JP3837091B2 - 低い抵抗値を有するチップ抵抗器とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,例えば,1Ω以下というように低い抵抗値を有するチップ抵抗器と,これを製造する方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
先行技術としての特開2001−118701号公報は,図1に示すような構成のチップ抵抗器1を提案している。
【0003】
すなわち,この先行技術によるチップ抵抗器1は,その抵抗体2を,例えば,銅等のように低い抵抗を有する基材の金属に対してニッケル等のように前記基材の金属よりも高い抵抗を有する金属を添加して成る合金等の金属による厚さ寸法T0の金属板にて,長さ寸法がLで幅寸法Wの長方形に形成し,この抵抗体2における裏面の中程部に,長さ寸法がL0で深さ寸法がSの凹所3を切削加工にて刻設することにより,前記抵抗体2における裏面のうち左右両端の部分に,接続端子電極4,5を形成するという構成にしている。
【0004】
なお,前記両接続端子電極4,5には,プリント基板等に対する半田付けを容易にするためにメッキ層6,7を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし,この先行技術におけるチップ抵抗器1は,金属板製の抵抗体2における裏面の中程部に,長さ寸法がLで深さ寸法がSの凹所3を切削加工にて刻設することにより,前記抵抗体2における裏面のうち左右両端の部分に,接続端子電極4,5を設けるという構成であることにより,この両接続端子電極4,5の間における抵抗値,つまり,チップ抵抗器1における抵抗値は,前記抵抗体2を構成する金属における固有抵抗及び前記抵抗体2における幅寸法W0に加えて,前記抵抗体2のうちその裏面に刻設した凹所3の部分における長さ寸法L0と,深さ寸法Sの凹所3を刻設したあとにおける残りの厚さ寸法Tとによって決定されるから,前記抵抗体2における裏面に刻設する凹所3における長さ寸法L0及び深さ寸法Sのバラ付きが,前記チップ抵抗器1における抵抗値のバラ付きになって現れることになる。
【0006】
従って,前記抵抗体2における裏面に凹所3を切削加工にて刻設するに際しては,当該凹所3における長さ寸法L0と,深さ寸法Sとの両方を,厳格に規定しなければならず,換言すると,前記凹所3を刻設するときにおける寸法の加工精度を,当該凹所3における長さ寸法L0と,深さ寸法Sとの両方について高くしなければならないから,前記抵抗体2に対して凹所3を刻設することに多大の手数を必要としてコストが大幅にアップするという問題がある。
【0007】
また,前記凹所3における深さ寸法Sを,プリント基板等にする半田付けに際して溶融半田が両接続端子電極4,5を越えて抵抗体2のうち両接続端子電極4,5間の部分にまで盛り上がって接触することでその抵抗値が変化することを回避するために,可成り深くしなければならないから,チップ抵抗器1における全体の高さ寸法が高くなるばかりか,重量がアップするという問題もあった。
【0008】
本発明は,これらの問題を解消することを技術的課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を達成するため本発明のチップ抵抗器は,
「金属板にて構成した抵抗体における裏面のうち左右両端の部分に凹部を設けて,この凹部内に,前記抵抗体よりも低い抵抗の金属による接続端子電極を設ける一方,前記抵抗体のうち少なくとも裏面における前記両接続端子電極間の部分を絶縁体にて被覆し,更に,前記両接続端子電極の表面を,絶縁体の表面と略同一平面にするか,或いは,絶縁体の表面より突出する。」
ことを特徴としている。
【0010】
また,本発明の製造方法は,
「一つのチップ抵抗器を構成する抵抗体の多数個を並べて一体化して成る素材金属板を製作する工程と,
前記素材金属板のうち少なくともその裏面を,絶縁体にて被覆する工程と,
前記素材金属板における裏面のうち前記各抵抗体における左右両端の部分に,凹所としての凹み溝を,前記絶縁体のうち前記各抵抗体における左右両端の部分に該当する部分を切除しながら刻設する工程と,
前記素材金属板における裏面のうち前記各凹み溝内の部分に,前記素材金属板よりも低い抵抗の金属による接続端子電極としての金属メッキ層を形成する工程と,
前記素材金属板を,前記各抵抗体ごとに分割する工程と,
から成る。」
ことを特徴としている。
【0011】
【発明の作用・効果】
このように,金属板にて構成した抵抗体における裏面のうち左右両端の部分に凹部を設けて,この凹部内に,前記抵抗体よりも低い抵抗の金属による接続端子電極を設けることにより,前記抵抗体における裏面に刻設する凹所の深さが,両接続端子間における抵抗値,つまり,チップ抵抗器における抵抗値に対して及ぼす影響は無くなるか,小さくなるから,凹所の刻設に際しては,その長さ寸法を高い加工精度に保つだけで良く,抵抗体に対して凹所を刻設することに要する手数を軽減できる。
【0012】
これに加えて,前記抵抗体のうち少なくとも裏面における前記両接続端子電極間の部分を絶縁体にて被覆したことにより,プリント基板等に対する半田付けに際して,溶融半田が抵抗体のうち両接続端子電極間の部分に接触することを,前記絶縁体にて阻止できるから,この分だけチップ抵抗器における高さ寸法を低くできるとともに,軽量化を図ることができる。
【0013】
この場合において,前記両接続端子電極を,その表面を絶縁体の表面と略同一平面にするか,或いは,絶縁体の表面より突出するように構成することにより,プリント基板等に対する半田付けに際して,前記両接続端子電極のプリント基板からの浮き上がりを小さくするか,或いは無くすることができるから,半田付けの確実性及び強度を向上できる利点がある。
【0014】
また,前記両接続端子電極を,請求項2に記載したように,金属メッキ層にて構成することにより,チップ抵抗器における高さ寸法をより低くできるとともに,より軽量化できる。
更にまた,前記抵抗体の材料としては,請求項3に記載したように,銅・ニッケル合金,ニッケル・クロム合金又は鉄・クロム合金にすることが好ましい。
【0015】
次に,請求項4に記載した製造方法によると,前記した構成のチップ抵抗器の多数個を,一枚の素材金属板から製造することができ,これに加えて,凹所内に接続端子電極としての金属メッキ層を形成するときにおいて,前記素材金属板における裏面に形成した絶縁体が,前記金属メッキ層を前記凹所内にのみ形成するためのマスクになり,換言すると,前記素材金属板の裏面に対してマスキングを行うことなく,前記絶縁体を利用して前記凹所内のみに金属メッキ層を形成することができて,メッキ工程が簡単になるから,製造コストを大幅に低減できるのである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の実施の形態を,図2〜図6の図面について説明する。
【0017】
この図において,符号11は,本発明の実施の形態によるチップ抵抗器を示す。
【0018】
このチップ抵抗器11は,長さ寸法がLで,幅寸法がWの長方形に形成された抵抗体12を備えている。
【0019】
この抵抗体12は,例えば,銅・ニッケル合金,ニッケル・クロム合金又は鉄・クロム合金等のように,低い抵抗を有する基材の金属(以下,低抵抗の金属と称する)に対してこの基材の金属よりも高い抵抗を有する金属(以下,高抵抗の金属と称する)を添加して成る合金等の金属による厚さ寸法Tの金属板製である。
【0020】
前記抵抗体12における表裏両面12a,12bのうち裏面12bの両端の部分には,当該抵抗体12における両端面12c,12dからの長さ寸法がL1,L2で,深さ寸法がSにした凹所13,14が刻設されている。
【0021】
また,前記抵抗体12における表面12a及び裏面12bの両方は,耐熱性合成樹脂又はガラス等の絶縁体15,16にて被覆されている。
【0022】
一方,前記抵抗体12における裏面12bの両端の部分における凹所13,14内には,銅等の純金属による接続端子電極17,18が,金属メッキ層として形成されている。
【0023】
この両接続端子電極17,18の厚さは,その表面が前記抵抗体12における裏面12bを被覆する絶縁体16の表面と略同一平面になるか,これよりも突出するような寸法に設定されている。
【0024】
また,前記両接続端子電極17,18の表面には,そのプリント基板等への半田付けを容易にすることのために,錫又は半田等によるメッキ層19,20が形成されている。
【0025】
更にまた,前記チップ抵抗器11における側面には,必要に応じて,二点鎖線で示すように,トリミング溝21を刻設することによって,当該チップ抵抗器11における抵抗値が所定値になるように調整されている。
【0026】
この構成のチップ抵抗器11において,その両接続端子電極17,18間における抵抗値,つまり,当該チップ抵抗器11における抵抗値は,前記抵抗体12を構成する金属における固有抵抗,前記抵抗体12における幅寸法W,及び,抵抗体12のうち前記両接続端子電極17,18間における長さ寸法L3(L3=L−L1+L2)で決まることになるから,前記先行技術のように,前記両凹所13,14における深さ寸法Sがチップ抵抗器11における抵抗値に及ぼす影響を無くすることができるか,小さくすることができる。
【0027】
また,前記チップ抵抗器11のプリント基板等に対する半田付けに際して,溶融半田が抵抗体12のうち両接続端子電極17,18間の部分に接触することを,前記抵抗体12における裏面12bを被覆する絶縁体16にて確実に阻止することができる。
【0028】
そして,この構成によるチップ抵抗器11は,以下に述べる1〜7の各工程を経て製造することができる。
1).図7に示すように,前記一つのチップ抵抗器11を構成する抵抗体12の多数個を並べて一体化して成る素材金属板Aを製作する。なお,符号B1と,B2とは,前記素材金属板Aを前記各抵抗体12ごとに区画する縦方向の切断線と,横方向の切断線である。
2).前記素材金属板Aにおける表面A1及び裏面A2の両方を,図8に示すように,耐熱性合成樹脂又はガラス等の絶縁体15,16にて被覆する。
3).前記素材金属板Aにおける裏面A2に,図9及び図10に示すように,前記抵抗体12の両端の部分における凹所13,14を形成するための凹み溝A3を,前記縦方向の切断線B1に沿って延びるように,切削又は研削等の機械加工,或いは,レーザ光線の照射による加工,若しくは,コイニング加工等によって,当該裏面A2における絶縁体16のうち前記両凹所13,14の部分における絶縁体16を除去するようにして刻設する。
【0029】
ここに刻設する凹み溝A3における深さ寸法はSであり,また,この凹み溝A3における幅寸法Dを,前記両凹所13及び14における長さ寸法L1及びL2に,後述するように,素材金属板Aをダイシングカッター等にて縦方向の切断線B1に沿っての切断にて各抵抗体12ごとに分割する場合前記ダイシングカッター等による切断幅寸法,つまり,切断代を加えた寸法に設定し,或いは,前記の分割を後述する剪断加工(シャリング加工)にて行う場合には,前記幅寸法Dを,前記L1とL2との合計に設定することにより,各凹み溝A3の相互間における寸法を,前記チップ抵抗器11における両接続端子電極13,14の長さ寸法L3,つまり,所定の抵抗値を得る長さ寸法L3にする。
4).前記凹み溝A3を刻設したあとの素材金属板Aの全体に対してメッキ処理を行うことにより,図11及び図12に示すように,前記各凹み溝A3内の部分に,金属メッキ層A4を形成することにより,この金属メッキ層A4を前記接続端子電極17,18にする。
5).前記金属メッキ層A4を形成したあとの素材金属板Aの全体に対して,別のメッキ処理を行うことにより,図11及び図12に示すように,前記金属メッキ層A4の表面に対して,メッキ層A5を形成して,このメッキ層A5を半田付け用のメッキ層19,20にする。
6).そして,前記素材金属板Aを,ダイシングカッター等にて縦方向の切断線B1及び横方向の切断線B2に沿って切断することによって各抵抗体12ごとに分割する。
【0030】
また,この分割は,ダイシングカッター等による切断に代えて,剪断加工(シャリング加工)にて行うようにすることもできる。
7).必要に応じて,両接続端子電極17,18の間における抵抗値を測定しながら側面にレーザ光線の照射等にてトリミング溝21を刻設することにより,前記両接続端子電極17,18の間における抵抗値を所定値にするように調節する。
【0031】
これらの各工程を経ることにより,前記図2〜図6に示す構成のチップ抵抗器11を,一枚の素材金属板Aから多数個製造することができる。
【0032】
この製造に際して,前記素材金属板Aにおける表裏両面A1,A2を被覆する絶縁体15,16が,前記凹み溝A3内の部分のみにメッキ処理にて接続端子電極17,18を形成する場合,及びこの接続端子電極17,18の表面のみにメッキ処理にて半田付け用のメッキ層19,20を形成する場合におけるマスクになるのである。
【0033】
次に,図13及び図14は,別の実施の形態による製造方法を示す。
【0034】
この別の実施の形態による製造方法は,前記した凹み溝A3を,図13に示すように,抵抗体12における一方の凹所13′を形成するための凹み溝A3′と,他方の凹所14′を形成するための凹み溝A3″との二本にして,この両凹み溝A3′,A3″の相互間における寸法を,所定の抵抗値を得る長さ寸法L3にする。
【0035】
そして,前記各凹み溝A3′,A3″内に,図14に示すように,メッキ処理にて金属メッキ層A4′,A4″を形成して,この金属メッキ層A4′,A4″を接続端子電極17′,18′とするものであり,その他は,前記した1)〜7)の製造方法と同じであり,この製造方法により図15に示す構成のチップ抵抗器11′を得ることができる。
【0036】
要するに,本発明において「抵抗体における裏面のうち左右両端の部分に凹所を設ける」とは,図3に示すように,両凹所13,14が抵抗体12における両端面12c,12dに接している場合と,図15に示すように,各々接続端子電極17′,18′を形成する両凹所13′,14′が抵抗体12′における両端面12c′,12d′に接することなく近接している場合との両方を含むのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 先行技術におけるチップ抵抗器を示す斜視図である。
【図2】 本発明の実施の形態によるチップ抵抗器を示す斜視図である。
【図3】 図2のIII −III 視断面図である。
【図4】 図2の底面図である。
【図5】 図2のV−V視断面図である。
【図6】 図2のVI−VI視断面図である。
【図7】 前記チップ抵抗器の製造方法における第1の工程を示す斜視図である。
【図8】 前記製造方法における第2の工程を示す斜視図である。
【図9】 前記製造方法における第3の工程を示す斜視図である。
【図10】図9のX−X視拡大断面図である。
【図11】前記製造方法における第4の工程を示す斜視図である。
【図12】図11のXII −XII 視拡大断面図である。
【図13】別の製造方法における第1の工程を示す断面図である。
【図14】別の製造方法における第2の工程を示す断面図である。
【図15】別の製造方法によるチップ抵抗器の縦断正面図である。
【符号の説明】
11,11′ チップ抵抗器
12,12′ 抵抗体
12a,12a′ 抵抗体の表面
12b,12b′ 抵抗体の裏面
12c,12d,12c′,12d′ 抵抗体の端面
13,14,13′,14′ 凹所
15,16 絶縁体
17,18,17′,18′ 接続端子電極
A 素材金属板
A1 素材金属板の表面
A2 素材金属板の裏面
B1,B2 切断線
A3,A3′,A3″ 凹み溝
A4,A4′,A4″ 金属メッキ層
Claims (4)
- 金属板にて構成した抵抗体における裏面のうち左右両端の部分に凹部を設けて,この凹部内に,前記抵抗体よりも低い抵抗の金属による接続端子電極を設ける一方,前記抵抗体のうち少なくとも裏面における前記両接続端子電極間の部分を絶縁体にて被覆し,更に,前記両接続端子電極の表面を,絶縁体の表面と略同一平面にするか,或いは,絶縁体の表面より突出することを特徴とする低い抵抗値を有するチップ抵抗器。
- 前記請求項1の記載において,前記両接続端子電極が,金属メッキ層であることを特徴とする低い抵抗値を有するチップ抵抗器。
- 前記請求項1又は2の記載において,前記抵抗体が,銅・ニッケル合金,ニッケル・クロム合金又は鉄・クロム合金であることを特徴とする低い抵抗値を有するチップ抵抗器。
- 一つのチップ抵抗器を構成する抵抗体の多数個を並べて一体化して成る素材金属板を製作する工程と,
前記素材金属板のうち少なくともその裏面を,絶縁体にて被覆する工程と,
前記素材金属板における裏面のうち前記各抵抗体における左右両端の部分に,凹所としての凹み溝を,前記絶縁体のうち前記各抵抗体における左右両端の部分に該当する部分を切除しながら刻設する工程と,
前記素材金属板における裏面のうち前記各凹み溝内の部分に,前記素材金属板よりも低い抵抗の金属による接続端子電極としての金属メッキ層を形成する工程と,
前記素材金属板を,前記各抵抗体ごとに分割する工程と,
から成ることを特徴とする低い抵抗値を有するチップ抵抗器の製造方法。
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