JP3836439B2 - 光コネクタ清掃工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コネクタハウジング内の光コネクタの接合端面を清掃する光コネクタ清掃工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、アダプタやレセプタクルなどのコネクタハウジング内での光コネクタ同士の接続は、各光コネクタの接合端面に臨む光ファイバの端面同士を突き合わせ接合することで実現される。
コネクタハウジングに光コネクタを挿入して突き合わせ接続する際、光コネクタの接合端面にゴミや埃、油分などの汚れが付着していると、着脱時の損傷や、伝送損失の増大などの原因になるため、突き合わせ接続に先立って、接合端面を清掃する必要がある。
【0003】
この種の用途に用いられるクリーナーとして、図13に示すように、清掃用のテープ102が露出される開口部116を先端に有した突出部分110を備え、この突出部分110を光コネクタアダプタ170(光アダプタ)内の空間(コネクタ収容穴172)に挿入することにより、前記テープ102が前記光コネクタアダプタ170に収容された光コネクタプラグ160(光プラグ)のフェルール161の接合端面161aと向かい合って当接するように配置され、テープ102の前進送りにより前記光プラグ160の接合端面161aを拭き取り清掃するようにしたものが提案されている。このクリーナー101では、光プラグ160の接合端面161aを拭き取り清掃するテープ102が、ピボット111に枢着されたヘッド部112の先端面112a(当接面)上を通るように設けられており、ピボット111を中心とした枢着回転によりヘッド部112の向きが可変となり、フェルール161の接合端面161aを種々の角度で受け入れることができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第3350850号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したクリーナーでは、ヘッド部112の枢着回転により該ヘッド部112の先端面112aの向きが変わる際、ヘッド部112に巻き回されたテープ102が、その幅方向(図13の紙面に垂直な方向)にずれてしまうことがある。その結果、接合端面161aがテープ102に当接する当接力が不均等になったり、テープ102が円滑に送れなくなったりして、清掃が確実に行われず、接合端面161aに部分的に汚れが残ることがあるという問題があった。
【0006】
従って、本発明の課題は、光コネクタをコネクタハウジングに挿入した状態で、当該光コネクタの接合端面を容易かつ確実に清掃することができる光コネクタ清掃工具を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明は、両側のコネクタ挿入口から挿入された一対の光コネクタをコネクタ収容穴に収容することにより両光コネクタが光接続されるようになっているコネクタハウジング内の光コネクタの接合端面を、清掃部材の運動により拭き取り清掃する光コネクタ清掃工具であって、工具本体と、この工具本体から突出して設けられ、前記コネクタハウジングの前記コネクタ収容穴に挿入可能に形成されている挿入部とを備え、前記清掃部材はテープであって、前記工具本体には、前記テープを巻装した供給リールと、使用後のテープを巻き取って回収する巻取リールとが回転可能に装着されており、前記挿入部には、先端に前記接合端面に対する当接面積を確保するための当接面を有し、この当接面に沿って前記供給リールから供給されたテープが巻き回されるようになっているヘッド部が設けられており、前記ヘッド部には、前記テープの幅方向のずれを防ぐガイド溝が、前記当接面に対して、前記テープの流れ方向の上流側および/または下流側に形成されていることを特徴とする光コネクタ清掃工具を提供する。
【0008】
本発明は、前記ヘッド部に対する押し込み力に対して、該ヘッド部の傾動を許容するように構成されたヘッド傾動機構を備える場合に特に効果が高い。
本発明においては、前記挿入部が前記コネクタハウジングのコネクタ収容穴に挿入された際に前記ヘッド部と前記接合端面から突出する突出部材との干渉を避けるための凹部が、前記ヘッド部の当接面から凹陥して設けられており、前記ガイド溝によって案内されるテープが、前記凹部への突出部材の挿入を許容するように構成されたものとすることができる。
【0009】
さらに本発明は、両側のコネクタ挿入口から挿入された一対の光コネクタをコネクタ収容穴に収容することにより両光コネクタが光接続されるようになっているコネクタハウジング内の光コネクタの接合端面を、清掃部材の運動により拭き取り清掃する光コネクタ清掃工具であって、工具本体と、この工具本体から突出して設けられ、前記コネクタハウジングの前記コネクタ収容穴に挿入可能に形成されている挿入部とを備え、前記清掃部材はテープであって、前記挿入部には、先端に前記接合端面に対する当接面積を確保するための当接面を有し、この当接面に沿って前記テープが巻き回されるようになっているヘッド部が設けられており、前記ヘッド部には、前記テープの幅方向のずれを防ぐガイド溝が、前記当接面に対して、前記テープの流れ方向の上流側および/または下流側に形成されていることを特徴とする光コネクタ清掃工具を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1〜11は、本発明の光コネクタ清掃工具(以下、単に「清掃工具」という)の一実施の形態を示す図である。
なお、図6は図4の示す状態と対応する斜視図であり、図7は図5の示す状態と対応する斜視図である。ここでは、挿入部20は幅方向中央の面に対称であるので、図6,図7は、挿入部20の幅方向の片側のみを図示している。
【0011】
本実施の形態の清掃工具1が適用される光コネクタプラグ60(以下、単に光プラグという場合がある)および光コネクタアダプタ70(コネクタハウジング。以下、単に光アダプタという場合がある)は、ここでは図10,図11に示すように、JIS C 5982等に規定されるMPO形光コネクタ(MPO:Multifiber Push On)である。
【0012】
光プラグ60は、JIS C 5981等に規定されるMT形光コネクタフェルール61(MT:Mechanically Transferable。以下、単にフェルールという)をプラスチック製でスリーブ状のハウジング62の先端部に収容した構成の光コネクタプラグであり、全体が外観扁平な断面形状に形成されている。
以下の説明では、この光プラグ60およびフェルール61の扁平形状の短辺側に対応する方向(図10の上下方向)を厚さ方向、長辺側に対応する方向を幅方向(図10の左右方向)ということがある。また、光プラグ60およびフェルール61の厚さ方向および幅方向に対応して、この光プラグ60と接続される光アダプタ70ならびに該光アダプタ70に挿入される清掃工具1の挿入部20についても同様に、厚さ方向および幅方向ということがある。
【0013】
図10に示すように、フェルール61の接合端面61aには、所定の個数(ここでは4個)の光ファイバ穴61bが配列されるように開口している。光ファイバ63は、ここでは4心の光ファイバテープ心線であり、その先端部の樹脂被覆を除去してなる光ファイバ63a(裸光ファイバ)を、フェルール61の光ファイバ穴61b(微細孔)に挿通することにより、他の光コネクタと突き合わせ接続可能に成端されるとともに、光プラグ60の内部を貫通して光プラグ60の後端から引き出されている。光プラグ60の後端から引き出された光ファイバ63は、ハウジング62の接続方向後端側(図11の左側)に設けられたブーツ64に収納されることにより、光プラグ60の後端付近での急激な曲げ等が防止されている。
なお、光ファイバ63としては、当該光プラグで成端するのに適したものであれば特に限定はなく、例えば単心または多心の光ファイバ心線、この光ファイバ心線をチューブに収納した光ファイバコードなどが採用可能である。
【0014】
フェルール61の接合端面61aにおいて、光ファイバ穴61bの幅方向外側の両側には、ガイドピン穴61cが設けられている。フェルール61同士は、ガイドピン穴61cに挿入されて接合端面61aから突出するように設けられる突出部材65(ガイドピン)を介して、周知のガイドピン嵌合方式の位置決め機構によって高精度に位置決めして、光ファイバ63aの端面同士を突き合わせ接合して接続されるようになっている。そしてこれにより、各フェルール61に成端されている光ファイバ63同士が光接続されるようになっている。
【0015】
光アダプタ70は、両側にコネクタ挿入口71を有するスリーブ状に形成されており、該コネクタ挿入口71から光プラグ60を挿入することにより、光アダプタ70の内部に形成され、前記コネクタ挿入口71と連通されたコネクタ収容穴72に収容することができるようになっている。
光プラグ60は、光アダプタ70のコネクタ挿入口71から挿入されると、挿入方向からずれた方向への変位を規制されつつ、コネクタ収容穴72に収容される。2個の光プラグ60を光アダプタ70に挿入すると、該光アダプタ70内でフェルール61同士が突き合わされ、これにより、各フェルール61に成端されている光ファイバ63同士が光接続されるようになっている。
【0016】
特に図示しないが、周知のMPO形コネクタと同様に、光アダプタ70の内壁70aに沿い、コネクタ挿入口71に向かって延出形成され、その先端に係合爪を有する弾性係合片が設けられている。また、光プラグ60のハウジング62の幅方向両側の側面には、光アダプタ70の前記弾性係合片の係合爪と係合可能な係合凹所が設けられている。
さらに、ハウジング62の外周には、前記係合爪と係合凹所とを係合したときに、前記弾性係合片を外側から押さえ、前記係合凹所との係合の離脱を防止するためのカップリング68が装着されている。
【0017】
光プラグ60は、コネクタ挿入口71から光アダプタ70に挿入されると、前記係合凹所と係合爪との係合などにより、挿入方向からずれた方向への変位を規制されつつ、コネクタ収容穴72に収容される。
両方の光プラグ60を光アダプタ70に挿入した状態では、光アダプタ70内でフェルール61に固定保持された光ファイバ63aの端面同士が突き合わされ、これにより、各フェルール61に成端されている光ファイバ63同士が光接続されるようになっている。
【0018】
上記光プラグ60の接合端面61aの清掃に適用できる清掃工具1は、図1〜図3に図示するように、内部に清掃部材2が収容された概略ケース状の工具本体10と、この工具本体10から突出して設けられ、光アダプタ70のコネクタ収容穴72に挿入可能に形成された挿入部20とを備えている。
【0019】
図1(b)に示すように、ここでは工具本体10は、プラスチック等からなる第1および第2のケース半体11,12による二つ割り構造になっている。ケース半体11,12は、特に図示しないが、例えば、第1のケース半体11の内側に突出して形成された嵌合ピンと、第2のケース半体12の内側に突設されたボスに設けられた嵌合穴とを嵌合させることにより、一体化できるように構成されている。なお、このような工具本体10の構成は一例に過ぎず、本発明を特に限定することを意図するものではない。
【0020】
清掃部材2はここではテープであり、このテープ2としては、特に限定されるものではなく、公知の適当な清浄布(不織布や織布)をテープ状に加工したものを採用することができる。例えば、ポリエステルやナイロンなどの極細の繊維からなるものなどが例示される。
【0021】
図2,図3に示すように、工具本体10内の収納空間35には、駆動機構3として、テープ2を送り移動するテープ送り機構が設けられている。
このテープ送り機構3は、テープ2を巻装した供給リール30と、使用後のテープ2を巻き取って回収する巻取リール31と、テープ2を操作する操作ダイヤル34を備えている。
【0022】
第1のケース半体11の内側(収納空間35に臨んだ側)の面には、供給リール30が回転可能に装着された供給リール支持軸32と、巻取リール31が回転可能に装着された巻取リール支持軸33が、第2のケース半体12側に突出して設けられている。
供給リール30と巻取リール31との間では、テープ2は、ピン状のテープガイド36に沿って、収納空間35内に張り回されている。そして、その途中で、挿入部20内に収容された後述のヘッド部23に巻き掛けられている。
【0023】
巻取リール支持軸33の外周には、巻取リール31と同心となるように、操作ダイヤル34が装着されている。
この操作ダイヤル34は、第1のケース半体11の側面に設けられた窓11aから、一部、工具本体10の外に露出されている。
操作ダイヤル34の半径は、巻取リール31の半径より大きくなっている。その結果、テープ2が巻取リール31に巻き取られる長さは、操作ダイヤル34の操作量(該操作ダイヤル34の外周に沿った変位量)より、上記半径比の分だけ小さくなる。このため、テープ2の微小な送り量が容易に達成される。
【0024】
テープ送り機構3は、操作ダイヤル34を手指などで操作して所定の方向に回転させることにより駆動できるようになっている。すなわち、操作ダイヤル34の回転により、巻取リール31が回転してテープ2を巻き取るとともに、供給リール30から未使用のテープ2が繰り出され、送り移動されるようになっている。上記窓11aは、工具本体10の側面に開口しているので、操作ダイヤル34は、清掃工具1を片手で持ったときでも、清掃工具1を持った側の手の指で容易に操作できる。
【0025】
さらにこの清掃工具1は、図1,図2に示すように、工具本体10から突出して設けられ、光アダプタ70に挿入可能に形成されている挿入部20を備えている。挿入部20は、光アダプタ70に挿入することにより、該挿入部20の先端に開口された開口部26に臨んで配置された清掃部材2(テープ)の当接部2aを、光プラグ60の接合端面61aに対して位置決めして当接させることができるようになっている。
すなわち、工具本体10は、挿入部20に向かって先細り形状となっており、挿入部20は細径部分19の先端(図1(a)の左側)に形成されている。
後述するように、テープ2の当接部2aは、ヘッド部23の当接面24上に位置する部分であり、当接部2aは、テープ2の送り移動によりテープ2の長手方向に沿って交替してゆく。
【0026】
図2に示すように、細径部分19の内部には、この細径部分19の補強のための突壁19aが設けられている。この突壁19aによれば、供給リール30からヘッド部23に向かう、清浄であるべき清掃テープ2b(2)の経路と、ヘッド部23から巻取リール31に向かう、拭き取り清掃により汚染された清掃テープ2c(2)の経路とが仕切られるので、清掃テープ2の汚れの移行が抑制される効果も奏される。
【0027】
挿入部20には、工具本体10側に段差15が設けられている。この段差15は、挿入部20を光アダプタ70のコネクタ収容穴72に挿入したときに、該段差15が光アダプタ70のコネクタ挿入口71の周縁部71aに当接することにより、挿入部20のコネクタ収容穴72への進入深さが深くなりすぎるのを防ぐためのものである。
【0028】
ここでは、図9に示すように、挿入部20は、工具本体10と同じく二つ割り構造となっていて、それぞれのケース半体11,12と一体に形成された挿入部半体20a,20bを、ケース半体11,12の一体化に伴って一体化することにより形成されるようになっている。
挿入部20の外面の幅方向両側には、当該挿入部20を光アダプタ70に挿入した際に、該光アダプタ70の弾性係合片の係合爪(上述)と係合可能に形成された係合凹所21が形成されている。係合凹所21の前縁部21a(挿入部20先端に近い側、図6における左側の縁部)は斜面となっており、該係合凹所21に光アダプタ70の係合爪が係合された状態で、挿入部20を離脱方向(図6における左下向き)に引き抜いたときに、係合爪は前記前縁部21aを乗り越えて比較的小さな力で係合凹所21から離脱されるようになっている。
【0029】
挿入部20内には、テープ2をフェルール61の接合端面61aに当接させるためのテープ当接機構4が設けられている。このテープ当接機構4は、清掃工具1の挿入部20を光アダプタ70に挿入した状態で、接合端面61aに向かい合って配置される当接面24を有するヘッド部23と、このヘッド部23の当接面24を傾動させて、当接面24がテープ2の挿入方向に対する向きを変えられるようにするヘッド傾動機構40とからなる。
【0030】
図4〜図8に示すように、当接面24は、ヘッド部23の挿入方向の側(図4,図5の左側)に設けられている。図8に示すように、当接面24は略四角形状であり、ヘッド部23は、光アダプタ70に挿入された際に、接合端面61aから突出する突出部材(ガイドピン)65が挿通され、ガイドピン65との干渉を避けるための凹部として、挿入部20の幅方向両側にガイドピン挿通穴22,22が形成されている。
ここでは、当接面24は、挿入部20の開口部26の端縁26aより奥側(図4,図5の右側)に位置している。しかし、清掃すべき光コネクタの形状等の条件によって、当接面24を、開口部26の端縁26aより挿入方向の側(図4,図5の左側)に突出させてもよい。
【0031】
図8に示すように、ヘッド部23は、テープの送り方向の上流側(図8の下部)および下流側(上部)には、当接面24を介して対向するように、テープ2をガイドするガイド溝25が設けられている。
ここでは、テープ2は、挿入部20の幅方向(図8の左右方向)の中央部に配置されたもの2Aと、挿入部20の幅方向の両側部に配置されたもの2B,2Bとがある。また、テープ2A,2B,2Bに対応して、ガイド溝25も挿入部20の幅方向の中央部に配置されたもの25Aと、挿入部20の幅方向の両側部に配置されたもの25B,25Bとがある。以下、それぞれのテープ2およびガイド溝25を、異なる符号2A,2B,2Bおよび25A,25B,25Bにより区別して説明する場合がある。
なお、本発明では、挿入部20の幅方向の両側部に配置されたテープ2Bおよびガイド溝25Bは、必須のものではない。
【0032】
ガイド溝25A,25B,25Bは、それぞれのテープ2A,2B,2Bに対応して、3対設けられている。ガイド溝25A,25B,25Bの幅は、テープ2A,2B,2Bの幅に合うようになっている。テープ2A,2B,2Bは、上側のガイド溝25A,25B,25Bと当接面24と下側のガイド溝25A,25B,25Bとにより、ヘッド部23に巻き掛けられるようになっている。
【0033】
図8に示すように、当接面24において、ガイドピン挿通穴22,22は、ガイド溝25A,25B,25Bによって案内されるテープ2A,2B,2Bの間に開口するように配置されている。これにより、ガイドピン65は、テープ2A,2B,2Bの干渉を避け、テープ2A,2B,2Bの間を通ってガイドピン挿通穴22,22に挿入することができる。
【0034】
図4〜図7に示すように、ヘッド傾動機構40は、一端がヘッド部23の当接面24と反対側の裏面27に、厚みが薄くされた弾性変形部42,42により連結され、互いに平行に、ほぼ挿入部20の挿入および離脱の方向(図4,図5の左右)に延在して配置されて、この延在方向に変位可能とされた一対のスライド部41a,41bと、このスライド部41a,41bのヘッド部23と反対側の他端を、弾性変形部43,43を介して連結する連結部44と、前記スライド部41a,41bがその前記延在方向にスライドして変位するように案内するガイド45とを有している。
【0035】
さらに、連結部44が前記挿入部20の挿入方向とその反対方向である離脱方向との両方向への移動を規制する移動規制部(ストッパー)46と、スライド部41a,41bを挿入部20の厚さ方向(図4,図5の上下方向)に橋絡する橋絡部48とを有している。橋絡部48もスライド部41a,41bの変位に対して弾性変形可能である(弾性変形部)。
スライド部41a,41bは、ヘッド部23の当接面24の上端縁24aと下端縁24bとに対応して、ヘッド部23の裏面27の上側および下側(図4,図5の上下)にそれぞれ連結されている。
【0036】
ヘッド部23と一対のスライド部41a,41bと連結部44とは、四角枠状の部品47(ヘッド複合体)を構成している。
より具体的には、ヘッド部23と、スライド部41a,41bと、連結部44と、弾性変形部42,42,43,43と、橋絡部48とは、プラスチック等により一体に成形されたヘッド複合体47となっている。
ヘッド複合体47は、ガイド45とストッパー46とを、スライド部41a,41bの間の空間49とストッパー挿通穴44aとに挿通することにより、挿入部20内に保持されている。
【0037】
ガイド45は、略四角形の断面形状を有し、前記一対のスライド部41a,41bの間に、前記挿入部20の幅方向に配置された内壁28から、該挿入部20の幅方向(図4,図5の紙面に垂直な方向)に突設されている。ガイド45はその上面45aおよび下面45b(それぞれ図6,図7の上側および下側)により、スライド部41a,41bのスライドを案内する。
ストッパー46は、略丸形の断面形状を有し、前記挿入部20の幅方向に配置された内壁28から突設されている。連結部44には、弾性変形部43,43と連結された部分の間に、ストッパー挿通穴44aが形成されている。ストッパー46は、ストッパー挿通穴44aに挿通されている。
連結部44は、ストッパー46により、挿入部20の挿入方向および離脱方向に変位を規制されており、いずれの方向にも実質的にほとんど変位しないようになっている。
【0038】
ヘッド傾動機構40は、ヘッド部23よりも供給リール30側にあるテープ2(2b)と、ヘッド部23よりも巻取リール31側であるテープ2(2c)との間に配置されている。これにより、テープ2の送り運動を阻害することなく、ヘッド部23を安定に傾動させることができる。
なお、連結部44のテープ2に近接する箇所(連結部44の上下面であり、図4,図5における上下)には、テープ2との干渉を避けるための凹部50が形成されている。凹部50は、ガイド溝25A,25B,25Bに対応してこれらガイド溝の後方(挿入部20の離脱方向。図6,図7の右上への方向)に、3箇所(50A,50B,50B)設けられている。
【0039】
ヘッド複合体47は弾性変形部42,42,43,43および橋絡部48の弾性により変形可能であり、ヘッド部23の当接面24に対する押し込み力に対して、該ヘッド部23の傾動を許容するように構成されている。すなわち、ヘッド部23に対して、当接面24の上端縁24aの側と下端縁24bとの側とに不均等な押し込み力が作用することにより、スライド部41a,41bが、挿入部20の挿入および離脱の方向に変位して、当接面24が傾動しうるようになっている。
なお、ヘッド複合体47においてヘッド部23を支持する各部の形状は、支柱状、壁状、板状など、適宜の形状とすることができる。
【0040】
なお、ヘッド複合体47は、テープ2が送り方向に送られたときに、テープ2とヘッド部23との間に作用する摩擦力程度では、清掃に悪影響を与えるほどには当接面24の向きが変わらないようになっている。当接面24の傾動を許容する押し込み力の閾値は、弾性変形部42,42,43,43の弾性変形のしやすさ、橋絡部48の有無などにより調整可能である。すなわち、橋絡部48は必須のものではない。
なお、特に図示しないが、挿入部20の先端には、開口部26に臨むヘッド部23およびテープ2を保護するためのキャップやカバーなどを取り付けて、清掃工具1を使用しないときに上記テープ2等を保護できるようにしてもよいことは勿論である。
【0041】
この清掃工具1の使用方法の一例を説明する。
清掃工具1の挿入部20を光アダプタ70のコネクタ挿入口71から挿入すると、挿入部20は、外面が光アダプタ70の内壁70aにより位置決めされながらコネクタ収容穴72に進入する。段差15がコネクタ挿入口71の周縁部71aにぶつかるところまで挿入部20を押し込むことにより、清掃部材2は、光プラグ60の接合端面61aの適切な位置(ここでは、光ファイバ穴61bとその周辺)に位置決めされて当接させられる。
光プラグ60の接合端面61aにガイドピン65が突出していた場合でも、ガイドピン65は、ヘッド部23に設けられたガイドピン挿通穴22に収容されるので、挿入部20は、ガイドピン65と干渉することなく、コネクタ収容穴72に収容することができる。
【0042】
操作ダイヤル34を所定量回転させると、巻取リール31の回転と連動してテープ2が運動し、このテープ2により接合端面61aが拭き取り清掃されるので、接合端面61aに付着しているゴミや埃、油分などの汚れが、テープ2により確実に拭き取られる。
拭き取られた汚れは、テープ2に付着して巻取リール31に巻き取られる方向に移動するので、使用後のテープ2はもはや挿入部20の開口部26から露出されることはなく、汚れが接合端面61aに再び付着するおそれがない。
従って、接合端面61aを極めて清浄に清掃することができる。
清掃後、清掃工具1を挿入したときと反対の方向(離脱方向)に引くことにより、挿入部20を容易に引き抜くことができる。
【0043】
本実施の形態の清掃工具1によれば、ヘッド部23に巻き回されたテープ2がガイド溝25A,25B,25Bにより案内されているので、幅方向へのずれが抑制される。このため、接合端面61aはテープ2に均等な当接力にて当接することができ、また、テープ2を円滑に送ることができる。従って、接合端面61aに汚れが残らないように清掃を確実に行うことができる。
また、図4,図5に示すように、テープ2(2A,2B,2B)がガイド溝25A,25B,25B内に配置されることにより、ヘッド部23が傾動して向きを変えたときでも、ヘッド部23の傾動方向にある挿入部20の内壁29a,29b(図4,図5における上下の内壁)にテープ2が接触することはない。
【0044】
ヘッド部23は、その当接面24が光プラグ60の接合端面61aと当接したときの押し込み力に対して傾動しうるようになっているので、図4に示すように接合端面61aが直角研磨されたフェルール61が当接された場合においても、図5に示すように接合端面61aが斜め研磨されたフェルール61が当接された場合においても、当接面24の向きを接合端面61aの向きと合わせ、当接面24上のテープ2を、より均等かつ確実に接合端面61aに当接させることができる。
なお、図5において、フェルール61の前面の一部が、接合端面61aと異なる角度に向くように形成されている(ここでは直角研磨部61d)場合、この直角研磨部61dにテープ2が当接していないが、ここはフェルール61の接合端面61aではないから、特に問題とならない。
【0045】
しかも、ヘッド傾動機構40は、当接面24がその傾動方向にある上下方向(図4,図5の上下方向)に実質的に変位しないようになっているので、光プラグ60の接合端面61aとヘッド部23の当接面24との中心位置がずれて接合端面61aにテープ2がよく接触しなかったり、接合端面61aがテープ2に当接する当接力が不均等になったりすることが抑制され、接合端面61aの汚れをより確実に除去することができる。
挿入部20は清掃中も光アダプタ70のコネクタ収容穴72に位置決めされるので、位置ずれすることなく、テープ2により均等な押圧力で接合端面61aを拭き取り清掃することができる。また、挿入部20を、ごく軽い力で、光アダプタ70内に支持することができ、作業性がよい。
【0046】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明はこの実施の形態のみに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、ストッパーは連結部に形成されたストッパー挿通穴に挿通されることは必須ではない。図12にヘッド傾動機構40の改変例を示すように、連結部44の前後(連結部44における挿入部20の挿入方向および離脱方向に位置するところ。図12の左および右)を挟むように、挿入部20の幅方向に配置された内壁28から突設されたストッパー46a,46bを配置することによっても、挿入部20の挿入方向および離脱方向への変位を規制することができる。なお、ここでは、連結部44には、ストッパー46a,46bと滑らかに接触させるため、受け部44b,44bが設けられているが、これは本実施の形態において必須のものではない。
【0047】
本発明において、ヘッドの形態は特に限定されず、例えば、図13に図示したような従来の形態のヘッドを用いることもできる。
ヘッド傾動機構は、ヘッド部の裏面に連結されてこれを付勢するバネなどの弾性体により、ヘッド部の当接面の対向する両端縁が前記挿入部の挿入および離脱の方向に対して異なる変位量にて変位しうるように前記ヘッド部を保持した構成も可能である。このような構成によっても、前記弾性体の弾性変形により、ヘッド部の傾動を許容するようにすることができる。
ヘッド傾動機構は、材質の選定により、枠状以外の構成とすることもできる。また、ヘッド部自体の弾性変形により、ヘッド部の傾動を許容するようにした構成もありうる。
【0048】
挿入部は、突出方向の複数箇所に、互いに異なるコネクタハウジングへの挿入によってコネクタハウジング内で位置決めされる単位挿入部が形成されており、挿入部の各単位挿入部は、挿入部の突出方向の位置が相対的に後ろ側に位置する単位挿入部を収容することができる全てのコネクタハウジングに、挿入可能であるように形成されているものとすることができる。このような清掃工具によれば、それぞれの単位挿入部により、挿入部を互いに異なるコネクタハウジングに対して位置決めされるように挿入することができ、1つの清掃工具を用いて、コネクタハウジングの異なる複数の種類やサイズなどに対応して、このコネクタハウジング内の光コネクタの接合端面の清掃を行うことができる。
【0049】
また、挿入部は、工具本体に対して複数種類の挿入部が交換可能なものとして構成することもできる。これにより、工具本体を変更することなく、挿入部の変更のみによって、コネクタハウジングの種類やサイズなどに対応して、このコネクタハウジング内の光コネクタの接合端面の清掃を行うことができる。
【0050】
テープを送り移動する駆動機構は、手動により駆動されるものに限定されず、モータやバネなどの動力により駆動されるようにしたものでもよい。また、手動と動力による駆動とを、併用したり、必要に応じて切り換えられるようにしてもよい。
【0051】
上記実施の形態の清掃工具においては、挿入部は、該挿入部先端に形成された開口部を除いて、清掃部材をすっかり覆うようになっていたが、必ずしも、これに限定されない。挿入部をコネクタハウジングに挿入するに、清掃部材がコネクタハウジングの内壁などに接触して汚染されるのを防げるのであれば、形状や構造は特に限定されず、必ずしもスリーブ状である必要はない。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光コネクタ清掃工具は、ヘッド部に、テープの幅方向のずれを防ぐガイド溝が、当接面に対して、前記テープの流れ方向の上流側および/または下流側に設けられているので、ヘッド部に巻き回されたテープがガイド溝により案内され、幅方向へのずれが抑制される。このため、接合端面はテープに均等な当接力にて当接することができ、また、テープを円滑に送ることができる。従って、接合端面に汚れが残らないように清掃を確実に行うことができる。
【0053】
ヘッド部に対する押し込み力に対して、該ヘッド部の傾動を許容するように構成されたヘッド傾動機構を備える場合、光コネクタの接合端面とヘッド部の当接面との中心位置がずれて接合端面にテープがよく接触しなかったり、接合端面がテープに当接する当接力が不均等になったりすることが抑制され、接合端面の汚れをより確実に除去することができる。しかも、ヘッド部の傾動する場合でも、テープの幅方向へのずれが抑制される。
【0054】
挿入部が前記コネクタハウジングに挿入された際に前記ヘッド部と前記接合端面から突出する突出部材(例えばMPO形光コネクタにおけるガイドピン)との干渉を避けるための凹部が、前記ヘッド部の当接面から凹陥して設けられており、前記ガイド溝によって案内されるテープが、前記凹部への突出部材の挿入を許容するように構成された場合、光コネクタの接合端面に突出部材があっても、接合端面に清掃部材を当接させて清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る光コネクタ清掃工具の外観を示す(a)正面図および(b)斜視図である。
【図2】 図1に示す光コネクタ清掃工具の内部を示す断面図である。
【図3】 図1に示す光コネクタ清掃工具の内部を示す断面図である。
【図4】 図1に示す光コネクタ清掃工具の挿入部をコネクタハウジングに挿入した状態の一例を示す断面図である。
【図5】 図1に示す光コネクタ清掃工具の挿入部をコネクタハウジングに挿入した状態の他の例を示す断面図である。
【図6】 図1に示す光コネクタ清掃工具のテープ当接機構のとりうる状態の他の例を示す半断面斜視図である。
【図7】 図1に示す光コネクタ清掃工具のテープ当接機構のとりうる状態の他の例を示す半断面斜視図である。
【図8】 図1に示す光コネクタ清掃工具の挿入部を示す正面図である。
【図9】 図1に示す光コネクタ清掃工具の挿入部の部分拡大斜視図である。
【図10】 光コネクタプラグのフェルールの一例を示す正面図である。
【図11】 図1に示す光コネクタ清掃工具の挿入部が、光コネクタが収納されたコネクタハウジングのコネクタ挿入穴に挿入される状態を示す分解斜視図である。
【図12】 本発明の改変例に係る光コネクタ清掃工具の挿入部の内部を示す断面図である。
【図13】 従来のクリーナーをコネクタハウジングに挿入した状態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1…光コネクタ清掃工具(清掃工具)、2,2A,2B…清掃部材(テープ)、10…工具本体、20…挿入部、22…凹部(ガイドピン挿通穴)、23…ヘッド部、24…当接面、25A,25B…ガイド溝、30…供給リール、31…巻取リール、40…ヘッド傾動機構、60…光コネクタ(光プラグ)、61a…接合端面、65…突出部材(ガイドピン)、70…コネクタハウジング(光アダプタ)。
Claims (4)
- 両側のコネクタ挿入口(71)から挿入された一対の光コネクタ(60)をコネクタ収容穴(72)に収容することにより両光コネクタが光接続されるようになっているコネクタハウジング(70)内の光コネクタ(60)の接合端面(61a)を、清掃部材(2,2A,2B)の運動により拭き取り清掃する光コネクタ清掃工具であって、
工具本体(10)と、この工具本体から突出して設けられ、前記コネクタハウジングの前記コネクタ収容穴に挿入可能に形成されている挿入部(20)とを備え、
前記清掃部材はテープであって、前記工具本体には、前記テープを巻装した供給リール(30)と、使用後のテープを巻き取って回収する巻取リール(31)とが回転可能に装着されており、
前記挿入部には、先端に前記接合端面に対する当接面積を確保するための当接面(24)を有し、この当接面に沿って前記供給リールから供給されたテープが巻き回されるようになっているヘッド部(23)が設けられており、
前記ヘッド部には、前記テープの幅方向のずれを防ぐガイド溝(25A,25B)が、前記当接面に対して、前記テープの流れ方向の上流側および/または下流側に形成されていることを特徴とする光コネクタ清掃工具(1)。 - 前記ヘッド部に対する押し込み力に対して、該ヘッド部の傾動を許容するように構成されたヘッド傾動機構(40)を備えることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ清掃工具。
- 前記挿入部が前記コネクタハウジングのコネクタ収容穴に挿入された際に前記ヘッド部と前記接合端面から突出する突出部材(65)との干渉を避けるための凹部(22)が、前記ヘッド部の当接面から凹陥して設けられており、
前記ガイド溝によって案内されるテープが、前記凹部への突出部材の挿入を許容するように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光コネクタ清掃工具。 - 両側のコネクタ挿入口(71)から挿入された一対の光コネクタ(60)をコネクタ収容穴(72)に収容することにより両光コネクタが光接続されるようになっているコネクタハウジング(70)内の光コネクタ(60)の接合端面(61a)を、清掃部材(2,2A,2B)の運動により拭き取り清掃する光コネクタ清掃工具であって、
工具本体(10)と、この工具本体から突出して設けられ、前記コネクタハウジングの前記コネクタ収容穴に挿入可能に形成されている挿入部(20)とを備え、
前記清掃部材はテープであって、
前記挿入部には、先端に前記接合端面に対する当接面積を確保するための当接面(24)を有し、この当接面に沿って前記テープが巻き回されるようになっているヘッド部(23)が設けられており、
前記ヘッド部には、前記テープの幅方向のずれを防ぐガイド溝(25A,25B)が、前記当接面に対して、前記テープの流れ方向の上流側および/または下流側に形成されていることを特徴とする光コネクタ清掃工具(1)。
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