JP3837853B2 - 組み換えシュクロースシンターゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、糖鎖が付加されていない、原核細胞由来の組み換えシュクロースシンターゼ、及びその製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
シュクロースシンターゼ(EC 2.4.1.13) はシュクロースからUDPにグルコース残基を転移し、UDP−グルコース及びフラクトースを合成する反応、並びにその逆反応を触媒する酵素である。
この酵素は、広く植物組織に存在している。イネ種子やインゲン豆より得られた該酵素は、分子量約10万のサブユニット四つから成る四量体として存在している。又、該酵素は糖鎖付加の認識配列であるAsn-X-Thr を2か所有しているので、糖タンパクであると推定される。
従来、このような植物由来のシュクロースシンターゼ遺伝子を大腸菌とセルロース生産菌のシャトルベクターに組み込んで、得られた発現ベクターを用いてセルロース生産菌を形質転換し、セルロースの生産性向上を図った例はある(WO95/32279)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、植物細胞由来のシュクロースシンターゼを大腸菌等の原核細胞に組み込み、該酵素を実際に発現させた例はこれまで知られていない。
本発明者等は、今回、植物細胞由来のシュクロースシンターゼ遺伝子を含む大腸菌用の発現ベクターを作成し、該発現ベクターを用いて大腸菌を形質転換して、植物細胞由来のシュクロースシンターゼ遺伝子を大腸菌で発現させることに成功し、本発明を完成させた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、原核細胞由来の組み換えシュクロースシンターゼに係わるものである。原核細胞の例としては、大腸菌、枯草菌等がある。
大腸菌の具体的な株としては、例えば、BL21株、HB101株、JM109株等の公知の株を使用できる。
更に、本発明は、植物細胞由来のシュクロースシンターゼ遺伝子を含む大腸菌等の原核細胞用の発現プラスミド(ベクター)、該発現ベクターで形質転換された大腸菌、及び該形質転換された大腸菌を培養することから成る、組み換えシュクロースシンターゼの製造方法にも係わるものである。
【0005】
植物胞由来のシュクロースシンターゼ遺伝子の或るものは、既にクローニングされ、その塩基配列も決定されている。コーン(Plant Molecular Biology 10, 215-224 (1987), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83, 9099-9103 (1986), EMBOJ. 4, 1373-1380 (1985))、イネ(Plant Molecular Biology 18, 139-142 (1992), Plant Molecular Biology 18, 1191-1194 (1992), Plant Molecular Biology 19, 881-885 (1992))、ソラマメ(Planta 191, 394-401 (1993))、ポテト(Gene 60, 47-56 (1987) 、大麦 (E.J.B. 310, 46-50 (1992), E.J.B. 320, 177-181 (1993))、シロイヌナズナ(Plant Molecular Biology 18, 131-134 (1992))、ダイズ(J.B.C. 262, 14780-14786 (1987))などが報告されている。従って、当業者であれば、適当な植物細胞由来のcDNAライブラリーから、かかる公知の配列に基づいて、DNAオリゴマーから成るプライマーを作成し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) によって所望のシュクロースシンターゼ遺伝子を増幅することによって容易に得ることが出来る。或いは、コロニーハイブリダイゼーションを用いて、サザン・ブロッテイングにより所望のシュクロースシンターゼ遺伝子を選択することも可能である。
尚、既に述べたシュクロースシンターゼの活性(その程度の大小は問わない。)を有する酵素をコードしている限り、植物細胞由来のシュクロースシンターゼ遺伝子の全塩基配列の一部が、例えば、部位特異的突然変異等の遺伝子工学的手法によって、欠損、置換及び付加等されて、修飾されて得られた遺伝子も本発明の「シュクロースシンターゼ遺伝子」であり、それを発現させて得られる、上記活性を有する酵素も本発明の「組み換えシュクロースシンターゼ」である。
特に、植物由来のシュクロースシンターゼの11番目のセリン残基がアスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基に置換された組み換えシュクロースシンターゼは、置換前の組み換えシュクロースシンターゼと比べ、シュクロースに対する親和性の低下が抑制されていることが特徴として挙げられる。
【0006】
本発明に使用しうる大腸菌用の発現ベクターとしては、公知のプラスミドベクター、例えば、pET20b(+) 、pKK233-2等である。このうち、pET20b(+) は、NOVAGEN社等から容易に入手することが出来る。
該大腸菌用の発現ベクターへの植物胞由来のシュクロースシンターゼ遺伝子の組み込みは、適当な制限酵素を使用して、行うことが出来る。
発現効率の向上等の目的で、かかる発現ベクターは選択マーカー等の各種調節領域DNA組み込む等して、適宜、修飾することも可能である。
該発現ベクターによる大腸菌の形質転換は、電気パルス法、リン酸カルシウム法等従来公知のいかなる方法によっても実施することが出来る。
このようにして形質転換された大腸菌は、当業者に公知の適当な培養・発現条件下で培養し、本発明の組み換えシュクロースシンターゼを製造することができる。尚、製造された組み換えシュクロースシンターゼは、磨砕、ビーズミル、ホモジュナイザー、超音波、高圧破砕、又はリゾチーム等の溶菌酵素及びSDS等の界面活性剤による溶菌処理、硫安沈殿、及びゲル濾過等を任意に組み合わせた当業者には公知の適当な方法で精製することが出来る。
【0007】
更に、本発明は、組み換えシュクロースシンターゼを触媒として使用する、非対称標識シュクロースの製造方法及び該方法によって得られる非対称標識シュクロースにも係わるものである。
該方法によれば、原料となるグルコース又はフラクトースのいずれか一方を、例えば、〔14C〕等の放射性物質等で標識し、それを用いて本発明の組み換えシュクロースシンターゼの触媒作用下に反応させることによって、従来の化学合成法に比べて、より簡便、経済的且つ効率良く非対称標識シュクロース、即ち、グルコース又はフラクトースのいずれか一方のみが〔14C〕等の放射性物質等で標識されたシュクロースを製造することが出来る。
該製造方法に用いる組み換えシュクロースシンターゼ酵素は上記のように精製した酵素をそのまま反応系で使用するか、又は、該酵素の回収及び安定化を図るために、担体結合法、包括固定化法、架橋固定化法、及び複合固体化法等の公知の方法により酵素を適当な担体に固定化してバイオリアクターを構成することも出来る。
非対称標識シュクロースの製造に際して、各出発物質の濃度、反応溶液の緩衝剤の種類及び濃度、その他の共存イオンの種類及びその強度、反応温度、反応時間並びに目的物質の分離・精製手段等の反応の各種反応条件は当業者が反応様式等を考慮して適宜設定することが出来る。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の最良の実施の形態を示す実施例により、本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を何等限定するものではない。
【0009】
実施例1 シュクロースシンターゼ遺伝子によって形質転換された大腸菌シュク
ロースシンターゼの製造
マング豆(Vigna radiata)をバーミキュライトに植えて発芽させた幼苗の胚軸の組織よりmRNAを調製し、cDNAを作成した。20gの胚軸を50mMトリス塩酸塩(pH8.5)と1%SDSの100mlと、同量の90%フェノールとともに破砕し、その遠心上層を再びフェノール/クロロホルム(1:1)で洗浄し、pHを5にあわせた。RNAは0.6倍量のイソプロパノールとともに−20℃で沈澱させ回収し、少量の水に溶かして20分の1量の6M塩化リチウムと2.5倍量のエタノールで再沈澱させ、2回繰り返した。得られた精製RNAをオリゴd(T)セルロースクロマトグラフィーによりmRNAを調製した。cDNAはアマシャム社のcDNA合成キットを用いて作成した。一方、既に報告されているマング豆のシュクロースシンターゼcDNAの塩基配列(Arai等、Plant Cell Physiology 、33巻、 503頁 (1992年))をもとに、以下の2種類のDNAオリゴマーを合成した。
1.TGGCTACCGATCGTTTGACC
2.TCTCGGTCGACAAGCCGGTTCCTCCATTTCTTCATCC
【0010】
これらのDNAオリゴマーをプライマーとして用い、マング豆より調製したcDNAからPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によりシュクロースシンターゼ遺伝子を増幅した。増幅されたDNAを制限酵素SalIで処理した。一方、大腸菌用の発現プラスミドベクターであるpET20b(+)をNdeIで処理し、クレノウフラグメントにより末端平滑化を行った後、SalIで処理した。この処理したpETベクターをSalI処理したcDNA断片と連結して発現プラスミドベクターpEB−01を作成し、これを大腸菌BL21株に電気パルス法で導入して、該大腸菌株を形質転換して、目的のプラスミドを持つ形質転換株を選択した。
LB培地中で37℃にてこの株を培養してIPTG(イソプロピル−チオ−β−D−ガラクトシド)によりシュクロースシンターゼ遺伝子の発現を行った。
次に、こうして得られた形質転換大腸菌を25mM Tris/HCl(pH7.5)(0.1mM EDTA及び10.1mM DTTを含む)で超音波で破砕し、遠心して上清を取った。上清に硫酸アンモニウムを加え(65%)、蛋白質を沈澱させた。この沈殿物を0.03M Tris/HCl(pH7.5)(0.15M NaCl,0.1mM EDTA及び10.1mM DTTを含む)中に懸濁させてた後、再び遠心して上清を取った。この上清を、FPLCシステム(ファーマシア)の一部である、同じTris/HCl緩衝液で平衡化させたスーパーロース(Superose)6ゲル濾過カラム(1.0 X 30cm、ファーマシア)にかけ、流速0.3mlで流した。得られた活性分画は−85℃で保存した。以降の実験には、この蛋白質を25mM Tris/HCl(pH7.5)に溶かしたものを酵素標品として用いた。
又、このように形質転換大腸菌から調製した酵素標品をそれぞれSDS−PAGE(ゲル濃度5%)にかけた。SDS−PAGE後、ニトロセルロースミンブランに転写後、ECLウェスタンブロッティング検出システムキット(アマシャム社製)によって発色させた。
その結果、シュクロースシンターゼに該当する分子量のバンドが検出され、単量体の分子量は約90kDa、二量体の分子量は約180kDa、四量体の分子量約360kDaと測定された。
この実験事実から、形質転換大腸菌の菌体内に大量にシュクロースシンターゼが蓄積したことが認められた。
【0011】
実施例2 N末端5残基を欠損したプラスミドの構築
1.TGTTGACCCGTGTTCACAGTCTCC
2.TCTCGGTCGACAAGCCGGTTCCTCCATTTCTTCATCC
これらプライマーを用いて、実施例1と同様に、シュクロースシンターゼのN末端5残基の欠損したcDNAをpET20b(+)に導入した。
こうして得られた発現プラスミドベクターを用いて、実施例1と同様に、大腸菌BL21株を形質転換株し、N末端5残基の欠損した本発明のシュクロースシンターゼを発現させ、実施例1と同様に、形質転換大腸菌の菌体内に蓄積したことを確認した。
【0012】
実施例3 形質転換大腸菌から抽出したシュクロースシンターゼによるUDP−
グルコース合成のタイムコース
反応系(最終濃度)
2mM〔14C〕シュクロース(2×105 cpm)
10mM UDP
25mM Tris/HCl、pH7.5
酵素標品(蛋白量 約50mg)
上記の反応系の全量20μl を30℃で一定時間インキュベイトした後、 1/C量をワットマン3MM濾紙に2cm間隔にスポットした後、50mMホウ酸ナトリウムバッファー(pH9.5)にて200V、2時間通電した。その後、オートラジオグラフィを行い、各時間経過後のUDP−グルコース画分の放射能を測定した。
その結果、実施例1で得られた形質転換大腸菌由来の酵素標品を使用した場合には、UDP−グルコースが生成したことが確認された。該酵素標品の比活性は10-3U/mg pr.であった。
実施例2で得られたN末端5残基の欠損した本発明の組み換えシュクロースシンターゼを酵素標品として使用して同様な実験をしたところ、UDP−グルコースが生成したことが確認された。
【0013】
実施例4 形質転換大腸菌から抽出したシュクロースシンターゼによる非対称標 識シュクロースの合成
反応系1:グルコース標識非対称シュクロース (最終濃度)
2μM UDP−〔14C〕グルコース(2nCi)
50mM フラクトース
10mM Tris/HCl、pH7.5
酵素標品(蛋白量 約7.5μg)
反応系2:フラクトース標識非対称シュクロース (最終濃度)
16.7μM 〔14C〕フラクトース(100nCi)
50mM UDP−グルクース
50mM Tris/HCl、pH7.5
酵素標品(蛋白量 約7.5μg)
上記の反応系の全量20μl を30℃で10分間インキュベイトした後、 1/C量をワットマン3MM濾紙に2cm間隔にスポットした後、50mMホウ酸ナトリウムバッファー(pH9.6)にて250V、3時間通電して電気泳動させた。その後、該濾紙を乾燥させ、オートラジオグラフィ(Fujix Bio-imaging analyzer Bas2000, 富士フィルム株式会社)を行った。その結果、放射活性を有する画分と標準シュクロースの移動度はほぼ等しいことが確認された。
そこで、該濾紙上のシュクロースに対応する領域を切り出して水で溶出した。得られた水溶液をダウエックス50W(H+ 型、ダウケミカルカンパニー)で処理し、ナトリウムイオンを除去した。又、ホウ酸イオンはメタノールと共に繰り返し蒸留することによって除去した。
こうして得られた放射活性試料を0.01Nのトリフルオロ酢酸中にて100℃で30分間処理して加水分解させ、トリフルオロ酢酸は減圧蒸留にて除去した。抗して得られた試料を1−プロパノール/酢酸エチル/水(3:3:1)でペーパークロマトグラフィにかけ、X線フィルムに感光させた。
その結果、ペーパークロマトグラフィに於いても、放射活性を有する画分と標準シュクロースの移動度はほぼ等しく、又、該放射活性試料を加水分解して得られた画分は標準グルコース及びフラクトースの移動度にほぼ等しいことが確認された。
尚、対照となる各種標準糖類はアルカリ性硝酸銀で処理して各クロマトグラム上で検出した。
上記各反応系に於ける非対称標識シュクロースの触媒合成のタイムコースを図3及び図4に示す。いずれの反応系においても、約80%の放射活性が合成された非対称標識シュクロース内に回収されたことが判る。
【0014】
実施例5 部位特異的突然変異によって修飾されたシュクロースシンターゼ遺伝子等によって形質転換された大腸菌によるシュクロースシンターゼの製造
(1)野生型の組み換えシュクロースシンターゼ発現用プラスミドベクタ−の構築:
実施例1においては、pET20b(+)を用いて発現ベクターpEB−01を作成したが、このpET20b(+)のNdeI部位が切断されにくいこともある為、その代りにpET21dをNovagen社から購入して用いた。このベクターはT7RNAポリメラーゼの開始コドン上にNcoI部位(CCATGG)が設けられている。
プライマーとして、
SS−8:TTGACCCGTGTTCACAGTCTCCG:forwardSSL−2:TCTCGGTCGACAAGCCGGTTCCTCCATTTCTTCATCC:reverse
の2つを使用し、鋳型として、前掲のArai等(Plant Cell Physiology 、33巻、 503頁 (1992年))に記載されているマング豆のシュクロースシンターゼcDNAの塩基配列(pM−SS−5)を用いて、PCR法によってシュクロースシンターゼcDNAを増幅した。増幅されたDNA産物をアガロースゲルから切り出した後に、SalIで処理した。一方、pET21dをNcoIで切断後、クレノウフラグメントにより末端平滑化を行った後、XhoIで処理した。この処理したpET21dベクターをSalI処理したcDNA断片と連結して発現プラスミドベクターpED−01を作成した。こうして作製した発現ベクターを実施例1と同様に大腸菌BL21株に電気パルス法で導入して、該大腸菌株を形質転換して、目的のプラスミドを持つ形質転換株を選択した。
この形質転換株を用いて、実施例1と同様にしてシュクロースシンターゼ遺伝子の発現を行ない、形質転換大腸菌株の菌体内に大量のシュクロースシンターゼが蓄積したことを確認した。
【0015】
(2)部位特異的突然変異を有する組み換えシュクロースシンターゼ発現用プラスミドベクタ−の構築:
11番目のセリン残基をアスパラギン酸残基に置換する為に、forwardのプライマーとしSS−8の代りに以下に示すSS−14を用いて(1)と同様にpM−SS−5を鋳型に用いて、PCR法によってシュクロースシンターゼcDNAを増幅した。
SS−14:TGGCTACCGATCGTTTGACCCGTGTTCACGATCTCCGTGAGAGGC(下線部で示した箇所が当該変異部分)
このSS−14はpET20b(+)へ導入するつもりでNdeI部位にクローニングするように設計した為に、PCR法によって増幅して得られたcDNA産物を鋳型として、SS−8とSSL−22をプライマーとして使用して再度PCR法によって増幅し部位特異的突然変異を有するシュクロースシンターゼcDNAを得た。このPCR産物をpED−01を作製したときと同様にpET21dにクローニングし、プラスミドを得た。しかしながら、このプラスミドの塩基配列を決定してみたところ、これに含まれるシュクロースシンターゼcDNAの下流に突然変異が発見された。そこで、このシュクロースシンターゼcDNAのXhoIの部位(該cDNAの約800bp付近)と当該プラスミド上のXbaI部位を用いて、該シュクロースシンターゼcDNAのN末端部分を切り出し、pED−01の同じ部位へ導入し、こうして得られた発現プラスミドベクターpED−01−S11Dと名付けた。
更に、11番目のセリン残基をグルタミン酸残基に置換する為に、forwardのプライマーとしSS−8の代りに以下に示すSS−17を用いて(1)と同様にpM−SS−5を鋳型に用いて、PCR法によってシュクロースシンターゼcDNAを増幅した。
SS−17:GCTACCGATCGTTTGACCCGTGTTCACGAACTCCGTGAGAGGC(下線部で示した箇所が当該変異部分)
このSS−17はpET21dに導入出来るように設計されている為に、(1)でpED−01を作製した場合と同様にして、PCR法によって増幅されたシュクロースシンターゼcDNAをpET21dへクローニングした。得られたプラスミドからシュクロースシンターゼcDNAのN末端部分を含むXhoI−XbaI断片を切り出し、発現プラスミドベクターpED−01−S11Dを作製したように、pED−01の同じ部位へ導入し、こうして得られた発現プラスミドベクターpED−01−S11Eと名付けた。
【0016】
こうして作製した各発現プラスミドベクターを実施例1と同様に大腸菌BL21株に電気パルス法で導入して、該大腸菌株を形質転換して、目的のプラスミドを持つ形質転換株を選択した。
こうして得られた各形質転換株を用いて、実施例1と同様にしてシュクロースシンターゼ遺伝子の発現を行ない、形質転換大腸菌株の菌体内に大量のシュクロースシンターゼが蓄積したことを確認した。
【0017】
実施例6 各種組み換えシュクロースシンターゼによる酵素反応
実施例5で得られた3種類の組み換えシュクロースシンターゼ及び元のマング豆由来のシュクロースシンターゼを用いて、実施例3及び実施例4にそれぞれ記載したように、グルコース合成反応及びシュクロース合成反応のタイムコースを測定し、ラインウイバー−バークプロットからそれぞれの反応に於けるミカエリス定数(Km)及び最大速度(Vmax)を求めた。
得られた結果を以下の表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
Ser-11:実施例5(1)で調製した野生型の組み換えシュクロースシンターゼ;Asp-11:実施例5(2)で得られた11番目のセリン残基をアスパラギン酸残基に置換した組み換えシュクロースシンターゼ;
Glu-11:実施例5(2)で得られた11番目のセリン残基をグルタミン酸残基に置換した組み換えシュクロースシンターゼ;
野生型:元のマング豆由来のシュクロースシンターゼ
【図面の簡単な説明】
【図1】 発現プラスミドベクターpEB−01の作成の過程を示す。
【図2】 形質転換大腸菌から抽出したシュクロースシンターゼによるUDP−グルコース合成のタイムコースを示す。
【図3】 形質転換大腸菌から抽出したシュクロースシンターゼによるUDP−〔14C〕グルコース(白丸)からの非対称標識シュクロース(黒丸)の合成のタイムコースを示す。
【図4】 形質転換大腸菌から抽出したシュクロースシンターゼによる〔14C〕フラクトース(白丸)からの非対称標識シュクロース(黒丸)の合成のタイムコースを示す。
Claims (5)
- 11番目のセリン残基がアスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基に置換されたマング豆のシュクロースシンターゼ遺伝子で形質転換された大腸菌で発現される、組換えシュクロースシンターゼ。
- 11番目のセリン残基がアスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基に置換されたマング豆のシュクロースシンターゼ遺伝子を含む大腸菌発現用の発現プラスミド。
- 請求項2記載の発現プラスミドで形質転換された大腸菌。
- 請求項3の形質転換された大腸菌を培養することから成る、請求項1記載の組換えシュクロースシンターゼの製造方法。
- 請求項1記載の組換えシュクロースシンターゼを触媒として使用する、グルコース又はフラクトースのいずれか一方のみが標識されたシュクロースの製造方法。
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