡が生じた電動モータあるいは作動不能な電動ブレーキを構成する電動モータについては、駆動回路に設けられたスイッチが断状態とされ、電動モータに無駄に電流が供給されないようにされる。
さらに、4つのブレーキ故障フラグのセット,リセットにより記憶される電動ブレーキ28〜34の故障の有無は、例えば、ブレーキの故障報知、故障修理等に利用してもよい。電動ブレーキ28〜34の故障診断は2系統に分けて行われるため、4つの電動ブレーキ28〜34の各故障の有無ではなく、各系統における故障の有無をフラグのセット,リセットにより記憶するようにしてもよい。
【0057】
バッテリ接続から所定時間が経過する前に、イグニッションスイッチ116がON操作されず、ブレーキペダル82が踏み込まれたならば、S1の判定がYESになってS41が実行され、ブレーキ制御が行われる。S41においては、イグニッションスイッチ116がON操作された状態でブレーキペダル82が踏み込まれた場合と同様に、ブレーキペダル82の踏込みに基づいて電動ブレーキ28〜34が作動させられる。ブレーキペダル82が踏み込まれれば、直ちに電動ブレーキ28〜34が作動させられるが、運転者の車両への乗込み操作あるいは車両を走行,停止させる際の操作により、電動モータ38〜44の断線・短絡確認および電動ブレーキ28〜34の作動確認が、ブレーキペダル82の踏込みに先立って行われるため、それら確認処理が完了している可能性が高く、完了していれば、確認結果を利用して電動ブレーキ28〜34を作動させることができる。
【0058】
イグニッションスイッチ116がON操作されていない状態でブレーキペダル82が踏み込まれたときには、電動モータ38〜44の断線・短絡確認や電動ブレーキ28〜34が正常に作動するか否かの確認が完了していれば、イグニッションスイッチ116がON状態でブレーキペダル82が踏み込まれた場合と同様に、確認結果を利用しつつ電動ブレーキ28〜34が作動させられる。また、完了していなくても、速やかなブレーキ作動が必要である場合もあるため、ブレーキペダル82が踏み込まれていない状態における断線・短絡確認および作動確認は行われず、ブレーキペダル82の踏込みに基づいて電動ブレーキ28〜34が作動させられる。そして、ブレーキ作動中に、イグニッションスイッチ116がON操作され、ブレーキペダル82が踏み込まれている場合と同様に、モータ電流等に基づいて電動ブレーキ28〜34の故障診断が常時行われ、故障と判断されたならば、運転者へ警告が発せられるとともに、故障発生時の処理が行われる。
【0059】
イグニッションスイッチ116がON操作された状態においてブレーキペダル82が踏み込まれたとき、断線・短絡確認,作動確認の途中であれば、断線・短絡確認および作動確認は中断されてS41が実行され、ブレーキペダル82の踏込みに基づいて電動ブレーキ28〜34が作動させられ、制動力が確保される。確認処理が完了せず、実際には電動ブレーキ28〜34に何らかの故障があって制動力が不足することがあっても車両が停止していれば支障はなく、また、車両走行中であってもある程度の制動力は得られるため、速やかに制動力を生じさせることが可能となり、確認処理に要する時間において制動力が得られない事態の発生が回避される。なお、確認が済んだ分のデータを電動ブレーキ28〜34の制御に利用してもよい。また、ブレーキペダル82が踏み込まれている状態においてイグニッションスイッチ116がON操作されたとき、ブレーキペダル82の踏込みにより電動ブレーキ28〜34が作動を開始させられており、イグニッションスイッチ116がON操作されることによる作動確認等は行われない。
【0060】
主制御装置60等は、イグニッションスイッチ116のON操作あるいはブレーキペダル82の踏込みによりバッテリ70と接続されることもある。例えば、運転者が車両に乗り込み、バッテリ接続が為されて制御ルーチンが実行されたが、バッテリ接続から所定時間が経過する前にイグニッションスイッチ116がON操作されず、ブレーキペダル82も踏み込まれず、主制御装置60等への電流の供給が遮断されることがあるが、運転者が車両に乗ったままであり、所定時間経過後にイグニッションスイッチ116をON操作し、あるいはブレーキペダル82を踏み込めば、主制御装置60等がバッテリ70と接続され、ブレーキ制御ルーチンが実行されるのである。この際、イグニッションスイッチ116がON操作されたのであれば、S2の判定がYESになってS33〜S41が実行される。また、ブレーキペダル82が踏み込まれたのであれば、S1の判定がYESになってS41が実行され、電動ブレーキ28〜34が作動させられる。
【0061】
エンジン制御ルーチンを説明する。
エンジン制御ルーチンは、ブレーキ制御ルーチンと同様に、 (a)イグニッションスイッチ116のON操作, (b)当該電気制御エンジンシステム12を作動させるための操作部材であるアクセルペダル130の踏込み操作, (c) (a),(b)以外の操作であって、車両を走行,停止させる際に行われる操作, (d)運転者の車両への乗込み操作によってエンジン制御装置170等がバッテリ70と接続されることにより実行される。
【0062】
エンジン制御ルーチンを概略的に説明すれば、バッテリ接続が、運転者の車両への乗込みによって為されたのであれば、スロットルバルブ装置172等の各被駆動部について断線・短絡確認処理のみが行われ、作動確認は行われない。電力消費および作動音の小さい確認処理のみが行われるのである。また、断線・短絡確認処理は、前回の断線・短絡確認処理の結果が正常であれば、前回の確認処理から設定時間が経過するまでは行われず、経過後に行われる。本実施形態では、結果が正常でなく、故障があれば、乗込み操作が行われる毎に断線・短絡確認処理が行われ、故障状態の回復,更なる故障の発生等が検出される。
バッテリ接続が、イグニッションスイッチ116のON操作およびアクセルペダル130の踏込み操作以外の操作であって、車両を走行,停止させる際に行われる操作によって為されたのであれば、断線・短絡確認処理および作動確認処理が行われる。電力消費および作動音の小さい確認処理と大きい確認処理との両方が行われるのであるが、これら確認処理は、前回の確認処理の結果が正常であれば、前回の確認処理から設定時間が経過していない場合には行われず、経過後に行われる。本実施形態では、前回の確認処理において故障が検出されれば、車両を走行,停止させる際の操作が行われる毎に確認処理が行われる。
バッテリ接続が、アクセルペダル130の踏込みによって為されたのであれば、その踏込みに基づいてスロットルバルブ装置172等の各被駆動部が作動させられ、作動させられながら断線・短絡確認および作動確認が行われる。
バッテリ接続が、イグニッションスイッチ116のON操作によって為されたのであれば、断線・短絡確認および作動確認が行われる。
【0063】
フローチャートに基づいて説明する。
バッテリ接続が、運転者の車両への乗り込み操作によって為されたとすれば、S101〜S104の判定がいずれもNOになってS105が実行される。S105においては、運転者の車両への乗込み操作があったか否かの判定が行われるが、この判定はブレーキ制御ルーチンのS4と同様に行われ、乗込み操作があれば、エンジン制御装置170のコンピュータのRAMに設けられた車両乗込み操作実行フラグがONにセットされる。ここでは運転者の車両への乗込み操作があるため、S105の判定がYESになってS106が実行され、前回、行われた断線・短絡確認処理の結果が正常であったか否かが判定される。この判定は、断線・短絡確認結果メモリの内容に基づいて行われる。あるいは正常であることを記憶する記憶手段たるフラグを設け、そのフラグをセット,リセットすることにより、前回の確認結果が正常であるか否かを記憶し、S106の判定に用いるようにしてもよい。後述する作動確認処理についても同様である。断線・短絡確認結果メモリはバックアップ電源からの電流の供給により、エンジン制御装置170とバッテリ70との接続が遮断されても記憶内容が消去されず、また、メインルーチンの初期設定においてもリセットされないようにされている。後述する断線・短絡確認実行日時メモリ,作動確認結果メモリ,作動確認実行日時メモリについても同様である。
【0064】
前回の確認処理において断線・短絡が生じておらず、正常であれば、S106の判定はYESになってS107が実行され、結果が正常であった前回の断線・短絡確認の実行から設定時間が経過したか否かが判定される。この設定時間は、S103における所定時間より長く設定され、例えば、時間単位あるいは日単位で設定されている。S107の判定は、エンジン制御装置170のコンピュータのRAMに設けられた断線・短絡確認実行日時メモリに記憶された日時に基づいて行われる。断線・短絡確認実行日時メモリには、前回、断線・短絡確認が行われた日時が記憶されており、設定時間が経過していなければ、断線・短絡はないものとみなされ、断線・短絡確認は行われず、S107の判定がNOになってS108が実行され、断線・短絡確認完了フラグがセットされる。
【0065】
それに対し、前回、断線・短絡確認処理が行われ、正常であった場合から設定時間が経過していれば、S107の判定がYESになってS109が実行され、断線・短絡確認処理が完了したか否かの判定が行われる。前回の確認結果が正常であれば、設定時間の間は、正常とし、確認が無駄に行われないようにされるとともに、設定時間が経過すれば確認が行われ、故障があれば、検出されるようにされているのである。この判定は、断線・短絡確認完了フラグがセットされているか否かにより行われ、完了していなければ、S109の判定はNOになってS110が実行され、断線・短絡確認処理が行われる。断線・短絡確認処理は、例えば、前記S6と同様に、回路に微小な電圧あるいは電流を印加し、それにより得られる電流を検出することにより行われる。例えば、スロットルバルブ装置172であれば、スロットルバルブを駆動する電動モータに微小な電圧を印加し、電流を検出して上限値および下限値と比較することにより、断線,短絡の確認が行われる。断線・短絡確認処理は、前記S6におけると同様に、一定時間分ずつ行われ、S110において予定されている全部の処理が完了するまで、S101〜S107,S109〜S111が繰り返し実行される。そして、断線・短絡確認処理が完了すれば、S111の判定がYESになってS112が実行され、断線・短絡確認完了フラグがセットされるとともに、確認結果が、図7に示すように、エンジン制御装置170のコンピュータのRAMに設けられた断線・短絡確認結果メモリに記憶される。また、断線・短絡確認の実行日時がメモリに記憶される。
【0066】
前回の断線・短絡確認において故障が検出された場合、S106の判定はNOになり、S107がスキップされてS109〜S112が実行される。前回の断線・短絡確認において故障が検出された場合、断線・短絡確認完了フラグをセットして、断線・短絡確認処理が行われないようにしてもよい。修理により断線・短絡が解消され、修理日時が断線・短絡確認実行日時メモリに記憶され、断線・短絡確認結果が正常であることが断線・短絡確認結果メモリに記憶されれば、再度、断線・短絡確認が行われる状態となる。
【0067】
運転者の車両への乗込み操作によってエンジン制御装置170等がバッテリ70と接続され、所定時間が経過する前に、イグニッションスイッチ116のON操作およびアクセルペダル130の踏込み以外の、車両の走行,停止の際に行われる操作が為された場合、あるいはこの操作によってバッテリ接続が為された場合、S104の判定がYESになってS113が実行され、前回、行われた電気制御エンジンシステム12の作動確認処理の結果が正常であったか否かの判定が行われる。この判定は、コンピュータのRAMに設けられた作動確認結果メモリの内容に基づいて行われ、正常であれば、S113の判定はYESになってS114が実行され、結果が正常であった前回の作動確認処理から設定時間が経過したか否かの判定が行われる。この時間は、断線・短絡確認処理において、前回の確認結果が正常であった場合に用いられる設定時間と同じにしてもよく、異ならせてもよい。この判定は、断線・短絡確認処理の場合と同様に、コンピュータのRAMに設けられた作動確認実行日時メモリの内容に基づいて行われ、設定時間が経過していなければ、作動確認は行われず、S114の判定はNOになってS115が実行され、作動確認完了フラグおよび断線・短絡確認完了フラグがセットされてルーチンの実行が終了する。前回の作動確認処理であって、結果が正常であった場合から設定時間が経過していなければ、作動状態は変わっておらず、新たに故障は生じていないとみなすのである。また、作動確認処理結果が正常であれば、断線・短絡も生じていないと見なしてよい。後に説明するように、作動確認が行われるときには断線・短絡確認が行われるため、断線・短絡が生じていれば、作動確認を正常に行うことができず、故障と判定されるからである。
【0068】
前回、結果が正常であった作動確認処理が行われた後、設定時間が経過していれば、S114の判定はYESになってS116が実行され、断線・短絡確認が完了したか否かの判定が行われる。S116の判定は、断線・短絡確認完了フラグがセットされているか否かにより行われ、断線・短絡確認が完了していなければ、S116の判定はNOになってS117が実行され、断線・短絡確認処理が行われる。なお、S110の断線・短絡確認処理が行われている途中で車両の走行,停止の際の操作が行われたのであれば、途中から確認処理を行ってもよく、最初から行ってもよい。次いでS118が実行され、S117において予定されている断線・短絡確認処理の全部が行われたか否かの判定が行われ、全部が行われていなければ、S118の判定はNOになってルーチンの実行は終了する。
【0069】
断線・短絡確認が完了すれば、S118の判定がYESになってS119が実行され、断線・短絡確認完了フラグがセットされるとともに、断線・短絡確認結果および断線・短絡確認実行日時がそれぞれメモリに記憶される。車両の走行,停止の際の操作によって行われた断線・短絡確認も、運転者の車両への乗込み時に行われる断線・短絡確認に対して前回の断線・短絡確認として扱われるのである。次いで、S120が実行され、作動確認が完了したか否かの判定が行われる。この判定は、作動確認完了フラグがセットされているか否かにより行われ、作動確認が完了していなければ、S120の判定がNOになってS121が実行され、作動確認が行われる。電気制御エンジンシステム12において作動確認は、例えば、スロットルバルブ装置172においては、スロットルバルブ駆動モータに予め定められた大きさの電流を供給し、スロットルバルブが、その供給電流に対応する開度、開くか否かにより行われる。この作動確認は、ブレーキの作動確認と同様に、一定時間分ずつ行われる。そして、S122において、S121において予定されている確認処理がすべて行われたか否かの判定が行われ、全部行われていなければ、S122の判定はNOになってルーチンの実行が終了する。作動確認のための全部の処理が行われれば、S122の判定はYESになってS123が実行され、作動確認完了フラグがセットされるとともに、作動確認結果および作動確認実行日時がそれぞれメモリに記憶された後、S124のエンジン制御が行われる。
【0070】
なお、前回の作動確認において故障が検出された場合、S113の判定はNOになってS116が実行され、断線・短絡確認および作動確認が行われ、S124が実行される。S115が実行され、断線・短絡確認および作動確認が行われないようにしてもよい。
【0071】
S124では、エンジン制御を行うにあたり、イグニッションスイッチ116がON操作されているか否か、アクセルペダル130が踏み込まれているか否か、断線・短絡確認および作動確認が完了しているか否かの判定が行われる。ここではアクセルペダル130が踏み込まれていないため、エンジン制御は行われず、ルーチンの実行は終了する。
【0072】
バッテリ接続後、所定時間が経過する前にイグニッションスイッチ116がON操作されたのであれば、S102の判定がYESになってS116〜S124が実行される。イグニッションスイッチ116がON操作されたときには、毎回、断線・短絡確認および作動確認が行われるようにされているのであり、イグニッションスイッチ116のON操作の前に、断線・短絡確認および作動確認が完了していれば、S116,S120の判定がYESになって確認処理は行われず、確認処理が完了していなければ、完了していない確認が行われる。いずれにしても、アクセルペダル130が踏み込まれていないため、確認が完了しても、S124においてエンジンは作動させられない。
【0073】
バッテリ接続後、所定時間が経過する前に、イグニッションスイッチ116はON操作されないが、アクセルペダル130が踏み込まれた場合、S101の判定がYESになってS124が実行される。S124では、前述のように、アクセルペダル130が踏み込まれているか否か等の判定が行われ、ここでは、アクセルペダル130が踏み込まれているため、断線・短絡確認および作動確認が完了していなければ、断線・短絡確認がS110におけると同様に行われ、作動確認は、アクセルペダル130の踏込みに基づいて、電気制御エンジンシステム12を構成する装置を順次作動させながら行われる。S110の断線・短絡確認の途中であれば、その続きから行ってもよく、最初から行ってもよい。また、アクセルペダル130が踏み込まれたときには、作動確認のみを行うようにしてもよい。作動確認は、スロットルバルブ装置172等、電気制御エンジンシステム12を構成する全部の装置について、予め定められた順で行われ、全部の装置について作動確認が行われたならば、各装置は、アクセルペダル130の踏込み,シフトレバー178の操作状態等に応じた状態でイグニッションスイッチ116のON操作に備えて待機させられる。イグニッションスイッチ116がON操作されておらず、アクセルペダル130が踏み込まれた場合には、前回の作動確認,断線・短絡確認の結果および確認実行時からの経過時間の長さを問わず、確認が行われるのである。なお、ブレーキ制御ルーチンにおいて電動ブレーキの故障が検出され、走行禁止フラグがセットされて車両の走行が禁止されていれば、断線・短絡確認および作動確認は行われるが、確認完了後、各装置は作動させられず、車両が走行しないようにされる。また、断線・短絡確認および作動確認の結果、電気制御エンジンシステム12を構成する装置に断線・短絡と作動不能な故障との少なくとも一方がある場合にも、各装置は作動させられず、車両が走行しないようにされる。
【0074】
イグニッションスイッチ116がON操作されている状態でアクセルペダル130が踏み込まれた場合、あるいはアクセルペダル130が踏み込まれている状態においてイグニッションスイッチ116がON操作された場合も、イグニッションスイッチ116がON操作されず、アクセルペダル130が踏み込まれた場合と同様に断線・短絡確認および作動確認が行われる。イグニッションスイッチ116のON操作により、あるいは、車両の走行,停止のための操作の実行により、作動確認が行われている途中でアクセルペダル130が踏み込まれた場合には、アクセルペダル130の踏込みに基づいて作動確認が行われる。これらの確認後、車両の走行が禁止されておらず、また、電気制御エンジンシステム12を構成する各装置に故障がなければ、車両を走行させるべく、電気制御エンジンシステム12が作動させられる。
【0075】
バッテリ接続がイグニッションスイッチ116のON操作によって為されたのであれば、S102の判定がYESになってS116〜S124が実行される。また、バッテリ接続がアクセルペダル130の踏込みによって為されたのであれば、S101の判定がYESになってS124が実行され、S124において断線・短絡確認および作動確認が行われる。
【0076】
バッテリ接続後、所定時間が経過する前にイグニッションスイッチ116がON操作されなければ、S103の判定がYESになってS125が実行され、エンジン制御装置170,スロットルバルブ装置172等の駆動回路とバッテリ70との接続が遮断されるとともに、各種フラグをOFFにリセットする等の終了処理が行われる。
【0077】
このように、本実施形態において、電気制御ブレーキシステム10については、運転者の車両への乗込み操作あるいはイグニッションスイッチ116のON操作およびブレーキペダル82の踏込み以外の車両の走行,停止のための操作により、ブレーキペダル82の踏込みに先行して断線・短絡確認および作動確認が行われ、電流を無駄に消費することなく確認が行われるとともに、ブレーキペダル82が踏み込まれたとき、確認が完了している可能性が高く、電動ブレーキ28〜34を故障のない状態で作動させて制動力が確保される可能性が高い。また、運転者の車両への乗込み操作によって断線・短絡確認および作動確認の両方が行われるとともに、これらの確認処理は、バッテリ接続が為される毎に行われ、ブレーキシステム10の故障がいち早く検出され、走行安全性が確保される。電気制御エンジンシステム12においては、運転者の車両への乗込み操作により断線・短絡確認のみが行われ、電力消費の無駄や騒音の発生を回避しつつ、スロットルバルブ装置172等の作動開始遅れの低減効果の一部が得られる。また、イグニッションスイッチ116のON操作およびアクセルペダル130の踏込み以外の車両の走行,停止のための操作が行われたとき、前回の確認結果が正常であれば、前回の確認から設定時間経過している場合に断線・短絡確認および作動確認が行われるため、電力消費が少なくて済むとともに、アクセルペダル130の踏込みに先立って2種類の確認処理の少なくとも一部が行われ、エンジン制御が遅れなく、あるいは遅れ少なく開始される。電気制御エンジンシステム12についても、電気制御ブレーキシステム10と同様に、電気制御エンジンシステム12を作動させる操作部材であるアクセルペダル130が操作されたとき、直ちにスロットバルブ装置172等を作動させ、作動させながら常時故障診断を行うようにしてもよい。
【0078】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、イグニッションスイッチ116が主スイッチを構成し、ブレーキペダル82,アクセルペダル130が第一操作部材を構成し、ドア138,ドアキー140,アクセルペダル130等が第二操作部材を構成している。また、ブレーキスイッチ82,アクセルスイッチ146等が車両走行・停止操作検出装置を構成し、ドア開閉スイッチ等が車両乗込操作検出装置を構成している。また、主制御装置60の、そのコンピュータとバッテリ70とを接続するハード回路,電動モータ制御装置62等をバッテリ70と接続するハード回路,運転者の車両への乗込み操作等に基づいて電動モータ制御装置62〜68等をバッテリ70に接続する部分,S5〜S32を実行する部分が電気制御ブレーキシステム10のための先行診断装置を構成している。さらに、エンジン制御装置170の、コンピュータとバッテリ70とを接続するハード回路,スロットルバルブ装置172等をバルブ14に接続するハード回路,コンピュータの運転者の車両への乗込み操作等に基づいてスロットルバルブ装置172等をバッテリ70と接続する部分,S106,S107,S109〜S111,S116〜S123を実行する部分が電気制御エンジンシステム12のための先行診断装置を構成している。また、主制御装置60のS42を実行する部分、エンジン制御装置170のS125を実行する部分が接続遮断手段を構成し、電動ブレーキ28,30および駆動回路72,74が前輪ブレーキ関連作動装置を構成し、電動ブレーキ32,34および駆動回路76,78が後輪ブレーキ関連作動装置を構成し、電動ブレーキ28,30,駆動回路72,74,主制御装置60の電動ブレーキ28,30に関する部分および電動モータ制御装置62,64が前輪ブレーキ関連装置を構成し、電動ブレーキ32,34,駆動回路76,78,主制御装置60の電動ブレーキ32,34に関する部分および電動モータ制御装置66,68が後輪ブレーキ関連装置を構成し、主制御装置60,電動モータ制御装置62〜68が制御装置を構成している。駆動回路72〜78が制御装置の一部であると考えることもできる。また、スロットルバルブ装置172等の各被駆動部および駆動回路が作動装置を構成し、エンジン制御装置170が制御装置を構成している。駆動回路は制御装置の一部であると考えることもできる。さらに、主制御装置60のコンピュータのRAMに設けられた4つのブレーキ故障フラグ,断線・短絡確認結果メモリおよびエンジン制御装置170のコンピュータのRAMに設けられた断線・短絡確認結果メモリおよび作動確認結果メモリが診断結果記憶手段を構成している。
【0079】
なお、ブレーキ制御ルーチンにおいては、運転者の車両への乗込み操作およびイグニッションスイッチのON操作,ブレーキペダルの踏込み以外の車両の走行,停止のための操作によるバッテリ接続時には、主制御装置60等がバッテリ70と接続されてブレーキ制御ルーチンが実行される毎に断線・短絡確認および作動確認が行われるようにされていたが、断線・短絡確認処理と作動確認処理との少なくとも一方について、エンジン制御ルーチンにおけると同様に、前回の確認処理の結果が正常であった場合、その確認処理から設定時間が経過している場合に断線・短絡確認処理および作動確認処理が行われるようにしてもよい。
【0080】
また、ブレーキ制御ルーチンにおいて、作動確認は、車両の対角線上に位置する後輪と前輪とにそれぞれ設けられ電動ブレーキを対として行われていたが、左,右前輪にそれぞれ設けられた電動ブレーキを対として行われるようにしてもよい。この場合、左,右前輪にそれぞれ設けられた電動ブレーキのみについて作動確認を行えばよい。車両全体において制動力配分は、左,右前輪について左,右後輪より大きく設定されることが多く、例えば、左,右前輪の制動力配分が全体の約70%に設定され、2つの前輪ブレーキに故障がないことが確認されていれば、実用上、問題のない制動力を確保できるからである。左,右前輪にそれぞれ設けられた電動ブレーキについて作動確認を行い、故障があれば、さらに、左,右後輪にそれぞれ設けられた電動ブレーキを対として作動確認を行うようにしてもよい。
【0081】
さらに、上記実施形態において、イグニッションスイッチ116がON操作された状態における電動ブレーキ28〜34の作動確認は、複数、例えば4つの電動ブレーキを2系統に分け、少なくとも1系統について行われるようにされていたが、イグニッションスイッチ116がON操作されている場合には、エンジン駆動が行われていると考えられ、複数の電動ブレーキの全部について作動確認を行うようにしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態において、電気制御ブレーキシステム10においては、ブレーキペダル82が踏み込まれれば、作動確認が完了していなくても電動ブレーキ28〜34が作動させられるようにされていたが、作動確認の完了を待って作動させるようにしてもよい。この作動確認は、ブレーキペダル82の踏込みに基づいて電動ブレーキ28〜34を作動させつつ行うが、作動確認中の制動力が不足する恐れがあるのであれば、車両の走行を禁止した状態で行ってもよい。車両用電気システムが、液圧に基づいて車輪の回転を抑制する液圧ブレーキおよびブレーキシリンダ液圧を電気的に制御する液圧制御弁装置を含むシステムであり、ブレーキペダルが踏み込まれたとき、マスタシリンダに機械的に発生させられた液圧に基づいて液圧ブレーキを作動させ、車輪の回転を抑制することができるのであれば、液圧制御弁装置を作動確認後に作動させる場合、作動確認が完了するまで車両の走行を禁止することは不可欠ではない。
【0083】
さらに、断線・短絡確認処理および作動確認処理の両方が続けて行われる場合、断線・短絡確認処理の結果、故障があれば、作動確認処理は行わないようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態において断線・短絡確認および作動確認は一定時間(一定量)ずつ行っては中断し、他のステップが実行されるようにされていたが、中断することなく、確認処理を行いつつ、他のステップが実行されるようにフローチャートを構成してもよい。
【0085】
さらに、イグニッションスイッチのON操作およびブレーキペダルの踏込み操作以外に、車両の走行,停止の際に行われる操作として、シフトレバーの操作に基づいて、電気制御ブレーキシステムの主制御装置等がバッテリに接続されるようにしてもよい。例えば、オートマチックトランスミッションを備えた車両において、クラッチペダルの踏込みに代えて、シフトレバーの操作を検出し、それに基づいて、電気制御ブレーキシステム,電気制御エンジンシステムのコンピュータ等をバッテリに接続させる。
【0086】
また、上記実施形態においては、バッテリ70と接続されて作動する制御装置および作動装置であって、電気制御ブレーキシステム10以外のシステムとして電気制御エンジンシステム12を例に取って説明したが、車両において電源からの電流の供給により作動する装置であって、電気制御エンジンシステム以外の装置、例えば、電気制御されるパワーステアリング装置,トランスミッション装置等が設けられていれば、それらの装置についても、電気制御エンジンシステムと同様に先行診断を行えばよい。
【0087】
さらに、上記実施形態においては、前輪側に設けられた電動ブレーキ28,30がディスクブレーキとされ、後輪側に設けられた電動ブレーキ32,34がドラムブレーキとされていたが、前輪側および後輪側のいずれの電動ブレーキもディスクブレーキとしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態においては、電動モータ38〜44,スロットルバルブ装置172等、作動装置について断線・短絡確認を行ったが、主制御装置60,電動モータ制御装置62〜68,エンジン制御装置170等の制御装置等についても断線・短絡確認等の診断を行ってもよい。
【0089】
さらに、上記実施形態において駆動回路は制御装置を構成していたが、作動装置を構成するようにしてもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である車両用電気システムを構成する電気制御ブレーキシステムを概略的に示す図である。
【図2】上記車両用電気システムを構成する電気制御エンジンシステムを概略的に示す図である。
【図3】上記電気制御ブレーキシステムを構成する主制御装置のコンピュータのROMに記憶されたブレーキ制御ルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図4】上記ブレーキ制御ルーチンの残りの部分を示すフローチャートである。
【図5】上記電気制御エンジンシステムを構成するエンジン制御装置のコンピュータのROMに記憶されたエンジン制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】上記電気制御ブレーキシステムを構成する主制御装置のコンピュータのRAMのうち、本発明に関連の深い部分を示すブロック図である。
【図7】上記電気制御エンジンシステムを構成するエンジン制御装置のコンピュータのRAMのうち、本発明に関連の深い部分を示すブロック図である。
【符号の説明】
10:電気制御ブレーキシステム 12:電気制御エンジンシステム 14:バッテリ 28,30,32,34:電動ブレーキ 60:主制御装置62,64,66,68:電動モータ制御装置 72,74,76,78:駆動回路 82:ブレーキペダル 110:バッテリスイッチ装置 116:イグニッションスイッチ 130:アクセルペダル 132:クラッチペダル 134:ステアリングホイール 136:シートベルト 138:ドア 170:エンジン制御装置 172:スロットルバルブ装置 174:燃料噴射装置 176:点火装置 180:バッテリスイッチ装置
Claims (8)
- 電源と、
その電源から供給される電流により作動する作動装置と、
その作動装置を作動させるための操作部材である第一操作部材と、
前記電源から供給される電流により作動し、前記作動装置を制御する制御装置と、
その制御装置および前記作動装置と、前記電源との間に設けられ、制御装置および作動装置と電源とを接続する状態と、その接続を遮断する状態とに操作される主スイッチと、
前記第一操作部材の操作に基づいて、前記制御装置および前記作動装置と前記電源とが接続される状態と、その接続が遮断される状態とを生じさせる手段と、
前記第一操作部材の操作よりも先行して、予め定められた第二操作部材の操作が行われた場合に、前記電源と前記制御装置、あるいは前記電源と前記制御装置および前記作動装置とを接続するとともに、それら電源と接続された装置の少なくとも一部の診断を行う先行診断装置と、
その先行診断装置による先行診断の実施後、所定時間内に前記主スイッチと前記第一操作部材とのうち、予め定められたものの操作が行われない場合に、前記電源と前記制御装置、あるいは前記電源と前記制御装置および前記作動装置との接続を遮断する接続遮断手段と
を含むことを特徴とする電気システム。 - 前記先行診断装置が、少なくとも、前記第二操作部材の操作が前記先行診断の前回の実施後設定時間以内に行われ、かつ、前回の先行診断の結果が正常であった場合には前記先行診断を実施しないものであることを特徴とする請求項1に記載の電気システム。
- 当該電気システムが前記作動装置を複数含み、前記先行診断装置が、それら複数の作動装置の一部のものについては前記先行診断を実施し、他のものについては実施しないものであることを特徴とする請求項1または2に記載の電気システム。
- 電源と、
その電源から供給される電流により作動する作動装置と、
その作動装置を作動させるための操作部材である第一操作部材と、
前記電源から供給される電流により作動し、前記作動装置を制御する制御装置と、
その制御装置および前記作動装置と、前記電源との間に設けられ、制御装置および作動装置と電源とを接続する状態と、その接続を遮断する状態とに操作される主スイッチと、
前記第一操作部材の操作に基づいて、前記制御装置および前記作動装置と前記電源とが接続される状態と、その接続が遮断される状態とを生じさせる手段と、
前記第一操作部材の操作よりも先行して、予め定められた第二操作部材の操作が行われた場合に、前記電源と前記制御装置、あるいは前記電源と前記制御装置および前記作動装置とを接続するとともに、それら電源と接続された装置の少なくとも一部の診断を行う先行診断装置と
を含み、かつ、前記先行診断装置が、少なくとも、前記第二操作部材の操作が前記先行診断の前回の実施後設定時間以内に行われ、かつ、前回の先行診断の結果が正常であった場合には前記先行診断を実施しないものであることを特徴とする電気システム。 - 電源と、
その電源から供給される電流により作動する複数の作動装置と、
それら複数の作動装置を作動させるための操作部材である一つ以上の第一操作部材と、
前記電源から供給される電流により作動し、前記複数の作動装置を制御する一つ以上の制御装置と、
その一つ以上の制御装置および前記複数の作動装置と、前記電源との間に設けられ、前記一つ以上の制御装置および前記複数の作動装置と、前記電源とを接続する状態と、その接続を遮断する状態とに操作される主スイッチと、
前記一つ以上の第一操作部材の操作に基づいて、前記一つ以上の制御装置および前記複数の作動装置と、前記電源とが接続される状態と、その接続が遮断される状態とを生じさ せる手段と、
前記第一操作部材の操作よりも先行して、予め定められた第二操作部材の操作が行われた場合に、前記電源と前記制御装置、あるいは前記電源と前記制御装置および前記作動装置とを接続するとともに、それら電源と接続された装置の少なくとも一部の診断を行う先行診断装置と
を含み、かつ、前記先行診断装置が、前記複数の作動装置の一部のものについて前記先行診断を実施し、他のものについては実施しないものであることを特徴とする電気システム。 - 前記複数の作動装置が、車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキとにそれぞれ関連する複数のブレーキ関連作動装置を含み、前記一つ以上の第一操作部材が前記複数のブレーキ関連作動装置に共通の一つのブレーキ操作部材を含み、かつ、前記複数の作動装置の前記一部のものが、前記前輪ブレーキに関連する前輪ブレーキ関連作動装置を含み、前記他のものが前記後輪ブレーキに関連する後輪ブレーキ関連作動装置を含むことを特徴とする請求項5に記載の電気システム。
- 前記電気システムが車両用電気システムであり、前記第二操作部材が、車両のドアロックを解除するための解錠操作部材,ドアノブおよびドアの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電気システム。
- 前記制御装置が、前記第一操作部材の操作量を検出し、操作量に対応する電気信号を発生させる操作量センサと、その操作量センサの電気信号に基づいて前記電源から前記作動装置への電流を制御する電流制御部とを含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電気システム。
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